ヒトミ「負けないッス、ハルカ先輩」 (121)
みなみけのSS
ちょっとしたエロが入るかもしれない
じゃ、始める
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―昼休み―
ナツキ「ヒトミ」
ヒトミ「ん、どうしたナツキ?」
ナツキ「これを食ってみてくれ」
ヒトミ「どれどれ…、おお、一口サイズのケーキか! お前器用だなー」
ヒトミ「味は…。うん…」
ナツキ「どうだ? 正直に言ってくれ」
ヒトミ「甘さが足りないかな」
ナツキ「そうか」
ナツキ「じゃ、今度はこっちだ」
ヒトミ「同じくケーキ…。ん~、こっちは美味い!」
ナツキ「やっぱそうか」
ヒトミ「ちょっと待て、なんで同じケーキでこんなに違うんだ?」
ナツキ「最初に食べたのは普通の奴用、後に食べたのはヒトミ用だ」
ナツキ「激甘が好きだって言ってただろ? だから普通の奴だけ食べてもらうのも悪いからな」
ヒトミ「ナツキ…//」ジーン
ヒトミ「で、でも待てよ。お前お菓子作り苦手じゃなかったか?」
ナツキ「ああ、ハルカ先輩に教わったんだ」
ヒトミ「へ、へえ~」
ナツキ「いけね、この件で先輩に呼び出されてたんだった。じゃあな、助かったぞ」タタッ
ヒトミ「…」
ヒトミ(やっぱりナツキってかっこいい…)
ヒトミ(気がきくし、料理も出来るし、男らしいし…、まあ頭は少しあれだけどさ)
ヒトミ(でも、ハルカ先輩か。最近妙に仲が良いよな)
ヒトミ(ハルカ先輩も綺麗だし、スタイルいいし、何でも出来るし、女神みたいな人だから)
ヒトミ(もしかして、もしかするかも…)
ヒトミ(いや待て、いくらナツキでもハルカ先輩とではスペックが違いすぎる)
ヒトミ(大丈夫だよな…。うん、大丈夫だ)
―屋上―
ヒトミ(なんて言いながら、結局気になって来てしまった)
ヒトミ(場所はここで間違いないはず。二人は…)
ヒトミ(あ、いた! いたけど…)
ヒトミ(え!? ハ、ハルカ先輩がナツキに抱きついてる!)
ヒトミ(嘘だろ、ハルカ先輩がナツキを…!)ガサッ
ヒトミ(しまった! に、逃げなきゃ!)コソコソ
ハルカ「…」
ナツキ「どうしたんスか? ハルカ先輩」
ハルカ「ううん、何でもない。それよりありがとね、転びそうな所を助けてくれて」
ナツキ「これ位ならお安い御用ッス」
ハルカ「普段はこんな段差で転んだりしないんだけど…、何でだろ?」
ハルカ「ナツキくんがいるから、油断しちゃったのかな。あははっ」
ナツキ「お疲れなのでは? 無理はしない方がいいッス」キリッ
ハルカ「あー、うん、そうだね…」ガクッ
ナツキ「?」
―教室―
ヒトミ「はあ…」
ヒトミ(確かにナツキはかっこいいけど、まさかハルカ先輩がナツキの事を好きになるなんて)
ナツキ「ヒトミ」
ヒトミ「ん~?」
ヒトミ(ナツキのこの目は、年上の女性に抱きつかれて喜んでる目…)
ナツキ「元気が無いみたいだが、どうした?」
ヒトミ「…誰のせいだと思ってるんだよ! バーカ!」タッタッタッ
ナツキ「?」
ヒトミ(どうしよう、このままじゃナツキとハルカ先輩が…)
ヒトミ「そんなの嫌だ…」ボソッ
マキ「あれ、ヒトミじゃん。どうしたの?」
ヒトミ「あ、マキ先輩」
ヒトミ(そうだ、マキ先輩に色々聞いてみよう)
ヒトミ「あの、もし仮にッスよ?」
ヒトミ「マキ先輩の好きな人が年上の女性に行為を持ってたら、先輩ならどうするッスか?」
マキ「え? う~ん、そうねー」
マキ「私だったら、その女性の事を調べるかな」
マキ「それで、自分に足りないところを埋めるの」
ヒトミ「なるほどー。と言う事は、マキ先輩は大人っぽい女性が好きな男性に惹かれてるんスね」
マキ「…どういう意味かな、それ?」
ヒトミ「私も頑張るッス。では、失礼するッス」
マキ「あ、ちょっと…」
マキ「何だったんだろ、今の」
速水「マキー、何してんの?」
マキ「速水先輩。実はかくかくしかじかで」
速水「ふ~ん」ニヤリ
マキ(あれ、私余計な事言った?)
速水「あの子がね~。よし、恋が実るように、私たちも協力してやろうじゃない。早速準備をしないと」
マキ「あの、部活は…」
―みなみけ―
ヒトミ(結局、ハルカ先輩の家に来てしまった)
ヒトミ(だけど、ここで先輩を観察すれば、私が何をしたらいいのかがわかるはず)ジーッ
ハルカ「~♪」
ヒトミ(鼻歌歌いながら料理か、すげえ手際がいいなー)
カナ「ヒトミちゃん、ハルカの方じっと見つめてどうしたの?」
ヒトミ「あ、いや…。ハルカ先輩みたいになるにはどうしたらいいのかなーって」
カナ「ハルカにぃ~?」
ヒトミ「な、なんだよ、悪いかよ…?」
カナ「いや、だって…」ジーッ
ヒトミ「…」ペターン
カナ「無理だと思うけど」
ヒトミ「どこ見てんだよ、そっちの話じゃねーよ!」
ヒトミ「大体、そっちだって似たようなもんじゃんか!」
カナ「なにおー!?」
ハルカ「こらカナ、喧嘩は止めなさい」
カナ「だって、ヒトミちゃんが…」
ハルカ「…」ジーッ
カナ「わ、わかったよ…」
ヒトミ(視線だけでカナを大人しくさせた…。さすがッス、ハルカ先輩)
カナ「で、ハルカみたいになりたいんだっけ?」
ヒトミ「ああ」
カナ「そうだなー。まずは家事が出来る事だな」
ヒトミ「ハルカ先輩ほどじゃないけど、一通り出来るぞ」
カナ「後は勉強が出来て、運動神経もいい事」
ヒトミ「勉強は…まあまあだな。運動は部活やってるから自信あるぞ」
カナ「それじゃあ…、あ、電話だ」
カナ「もしもーし、次女です」
ヒトミ(聞けば聞くほど、ハルカ先輩ってすげーよな。私で対抗できるのかな…?)
