僕は今、希望々峰学園の前に立っている。
あの超高校級の才能を持つ高校生しか入れないという超エリート高だ。
そして僕も今日からこの学園の一生徒として暮らしていくことになる。
とは言っても僕は超高校級の幸運といって、全国の高校生から無作為に選ばれた一人の生徒というだけで、
僕自身は何かがすごいという訳じゃない、精々前向きなのが自慢な何処にでもいる普通の高校生だ。
……いやちょっと変わっている所もあるか。
僕は視線を自分の胸に移す。今はサラシで巻かれていて分からないが、取れば膨らみが分かるサイズの胸だ。
そう、僕は女の子だ。ただし、女の子歴は一年にも満たない程度だけど。
半陰陽という男であり、女でもある状態の僕は生まれ、だけど男性器があったために男として育った。半陰陽と分かったのは中学三年の夏に股から血が出たからだ。
そして病院でホルモンの関係で男のままでは長生きはできない、生きていくためには女にならないといけない、と宣告された。
僕は家族と相談し、悩みながらも女の子として生きることを選んだのだ。
まあ、色々と衝撃的な出来事ではあったけれど、食べ物や趣味の変化は起きず、
体つきが女の子になった事以外はそのままだったので、そこまでショックではなかった。
リハビリの関係でクラスの皆と一緒に卒業できなかったことが一番ショックだったくらいか。
とにかく、ちょっと変わった過去はあるけれど能力的に見れば平凡であることは間違いない。
上手くやっていけるだろうか、という不安は確かにある。
けれど、それ以上にこの学園での生活は素晴らしいものになるだろうと予感がする。
そんな希望を抱きながら、僕は学園の中に足を踏み入れた。
そして……
・
・
・
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???「……、………!」
ユッサユッサ
苗木「……ん、ここは?」
誰かに肩を揺さぶられ、僕は目覚めた。
???「やっと目覚めたかね。まったく、君は入学式を寝過す所だったぞ!」
入学式。その単語を聞き、慌ててこの部屋──どうやら食堂らしい──の時計を見ると8時15分を差していた。もしかして遅刻?
???「他の者は皆体育館に向かっている。僕達も急いで向かうとしよう」
そう言って彼は僕をつかみ、歩き出した。
強引だなぁ、思わない所も無い訳じゃないが、寝ていたのは事実なので文句のいいようが無かった。
このSSまとめへのコメント
ふむ、これならコロシアイしないな