イリアステル滅四星でフランダースの犬 (33)
青年ブルーノと、パラドックスは、ネオドミノシティから、少し離れた所に住んでいました
二人はブルーノの祖父であるZ-ONEという老人とともに、小さなアーククレイドルで暮らしていました
ブルーノは幼いときに両親を亡くし、Z-ONEがこの少年を引き取ったのです。
Z-ONEはとても年老いており、過去の戦いで足を失い満足に歩けない状態でした
そのためブルーノは、パラドックスとZ-ONEを養うために必死に働いていました
彼らはとても貧しい生活を送っていましたが、それでも決して不満を言わず
一日にパンのかけらと時機神を少しという生活に満足しました
Z-ONE「すいません…私のせいで…」
ブルーノ「謝ることはないよ」
パラドックス「君が責任を感じる必要はない」
ブルーノのたった一つの望みは、ずっとパラドックスとZ-ONEと一緒に暮らせることだけでした
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パラドックスは、ブルーノ達と会う前は、プラシドの手により、重たい金物を積んだT・666を引かされました
このプラシドはひどく残酷な男で、パラドックスにろくに食事を与えず、彼を剣でさしました
プラシド「早く歩け! このウスノロ!」
パラドックス「…」
しかしパラドックスはとても頑丈な男だったので、なんとか死ぬことなくこの生活に耐えていました
ところが、奴隷扱いされてから2年経ったある日、とうとうパラドックスは倒れてしまいます
その日パラドックスは丸一日食べ物も飲み物の与えられていませんでした
パラドックスが道ばたで倒れたその日は、奇しくもネオドミノシティで開催するデュエルの大会の最後の日で
プラシドは早くネオドミノシティに着きたくてしょうがありませんでした
だから、どうしてもパラドックスが動かないことがわかると
プラシド「ならそのままのたれ死ぬがいい!この役立たずめ!」
と言い残して、彼を放っておいて、自分でT・666を押しながら行ってしまいました
プラシド「くそっ…、こんなに重いものを私一人で運ぶのか…」
パラドックスが今にも死にそうな時、ブルーノがZ-ONEを連れて通りかかりました
ブルーノ「Z-ONE、彼…今にも死にそうだよ」
パラドックス「ううっ…うっ…」
Z-ONE「ブルーノ、水を与えなさい」
ブルーノ「うん」
これが、ブルーノとパラドックスの運命の出会いでした
ブルーノ「ほら、水だよ」
パラドックス「うっ…、た…助かっ……た…」ガクッ
ブルーノ「あ、大丈夫ですか!?」
Z-ONE「黄を失っているだけです…しかしこのままではまずいですね…」
Z-ONE「つれて帰って介抱しましょう」
ブルーノ「うん、わかった」
ブルーノはパラドックスをつれて帰りました
パラドックスは死にかけていましたが、Z-ONE達の看護の甲斐あって、何週間も経ったのち、ようやく直りました
パラドックス「ブルーノ、そしてZ-ONE…、倒れていた私を介抱してくれて感謝する」
パラドックス「この礼をどう返したら良いのか…」
ブルーノ「そんな、礼なんて」
Z-ONE「ところであなたはこれからどうするのですか?」
パラドックス「…私にはもう帰るところはない、あつかましいが私をここにおいてもらえないだろうか?」
パラドックス「もちろんタダとはいわない、できる限りの事をしよう」
ブルーノ「うん、別に構わないよ! 今日から君は僕たちの家族だ!」
このアーククレイドルの主でブルーノと一緒に暮らしているZ-ONEはネオドミノシティに時械神を売りに行き
その金で生計を立てていました
パラドックスが元気になったとき、Z-ONEはすでに100歳になるころでした
Z-ONE「ううっ…足が…」
パラドックス「無理をするな、Z-ONE」
Z-ONE「パラドックス、ブルーノ!?」
パラドックス「この老体だ、それ以上仕事したら体が壊れる」
ブルーノ「後は僕たちに任せてゆっくり休むんだ」
Z-ONE「…すいません、迷惑をかけてしまって…」