カナ「え? うん、あるけど…」
カナ「うんうん、わかった。じゃーねー」
ヒトミ「誰からだったんだ?」
カナ「ん、友だちから」
カナ「ところで話を戻すけど。ハルカになる為に一番大事なのは、奉仕の心だと思うんだ」
ヒトミ「奉仕の心?」
カナ「ほら、ハルカは私やチアキの面倒を良く見てくれるだろ?」
ヒトミ「確かに、それで奉仕の心か」
カナ「そこでだ。奉仕の心を鍛える為に必要なのは…、これだ!」
ヒトミ「え!? こ、これって…」
カナ「奉仕の心と言ったらこれしか無いだろ。これを使って、ハルカに近づくんだ!」
ヒトミ「でも、これは恥ずかしい…」
カナ「恥ずかしがってちゃ女は磨けないだろ!? なりふり構わない覚悟を持つんだ!」
ヒトミ「覚悟…、確かにそうだよな」
ヒトミ「わかった、私頑張ってみる!」
カナ「おう、その意気だ!」
ハルカ「あれ、もう帰るの? 夕飯一緒にどうかなと思ったのに」
ヒトミ「お気持ちだけ受け取るッス。じゃあ、失礼するッス!」
ハルカ「行っちゃった…」
ピンポーン
ハルカ「あれ、他にも誰か来たのかな。はーい」ガチャッ
速水「お邪魔していい?」
ハルカ「あ、速水先輩。どうぞどうぞ、よろしかったらお食事もいかがですか?」
速水「え、いいの? ラッキー、ちょうどいい時に来たみたいね。お邪魔しまーす」
ハルカ「ゆっくりしていって下さいね」
速水「うん、ありがとー」
ハルカ「さて、チアキを呼んでこないと、チアキー」タタタッ
速水「…で、上手く言ったの?」コソコソ
カナ「うん、バッチリ。でも、なんでこんな事を?」コソコソ
速水「いやー、若い子の恋は応援してあげたいじゃない?」コソコソ
カナ「えっ、ヒトミちゃんが!?」
速水「声が大きいわよ」ハシッ
カナ「むぐっ…」
速水「とにかく、そういう事だから。これからも協力して欲しいんだけど」コソコソ
カナ「」コクコク
速水「ありがとー」
ハルカ「あれ、速水先輩、どうしたんですか?」
速水「ううん、何でもないよー。それじゃ、いただくわね」
ハルカ「はい、どうぞ」
―数日後、教室―
ザーッ
ナツキ(まさか突然雨が降るなんて…。傘なんて持って来てねーぞ)
ヒトミ(ナツキのあの目は、傘が無くて困っている目だ)
ヒトミ(よし、こういう時こそ奉仕の心だ!)
ヒトミ「ナツキー、お前傘持って来てないだろ? ほら、貸してやるよ」
ナツキ「おまっ、これピンク…」
ナツキ「それより、また傘二本持って来たのか?」
ヒトミ「ん? これ一本しかないぞ」
ナツキ「…は?」
ヒトミ「遠慮するなって、ほら」
ナツキ「いや待て、それだとヒトミが濡れて帰る事になるだろ」
ヒトミ「私の事は気にするなって」
ナツキ「あのな…、あ、そうだ」
ヒトミ「?」
ナツキ「その傘一本で、二人入ればいいじゃねーか」
ヒトミ「え…、ええっ!?」
ナツキ「何だよ、その意外そうな顔は」
ヒトミ「だ、だってそれってあいあい…」
ナツキ「どっちの意見も採用するには、この手しかない。よし、帰るか」
ヒトミ「ちょ、ちょっと…。ううっ」
ザザーッ
ナツキ「雨が強くなって来たな」
ヒトミ「そ、そうだな…//」
ナツキ「? 顔が赤いぞ、風邪でも引いたか?」
ヒトミ「なっ!? 何でもねーよ!」
ナツキ「?」
ヒトミ(ナツキがこんな近くに…、ドキドキするのが止まらない)
ヒトミ(それに、ナツキって凄く大きい。こうやって近くに来るとよくわかる)
ナツキ「お前、肩濡れてるじゃねーか。もっとこっちに寄れよ」グイッ
ヒトミ「ひゃわっ!? 何すんだよ!?」
ナツキ「傘貸してもらって風邪引かれたんじゃ、なんかすっきりしねーだろーが」
ヒトミ「で、でも…//」
ナツキ「…」ソッ
ヒトミ(あ、傘をこっちの方に寄せた。でもそれだとナツキが…)
ナツキ「これでいいか?」
ヒトミ「あ、ああ…」
ヒトミ(やっぱかっこいい…)ポーッ
ナツキ「?」
ヒトミ(あっ)フイッ
ナツキ「…」
ヒトミ(は、恥ずかしくて顔を見れない、なんかナツキのいい匂いまでして来たし//)
ナツキ「おっ、オレここまでだ。じゃあな、助かった」
ヒトミ「あ…、ああ、じゃあな」
ヒトミ「…傘の持ち手、ナツキの匂いがまだ残ってる」スンスン
―翌日―
先生「南は…、休みか。珍しいな」
ヒトミ(ナツキ…、私のせいだ。ナツキが風邪を引いたのは)
ヒトミ(放課後お見舞いに行って、それできちんと謝らないと)
先生「誰か、南の家にプリントを届けてくれる奴はいないか?」
ヒトミ「はい、先生! 私が行くッス!」
今、すげえ反応早かったな…
やっぱ嫁の力か…
ヒトミ「」ギロッ
先生「あー、それじゃあよろしく頼む」
ヒトミ「ウッス!」
―放課後―
ヒトミ「よし、準備はOKだな」
ヒトミ「でも、この服装は…、裾も短いし」
ヒトミ「いやいや、これが奉仕の心を出すには一番良い服装なんだ。けど、恥ずかしい…」
ヒトミ「向こうで着替えるようにするか。これは荷物に詰めてと」
ヒトミ「今度こそ大丈夫だ。行くか!」
―みなみ(男)け―
ヒトミ「あ…」
ハルカ「ん?」
ヒトミ「ハルカ先輩、こんな所でどうしたんスか?」
ハルカ「うん、ナツキくんが学校を休んだって聞いたから、ちょっと様子を見に来たの」
ヒトミ「そうッスか…」
ハルカ「それで、ヒトミは?」
ヒトミ「わ、私は先生にプリントを頼まれたので…」
ハルカ「そうなんだ。ナツキくんの風邪、うつらないように気をつけてね。それじゃ」
ヒトミ「ウッス」
ヒトミ「まさか、ハルカ先輩が先にお見舞いに来てるなんて」
ヒトミ「時間から考えて、学校終わってすぐ来たっぽいな」
ヒトミ「先輩、そこまでナツキの事を…」
ヒトミ「いやいや、今は先輩の事を気にしている場合じゃない」
ピンポーン
ナツキ『誰ッスか?』
ヒトミ「私だ、先生に言われてプリントを届けに来たぞ」
ナツキ『そうか…。入ってくれ』
ヒトミ「お、おう」
ナツキ「悪いな…、ゴホッ」
ヒトミ「連絡くれた時もそうだったけど、大分悪そうだな…、家の人は?」
ナツキ「うつると悪いから、外に出てもらった。今日は誰もいない」
ヒトミ「えっ、じゃあ今お前一人か?」
ナツキ「ああ」
ヒトミ「…」ハァ
ナツキ「何だよ?」
ヒトミ「いや、謝りに来たのになんかその気が失せた」
ナツキ「なんでお前が謝るんだよ」
ヒトミ「だって、私のせいでナツキが風邪引いたから」
ナツキ「は? 元々オレは傘を持って無かったし、お前のせいじゃねーよ。オレが弱いせいだ」
ヒトミ「それじゃ私の気がすまないんだよ。よし、今日は私が一日看病してやる」
ナツキ「いいっての」
ヒトミ「遠慮すんなって、少しは他人を当てにすることを覚えろ」
ナツキ「…」
ヒトミ「とりあえず飯を作るか、大人しく寝てろよ」
ナツキ「おう」
ヒトミ「さて、いよいよこの服を着る時が」ゴクッ
ヒトミ「よし…、うん、これでバッチリだ、行くぞ!」
ヒトミ「待たせたな」
ナツキ「おう、悪いな…!」
ヒトミ「ど、どうですか? ご、ご主人様…//」
ナツキ「おまっ、それ!」
ヒトミ「メイド服? って奴だ。何でも人の世話をする時に着る服らしい…、です、ご主人様」
ナツキ「」ボーゼン
ヒトミ(ナツキのこの目は、目の前の光景に理解が追いついていない目だ!)
