貴樹「人生の墓場…か」(85)

秒速5センチメートルの話はもう記憶の彼方だ。

あの踏切で彼女「らしき」人とすれ違ってから一年が経った。

今や僕にも愛すべき人がいる。

あの日から数カ月、今もあの踏切を新宿行きの快速列車が走る。

花苗「貴樹、どうしたの?」

貴樹「…何でも無い。」

花苗と絡ませた手の薬指には、花苗の薬指に付けてある銀色に光る指輪と同じものが付けらている。

桜の花弁が、絡ませた指の近くを通り過ぎていく。僕が桜の花弁をつかむことは、もう無い。

花苗「いつも貴樹は『何でも無いって』言うよね~」

貴樹「…考え事してた」

花苗「少しは素直になってほしいな、もうすぐ結婚するんだし。ねえカブ?」

カブと言いながら足元の犬を見る。カブは数ヶ月前、つまり花苗と再会したすぐ後、死亡してしまった。今いるカブは花苗がこっちに越してきたときに新しく飼い始めた柴犬だ。

貴樹「悪いな花苗。そういえば前から聞きたかったんだけど、新しく飼い始めた犬にまたカブって…どうなの?」

あわてて話を変える

花苗「別にいいじゃない。ね~カブ(二号)?」

カブ(二号)「わふ?」

話を分かっているのかどうかわからないが、いつもカブは返事をする。小首を傾げる動作がいちいちかわいい(花苗談)

自分たちの横を子供が近づいてくる。かわいらしい二人の小さな小さなカップルだった。

花苗「ひさしぶりだよねー、貴樹が散歩に行こうって言うのは」

貴樹「たまには家から出た方がいいだろ?」

花苗「あなたがそういうこと言う~?仕事も家でしてるくせに」

貴樹「好きな仕事だからいいの」

サムズシステムを辞めた後、オンラインでの仕事に転職した。宇宙関連の仕事だ。

貴樹「種子島に居た時から宇宙関連の仕事に就きたいと思ってたし…jaxaは落ちたけどっと?」

よく見ると二人の小さなカップルがこっちを見ている。

女子「澄田先生。おひさしぶりです!」

男子「この前はどうも!」

小学六年生位だろう。

花苗はこちらに越して来てからもしばらくの間、看護師としてアルバイトだが仕事を続けていた。その時の患者のだろう。

髪の長い女の子が積極的に話している。隣の男の子は顔を赤らめて照れているようだ。

貴樹(ああ懐かしいな)

よく見ると二人は話している間でも手をつないでいる。

少し花苗にからかわれているようで二人とも顔を赤らめている事は決してない。

手をつなぐ事は、余りなかったけれども、少し昔を思い出す。

花苗「…き…かき…貴樹」

貴樹「っああ?」

花苗「もう、また考え事していたの?」

貴樹「…ちょっと昔の事を考えた。ここ、昔の通学路だったんだよ」

踏切はいつの間にか上がっていた、桜も列車が通り過ぎた後なので雪のように花弁が落ちている。

花苗には昔の事はもう喋っている。

もう過去の事は思い出になっている(と自分では思う)

しかしたまに、本当にたまにだが思い出が出てくるのだ。

それに今は以外に重要な事が目の前にあり…

>>4 の下から二行目の赤らめる事は決してない→赤らめても手を離すことは に脳内変換

花苗「また例の話?」

貴樹「うん…」

花苗「もういっそ電話しちゃえば?電話番号わかってるんでしょう?」

貴樹「何言ってるんだよ、花苗だって俺の電話番号わかったって電話しなかったろう?」

花苗「いやそうだけども」

しかもいきなり電話なんて…

花苗「『明里』さんへの電話」

そう今の話は結婚式への参列者への手紙を送ることに関しての話だ。

貴樹「出来るわけがないじゃないか」

花苗「そろそろ出さないと面倒だよ?」

貴樹「いや、まあそうなんだけど…」

貴樹「逃げ出してるのはわかってる、しようと思えばいつでも手紙を送れた」

花苗「マンガ版の電車内のセリフみたいなのいわないように」

貴樹「なにそのメタ発言…てかあの列車内にいた俺の知り合いって水野じゃ…」

花苗「それより…本当にどうするの?」

実はまだ考え終わってない。もうこの踏切で出会えた「かも」しれない事が奇跡だと割り切ってしまったからだ。

やっぱり出すの辞めようか…いやしかし…

いくつもの考えが頭をよぎる。

貴樹「やっぱり出さなきゃ駄目か?」

花苗「私に聞かないでよー」

話している内にまた列車が通過しようとしていた。さすがに一編成しか通りすぎないが、桜が舞うには十分の量だった。

踏切が開き、二人でやっと歩き始める。今も手は離していない。

向かいの道に彼女は立っていない、居るのは自分の横に居る愛すべき婚約者のみ。花弁が包み込むように自分たちを包んだ。

その日の夜はよく眠れそうだ暖かい日差しの中、思った。

今、夢を見ている

花苗と再会した時の夢だ。

今、俺は空から花苗と、半年以上前の自分を見ている(ような気がする)

