ナツキ「ハルカ先輩が…」 (189)

みなみけSS、今回はゆっくり更新する。

一回だけ安価するかもしれないし、しないかもしれない。

糖分と塩分が足りないSSになると思うので、各自で補充を。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1421043331

ハルカ「ふう…」

カナ(なあチアキ、ハルカは一体どうしたんだ?)

チアキ(わからん)

カナ(まあそうだろうな。だが、学校から帰って来てずっとため息ばかりでは気になってしょうがない)

チアキ(そうだな)

カナ(チアキ、ちょっと聞いてみてくんない?)

チアキ(なぜ私が)

カナ(お願い事はチアキの方が適役じゃん、頼むよ~)

チアキ(…仕方ないな)

ハルカ(ナツキくん…、年上はダメなんだね)

ハルカ(やっぱり男の人って、ヒトミやマキみたいに可愛いタイプの子の方が好みなのかしら?)

ハルカ(って、なんで私はナツキくんの事を気にしてるんだろ…)

ハルカ「ふう…」

チアキ「ハルカ姉さま」

ハルカ「あっ、どうしたの、チアキ?」

チアキ「先ほどからため息をついていますが、何かあったのでしょうか?」

ハルカ「ううん、何でもないよ。心配かけてごめんね」

チアキ「そうですか…」

ハルカ「そうだ、そろそろ夕飯の支度をしないと」

チアキ「お手伝いします」

カナ(…チアキ、そこで引くんじゃないよ)

―翌日―

カナ「何でも無いって言われるとさ、余計に気にならない?」

ケイコ「え、何が?」

カナ「いや、何でも無い」

ケイコ「ふ~ん…」

カナ(さ~て、どうしたものかな…)

カナ(せめて何に悩んでいるのか位分からないと、こっちもすっきりしないし)

カナ「なあケイコ、悩み事を聞きだすにはどうしたらいいのかね?」

ケイコ「とりあえず、悩み事を相談される位に信用される人間になればいいんじゃないかな?」

カナ「そっか、なるほど~!」

カナ「って、それじゃいくら時間があっても足りないだろ! 私は今聞きたいんだよ!」

ケイコ「そう言われても…」

リコ「何、悩み事? それなら占い師にでも相談してみれば?」

カナ「占い師~?」

リコ「そうバカにしたものでも無いわよ?」

リコ「解決できるかどうかは分からないけど、気分が晴れるのは間違いないから」

カナ「そうなのか?」

リコ「占いの為に話をきちんと聞いてくれるし、あまり悪い事を言ったりもしないし」

カナ「占いね~。まあケイコよりはちゃんとした意見かな」

ケイコ「え~っ…」

―放課後―

カナ「せっかくだし、ハルカに勧めてみるか~、占い」

???「あの…」

カナ「ん?」

???「余計な事かもしれませんが、家に帰ってから、あまり話をしすぎない方がいいですよ」

???「そうしないと、あなたはお姉さんと喧嘩をして家出をします」

???「それからまもなく、交通事故にあってしまいますから」

カナ「…」

???(ううっ、やっぱり余計だったかな…)

カナ「お前、占い師か?」

???「えっ?」

カナ「えっ、じゃないだろ~!」

カナ「いきなり人の前に現れて予言とか、完全に占い師じゃないか!」

???「ええと、別に占いとかでは…」

カナ「まあいい、家のハルカが困ってるんだ、すぐ来てくれ!」ぐいっ

???「えっ!? ちょ、ちょっと…」

―みなみ家―

カナ「ハルカー、占い師を連れて来たぞ~!」

ハルカ「?」

カナ「さ、早速ハルカを占ってくれ」

???「ううっ…」

ハルカ「ちょっとカナ、その子困ってるじゃない!」

カナ「だって、こいつがいきなり声をかけて来たから」

ハルカ「だとしても、無理やり連れて来る事はないわよ!」

ハルカ「ごめんね? 妹が迷惑かけたみたいで」

???「い、いえ、原因を作ったのは私ですから…」

ハルカ「とにかく、とりあえずお茶を出すから、少し待っててね」

???「は、はい」

ハルカ「どう、少し落ち着いた?」

???「はい、ありがとうございました」

カナ「よし、それじゃあハルカを…」

ハルカ「それはもういいの!」

???「あ、あの…」

ハルカ「ん?」

???「不都合がなければ、お話を聞かせていただけないでしょうか?」

???「差し出がましいようですが、見知らぬ人に話す事で消える不安もありますし」

ハルカ「う~ん、あんまり人に話せる内容じゃないのよね…」

ハルカ「そもそも、名前すらわからない人に話をするって言うのも…」

???「あっ、そうですね。申し遅れました」

ミツキ「私、大橋ミツキっていいます」

ハルカ「ミツキちゃんね。それで、なんでカナに声をかけたのかとか、むしろこっちの方が聞きたい事があるんだけど」

ミツキ「そ、そうですよね…」

ミツキ「私、その、カナさんが言うような占い師ではないんですけど」

ミツキ「いわゆる超能力と言うか、第六感が発達していると言うか、そう言う所がありまして…」

ハルカ「へえ?」

ミツキ「それで、カナさんが交通事故にあう未来が見えたので、声をかけたんです」

ハルカ「なるほどね」

カナ「なんだよ~、占い師じゃないのかよ~」

ミツキ「さっきからそう言ってるんですけどね…」

ハルカ「まあいいわ。こうして会ったのも何かの縁だし、急ぎでなければゆっくりしていってね」

ミツキ「すみませ…、あっ」

ハルカ「どうしたの?」

ミツキ「ええっと、ハルカさんでしたよね」

ハルカ「うん、どうしたの?」

ミツキ「その、言い辛いんですけど…」

ハルカ「気にしないで言ってみて」

ミツキ「は、はい」

ミツキ「大きないが栗の人が、ハルカさんを困らせている未来が見えました」

ミツキ「それを解決する為には、一緒にご飯を食べて、よく話し合いをするのがいいかと」

ハルカ「…それ、さっきの未来が見えるって奴?」

ミツキ「あ、はい」

ハルカ「…」

ミツキ「あの、ハルカさん?」

ハルカ「ああ、ごめんね、ちょっと考え事しちゃって」

ハルカ「ミツキちゃん、アドバイスありがとう」

ミツキ「いえ、私でお役に立てれば」

ミツキー、どこ~?

ミツキ「あ、アカネちゃんが呼んでる!」

ミツキ「すみません、私はこれで失礼します!」パタパタパタ

どこ行ってたのよ~

ごめん、ちょっと友だちの所に

へえ、ミツキに友だちなんていたんだ?

アカネちゃん酷い!

カナ「…まるで、台風のような奴だったな」

ハルカ「その中心は間違いなくカナだけどね」

カナ「で、どうすんの? いが栗ってたぶん…」

ハルカ「余計な事言わないの。それよりご飯の支度をするから…」

カナ「あ、ケイコと約束があるんだった」ピュー

ハルカ「こら、逃げるな!」

ハルカ「…行っちゃったか」

ハルカ「いが栗って、恐らくナツキくんの事よね…。ふふっ」

ハルカ「じゃなくて! 会った事が無いナツキくんを出すって事は、ミツキちゃんの占いは本物?」

ハルカ「だとしたら…。ううん、ここで迷ってもしょうがないわね」

ハルカ「いつまでも悩んでいる位なら、いっそ…」

―翌日―

ナツキ(トウマの奴、またパンが食べたいとか…)

ナツキ(俺が作る飯に文句でもあるって言うのかよ…)

ヒトミ(ナツキのあの目は…、献立に悩んでる目だ!)

ヒトミ(どうしよう、料理はあんまり得意じゃないけど…)

ヒトミ(いやまて、別に私が作るわけじゃないし、食事を考えるくらいならできるはず)

ヒトミ(よし!)

ヒトミ「おい、ナツ ハルカ「ナツキくん」

ナツキ「ハルカ先輩?」

ナツキ「どうしたんスか?」

ハルカ「あっ、えーっとねえ…」

ハルカ(しまったわ…。どうやって話を切り出すかとか、全く考えてなかった…!)

ハルカ(おまけにヒトミと何か話してたみたいだし、結果なんか邪魔した感じになっちゃったし…)

ヒトミ「ハルカ先輩、ナツキに何か用っすか?」

ハルカ「えっ!? あ、う、うん」

ヒトミ「なら持ってくといーっすよ、どうせこいつ暇だし」

ナツキ「おい、何勝手な事を…」

ヒトミ「何だよお前、ハルカ先輩に逆らうのか~?」

ナツキ「別にそう言う訳じゃ…」

ヒトミ「だったらさっさと行けよ~、ハルカ先輩に迷惑かけるなよな」

ナツキ「あっ、ああ…」

ハルカ(ヒトミナイス! 今度ご飯おごってあげるからね!)