ヒトミ「と、とにかくお食事の支度をしますね、ご主人様!」タッタッタッ
ナツキ「…」ジーッ
ヒトミ(ううっ、凄い見られてる…。これはダメだったか?)チラッ チラッ
ヒトミ(いやいや、とにかく今はナツキの飯を作らないと)チラッ チラッ
ナツキ「ヒトミ」
ヒトミ「な、何だ!?」
ナツキ「その…、下、何かはいて来いよ」
ヒトミ「えっ…」
ナツキ「さっきからチラチラ見えてる」
ヒトミ「…」
ヒトミ「//」ボンッ
ヒトミ「し、失礼します!」ダダダッ
ナツキ「あっ…」
ヒトミ(やっちゃった、動く時のことを全く考えてなかった!)
ヒトミ(よりによって、ナツキに下着を見られるなんて…、恥ずかしい!)
ヒトミ「とりあえず、体育で使ったブルマをはいて…、戻ろ」タッタッ
ヒトミ「その、大変お見苦しいものを…」
ナツキ「」ジーッ
ヒトミ(ううっ//)
ナツキ「その、悪かった」
ヒトミ「いやいや、今のは完全に私が…」
ナツキ「…」
ヒトミ「…」
ヒトミ「しょ、食事の支度を続けますね//」
ナツキ「あ、ああ」
ヒトミ(今は集中しないと。私はナツキの看病をしに来たんだから)
ヒトミ(でも…)チラッ
ナツキ「」グーッ
ヒトミ「寝るのはやっ!?」
ヒトミ「けど、これで落ち着いて支度が出来るな。さあ、始めるか」
ナツキ「…」
ヒトミ「よし、おかゆができた。ナツキを起こさないと…」
ナツキ「」ムクッ
ヒトミ「あ、起きた。じゃなくて」
ヒトミ「起きられたようですね。ご飯になさいますか? ご主人様」
ナツキ「なあ、ヒトミ」
ヒトミ「はい、どうかなさいましたか?」
ナツキ「普通に話してくれないか? むず痒くて仕方ねえ」
ヒトミ「でも…」
ナツキ「お前が頑張って看病してくれてるのはわかったから」
ヒトミ「むぅ、わかったよ」
ヒトミ「で、どうする? 飯にするか?」
ナツキ「ああ」
ヒトミ「じゃあ、ほれ。アーン」
ナツキ「何してんだ?」
ヒトミ「体だるいだろ? だから食べさせてやる」
ナツキ「いや、そこまでしなくても…」
ヒトミ「いいから! はい、アーン!」
ナツキ「…アーン」
ヒトミ「どうだ、うまいか?」
ナツキ「ああ」
ヒトミ「そうか、それなら良かった」
ナツキ「ご馳走様」
ヒトミ「完食か、食欲はあるみたいだな」
ヒトミ「それじゃ、後片付けするから、大人しく寝てろよ」
ナツキ「ああ」
ヒトミ「~♪」
ナツキ「ヒトミ」
ヒトミ「ん~、どうした?」
ナツキ「ありがとう、助かった」
ヒトミ「…どう致しまして//」
―数日後―
速水「ヒトミ」
ヒトミ「あ、速水先輩。どうしたんスか?」
速水「ちょっと来てくれる? 人前だと話し辛いから」
ヒトミ「あ、はい」
速水「ありがと。そうね、部室にでも行きましょうか」
ヒトミ「ウッス」
―バレー部部室―
マキ「やっほ」
ヒトミ「あ、マキ先輩。チィッス」
速水「よし、じゃあ本題に入りましょうか」
ヒトミ「はい。それで何の話何スか?」
マキ「ヒトミ、あんたナツキに惚れてるでしょ?」
ヒトミ「…」
ヒトミ「//」ボンッ
ヒトミ「ななな、なにをいきなり//」
速水「何? このウブな反応」
マキ「見てるこっちが恥ずかしくなりますね」
速水「それで、続けるけど。最近ハルカちゃんとナツキの関係がおかしくなってるのも知ってる?」
ヒトミ「」ピクッ
ヒトミ「まあ、一応…」
速水「それじゃあ話は早いわね」
速水「私たちバレー部女子一同、あなたの恋を応援してあげる」
ヒトミ「えっ? 嬉しいッスけど、何でですか?」
速水「簡単な話よ、ナツキがハルカちゃんとそうなればますますバレー部から離れてしまう」
速水「でも、ヒトミとくっつけばナツキがバレー部の活動に参加するようになるかもしれない。そういう事よ」
ヒトミ「なるほど~」
マキ「で、どう? 私たちに協力させてくれる?」
ヒトミ「もちろんッス、先輩方が力を貸してくれるなら心強いッス!」
速水「よく言ってくれた! では早速…」
速水「恋を成就させる為の強力な武器があるのよ。どうぞ!」
アツコ「…//」
ヒトミ「…ええっ!? これ、本当に武器なんスか!?」
速水「もちろんよ! 巷で新妻に着て欲しい衣装NO.1なんだから」
ヒトミ「に、新妻…//」
ヒトミ『お帰りナツキ~。じゃなくて、あ・な・た♪』
ナツキ『おう』
ヒトミ『ご飯にする? お風呂にする? それとも…//』
ナツキ『そんな格好してるお前を食わない訳にはいかないだろ』ガバッ
ヒトミ『ああっ、あなた…//』
ヒトミ「…いいッスね」
マキ「お~い、あっちの世界から帰っておいで~」
速水「意外と妄想逞しいのね…」
ヒトミ「ありがたく頂くッス! 私、頑張るッス!」タッタッタッ
速水「行ったか…。よーし、次はハルカちゃんの所に行くわよ~」
マキ「あの、本当にやるんですか?」
速水「もちろん、勝負はフェアじゃないと」
マキ「先輩はただ楽しんでるだけのような気が…」
アツコ「あの、速水先輩はどういう結果になって欲しいですか?」
速水「え? う~ん、どっちでもいいかな。面白くなれば」
マキ「あ、やっぱり」
速水(なんてね、私は…)
―教室―
ヒトミ(なんて言ってはみたけど…)
ナツキ「…」
ヒトミ(こんな服、二人きりの時でもないと着れない。けど、そんな機会があるのか?)
