??穂乃果、希視点で話が展開します。
?シリアス展開多めです。
??お見苦しい箇所も多々あると思いますがよければ最後までお付き合いください。
◇→穂乃果目線
◆→希目線
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◇
もしも、
もしもみんなが言うようにわたしが太陽なら、きっとあの人は月。
わたしだけじゃ、きっとこんなに進めなかった。
廃校を阻止して、大切で大好きなかけがえのない仲間ができて。
たった1年だったけれど、
それはそれはキラキラした1年だった。
ありがとう、って言いたい。
ぎゅって抱きしめてたくさん笑って。
あの人はいつだってみんなのことを気にして、みんなのどんなことも見抜く。
たくさんたくさん助けてくれる。
なのに自分のことには無頓着で。
わたしにはちょっとそれが許せなくて。
自分のことはいつだって二の次なのがいつも不満だった。
だから、お礼を言いたい。
そう思ってずっとあの人の側にいた。
ずっと見てた。
そしてある日気づいてしまった。
彼女には、わたしたちにも言えない、大きな秘密があること。
◆
もしも、
もしもあの子が言うようにわたしが月なら。
あの子はきっと太陽。
ウチだけじゃ、こんなに進めなかった。
同じ想いを抱えてる子たちがいるのは分かっていたけれど、ウチだけの力じゃ集めることなんてできんかった。
感謝してる、すごく。
今まで信じられる人も仲のいい人も繰り返してきた転校のせいで出来たことはなかった。
寂しい、という感覚が麻痺してしまうくらい寂しさに疎くなった。
転校初日にも馴染めるように、浮かないように顔色をずっと伺っていたら、いつの間にか周りの人間の想いが分かるようになった。
占いは得意だけど、半分は心理戦。
相手の言って欲しいことがわかるから。
何を思って何に悩んでるか顔を見たらわかるから。
そのせいか世渡りも上手くなって、
それでも虚無感と孤独感は消えなくて。
そんな時、学校が廃校になることを知った。
正直、この学校は好きやけどウチはこの土地の人間じゃないこともあって、何があっても守りたい程の愛校心はなかった。
それにどうせあと1年で卒業してまうし。
でも親友が切羽詰まった顔して頑張ってるのを見過ごすわけにもいかなかったからそれとなくお手伝いはしてた。
そんな時あの子たちに出会った。
ただひたすらに己を信じて突き進む。
感じた可能性を信じて進むその姿にウチは心を打たれた。
それからずっと見てた。
ウチに出来ることはいつだってみんなを見守って支えてあげることだけ。
詩を書いたり、歌や衣装を作ったりすることもみんなを引っ張っていくことも、誰かの癒しになれるようなこともない。
そんなウチにみんなは優しくしてくれて、居場所をくれたから。
あの子の笑顔に何回も何回も励まされた。
そう、何回も。
でもウチはもうみんなに顔向け出来ん。
大好きなみんなに………大きな、大きな隠し事をしてしまったから。
きっかけは、本当に些細なことだった。
「ん……あれ、今日って何曜日やっけ?」
「火曜日よ?やだ、希ったらどうしたの?ふふ」
「な、笑わんでよえりち!誰だって曜日忘れる事ぐらいあるやんっ」
「そうよねーふふっ」
「もう……バカにして」
ふ、と今日が何曜日か分からなくなる。
そんなことは誰にだって経験があることだと思う。
だから、その時は気を止めなかった。
けど。
「あれ……今日何曜日やっけ」
「希ったら、毎日毎日同じ質問してるわよ?疲れてる?」
「ううん……そういうわけやないんやけど…」
「そう?でも今日は早めに帰ったほうがいいわ」
「いやいや、ウチ大丈夫やから!な?」
「ならいいけど……」
日に日に忘れるものが多くなって。
「あれ……また忘れてきちゃったお弁当…」
「もぉ、また〜!?希これで今月何回目よ!さすがのにこでもそんなに忘れないわよ!」
「……朝バタバタしてたからかな!ウチ購買行ってくるね!」
「ハイハイ、どーぞ」
「…………。……?」
「?……希?何してんの?早く行かないと購買閉まっちゃうわよ」