ナツキ「で、どうしましょ?」

ハルカ「そうね…、ここじゃちょっと話し辛いから、屋上にでも行きましょうか」

ナツキ「ウッス」

―屋上―

ハルカ「…それでね、ちょっとこのお弁当を食べて欲しいんだけど…」

ナツキ「了解ッス」

ハルカ(料理を上達させる為にナツキくんの意見を聞きたいなんて…)

ハルカ(強引な理屈だったけど、ナツキくんは納得してくれたみたいだし、取りあえず一安心ね)

ナツキ「それじゃあ、いただきます」

ハルカ「召し上がれ」

ナツキ「…」

ハルカ「ど、どうかな」

ナツキ「すげえうめえッス」

ハルカ「ほんと? 良かった」

ナツキ「ウッス」

ハルカ「…」

ナツキ「…」

ハルカ(か、会話が続かない…。こういう時、どうしたらいいのかしら)

ハルカ(家族の話とか、種は色々あるのに、どの話もあんまりしっくり来ない気がするし…)

ナツキ「ハルカ先輩は、苦手な料理とかは無いんですか?」

ハルカ「え? あ、うん、特にこれといって無いかな」

ハルカ「和食も洋食も中華料理とかも、あんまり失敗しないで作れるし」

ナツキ「すげえッス」

ナツキ「うちはオレが和食得意なんで、いつも和食なんスけど」

ナツキ「こないだトウマが、パンを食いたいとか言い出して」

ハルカ「へえ~、そうなんだ…」

ナツキ「トウマの奴、和食が嫌いにでもなったんスかね」

ハルカ「う~ん、そんな事無いと思うけど…」

ハルカ「もしかして、ちょっとマンネリになってるとか?」

ナツキ「マンネリッスか。食器の片付けもしない癖に贅沢な…」

ハルカ「そんな事言わないの。食事は一日の中でも楽しみの一つなんだから」

ナツキ「そんなもんッスか」

ハルカ「そんなもんだと思うよ?」

ハルカ「時々トウマは家に来て夕飯食べてったりするし、そういう変化も必要なのよ」

ナツキ「その件については、いつもご迷惑おかけしております」

ハルカ「そんな気を使わなくていいのに。トウマはもう家族みたいなものなんだから」

ハルカ「何だったら、ナツキくんも時々食べに来る?」

ナツキ「いや、それは…」

ナツキ「…」

ナツキ「いくらなんでも、それは申し訳ないッス」

ハルカ「そう?」

ナツキ「一回手を抜くと癖になりそうですし」

ハルカ「ナツキくんは真面目なんだね」

ハルカ「困った時はお互い様なんだし、たまには気を緩めるのも…」

ハルカ「そうよ!」

ナツキ「!?」

ハルカ「あっ、ごめん。急に大声出して」

ナツキ「い、いや、大丈夫ッス」

ハルカ(落ち着くのよ、私)

ハルカ(いくら小まめに話をする口実ができたからって、交渉が上手くいかなくては意味がない)

ハルカ(あくまでも冷静に、冷静に…)

ハルカ「それでね、やっぱりナツキくんには、時々家にご飯を食べに来て欲しいの」

ハルカ「こういう風に食べてもらってアドバイスがもらえれば、私の料理の腕も上達するし」

ハルカ「何より、ナツキくんにも肩の力を抜く時間が必要だと思うの」

ナツキ「いや、でも…」

ハルカ「ね? この通り!」

ナツキ「…」

ナツキ「わかりました。ハルカ先輩のご迷惑にならなければ、時々お邪魔させていただくッス」

ハルカ「ほんと? ありがと!」ギュッ

ナツキ「あっ…」

ナツキ「ご、ご馳走様ッス。弁当箱は洗って返しますから」ササッ

ハルカ「あっ…」

ハルカ「…ちょっと強引過ぎたかしら」

ハルカ「でも、なんだかんだでお弁当は完食してくれたし、私の料理が苦手って訳ではなさそうね」

ハルカ「料理をきっかけにナツキくんと会話を繰り返せば、なんでナツキくんの事が気になるのかもわかるはず」

ハルカ「焦る事はないわ、じっくり行きましょ」

ハルカ「それにしても…。声をかけるだけで緊張してたのに、いつの間にか結構話し込んでたわね」

ハルカ「お昼休みもそろそろ終わるし…。ナツキくんとは話が合うのかしら、ふふっ」

―教室―

ナツキ「…」

ヒトミ(ナツキのあの目は…、年上の女性に手を握られて戸惑ってる目だ!)

ヒトミ(あれ? でもナツキはずっとハルカ先輩と一緒だったよな…)

ヒトミ(何でハルカ先輩が、ナツキの手を握ったりしたんだろ…)

ヒトミ(…そうか!)

ヒトミ(きっと、手相占いだな!)

ヒトミ(占いまで出来るとは、ハルカ先輩はさすがッス!)

ヒトミ(まあそれもそうだけど、ナツキってそういうのに興味があったんだな)

ヒトミ(…私も、ちょっと覚えてみようかな)

ヒトミ(手相占いとか覚えれば合理的に…、って、何を考えてるんだ私は!)

ヒトミ(…帰りに占い関係の本、買ってこ)

―ありがとうございました~―

ヒトミ「『1から始める手相占い』『占いで男にアピールする方法』『手相から始める男女の占い作法』…これくらい買えば大丈夫だよな」

???「あの…」

ヒトミ「?」

???「一番最後の本は、読まずにそっと本棚にしまうのがいいかと。でないと、男の人と会話する事も難しくなるでしょう」

ヒトミ「…」

???(ああ、またやっちゃった…。カナさんの件で反省したはずなのに)

ヒトミ「お前、占い師か?」

???「え?」

ヒトミ「だって、いきなり人の前に現れてそんな事言い出すなんて、占い師以外にありえないだろ~?」

???「あ、いや、その…」

ヒトミ「まあいいや。お前、名前は?」

ミツキ「あ、大橋ミツキです…」

ヒトミ「そっか」

ヒトミ「じゃあミツキ、早速私の家に来て、占いを教えてくれ!」ぐいっ

ミツキ「え? あ、ちょっと…」

―ヒトミけ―

ミツキ「…と言う訳で、私はちょっと未来が見えるだけで、別に占いとかではないんですよ」

ヒトミ「なんだ、そうなのか~…」ガクッ

ミツキ(この能力にがっかりされたのは始めてかも…)

ヒトミ「あ、じゃあさ。今私の未来とか見えたりするの?」

ミツキ「そうですね、あっ…!」

ヒトミ「ん?」

ミツキ(見えてしまった…。でも、これを伝えてもいいものなのだろうか…)

ヒトミ「どうしたんだよ?」

ミツキ「いや、その…」

ミツキ(ううん、ここでためらっちゃいけない)

ミツキ(未来は自分の力で変えられるんだから、ごまかすのはよくないよね)

ミツキ「あの、ヒトミさんには仲の良い男の人がいますね?」

ヒトミ「えっ…」

ヒトミ「い、いや、別にそんなんじゃないし!」

ヒトミ「そりゃあ、ちょっと他の奴よりは多く話したりするけど、それだけだからな!」

ミツキ「はあ…(そんなんって、どんなのだろう?)」

ヒトミ「それで、その男がどうしたんだよ?」

ミツキ「あなたはその人の為に、耐え難い苦しみを得る事になります」

ヒトミ「はっ…?」

ミツキ「ですが、それを防ぐ為に手を打とうとすると、あなたの現在の日常に大きな影響が出ます」

ミツキ「しかるべきときが来るまで、じっと我慢するのが良い…。それが、私が見た未来です」

ヒトミ「よくわかったような、わからないような…」

ミツキ「とにかく、ヒトミさんが特別何かをする必要はないという事です」

ミツキ「その男の人の事も含めて、今までの生活を続けて下さい」

ヒトミ「そっか。わかった」

ミツキ「それじゃあ、私はこれで。またアカネちゃんが探すといけないので」

ヒトミ「おう、ありがとな~」

ミツキ「」ペコッ

ヒトミ「ナツキがねー…。また喧嘩でもしだすのか?」

ヒトミ「ま、そうなったら私が止めてやればいいだけの話だけど!」

ヒトミ「…取りあえず、占いについては何も無かったから、買って来た本でも読むか」

ヒトミ「そうだな…。ミツキはあんな事言ってたけど」

ヒトミ「あんなフリされたら逆に気になるよな~って事で」

ヒトミ「まずは『手相から始める男女の占い作法』から読むか!」

―翌日―

ヒトミ(…ミツキの忠告を素直に聞いておけばよかった)

ヒトミ(なんだよあれ!? 普通手を握っただけであんな事になるか!?)