ナツキ「…ふぅ」
ヒトミ(あ、ナツキのあの目は、献立で悩んでる目だ)
ヒトミ「ナツキー、何悩んでるんだ?」
ナツキ「ああ、明日の飯をどうしようかと思って…」
ヒトミ「珍しいな、お前がそんな事で悩むなんて」
ナツキ「明日の夕飯は一人だからな、食わせる分にはバランスとか色々考えるからあっさり決まるんだが…」
ヒトミ「そっかー、一人だと手抜きしようかな? とかなるからな」
ナツキ「ああ」
ヒトミ「なるほど、自分だけの飯を作るって、かえって大変…」
ヒトミ(あれ? これってもしかしてチャンスじゃないか?)
ナツキ「ヒトミ、何考えてるんだ?」
ヒトミ(そうだ、行くなら今しかない。勇気を持って伝えるんだ、私!)
ヒトミ「そ、それなら…、私が飯を作りに行ってやろうか?」
ナツキ「…はあ?」
ヒトミ「そうだ、それがいい、たまにはナツキも休むべきだぞ、うん」
ナツキ「お前、何言ってるんだよ。大体この前風邪引いた時に…」
ヒトミ「いいから、人の好意は素直に受け取れっ!」
ナツキ「お、おう、じゃあ頼むぞ」
ヒトミ(よし、押し切った。後は当日を待つだけ…)
ヒトミ「ふふっ♪」
ナツキ「??」
―翌日、みなみ(男)け―
ヒトミ「今日はナツキと、二人きり~♪」
ヒトミ「っと、いけないいけない。ここで気を抜いたらダメだ。失敗しないようにしないと」キリッ
ヒトミ「さて、それでは…、あれ?」
ハルカ「えっ、ヒトミ?」
ヒトミ「ハルカ先輩、こんな所でどうしたんスか?」
ハルカ「ヒトミこそ、ナツキくんの家に何をしに?」
ヒトミ「」ピクッ
ヒトミ「わ、私は、ナツキが一人だって言うんで飯を作りに…」
ハルカ「あ、そうなんだ。それじゃあ私は余計なお世話だったかな?」
ハルカ「私もナツキくんが一人だって聞いたから、たまには休んでもらおうと思って差し入れをしに来たの」
ヒトミ「そ、そうなんスか…」
ハルカ「ついさっき渡して今帰る所だったけど、そういう事なら私の分は明日の朝にでも食べてもらおうかな?」
ハルカ「ヒトミからそう言っておいてくれる? やっぱり作りたてのご飯の方が美味しいと思うから」
ヒトミ「あ、はい」
ハルカ「よろしくね。私は妹たちの食事の支度があるから、これで」タタタッ
ヒトミ「お疲れ様ッス、ハルカ先輩」
ハルカ「うん」
ハルカ(わざわざ自宅に料理を作りに? これは…)
ヒトミ(流石はハルカ先輩ッスね。でも、私だって負けないッス)
ヒトミ「ナツキー、来たぞー」ピンポ-ン
ナツキ『おう、上がってくれ』
ヒトミ「お邪魔しまーす」
ナツキ「悪いな、わざわざ来てもらって」
ヒトミ「気にするなよ、私が来たくて来たんだから(うわ、ナツキ部屋着だ//)」
ナツキ「ところで、さっきハルカ先輩が来たんだが…」
ヒトミ「ああ、ちょうどすれ違ったぞ、先輩の分は明日の朝に食べて欲しいって」
ナツキ「そうか、じゃあ冷蔵庫に閉まっておくか」
ヒトミ(あれ、何か妙にあっさりしてるような…)
ヒトミ「よし、早速支度を始めるか。着替えてくるから、のぞくなよ?」タッ
ナツキ「のぞかねーよ。…着替え?」
ヒトミ(い、いよいよこれを着る時が…! 覚悟はしたつもりだけど、いざとなると…)ヌギッ
ヒトミ(いいや、女は度胸だ! これもナツキを振り向かせる為!)
ヒトミ「準備できたから、今から作り始めるぞ」
ナツキ「おう、よろしくたの…! お、お前!」
ヒトミ「何だよ、私がどうかしたのか?」
ナツキ「どうかしたって、それ…!」
ヒトミ「…//」
ナツキ(裸にエプロンだけとか…、何を考えてるんだ!?)
ヒトミ「あんまりじろじろ見るなよ、やりにくいだろ?」
ナツキ「いや、だが…」
ヒトミ「大人しくしておけ、すぐ出来るから」
ナツキ「…」
ヒトミ(うわあああっ、やっぱり恥ずかしい!)
ヒトミ(で、でも…)
ナツキ「」ジーッ
ヒトミ(ナツキがじっとこっちを見てる。これって効果ありって事だよな?)
ナツキ「」フイッ
ヒトミ(あ、視線をそらした。今の内に!)ササッ
ヒトミ「出来たぞー」
ナツキ「…おう」
ヒトミ(動揺してるな、ここで更に先輩から伝授された技を…!)
ヒトミ「うまそうだろ? 今日は我ながら上手に出来たんだ!」ズイッ
ナツキ「!」
ヒトミ(どうだ、必殺純白の胸元!)
ヒトミ(大きさじゃハルカ先輩には敵わないけど、肌の綺麗さなら自信あるんだ!)
ナツキ「頂きます! …ご馳走様!」
ヒトミ「はやっ!?」
ナツキ「うまかったぞ、風呂入ってくる」ダダダッ
ヒトミ「あっ…」
ヒトミ「ちょっとやりすぎたかな…」
ヒトミ「いやでも、風呂だったらまだ教わった作戦が使えるはず!」
ヒトミ「と言う訳で、私も準備をして…」
ヒトミ「よし、じゃあ行くか!」
ヒトミ「頑張るぞ、私。オー!」
―風呂―
かぽ~ん
ナツキ「ふう…」
ナツキ(ヒトミの奴、急にどうしたんだ?)