パラドックス「謝ることはない家族だから当たり前だ」
とうとうZ-ONEが年と古傷のために歩けなくなると、ブルーノとパラドックスが祖父の代わりに
時械神を売りに行くようになりました
ブルーノは日々をパラドックスとともに暮らしました
ブルーノ「パラドックス、どうだった?」
パラドックス「だめだ…、給料はこれしか手に入らなかった…」
ブルーノ「それだけあったら十分だよ」
Z-ONE「すいません二人とも…私が不自由なばっかりに…」
ブルーノ「Z-ONEが謝る必要はないよ、僕たち二人で力を合わせるから、ね」
パラドックス「ああ…」
ブルーノには一つの夢がありました
それはネオ・ニュー・アーククレイドルの中にある布で隠されている何かを見ることでした
ブルーノ「あれが見られたらいいね、パラドックス」
あれとは何か、それは布で隠されてあるデルタイーグルでした
このデルタイーグルは、お金を払わなければ見ることができなかったのです
ブルーノ「いつかたくさんお金を手に入れて、デルタイーグルを見るんだ!」
ブルーノはその夢を見ることを目標に、今日も仕事をして金を稼ぎました
ブルーノはD-ホイールに強い関心を持っていました。彼はとても才能ある少年でした
時間があるときはいつもD-ホイールのことばかり考えていました
ブルーノ「さて、コンクールに出すD-ホイールはどんなのにしようかな…」
ブルーノ「そうだ! アポリアにもD-ホイールの話をしよう!」
ブルーノが夢を語るもう一人の相手は、アポリアという男でした
アポリアは近くに時械神畑があるアーククレイドルに住んでいて、父親はホセで、この町一番の裕福な男でした
アポリアはかわいらしい八重歯に赤い瞳をした美しい青年で、町ではとても人気がありました
アポリアは、自分の立場のことなど考えもせず、ただ楽しくブルーノとパラドックスと一緒に遊んでいるのでした
ブルーノ「本当、アポリアと一緒にいるだけでも楽しいよ!」
アポリア「私もこれほど愉快に感じたことはない」
パラドックス「はははっ…」
ブルーノ「そうだ、実はアポリアのために作ったD-ホイールがあるんだ、見るかい?」
アポリア「気になるな、どんなものだ?」
ブルーノ「それはこれだよ! ジャジャーン!」
アポリア「おお、これは!」
ホセ「随分見事なD-ホイールだな」
アポリア「!? ホセ…!」
ブルーノがアポリアのD-ホイール、トリニダードウロボロスを見せた時
アポリアの父、ホセがやってきて、怒ったようにブルーノからトリニダードウロボロスを取り上げました
ホセはアポリアがブルーノと遊ぶのが嫌だったのです
ホセ「貴様…、貧乏人の癖にしてワシのアポリアとくっつくな」
ブルーノ「そ、そんな…」
ホセ「アポリアもだ、こんな小僧と一緒にいるなどとわしが許さん」
アポリア「っ………」
ホセ「…しかし見事なD-ホイールだ…、このまま持って帰ると泥棒のように思えるな」
ホセはそのD-ホイールがうまく作られていたので、ブルーノから買い取ると言いました
ホセ「せっかくだから買い取ろう、いくら欲しい? 好きなだけ渡そう」
ブルーノ「いりません…、アポリアのD-ホイールでお金を取りたくないです」
アポリア「ブルーノ…」
ホセ「ならこれはワシからのプレゼントとしてワシがいただこう、行くぞアポリア」
アポリア「…ああ」
ブルーノ「…」
ホセは金を引っ込め、トリニダードウロボロスを持ったままアポリアを連れて帰りました
ホセはアポリアからブルーノを遠ざけようとしました、アポリアと何かあるといけないと思ったからです
彼も彼と一緒に住んでいるルチアーノもブルーノの容姿や礼儀正しさは気に入っていましたが
ホセは貧乏であるブルーノが、アポリアに近付くことを良しとしなかったのです
ブルーノ「…やっぱりそうだよね、貧乏である僕がアポリアと一緒にいちゃいけないよね」
ブルーノ「ごめんアポリア、これもアポリアのためだ…」
心優しいブルーノはひどく傷付き、アポリアと会わなくなってしまいました
次の日
アポリア「ブルーノ!」
ブルーノ「来るなアポリア!」ダッ!