ヒトミ(しかもこんな事やそんな事まで…)

ヒトミ(で、でも男はああいう事をしたいって事だよな)

ヒトミ(と言う事は、ナツキも…)

ナツキ「ヒトミ」

ヒトミ「ぴゃあっ!?」

ヒトミ「な、何だよナツキ、いきなり声かけてくるんじゃねーよ!?」

ナツキ「?」

ナツキ「ハルカ先輩が呼んでるぞ?」

ヒトミ「え?」

ナツキ「教室の外にいるらしいから」

ヒトミ「そっか。わかった」

ヒトミ「ハルカ先輩」

ハルカ「あ、ごめんね。いきなり呼び出して」

ヒトミ「ぜんぜん大丈夫ッス! それで、どうしたんすか?」

ハルカ「うん、よかったら一緒にお昼どうかなって思って」

ヒトミ「了解ッス、お供するッス」

ハルカ「ありがとう。それじゃあ屋上にでも行こうか」

ヒトミ「ウッス!」

―屋上―

ハルカ「…それでね、マキが『お会計が小学生料金になってる!』ってクレームつけたんだけど」

ヒトミ「けど?」

ハルカ「速水先輩にこっそり背負わされてたランドセルそのままだったから、追い返されたのよ」

ヒトミ「はははっ! 何すかそれ!」

ヒトミ「マキ先輩は、ほんと子どもっぽい見た目っすからね~」

ハルカ「ふふっ、マキには悪いけど私も同じ意見よ。あ、ところで…」

ヒトミ「?」

ハルカ「その~、ちょっと聞きたい事があるんだけど…」

ヒトミ「何すか? 何でも聞いて下さい!」

ハルカ「そう? それじゃあ…」

ハルカ「ナツキくんってさ、どんな食べ物が好みか、知ってる?」

ヒトミ「え、ナツキっすか? そうっすねえ…」

ヒトミ「あいつ、家で和食ばっかり作ってるから、やっぱりそういうのが好きなんじゃないっすか?」

ハルカ「和食か…。なるほどね」

ヒトミ「でも、なんでそんな事を?」

ハルカ「あ、え~っと、その…」

ハルカ「あれよ、ナツキくんってお料理得意だから、アドバイス貰えば料理が上達すると思って」

ハルカ「でも、ナツキくんの嫌いな物を食べてもらうのも申し訳ないでしょ?」

ハルカ「だから、ナツキくんの好みに合う料理を作ろうと思って」

ヒトミ「なるほど~」

ハルカ「とにかく、ヒトミのおかげで助かったわ」

ヒトミ「いえいえ、これくらいならお安い御用っす」

ハルカ「今度何かお礼するから、楽しみにしててね」

ヒトミ「はい!」

ハルカ「さて、次の授業の準備しなくちゃ。じゃあね」

ヒトミ「うっす!」

ヒトミ「…私も、料理の練習してみようかな。あんまり得意じゃないけど」

ヒトミ「あ、でもハルカ先輩に習った方がいいかな? せっかくお礼してくれるって言ってたし」

ヒトミ「話の流れからして、ナツキ好みの料理を練習してるようだし…って!」

ヒトミ「べ、別にナツキの為に料理するとか、そう言うんじゃないし!」

ヒトミ「女の子は料理が上手いに越した事はないし、ただそれだけだから!」

ヒトミ「…誰に言い訳してるんだろ。私も教室戻ろう」

―みなみけ―

ハルカ「ただいまー。あ、ミツキちゃん来てたんだ」

ミツキ「お邪魔してます」

カナ「ハルカー、腹減ったぞー」

ハルカ「はいはい、ちょっと待ってなさい。ミツキちゃんはどうする?」

ミツキ「私は家に支度があるので」

ハルカ「そう。じゃあ三人分だけでいいわね」

ハルカ「~♪」

ミツキ(カナさん、本当にやるんですか?)

カナ(当たり前だろ~! これもハルカの為だ!)

ミツキ(でも、ハルカさんに悪い気が…)

カナ(安心しろ、何かあっても怒られるのは私だ)

カナ(だから、遠慮なくやってくれ!)

ミツキ(わ、わかりました…)