あの日は色々と疲れていた俺が散歩していた日だった(ような気がする)

水野と別れてから、人の愛情のようなものを求めていた。精神的にも、体力的にも、その求めているものが必要だった。

花苗を最初に見たときは、誰だか分らなかった(花苗は分かったようだが)

一言目は

貴樹「…誰…もしか…して、澄田…いや、そんなはず…」

みたいな感じだった。その時思い出をノートに付けるということをやっており、ノートには「澄田とは会うことはないだろう」と書いてしまっていた。

その後、すぐに家に戻った。人が一人増えて戻ったのは言うまでも無い。

(現在の話は花苗と出会った直後の話です)

澄田と家に帰る、その行為に心の何かが満たされる気がした。

花苗「ここが遠野君の部屋か―」

明るくふるまっている澄田(過去なので名字読み)を見てると言い表せない何かを、すごく、感じる。

花苗『え…本当に?遠野くん?え…ちょっとま…え?』

あのうろたえ様を思い出すと、また薄い笑みを浮かべてしまう。

花苗「ねえ遠野くん、これ種子島包丁だよね…?ってどうしたのその顔」

不思議そうな顔をして澄田が見つめてきた、包丁を持ちながら。

貴樹「こっちに包丁を向けない。」

花苗「あ、ごめん。気になって」

花苗「小説の通りか…one more side 私いいところ無かったのよね」ボソボソ

貴樹「なんか言った?」

花苗「何でもなーい…それよりっ、さっきの二ヤケ面はなに?」

貴樹「ああさっきの…」

貴樹『澄田のおろおろしている姿を思いだしていた』

貴樹「っていったらアウトだよな…」

花苗「貴樹君、声、出てる」

貴樹「っそれよりも、なんで澄田は台所に居るの?」

逃げた。

逃げないと決めていたのはこのころから形骸化していたのだろう。

花苗「えっとね、あ、そうだご飯作ってもいいかな?聞く順番間違えちゃった」

断る理由が見つからない、心が温まるようなこの感覚。水野と別れる最後に持った悲しい気持ちが満たされる。

少し黙っていたのを、澄田は拒否と感じ取ってしまったようで。

花苗「あ、もしかして…邪魔だった?…そうだよね、彼女がいるかも知れないのに押しかけちゃったりして。やっぱ私帰った方がいいよね?」

澄田は酷い勘違い(もとい妄想)をしているようだ。しかしここで自分は感じ取った。

この「奇跡」を離してはいけないと。

離してしまったら、今日や「あの日」のような奇跡はもう二度と起きないと言うことも

そして――――――――――

自分が彼女の愛情を、好意を、存在を

欲していることを、自分では気が付いていた。

貴樹「ちょっとっ、待て!違う、彼女なんていない、俺はっ、澄田の、料理が、食べたい」

どもったり、強く、強調してしまったが一言、一言、確実に言う。これが彼女との生活の一歩となる。そう確信していたのは、何故だろう。

花苗「え、ほんと?」

澄田は、ゆっくりと顔をこちらに向けた。その顔は、花の苗ではなく奇麗に咲いた、満開の花のようだった。

髪が、花弁のように舞う。

その後30分、俺はいつものように台所に立たず、彼女の背中を見ていた。

すごく、凄く、幸せを感じた。ずっといてくれたらいいな…と。そう感じた。

料理が運ばれてきた、暖かな湯気を出す。

出来た料理は(いい意味で)凄かった、「!」マークを出すぐらいに。

見た目も、味も。完璧ではないが、素晴らしく思えた。

花苗「ど、どうかな」

控えめな言い方で聞いてくる。勿論答えは。

貴樹「最高」

花苗「ほんとう?」

貴樹「うん、食べたことないくらい。」

花苗「よかったぁー」

ニコニコと澄田の顔が一段とほころぶ。

看護師をしているという澄田の作った料理は、薄味でとても新鮮だった。

毎日作ってくれたらな…そう考えていた。次に愛する人は、この人だと。体が反応していたのを心の奥底で感じていた。

種子島の、あの時の、澄田と一緒に星を見た時の風が、体を包んだような気がした。

その数日後、澄田は種子島に戻って行った。電話(自分のはphsだが)番号を交換して、とある約束を交わし。

約束は

種子島に観光に来ること、だった。

なんてことはない。

フリーランスの仕事をやっているのだ。いつでも家から出、種子島に向かうことができる。

…明日の朝行こう。

いたずら心にそう思った。

澄田が東京に来た意味は、聞くのを忘れた、もとい聞かなかった。分かっていたとは言わない。きっと自分もそう思っていたからだ。

その日は東京は雨だった。種子島では快晴らしい。

まずは鹿児島まで行かなければならない。持ち物は、着替えの服数枚と、phsとミュージックプレイヤー、それにタブレットpcだ。

小さめなバックに詰めて、家を出る。もう夏が近い。朝のさわやかで少し強い日差しと、少しずつ鳴きはじめた、セミの声が、自分の背中を後ろから押してくれているようだった。