アポリア「ブルーノ!?」
ブルーノ「僕は君と一緒にいちゃいけないんだ、これもアポリアのためなんだ…」
ブルーノ「君は僕より礼儀正しくて地位が高い人と一緒にいるべきなんだ」
ブルーノ「僕のことなんて忘れて本当の幸せを見つけるんだ!」
アポリア「ブルーノ…」
ブルーノ「行けええええええええええええ!アポリアアアアアアアアアア!!!!!」
アポリア「ブルーノ!? ブルーノオオオオオオオオオ!!!!!」
アポリアがブルーノに駆け寄っても、ブルーノは彼をなだめてさっさと家に帰ってしまいます
アポリアもブルーノと同じように悲しみました、アポリアはブルーノを愛していたのです。
アポリア「ホセ! 君の身勝手なわがままのせいでブルーノが傷ついているじゃないか!」
アポリア「君は罪悪感とか感じないのか!?」
ホセ「人の心などもう捨て去ったわ」
アポリア「…なんという頑固な…」
アポリア(ブルーノ…、今はまだダメだがいつかきっとみんなと一緒に暮らせる日が来る)
アポリア(その時になったら、思う存分共に語ろう)
一方その頃ブルーノはD-ホイールを作っていました
ブルーノ「さて、今日も頑張って作業に取り掛かろう」
ブルーノは大きな夢を持っていました
いつか偉大なD-ホイール職人になり、大きな家を持つ
その傍らにはアポリアがいて、Z-ONEとパラドックスと一緒に暮らす
それはあまりにも現実性のない夢でしたが、ブルーノはやがてそうなることを固く信じていました
そして希望を抱きながら、今日もD-ホイールを作っていました
ネオドミノシティでは、年に一度、D-ホイールのコンクールがありました
そのコンクールに入賞すると、賞金がたくさん手に入ります
ブルーノはこのコンクールのためにD-ホイールいました
しかし彼の作ったD-ホイールは未熟で、多くの欠点を持っていましたが、作った人の愛がこめられている素晴らしい出来でした
ブルーノは春からずっとこのD-ホイールを作っていましたがそれを知っていたのはパラドックスだけでした
Z-ONEは走るより飛ぶほうが好きなので言ってなかったし、アポリアはもはや失われたに等しかったからです
いよいよ冬も本格化し、寒さの厳しいその日、ブルーノはD-ホイールを持ってネオドミノシティへ行き
それを作品を提出するアーククレイドルの入り口に置いてきました
作品を出してしまうと、自分が作ったD-ホイールが、偉いD-ホイーラーたちに認められることなどあるだろうかと不安になりました
それでもブルーノは、勇気を奮って小さなアーククレイドルに帰りました
冬は白い雪に覆われ、道は凍り、また仕事をすることになりました
ブルーノは仕事のし過ぎで足腰を痛め、パラドックスももともとボロボロだったからだがもっとボロボロになりました
ある時、そんなパラドックスにZ-ONEが手を差し伸べて言いました
Z-ONE「私はもうじき、命を絶ちます」
Z-ONE「もし私がいなくなったら、ブルーノの面倒を見てくれませんか?」
パラドックス「ああ、この命に代えても、ブルーノのことを守ろう」
Z-ONE「よろしくお願いします」
パラドックスとZ-ONEは約束しました
一方ブルーノは仕事帰りの道を歩いていました
ある雪の帰り道、ブルーノは道で黄色い時械神を拾いました
それはどこも傷んでいない、とても美しい時械神でした
ブルーノ「いい時械神だ、誰のだろう?」
ブルーノ「あ、名前が裏に書いてある…アポリアのか…」
ブルーノ「でももうアポリアには…そうだ!」
