モバP「shiny smell」 (52)

珠美「プロデューサー殿」

P「ん?」

珠美「来月のスケジュールのことなのですが」

P「……悪いが、今手が離せなくてな。また後で、改めて伝えるよ」

珠美「……そうですか」



http://i.imgur.com/JvWnQPP.jpg

珠美「………」

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http://i.imgur.com/r8RIUhq.jpg

唯「プロデューサーちゃんが冷たい?」

珠美「あまり積極的に、珠美と話そうとしたがらないのです」

唯「ふむっ……何か心当たり、ある?」

珠美「……あるには、あるのですが」

唯「なになに?」

珠美「……その、最近……臭いが、気になってて」

唯「ニオイ?……あ~、たまみん剣道やってるんだっけ?」

珠美「はい。アイドルになったとはいえ、部活はまだ続けているのですよ」

唯「と言う事は~、その帰りからこっちに?」

珠美「そうですね。行ける日はそう多くないのですけど」

唯「……でもたまみんって、今は全然そんなニオイしないね」スンスン

珠美「あぁ、それは唯さんのおかげです」

唯「え?ゆいの?」

珠美「去年、珠美に制汗剤をくれたじゃないですか。これメチャクチャ効っく~☆って」

唯「あ、アレかー☆」

珠美「でもプロデューサー殿の反応を見ると、もしかしたら……」

唯「たまみんのニオイが、プロデューサーちゃんには届いている……のかも?」

珠美「………」



唯「……うん、分かった!」

唯「ゆいがたまみんのお悩み、パッパラパーッと解決してあげる♪」

珠美「ほ、本当ですか?」

唯「もち!いー考えがあるの☆」

珠美「シトラス……?」

唯「うんうん♪これも結構いい香りするんだよねー☆」ピッピッ

珠美「足首にかけるんですか?」

唯「そだねー、他にも……って、たまみんは香水、使ったことは?」

珠美「まだ制汗剤くらいしか……」

唯「そっか。あ、使うのはちょっぴりでいいから」

珠美「えっ」ドピュッ

唯「あっ」

唯「……どんまいどんまい☆」

珠美「うぅ……」

唯「まーでも、あの量ならニオイもさすがに大丈夫だって♪……多分」

珠美「多分って……」

唯「あ、プロデューサーちゃんはっけーん☆」



P「………」スタスタ

珠美「ぷ、プロデューサー殿!」

P「ん?」サッ

珠美「今週末の予定なのですけど」

P「……土曜日のオーディションなら、既にエントリー済みだが」ササッ

珠美「?……プロデューサー殿?」

P「悪いが、ちひろさんに呼ばれてるんだ。話なら後にしてくれ」ダッ

珠美「あっ……」



珠美「……近づく度に距離を置かれました」

唯「えぇ~?どゆこと?」

珠美「あれは明らかに珠美のこと、避けてます……」

唯「うーん……」

珠美「やっぱり、この香水でも珠美の臭いは……!」

唯「大丈夫大丈夫♪次は何とかなるでしょ☆」

珠美「次?」

唯「ちょい、待っててね。助っ人呼ぶから☆」ポパピプペ



唯「あ、もしもし♪今すぐ、ゆいの所まで来てくれるかな?」

唯「いいともーっ☆」

http://i.imgur.com/UhFBJtg.jpg

美嘉「自分で聞いて自分で答えるとか意味分かんないんだけど★」

唯「ちゃーっす!おっそーい☆」

珠美「え、えっと……?」

唯「その道のプロ、カリスマギャルを呼んでみた♪」

美嘉「で?何でアタシを呼んだか教えてくんない?」

唯「じゃー、美嘉ちゃんよっろしくー☆」

美嘉「おい★」

美嘉「……なるほどー、それはちょっと傷つくね」

珠美「以前はこんなに避けられはしなかったのです……」

美嘉「体臭が変わったとか?日頃の食べ物でも変わるらしいけど」

珠美「食事ですか?……これといって、特に変えた覚えは無いのですが」

美嘉「あとは、男の人って結構匂いに敏感らしいから……」

唯「美嘉ちゃんは、何か良いの持ってる~?」ゴソゴソ

美嘉「勝手に人のバッグを漁るな★」

美嘉「うーん……これなんかどう?」コトッ

珠美「あ、かわいい形してますね」

美嘉「今年出たばっかりの新作★バラの香水なんだけど……」

唯「えっ?」

美嘉「何?」

