ノーゲーム・ノーライフ ?ゲーマー兄妹は人類種の天敵に挑むそうです? (8)


遥か太古の昔、後に“人類種(イマニティ)”と呼ばれる生物――人間が、世界を席巻していた時代。

大気と土壌の汚染が深刻化した世界において、人類は危機的状況に陥った生活圏から脱すべく『クレイドル』と呼ばれる巨大な空中プラットホームを建造、その中で人としての営みを続けていた。

誰もが、維持されたゆりかごの中で、安寧な生涯を約束されていたはずだった。

しかし、ある出来事を境に、状況は一変する。

クレイドル03の襲撃、そして、アルテリア・カーパルスの占拠。

この後、たった一人のリンクスにより、クレイドルは深刻な出血を強いれられる。

『人類種の天敵』とすら呼ばれた彼は、史上最も多くの人命を奪った個人でもある。


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〔エルキア王城 先王の書斎〕



――【十六種族】位階序列最下位・人類種(イマニティ)。

今でこそ、『十の盟約』によって縛られた種族の中で最も下位たる種族ではあるが、かつては地上で最も力を誇った種族であり、唯一神に恐れられた者達。

かつて人類が、その知恵と頭脳を駆使して発明したとされる技術や文明は、自分達はおろか他種族の存続すら危機に陥らせたと言われるほどで、史実として世界を破滅へと追いやった――。



ステフ「信じがたい話ですわね……」



ステファニー・ドーラ、通称・ステフは、先王の書斎で見つけた、とある書物に目を通していた。

本来この部屋には、先王――彼女の祖父が、魔法や超常能力を有する他種族が行うゲームにおいて、特殊な能力もない“人”の身で勝つ方法を暴くために彼が遺した、生涯を賭した記録の全てが収められている。

ところが、時系列に並ぶその全ての書物の中に、奇妙なロゴマークが刻まれた歴史書が入っていた。

気になったステフが中身を覗いてみると、その内容は今まで自分達が知っていた『人類種』とは、余りにもかけ離れた叙述がなされていた。



ステフ「……『大戦』より遥か昔、人類はその版図を全世界に広げ、幾度となく戦いを続けていた……」



――そして、あるたった一人の人間が、ただ理由もなく、無差別な殺戮を行った。

それによって犠牲になった者の数は、おおよそ20億人。

実に、当時存在していた人類の過半数以上を消し去った。

人間が、同じ人間を殺し尽くすという理解もできない行動に、誰もが恐怖した――。



ステフ「……何で、こんなものがお祖父様の書斎に……」



ただでさえ疲労が溜まっていたステフは、あまり気持ちの良くない昔話を読むのを止めた。



ステフ「現状で有益な情報は、ありそうじゃありませんわね……」



途中まで読んでいたページの次に、人型を模した謎の構造物が写った“写真”を見落としたまま、ステフは書斎から出て行った。

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