ブルーノ「こっそり置いていけば遭わなくて済むか!」
ブルーノはアポリアのアーククレイドルに行き、窓に時械神を置いていき、そのまま帰っていきました
ブルーノ「じゃあね、アポリア…」
その晩、不幸にもホセの時械神畑が火事になり、多量の時械神が焼失しました
ホセ「ワ、ワシの時械神畑が…」
ルチアーノ「マジでふざけんなよ!誰やったんだよ!?」
ホセ「今カメラで確かめる、これで犯人を見つけてやる!」
ルチアーノ「大体がいかれちゃってるけど?」
ホセ「いや、一つだけ無事なのがある…」
ホセ「どうやらブルーノの仕業か、アポリアの部屋の窓に何かを置いている、これが火元だろう」
ルチアーノ「いやこれどうみても時械神でしょ、あいつがそんなことするわけないじゃん」
ホセ「いいや、間違いなくブルーノだ、大方ワシがアポリアを近づけさせようとしなかったから復讐をしたのだろう」
ルチアーノ「そんなわけないじゃん、頭おかしいんじゃねーの?」
ホセ「いいや、ブルーノだ、間違いない!」
確かにブルーノはその晩アポリアの家に行きましたが、もちろんブルーノはそんなことをしたりしません
けれどホセは、彼はアポリアとの交際を止められたので、それを恨んでやったのだと町中に言い触らしました
住人たちはそれを信用しませんでしたが、ホセを敵に回す者はおらず、ブルーノは彼らから冷たい目で見られるようになりました
ブルーノ「そんな…どうして…」
ブルーノ「僕は悪くないのに…何で僕ばっかこんな眼に…」
ブルーノは孤立し、傷付きました、鬱になって仕事をやめ、収入も減り、生活は苦しくなる一方
ブルーノはもはや誰とも関わりを持とうとせず、苦しみの中、ただ思うのでした。もしもD-ホイールが入選したら…と
それが唯一の希望であり心の支えでした
しかしとうとう、ずっと寝たきりだったZ-ONEがとうとう息を引き取りました
Z-ONE「ブルーノ…、パラドックス…、あなたたちに満足な生活を与えられなくてすいません…」
ブルーノ「ううん…、僕はZ-ONEと一緒にいただけでも満足だよ」
Z-ONE「ふっ…、嬉しい言葉です…」
ブルーノ「だからこれからもずっと一緒に…」
Z-ONE「残念ですが…、その約束は守れないようです…」
ブルーノ「Z-ONE!?」
Z-ONE「一足先に…逝ってきます………」ガクッ
ブルーノ「Z-ONE!!!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
パラドックス「いけない!? Z-ONEが息を引き取ったせいでアーククレイドルが崩壊する!」
パラドックス「脱出するぞ、ブルーノ!」
ブルーノ「…Z-ONE…」
ブルーノとパラドックスは脱出しました
そして崩壊したアーククレイドルを見て、涙を流しました
ブルーノ「パラドックス、今日はD-ホイールコンクールの入選発表日だ」
ブルーノ「これさえ通ればもうひもじい思いをしなくても済む」
パラドックス「受かれば良いな、いや、きっと受かるさ」
ブルーノ「うん、Z-ONEにも見せたかったよ」
二人はコンクールの発表があるアーククレイドルに行きました
そしてようやくの思いで辿り着いた少年を待っていたのは、高く掲げられた入選者のD-ホイールでした
ブルーノ「そ、そんな…これは…僕の作ったD-ホイールじゃない…」
パラドックス「ブルーノ…」
ブルーノ「ああっ…」
ブルーノ「全て終わってしまったんだ、パラドックス…もうなにもかも…」
パラドックス「ブルーノ…」