列車に乗りながら、桜の散り、葉の出た桜の並木が緑色のカーテンのように窓を彩っていた。

羽田空港について少し時間が空いた。

久しぶりにダウンロードした曲を聴きはじめた。

片手にコーヒーを持つ。一時期味のしなくなった、スタバのコーヒーも今は昔のように苦いと感じる。

ひとつひとつが自分に入ってくる。その気持ちが久しぶりに感じる。全てが満たされるころ、搭乗窓口が開いた。一歩一歩歩きだす。その感覚が心地よい。

>>17
上から三行目
列車に乗りながら、桜の散り、葉の出た桜の並木が緑色のカーテンのように窓を彩っていた。

列車に乗ってふと外を見た。桜の散り、葉の出た桜の並木が緑色のカーテンのように窓を彩っていた。

いつもの踏切を次は列車から見た。散っている葉や花弁はどこにもなかった。

と変換と継ぎ足しお願いします。

※まだ夢の中です
その後、種子島空港に飛行機がついた。

ターボプロップ特有の軽い音が止まる。

空港を抜けると、空は夕日に染まり、大地は赤く輝いて見えた。

風力発電の風車が遠くに見える。

貴樹「…久しぶりに学校…いや、いつものコンビニにでも行くか。」

しかし交通手段が無い。西之表にしかレンタルバイクが無いからだ。

親の家には連絡をかけないつもりでいるし、カブももう捨ててあるだろう。

しかたが無いので大和バスの西之表行きを待つことにした。

貴樹「」フー

煙草を一本出し、吸う。口腔や鼻腔に煙が回る。



実を言うとまだ、澄田には連絡をしていない

貴樹(ドッキリなんてやろうと思った俺にびっくりだよ)

風に煙がはらむ。空を見上げれば、一羽の鳥が飛んでいた。赤い空を滑空するように。

しかし、行先、信念と思えるものがしっかり見える、迷いのない飛び方で。

遠くから車の音が聞こえる。バスが遠くから来たのが見えた。

バスの窓の外をふと見ると、いつの間にか空は、濃紺と茜色が混ざった色になっていた。

西之表でバイクを借りて、走らせ、アイショップ石堂店に着いたのは7時位の、星が混じった空になっていた。

夏が近いとはいえ少し肌寒い、涼しいのか蝉もないていない。

もう少しで普段だったら、澄田がカブを走らせてくるはずだ。

バイクに寄りかかり、煙草をもう一本吸う。

遠くの風車が、うなりをあげている(ような気がする)

どうやらうなりをあげているのは遠くの方のバイクのようだ。

音がどんどん近づいてくる。

そして目の前で停車…

花苗「あー疲れたー久しぶりに波に乗ったからな―」

こっちに気が付いておらず、なんと横にバイクを止めようとする。

花苗「あれ?この煙草の匂い…」

横をやっと見る。

花苗「!?」

貴樹「やあ」

花苗「」エッ!?オロオロ。。。フハッ!?

いっちゃあ悪いが見ていて楽しい。

貴樹「どうしたんだ、澄田?飲み物買いに来たんだろ。俺も買うから一緒に入らないか?」

花苗「…あ、え…うん、え?」

とりあえず、いつも通りコンビニに入り、飲み物コーナーに行く。

貴樹「ひさしぶりだなぁ…やっぱり、コーヒーかな?でも昔からヨーグルッペも飲んでみたかったし…」

花苗「」

貴樹「飲みあいっこしない?」

花苗「え、う、ウン」

実際明里を今書きたいよな!
花苗「ぢゅー」

貴樹「ちょ、飲み過ぎ」

花苗「ぢゅー」

貴樹「おーい」

花苗「ふはっ」

貴樹「なんでヨーグルッペてアルプス風なんだろうね…はい、もっかい交換」

花苗「う、うん」

貴樹「ぢゅー…ずごごごごg」

花苗「ぢゅーーーーーずごごg」

澄田がすごくかわいい。

花苗「え…っと遠野くんだよ…ね?」

何故か凄く疑われているようだ。

セイカアイスクリームの椅子はまだある(情報提供thk!)

ここだけ時間が変わってないようだ

貴樹「俺は遠野貴樹だ、それ以上でもそれ以下でもない。」

花苗「うん。でも…なんで居るの?」

貴樹「いや、観光に」

花苗「はやっ!?」

貴樹「…「花苗」を驚かしたくて」

一気に真っ赤になった。かわいい。

貴樹「泊まるところ探してるんだけど…知ってるところ無い?」

花苗「今は…どこも埋まってる。」

…予想外。そういえば空から見た海にサーファーが多い気がした。

貴樹「もしかして…シーズン?」

花苗が小さくうなずく。

貴樹「…マジか」

花苗「……私の家でいいなら」

その後の会話は余り覚えていない。

いつの間にか花苗の家の玄関にいた。

澄田姉「あら?遠野じゃない」

一番苦手な人に最初に見つかった。

貴樹「どうも、お久しぶりです」

子供を連れている。

話が固まった。

>>25
一個だけになってて看板壊れちゃってたけどね~
http://beebee2see.appspot.com/i/azuyg_6sbww.jpg


>>27 写真 ←うあああああああああ
※まだ夢の中なんだぜ!