「購買?ウチ今日はお弁当ちゃんと……、…あれ?」
「はぁ?あんたさっきお弁当忘れたから購買に行ってくるって言ったんじゃない」
「え、そ…そうだっけ…」
「……希?」
「う、ううんっ行ってくるね」
日に日に酷くなる頭痛と眩暈。
「ぅっ……目が、回る…頭いた…」
疲れてるだけ。
何もない。ただ、ただ疲れてるだけだから。
そう自分に言い聞かせて過ごす毎日。
心がボロボロになっていくのを無視して。
見て見ぬ振りをして何事もないかのように笑顔を作っていた。
「……で、どう思う?希」
「…え、?」
「だから!ここの振り付けよ!」
「真姫ちゃんの案でいいと思うで…」
放課後の練習時間。
ライブも迫っているというのに、うちの体は頭痛と眩暈とでかなり気だるさを感じていた。
それだけじゃない、
歌いたい、踊りたい…みんなと話したい、っていう気持ちが湧いてこない。
こんなことじゃウチは迷惑になるだけだ。
もう今日は帰ろう。
「海未ちゃん、ごめん。ウチ今日帰るわ」
「…希?体調悪いのですか?」
「そんなところかも…」
「確かにちょっと顔色悪いですね…今日はゆっくり休んでください」
「…………」
「……希?」
「…ん?どうしたん?」
「いや、あの帰らないのですか…?」
「えっ、なんで?ウチそんなこと言った?」
「え、だって今体調が悪いから帰ると…」
「……!う、うん、そうやな、帰るわ…」
「は、はい…」
がチャッ
「あれ……」
ガチャガチャッ
「な、なんで開かんの」
ガチャガチャ
ガチャッ
「えっ、なんで?なんで?」
「っ、希……その扉は、引くんです……!」
「……っ!!」
キィ……
「希…」
「ご、ごめん……な…」
「あっ、希……!」
もう、だめだ。
おかしい、こんなこと。
3年も通っている学校で
何度も何度も開け閉めしている屋上のドアを開けられないなんて……!
「ウチ……おかしく、なったんかな……」
涙が次から次へと溢れてくる。
味わったことのない恐怖に支配されて足を踏み出すことすら怖くなった。
「とりあえずもう家に帰……、あ、れ……
ここ…どこ……」
考えてみれば、学校から出て信号を渡ったばっかりの場所で迷うなんてことはない。
けれど、その時のウチは完全に「迷子」だった。
自分がどこにいるかも、
自分がどこにいこうとしているかも分からない。
脚がガクガクと震えてその場に座り込んだ。
ポケットに入っている携帯電話を開き、親友の名前を探す。
震える指先でボタンを何個か押して耳に当てる。
息は当然上がって過呼吸になりかけていた。
「……希?どうし…」
「……て」
「え?」
「助けて…っ…!」
「ちょっ…!?希どうしたの?あなた今どこに」
「わ、わからないの!ここがどこか分からない!!助けて!怖い、怖いのわたし!!」
「っ、わ、わかった…!わかったから落ち着いて!なにか目印みたいなのはある?」
「め、目の前に信号があって……その奥に学校…がある」
「……え?」
「音乃木坂学院…て、書いてある…」
「希…あなた……冗談、よね…?」
「えっ…」
「……校門にいるのね、今行くわ」
ピッ
ツーツー……
聞いたことのない低い声に背筋が凍った。
彼女を怒らせてしまったのだろうか。
でも、何故?
ぼーっと、焦点も合わない瞳で遠くを見つめていると綺麗な金髪を揺らしながら一人の女の子がこちらに走ってきた。
「希!!」
「っ!?」
ガシッと肩を乱暴に掴まれて、鳥肌が立つ。
「あなたいい加減に」
「い、いやああああ!!!!なにするの!?」
「!?希!?」
「や、やめて!近づかないで!あなたは誰なの!?」
「希、何言って」
「あなたなんか知らない……!わたしはあなたと会ったことなんてない!!」
「…希」
「いや…いやだ……家に帰りたい、家に…家に帰りたい……」
泣き叫ぶ紫色の髪をおさげにした女の子と、
ただ呆然と立ち尽くしたままの金髪の綺麗な女の子。
そこはもう小さな地獄絵図を描いていた。
本日はここまでです。
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