橘「桜井梨穂子先輩…か……」(363)

12月26日


丘の上公園


橘「…」

橘「なんで僕はここに来ているんだろう……」

橘「……」

橘「昨日、あんな目にあったのに……」

(キャハハハハ)

(本当に来た!来た!)

(橘君、かっこいい~)

橘「…………」

橘(馬鹿みたいだよな…)

橘(勇気を出して、誘ったのに……)

橘(よくよく考えれば、あまり親しくなかったし…)

橘(勢いで誘ったとはいえ……でも…………)

橘「…」

橘(僕は…本当に楽しみにしていたのに……)

橘「………へぇっくしゅ!!」

橘「…」グズ

橘(本当に馬鹿みたいだ…風邪まで引いて……)

橘(こんな事になるなら、はるかや塚原と遊んでた方が良かったよな………)

橘「…」

ヒュウウゥゥゥ……

橘「…」ブルッ

橘(…帰ろう)

橘「帰って、温まろ…

???「わわわっ!!きゃああっ!?」

ドシーーーッン!!

橘「うぇっ!?」ビクッ

…………………



橘「…」スタスタ

橘「……ふわぁ~…ぁ…」ノビッ

橘(昨日は夜更かししすぎたな……眠い…)

橘(教室ついたら少し眠るか…って、いやいや…それじゃあ中学の時となにも変わらないじゃないか)

橘(僕ももう、高校生なんだからしっかりしないとな…)

橘「…」

橘(そうだよ、しっかりしないと…)

タッタッタッ…

???「おっはよー!純一!」

橘「わっ」

橘「はるかか…。びっくりさせるなよ」

森嶋「どうしたの?叱られたワンちゃんみたいに項垂れてたけど?」

橘「えっ、そんな風に見えてたのか?」

森嶋「うん。朝から美也ちゃんと喧嘩したとか?」

橘「違うよ。ちょっと寝不足でね」

森嶋「そうなんだ。…さては、えっちな本でも熱心に観てたな?」

橘「なっ!ち、違うよ!」

森嶋「あはは!図星だったかな?」

???「やれやれ、二人とも朝からテンションが高いわね」

森嶋「あ、ひびきちゃん。遅ーい」

塚原「はるかが先に走っていくからでしょ」

橘「塚原、おはよう」

塚原「おはよう、橘君。…睡眠はちゃんととらないと駄目よ?」

橘「は、はい。塚原先生」

森嶋「あははっ…」

塚原「ふふっ…」

橘(やっぱり、同じ中学の友達がいると、安心するなぁ…)



森嶋「…でね?下駄箱を開けたら、ラブレターがドバーッて……」

橘「はは。大変だな」

塚原「入学して早々、だもんね。…少し羨ましいかも」

森嶋「もー、本当に大変なんだから。ひびきに半分あげるから、断るの手伝ってよ」

塚原「はるか宛の手紙なのに、私が行ったらびっくりするでしょ」

森嶋「う~…」

橘「ははは、それは確かに」

塚原「…そういえば、橘君は部活とか決めた?」

橘「え?部活??」

森嶋「ひびきと私は、水泳部に入るつもりなの!」

橘「ええっ?塚原はわかるけど、なんではるかも水泳部に!?」

森嶋「そりゃあ、泳ぐの好きだし」

塚原「…遊び半分なのよね」

森嶋「なによー、いいじゃない別に」

橘「…」

橘(水泳部のはるか……)


モンモンモン…

橘(……いい、実にいい…)

橘(塚原もそうだけど、二人ともスタイルがいいからな…)

森嶋「ねえ、純一。聞いてるの?」

橘「ぅえ!?な、なに?」

塚原「…ふふ、さては、はるかの水着姿でも想像してたわね?」

橘「い、いや!そんな事は…」

森嶋「えー?そうなの?純一のスケベ~」

橘「ち、違うっての!…で、僕になんだって?」

塚原「橘君はなにか部活をやるのかって聞いたのよ」

橘「あ、ああ。そうか」

森嶋「純一も水泳部に入ればいいのに~。私達と仲良く泳ぎましょうよ」

橘(仲良く…)

モンモンモン…

塚原「…駄目ね、橘君が理性を保てなくなってしまうわ」

森嶋「あははっ」

橘「つ、塚原も言うなぁ…」

森嶋「それで、どうしようと思ってるの?」

橘「う~ん、今の所、やりたいってのはないかな…」

森嶋「そっか」

塚原「放課後に各部の人達が勧誘をしているみたいだから、興味があったら見に行ってみたら?」

橘「そうか。…うん、気が向いたら行ってみるかな」

橘(部活かぁ……中学の頃は帰宅部一本だったからな…)

橘(なにか、やってみるのもいいかもな……)

放課後 テラス


ガヤガヤ…

橘(結構、いるんだなぁ…)

ガヤガヤ

橘(やっぱり、運動部の勧誘が多いみたいだな…)

橘(サッカーか……サッカーは好きだけど、部活入ってまではなぁ…)


???「純一ぃ~」

橘「? え、は、はい?」

???「え?」

桜井「…」

橘(? 今、僕を呼んだのはこの人だよな?)

桜井「……」

橘「あ、あの、なにか…(お、おお!この人、中々のナイスな…!)」ジーッ

桜井「…えーと…」

橘(はるかよりも大きいぞ…体ははるかと比べれば少し太めだけど、逆にそれが魅力を引き立てている…!)ジーッ

橘(まさか、この学校にこんな逸材がいたなんて…)

桜井「! あぁ、そっかぁ!君も純一って名前なんだね?」

橘「え、え?!な、なんです?」

橘(い、いかんいかん!直視しすぎていた!)

桜井「ごめんね~。同じ名前の友達を探してたんだ。」

橘「あ、そ、そうだったんですか……」

橘(いきなり呼ばれてビックリしたよ…)

桜井「君は1年生かな?私は3年の桜井梨恵子って言います。よろしくね」

橘「は、はい。僕は1年の橘純一っていいます。よろしくお願いします」

桜井「…!」

橘(…あれ?この人、何処かで見たような…)

桜井「えええええっ!!??」

橘「!?」ビクッ

桜井「凄いよ!ビックリだよ~!!」

橘「ビックリ?な、何がですか?」

桜井「私の友達の苗字もたちばなって言うんだよー!」

橘「そ、そうなんですか。それはビックリですね」

桜井「あ……でも名札見ると字が違うね。私の友達は立つに花で立花なんだ。でも、凄いよ凄いよ」

橘「あはは、惜しかったですね」

桜井「えへへ…」

橘(なんか、話してると癒される人だなぁ)

桜井「……あ」

桜井「そういえば、君は部活とかはもう決めたの?」

橘「いえ、まだです。どんな部活があるのかなーと思ってちょっと見に来たんですよ」

桜井「そうなんだぁ。…もし、興味があったらなんだけど」

橘「はい?」

桜井「茶道とかやってみない?実は私、茶道部の部長をやってるんだー」

橘「そうだったんですか。じゃあ、先輩も勧誘に来てたんですね」

桜井「そうそう。無理に誘うつもりはないからね。興味があったらでいいからさ」ニコッ

橘「は、はい」ドキッ

桜井「…あっ!そういえば私、純一を探してたんだった!」

桜井「勧誘の手伝いしてくれるって言ってたのに、見当たらなくてさぁ」

橘「はは、それで名前を呼んでたんですね」

桜井「そういう事です。…それじゃあ私、そろそろ行くね」

橘「あっ、はい」

桜井「じゃね~」タッタッタ…

橘「…」

橘「桜井梨穂子先輩…か……」

間違えすぎててワロタ
見逃してくれ

期待
ほかのヒロインの学年も気になる

『早速だけど、茶道部に入部したぞ。桜井先輩に会いにいこう』



橘(勢いだけど、入部届けを出してしまった…。)

橘(正直、茶道に興味はないけれど、桜井先輩といると楽しそうだし)

橘(ちょっとだけやってみるのもいいかな)

橘(昼時間だし、先輩はきっと食堂にいるだろう。会いにいこう)


……

がやがや……


橘「凄い人だなぁ…こりゃ、探すのは大変そ……」

桜井「ラララ~♪ころころころころクリームコロッケ♪ララララ~♪」

橘「え?」クルッ

桜井「…ん?……ああ、橘くんー!」

橘「こ、こんにちは。桜井先輩…(ビックリした。まさか、こんな近くにいたなんて)」

橘(しかし、今の歌はなんなんだ?)