話が止まって数十秒。鈍い音を立ててドアが開いた。

澄田がびくっと驚き、反射的に手をつなぐ。

花苗母「何やってるの、早く入りなさ…三人?」

花苗母がドアから顔を出し、その後すぐに自分に気がついて言葉を詰まらせた。

不思議そうな視線を送り、澄田と自分を舐めるように見る。

不審な目をしていない理由は、澄田と手を繋いでいるからだろう。

最後に、澄田美穂(子供がいるので結婚しているようだが、名字は知らない)を見る。

澄田美穂(以下、澄田姉)は肩を上下に揺らし、アメリカンチックに「さっしの通り」とジェスチャーをした。

※表記の統一 花苗母・花苗姉→澄田母・澄田姉

花苗「あー、東京に言っていたときに会った、高校の同級生の…遠野貴樹くん…です」

貴樹「どうも…」

澄田姉は「会いに行ったんだろうが」という視線を送る。

一方澄田母はと言うと

澄田母「ああ、彼氏か。」

なんてこといってるんだー(棒読み&キャラ崩壊)

澄田は茫然(&急に赤くなっている)澄田姉は「何赤くなってるのよ」という感じだ。

しかしこの発言を聞いて、いつものように何かが死ぬ、ということは無かった。

花苗「お、お母さん!な、何をいtt「はい」」

空気が固まり、変質する。種子島の赤土が、紫になり宇宙に変わる。いま宇宙の中心に居る感覚。

貴樹「そうです…だよね「花苗」?」

宇宙の中には、自分と花苗がいた。

花苗が真っ赤な顔で驚き、そして…

花苗「いいの?」

と言った

貴樹「いいもなにも」

全てが決まったような時間が澄田姉の言葉で締めくくられる。

澄田姉「やっとか」

―――――――その日の夜

澄田の家で泊まることになり、豪勢な食卓に入らせてもらい、お湯を貰って、早めに寝た。

横の布団には、寝間着姿の花苗がいる。

腕で花苗を抱きながら、眠りに就いた。

※夢の中で夢を見てます
いつの間にか、いつもの丘に居た。

老いた太陽が近づき過ぎなほどに大きく見える。見たことの無い星座が今日も輝く。

そしていつも通り、俺の横にはあの女がいる。

今なら見える。その「短い」髪の女を。

遠い遠い、どこかで「長い髪」の女が微笑んでいるような気がした。

貴樹「…っ」

いきなり、起きてしまった。短い髪の彼女を見ようとしたら、だ。

花苗「んあ…遠野…くん?」

起きたのと同時に腕を離してしまったので、起こしてしまったようだ。

※今の状況は夢の中の夢から目を覚ましました。
貴樹「すこし、散歩に言ってくる」

夏では無いのにすごく暑い。風が止まってる。時計を見ると、0時半だ。

散歩するため家を出る時、花苗も行くと言い一緒に家を出た。

遠くの方で、低い音を立てて風力発電の風車の音がする。まるでここだけ風が止まっているようだ。

二人で夜の道を行く。少し歩いたら、いつもの丘についた。

風はまだ吹いていない。

太陽など出ていないし、今夜は新月なので月も出ていない。

が、それとは別の神々しさが、この空間を支配している。

月がないこの夜を、星が一心不乱に主張している。

あの夢と違うのは、月と太陽が無いだけ。横には夢の中の彼女がいる。

…カノジョガイル?何故、俺は彼女がいると思ったのだろう。

横に居るのは花苗なのに、彼女がいると思っている。

まさか…彼女は花苗?夢の中の記憶がよみがえる。

そう彼女は花苗だ。なら長い髪の彼女は?

貴樹(…もうそんな事はどうでもいいのだろう)

