【俺ガイル】八幡「青が、離れない」 (35)
・初SSです
・もれなく駄文
・今なら短文もついてくる
・地の文多め、というかほぼほぼ地の文
・おそらく鬱展開
以上を容認してくださる方は、生温い目で見守ってやってください。
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もう何度、忘れようとしただろうか。
奉仕部での青い思い出を、何度、忘れようとしただろうか。
総武高校を卒業する寸前、俺は雪ノ下雪乃と交際を始めた。
……由比ヶ浜の、俺を好いていてくれる気持ちを、知らなかったわけではない。
それを知っていた上で、雪ノ下を、雪乃を選んだ。
都内の大学に入ってすぐ、俺と雪乃の関係に不和が生じた。
違う大学に進み、違う人間関係を持ち。
……少しの溝が、どんどん広がって行き、取り返しのつかないことになっていた。
大学に入った時点で由比ヶ浜とは疎遠になっていた。
雪乃とも秋を迎える前には関係が崩壊し、俺が逃げるように別れを告げ、連絡が取れなくなった。
それからと言うものの、あの奉仕部での、もう増えることのない思い出が、少しずつ角が取れて、俺の中に溜まって行った。
俺の心の中で輝く青が苦しくて、不快で、粗を探して汚そうとした。忘れ去ろうとした。
……でも、それをするたびに、俺の中で記憶は輝きを増して行った。
雪乃と分かれて1年半が経った今、その記憶は、宝石のように光り輝いて、俺の胸を蝕んでいた。
ベッドに横になり、瞼を閉じても、紅茶の匂いは鼻から離れない。
どうして、俺は逃げたのだろう。雪乃から、あの日々から逃げたのだろう。
今も何処かで、雪乃や由比ヶ浜は別の人と歩いているのだろう。
それを思うほど、あの記憶が輝きをます。
俺の目から、青が離れない。
笑っていた、泣いていたあの日のことが、俺の目から離れない。
瞼を閉じても、記憶は俺の目から離れない。
部屋にぽつんと置かれた、水草だけが揺れる水槽。
エアーポンプは、今夜も眠らない。
ふとカレンダーを見ると、明後日が成人式で有ることを示していた。
行きたくないはずなのに、俺の足は、終電前の駅を目指していた。
青から、逃げられる気がして。
部屋に入ると、着ていたコートも脱がずに、あたし、由比ヶ浜結衣はベッドに倒れこむ。
「あーあ、ダメだった」
嫌なことを吐き出すように言い、目をつぶる……。
けど、部屋に置いた、ミドリガメが泳ぐ水槽のエアーポンプが、あたしを寝かさない。
「……ヒッキー」
思わず、昔好きだった人の名前を口にしてしまう。
高校を卒業してから、ヒッキーとは、そして彼と付き合い出したゆきのんとは自然と距離を置くようになった。
そして、あの二人を、奉仕部をを忘れるように、彼氏を作った。
青い日々から離れるように、あの時を思い出さないようにがんばってきたけど……高校を出て1年半もせずに、あたしの心を、忘れようとしたあの時が満たしていく。
時計を見ると、もう午前4時になっていた。日付が変わる前に帰ってきたのに。
ヒッキーの影が、あの頃の影がちらつくのが気持ち悪くて、日が登るのを待たずに、あたしは家を出た。カレンダーを見ると明日は、成人式だった。
エアーポンプは、そんな私を静かに見ていた。
渋の片桐修か?
それともまさかあいつの作品パクってないよな?