ハルカ「お待たせ~。あれ、2人ともどうしたの?」

ミツキ「そ、その…。ハルカさんの未来が見えたんですけど、ちょっと言い辛いもので」

ハルカ「ふ~ん? 遠慮しなくていいわよ、気になったのなら言ってちょうだい」

ミツキ「それじゃあ…」

ミツキ「あまり細かい事は言えませんが、明日もいが栗頭の男性とお昼を食べて下さい」

ミツキ「ただし、お弁当には必ず桃を一つ入れて下さい。それも、二等分して丸い方を上にして詰めて下さい」

ミツキ「それと、これは一番大事な事なのですが…」

ミツキ「制服のワイシャツのボタンを、第二まで開けていて下さい」

ミツキ「そして、少し屈みながら桃を食べさせ…」

ハルカ「ちょ、ちょっと待って」

ハルカ「なんか長いし、大いなる何かの意思を感じずにはいられないんだけど…」

ミツキ「すみません、見えた未来を何とかする為には、これしか方法が無いもので…」

ハルカ「そっか。じゃあちょっとメモするから、もう一回最初から言ってくれる?」

ミツキ「あ、はい」

ハルカ「…なるほど。良くわかったわ。ありがとう」

ミツキ「いえ、これくらいの事なら…。では、私はこれで失礼します」

カナ「途中まで送ってくぞー」

ハルカ「うん、お願いね。じゃあミツキちゃん、また遊びにおいで」

ミツキ「はい」

―みなみけ外―

ミツキ「これで良かったんですか?」

カナ「ああ。これであいつも、ハルカを意識せずにはいられなくなる」

カナ「元々悪くは思ってないみたいだし、そうすれば後は時間の問題だからな」

ミツキ「まあ、それもそうですけど…。カナさんはどうなんですか?」

ミツキ「ハルカさんが男の人とそういう関係になれば、結婚して家を出るという可能性もあると思うんですが…」

カナ「そうかもしれないな。でも、そうなったらそうなっただ」

カナ「ハルカは私とチアキの面倒を見る為に、自分を犠牲にしてくれているんだ」

カナ「あいつももう結婚できる年だ。なのに浮ついた話の一つも無いと言うのはあまりにも寂しすぎる」

カナ「せっかく同じような立場の男がいて、ましてや、お互いそれなりに思う所があるんだ」

カナ「二人で青春の、人生の一ページを作るのもいいだろう」

カナ「チアキはともかく、私は大人だからな。ハルカには、いい加減自分の幸せを追い求めて欲しい」

ミツキ「カナさん…」

カナ「な~んて、らしくないな。私とした事がしんみりし過ぎた」

カナ「とにかくミツキ、これからも『ハルカとあいつをくっつけよう計画』への協力、期待してるぞ!」

ミツキ「はい、私にできる事があれば」

カナ「うむ、よろしい。じゃあな、また今度!」

ミツキ「はい、では」

―翌日―

ハルカ「こ、これでいいのよね…?」ドキドキ

ハルカ「ミツキちゃんの言う通りにしてはみたけど、これって確実に見えちゃうよね?」

ハルカ「…よし、やっぱり止めよう! 元々未来が見えるって言うのも可能性だけだったし…」

ヒトミ「ハルカ先輩、何してるんすか?」

ハルカ「ひゃあっ!?」

ヒトミ「あ、すみません、驚かせるつもりじゃなかったんス!」

ハルカ「い、良いのよ…」ドキドキ

ヒトミ「それで、二年の教室で何してるんすか?」

ハルカ「あー、えーと」

ヒトミ「もしかして、またナツキに用事っすか? おーい、ナツキー!」

ハルカ「ちょっ!?」

ナツキ「え、ハルカ先輩?」

ナツキ「先輩は今、三年の教室にいるはずじゃ…」

ハルカ「えっと、その~」

ハルカ「うちのクラスは掃除が早く終わったから、その分早く来れたのよ」

ナツキ「はあ…」

ヒトミ「何だよナツキ~。せっかくハルカ先輩が来てくれたってのに、文句があるのかよ~?」

ナツキ「いや、別にそう言う訳じゃない」

ヒトミ「あっそ」

ヒトミ「それにしても、この学校は変わってますよね~」

ハルカ「そうね。時々とは言え、上級生の教室を掃除させるんだもの」

ヒトミ「次の年の自分を、そして自分の未来を具体的に想像できるようにって事ですけど」

ヒトミ「まあ確かに、無駄に偉そうな人の話を聞くよりは役に立ちそうッスよね」

ハルカ「ふふっ、そうね」

ヒトミ「あ、そう言えば」

ヒトミ「ハルカ先輩は、何か将来の事とか考えてるんすか?」

ハルカ「え、私? えーっと…」チラッ

ナツキ「?」

ハルカ「…う~ん、まだあんまり考えてないかな」

ハルカ「今は妹たちの事で精一杯だし」

ヒトミ「そうッスか」

ハルカ「そう言うヒトミこそ、何か考えてたりしないの?」

ヒトミ「え、私っすか?」チラッ

ナツキ「?」

ヒトミ「う~ん、私もこれと言っては…」

ハルカ「そっか」

ヒトミ「あ、でも、なるべく早い内に結婚して、いいお嫁さんにはなりたいッス!」

ハルカ「へえ~」

ハルカ「ちなみに、旦那さんにするならどんな人がいいの?」

ヒトミ「ふえっ!? えーっと…」

ヒトミ「や、やっぱり男らしい人がいいッス…」チラッ

ハルカ「あ、そうなんだ。私もそうよ」チラッ

ナツキ「??」

ヒトミ「そ、それは置いといて!」

ヒトミ「ハルカ先輩、結局ナツキにどんな用事なんすか?」

ハルカ「あ、いけない」

ハルカ「ナツキくん、今日もお願いできる?」

ナツキ「ウッス」

ハルカ「それじゃあ、また屋上で待ってるから」

ナツキ「了解ッス」

ヒトミ「また料理の試食か?」

ナツキ「? なんでヒトミが知ってるんだよ」

ヒトミ「ちょっとな。でもいいな~、ハルカ先輩の手料理」

ナツキ「だったら、お前もくればいいだろ」

ヒトミ「いやいや、一人増えたらその分先輩が大変じゃんか」

ヒトミ「そう言う訳で、私の分もしっかりとハルカ先輩の手料理を味わって来い。ここはもういいから」

ナツキ「そうか? 悪いな。じゃあ行って来る」

ヒトミ「おう」

―屋上―

ハルカ「いつもありがとうね、ナツキくん」

ナツキ「いえ、これくらいならお安い御用ッス」

ハルカ「…」

ナツキ「?」

ハルカ(お、落ち着くのよ、私。冷静に、素早く事を済ませるのよ)

ハルカ「そ、それで、たまには趣向を変えてみようと思うの。はい、あ~ん」

ナツキ「!!」

ナツキ(ハルカ先輩、それはやばいッス!)

ナツキ(そんな風に屈まれたら、二つの桃が…、いや、弁当の方じゃなくて!)

ハルカ(ナツキくん、ちょっと顔赤くしてる? 上手く行ってるって事かしら…)

ナツキ(何とかしてもらわねば、しかしどう伝え…?)

ギュオン!

ナツキ「ハルカ先輩、危ねえッス!」パシッ ガバッ

ハルカ「え? きゃあっ!」

ハルカ「…何があったの?」

ナツキ「近頃噂のいたずら鳶ッスね。弁当盗られた奴もいるらしい…」ムニッ

ハルカ「あ…」

ナツキ(…し、しまった!)

ナツキ(せっかく弁当は死守したのに、こっちの桃に飛びつく形になってしまった!)

ナツキ(これは…、殴られる!)

ハルカ「ナツキくん…」

ナツキ「ウ、ウス」

ハルカ「助けてくれたんだね、ありがと」

ナツキ「え…」

ハルカ「それに、お弁当まで守るなんて。ナツキくんって運動神経いいんだね」

ナツキ「まあ、鍛えてるんで」

ハルカ「」ダキッ

ナツキ「!!」

ハルカ「また明日も作ってくるから、よろしくお願いね?」

ナツキ「も、もちろんッス」

ハルカ「それじゃあ、教室戻るから」タタタッ

ナツキ「…」

ナツキ「どういう事だ? 普段のハルカ先輩なら一発が飛んで来てるはずなのに」

ナツキ「もしかして、最近の行動と何か関係が…?」

ナツキ「…さっぱりわからん」

ハルカ「ミツキちゃんの未来予知は本物だったのね…。疑ってごめんなさい」

ハルカ「まあそれはそれとして、流石に抱きついたのはやりすぎだったかな?」

ハルカ「でも、ここまでしないと気づかないなんて…。自分の気持ちなのにね」

ハルカ「だけど、もやもやした胸のつかえが取れて、凄くすっきりしてる」

ハルカ「私…、ナツキくんが好き」

―一年教室―

ナツキ「…」

ヒトミ(ナツキのあの目は…、年上の女性に抱きつかれて戸惑ってる目だ!)

ヒトミ(って、どういう事だ? ナツキはハルカ先輩と一緒だったはず)

ヒトミ(と言う事は、抱きついたのはハルカ先輩。でも、何の為に?)

ヒトミ(何だろう…。上手く表現できないけど、嫌な予感がする)

ヒトミ(こういう時は…、とりあえず占いだ!)

―ヒトミけ―

ヒトミ「ええっと、明日の運勢は…」

ヒトミ「『恋愛運は最悪です。明日は異性との接触を避けた方がいいかも』だって…?」

ヒトミ「い、いや、落ち着け。他ではいい結果が出ているはず!」

ヒトミ「『意中の人はあなたを恋愛対象としては見ていないでしょう』『首を突っ込み過ぎると修羅場になる予感』」

ヒトミ「…なんでまともな結果が一つも無いんだ!?」

ヒトミ「弱ったな…、どうすればいいんだ?」

ピンポ~ン

ヒトミ「あれ、誰か来た。は~い」

ガチャッ

ミツキ「あの、近くに来たんで遊びに来ちゃいました」

ヒトミ「そっか~。…そうだ!」

ミツキ「?」

ヒトミ「ああ、気にするな。とりあえず上がってくれ」

ミツキ「はい、ありがとうございます」

ヒトミ「大したおもてなしも出来ないですが…、なんてね」

ミツキ「いえいえ、お気遣い無く」

ヒトミ「ところで、ちょっと頼みたい事があるんだけど」

ミツキ「はい」

ヒトミ「私の明日を見る事ってできないか?」

ミツキ「明日、ですか? 運次第だとは思いますが、できない事は…」

ヒトミ「それじゃあ、ちょっと頼む!」

ミツキ「は、はい。…あっ」

ヒトミ「ど、どうだ…?」

ミツキ「見えましたけど…。ヒトミさん」

ヒトミ「何だ?」

ミツキ「これから私が伝える事を、必ず守って下さい」

ミツキ「そうでないと、前に言った苦しみと得ると共に、大事なものを失う事になります」

ヒトミ「お、おう、わかった」

ミツキ「まず、いが栗頭の男性が教室を出てから、五分後に教室を出て、屋上に向かって下さい」

ミツキ「そして、誰にも気づかれないようなルートを通って、そこに設置してあるベンチに近づいて下さい」

ミツキ「そこで衝撃的なシーンを見る事になりますが、決して慌てず騒がず、速やかにその場から離れて下さい」

ミツキ「その後は、ヒトミさん次第です。その光景を認めるか、それとも認めず割って入るか」

ミツキ「その先は、私にも見えません。未来は自分の手で作り上げなければいけません」

ヒトミ「…わかった」

ミツキ「それじゃあ、私はこれで失礼します」

ヒトミ「おう、ありがとうな」

ミツキ「どう致しまして。ヒトミさんの未来に幸せが訪れますように」

ヒトミ「…」

ヒトミ「衝撃的なシーン、か。それってたぶん…」

ヒトミ「いや、ここで悩んでも仕方ないか。女は度胸だ、どんな事実であっても受け入れないと」

―翌日、二年教室―

ハルカ(さて、自分の気持ちが分かったとして…)

ハルカ(これから、具体的にどうすればいいのかしら?)