今は彼女を愛して見せる。花苗を。

花苗「ねえ、私で良かったの?」

貴樹「何が?」

花苗「えっと、か、彼女のこと」

貴樹「言いも何も…」

当たり前だろう、1レス前に愛するって書いたし

貴樹「花苗は嫌なのか?」

花苗「いや、じゃないけど」

貴樹「ならいいじゃないか」

花苗「でも私なんかが…」

貴樹「じゃあ他の彼女を作れって?無理だよ」

だって…

貴樹「夢の中の彼女は君だったんだから」

花苗「え?」

貴樹「いや、昔からたまにこの丘の夢を見ていたんだけど、一人の女が出てくるんだよ」

貴樹「それが誰だかわからない。顔を見ようとも夢の中では顔を見ることを忘れるんだ」

貴樹「で、今日初めて顔を見れた」

貴樹「それでさ、顔が…花苗の顔だったんだよ」

貴樹「だからじゃないけど…やっぱり僕は花苗が気になってたんだよ」

貴樹「わざと遠ざけていたこともあった。どちらかと言えば、その方が多い」

貴樹「でもさ、最近わかったっていうか」

貴樹「変わったんだよ」

花苗「…」

貴樹「俺は、花苗が好きだ。つきあって、ください」

花苗は顔を赤くし眼を涙でふくらましていた。

そして――――――

飛びつくように抱きつき

キスをした。

そのまま花苗をきつく抱く。

離さないように、全てを絡めるように、全てをつなげるように。

俺はここまで来た。elishが飛び立った日から、この日までに。

次の日

飛行機の時間だ。

花苗が送りに来てくれた。

少ししたら、もう一度東京に来るそうだ。

貴樹が来てから色々なことがあったと花苗は話した。

全てが嬉しく幸せだとも。

花苗「ここで貴樹に言うのは二回目かな?」

高校卒業後、東京に行く時に、最後に花苗と話したところだ。

花苗「貴樹、大好き」

何かが壊れることも死ぬことも無く、言葉を聞き入れ、そして言う。

貴樹「ああ、俺もだ」

そして

貴樹「エンゲージリングって幾らするのかな?」

その後キスをもう一度して別れ。

飛行機に乗る。

ボンバルディアの飛行機だったので少し不安を覚えたが、まあ大丈夫だろう。

空港から手を振る花苗を見た後。

俺は飛行機の中で眠りに就いた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

飛行機の音がする。

ふと見上げれば空に飛行機雲が伸びている。

暗い部屋の中からベランダを見ると、花弁がベランダの中に入り、桜色に染めていた。

明里「…」

あの日を思い出す。列車がすれ違ったあの日を。

※貴樹の馴れ初め編は終わりました
倦怠期に入り、夫との生活は一定の時間を過ごすのみとなった。

朝起きて、朝食と弁当を作り、見送って、家事をして、昼食を作り、家事をして、夕食を作り、夫が帰ってきて、テレビの番組を譲る。

一緒に寝るのも、ほとんど無くなってきた。

これが普通なのだろう。

最近考えるのは、子供が欲しいと言うことと…

明里(踏切の彼は誰だったのだろう)

ということだ。

彼とすれ違った瞬間に、全てが満たされた気がした。

しかしそれはすぐに終わってしまう。

次に出てきたのは、彼は誰か…ということだ。

あの甘い日々の中で、足りないものを補ってくれた彼はだれだったのか、私は知らない。

明里(狭い部屋に居ると少し気が滅入るわね)

久しぶりに散歩をしてみようと外に出た。

前と同じように、井の頭線に乗り下北沢まで行き、小田急線に乗り換え代々木上原まで行く。

桜の絨毯をかつかつかつとハイヒールが小気味良い音を響かせる。

踏切に差し掛かるころ、踏切の向こう側に二人の男女がいるのが見える。

女の方がショートカット。男の方は…

かんかんかんかんかんかんかん

踏切が下りはじめて意識が戻る。

もう渡れない

踏切の向こうの男はこちらをまだ振り向かない。

ショートカットの女は後ろから走ってきた男の子と女の子と話している。

男の方はまだ振り返らない。

煙草を吸おうとこちらを向いて、煙草を出した。

明里(みえるっ――――――――――――――)

その瞬間。轟音が壁となり視界と耳を遮る。一編成が走り過ぎる頃、手前の線路にもう一編成が通り始める。

列車が走り去り、踏切が開いた。視界の奥に二人は見える。でも足を踏み出すことはできない。

男の子と女の子が手を繋いでこちらに走ってきた。

懐かしい。昔を見ているようだ。

踵を返し道を戻る。

全ての音が聞こえない。

そうこの感覚は――――――

明里(転校した時の「一人」ぼっちの感じ…)

明里(私は――――――)

明里(遠野くんと二人で一人分の何かを分け合っていたと思っていた。)
   
   (でも違う。)
   
   (私は「二人分」の何かを一人で使っていたんだ…)

   (彼には何も渡さないで)

家に戻り、小走りに畳の部屋に入った。

右の箪笥の襖を開けた。

中から小さな箱を出して、その箱を開ける。

便せんがはいっていた。

宛先は「遠野 貴樹 さま」

便せんから手紙を出し、読む。

顔には涙が伝っていた。

思い出にしたはずの記憶が、どんどんあふれかえってくる。

涙とともに嗚咽があふれ、気持ちが爆発する。

明里「何をっ、今さらっ」

しかし、頭の中には愛しい日々がどんどん戻ってくる。

ガンガンと頭をたたく音。

泣きつかれた果てに、一通のメールを見て眠りに就いた。

夫「題名 今日は飲み会でかえりませーん 本文 と言うことでよろしく」

朝、鳥の鳴き声で目を覚ました。

頭は重くて、めまいがする。

手には手紙が、髪は乱れ、涙が伝って、顔も酷い。

今日はもう何もする気にもならない。

明里「とりあえず…シャワー浴びよ…」

少しは疲れも飛ぶだろう。

シャワーを浴びると思った通り、疲れが和らいだ。

でも彼の事に関しては変わらない。

どうするにも、何から始めればいいのかわからない。

明里(とりあえず…朝ごはんか)