>>13
私→あたし です。
>>14 ご名答。クズ作家の片桐ですー。
終電で千葉に帰り着き、コンビニで雑誌を立ち読みし、開店した喫茶店で甘ったるいコーヒーを飲んで、朝を待って駅を出る。
何と無く歩いていると、総武高校にたどり着いた。着いた頃には昼前になっていた。
一番来たくなかったはずの場所なのに、俺の足は、引かれ合うように、あの場所を目指していた。
俺の青は、ますます輝きを増していた。
階段を登って、登って、登る。記憶を巻き戻すように、登る。
探したことも、探されたこともないような、途切れた自分が少しずつ俺の頭にやってくる。
特別棟4階、奉仕部があった場所に、俺は到着していた。目印でもつけていたかのように、奉仕部室を、俺は目指していた。
一瞬躊躇ったのち、ドアを開ける。
妹の小町は総武高校には合格したが奉仕部には入らなかった。
最後まで、奉仕部の部員は俺たち3人だけだった。
俺たちの卒業とともに無期限休部扱いになったせいなのか、あの時のまま、時間が止まったように、数年前と変わらない配置で、椅子が三つ置かれていた。
ゆっくりと歩を進め、俺がかつて座っていた椅子に座る。
息を吐くと、白い息が埃を巻き上げる。
変わったのは、この部屋ではそれだけ。
全く、それ以外は全く、変わってないのだ。
俺たちは、こんなにも変わってしまったと言うのに。
「……ヒッキー?」
窓の外を見ていると、聞き慣れた、しかし最近は聞くことのなかった声が鼓膜を揺らす。
声の方を見ると、由比ヶ浜結衣が、コートを雑に羽織って立っていた。
「うわー、ヒッキー久しぶり!元気だった?」
「まあな」
「なんでここに来たの?」
「なんとなく、懐かしくなってな」
本当のことだが、いい意味ではない。懐かしさは確かに俺の胸に去来しているが、この場所にいればいるほど俺の胸が蝕まれる。
早くこの部屋から出ればいいのに、俺の体は固定されたように椅子にある。
記憶が、俺を逃がさない。
「ゆきのんとは、どう、なの?」
由比ヶ浜が言葉を選びながら言う。
「ん、まあ順調だぞ」
嘘だ、真っ赤な嘘だ。
俺と雪乃はとっくの昔に駄目になっていたのに……。
俺の中の、理性の化け物が、暴れまわっていた。心を隠して、幸せを伝えていた。
「よかった~、あたしが引いたんだし、幸せになりなよ!あたしも……彼氏、いるから、心配しないで!」
由比ヶ浜の目が揺れている。水で満たされ、揺れている。
嘘だ、すぐ分かる。
でも、それを指摘せず、俺は「そうか、よかった」と言った。
「今から優美子に連絡すれば会えるかな?」
「明日成人式だし、千葉にいんじゃねえの?」
変わってしまった俺たちが、あのころと変わらない会話をする。それが、ひどく滑稽だった。
「そっかー、じゃあちょっと会って来ようかな!じゃあねヒッキー、またあした!」
そう言うと、由比ヶ浜は部室を出て行った。
彼女が部屋を出る時、鼻を啜っていた。
泣いているのを、隠していたのかもしれない。
再び独りになった部屋で、窓から差し込む日を浴びる。
後悔していた。
由比ヶ浜に嘘をついたことに。
ここに来てしまったことに。
あの頃を思い出してしまったことに。
……そして、何処かで道をまちがってしまったことに。
静かな、音のない部屋の中に、青い光が、永遠の青を湛える光が輝いていた。
不快なほどに鮮やかな青は、俺を塗りつぶし、独りの部屋に輝いていた。
この部屋に、あの頃の俺たちは、もういない。
残っているのは、鮮やかな青だけだ。
吹奏楽部の奏でる、いつかのヒットソングが、擦り切れた安いセリフを並べて、余計に俺の心を焦がしていった。
静かに部屋を出ると、もう一階、階段を登る。
屋上に、人はいない。
野球部の練習するけたたましい声や、管弦楽団の練習音が響いている。
頭が痛い。
音が、俺の頭を縛り付けていた。
空の青が、あの部屋の光と同じように見えて、酷く気持ち悪かった。
それを振り払うように、俺は……。鳥が籠から逃げ出すように、大空に身を包ませていた。
後悔は、不思議となかった。
俺の世界が壊れても、時間は流れ続ける。あの頃への憧れも、あの頃からの優越も、全ては一瞬の光だ。
帰る目印は、もういらない。
と言うわけで終了です。速攻で特定された時はどないしよと思いましたが、ぶっ叩かれなくて少し寂しいです(ドM感)
近いうちにまたやらかすかもしれないので、その際は笑ってぶっ叩いてやってください。
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