桜井「キミもこれからお昼?」

橘「え。ええ、まあ、そうです」

桜井「今日のオススメはこのクリームコロッケ定食だよ?すっごく美味しいんだから」

橘「確かに、美味しそうですね。…って、違う違う」

桜井「?」

橘「桜井先輩、実は僕、茶道部に入る事になったんですよ」

桜井「ぁ…」

橘「これから、よろしくお願いします。」

桜井「そ、そうだった~……私ったら…」シュン

橘「え?ど、どうしたんですか?」

桜井「顧問の先生から、キミが入部するって聞いてたんだよね…」

橘「は、はぁ」

桜井「この時間なら、キミもここに来るだろうなーって思って探してたんだけどさぁ…」

橘(先輩も探してた?う、嬉しいかも…)

桜井「それが私ってば……うぅ…」

橘「??それが、どうしたんです?」

桜井「…これ」スッ

橘「? お昼ご飯がなにか?」

桜井「今日がクリームコロッケ定食だと思ってなくてさぁ…。メニューを見た瞬間、キミの事忘れちゃって…」

橘「…」

桜井「ご、こめんね~?」

橘「あははは!」

桜井「ええっ?わ、笑わないでよ~」

橘「いやいや…笑っちゃいますよ。よほど好きなんですね。その定食」

桜井「う……ま、まぁね」

橘「変な歌を歌ってたくらいですもんね」

桜井「へ、変な歌?私、歌ってた??」

橘「ええ、バッチリ」

桜井「は、恥ずかしい……」

橘「よほど夢中だったんですね」

桜井「も、もう許してよ~」

橘「ははは…」



森島「あれ?ねぇ、ひびき、あそこにいるの純一じゃない?」

塚原「…ほんとだ。先輩かしら?楽しそうにお話ししてるわね」

森島「私も、混ざっちゃおうかな?」

塚原「…やめときなさい。それより、早く選ばないと昼休みが終わっちゃうわよ」

森島「むう、それもそうね」

橘「そういうわけで、よろしくお願いします。」

桜井「こちらこそ、よろしくお願いします。えへへ」

橘(なんか……いいなぁ…)ジーン

桜井「ねぇ、良かったら、お昼一緒にしない?部活の事、色々教えてあげるからさ」

橘「本当ですか?ぜ、是非、お願いします」

桜井「あはは。じゃあ私、場所取っておくからさ」

橘「わかりました。直ぐに頼んできます!(ラッキー!)」

桜井「ふふ、そんな慌てなくてもいいのに」



???「…むう、りほっち先輩と昼を一緒に…と思ったが」

???「…邪魔者、現る」

???「随分と楽しげに話してたなぁ。こいつはちょっと、チェックをしておこうか」

???「…ふふ」

その夜 橘家


橘「ただいまぁ~」

美也「おかえり、にぃに。……どうしたの?」

橘「え?なんだよ」

美也「なんか、良いことあったの?嬉しそう」

橘「え。…いやいや、そんな事ないよ。いつも通り、いつも通り」

美也「…ふーん」

橘(…桜井先輩、すごく美味しそうな顔して定食食べてたよなぁ……あの幸せそうな笑顔……)

橘「……へへへ」ニヘラ

美也「……気持ち悪いよ…にぃに…」

>>20
3年が1年生
2年が3年生
1年は中学生

って感じでよろしく。
全員出るかはわからんけど

ねえねえ麻耶ちゃんは!?俺の嫁たる麻耶ちゃんは学生じゃないの!?

とりあえず絢辻先輩が見たいです

『茶道部の部活動を頑張るぞ!』


橘(初めての茶道部…気合を入れて頑張るぞ!……と意気込んで来たけれど…)

夕月「そのこたつ台はそっちに運んでくれー」

橘「うぅ…」

飛羽「それは、そこ。あれは、これに」

橘「ふぅ、ふぅ」

橘(力仕事ばっかりじゃないか…!)


……

夕月「よし、こんな所だろう」

橘「や、やっと終わった…」

飛羽「おつー」

橘「まさか、部活動初日に力仕事をやらされるとは思わなかったよ」

夕月「ふっふ、茶道部に男なんか滅多に入らないからねぇ」

飛羽「役に立つ」

橘「…」

夕月「ま、同じ学年とはいえ、ここでは私たちの方が先輩だからな。これからもキビキビ働いてもらうよ」

飛羽「命令は絶対」

橘「先輩って…入部した日が何日か違うだけじゃないか……」

夕月「ふん、私たちは中学の頃から茶の道を歩んできた実力者だ。あんたなんて、どうせ帰宅部で3年過ごしてきた無気力人間だろう?格が違うわ、格が!!」

橘「うっ」

飛羽「頭が高い」

夕月「ふふーん…やっぱりなぁ。女子目当てじゃなきゃ、こんな所に入部なんてしないよなぁ」

橘「いや、だから…」

飛羽「照れるな、照れるな」

夕月「まぁ確かに、わかるよ。りほっち先輩かわいいからなぁ」

橘「う…うん」

飛羽「愛らしい」

夕月「それに私らと違って、スタイルもいいしなぁ!」

橘「ああ、それは同感…

ビシッ

橘「いてっ!」

夕月「貴様、蹴るぞ…」

橘「もう蹴ってるよ……」ヒリヒリ

飛羽「無礼者」

夕月「まぁ、あんたが先輩にアプローチかけようがかけまいが、私らには関係ないけどさ」

夕月「…りほっち先輩、実は密かに想っている人がいるみたいだから、あんたにはちょーっと難しいと思うけどなぁ」

橘「えっ!そ、そうなのか?」

飛羽「…ショック」

橘「あ。い、いや、その」

夕月「ただ、私らが予想するに、片想いだと思うんだけどね。あんたにも、少しはチャンスがあると思うよ」

飛羽「頑張れ」

橘「は、はあ…」

橘(そうだよな。3年生なんだし、そういう人がいてもおかしくないよなぁ…)

ガラッ

桜井「おっ疲れ様~」

橘「あ、桜井先輩……」

夕月「お、来た来た」

飛羽「噂をすれば」

桜井「ん?噂??なになに?」

橘「いやいやいや!なんでもないですよ!」

桜井「?」

夕月「くくく」

飛羽「ふふふ…」

桜井「ふーん?まぁ、いいや」

桜井「それより遅れてごめんね?お茶菓子を持ってくるのに時間かかっちゃった」ガサ

夕月「お、それはまさか…」

飛羽「シュークリーム」

桜井「その通りです。じゃじゃ~ん」パカッ

橘「美味しそうですね」

桜井「改めて、新入部員達の歓迎会をやろうと思ってね~」

夕月「さっすが、りほっち先輩」

飛羽「部長の鑑」

桜井「えへへ」

夕月「じゃあ、橘には力仕事頑張ってもらったし、私と愛歌でお茶を淹れるとしようか」

桜井「え?遅れてきたし、私がやるよ?」

夕月「まぁまぁ、部長は座って待ってて。どうせだから、愛歌が持ってきてる美味しいお茶を淹れるからさ」

飛羽「教室に取りに行かなければ…」

桜井「そうなの?…じゃあ、お言葉に甘えて。えへへ」

夕月「…」ジッ

橘「…ん?」

夕月「…」ニヤ
飛羽「…」ニヤ

橘「…!」

桜井「…?」

夕月「じゃ、行こうか愛歌」

飛羽「れっつごー」

パタン

桜井「じゃあ、お湯だけ沸かしておこうか」

橘「そ、そうですね。(あの二人、気を使ってくれたのか…?)」

>>31
麻耶ちゃんは先生のままだ…すまんな
>>32
綾辻先輩の話とか考えてるけど、これが無事終われたらやってみたいね

ああ、>>34>>35の間の張り忘れが…

>>34の次

夕月「まぁでも、入部してくれたのは本当に嬉しいよ。これからもよろしくな」

飛羽「感謝」

橘「あ、ああ。よろしく」

夕月「…でさ、さっそく聞きたい事があるんだけど」

橘「ん?」

夕月「あんた、りほっち先輩が目当てでここに入部したのか?」

橘「うぇっ!?」

飛羽「図星か」

橘「な、なんで?そう思うんだよ?」

夕月「いやだって、あんたどう見ても茶道部に興味なんかなさそうだし」

飛羽「昨日、食堂で先輩ととても楽しそうに話していたのを見ていた…」

橘「い、いや。あれはただ、入部の挨拶をね…」

桜井「ここのシュークリームね。本当に美味しいんだよ~?」

橘「ああ、僕も知ってます。実は、この店のシュークリームは妹も大好きでして」

桜井「へぇー、妹さんがいるんだね。」

橘「はい、これが生意気な奴でして」

桜井「あはは。でも羨ましいよー」

桜井「私は一人っ子だからさ。私も妹とか欲しかったなぁ」

橘「あんな妹で良かったら、持っていってください」

桜井「あははは」

橘「ははは…」



美也「ぶぇっくしぇ!!」

七咲「うわっ」

中多「美也ちゃん、風邪…?」

美也「ズズ… んーん、大丈夫大丈夫」

美也「むぅ……さては、お兄ちゃんが美也の悪口を言っていたな…」

七咲「え、お兄さんが?」

美也「そうだよ!美也と学校が違うのをいいことに、美也の事好き放題言ってるんだよ!!」

中多「そ…そうなの?」

美也「第六感ってやつかな?にぃにめ…帰ってきたら覚えておけよ……」メラメラ

中多「美也ちゃん、すごい…!」

七咲「あ、あはは…(そんなお兄さんには見えないけどなぁ…)」

桜井「もし良かったら、ひとつ妹さんに持っていってよ」

橘「え?い、いいんですか…?でも、これは部活の…」

桜井「いいからいいから。余分に買ってあるから、遠慮しないで持っていってよ」

橘「あ、ありがとうございます。妹も喜びますよ」

桜井「うんうん」

橘(桜井先輩、いい人だなぁ……)

橘「…」

橘(こんないい人に片想いされてる人がいるなんて、なんて幸せものなんだ…!)

橘(いったい、誰なんだろう…気になるぞ……)

橘(思いきって聞いてみるか?いや、でも…いきなり聞く話でもないだろう…)

桜井「? どうかしたの?」

橘「え。あー、いや、その……へへ」

桜井「??」

橘(けど……気になるのも事実だ…どうしよう?)


ニア1.好きな人がいるのか聞く

2.やっぱり聞かない

安価か?

>>47
好きな方選んでおくれ

多数決で良いのだろうか…
ならまだ2かな

>>50
とりあえず先に決めてくれたので1で話を進めていくよ

橘(よ…よし!思いきって聞いてみよう……!)