時計を見ると10時だ。

少し遅い朝ごはんだがいいだろう。

フレンチトーストでも作ろうかとしている時に。

電話は鳴った。

明里「はい、ooです」(明里の結婚後名字知らん)

???『あーあの。oo明里さんは御在宅でしょうか?』

明里「私ですが…」

???『あー、私は、遠野貴樹と申します。』

心臓が震えた。

明里「たかきく…ん」

貴樹『ああ!明里、お久しぶり!』

明里「う…うん、ど、どうしたの?」

貴樹『ああ、実はさ』

   『頼みたいことがあってさ…スピーチなんだけど』

明里「う、うん」

貴樹『結婚の友人代表のスピーチなんだ』

明里「も、もしかして?」

貴樹『うん』

貴樹『俺結婚するんだ』

まだ音は聞こえない。

がちゃん、と音がする。

無意識に、受話器を叩きつける。

私の心に何もかもが悪意となって襲いかかってきた。

私が出来ることは。

その場で泣き崩れるのみだった。

※試験期間に入るため更新速度が遅くなります。

書き忘れ

>>50 音が聞こえない→受話器から声が聞こえない。

踏切が開くのが待ち遠しい。

一両通過するごとに「思い出」が戻ってくる。

また一両また一両と通過する。

一編成が手前の線路を通過し終わる頃、もう一編成が奥の線路を通過し始めた。

桜が巻きあがり、遠い記憶の彼方から、懐かしい思い出が去来する。

桜の舞う勢いがますます強まる。通過列車は最後尾の車両となる。

かつこつかつ

と聞こえるはずの無いヒールの音が聞こえる。

いや、違う。全ての音だ。全ての音が聞こえるのだ。

息づかい、心臓の鼓動、pc枕木のきしむ音、桜の花弁の落ちる音。

自分の中で、音という情報を介して世界と全てを共有する感覚。

そしてその時間で最後に聞こえた台詞が地球を揺らし、鼓膜に届く。

明里「貴樹・・・くん」

踏切が開く

俺らを遮るものはもう無い。

視線を腕から指へ這わせるようにむけると。

明里は恥ずかしそうに指輪を見せる。

二年前くらいなら、自殺するぐらい衝撃的な光景だ。

しかし今なら受け入れられる。

貴樹「懐かしいな、この踏切で明里と会うなんて」

明里「ええ、本当に」

何故明里が悲しいそうな顔で笑うのか、今の俺には知ることもできない。

会話が止まる

タイミング良く踏切も鳴り始めた。

貴樹「少し歩こう、動かなきゃ轢かれて死んでしまう」

ジョークを言ったつもりだった。

明里「私なんて轢かれて死んでしまえばいいのに」

何を言っているんだ、としか思えなかった。

貴樹「何を言っているんだ?ひかれていいと思う人なんて誰もいないだろう?」

明里「だって私はさ、約束を守らなかったんだよ?」

貴樹「約束?」

明里「そう、手紙を送るっていう約束」

「あの日の後、貴樹くんはちゃんと手紙を出してくれた」

「凄くうれしくて、私も夢中になって出した」

「でもね、手紙を出さなくしたのは私からなのよ」

貴樹「・・・」

明里「私は手紙を「一方的」にやめた後も貴方を貴樹くんを想いつづけた。」

貴樹「それは僕もッ!」

明里「私はね、貴樹くんと一人分の想いを二人で分け合っていたと思っていたの」

「でも違った。私は貴樹くんの想いも独り占めにしてたの。」

「手紙をやめた後も私は貴方を想い続けた。」

「そしてね、私が他の人と付き合うときにね、思い出にしてしまったの」

「そのとき何て想ったと思う?」

「貴方はまだ私のことを考えているのでしょうか、よ?」

明里「ふざけんじゃないわよって感じよね」

「私はその後何の不自由もなく暮らした。」

「貴方の想いが私のすぐそばにあるとおもったから」

「そして私は結婚した。」

「夢を見たのよ、結婚式の前に。貴樹くんと最後に出会った夢」

「私は最後にこう思ったの。『貴方の幸せを祈れるくらいに私は貴方とのことを思い出に出来たよね』って」

貴樹「昔の事は思い出になる」

「当たり前の事だ」

「二人分?別にいいさ。何故って、今幸せだからさ」

「大切なのは今なんだよ、明里」

「君は愛すべき夫がいる、僕には妻がいる」

「過去には戻れないし、戻りたいとも思わない」

「花苗・・・今愛している彼女への裏切りになるから」

明里「花苗さんって言うんだ、貴樹くんの奥さん」

貴樹「ああ、今買い物中らしくてね。そこにいる」

「ばれてるぞー」

花苗「あー、ちょと通りにくくて」

貴樹「さて、明里。スピーチ受けてくれるかな?」

足早、矢継ぎ早と言うべきか。

実際にかなり動揺していた