ブルーノは、大好きなおじいさん、アポリア、住んでいたアーククレイドル、そしてコンクールに当選するという希望
それを全て失ってしまいました
失ったブルーノはパラドックスを連れて、行く当てがないまま歩き出しました
雪の降る道を住み慣れた町を、二人は目指して歩いていました
ブルーノ「ううっ…寒いよ、パラドックス…」
ブルーノ「…パラドックス?」
パラドックス「ブルーノ、これを見てみろ」
ブルーノ「これは…財布?」
パラドックス「身分証明書にはホセと書かれているようだ」
ブルーノ「ホセのか…、パラドックス、届けに行こう」
パラドックス「いいのか?散々ひどいことをされたのだぞ」
ブルーノ「だからと言ってそのままとっちゃうのはいけないよ、それに届けなかったらアポリアも悲しむと思う」
パラドックス「優しいのだな、ブルーノ」
パラドックス「わかった、君が言うのなら届けに行こう」
ルチアーノ「財布落とすなんてあいつバッカじゃないの!?どうするんだよ一体!?」
アポリア「このままでは暮らしていけなくなってしまう」
ルチアーノ「貧乏なんてまっぴらごめんだよ! マジでどうしたらいいんだよ!」
ルチアーノが嘆いていると、ドアからノックが聞こえました
ブルーノ「ごめんください」
ルチアーノ「ブルーノ、どうしたんだ?」
ブルーノ「パラドックスが今夜この大金をみつけたんです、どうぞ」
アポリア「あ、ああ…礼を言う」
ブルーノ「パラドックス、ちょっとここで待っててくれないか? 用事があるんだ」
パラドックス「用事だと?」
ブルーノ「うん、それじゃあ」ダッ!
パラドックス「おい待つんだ!」
ヒュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
パラドックス「ううっ…なんという吹雪だ!」
アポリア「これでは外にもでられん」
ルチアーノ「あれ? でもなんか人影がこっちに向かってくるよ」
パラドックス「ブルーノか!?」
ホセ「ワシだ」
ルチアーノ「なんだホセか」
ホセ「ハァ…これだけ探しても見つからんとは…もう絶望しかない…」
ホセ「それと何故パラドックスがここにいるんだ?」
ルチアーノ「お前が落とした財布をブルーノたちが見つけたんだよ」
ホセ「何!?」
ルチアーノ「どうする? これでもブルーノをまだ家に入れないつもりかい?」
アポリア「ホセ、君のやっていることは一人の誠実な青年を苦しめているだけに過ぎない」
アポリア「彼はその気になれば金を奪えた、だが奪おうとはしなかった」
アポリア「君は彼の全てを奪ったが彼は君の大切なものを返したんだ、いい加減に眼を覚ませ!」
アポリア「君のやっていることは一人の青年を君の嫌いな絶望に陥れているということを!」
ホセ「お…おお…」
ホセは二人の話を聞き、改心しました
ホセ「ワシは…なんて愚かなことをしていたのだ…」
ホセ「ワシはあの青年に絶望を与えていたのか…」
ルチアーノ「おせーよホセ、いまさら気づいたのかよ」
ホセ「ルチアーノ、アポリア、彼を今すぐにでも見つけてここに連れて来よう、彼はワシらの家族同然だ」
アポリア「本当か!?」
ホセ「ああ、パラドックス…彼は今どこに?」
ホセ「…パラドックス?」
アポリア「さっきまでいたはずだが…」
ルチアーノ「ねぇ、ドアが開けっ放しだけど、最後に開けたの誰?」
アポリア・ホセ「何!?」
ヒュウウウウウウウウウウ
アポリア「まさかパラドックス…いけない!」ダッ!
ホセ「待つんだアポリア!」ダッ!