橘「…あの、桜井先輩」

桜井「ん?なに?」

橘「その、桜井先輩は……好きな人とかいるんでしょうか?」

桜井「え…」

橘「…」

シーン……

桜井「………えぇ?!ど、どうしたのさ急に?」

橘(当然の反応だよなぁ…)

橘「実はさっき、夕月達が桜井先輩には気になっている人がいるって話をちょっと聞きまして…」

桜井「ええ~?…あ、もしかしてさっきの噂をすればって…」

橘「はい、その話です」

桜井「もう、なんて話をしてるのさ~」

橘「ははは…。まぁまぁ」

桜井「まぁまぁじゃないよ~」

橘「……で、どんな人なんですか?」ズイッ

桜井「な、なんでそんな事知りたいの?」

橘「いやぁ、桜井先輩って優しい人じゃないですか」

桜井「そ…そうかな?」

橘「そうですよ。…それで、そんな優しい桜井先輩に想われている羨ましい人はどんな人かなぁ……と」

桜井「羨ましいって…」

橘「羨ましいですよ!」

桜井「う…う~ん……困ったなぁ…」

橘「…」

桜井「……確かに、片想いしてる人はいる……よ…?」

橘(ああ、やっぱりいるのか…)ズーン

桜井「…でも、純一はもう…」

橘「え?」

桜井「え?…あっ」

桜井「ち、違うよ?純一って、キミの事じゃなくて……あっ、言っちゃった…」

橘「…もしかして、最初に会った時に言っていた、あの先輩ですか?僕と名前が同じっていう……」

桜井「…う、うん。……そう」

橘(確か、立花先輩だっけ…?僕はまだ会った事がないけど……)

桜井「……」

橘「そ、そうだったんですか。いやぁ、一瞬ドキッとしちゃいましたよ…」

桜井「あはは…ごめんね?」

橘「いやいや、謝るのはこっちの方ですよ!すいません、先輩。変な質問をしてしまって……」

桜井「ははは…いいよ、別に」

橘(なんか…一瞬だけど、先輩、寂しそうな顔をしていたな…)

橘(それに、純一はもう…って……)

ヤカン「ピーーーーッッ!!!」

橘「うおっ?!」

桜井「わあっ!?い、いけない、沸かしすぎちゃった!!」パタパタ

橘「ビ、ビックリした…」

ガラッ

夕月「お待たせー」

飛羽「時は来た」

桜井「あ、きたきた。お湯もちょうど沸いたよ~」

夕月「よし、愛歌!極上の一杯を頼んだ!」

飛羽「お任せあれ…」スタスタ

桜井「私も手伝うよ~」スタスタ


橘「…ふう」

夕月「どうだ?ちょっとはアピール出来たのか?」ヒソヒソ

橘「はは…どうだろうね」

夕月「ふっ…ま、頑張りなよ。陰ながら応援してやるからさ」ポンッ

橘「ああ、ありがとう…」

その夜 橘家


ガチャ

橘「ただいま~…と」

美也「あ、帰ってきた!コラーッ、にぃにっ!!」どたどたどたっ

橘「あ、美也。これ、おみやげ」

美也「え?…おみやげ?」ピタッ

橘「そう。部活の先輩から美也にってね…お前の大好きなお店のシュークリームだよ」

美也「うわー!ホントだ!!ありがとー!」

美也「よしよし、だったら今日の事は水に流してあげるよ、にぃに。にっしし♪」

橘「…。なんだよ、今日のことって…」

純一の部屋


橘「ふーっ…」ドサッ

橘「…」

橘(立花純一先輩…かぁ……)

橘(どんな人なのか、気になるな…)

橘(明日、探してみようかな…?)

橘「……」

橘(純一は、もう…か。それってつまり……そういう事なのかな)

橘(だとしたら、僕にもチャンスはまだ…ある?)

橘(…でも、なんでこんなに桜井先輩が気になるんだろう。……不思議だ)

橘(なんか…何処かで会った覚えがあるんだけどなぁ……思い出せないや…)

『このままじゃ遅刻だ… 最近見つけた抜け道を使おう!』


タッタッタッタッ

橘「はぁ、はぁ…!(美也の奴め…弁当を忘れていくなんて……)」

橘(学校まで届けに行ったから時間がかかった…このままじゃ遅刻だ…!)

橘「…!そ、そうだ。最近見つけた通り道を利用してみるか……!あそこを通れば、正門まで行かなくてもいいし…よし、そうしよう!!」

タッタッタッタッ…

橘「はぁ、はぁ、はぁ…」

橘(なんて事だ……通り道を抜けようと思ったら…)

???「う…うぅ~…!」

橘(誰かが抜け道にはまってしまっている…!)ガーン

???「ど、どうしよ~……」

橘(あれ?この声は…)

橘「さ、桜井先輩ですか?」

桜井「え?あぁ、もしかして橘君!?」

橘「は、はい。…なにしてるんですか?」

桜井「見ての通りだよ~。挟まっちゃって動けないんだよー。助けて~」

橘「もしかして、先輩も遅刻してここを通ろうと思ってたんですか」

桜井「そうそう、うっかり寝坊しちゃって…えへへ……」

橘「ははは…わかりました。僕もそこを通らないと遅刻になりますからね」

橘「では、…引き抜いていいんですよね?」

桜井「う、うん!思いっきりやっちゃってよ」

橘「お、思いっきりですか………はっ!」

橘(…この場合、何処を持って引っ張ったらいいんだ…?)

橘(足か…?)ジーッ

橘(それとも、太ももか?)ジーッ

橘(まさか、腰か!?)ジーッ

桜井「早くしてよ~」

橘(ど、どれだ!?)

1.足から引っ張る
2.太ももから引っ張る
3.腰から引っ張る

橘(足を引っ張れば不可抗力とはいえ、下着が見えてしまうかもしれない…)

橘(太ももを引っ張れば、さすがの桜井先輩でも怒って変態扱いされるなもしれない…)

橘(ならば、選択肢はひとつ、腰だ!)

橘「で、では失礼します」

ギュッ

桜井「ひゃあっ!?」ビクッ

桜井「ど、どこ触ってるの~!?」

橘「す、すみません。でも、ここが一番引っ張りやすそうだったんで…」

ぷにっ

橘(……挟まった原因はこれか…?)

桜井「や、やだ、つままないでよー!」

橘「はっ。すいません、急いで引きますね…せーのっ!」グイッ

桜井「うう~」

ズズズ…

スポンッ

桜井「ぷはっ」

橘「ふう、抜けた」

桜井「ありがとう橘君~。君が来てくれなかったら、このまま死んでたかも…君は命の恩人だよ~」

橘「そ、それは大袈裟ですよ…。でも、抜けて良かった。さ、立ってください」スッ

桜井「う、うん。ありがとう……でも、えっち」

橘「ええっ!?そ、そんなぁ…」

桜井「あはは、冗談冗だ…」グラッ

桜井「わっ!足がもつれ…」

橘「へ?」

桜井「きゃああっ!!」

橘「うわわっ!!」


ドシーーーッン!!!

桜井「い…てて…」

橘「ぐ………ぐはっ…」ガクッ

橘(……はっ!)


その時、純一は思い出した

12月の、あの日の事を

ヒュウウゥゥゥ……

橘「…」ブルッ

橘(…帰ろう)

橘「帰って、温まろ…

桜井「わわわっ!!きゃああっ!?」

ドシーーーッン!!

橘「うぇっ!?」ビクッ

桜井「いっ………たぁぁ~…」

橘(ビ、ビックリした……あの人の転んだ音か…)

橘(あ、何か荷物を落としたみたいだ……拾ってあげるか…)

ひょいっ

桜井「…え?」

橘「あの、これ落としましたよ。…大丈夫ですか?」

桜井「……」

桜井「…見てたんですか?見たんですか?」

橘「え…は、はぁ……?」

桜井「ち、違うんです~!それは決して、一人で食べようと思ってたわけしゎなくてー!!」

橘「え、ええっ?な、何がですか?」

ガサ

橘(ん?よく見ると、この袋はまんま肉まんが売ってる店の袋じゃないか…しかも、この重量感は結構な数が…)

桜井「ホントに違うんです。大食いって言われる事もあるけれど、本当はそんな事ないんです~!」

橘「…ふふ……あはは」

桜井「笑わないでくださいよ……って、あれ?」

橘「?」

桜井「大丈夫ですか?顔色が悪く見えるけど……」

橘「あ…ああ。ちょっと嫌な事があって……でも、平気ですよ。これから帰る所だったんで」

桜井「そ、そうですか。…あ!そうだ、拾ってくれたお礼に、これひとつどうぞ!」スッ

ほかほか…

橘(まんま肉まん…。けど、転んだからか、潰れかけてる…)

橘「…ふふ……あはは」

桜井「笑わないでくださいよ……って、あれ?」

橘「?」

桜井「大丈夫ですか?顔色が悪く見えるけど……」

橘「あ…ああ。ちょっと嫌な事があって……でも、平気ですよ。これから帰る所だったんで」

桜井「そ、そうですか。…あ!そうだ、拾ってくれたお礼に、これひとつどうぞ!」スッ

ほかほか…

橘(まんま肉まん…。けど、転んだからか、潰れかけてる…)

桜井「あ、あれ?やだ、別のを…」ガサガサ

橘「…」

桜井「これも…やだ、これも形が……うぅ…」

橘「ははは、別に気にしませんよ…」

桜井「そ、そうですか?じゃあ、これ食べて体を温めてください」

橘「ありがとうございます。でも、いいんですか?食べるために買ったんじゃ…」

桜井「いいんですよ。気にしないでください」ニコッ

橘「…!はは、じゃあ、遠慮なく…」

桜井「風邪引かないようにしてくださいね」

橘「…はい、ありがとうございます」

桜井「えへへ。それじゃあ、私はこれで」

橘「また、転ばないでくださいね」

桜井「あはは、もう転びませんよ。それじゃあ、さようなら~」

タッタッタッタッ…

ツルッ

桜井「わわわわっ!?」ヨロヨロ

橘「…あはは……」

橘(なんか、元気出たな…)



………


橘(そ、そうか……そうだったんだ…!)