タイミングよく花苗が来てくれたおかげで助かった。

俺は何の為に存在していたのか忘れてしまいそうになるくらい、明里の話は衝撃的だったから。

今は花苗を愛する為、俺は此処にいる。昔の俺は、実際に明里の為に生きていた。

いつか彼女と出会うため、闇雲に宇宙を進むように、人の波を進んだ。

他の人に惹かれないように、ワザと差しのばされた手を叩いた。

花苗のだってそうだ。

告白するな、と目を使って押さえ、そして離れていった。

仕方無い、として全ての気持ちを無にする。

そんな絶望のループに入っていた。

全ては明里の為。

それが全て消えたのだ。

だからこそ過去等振り返らない。今、目の前を見なければ人の波に溺れてしまうから。

貴樹「さあ明里。してくれるかな?」

明里の唇が開き声を出す。

明里「わたしはーーーー」

ベッドの深いクッションに沈む。

隣には貴樹が居る。

手に入らなかったものが目の前に居る。

寝息をたてている姿すら愛おしい。

今日も色々な事があった。でも私は決めている。何があっても貴樹をささえると。

one more side 花苗編スタート and 寝る

支えると言っても何をしていいのかも分からない。それどころか今日会った彼女と貴樹との関係の事も。

私は何も知らない。出来ることは彼の気持ちを受け止めることのみ。

花苗(それでも私が役にたてれるならば)

只、問題がある。

花苗(貴樹って気持ちを打ち明けないんだよなぁ)

いつもそうだ。私はいつも頼ってばかり。

深入りしてはイケナイが、深入りしないと届かない問題が目の前に立ちはだかっていた。

何故いけないをイケナイにしたのかわからん・・・

朝起きると貴樹がpcのキーボードを叩いていた。

それを寝ぼけ眼で貴樹を見た後目覚まし時計を見る。

肌色に少し赤い色を入れたような血色の良い肌が水死して一日流され、陸で一日程安置されたような色に変わる。

花苗(朝ご飯わすれてたっっ!?)

しかし思い出す、何故起きたか。妙にいい匂いが台所から部屋に漂っていたからだ。

花苗(フレンチトースト、かなぁ)

大好物なのですぐかぎわけられた。

そしてホットミルクのかすかな甘い匂い。

時計を再度見る。

10:03

そして頭を押さえて倒れたくなる。仕方がないのでゆっくり倒れ込みゴロゴロ転がる。

日向ぼっこしてたカブがビクッと起きたのは言うまでも無い。

とりあえず貴樹に謝りそして。

貴樹「そこがまたいい」

と言われてしまう。

きゅーんと心がなったのでとりあえず温めなおしたホットミルクを飲む。

※貴樹と両思いになってから花苗はなんかキャラ変わったと言う設定。

てか三十路手前の女がゴロゴロってorz

温かいミルクの中に蜂蜜の匂いが香る。

口に温め直したフレンチトーストをいれる。優しく甘い味が口に広がる。

私はもきゅもきゅと行儀悪く食べながら、有能すぎる夫について考えていた。

花苗(私は和食ぐらいしか上手く作れないんだよなぁ)

もちろん食に関して、だが。

貴樹「花苗」

花苗「んおっ?」

なんか女としてアウトな返事をする。

貴樹「今日は招待状かいちゃうから、一人でゆっくりしていいよー」

画面を見ながら言う。今書いているのは・・・

花苗「明里さん宛の・・・」

そう、最終的に断られたのだ。

なのに出す。

「最後の区切りにしよう」その気持ちが強く伝わる。

今日、ふらふらと行く場所はもう決まっている。

そう岩舟だ。

※で書いてる事をキャラの言葉にした方がいいと思う
それか地の文にするとか

>>71 わかった支援ありがとう
つまり>>69の※の部分を
「私は貴樹くんと両思いになってから性格がーーー」
みたいな感じか

あげてしまったので少し書く。
踏切の出来事の後、明里さんは岩舟に帰省すると言い、メアドを交換して別れた

昨日のうち明日二人で話そうという旨の連絡は取った。

今、岩舟に行くと書きメールを送るとすぐに返信が来た。

明里『遠いよ?』

問題ない新幹線を使えばいい。今と昔は違うのだから。

花苗(そう、違うんだ)

昔は距離に阻まれ時間に阻まれた。しかし。

今は違うのだ。貴樹も、私も子供では無いのだから。
今日はここまで

新幹線を降りて、岩舟に向かう。

日の光はさんさんと降り注ぎ、三十路前の肌を攻撃する。しかし花苗自身気にしないのだが。

首都圏では殆ど見なくなった115系湘南色に乗る。

年期の入った列車は花苗の他に一人、ボックスシートに座った花苗の目の前に居るだけで・・・

花苗(貴樹ッ!?)