ナツキ(風邪の時もそうだが、今日だって…)
ナツキ(そうでなくても、オレは…)
ヒトミ『ナツキー、湯加減はどうだ?』
ナツキ「え? 湯加減も何も、機械でやるから丁度いいが」
ヒトミ『そうか~。じゃあ私も入るとするか』
ナツキ「は?」
ガラガラッ
ヒトミ「~♪」
ナツキ「お前、何してんだよ!?」
ヒトミ「せっかくだから、背中でも流してやろうかと」
ヒトミ「安心しろ、ちゃんとタオルは巻いてるんだから」
ナツキ「そういう問題じゃ…、そこまでの世話はいらん!」
ヒトミ「遠慮するなよ、私に任せとけって」
ナツキ「…勝手にしろ」ザバーッ
ヒトミ「ふんふんふ~ん♪」ゴシゴシ
ナツキ「…」
ヒトミ(ナツキの背中、大きくて筋肉質で、正に男の背中って感じだな。かっこいい…//)ウットリ
ナツキ「なあ、ヒトミ」
ヒトミ「ん~、どうした?」
ナツキ「最近、様子がおかしいぞ? 一体何があった?」
ヒトミ「…」
ナツキ「話せないような事ならあえて聞かんが、こう違うとこっちまで不安になる」
ヒトミ「…悪い。でも、今は話せない」
ナツキ「そうか、じゃあ聞かねえ」
ヒトミ「力加減はどうだ?」
ナツキ「おう、ちょうどいいぞ」
ヒトミ「そうか」ゴシゴシ
ナツキ「…」ブツブツ
ヒトミ「ん、何か言ったか?」
ナツキ「何でもねえよ」
ヒトミ「そうか」
ナツキ「こんなもんでいいぞ、前は自分で洗う」
ヒトミ「そ、それは当たり前だろ//」
ナツキ「少し目を瞑っててくれ。ヒトミが体洗ってる間オレもそうするから」
ヒトミ「えっ…」
ナツキ「まさかお前、風呂で体を洗わないのか?」
ヒトミ「そんな訳無いだろ!」
ナツキ「だろ? ちょうど明日お湯変えるから、タオルのままで入ってくれて構わん」
ヒトミ「そ、それって…//」
ナツキ「お互い長風呂だから、ゆっくりつかるぞ」
ヒトミ「…う、うん、ありがとう//」
ナツキ「それはこっちのセリフだ。少し狭いかもしれんが、そこは我慢してくれ」
ヒトミ「お、おう(むしろ大歓迎だ!//)」
―数日後―
ヒトミ(はぁ~♪)ポッ
ヒトミ(嬉しかったな~、ナツキとお風呂…//)
ヒトミ(せめてもう一回位、いや、それは流石に望み過ぎか)
ナツキ「…」
ヒトミ(ナツキの顔が見られるだけで、私は…)
ハルカ「ナツキくん、ちょっといい?」
ナツキ「あ、ハルカ先輩。ウッス」
ヒトミ「」ピクッ
ナツキ「どうしたんスか?」
ハルカ「ナツキくん、前に映画好きだって言ってたよね?」
ナツキ「はい、わりと」
ハルカ「それじゃあさ、この映画私と一緒に見に行かない?」チケットピラッ
ナツキ「!」
ヒトミ「!」
クラスメイト「「!!」」
ヒトミ(あれは…、恋愛の泣けるマジな映画!)
おいおい、マジかよ…
三角関係か、こりゃマジ修羅場だな…
ヒトミ「」ギロッ
いけね、番長がキレそうだ。黙ってよ
ナツキ「先輩、オレでいいんスか?」
ハルカ「もちろん」
ナツキ「…」チラッ
ヒトミ(あっ、ナツキがこっち見た)
ナツキ「いつにします?」フイッ
ヒトミ(あっ…)
ハルカ「今週の日曜日なんてどう? 待ち合わせは10時頃で」
ナツキ「了解ッス」
ハルカ「ありがと、楽しみにしてるからね」
ナツキ「ウッス」
ヒトミ(ナツキが、ハルカ先輩とデート…)ボーゼン
ナツキ「ヒトミ」
ヒトミ「!」ビクッ
ヒトミ「な、何だよ!?」
ナツキ「ちょっと来てくれ」
ヒトミ「は? まあ別にいいけど」
ナツキ「悪いな」
ヒトミ(ナツキの奴、何考えてるんだ…?)
ヒトミ「それで、何の用だよ?」
ナツキ「この映画、お前も一緒に来ないか?」チケットピラッ
ヒトミ「…はっ?」
ナツキ「先輩から貰ったチケット、二枚重なってたんだ。これって、他にも誰か誘ってくれって事だろ?」
ナツキ「で、どうだ?」
ヒトミ(いやいやいや、アホかお前は!)
ヒトミ(どう考えても間違えたに決まってるだろ! でも…)
ヒトミ(ここで断ったら、ナツキとハルカ先輩が二人きりに…)
ヒトミ「…行く」
ナツキ「そうか」
ヒトミ(すみません、ハルカ先輩。デートの邪魔をしてしまって)
ヒトミ(でも、私はナツキを、誰にも渡したくないんス)
ナツキ「日にちと時間はさっき先輩が言った通り、場所は決まったら連絡する」
ヒトミ「わかった。…ナツキ」
ナツキ「ん?」
ヒトミ「楽しみにしてるからな」
ナツキ「…おう」
―当日―
ヒトミ「う~ん、ちょっと服に着られてる感が…」
ヒトミ「いやいや、せめて服くらいは可愛く仕上げないと!」
ヒトミ「あ、それから化粧もしろって先輩たちが言ってたっけ…」
ヒトミ「でも、私に化粧って…、とりあえず口紅かな」
ヒトミ「後マラカス? マカスラ? 何だっけこの目に塗る奴」
ヒトミ「先輩たちになんかたくさん貰ったけど、使い方が良くわからない…」
ヒトミ「いけない、もうこんな時間だ! もういいや、このまま行こ!」ダダッ
ヒトミ「ナツキ、待ってるだろうな。待ち合わせギリギリだし」
ヒトミ「それに、ハルカ先輩も…。ただでさえ二人きりじゃなくなってるって言うのに」
ヒトミ「先輩、絶対怒ってる…」
ヒトミ「」ブルルッ
ヒトミ「ま、まあそれはおいといて、ナツキは…」
ヒトミ「いた。おーい、ナツキー!」ブンブン
ナツキ「おう、ヒトミ」
ヒトミ「ごめん、待ったか?」
ナツキ「いや、そんなに」
ハルカ「あれ、一緒に来る人ってヒトミだったんだ」
ヒトミ「ハルカ先輩、チィッス」
ハルカ「うん、こんにちは」ニコッ
ヒトミ(あれ、先輩全く怒ってない? むしろご機嫌と言うか…)
ヒトミ(それより、先輩すげーなー。化粧していつもより数段綺麗さが増してるって言うか)
ヒトミ(よっぽど気合入れてたんだな…。ナツキとのデートに)
ハルカ「それじゃあ皆そろったし…、行きましょうか」ダキッ ムニュ
ナツキ「!」
ヒトミ(こ、これは…! ごく自然に抱きついて胸を押し付けている!)