桜井「だ、大丈夫?橘君!」

橘「え…… とりあえず、重いです…」

桜井「わっ、ごめん!」

桜井「…って、おも…重くはないよ~!」

橘「あ、す、すいません。つい…」

とりあえず今日はここまで

桜井「…あはは、おかしいね。二人とも朝から何をやってるんだか」

橘「本当ですね…」

橘(桜井先輩はあの事、覚えてないんだろうな…)

橘(あの時、桜井先輩が現れてくれたから、僕は立ち直れたんだ…)

橘(そうだ…僕はあの時から、桜井先輩に一目惚れしてたんだ…!)

キーンコーンカーンコーン

橘「あっ…」

桜井「ああ……完全に遅刻だね~…」

橘「…そうですね」

桜井「仕方ない…こうなったら、堂々と正門から入っていこうか!ねっ」

橘「…はいっ!お供します!!」

桜井「あはは、なんだか頼もしいよ」

『朝から体力を使ったから腹が減ったな…急いで食堂にいこう』


キーンコーンカーンコーン

橘「ふう、昼か。朝から体力使ったから腹が減ったよ…」

橘「今日はパンより、ご飯ものだな…よしっ」

スタスタ…


???「あ、いたいた!」

???「おーい」

橘「ん?」

橘(誰だ?知らない人が僕を呼んでいるぞ…)

タッタッタッ


香苗「君、橘君だよね?」

橘「え?は、はい。そうですけど…」

梅原「ほうほう、中々の男前じゃねぇか」

香苗「いきなり呼び止めてゴメンね。私、3年生の伊藤っていいます。こっちは同じ学年の梅原君」

梅原「よろしくな!」

橘「ああ…!い、伊藤香苗先輩ですか!知ってます知ってます!!」

香苗「あれ?会った事あったかな?」

橘「創設際に行われる、ミス・サンタコンテストで二年連続で優勝していて、今年は前代未聞の三連覇を狙っているっていう…!」

香苗「く、詳しいね…はは……」ヒクッ

橘「1年生の間じゃ有名ですから…伝説の先輩ですよ!」

香苗「そ、そうなんだ」

梅原「…くぅっ!俺の草の根活動もついに実を結んだようだなぁ…!感無量だぜぇ…!!」

香苗「…って、アンタの仕業か!」ポコッ

香苗「…まぁ、私の事はどうでもいいんだけど。良かったら、私達とお昼一緒にしない?」

橘「え?…ええ、まあ、いいですけど……」

梅原「ふふふ、色々聞きたい事もあるからなっ」

橘「聞きたい事?」

香苗「まぁまぁ、それは向こうでゆっくり聞かせてもらうからさ!」

梅原「さ、行こうぜ行こうぜ~」

橘「わ、わかりました」

がやがや…

橘「えーと、それで話っていうのは?」

香苗「いきなりぶっちゃけた事聞くけど、橘君は桜井に気とかあるの?」

橘「ぶっ! …な、なにをいきなり……」

梅原「おお…分かりやすい反応だな、おい」

香苗「今日、仲良く遅刻してきたみたいじゃん?桜井、最近君の話をよくするんだよねー」

橘「そ、そうなんですか…?」

香苗「うん。頼りになる後輩が茶道部に来てくれたってね」

梅原「よくわからんが、今日は命の恩人とも言ってたな」

橘「た、頼りになる後輩…ですか。(う、嬉しいぞ…)」

香苗「…で、どうなのかな?」

橘「え…その……」

梅原「桜井さん目当てで茶道部入ったんだろ?丸わかりだぜ?」ツンツン

橘「……まぁ…気になってる人ではあります…はい」

香苗「ほう」ニヤリ

梅原「ほう」ニヤリ

橘(な、なんだ?)

香苗「そっかそっかー。うんうん、いいねぇ」

梅原「おう!俺達ぁ、応援するぜ!若大将!!」

橘「わ、若大将?」

香苗「桜井、今付き合ってる人とかいないからさぁ。頑張ってよ!!」グッ

橘「あ、ありがとうございます…」

橘「で、でも、桜井先輩は桜井先輩で気になる人がいるみたいで…」

香苗「ぁ…」

梅原「…お、知ってたのか?」

橘「ええ、つい最近聞いたんですけどね」

香苗「君、結構積極的なんだねぇ」

橘「はは、まあ、流れで…といいますか…」

梅原「うーん、まぁそれはそうなんだが……」

香苗「桜井が気になってる人には、もう付き合ってる人がいるんだよね…」

橘(やっぱり、そうだったのか…)

梅原「桜井さんもそれは知ってるんだがなぁ…長い付き合いの奴だったから、わかっていても諦めきれない所があるんだろう」

香苗「気を向けられてる相手は、結局桜井の気持ちに気づいてなかったしね…」

橘「…」

梅原「ああ…だけど、来年で卒業するってのに、いつまでも引きずってちゃ駄目だ…。お節介かもしれないけどな」

香苗「うんうん。私も、桜井とは一緒に笑って卒業したいしね」

待ってる

梅原「まぁ、そんな訳だからお前さんは他の男の事なんか気にせず、桜井さんが好きならガンガン攻めていけばいいんだよ!」

橘「は、はぁ。なるほど」

香苗「応援してるよ、ほんとに。頑張ってね!」

橘「わ、わかりました。頑張ります…!」

スタスタ…

桜井「…あー!香苗ちゃん、やっと見つけた~」

香苗「お、噂をすれば」

橘「桜井先輩」

桜井「探したよ~。お昼一緒に食べようと思ってたのにー」

香苗「あはは、ごめんごめん」

桜井「あれ?橘君?」

橘「あ、どうも…」

桜井「梅原君も…なんだか、珍しい組み合わせだね?」

梅原「ああ、桜井さんが絶賛してる後輩がどんな奴なのかなと思ってね」

桜井「え、ええ~?絶賛って…」

橘「ははは…」

香苗「ほらほら、桜井も座りなよ!仲良くお昼を食べようじゃない、ね?」

梅原「そうそう、親睦を深めようじゃない?」クネクネ

桜井「うーん。なんだか怪しいけど…ま、いっか」

桜井「橘君、隣いいかな?」

橘「え!ええ、もちろんです!どうぞ!!」

梅原「うん、うん…」ニヤリ
香苗「ふふふ…」ニヤリ

桜井「???」

こうして、先輩方と楽しくお昼を食べた…

その夜 橘家

橘(うーん、今日の昼時間はとても楽しかったな……いい先輩達とも知り合えたし…)

橘(それに、桜井先輩とも結構仲良くなれた気がする…。なんかいい感じじゃないか?)

ガチャ

橘「ただいまー…ってあれ?」

美也「あ、おかえり、お兄ちゃん」

七咲「…あ、先輩…!」

中多「お、お邪魔してます…」

橘「おお、逢ちゃんに紗江ちゃんじゃないか!久しぶり!!」

七咲「お久しぶりです、先輩。卒業式以来ですね」

橘「本当に久しぶりだなぁ。高校行ってからあまり会えてなかったもんなぁ…」

美也「たまに遊びに来てたけど、お兄ちゃんは部活もあるから、全然会えなかったんだよね」

七咲「そういえば先輩、茶道部に入ったんですってね。美也ちゃんに聞きましたよ」

中多「先輩が茶道部って…驚いちゃいました……」

橘「はは、そうだろうね」

美也「きっと、可愛い先輩がいて、釣られて入っちゃったんだよ」

七咲「ふふ、先輩ならあり得そうだね…」

橘「ギク…って、失礼な!こう見えても、真面目に部活動はやってるんだぞ!」

美也「ほんとかなぁ?力仕事ばっかりやらされてるんじゃないの?」

橘(こいつはイチイチ鋭いな…!)