俯く灰色のトレンチコートのフードに隠れた顔は確かに貴樹の顔をしている。

俯いた顔の二つの眼に涙を滴らせ泣くのを堪えているようだ。

幻影と分かっていても、手をのばす。
そしてすり抜ける。

貴樹の幼い顔は、絶望に染まっているように見えた。。

そういえば、と昔の貴樹の話を思い出す。

寡黙な寂しがり屋な、彼の辛く、純粋な気持ちに満ちた、恋物語を

その物語は完成しすぎていて、甘くそしてほろ苦さをもっていた。

結婚までの私たちの恋愛よりも甘く濃密な世界を今かいま見ている。

放送が鳴り、列車が止まった。

はっ、と見ると貴樹は消えていた。

岩舟駅に降りると柔らかな春の風が体を包んだ。

suicaを使い駅舎に入るとそこには明里さんがいた。

明里「昨日はどうも、はなしってなに?」

急かすように言う

花苗「あぁ、うーんと昨日の話に関してなんだけど」

明里「だから、私はでる資格なんてないよ。」

顔をしかめて言う。

横のベンチに座る。

花苗「あのさ明里さん。資格って何かなぁ?」

  「昨日も『貴樹くんの幸せを壊した私がそんなところに出る資格なんて無い』って言ったよね」

明里「私みたいに裏切った女が貴樹くんの幸せには入れないって意味だよ」

花苗「・・・」

明里「私が結婚式を挙げたとき、私は彼を呼ばなかったのよ?」

  「なのに呼ばれるなんて・・・」

花苗「えっとさぁ、明里さん。私はさ姉の結婚式、でていないんだよ。それでも私は姉を呼ぶよ?」

  (まあただ単に夜勤で出れなかったわけだけど)

明里「それとは事情が違うじゃない」

花苗「まあね、でも貴樹に関して思いこみすぎじゃない?」

  「軽く考え「何で」」

明里「何であなたはそんなに気楽にいられるの。私はそんなに気楽でいない」

  「それにあなたに貴樹くんの何がわかるの?」

  「私が、本当はそこにいるはずなのに!なんであなたがそこにいるの!?」

花苗「・・・私はさ、別に貴樹のことは貴樹がやればいいと思ってる。でもね、この問題は私の問題でもあるの」

  「私が貴樹とちゃんとつきあい始めたのは約一年前だしね。月日、年月では負けるわー」

  「話始めたのは高校、しかも高校決めた理由は貴樹が進学するから。いやー若いっていいわねー」

  「でもね彼は三年間の間私を見てくれなかった。諦めきれる訳ないでしょ?」

  「で、一年前大人になった私は貴樹のところに行った・・・」

  「私は諦めきれなかったのよ」

  「あのままで終わるのが」

  「もう列車が来るから最後に。貴樹は貴方に手紙を出すわ。それを貴樹は区切りにしようとしてる」

  「来るか来ないかは貴方しだいよ、じゃあ」

何も言わせない勢いで私は歩き始める。

花苗(私のお節介はここまでだから)

家に戻ると貴樹が笑顔でこっちを見た。

花苗「返事、もういったんだ」

貴樹「ああ、これでやっと手紙を渡せる」

貴樹「彼女に渡せなかった、あの手紙を」

花苗「そう、ならそろそろ私を見てね?」

貴樹「花苗、お前を見ていないことなんて一度もない」

花苗「じゃあわたしも何かほしいなぁ」

からかうつもりで言う。

すると貴樹はデスクの上のものいれの中から紺色の箱を取り出す。

花苗「・・・唐突すぎない?」

貴樹「いや、エンゲージ(軍事的な方で)って言うくらいだから」

花苗「それにしてもだよ・・・」

開けるとちいさなダイヤのついた銀色のエンゲージリングがある。

足元でカブが美味しいものかと勘違いして、くるんくるんと回っている。

貴樹「なんか雰囲気も何もないけど。」

  「人生の墓場から天国までの人生、楽しんでいこう」

私は泣いているのか笑っているのかわからない表情で、彼に指輪を付けてもらった。

花苗編おわり

※貴樹視点

空調の利いた部屋でゆっくりと寝ているとドアが開いた。小中高大学時代の友達が入ってくる。

友人1「おーっす貴樹ー結婚おめでとー」

友人2「おめでとー。しっかし今回も誰とつきあってるか言わなかったな!」

友人3「お前は篠原さんと結婚すっと思ったのになー」

昔の思い出で沸き立つ部屋に小さな音が響いた。

明里「貴樹くん」

貴樹「わりぃ!ちょっと外してくれないかな?」

静まり返った友達は「後で説明しろ」と言う視点を向けでていった。

貴樹「渡すものがあるんだ明里」

手紙を一枚見せる。

明里「私も」

と明里もピンクの便箋を見せる

貴樹「やっと届いた」

何の手紙かは見なくてもわかる。

明里「うん、私も」

貴樹「人生の墓場・・・か」

貴樹「こんなとこで渡すなんてな・・・明里」

明里「うん?」

貴樹「いいスピーチ、頼むよ」

明里が頷くのを見、ドアに向かう。心残りはもうない。

スピーチを聞きながら瞼を閉じる。

瞼の裏に景色が浮かぶ。すべてがきっと現実になる。

そう思いながら、花苗の手を握る。

区切りは着いた。この先の物語は今始まったばかりだ。

多分うまく行かないこともあるだろう。それでもーーー

握り返す花苗の手の感触を感じて思う。

もう二度と離さない。と

おわり

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