ハルカ(おかしな事については多少の知識はある、と言うかつけさせられたけど)

ハルカ(異性に対する恋愛的なアプローチとなると…)

マキ「アツコー、ちょっと聞いてよ~!」

アツコ「え、どうしたの?」

マキ「映画のチケット二枚見せてね、『よかったらどうですか?』って先輩を誘ったのよ」

マキ「そしたら『サンキュー、彼女と一緒に行かせてもらうわ』って二枚とも持ってかれたのよ!」

アツコ「それは…。マキも色々悪かったような…」

ハルカ「映画、か…」

マキ「ん、どうしたのハルカ?」

ハルカ「え? ううん、何でもない」アセッ

マキ「…はは~ん」ピンッ

マキ「この私のレーダーにビビッと来たわ」

マキ「ハルカはずばり、好きな男にどうアプローチしたら良いか悩んでる! そうでしょ!?」

ハルカ「…」

マキ「…え、マジ?」

ハルカ「」コクッ

アツコ「わあ…、それは良い事だよ、ハルカ」

マキ「いや、びっくりよ! いままでそんな気配全然無かったのに!」

ハルカ「まあ、色々あって…」

マキ「とにかく、それならハルカにこれをあげるわ」

ハルカ「映画のチケット?」

マキ「ふふん、これはただの映画のチケットではない」

マキ「恋愛のかなり笑えない話として有名な『イマコイ』の続編のチケット!」

マキ「これを異性に差し出せば、超本気である事を一瞬で悟らせてしまう程のかなり泣ける話!」

マキ「このチケットは、百の愛の言葉よりも雄弁に、ハルカの気持ちを伝えてくれるわ」

ハルカ「そ、そんな凄いものが…!」

アツコ「いや、それは流石に大げさだと思うよ…」

マキ「さあ、受け取りなさい。そして、ハルカの思いをぶつけてくるのよ」

ハルカ「マキ…。ありがとう」

マキ「良いって事よ。女は度胸、当たって砕けて来なさい!」

アツコ「いや、砕けるのはちょっと…」

ハルカ「うん、わかった。行って来る!」

アツコ「そこで納得しちゃダメじゃないかな!?」

アツコ(ツッコミって、疲れる…)

―昼休みの屋上―

ナツキ「ごちそうさまッス」

ハルカ「どうだった?」

ナツキ「旨かったッス、完璧ッス、文句のつけようが無いッス」

ハルカ「ふふっ、ありがと」

ナツキ「こんなに料理が上手いのに、まだ練習をするんすね」

ハルカ「食べてもらう人に、少しでもおいしいって言ってもらいたいからね」

ナツキ「尊敬するッス」

ハルカ「…」

ナツキ「…」

ハルカ(こ、ここよ、チャンスは今しかないわ)

ハルカ(落ち着いて、当たって砕けるのよ。あ、砕けちゃダメよね)

ハルカ「ところでナツキくん」

ナツキ「はい」

ハルカ「ナツキくん、前に映画好きだって言ってたよね?」

ナツキ「はい、わりと」

ハルカ「それじゃあ、この映画なんだけど、一緒に観に行ってくれないかな?」

ナツキ「これって…」

ハルカ「今話題の『イマコイ』の続編。チケットがたまたま二枚手に入ったから、どうかな~って」

ナツキ「…」

ナツキ「行くッス」

ハルカ「ほんと!? 良かった~」

ハルカ「ナツキくん、いつだったら都合がつくかな?」

ナツキ「いつでも大丈夫ッス」

ハルカ「なら、今週の日曜日はどう?」

ナツキ「了解ッス」

ハルカ「うん、それじゃあ…」ソソソッ

ナツキ「?」

ハルカ「楽しみにしてるからね?」ボソッ

ナツキ「!」

ナツキ(は、ハルカ先輩の息が耳に…!)

ハルカ「じゃあね、また日曜日に」タタタッ

ナツキ「…」

ナツキ「ハルカ先輩が…、一体全体どうなってるんだ?」

ナツキ「このままじゃ、俺…」

ハルカ「あ~、またやりすぎちゃった、まだドキドキしてる」

ハルカ「で、でも、これ位やれば大丈夫だよね?」

ハルカ「…ナツキくん、私の事どう思ったかな?」

ハルカ「そういう目で見てくれてるのかな? それとも…」

ハルカ「まあそれは、日曜日になったら分かる事か。緊張するな~」

―同時刻、ベンチ付近の植え込みの中―

ヒトミ「…」

ヒトミ「ハルカ先輩、ナツキの事好きだったんだ」

ヒトミ「胸が痛い…、ミツキが言ったのはこういう事か」

ヒトミ「どうしたらいいんだ? ハルカ先輩には幸せになって欲しいけど…」

ヒトミ「私だって、ずっと前からナツキの事…」

―下校中―

ヒトミ「はあ…」

ミツキ「はあ…」

ヒトミ「あれ、ミツキ…」

ミツキ「あ、ヒトミさん…」

ヒトミ「どうしたんだ? ため息なんかついて」

ミツキ「そういうヒトミさんこそ…」

ヒトミ「私はほら、あれだよ…」

ミツキ「ああ、なんとなく察しがつきました…」

ミツキ「大変でしたね」

ヒトミ「まあ、ミツキに言われてたから、多少はましだけどさ」

ヒトミ「ところで、ミツキはなんでため息ついてたんだ?」

ミツキ「あ、えっと…」

ミツキ「アカネちゃん…、友だちを映画に誘ったんですけど、断られちゃって」

ヒトミ「へえ、どんな映画?」

ミツキ「これです」

ヒトミ「『イマコイ』の続編か…、そりゃ断られるよ」

ミツキ「え、そうなんですか?」

ヒトミ「だってこれ、マジなカップルが二人で観に行くやつだぜ?」

ヒトミ「女二人で行くのは流石になあ…」

ミツキ「ダメですか?」

ヒトミ「世の中色々な愛の形があるからな。その友だちはそういう誤解を受けたくないんじゃ…、待てよ」

ミツキ「?」

ヒトミ「ミツキ、もし他にあてがないなら、そのチケット私にくれないか?」

ミツキ「え、一緒に行ってくれるんですか!?」

ヒトミ「いや、えっと…」

ヒトミ「お、おお、一緒に行ってやるよ。ただし、日付はこっちで指定させてくれ」

ミツキ「それでいいです、ありがとうございます!」ダキッ

ヒトミ「まあ、私も観に行ってみたかったからな。今週の日曜日でいいか?」

ミツキ「はい、楽しみにしてます!」

ヒトミ「おお、それじゃあな」

ミツキ「また日曜日に!」

ヒトミ「よし、これでとりあえず同じ状況になったぞ」

ヒトミ「…まあ、それでどうなるって訳じゃないんだろうけどさ」

ヒトミ「か、勘違いって可能性もあるしな! それを確かめるって意味もあるし…」

ヒトミ「…ないかな。少なくともハルカ先輩は」

ヒトミ「ナツキは先輩の事、どう思ってるんだろ? もし両思いだったとしたら…」

ヒトミ「ここで悩んでも仕方ないか。全部日曜日に分かる事だ」

―日曜日―

ナツキ「…1時間前に来てしまった。どうやって時間をつぶ…」

ハルカ「ナツキくん」

ナツキ「」

ハルカ「ちょうどよかったね。私も今来た所よ」

ナツキ「…本当ッスか?」

ハルカ「…実は、2時間位前にはもう着いてたの」

ナツキ「すみません、女性を待たせるなんて」

ハルカ「気にしないで、私が楽しみすぎて待ちきれなかったのが…」

ナツキ「…」

ハルカ「…行こっか//」

ナツキ「ウッス」

ヒトミ「…三時間前から見張ってたかいがあったな。まさかもう出発なんて」

ヒトミ「ミツキは来ないけど仕方ない。見失ったら困るし、私も行くか」

ヒトミ「この近くで映画館と言ったら一つしかないし、そっちで合流できるだろ」

ヒトミ「それにしても…、ハルカ先輩、凄い大胆な格好だな、胸があんなに…」

ヒトミ「…」ペターン

ヒトミ「い、いや、今はそんな事気にしてる場合じゃないぞ、うん!」

ナツキ「それで、この映画ってどういう内容なんすか?」

ハルカ「えっとね…」

ハルカ「前回の映画で幼馴染と先輩の二人から告白を受けた主人公が、どちらか一人に決めるまでのプロセスを描いたものらしいわ」

ナツキ「なるほど」

ハルカ「…ナツキくんだったら、どっちを選ぶ?」

ナツキ「?」

ハルカ「幼馴染と先輩、ナツキくんはどっちがいい?」

ナツキ「わからないっす。全てはその時の自分の気持ち次第なんで」

ナツキ「幼馴染とか先輩とか関係無しに、好きになった女性を選ぶだけッスから」

ハルカ「…そっか、ナツキくんらしいね。野暮な事聞いちゃったかな」

ナツキ「いえ、そんな事ないッス」

ハルカ「あ、ところで」

ハルカ「上映まで時間あるみたいだから、どこかで少し食べて行こうか?」

ナツキ「了解ッス」

―いらっしゃいませ~―

ハルカ「二人で」

店員「こちらのお席へどうぞ」

ナツキ「ハルカ先輩、どうぞ」スッ

ハルカ「あ、ありがとう」

店員(レディーファーストで席に座らせるか。若いのにやるわね)