ヒトミ(自分の武器を生かしての攻め…、さすがハルカ先輩!)
ヒトミ「そ、そうだな、行くぞナツキ!」ダキッ ペタッ
ヒトミ(凄く失礼な効果音がした気がするけど…、私だって負けないッス!)
ナツキ「…」チラッ チラッ
ヒトミ(うわー、明らかに先輩の胸を意識してるよ~! これは圧倒的に不利かもしれない…)
―上映中―
先輩『男君!』
男『先輩!』
クラスメイト『男!』
男『クラスメイト!』
ヒトミ(すげー修羅場、男も大変だな)
ハルカ「」ピトッ
ヒトミ「!」
ヒトミ(ハルカ先輩、絶妙なタイミングでナツキの手を握ってる! さすが先輩)
ヒトミ(よし、次にいい感じになった時には私も!)
ナツキ「」ピトッ
ヒトミ「んにゃっ!?」
ナツキ「?」
ヒトミ(ナツキの奴、いきなり手を握って来たよ!)アタフタ
ヒトミ(そんな、急にされても心の準備が!)アタフタ
ヒトミ(でも…、ナツキの手、凄く暖かい//)
ハルカ「…」
ヒトミ(映画、もっと続いてくれないかな。せめて後二時間位…)
―上映終了―
ヒトミ「ん~、楽しかった~!」ノビッ
ナツキ「そうだな」
ハルカ「いい映画だったね。まあ、オチにはちょっと納得行かなかったけど」
ヒトミ「え~、ハルカ先輩はああいう展開嫌いッスか?」
ハルカ「嫌いと言うか、ねえ…。クラスメイトと結ばれるのは」
ヒトミ「?」
ハルカ「ところでヒトミ、ちょっと二人で話しない?」
ヒトミ「!」
ヒトミ「…いいっすよ」
ハルカ「ありがとう。それじゃあナツキくん、ちょっと席を外してくれるかしら」
ナツキ「ウッス」タッ
ハルカ「…」
ヒトミ「…」
ハルカ「それで、なんでこんな場を設けたか、ヒトミは察しがついてる?」
ヒトミ「もちろん、ナツキの事ッスよね?」
ハルカ「ええ。まさかデートのつもりがもう一人女の子を連れてくるなんて…」
ヒトミ「ハルカ先輩は、ナツキの事好きなんスよね?」
ハルカ「…」
ハルカ「もちろん、好きよ。愛してるわ」
ハルカ「ヒトミは…」
ヒトミ「もちろん、ナツキの事好きッス。ハルカ先輩に負けないくらい」
ハルカ「でしょうね。そうでなければ映画に一緒に来たりしないもの」
ハルカ「でも、ここまであっさり思い通りに行くなんて」
ヒトミ「えっ?」
ハルカ「もしかして、ヒトミは私がうっかりチケットを二枚渡したと思っていたの?」
ヒトミ「…わざとって事ッスか」
ハルカ「そう、ナツキくんがあなたを誘うようにね」
ハルカ「そして、この関係に決着をつける為に」
ヒトミ「…」
ハルカ「単刀直入に言うわ。ナツキくんの事を諦めてちょうだい」
ハルカ「あの人は、恋愛を捨てて母代わりとして生きてきた私にとって、初めて本気で好きになった人」
ハルカ「だから、誰が相手でも譲りたくないの」
ヒトミ「すみませんが、それは出来ない相談ッス」
ヒトミ「私だって、ナツキの事が本気で好き。たとえハルカ先輩が相手でも、絶対に譲らないッス」
ハルカ「…」バチバチ
ヒトミ「…」バチバチ
ハルカ「ふぅ、仕方ないわね。それなら、勝負をしましょう」
ヒトミ「いいッスよ。どう決着をつけますか?」
ハルカ「ちょうどバレンタインが近いから、単純に自分のチョコを受け取ってもらった方が勝ち」
ハルカ「そうでない方は、きっぱりとナツキくんを諦める…、これでどう?」
ヒトミ「了解ッス」
ハルカ「覚悟しておきなさい。私、負けないから」ゴゴッ
ヒトミ「その言葉、そっくりお返しするッス」キッ
ヒトミ(凄い覇気だけど…、ここで引いてたら話にならない)
ハルカ「いい目ね、当日を楽しみにしてるわ」フイッ
ヒトミ「ええ」
ヒトミ「…さて、チョコってどうやって作ればいいんだ?」
ヒトミ「勢いで受けたは良いけど、どうしよう…」
―ヒトミけ―
速水「なるほど、それで私たちに相談をもちかけたと」
ヒトミ「はい」
マキ「確かに、ハルカ相手だったら私たちがいてちょうどいい勝負ですからね」
ヒトミ「マキ先輩、是非あっと驚くアイディアをお願いするッス」
マキ「任せなさい! あれ、それって調理の方では…」
アツコ「ところでヒトミ、渡す相手の好みとかは分かってるの?」
ヒトミ「あ、はい。あんまり甘い物は好きそうじゃないんで、甘さは控えめにしようかと」
アツコ「ふむふむ」
速水「だったら、あれとそれとこれね。それから…」
アツコ「量も少なめにして、後は…」
マキ「いかにしてチョコに自分の気持ちを乗せるか…」
マキ「ヒトミは、ナツキの事どう思ってる? いや、好きなのは知ってるけど」
ヒトミ「…えっと、その…//」
マキ「…やっぱいいや、聞きだすまでに時間かかりそうだから」
速水「だったらこれをこうして、すぐにデコレーション出来る様にしようか」
アツコ「そうですね」
速水「ああ、後…って言うのはどう?」
ヒトミ「! な、ななっ//」
速水「まあ、これは最初に渡すチョコのおまけね。男にとっちゃむしろ主食だろうけど」
アツコ「は、速水先輩//」
速水「こんなもんかな。私たちが手伝えるのはここまでよ」
速水「気合入れて、しっかり気持ちを伝えられるように頑張りなさい」
ヒトミ「はい!」
マキ「じゃ、私たちはこれで~」
アツコ「頑張ってね、ヒトミ」
ヒトミ「ウッス!」