唯「ムスクでもキメてそうなのに、フローラル系使ってるんだ?超意外☆」

美嘉「べ、別にいいでしょ。アタシがフローラル系使ってて悪い?」

唯「ううん♪カワいートコあるんだね、美嘉ちゃんもっ☆」

美嘉「うっさい★」

美嘉「さっきは、唯のを使ったんだっけ?」

珠美「あ、はい。足首に少し」

美嘉「んー、まぁいいかな。香りが重なってもイケるらしいし」

珠美「……美嘉さんの香水を使わせてもらうなんて、申し訳ないです」

美嘉「あぁ、別にいいって★……でも足首だけじゃ、ちょっと足りないっぽいかな」

珠美「え?」

唯「こことか☆」ピトッ

珠美「ひゃんっ!」ビクッ

珠美「ち、ちょっと唯さん!?どこを触って」

唯「う~な~じっ☆」スススッ

珠美「ふあぁっ!?」ビクン

美嘉「……唯?ちゃんとつける場所分かってる?」

唯「分かってまーす♪きゃはっ☆」

珠美「えっ?……そ、そんな所まで!?」

美嘉「あとは、ひざの内側とか……」

珠美「ぁ……!」プルプル

美嘉「……とりあえず、こんなところかな★」

唯「うんうん、イイ感じイイ感じ☆」

珠美「香水って、こういう付け方をするのですか……」

美嘉「普段は足首だけでもいいんだけどね。ケースバイケースってことで」

唯「……お、プロデューサーちゃんハッケン!」



P「モバコインカードを買いに行かないと……」スタスタ

珠美「ぷ、プロデューサー殿!ちょっとよろしいですか!」

P「ん?どうし……っ!!」

珠美「?……あの、明後日の仕事のことなのですが」

P「あ、明後日、ゲホッ!ゴホッ!」

珠美「!?」

P「ゴホッ!……あ、ああ、済まな、ゲホッ!」

珠美「だ、大丈夫ですか?」

P「ん、だ、大丈、ゴホッ!……ち、ちょっと、トイレにっ……ゲホッゲホッ!」



唯「……炎のー匂い染ーみーついーt」

美嘉「唯」

珠美「………」ズーン



美嘉「参ったなぁ、これ以上ないくらいヘコんでる……」

唯「……竹刀でパーンと、守ってない脇を叩かれたみたいな?」

美嘉「例えが全然分かんないんだけど」

唯「たまみんが言ってたんだけど、何かすっごく痛いんだって☆」

美嘉「いや、そんなのどうでもいいから。どうすんのよ、彼女」

唯「んー……あ、ちょい待って!」

美嘉「?」

唯「ゆいにいー考えがあるの☆」ポパピプペ

~女子寮~


唯「とゆーわけで、やってきました我が女子寮♪」

美嘉「呼び出すんじゃなかったの?」

唯「アナタが来なさいって言われちゃった☆」

美嘉「……アタシもそう言えばよかった」

珠美「………」ズーン



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千夏「早かったのね……あら、珍しい組み合わせ」

唯「ちなったんちゃーっす!」

千夏「はいはいちゃっすちゃっす」

千夏「で、一体何の用かしら」

唯「Amamizonでゴー☆ジャスな香水買ったってホント?」



千夏「……誰から聞いたのそれ」

唯「えっとぉ、里奈ちゃんでしょ、あとフレちゃん、美紗希さんに……」

千夏「はぁ……ダメダメ。今度ばかりは流石に貸せないわ」

唯「す、少しだけ!ほんのちょっぴりだけ、たまみんのために!」

千夏「……珠美ちゃんに?」

美嘉「えぇっと、実は……」

~談話室~


コトッ

唯「こ、これが……!」

千夏「ええ。イギリス王室御用達とも言われてる、チョー高級なパルファン」

美嘉「うわぁ、初めて見たかも……」

千夏「無関心な人をも振り向かせる、ちょっとした魔法よ」

千夏「濃度が高いから、ほんの少しで効くの。その分高価なのだけれど」

唯「それじゃ早速つけt」

千夏「待った」

千夏「3滴。それ以上の使用は認めないわ」

美嘉「3滴!?」

千夏「それでも十分過ぎるくらいだから。あと、今日はダメ」

珠美「え?」

千夏「もういくつか、つけてるんでしょう?つけ過ぎは逆効果よ」

唯「じゃー、たまみんの代わりにゆいが……」

千夏「ノン」

唯「えっ!?」

美嘉「いや、アンタがつけてどうすんの★」

千夏「少し嗅がせるくらいなら構わないけど、こればっかりはね。高いし」

唯「うわケチ☆」

千夏「ん?今、何か……」