ハルカ「こういう細かい気配りができる男の子って、モテるわよ~?」

ナツキ「いや、そういうのは気にしないッス」

ハルカ「…そうよね、ナツキくんがモテ過ぎても私が困るし…」ボソッ

ナツキ「え?」

ハルカ「ううん、何でもない」

ナツキ「そうっすか」

ハルカ「それより、こういう喫茶店で良かったの?」

ハルカ「もうお昼も近いし、もっとしっかり食べたいんじゃないかな」

ナツキ「いえ、大丈夫ッス。俺、腹いっぱいになると集中できない性質なんで」

ナツキ「それに、最近ハルカ先輩の弁当で舌が肥えてきたんで、並みの飯じゃ満足できなくて」

ハルカ「あら…、嬉しい事言ってくれるのね」

ナツキ「本当の事を言っただけッス」

ハルカ「ふふっ…」

店員(随分積極的な子ね。あいつもあれ位のセリフが言えれば…)

ヒトミ「むむっ、あんなに楽しそうにして、何を話してるんだろ…」

店員「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」

ヒトミ「…そうだよ、どうせ私は一人だよ!?」

店員「!?」

ヒトミ「あ、すいません、一人です…」

店員「こ、こちらのお席へどうぞ」

ヒトミ「ううっ…」

ハルカ「さて、注文は何にしようかな…」

店員「お客様」

ハルカ「?」

店員「ただいま当店では、カップル限定の特別メニューを提供しておりますが、そちらはいかがでしょうか?」

ナツキ「え? カップルって…」

ハルカ「あ、それいいわね。じゃあそれでお願いします」

店員「かしこまりました」ペコッ

ナツキ「あの、ハルカ先輩…」

ハルカ「…ナツキくんは、私とそういう風に見られるの、嫌?」

ナツキ「そそ、そんな事ないッス!」

ナツキ「俺なんかにはもったいないッス、身に余る光栄ッス!」

ハルカ「ふふっ、そんなに言われると照れちゃうな…//」

ナツキ「あ…」

ハルカ「//」

ヒトミ「な、何だ? ハルカ先輩、あんなに顔を赤くして…」

ヒトミ「それに、ナツキもなんかそわそわしてるし…、むむむ」

店員「あの、ご注文は?」

ヒトミ「周りを気にしないで、あんな風に人前でいちゃついて~…」

店員「は? あの、私そういう趣味は…」

ヒトミ「…あ」

店員「そ、その、ご注文はお決まりでしょうか?」

ヒトミ「…コーヒーで//」

店員「かしこまりました。砂糖とミルクはいかがなさいますか?」

ヒトミ「ブラック…、と見せかけて両方ともたっぷりお願いするッス」

店員「…かしこまりました♪(可愛い)」

店員「お待たせ致しました」

ハルカ「あ、これって…」

店員「イマコイの主人公たちが食べていた『ブーケパフェ』でございます」

ハルカ「確か、これを見た主人公が『いつか幼馴染もこれを持つ時が来るんだろうな』って言うんですよね」

店員「そうそう。それで、幼馴染が『そうだね、その時隣にいるのはきっと…』と言って、男にちらっと視線を送るんですよね」

ハルカ「へえ~、店員さんもイマコイご存知なんですね」

店員「ええ、以前友人に連れて行かれて」

ハルカ「私たち、これからそれの続編を見に行くんですよ」

店員「あら、それは何とも偶然ですね。ではごゆっくり」ペコッ

ハルカ「それにしても、上手く作ってるよね~。ちょっとでも揺らしたら崩れそう」

ナツキ「ほんとッスね」

ハルカ「まるで、本物のブーケみたい」チラッチラッ

ナツキ「…?」

ハルカ「…」

ナツキ「…あ」

ナツキ「いつかハルカ先輩も、これを持つ時が来るんですね」

ハルカ「うんうん♪ よく出来ました」

ナツキ「まあ、こういう状況になれば…」

ハルカ「でも、私がブーケを持ってる時に、隣にいるのは誰なんだろうね~?」

ナツキ「さあ…?」

ハルカ「…」

ナツキ(あれ、ちょっと機嫌悪くなった?)

ヒトミ「あれって、イマコイのブーケパフェじゃん! と言う事は…」

店員「お待たせしました、『ブラック』コーヒーでございます」

ヒトミ「おう、そこに置いといてくれ」

店員「…お客様、先程からあちらのお二人を見ていらっしゃいますが、何かご関係が?」

ヒトミ「あ、い、いや、何でも」

店員(ピクッ)

店員「余計なお世話かもしれませんが、あまり露骨な尾行は感づかれますよ?」

ヒトミ「む、それは確かに…」

店員「お店にいる間はこちらでも多少ごまかせますが、今の内から慎重になっておいた方がよろしいかと」

ヒトミ「そうだな…、アドバイスサンキュー」

店員「いえいえ、ごゆっくりなさって下さい」

店員(さながら、リアルイマコイって所ね。二人を見るに、先輩VS幼馴染って所かしら)

―数分後―

ハルカ「ご馳走様~。意外と量あったわね」

ナツキ「そうッスね、食べ応えありました」

ハルカ「それに、色々話してたらちょうどいい時間になったし、そろそろ戻ろうか」

ナツキ「ウッス」

ナツキ(いつの間にか機嫌が戻ったな。結局何が悪かったんだろう…)

ヒトミ(ここはこれで終わりか、早く追いかけないと!)

ヒトミ(むぐっ、パフェが喉に…)

ヒトミ(熱っ! やっぱ追加の飲み物は早めに頼めば良かった…)

ミツキ「あ、ヒトミさん!」

ヒトミ「お、やっぱこっちに来てたんだ」

ミツキ「はい。昨日鏡を見たら、私が置いて行かれる未来を見たので、待ち合わせ場所ではなくこちらに来たんです」

ヒトミ(それに合わせる方向には努力しなかったんだな…)

ヒトミ「ところで、ここにハル…じゃなくて、すげえスタイルの良い美人と、いが栗頭の男のカップルを見なかったか?」

ミツキ「はい、入って行きましたけど…」

ヒトミ(よし、なら後は向こうに気づかれないように探すだけか)

ミツキ「あの、ヒトミさん?」

ヒトミ「ああ、ごめん。じゃあ私たちも入ろうか」

―上映中―

ヒトミ(ハルカ先輩たちは真ん中辺りか。近すぎず遠すぎず、映画観るにはぴったりの席だな)

ミツキ「わわっ、あんなにギュッと抱きついて…」

ミツキ「ヒトミさん、あれ凄いですよ!」

ヒトミ「ん? ああ、そうだな」

ミツキ「私も、いつかはあんな風に…」

ヒトミ(…そうだな、私もいつかはナツキと…)

先輩『男くんのここ、凄く正直ね…』

男『せ、先輩…』

先輩『ちょっと触っただけでこんな風になるなんて、女性に慣れていない訳でもないでしょうに』

男『な、慣れてませんよ、こんなの!』

先輩『あら、そうなの? 私はてっきり幼馴染ちゃんと…』

男『お、幼馴染は…』

ハルカ「…これ、全年齢向けの映画よね? このシーンはちょっと…」

ナツキ「ダメッスか? 先輩が男の手を握ってるだけッスけど」

ハルカ「その、セリフがおかしな事に…」

ナツキ「?」

ハルカ(いえ、落ち着くのよ私。こんな所でためらってちゃダメ)

ハルカ(私の方が年上なんだもの、私がリードする形にしないと!)