橘「…ええい!ならば、この輝日東の千利休こと、橘純一様のお茶の美味さを味わうがいい!!」

美也「ほうほう、それは楽しみだなぁ」

橘「まだ抹茶は点てられないが、とびきり旨い番茶を味あわせてやる!!吠え面かくなよ、美也!!」ビシッ

中多「せ、先輩、怖い…」

七咲「…無駄に迫力があるね」

美也「ふふんっ!望む所だ、明智くん!!お手並み拝見といこうかっ!」

……

ズズ…

美也「わぁ、おいしーっ!」

橘「ふっ、だろ?蒸らし時間に秘訣が…
七咲「ほんとに、美味しいね」

中多「うん…。先輩、凄いです…」

橘「はっはっは…」

美也「むぅ、真面目にやってるみたいだね……美也の負けだよ…」

橘「ふん、恐れ入ったか…(夕月達がやってたのを真似ただけなんだけどね…)」

七咲「あの、先輩の茶道部って、結構人数いるんですか?」

橘「え。いや、部長と僕と同級生の二人だけだよ」

七咲「じゃあ、先輩達が入る前は部長さんが一人でやっていたんですか?」


橘「いや、部長と仲の良い人が仮入部みたいな形で手伝ってたらしいんだ。二人以上なら部活動として認められるみたいだからね…」

七咲「そうなんですか。…という事は、部長さんが卒業したら来年の部長は先輩になるかもしれないんですね」

美也「お兄ちゃんが茶道部の部長…?」

橘「ま、まぁ、その可能性もあるかな」

美也「あはは、お兄ちゃんが部長だなんて、絶対に似合わないよ~!ねぇ、紗江ちゃん?」

中多「そ、そんな事ないと思うけど……」

橘「悪かったな、どうせガラじゃないよ…」

美也「そういえば、お兄ちゃんの学校ってクリスマスに創設際やるんだよね?」

橘「ん?ああ、そうだけど」

美也「茶道部も何かやるの?」

橘「ああ、まあ一応な」

美也「よし!じゃあ、今年のクリスマスは美也達がお兄ちゃんの茶道部の仕事っぷりを見に行ってあげるよ!」

橘「ええっ!?」

中多「あ…面白そう」

七咲「いいね、それ。私達は学校休みだし…私達も来年通うから、色々見て回りたいかも」

中多「うん、うん」

美也「よぉし!決まり!!お兄ちゃん、カッコいいとこ見せてよ!」

橘「美也が来たら、静かな茶道部の雰囲気も壊れそうだな。はは…」

美也「む!なんて事言うの、ばかにぃに!!」

橘「みんなの前でにぃにはやめろ…」

七咲・中多「あははは…」

>>83
サンクス
なるべく長くならないようにするよ

別に早めに終わらそうとしなくていいのでエタるのだけは勘弁してください

『肌寒い季節になってきたな… 部室のこたつで温まろう』


ヒュウウゥゥ…

森島「うぅ~、寒い!」

橘「風が冷たくなってきたな……もう、秋か…」

塚原「入学してから、あっという間だったわね。創設際の準備もそろそろ始まる頃かしら」

森島「楽しみね~、創設際!」

橘「そういえば、水泳部は出し物なにをやるんだ?」

森島「えーと…なんだっけ?ひびきちゃん」

塚原「…あのね」

塚原「水泳部は毎年、おでんの出店をやってるのよ。だから、今年もおでん屋ね」

橘「おでんか……寒い季節には最適だなぁ」

森島「私、ちくわが好きだからいっぱいあるといいな~」

塚原「私達は販売する側でしょう…」

森島「あ、そっかぁ。…でも、ちょっとぐらいつまんでもオーケーでしょ?」

塚原「オーケーなわけないでしょ。…はぁ」

橘「ははは…、はるかは相変わらずだな」

森島「ねえねえ、純一は何をやるの?」

橘「ウチは甘酒の無料配布だな。水泳部のおでん程ではないけど、結構評判はいいみたいだぞ」

森島「わお、甘酒!いいわね~。飲みに行こうーっと!!」

塚原「…でもはるか、あなたミス・サンタコンテストにも出場するつもりなんでしょ?」

森島「あ…、そうだった」

橘「な、なに!?はるかがミス・サンタコンテストに!??」

森島「うん、面白そうじゃない?それに、可愛い女の子も沢山見れそうだし!」

橘(はるか…水泳部に入ってから、さらにスタイルが引き締まった気がする……!)

橘(そんなはるかが、サンタコスをしたらどうなってしまうんだ……)

モンモン

塚原「はいはい、妄想はそこまでにして」

橘「はっ!」

森島「あははっ!純一のエッチ!」

塚原「やれやれ、橘君もそういう所は変わらずね」

橘「は、ははは…面目な…


ヒュウウゥゥ…!

塚原「…ッ」

森島「うぅ~!」

橘「寒い…!」

塚原「早く部活に行くとしましょうか」

森島「いいなぁ、茶道部は。こたつがあるんでしょ?」

橘「ああ。暖かいお茶にお茶菓子もあるぞ」

森島「いいな~!ずるい~!!私もこたつでぬくぬくしてお茶飲みたい~!」

塚原「はいはい。私達は温水プールで我慢しましょ」

森島「む~…」

橘「あはは。頑張れよ、二人とも」

塚原「ええ。橘君も」

森島「それじゃあね、純一」

タッタッタッ…


橘「…さて、僕も茶道部にいこう。こたつで温まろうっと」

茶道部 部室


橘「う~、寒い寒い…ってあれ?誰か先に来てるみたいだな。桜井先輩かな…」



桜井「うぅ~!と、届かない……」

ガラッ

橘「お疲れ様でーす」

桜井「あ、橘君。お疲れ様」

橘「どうしたんですか?棚に腕を伸ばして…」

桜井「寒くなってきたから、何か上に羽織るものでもないかな~って思ってさ」

桜井「去年の創設際の出し物で使ったどてらがあったのを思い出して、出そうとしたんだけど…」

橘「棚の上にあって、手が届かなかったわけですか」

桜井「そうそう!もう、誰があんな所に置いたのかな~」

橘「なるほど。じゃあ、僕に任せておいてください。…よっと」スッ

ググ…

橘「…ん、あれっ。少し腕の長さが足りない……」

桜井「あー、もうちょっとなのに。惜しいなぁ」

橘「あとちょっとの高さなのに。…何か、台はないですかね?」

桜井「それがないんだよ~。こたつの上に乗るわけにもいかないしね」

橘「そうですか……」

橘(はっ!そうだ!!閃いたぞ!)

橘(台がないのなら、僕が踏み台になればいいんだ!)

橘「桜井先輩、この手がありますよ!」

桜井「え、なに?」

すっ

橘「どうぞ、僕を踏み台にしてください」

桜井「え、ええ~!?」

橘「台がないなら、この方法しかありませんよ」

桜井「で、でも…」

橘「大丈夫ですよ。さ、どうぞ」

桜井「う、うーん…」

橘「このままじゃ、どてらも埃をかぶったままになっちゃいますし。僕なら平気ですから」

桜井「そ、そう?なら……乗るよ?」

橘「どうぞ!」

桜井「じゃ、じゃあ…。よいしょ」

ズン

橘「…うっ!」

桜井「だ…大丈夫?お、重くない?」

橘「…はい、とっても軽いです」

桜井「…それだと逆に重いって言われてるような気がするよー…」

橘「と、とにかく、早く取っちゃってください」

桜井「あ、そうだね。ごめんごめん…よっと……」

ギシ ギシ

橘(う、腕が…)

桜井「もうちょっと……」

桜井「よーし、取れたぁっ!!」ガシッ

橘(…あれ、なんか嫌な予感……)

桜井「助かったよ、橘く…」グラッ

桜井「わっ!?わわわっ…!」

橘「せ、先輩!?」

桜井「きゃああっ!」

橘「あ、危ない!!」

ドシーーーッン!!!


橘「ぐ、ぐふっ…」ガクッ

橘(や、やっぱり、このパターンか…ん?)

むにゅっ

橘(なんだ…?胸に暖かくて柔らかいモノが……)

桜井「いったたぁ……またやっちゃったよ…」

橘(うおおっ!?さ、桜井先輩が僕に覆い被さって…!)

むにゅっ むにゅっ

橘(こ、この柔らかい感触はまさか…!)

桜井「た、橘君大丈……っ、きゃあっ!ご、ごめん!!」

橘「い、いえ…僕の方こそすみません…決して、この結果を予想していたわけでは…」

桜井「私が悪いんだよ~!本当にごめんね?大丈夫だった?」

橘「は、はい…柔らかかったです…」

桜井「な、なに言ってるのー!?」

橘「す、すいません、間違えました。大丈夫です」

桜井「うぅ、私ってば本当にドジだなぁ……同じ人に二回もやっちゃうなんて…」

橘「はは…けど、こんな格好、誰かに見られたら大変でしたね」

桜井「あっ!ごめんごめん!!すぐ、退けるから…」

橘「いや…もうちょっとこのままでも……」

桜井「へ、変なこと言わないでよ~!」

ガラッ

夕月「おーっす。なんか、凄い音が聞こえたけど…」

飛羽「…隕石?」

橘・桜井「あ…」

夕月・飛羽「あ…」

夕月「た、橘…」

飛羽「大胆な奴…」

橘「ゆ、夕月!ち、違うんだ!これは…」

桜井「そ、そうそう!これには訳が…」

夕月「日のある内からなにやってんだ、このポルノ野郎ーッ!!!」ゴツッ

橘「ポ、ポルノ野郎!?」

桜井「わあっ!ちょっと、待って待って!!」

夕月「お前なぁ!確かに私達は応援するとは言ったけどなぁ!!お前……階段飛ばしすぎだろうがぁ!!」ゲシゲシ

橘「いたた、だから誤解だって…!」

飛羽「言い訳無用。…引導を渡す」

桜井「ふ、二人とも落ち着いてよー!話をまず聞いて~!!」


……

今日はここまで

>>94
頑張るぜ

その夜 橘家

橘(ああ、今日は疲れたな…)

橘(まぁ、なんとか誤解が解けて良かったけど…)

ガチャ

橘「ただいまぁ」

美也「あ、にぃに。良いところに帰ってきたね」

橘「ん?なんだよ」

美也「お母さんがまんま肉まん買ってきてくれたんだよ。食べるでしょ?ほらっ」

橘「ああ…。…………」

橘(……桜井先輩の、大きかったなぁ…)

橘(この、まんま肉まんの何倍だ?3倍……いや、4倍か…?)