ルチアーノ「いってらっしゃーい」
ヒュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
パラドックス「クッ…、凄い吹雪だ…」
パラドックス「前が…見えん…手の感覚が…」
パラドックス「こんなことなら…コートでも借りるべきだったか…」
パラドックス「ブルーノの行きそうな場所は…あそこしかない…」
パラドックスはブルーノが行きそうなところ、ネオ・ニュー・アーククレイドルに行きました
ネオ・ニュー・アーククレイドルの扉は開け放たれていました
パラドックス「や、やはりこの中に…」
パラドックス「ハァ…ハァ…み、見つけたぞ…」
ブルーノは石畳の上に倒れており、パラドックスが駆け寄ると低い叫び声とともに彼を抱きしめ、こう言ったのです
ブルーノ「パラドックス、ふたりで横になって一緒に死のう、誰も僕たちのことを望んでないんだ」
ブルーノ「希望なんて幻想に過ぎないんだ」
パラドックス「違う! 絶望の先に一筋の希望の光はある、聞いてくれブルーノ…」
パラドックス「ホセがお前を家族として迎え入れてくれるんだ!」
ブルーノ「うん…ありがとうパラドックス…これからも一緒に…」
パラドックス「ブルーノ…聞いているのか? もう金やアポリアの心配は…」
ブルーノ「ははっ…、なんて言ってるのかわからないや…」
パラドックス「ブルーノ…まさか…耳が…」
ブルーノはこの寒さで耳をやられてしまいました、もう彼にはパラドックスの声が届きません
パラドックス「ブルーノ…うぅ…」
パラドックスの目に涙が浮かびました。それは、少年のために流した涙でした
パラドックス(Z-ONE、すまない…約束はどうやら守れそうにない…)
パラドックス「ブルーノ、それが君の選んだ未来なら…私は君と共に…」
パラドックス自身は、ブルーノの腕の中でとても幸せだったのです
いよいよ二人が死の眠りに落ちかけたその時でした
突然雲間から月が顔を覗かせ、闇を照らし出したのです
その光は暁のように明るく、今ブルーノの前にくっきりと、伝説のD-ホイール、デルタイーグルが現れました
ブルーノ「とうとう、見たんだ…とうとう見たんだ! デルタイーグル!」
ブルーノは大声で叫びました、それはほんの一瞬のことでしたが
ついにブルーノは夢にまでみたデルタイーグル見ることができたのです
ブルーノ「神様が最後の最後に希望を与えてくれたんだ…」
ブルーノは喜びました
その絵を見た後、ブルーノとパラドックスは天から何かが舞い降りてくるのを見ました
それはブルーノ達を迎えにやってきた大量の時械神でした
その中で一体の時械神は、ブルーノにサングラスを渡しました
ブルーノは何も言わずにサングラスをかけると、アンチノミーになりました
アンチノミー「パラドックス、共にいこう…もうこの時代には私たちの居場所はない」
アンチノミー「私たちの新天地へ行こうではないか」
パラドックス「ああ、私は君と永遠に共にいる、どこまでもだ」
アンチノミーとパラドックスの魂は、デルタイーグルに乗って、時械神たちと一緒に天へ上りました
その後、ホセとアポリアネオ・ニュー・アーククレイドルに行きました
ホセ「ブルーノは…!?」
アポリア「…これは」
ホセ「むぅ!?」
アポリアたちはブルーノとパラドックスの肉体を見つけました
アポリア「ブルーノ………ブルーノ…!」
ホセ「おお、ブルーノよ…許してくれとは言わぬ…」
ホセ「悔やんでも悔やみきれん…ただ謝らせてくれ、お前のために壮大に弔う…これがワシができる唯一の償いだ…」
アポリア「ブルーノオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
アポリアとホセは泣き叫びましたが、二人はもう目を覚ますことはありませんでした
二人はZ-ONEがいる遠いところへ行ってしまったのです
そこではもう辛い思いも悲しい思いも、お腹が空くこともありません
いつまでもずっと、幸せに暮らしましたとさ
おしまい
青年ブルーノと、パラドックスは、ネオドミノシティから、少し離れた所に住んでいました
二人はZ-ONEという老人とともに、小さなアーククレイドルで暮らしていました
ブルーノは幼いときに両親を亡くし、Z-ONEがこの青年を引き取ったのです。
Z-ONEはとても年老いており、過去の戦いで足を失い満足に歩けない状態でした
そのためブルーノは、パラドックスとZ-ONEを養うために必死に働いていました
彼らはとても貧しい生活を送っていましたが、それでも決して不満を言わず
一日にパンのかけらと時機神を少しという生活に満足しました
Z-ONE「すいません…私のせいで…」
ブルーノ「謝ることはないよ」
パラドックス「君が責任を感じる必要はない」
ブルーノのたった一つの望みは、ずっとパラドックスとZ-ONEと一緒に暮らせることだけでした
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