ヒトミ「…先輩方にもここまで協力してもらったんだ」
ヒトミ「例え相手が完璧超人の初代番長だとしても、絶対に勝って見せる」
ヒトミ「ナツキを好きだって気持ちだけは…、誰にも負ける訳には行かないッス!」
―バレンタイン当日、屋上入り口―
ハルカ「…来たわね、ヒトミ」
ヒトミ「ええ、もちろん」
ハルカ「ナツキくんはすでにこの先にいるわ。全ての事情を説明した上でね」
ヒトミ「そうッスか」
ハルカ「それで、どっちが先に行く?」
ヒトミ「先輩からどうぞ」
ハルカ「随分余裕ね? まあいいわ、それじゃあお先に」ガチャッ
ヒトミ「…」
ヒトミ「凄いドキドキする…。もし、ナツキがハルカ先輩のチョコを受け取ったら…」
ガチャッ
ヒトミ「えっ?」
ハルカ「…」
ヒトミ「は、早かったッスね、ハルカ先輩」
ハルカ「ええ、そうね」
ヒトミ「それで、結果は…」
ハルカ「」チラッ
ヒトミ「あっ…」
ハルカ「私の負け、よ。たぶんね」
ヒトミ「たぶん…」
ハルカ「両方受け取ってもらえないって可能性もあるわよ」
ヒトミ「い、嫌な事言わないで下さいよ…」
ハルカ「私にとってはそっちの方が良いわよ。まだチャンスがあるって事だもの」
ヒトミ「…」
ハルカ「さ、行ってらっしゃい」
ヒトミ「ウス、行ってくるッス」ガチャッ
ハルカ「…ふぅ」
ハルカ「なんてね、実はもう結果は出てるのよ」
ハルカ「自分で宣言した以上、潔く諦めるわ」
ハルカ「二人とも、幸せに…」ツーッ
ハルカ「ふふっ、流石に1人じゃ強がれないか」
ハルカ「私の頭の中、ぐちゃぐちゃしてる…、どうやっても現実は変えられないって言うのに…!」ポロッ
ハルカ「ナツキくん…、好きっ…、大好きだよっ…!」ポロッ… ポロッ…
ヒトミ「ナツキ…」ドキドキ
ナツキ「おう」
ヒトミ「…」
ヒトミ(ヤバイ、いざとなったら凄く緊張して来た。これでもし受け取って貰えなかったら…)
ナツキ「それで、ヒトミはどんなチョコを作って来たんだ?」
ヒトミ「…へっ?」
ナツキ「へっ? ったって、オレにくれるんだろ? 別に今教えてくれたっていいじゃねーか」
ヒトミ「いや、そりゃそうだけど…! お前、ハルカ先輩の話聞いてたか!?」
ナツキ「聞いてたからこんな話してんだろ?」
ヒトミ「…つまり、それって」ゴクッ
ナツキ「…」
ナツキ「オレは初めから、ヒトミ以外のチョコは貰う気ねーよ」
ヒトミ「!」
ヒトミ「お前…」ポロッ…
ナツキ「おい、何泣いてんだよ!?」
ヒトミ「べ、別に泣いてねーよ!」グシグシ
ヒトミ「嬉しくて、目から汗が出ただけだからな!」
ナツキ「…そうか」
ヒトミ「でも、なんで私を…、ハルカ先輩の方が…」
ナツキ「まあ、ヒトミの前で言うのも何だが、確かにハルカ先輩は素敵な女性だ」
ナツキ「けどそれだけだ、そんな事オレには関係ない」
ナツキ「ヒトミ、お前はオレが手も足も出なかった初めての女だ」
ナツキ「あれ以来、オレはお前に惹かれていた」
ナツキ「ついついじっと見ちまう事もあった。それが悪いと思ってわざと視線をそらせたりもした」
ヒトミ「そう言われると、いくつか心当たりがあるような…」
ナツキ「だから、お前が家で際どい格好した時は、正直我慢するので精一杯だった」
ナツキ「風呂で背中を流してもらった時に、ずっとこうしていて欲しいって思った」
ナツキ「けど、オレはこんな男だ。自分の気持ちが上手く伝わるか自信がなかったんだ」
ヒトミ「…」
ナツキ「お前がそんなオレでも良いって言うなら、改めて言わせてくれ」
ナツキ「ヒトミのチョコ、オレにくれねーか?」
ヒトミ「…ぷっ。らしくねーな」
ヒトミ「お前はもっと男らしい奴だろ? どっしり構えてれば良かったのに」
ナツキ「うるせえ」
ヒトミ「まあいいや。ほら、私の手作りチョコだ」
ヒトミ「小さいけど、私の気持ちがしっかりこもってるからな。あ、ありがたく食えよ!?」
ナツキ「おう。…開けるぞ」パカッ
『大 好 き』
ナツキ「…」
ヒトミ「…」
ナツキ「」パクッ
ヒトミ「…ど、どうだ?」
ナツキ「すげえ甘い。でも、すげえうまい」
ヒトミ「そっか…。ふふっ♪」
ヒトミ「そ、それでだな…//」
ナツキ「?」
ヒトミ(ううっ、やっぱりこれは…!)
ヒトミ(でも、こればっかりは今日伝えないと!)
ヒトミ「今日の放課後、私の家に来てくれ」
ヒトミ「もう一つ、渡したいチョコレートがあるんだ//」
ナツキ「? わかった」
ヒトミ「よし、約束したぞ!? じゃあな! また放課後!」スタタッ
ナツキ「…おう」
―放課後、ヒトミけ―
ナツキ「ヒトミ、来たぞー」
ヒトミ『おおおう! 入ってくれ!』
ガチャッ
ナツキ「なんだこれ、玄関にバケツ? あ、チョコとはけが入ってる」
ヒトミ「それを持って、私の部屋に来てくれ//」
ナツキ「わかった。…じゃあ、入るぞ」
ガチャッ
ナツキ「な…!」
ヒトミ「や、約束通りチョコを渡すからな…//」ゼンラ
ナツキ「これはどういう事だ?」
ヒトミ「先輩に聞いたんだ、男が好きなチョコの中身は女だって」
ヒトミ「だから、そのチョコを私の体に塗って、私を食べてくれ//」
ナツキ「」ボーゼン
ヒトミ(ナツキのあの目は…、何を考えているのかわからない!)