美也「…ん?」

美也「にぃに、何じっと見つめてるの?いらないの?」

橘(それに比べて、我が妹は…)

美也「にぃに、聞いてるの?」

橘「…」

橘(…悲しいなぁ)チーン

橘「…お前にやるよ、美也」

美也「え!いいの!?」

橘「ああ。いっぱい食べて、大きくなるんだぞ」

美也「え、な、なに急に…」

橘「…自慢できるぐらい、大きくなれよ、美也…!」ポンッ

美也「むむ…なんだか見下されてる気がする…!!」

『……一方その頃』


桜井家

電話『あっはは、そんな事があったんだー』

桜井「笑わないでよ、香苗ちゃん。大変だったんだからさぁ」

香苗『でも、橘君もなかなか美味しい思いをしたわね。結構、ドキドキしてたんじゃない?』

桜井「し、知らないよ、そんなの…」

香苗『あははは…もしかして、一番ドキドキしてたのは桜井だったりして?』

桜井「え、ええっ?!そ、そんな事…」

香苗『あれ?当たり??』

桜井「ち、違うよー。っていうか、あんな事あったら誰だってドキドキしちゃうでしょ?」

香苗『うーん、どうかなぁ…。私も桜井くらい大きければわかるんだろうけど…』

桜井「香苗ちゃん~」

香苗『あはは。…でもさぁ、桜井も結構あの子と仲良くなってきたよね』

桜井「え、それは…だって、同じ部活だし…」

香苗『部活終わった後とかも、たまに一緒に帰ったりしてるらしいじゃん?』

桜井「そ、それは帰り道が途中まで一緒だから…。それに、断るのも悪いし……」

香苗『ふーん、優しいなぁ桜井は』

桜井「それくらいは普通でしょ?部活の先輩と後輩なんだから…」

香苗『部活の先輩と後輩かぁ…。桜井は、そういう認識なんだ?』

桜井「え…。う、うん」

香苗『そっかぁ。じゃあ、橘君の片思いか…残念ねぇ』

桜井「え、片思い…?」

香苗『うん。橘君は桜井の事、気になる人だって言ってたよ』

桜井「…」

桜井「え…、え~?!どうして私なんか……」

香苗『さぁね~。聞いてみたら?』

桜井「き、聞けるわけないよ…」

香苗『私は、桜井と橘君は結構お似合いな組み合わせだと思ってたんだけどねー。ふふふ』

桜井「う~…で、でも…」

香苗『…』

香苗『もしかして桜井さ…彼が立花君と同じ名前だから、それが引っ掛かってるとか?』

桜井「ぇ…」

香苗『 ただの偶然なんだから、そんなの気にしてたらダメだよ。一生懸命アピールしてる橘君にも悪いよ、それじゃ』

桜井「そ……そんな事、ない…よ……多分」

桜井「それに、純一はもう綾辻さんと付き合ってるし…」

桜井「私はもう、純一をそういう風には見てない…よ」

香苗『…そっか。まぁ、とにかく私達も来年卒業だからさ』

桜井「うん…」

香苗『悔いの残さないように学校生活過ごしていこうよ。一緒に笑って卒業しよう、ね?』

桜井「…うん!ごめんね、香苗ちゃん。長電話になっちゃって…」

香苗『いいよいいよ、桜井の方からこんな電話かけてくれるなんて、私もなんだか嬉しかったし』

香苗『それじゃ、また明日学校でね!』

桜井「うん、おやすみなさーい」

香苗『おやすみ~。桜井、ファイト!』ブツッ

桜井「…えへへ。ありがとう、香苗ちゃん」

桜井「…」

桜井(そうだよ…純一はもう……なのに)

桜井(あれからもう、一年経とうとしてるのに…)

桜井(私はいつまで、引きずっているんだろう……)

桜井「…」ゴロリ

桜井(先輩と…後輩……)

桜井(確かに、橘君と一緒にいる時は楽しい…)

桜井(橘君があと一年早く、茶道部に来てたら…なんて、たまに考えちゃう……)

桜井(もし、そうだったら、私は……)

『放課後に桜井先輩に声をかけられたぞ。…一体なんだろう?』



橘「…」

橘(ふっふっふっ、ようやく掃除当番が終わった…待ちわびたぞ、この時を…!)

ガサッ…

橘(気の合う、某U先輩から借りたお宝本…『ローアングル探偵団』……!)

橘(今日は部活も休みだ…!早めに家に帰って、じっくりと観賞するとしよう…!)

橘「ふふふ…」

桜井「おーい、たっちばなくーん!」

橘「…え?あれ、桜井先輩…?」

桜井「えへへ、ちょっといいかな?」

橘「どうしたんですか?今日は部活休みですよね?」

桜井「うん、そうなんだけど…ちょっと付き合ってほしい事があってね」

橘「付き合ってほしい事?」

桜井「うん。時間とか大丈夫かな?何か用事とかあった?」

橘「い、いえ。特にはないですが…」

桜井「良かった。じゃあ、ちょっと一緒に来てくれる?」

橘「わかりました。」

橘(放課後に呼び出されるなんて…一体なんだろう?)

スタスタ…

橘「それで、何処に行くんですか?」

桜井「生徒会長の所だよ。創設際も近くなってきたから、茶道部が創設際で必要な物の申請書を生徒会に出さなきゃならないんだよ」

桜井「来年は君が部長だからね。色々、覚えてほしい事があるからさ」

橘「はぁ、なるほど…って、ええっ!?僕が来年の部長なんですか?」

桜井「うん、やっぱり、部長といえば男の人でしょ。橘君なら茶道部も任せられるし」

橘「僕なんかより、夕月達の方が部長に向いてると思いますけど……」

桜井「そうかな?二人も、橘君なら部長任せてもいいって言ってたけど」

橘「いつの間にそんな話を…」

桜井「まぁ、何事も経験ですよ。そんなに難しい事じゃないからさっ」

橘「は、はい…」

桜井「…」

桜井「…それに、一緒に来てもらった方が心強いし」ボソッ

橘「…?はい?」

桜井「あはは、なんでもない、なんでもない。…さ、着いたよ」

橘「あ、はい」

コンコン

桜井「失礼しまーす」

橘「失礼します」

ガラッ

綾辻「! あら、桜井さん。お疲れ様」

桜井「えへへ、どうも~。茶道部の申請書を作りに来ましたー」

綾辻「今年は早いのね。桜井さんが一番乗りよ」

桜井「えへへ、去年は綾辻さんにも迷惑かけちゃったし…」

橘(生徒会長の綾辻先輩…)

綾辻「ふふ、まさか私も茶道部の必要な物を調べる事になるなんて……あら?彼は…」

桜井「あ、はい、来年の部長になってもらう一年生です。創設際の準備の事を色々引き継いでもらおうと思って…」

綾辻「そうなの。…来年から頑張ってね?」ニコッ

橘「は、はい!頑張ります!!(素敵な笑顔だ…)」

桜井「こらこら、ヘラヘラしないの!」

橘「あ、いや、そんな事は…」

綾辻「ふふっ…」

橘(ん?っていうか、今、桜井先輩軽くやきもち妬いてくれた?…って、自意識過剰か……)

桜井「えーと…それじゃあ、この紙に必要な物を記入するんだけど…」

橘「はい」

桜井「…」

橘「…」

綾辻「……?」

橘「…先輩?」

桜井「…あれれ、去年はなんて書いたんだっけ?」

綾辻「…」カクッ

橘「せ、先輩、頼みますよ…」

綾辻「なんだか、頭が痛くなってきたわ…」

桜井「だ、大丈夫だよ!ちょっとド忘れしちゃっただけだから…!えーと…確か……」

ガラッ

???「綾辻さん、ごめん。遅くなったよ」

橘「…ん?」

橘(誰だろう…3年生の先輩かな?)

桜井「ぁ…」

綾辻「もう、遅いわよ。立花君」

橘「…え?」

立花「申し訳ない。梅原と薫に捕まっててね。…ははは」

立花「…って、あれ?梨穂子じゃないか」

桜井「…やっほー、純一」ニコッ


橘(な、名前呼び!?…っていうか、純一って……まさかこの人が…)

……


スタスタ…

桜井「やれやれ、なんとか申請書が出来上がって良かったね~」

橘「そ、そうですね」

橘(結局、綾辻先輩と立花先輩も巻き込んでしまったけれど…)


………


コンコン ガラッ

棚町「おっ邪魔ぁ~」

棚町「綾辻さーん、バイトのシフト空けてもらったから、サンタコンテストの司会手伝え…って、あら?」

綾辻・立花「……」ぐったり

棚町「どうしたのよ、二人ともくたびれ果てた様子で」

立花「ああ……ちょ、ちょっとな…」

綾辻「…良くも悪くも、変わらない娘ね……」ボソッ

棚町「んん???」

橘「僕、初めて立花先輩に会いましたよ。生徒会の人だったんですね」

桜井「うん。…会ってみて、どうだった?」

橘「うーん…なんだか、色々自分と似てる所があったような気がしますね」

桜井「うんうん。雰囲気とか、仕草とか、似てる所は確かにあるよねー。」

桜井「……純一はね、幼稚園の頃からの幼馴染みなんだー」

橘「あ、そうなんですか。じゃあ、随分長い付き合いなんですね」

桜井「うん、そうだね。…腐れ縁ってやつかな?あはは」

橘(…そうか。それなら名前で呼び合うのも納得だ)

橘(しかし……桜井先輩は、そんな昔から付き合いある人が好きだったのか…)

橘(一途なんだな……その想いが実らなかったって…どれだけ辛い思いをしたんだろう)

橘(僕なんかより、ずっと辛かったんだろうな…)

桜井「? どしたの?」

橘「あ、いえ。なんでもないです」

桜井「そう?じゃあ、何か飲み物でも飲まない?慣れない事したから、疲れたでしょ」

橘「そうですね。行きましょうか」

桜井「うん」

桜井「橘君。…創設際、頑張ろうね」

橘「はいっ、頑張ります。先輩の最後の創設際ですから、気合入れて行きますよ!」

桜井「あはは、頼もしいなぁ」

橘(そうだ、桜井先輩最後の創設際なんだからな。しっかりやらないとな…!)