男『幼馴染は、その、近すぎてそういう風には見ていないって言うか…』

先輩『成る程ね。だから、こうやって手を握られるだけでドキドキしちゃうんだ?』キュッ

男『せ、先輩…!』

ハルカ「…」キュッ

ナツキ「!?」

先輩『これくらいで動揺しすぎよ? 手から胸の鼓動が伝わって来るほどだなんて…』

ハルカ(ナツキくん、ドキドキしてるかな…?)

ナツキ「あの、ハルカ先輩」

ハルカ「な、何かな…?」

ナツキ「大丈夫ッスか? 手から凄い心臓の鼓動が…」

ハルカ「…//」

ナツキ(先輩、すっかり映画に惹きこまれてるんだな)

ナツキ(ま、俺も同じか。もしこの映画のように…)

先輩『ねえ、男君。男君は私の事、どう思ってるの? もちろん、女性として』

男『そ、それは、その~…』

先輩『私はね、男君の事好きだよ? もちろん、男性として』

先輩『初めて会った時は、まさかこんな気持ちになるなんて思わなかったけど…』

先輩『今の私は、男君が欲しくてたまらない。男君と、ずっと一緒にいたいの』

男『先輩…』

先輩『お願い、今ここで返事を聞かせて…?』

男『お、俺は…』

―上映終了―

ハルカ「ふ~っ。いい映画だったね~」

ナツキ「そうッスね」

ハルカ「でも、男君は結局先輩を選んだ訳か。幼馴染ちゃんにはちょっと可哀想だけど、私的にはハッピーエンドかな」

ナツキ「と言うと?」

ハルカ「…聞きたい?」

ナツキ「まあ、気になるッス」

ハルカ「それじゃあ、どこか人気の少ない公園にでも行こうか…?」

ナツキ「ウッス」

ヒトミ「なんで…、なんで男は先輩を選んだんだよお!」

ミツキ「ほんとですよね! 幼馴染ちゃんはあんなに長い時間男さんを思っていたのに…。涙が止まりません」

ヒトミ「そうだな…、くそう、頑張れよ幼馴染!」

ミツキ「そうです、私たちはいつでも幼馴染ちゃんの味方ですからね~!」

ヒトミ「…って、こんな事してる場合じゃなかった!」

ヒトミ「ミツキ、悪いけど私は用事があるんで、先に帰るわ!」

ミツキ「そうですか…? では、また今度!」

ヒトミ「おう、じゃあな!」

ヒトミ「確か、こっちの方に行ったはず…。いた!」

ハルカ「…」

ナツキ「…」

ヒトミ「二人でベンチに座ってる…。し、しかも、何かいい雰囲気…」

ヒトミ「いや、冷静になれ私。ここで気づかれたら全て台無しだ」

ヒトミ「とりあえず、隠れないと!」

ハルカ「それでね、さっきの話だけど」

ハルカ「先輩を選んでくれて良かったって言うのは、ちょっと親近感を覚えたからなの」

ナツキ「…」

ハルカ「後輩の事が好きで、アプローチをかけている所が、何だか私に似てる気がして」

ナツキ(それって、まさか…!?)

ハルカ「ねえ、ナツキくん。ナツキくんは私の事、どう思ってるのかな? も、もちろん、女性として…」

ナツキ「そ、それは…」

ハルカ「私は、私はね…」

ハルカ(言わないと、たった一言なんだから、きちんと伝えないと…)