ヒトミ(ううっ、これは失敗したかも//)
ナツキ「…ヒトミ」ファサッ
ヒトミ「えっ?」
ナツキ「着ろよ、寒いだろ」
ヒトミ(ナ、ナツキの上着! ナツキのいい匂いがする…//)クンクン
ナツキ「気持ちはありがたいが、それで風邪を引いたらどうしようもねえだろうが」
ヒトミ「ナツキ…!」ジーン
ナツキ「まあ、それはそれとして」ズイッ
ヒトミ「へ?」
ナツキ「羽織るだけなら、前は空いてるよな? オレは出された物を残さない主義なんだ」ニヤッ
ヒトミ「…お、おう、かかって来い!」
ナツキ「それじゃあ、行くぞ」ペタッ
ヒトミ「んっ…//」
ナツキ「くすぐったいか?」
ヒトミ「少し…」
ナツキ「それなら一気に行くか、我慢しろよ」
ヒトミ「え、ちょっと待って…、ひゃあああん!!」
ナツキ「」ペタペタペタ
ヒトミ「ふっ、ひうっ、あんっ♪」
ナツキ「声出すなよ、何か変な感じになるだろ」
ヒトミ「そんな事言われても…// ああぁっ!」
ナツキ「よし、上はこんなもんか。次は下だ」
ヒトミ「し、下…//」
ナツキ「…ここだけ濡れてるな、塗りにくそうだ」ペタッ
ヒトミ「ひゃぅ! そ、そこにいきなりい…//」
ナツキ「なんだ、チョコが塗った先から垂れて行くじゃないか」
ヒトミ「だ、だってえ//」
ナツキ「しょうがないから、ここだけ先に食べるか」パクッ ペロッ
ヒトミ「んんんんん~っ!?」プシャッ
ナツキ「何か出てきたな。シロップか?」ペロッ
ヒトミ「! な、舐めるなバカ//」
ナツキ「ダメなのか。じゃあ続きを…」
ヒトミ「ちょ、ちょっと待ってくれ」
ナツキ「?」
ヒトミ「」ドキドキ カチャカチャ
ナツキ「おい、なんでオレのズボンに手をかけてるんだ?」
ヒトミ「お返しが欲しくなったんだ…。私にナツキのホワイトチョコ、食べさせてくれ♪」パクッ
ナツキ「うっ…!」
―暗転―
―3月14日―
ヒトミ「はあ~♪」
ヒトミ(今でも昨日の事みたいに思い出せる。ナツキとチョコの食べ合い//)
ヒトミ「もう一回出来ないかな~、なんて」
ナツキ「ヒトミ」
ヒトミ「わっ! な、何だよ!?」
ナツキ「これ、バレンタインの時のお返し。受け取ってくれ」
ヒトミ「え? もちろんだけど…、封筒?」
ナツキ「開けてみてくれ」
ヒトミ「おう」
ヒトミ「…! こ、これって…!」
ナツキ「ヒトミはおまえ自身をくれたから、そのお返しって言ったらこれしか思いつかなかった」
ナツキ「日付とかはまだ書けないが、オレが書くべき所は全て記入してある」
ナツキ「高校を卒業して、オレが手に職をつけた時に」
ナツキ「ヒトミの名前が書かれた状態のそれを、役所にもって行きたい。どうだ?」
ヒトミ「どうだって、そんなの決まってるだろ…!」ジワッ
ヒトミ「もちろんOKだぞ。ナツキがきちんとプロポーズしてくれるまで、名前を書いて大事に持っておくから」
ナツキ「…今のじゃダメか?」
ヒトミ「ダメに決まってるだろ? もっと私の心がとろけそうな奴で頼むぞ」
ナツキ「…」ダキッ
ヒトミ「ふえっ!?」
ナツキ「愛してる、ヒトミ」ボソッ
ヒトミ「…//」バタッ
ナツキ「…あんなセリフ言うくらいなら、顔赤くして倒れる癖を直せっての」
―3年教室―
保坂「ついに出来たぞ…」
保坂「オレのオレによる南ハルカの為の菓子が!」
保坂「これで傷心の南ハルカをオレが癒す訳だ…」
保坂「すると、南ハルカがオレに抱きついてくる訳だ…」
保坂「それをオレは優しく抱き返す訳だ…」
保坂「パーフェクトな訳だ…」
速水「保坂~、何妄想垂れ流してんの?」ボカッ
保坂「痛いじゃないか」
速水「気のせいよ、それより何それ?」
保坂「これは南ハルカに元気を出してもらう為作った菓子だ」
保坂「待っていろ南ハルカ、今オレが行ってやるからな!」ガバッ
速水「脱ぐ所じゃないでしょ」
速水(うん、これで良いのよ。保坂はハルカちゃんを追ってる時が一番生き生きしてる)
速水(私は、ただ…)
速水「そうなんだ~、上手く渡せるといいわね」パクッ
保坂「南ハルカに渡すと言ったはずだ、食べちゃダメじゃないか」
速水「ほうね」モグモグ
保坂「全部食べちゃダメじゃないか」
速水「そうね、ごちそうさま」
保坂「まあいい、念の為に二つ作っておいたかいがあった」ヒョイ
速水「え?」
保坂「どうせ速水が食べたがるだろうからと、一応作っておいたのだ」
保坂「近しい者を悲しませるようでは、とても南ハルカを笑顔になどできないからな」
速水「…」
保坂「どうした、オレの顔に何かついてるのか」
速水「目と耳と鼻と口と…」
保坂「そうか」
速水「」クスッ
保坂「なぜそこで笑う?」
速水「ううん、何でも♪」
保坂「?」
―10年後―
マキ「うわー、凄く綺麗だね~!」
アツコ「ウェディングドレス、とても似合ってるよ」
ヒトミ「あ、ありがとうございます…//」
速水「ほんと羨ましいわ~。女子バレー部の中でヒトミが一番乗りだなんて」
ヒトミ「なんかすみません…」
速水「ううん、気にする事ないわよ、頑張って幸せな家庭を築きなさい」
ヒトミ「はい、もちろんッス!」
ハルカ『ヒトミー、私よー。入っていい?』コンコン
ヒトミ「」ビクッ
速水「あら、もしかして私たちお邪魔?」
ヒトミ「すみません、出来れば…」
マキ「りょーかい。それじゃ、後でね」
アツコ「式、楽しみにしてるから」
ヒトミ「ウッス」
あれ、みんなもういたんだ
遅いよハルカ~、また後でね
うん
ヒトミ「…」
ガチャッ
ハルカ「久しぶりね、ヒトミ」
ヒトミ「ウッス」
ハルカ「今、ナツキくんの方に挨拶して来た所よ。とっても格好良かったわ」
ヒトミ「そりゃあもう、自慢の旦那様ッスから」
ハルカ「…」
ヒトミ「あ、あの、これ…!」スッ
ハルカ「え、これって…」
ヒトミ「今回は顔見知りだけの式なんで、結局使う場面がなくなっちゃったんス」
ヒトミ「それで、私がハルカ先輩にプレゼントしたいって言ったら、OKが出て」
ハルカ「新婦が投げるブーケ…」
ヒトミ「高校の時は、ナツキを巡って何だかんだあったッスけど」
ヒトミ「やっぱり、私はハルカ先輩にも幸せになって欲しいんス」
ハルカ「…」
ヒトミ「その…」
ハルカ「結局ナツキくんを取っちゃったのに、随分虫のいい話ね?」
ヒトミ「あ、いや…」
ハルカ「冗談よ。ヒトミの心遣い、ありがたく受け取るわ」クスッ
ヒトミ「…ありがとうございます!」
ハルカ「それじゃあ、私も幸せになる為に頑張りますか。ヒトミよりもずっと素敵な旦那様を見つけてあげる」
ヒトミ「それは無理ッスね。だってナツキより良い男なんていないッスから」
ハルカ「…」
ヒトミ「…」
ハルカ ヒトミ「」クスッ
ハルカ「今度こそ負けないからね、ヒトミ」
ヒトミ「私だって、負けないッス!」
―END―
無事完結
みなみけのSSもっと増えて欲しい
次もみなみけ、今日か明日にみなみけ
では
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