『いよいよ創設際だ。気合入れて行くぞ…!』


正午 橘家


橘「…時間だな。そろそろ学校に行って、準備をしないと」

橘(美也に一言行って出ていくか。多分、居間にいるだろう…)





ガチャ

橘「おーい、美也ー」

美也「あ、来た来た。寝てるかと思って、今起こしに行こうと思ってたんだよ」

七咲「こんにちは、先輩」

中多「お邪魔してます…」

橘「あれ?二人とも、来てたんだ」

美也「そうだよ!創設際をどう回ろうか、 作戦会議中だったのだ!!」

橘「ああ、なるほど」

七咲「先輩、茶道部で和服着るんですってね」

橘「え、ああ…うん。着物は正直苦手なんだけどね」

中多「先輩の着物姿、楽しみです…」

橘「そ、そう?緊張するなぁ。あはは」

美也「まぁ、お兄ちゃんの着物姿は一番あと回しでいいから、効率よくお店を回っていかないとね~」

橘(こ、こいつは…)

七咲「水泳部のおでん屋台も寄ってみたいよね」

中多「うん…私はベストカップルコンテストも見てみたいかな…」

美也「にっしし、楽しみだね~」

橘(やれやれ、まぁみんな楽しみにしてくれてたみたいだから良かった)

橘「じゃあ、先に行ってるからな」

美也「うん!いってらっしゃーい」

七咲「先輩、また後で」

中多「頑張ってください…!」

橘「ありがとう、じゃ、行ってきます」


ガチャ パタン


ヒュウゥゥゥ…

橘「ふー、寒い寒い。早く学校に行くとしよう。先輩も先に準備してるだろうしな…」


タッタッタ…

茶道部 部室


ガラッ

橘「お疲れ様でーす」

夕月「お、ポルノ部長。遅いぞ」

橘「…その呼び方はやめろって」

飛羽「あながち間違いではない…」

橘「今日は妹と友達も見にくるんだから、頼むって…」

夕月「ははは、だったら普段の兄貴の姿を存分に見せてやればいいじゃないか!」

飛羽「兄の真の姿を…」

橘「ほんと、勘弁して下さい」ペコ

夕月「あはは、わかってるっての」

橘「…はぁ、まったく。…二人はもう着替えてるんだな」

夕月「まぁね。あんたも、さっさと着替えてきなよ」

橘「うん…。あれ、桜井先輩は?」

飛羽「行方不明…」

橘「え、ええ!?」

飛羽「…冗談。少し校内を回ってくると言っていた」

橘「びっくりさせるなよ…」

橘「…っていうか」

橘「夕月は普通の着物姿なのに、なんで飛羽は祈祷師みたいな格好してるんだ?」

飛羽「ふ…」

夕月「ようやく気づいたか。…実は、これには訳があってね」

橘「…わけ?」

夕月「茶道部は創設際で甘酒の無料配布をしているけど、それは実は表向きの行いでね…」

橘「…表向き?」

夕月「あんたは知ってるか?輝日東高校七不思議のひとつ」

橘「な、七不思議…!?」

飛羽「雪の降る夜…創設際に酒を求めて現れる妖怪、白粉婆」

橘「白粉婆…?」

夕月「この茶道部の甘酒は、その白粉婆を引き付ける為の餌なんだよ…創設際に、他のお客さんに害が及んだら大変だからね」

橘「創設際限定の妖怪なのか?なんだそれ?」

夕月「それも七不思議のひとつ…」

飛羽「この甘酒に、これから白粉婆の悪い気を抑える祈りを捧げる…この格好はその儀式の為」

橘「は、はあ、なるほど」

橘(飛羽は霊感強そうな感じがするから、妙な説得力があるな…)

飛羽「…妖気」ピクッ

橘「え?」

夕月「なんだって、もう現れたのか!?まだ、創設際も始まってないのに!」

飛羽「まっすぐ、こちらに向かってきている。祈りを捧げなくては…」

夕月「そりゃ大変だ…!愛歌、頼んだぞ!」

飛羽「儀式を行うには、茶道部全員の力が必要。一人足りない…」

夕月「りほっち先輩か!よし、橘、急いで探してきてくれ!!」

橘「わ、わかった!!」

橘(なんて事だ…茶道部の活動にはこんな裏があっただなんて…!)



高橋「~♪」

タッタッタッ…!

高橋「あら?あの子は…」

橘「はぁ、はぁ…さ、桜井先輩は何処だ……」

高橋「こらこら、君。走ったら転んじゃうわよ」

橘「あっ。高橋先生…!」

高橋「どうしたの?そんなに慌てて…」

橘「じ、実は白粉婆が…」

高橋「な、なに?白粉……なんですって??」

橘「と、とにかく急いで桜井先輩を探さなきゃならないんです!何処かで見かけませんでしたか?」

高橋「…事情がさっぱり理解できないけど、桜井さんならさっき、クリスマスツリーの所で見かけたわよ?」

橘「クリスマスツリーですか!わかりました、ありがとうございます!!」

高橋「転んで怪我しないようにね」

橘「はい、失礼します!」

タッタッタ…

高橋「随分慌ててたけど、どうしたのかしら…」

高橋「…それより、今年の甘酒の出来を見に行かないとね~。甘酒、甘酒♪」

……

タッタッタ…

橘(あ、見つけた…)

桜井「…」

橘(…ん?ツリーを見つめてるけど……なんだか、寂しそうな後ろ姿だ…)

桜井「…。……ふぅ」


橘「桜井先輩」

桜井「ん? あぁ、橘君。お疲れ様」

橘「探しましたよ。実は…、はっ」

桜井「?」

橘(桜井先輩の和服姿……とてもよく似合ってる…! )

桜井「どしたの?」

橘「…先輩、とても似合ってますよ」

桜井「え。…えへへ、ありがとう」ニコッ

橘(クリスマスツリーをバックに和服姿の桜井先輩…!実にいいじゃあないか!)