ナツキ「待って下さい」

ハルカ「え、ナツキくん?」

ナツキ「映画では先輩から男に言ってましたが、俺はそういう事は出来ないッス」

ハルカ「ど、どういう事…?」

ナツキ「思いを伝えるのは、男の仕事だからッス」

ナツキ「ハルカ先輩、俺はハルカ先輩の事、好きッス。もちろん、一人の女性として」

ナツキ「先輩が欲しい。先輩とずっと一緒にいたいッス」

ハルカ「…」ポロッ…

ナツキ「ハ、ハルカ先輩!?」

ハルカ「ご、ごめんね? 凄く嬉しくて、つい…」

ハルカ「ナツキくん、年上はダメだって聞いてたから、凄く不安で…」ポロッ ポロッ…

ナツキ「…誰がそれを言ったのかは知らないッスけど、俺はハルカ先輩が好きッス」

ハルカ「うん…!」

ナツキ「それで…」

ハルカ「うん、わかってるよ」

ハルカ「返事をしないとね、今ここで」

ナツキ「…」

ハルカ「私もナツキくんの事、好きです。もちろん、一人の男性として」

ハルカ「だから、私と恋人になって下さい」

ナツキ「もちろんッス」

ハルカ「…ありがと」チュッ

ナツキ「せ、先輩…!」

ハルカ「ふふっ、ファーストキスあげちゃった//」

ナツキ「…俺も、初めてッス」

ハルカ「そっか、初めて同士…。何か嬉しいね」

ナツキ「はい」

ハルカ「これから、こうして二人の始めてが増えていくんだよね。そして…」

ナツキ「いつかは、映画と同じように」

ハルカ「うん//」

ナツキ「流石に、高校卒業してすぐって訳には行かないので、生活が安定してきたらって事で」

ハルカ「それじゃあ、ドレス選びはじっくり出来るね。ブーケに使う花も…」

ナツキ「そうッスね」

ハルカ「私、楽しみにしてる。その時が来るまで」

ナツキ「ウッス」

ハルカ「あっ、そろそろ帰らないと…」

ハルカ「じゃあね、ナツキくん。また明日、学校で」

ナツキ「ウッス」

ナツキ「…あ、ハルカ先輩」

ハルカ「ん、どうし…」チュッ

ハルカ「…!」

ナツキ「男がやられっ放しは、みっともないッスから」ニヤッ

ハルカ「もう…// じゃあね、また明日」

ナツキ「はい、また明日」

ヒトミ「…」

ヒトミ「……うっ、ひっく…!」ポロポロッ…

ヒトミ「わかってたのに…、こうなるかもしれないって覚悟してたのに……!」

ヒトミ「悲しくて、悔しくて、胸が痛くてしょうがない……!」

ヒトミ「こんな気持ちで、明日からどうすれば…!?」

ミツキ「…ヒトミさん?」

ヒトミ「!?」

ヒトミ「ミツキか、こんな所で何してるんだ?」ごしごし

ミツキ「この辺りをふらふらしてたら、たまたまヒトミさんを見かけたので…」

ヒトミ「そっか」

ミツキ「…その」

ミツキ「何があったかはなんとなくわかります。だから、一言だけ伝えさせて下さい」

ミツキ「私の友だちが言ってたんです。『いい未来は自分の力で作る』って」

ミツキ「今に後悔しているのであれば、何でもいいから、自分の力で未来に働きかけるべきだと思います」

ヒトミ「…」

ミツキ「す、すみません、生意気な事を言って…」

ヒトミ「…そんな事ねーよ。ミツキのおかげで吹っ切れた」

ミツキ「?」

ヒトミ「ありがと、ミツキ。私なりに、やれるだけやってみるさ」ニコッ

ミツキ「…は、はい!」

ヒトミ「さて。もう遅いし、良ければ家まで送ってくぞ?」

ミツキ「い、いいんですか? でもヒトミさんは…」

ヒトミ「大丈夫だって。私はこう見えても、中学時代番長だったんだぞ?」

ミツキ「そうなんですか? じゃあ是非お願いします!」

ヒトミ「おう!」

―ミツキけ近く―

ミツキ「この辺りで大丈夫です。ありがとうございました」

ヒトミ「そっか。また二人で遊びに行こうな」

ミツキ「は、はい! では失礼します」ペコッ

ヒトミ「…」

ヒトミ「そう、私は番長だったんだ。そしてハルカ先輩も…」

ヒトミ「女々しく諦めるなんて、私の柄じゃないっての」

ヒトミ「どんな結果になろうと、きっちりけりはつけてやる!」

―数日後、昼休みの屋上―

ハルカ「はい、ナツキくん、あ~ん♪」

ナツキ「ハ、ハルカ先輩。これはちょっと…」

ハルカ「恋人同士なんだから、遠慮しないの!」

ハルカ「それとも、私のあ~んは受けられないって事…?」ゴゴッ

ナツキ「あ、あ~ん!」モグモグ

ハルカ「美味しい?」

ナツキ「もちろんッス」

ハルカ「良かった~。じゃあ次はね…」

―同時刻、二人の死角から―

速水「なるほど、マキが言ってた面白いものってこれか~」

マキ「ナツキの奴、早速尻に敷かれてるっぽいですね!」

アツコ「あの、こういうのはやっぱり良くないよ…」

マキ「そう言いながら、アツコもちゃっかりついて来てるくせに~」

アツコ「そ、それは…」

速水「あれ、誰か近づいて行ってる」

マキ「あれは…、ヒトミ?」

速水「え? あ、ほんとだ。でも、ヒトミちゃん学校来てないって言ってなかったっけ?」

マキ「はい。なのに今日急に現れるなんて…」

アツコ「何があったんだろ? 何かを決断したような目つきだけど…」

ハルカ「あれ、ヒトミ?」

ナツキ「お前、どうしたんだよ? 何日も学校休んで」

ヒトミ「…」

ナツキ「ヒトミ?」

ヒトミ「ハルカ先輩…、いや、南ハルカ!」

ハルカ「!?」

ヒトミ「ナツキをかけて、貴方に決闘を申し込むッス!」

ハルカ「え…?」

ナツキ「お前、何言って…」

ヒトミ「っと、ナツキにはまず一言言っておかないとな」

ナツキ「何だよ?」

ヒトミ「」すう~っ

ヒトミ「私は!」

ヒトミ「ナツキの事が!」

ヒトミ「ずっと前から!」

ヒトミ「大、大、大好きだーーー!!」

ハルカ「」

ナツキ「」

速水「ひゃ~っ、これは面白くなって来たねえ~!」

マキ「修羅場だ、ガチ修羅場だよ!」

アツコ「二人とも、そろそろ離れた方が…」

???「そうだな。ギャラリーには退場してもらわないと、何より私が困る」

速水マキアツコ「??」

ナツキ「ヒトミ、お前…」

ヒトミ「…ナツキに言わせりゃ、今更だよな。でも、私は自分の気持ちをごまかしたまま終わるなんて出来ない」

ヒトミ「だから、正々堂々勝負を申し込みに来たんだ」

ハルカ「…」

ヒトミ「で、どうっすか?」

ヒトミ「まさか、初代番長が売られた喧嘩を無視するなんて、しないッスよね?」

ハルカ「…」

ハルカ「別に番長とかは関係ないけど。受けて立つわ、その勝負」

ナツキ「ハルカ先輩…」

ハルカ「ヒトミの気持ちは良くわかったわ。だからこそ、私は貴方に勝つ」

ハルカ「貴方を捻じ伏せて、私がどれだけナツキくんを愛しているか、教えてあげる」スクッ

ヒトミ「…凄い気迫ッスね。でも、私は負けない!」

ナツキ「…で、勝負と言っても内容はどうするんだ?」

ヒトミ「それは…」

???「恋愛がらみの勝負なら、当然セッ○スバトルだろ!」

ハルカナツキ「!?」

ハルカ「って、カナ! 何でこんな所にいるの? 学校はどうしたの?」

カナ「細かい事はいいじゃないか。青春を謳歌する者たちの、人生の分岐点に立ち会えるんだ」

ハルカ「全く…。で、何だって?」

カナ「だから、セッ○スバトルだよ!」

カナ「若い者同士がくんずほぐれつで愛を確かめ合う…。今回の決闘にこれ以上の内容はあるまい!」

ハルカ「…」

ヒトミ「そういう訳で、カナの立会いの下、セ…(ゴニョゴニョ)バトルッス!」

ハルカ「二人ともね~…」

ナツキ「待って下さい、ハルカ先輩」

ハルカ「?」

ナツキ「ここは俺に一言言わせて欲しいッス」スタスタ

ヒトミ「な、何だよ…?」

ナツキ「」クシャクシャ

ヒトミ「はにゃっ!? きゅ、急に頭を撫でるな!」

ナツキ「悪かったよ、お前の気持ちに気づかなくて」

ナツキ「だが、決闘に性交を持ち出すのは許さん」

ナツキ「そういうのは、本気で愛し合う二人がするもんだ、決して勢いでするもんじゃない」

ヒトミ「…」

ナツキ「そういう訳で…」ジロッ

カナ「うっ…。わかったよ、お邪魔虫は退散しますよ~っと」スタタッ

ナツキ「行ったか」

ナツキ「で、だ」

ナツキ「ハルカ先輩はあんな事言ってたが、何されようが俺の気持ちは変わらん。大人しく引き下がってくれ」

ヒトミ「…」

ハルカ「ナツキくん、もうそういう問題じゃないんだよ」

ハルカ「ヒトミは一つの区切りとして、この決闘を望んでる。だから、どんな形であれ勝負はしないと」

ナツキ「と言っても、どうするんすか?」

ハルカ「そうね~…。あっ」

ナツキ「?」

ハルカ「ちょっと待ってて、すぐ戻ってくるから」

ナツキ「はあ…」

―数分後―

ハルカ「お待たせ」

ハルカ「さあ、ヒトミ、これに名前を書きなさい」

ヒトミ「え? これって…」

ハルカ「そう、婚姻届よ。これに名前を書いて、ナツキくんに渡す」

ハルカ「それで、ナツキくんが名前を書いた方が勝者」

ハルカ「これなら趣旨にあってるし、今の状況では最も公平な内容だと思うんだけど。どうかしら?」

ヒトミ「…受けて立つッス。待ってろ、ナツキ!」

ハルカ「そういう訳だから、もうちょっと待っててね、ナツキくん」

ナツキ「…ウッス」

ヒトミ「出来た! さあ、ナツキ!」

ハルカ「はい、ナツキくん」

ナツキ「…」

ヒトミ「…あんな事言われたけど、私は諦めてないからな」

ハルカ「私、信じてるから、ナツキくんの事」

ナツキ「…」

ハルカ「ここじゃ書きにくいだろうから、場所を移してね。私たちはここで待ってる」

ナツキ「はい」スタスタ

ナツキ(…どうすればいいんだ)

ナツキ(普通に考えて、ハルカ先輩の方にだけ名前を書けばいい。ただそれだけの話だ)

ナツキ(それなのに、なんで…)

ナツキ(…ヒトミ…)

ナツキ(…よし、決めたぞ。俺は…)

どうしても選べないから安価で決める

1.ハルカ先輩の方にだけ名前を書く

2.ヒトミの方にだけ名前を書く

3.両方に名前を書く

4.どちらにも名前を書かない

>>175で、1~4の数字以外なら安価下

1

ナツキ「出来たッス」

ヒトミ「…」

ハルカ「…決まりね」

ヒトミ「…すいませんでした、生意気な事をして」

ハルカ「ううん、大丈夫」

ヒトミ「ナツキも、悪かったな」

ナツキ「いや…」

ヒトミ「ハルカ先輩、ナツキを幸せにしてやって欲しいッス」

ハルカ「もちろん、任せて」

ヒトミ「じゃあな、ナツキ」

ナツキ「ちょっと待て」

ヒトミ「?」

ナツキ「一発殴ってけ、じゃないとすっきりしないだろ」

ヒトミ「え、でも…」

ナツキ「ほら」

ヒトミ「…わかった、それじゃ…」パシーン

ナツキ「…」

ヒトミ「ありがと、ナツキ」タッタッタッ

ハルカ「…」ゴスッ

ナツキ「ぐはっ!? な、なんでハルカ先輩まで、しかも顔面…」

ハルカ「何となく…かな」

ナツキ「???」

ハルカ「でも、これでいよいよって感じね」

ナツキ「何がッスか?」

ハルカ「こうして証人もできた以上、ナツキくんは私を捨てられないって事」

ナツキ「…」ギュッ

ハルカ「どど、どうしたのいきなり!?」

ナツキ「俺が先輩を捨てるなんて、ありえないッス」

ナツキ「例え先輩に拒絶されても、俺は先輩を、絶対に離しませんから」チュッ…

ハルカ「んんっ…! ぷはあっ!」

ハルカ「はあ、はあ…」

ナツキ「一生幸せにするッス、先輩」

ハルカ「…ふふっ、よろしくお願いね。ナツキく…、ナツキ」

ナツキ「はい、じゃなくて…」

ナツキ「ああ、ハルカ」

―放課後の公園―

ヒトミ「」ぼおーっ

ヒトミ「これからどうしよ…」

ヒトミ「先輩ともナツキとも、顔合わせ辛くなっちゃったし…」

藤岡「あれ、ヒトミさん?」

ヒトミ「ん? 藤岡か…」

ヒトミ「ちょうどいい、ちょっと愚痴に付き合え」

藤岡「は? はあ…」

―END―

やっと完結した。

今回はハルカENDだったけど、ヒトミちゃんにも幸せが訪れますように。

と言う訳で、みなみけはネタが尽きたので休憩。

では。

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