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翠「千夏さん、少しよろしいですか?」

千夏「あら、どうしたの?」

翠「プロデューサーさんから連絡が。すぐに電話がほしいそうです」

千夏「携帯……は、部屋で充電してたっけ」

翠「それなら、私の携帯を使います?」

千夏「ごめんなさい、少し借りるわ」



キュポッ

美嘉「えっ、何これ?……あ、超ヤバいこれ★」スンスン

珠美「こ、こんな良い物を、本当に珠美が使っていいのでしょうか……?」スンスン

唯「………」

珠美「?……唯さん?」

唯「いーこと思いついちゃったー☆」

~脱衣所~


美嘉「脱衣所?なんでこんな所に……」

唯「たまみんにつけた香水、落とさなきゃいけないよね!」

唯「それでー、使っていい量は3滴!」

美嘉「で?」

唯「で!ゆいと美嘉ちゃんもコレ、使ってみたいワケでー☆」

美嘉「あ、アタシはそんな事、一言も……ってか、3滴じゃ明らかに足りないっしょ」

唯「……それをぜーんぶ、クリアできる方法があるって言ったら?」

珠美「え?」

千夏「――そうね……ええ、その内ね。はい。それじゃ」ピッ



千夏「………」

翠「どうかされました?」

千夏「……千夏さん、異世界に飛ばされてみませんか?って」

翠「え?」

千夏「口説き文句かと思って適当に相槌打っちゃったわ」

翠「初めて聞く口説き文句ですね」

千夏「さてと……あら?あの三人は?」

翠「彼女達なら、先ほど談話室を出て行かれましたけど」

千夏「……翠ちゃん。ここに置いてたパルファン、知らない?」

翠「香水ですか?」

千夏「ええ、さっきまで確かにこの辺りに……」



翠「……何だか、甘い匂いがしません?」

千夏「……まさかね」

~大浴場~


ガララッ


千夏「………」



唯「キャッホォォォォォ!!」バシャバシャ

美嘉「あぁ~、珠ちゃんてぇ……こっちもぉ、ちっちゃいんらぁ~★」クニクニ

珠美「み、美嘉さっ、ちょ!どうし……ひぃんっ……!」



翠「こ、これは一体……!?」

千夏「翠ちゃん、そこの換気扇回して」

~脱衣所~


ブォォォォン……

唯「あは、あははははは……は、はは……はぁぁ~……☆」グター

美嘉「ぴにゃぁ……★」ゴロン

翠「顔が赤いですね。のぼせたのでしょうか」

千夏「香水ってアルコール度数、結構高いのよね。使い過ぎればあっという間よ」

珠美「た、たった3滴で、こんな事になるなんて……」ガタガタ

千夏「……え?3滴でコレ?」

珠美「お風呂に使えば一石三鳥だって、唯さんが言ってたのです……」

翠「……お風呂に使っちゃったら、アロマになりませんか?」

千夏「大方、全身に香りがつく的なイメージだったんでしょうね。惜しいけど」

珠美「………」

翠「?……珠美ちゃん?」

珠美「あ、アロマでは……珠美の臭い、消せないのですか……?」プルプル

翠「え?」

翠「……なるほど、そういうことでしたか」

珠美「………」

千夏「何となく、考えてはいたのだけど……香水では解決しないんじゃない?」

珠美「えっ?」

翠「千夏さんのおっしゃる通りです」

千夏「やっぱり?」

珠美「ど、どういうことですか?」

翠「プロデューサーさんは、その……全く、ダメなんですよ。芳香剤全般が」

翠「嗅いだ瞬間気分が悪くなって、頭痛や吐き気が沸いてくるそうです」

千夏「まぁ……確かに香水がダメって人、たまにいるわね」

珠美「では、珠美を見てむせたのは……」

翠「プロデューサーさんにとっては、耐え難い香りだったのかもしれません」

千夏「という事はつまり、珠美ちゃんの体臭の問題では無かった、と……」



珠美「お、おかしいです。それでは筋が通りません」

翠「え?」

珠美「だって最近のプロデューサー殿は……何にもつけてない珠美にも、素っ気無かったのです」

珠美「本当に香水のせいだったのなら、それまでの態度の理由が分かりません」

翠「………」

千夏「じゃあ純粋に、アナタを避けてるって言いたいの?」

珠美「……もう珠美には、そうだとしか……」

翠「では、プロデューサーさんに直接会って、話をされてみては?」

珠美「えっ……」

翠「腹を割って話せば、分かり合える事もあると思いますよ」

~事務所~


珠美「………」コソコソ

千夏「……私の背中に隠れても仕方ないでしょう?」

珠美「で、ですが……」



翠「プロデューサーさん。少し、よろしいですか」

P「あれ、翠?今日はオフじゃ……千夏さんも?」

翠「大分、お疲れのようですね」

P「……この時期に、弱音なんか吐いちゃいられないよ。忙しいのはいい事だ」

翠「本当に?」

P「!」

翠「……気付いてないんですか?顔や態度に出ちゃってるんですよ?」

翠「俺はもう、限界だ……って」

P「い、いや……そんな事は……!」

翠「我慢は身体に良くありません。それに……珠美ちゃんの事もありますから」

P「珠美が?」

翠「彼女はプロデューサーさんの本性を知らず、今でも苦しんでいるんです」

千夏「……本性?」

翠「はい。今からそれを、証明します」

P「ま、待ってくれ翠、まだ心の準備が」

翠「哈ッ!!」カッ



珠美「え?」

千夏「な、何?」



ムワァ……



珠美「(!?……この、鼻をつく臭い……翠さんから!?)」

千夏「(……汗臭っ!!)」

珠美「み、翠さん?この臭いは……!?」

翠「……千夏さんに電話を取り次ぐ前、私は弓道場で稽古をしていました」ムワァ

翠「その時から、一時的に封じ込めていた私の体臭を……今この場にて、解放したんです」ムワァ

千夏「……はい?」

P「あぁ、翠……君は……やはり芳しい!」クンカクンカ

千夏「えっ」

珠美「ぷ、プロデューサー殿?」

P「……そうだ……俺は、翠の……いや!」

P「君達の汗で蒸れた、この匂いが!大好きなんだっ!!」スーハー



千夏「(……え、えぇぇ~……)」

翠「そうです。プロデューサーさんが、珠美ちゃんを嫌うことなど……もとよりあり得ません」ムワァ

翠「スポーツを嗜む私達の汗臭さこそ、プロデューサーさんのエネルギー源なんですから!」ムワァ

珠美「ほ、本当なのですか?」

P「……君には、決して言うまいと思っていたんだ」

P「部活帰りの君の匂いが、俺にとって至福の香りだなんて……言えるはずがない」

千夏「サラッととんでもない性癖暴露してるわね……」

珠美「えっ……!?」ドキッ

千夏「えっ」

P「匂いを感じ取れなくなったあの日から……君にどう接すればいいのか、分からなくなっていった」

P「それで君を傷つけてしまっていたなら、俺はプロデューサー失格だな……」

珠美「ち、違うのですプロデューサー殿!珠美が、珠美が全部、思い違いを……!」

P「珠美ぃ!」ギュッ

珠美「プロデューサー殿ぉ!」ギュッ



翠「良かったですね、二人とも……」ムワァ

千夏「……何これ?いい話なの?」

翠「……私もかつて、珠美ちゃんと同じように悩んでいた時期がありました」ムワァ

翠「プロデューサーさんと初めて出会ったのも、丁度その頃……」ムワァ

翠「不思議に思って、聞いてみたんです。何故私がアイドルに、と」ムワァ



P『匂いです』

翠『えっ……!?』ドキッ



翠「私の匂いを好きだと言ってくれた人を、どうして嫌いになんてなれるでしょうか?」ムワァ

千夏「(……匂いが決め手って、それはちょっとどうなの)」

珠美「翠さん!」

翠「何でしょう?」ムワァ

珠美「珠美にも、その……臭いの封じ込め方を、教えていただけますか?」

翠「それは構いませんが……会得するには、険しき道ですよ」ムワァ

珠美「望む所です!」グッ



千夏「(……本当に、これで良かったのかしら)」

千夏「(翠ちゃんが人間離れしてるとか、プロデューサーさんが変態だとか……ううん、それよりも)」

千夏「(何か大事なことを、忘れているような気がするのだけれど)」

唯「Zzzz……ぅ~、しゃむい~……☆」ギュッ

美嘉「……プロデューサー、もぉ……そ、そんなとこまでぇ……★」ムニャムニャ



仁奈「うぅ~、今日は特に冷えやがるでs」

美嘉「ゃ……ばかぁ……★」ギュッ

唯「ぅ~ん……☆」ギュッ



莉嘉「でさっ、今日のお泊り、アタシすっごく楽しみなんだ~☆」

莉嘉「……って、どしたの仁奈ちゃん?」

仁奈「おっ……お、お風呂がっ!故障中でごぜーますっ!!」



おわり

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