桜井「これを着るのも今回が最後だと思うと、寂しくなるよー」

橘「同感です…。僕も、桜井先輩の和服姿がもう見れなくなると思うと悲しいです」

桜井「え…本当?」

橘「も、もちろんです」

桜井「あはは、それじゃあ卒業式の日にも着てみようかな~」

桜井「橘君、ありがとうね。君や琉璃ちゃんやまなちゃんが来てくれたから、私も安心して茶道部を卒業出来るよ」

橘「いえいえ…お礼なんてそんな」

桜井「来年の創設際は、ちゃんと部長やってるかチェックしにくるからね?ふふふっ」

橘「はは、頑張ります。その時には抹茶を点てれるくらいにはなっていると思いますんで」

桜井「うんうん、期待してるよっ」ポンッ

橘「…は、はいっ…!」

桜井「…ところで、私を探してたんでしょ?何かあったの?」

橘「…あっ!そうだった、じ、実は白粉婆が現れたとかで…」

桜井「…へ?」


茶道部 部室前

スタスタ…

橘「…ん?」

桜井「あれ?」


高橋「うぅ…」シクシク

夕月「ま、まぁ先生…そんな落ち込まないで…」

飛羽「ドンマイ」

桜井「ど、どうしたの?」

夕月「あ、りほっち先輩。実はね…」

橘「白粉婆はどうなったんだ?」

高橋「白粉婆って言わないでッッ!」

橘「え、ええ?!」

高橋「うぅ…、輝日東の七不思議は私も学生の頃から知っていたけど、まさか私自身が七不思議に組み込まれていたなんて……」

桜井「……ああ、なるほどなるほど」

橘「???」

桜井「高橋先生は毎年、茶道部の甘酒を飲み過ぎてベロンベロンに酔っちゃうんだよね」

桜井「誰が言い広めたのかは知らないけど、その妖怪の正体が高橋先生だったって事だよ」

橘「な、なるほど」

高橋「よ…妖怪……」

桜井「あ、ご、ごめんなさい…」

夕月「まぁまぁ、先生も自重しなさいっていう事だよ。きっと」

飛羽「天のお告げ」

高橋「うぅ…創設際ぐらいちょっとハメを外してもいいじゃない……」

桜井「まぁ、先生。これを飲んで元気出してくださいよ」

高橋「そ、それは…?」

桜井「はい、甘酒です」ニコッ

高橋「……」

橘「せ、先輩、それは…」

飛羽「追い打ち」

夕月「あはは、さすがりほっち先輩」

桜井「え?なにが?」

高橋「…わかったわ。今年は4杯くらいで我慢するようにするわ……」

橘「4杯でも飲みすぎじゃないですかね…?」

短いけど今日はここまで

綾辻「あ、高橋先生。やっぱりここにいたんですね」

高橋「え…。あ、あら、綾辻さん…」

綾辻「茶道部のみなさん、お疲れ様。今日は頑張りましょうね」

桜井「はーい。今年で最後だからね~」

橘「頑張ります!」

綾辻「先生、甘酒は後でも飲めますから、先にこっちの仕事を手伝ってください」

高橋「うぅ、わかったわ。…桜井さん、ちゃんと残しておいてね!」

桜井「えへへ、わかりました」

綾辻「それじゃあ、失礼」ペコ

タッタッタッ…

桜井「さてさて、私達もちゃちゃっと準備を済ませるとしますか!」

橘「そうですね」

夕月「橘、着替えてないのあんただけだから、早く着替えてきなよ」

橘「そ、そうだな。じゃ、ちょっと着替えてきます」

桜井「橘君、着付け手伝ってあげるよ」

橘「え?!い、いや、大丈夫ですよ。これぐらい…」

桜井「まぁまぁ、遠慮しないで。ねっ」

橘「遠慮というかその…わぁ、引っ張らないで…」ズルズル


夕月「…なんだよ、なんかいい感じじゃないか…?」

飛羽「…」コクリ

夕月「くそぉっ、橘だけいい思いして…!クリスマスなんだから私にも何かいい事起きろっ!!主に恋愛面でっ!!!」

飛羽「…ロンリー」

こうして、創設際が始まった…


がやがや…

橘「どうぞ、甘酒です」

桜井「熱いので、火傷に気を付けてくださいね~」

橘「…結構、お客さん来るんですね」

桜井「そうだね~。去年よりも学生の数は多いかな」

橘「これは、高橋先生の分の甘酒が残らないのでは…」

桜井「あはは、大丈夫だよ。もし、そんな事になったら、先生さらに落ち込んじゃうかもね~」

橘「ははは…」

美也「おーい!お兄ちゃーんっ!!」

橘「…ん?」

桜井「?」

美也「にっしし、来てあげたよー」

橘「おう、美也。早かったな」

七咲「先輩、お疲れ様です」

中多「こんばんは…」

橘「おお、二人もよく来てくれたね」

桜井「えーと、妹さん?」

橘「あ、はい。妹の美也です。こっちの二人は妹の友達です」

美也「いつも、お兄ちゃんがお世話になってます」ペコリ

桜井「はじめまして~。お兄さんにはいつも助けられてます。えへへ」

美也「お兄ちゃんが助けに…?」ジロッ

橘「な、なんだその疑いの眼差しは…ちゃんとやってるって言っただろ!」

美也「はいはい」

桜井「あはは…」

中多「…先輩。和服姿、とても似合ってますよ」

橘「本当?ははっ、ありがとう、紗江ちゃん」

七咲「部長さんも、とても素敵です。画になると思います」

桜井「ほ、本当に?ありがとう~。えへへ」

美也「…」ジッ

美也(うーん、部長さん…大きいなぁ……)

美也(紗江ちゃんといい勝負かも…)チラッ

中多「…?え、なに?美也ちゃん…」

美也(そうか…にぃには、きっとこのダイナマイトバディに釣られて茶道部に入ったんだな…!)ジーッ

橘「…な、なんだよ美也。急に睨んで」

美也「…にぃに、変態」ボソッ

橘「は?」

美也「ふんだっ」プイッ

橘「なんなんだよ…」

桜井「はーい、みんな。甘酒をどうぞっ」

美也「わあ、おいしそう!」

中多「あ、ありがとうございます…」

七咲「これは温まりそうだね」

桜井「茶道部伝統の味をお楽しみください。…なんてね、えへへ」

………

美也「それじゃあ、美也達次行くねー」

橘「ああ、走って転ぶなよー」

中多「ごちそうさまでした…」ペコ

七咲「とてもおいしかったです!」

桜井「ありがとう。良かったら、また飲みに来てね~」

美也「はーい。よーし、次はおでん屋台だね!」

中多「うんっ」

七咲「楽しみだね」

タッタッタッ…

橘「…ふぅ」

桜井「ふふ、元気な妹さんだね」

橘「ははっ。まぁ、明るい奴ですよね」

桜井「来年はウチの学校に来るんだって?」

橘「そうですね。…茶道部に冷やかしに来なきゃいいですけど」

桜井「あははっ、それくらい許してあげなよ。まだ、お兄ちゃんに甘えたいだろうし」

橘「う、うーん…」


森島「純一~っ!」

桜井「えっ」

橘「ん? ああ、はるかか…」

森島「やっほー!甘酒、貰いに来ちゃった!」

橘「ああ…って、あれ?お前はこの時間、屋台の店番じゃなかったのか?」

森島「うん。…でも、こっそり抜け出してきちゃった!」

橘「きちゃった、じゃないだろ。全く」

桜井「あ、あはは…」

森島「ちょっとくらいなら大丈夫よ~。ひびきちゃんなら私がいなくても、しっかりやってくれるから!」

橘「塚原も、はるかと組まされて気の毒にな…」

森島「むむっ!なによそれー」

橘「…ほら、甘酒二人分。塚原にも渡してくれ」

森島「あはっ、ありがと、純一!」

橘「早く店に戻ってやれよ。美也達も今、屋台に向かったから」

森島「わお!美也ちゃんも来てたのね!!それは急いで戻らないと!」

森島「ありがとね、純一!」

橘「ああ。サンタコンテストも頑張れよ」

森島「ええ!優勝して見せるわ!!それじゃっ」

森島「あ、先輩。ご馳走さまです!」

桜井「はーい、頑張ってね~」

森島「はい!失礼します」

タッタッタッ…

橘「やれやれ…」

桜井「あの子が森島さんかぁ。香苗ちゃんに強力なライバル現る、だね」

橘「そういえば、香苗先輩は三連覇がかかってるんでしたね。…負けられないだろうなぁ」

桜井「そうだね?」

桜井「…」

桜井「 …あの子と仲いいんだね。同じクラスの子?」

橘「え」

橘「ああ…同じクラスっていうのもありますけど、あの子とは昔からの幼馴染みなんですよ」

桜井「へえ、そうなんだ。昔からって事は…」

橘「小学生の頃からですね。腐れ縁って奴ですかね…はは」

桜井「ふーん…」

桜井「…ねえ、橘君はさ……その…」

橘「はい?」

桜井「…森島さんを好きになった事とかはないの?」

橘「え、ええっ?」

桜井「幼馴染みとはいえ、男の子と女の子でしょ?長い付き合いなら、そういう風に思ったりはしないの?」

橘「えー…いや、それは……」

桜井「…」

橘(どう答えたらいいんだ?桜井先輩はきっと、自分の事と重ねて聞いてるんだろうけど…)

橘(はるかに対して、僕はそういう気はないし……どちらかというと、悪友?に近いのか…)

橘「うーん……」

桜井「…あっ。ご、ごめんね?変な事聞いちゃって…」

橘「あ、い、いえ…。でも、僕はそういう風には見た事はないですかね…正直。まあ、ドキッとする事はたまにありますけど」

桜井「そうなんだ…。森島さん綺麗だもんね~」

橘「あいつは人懐っこすぎるというか。女の子らしさが少し欠けてるというか…他の男子を勘違いさせる事が多くてですね……」

桜井「あはは。それは大変だね~」

今更だけど絢辻さん誤字ってるね

>>162
うぉ、本当だ。全然気づかんかった…
誤字ばっかでほんと申し訳ない

ワロタそ予測変換楽だから気にしてなかった

いやすまんね、本当に
萎えるよなこういうの
今日はここまでにさせてもらうけど、次からは気を付けるよ

桜井「…じゃあ、橘君は今、気になってる人とかはいないの?」

橘「えええっ!?」

橘(い、いますよ!桜井先輩です!!)

橘(…って言いたいけど、ここで言っていいものなのか…!?)

橘(……いや、でもよく考えたら今日はクリスマスだ。告白するには絶好のシチュエーションじゃないか…!)

桜井「…あれれ?私を見つめてるって事はもしかして…」

橘「え!いや、その…」

桜井(あはは…意地悪な質問しちゃったかな……)

桜井「…なーんてね。えへへ…」

橘「は、はは…」

橘(ど、どうする…!?今、告白するチャンスか…?)

夕月「りほっち先輩ー!ちょっと来て~」

橘「!」

桜井「あ、なんだろ。ちょっと行ってくるね」

橘「あ…は、はい」

桜井「ふふっ」

タッタッタッ……


橘「…はあ」

橘「……即答しとけば良かったなぁ…」

橘(桜井先輩と一緒にいられるのもあと少しなんだから……後悔は残したくない…よなぁ)

そして時間は過ぎ、創設祭も終わりに近づいてきた…


ワー ワー!!!


棚町「そっれでは!只今より、ミス・サンタコンテストを開催いたしま~す!!」

観衆「ウオオオオオッッッ!!!」

梅原「KA・NA・E!!KA・NA・E!!!」

棚町「お、落ち着け獣ども…」


ワー  ワー

美也「すっごい盛り上がってるねー!」

中多「こ、怖い…」

七咲「創設祭で一番盛り上がるイベントらしいからね。…でも、確かに凄いね。特に男子生徒の熱気が…」


棚町「さてさて!それではさっそく、行ってみましょう!!エントリーナンバーワン、あたしの大親友でもあります、田中恵子です!どうぞ~!!」

ワー ワー

夕月「いやぁ~、盛り上がってるなあ。向こうは」

飛羽「獣の咆哮…」

桜井「ミス・サンタコンテストの時間だからねー。三年生は最後だし、盛り上がるよ」

橘「香苗先輩、優勝出来るといいですね」

桜井「だね~」

夕月「甘酒も殆ど無くなっちゃったし、こっちはぼちぼち片付けでも始めようか」

桜井「…あ、いいよいいよ。片付けは私がやっておくから」

夕月「え?でも…」

桜井「時間もそんなにないけど、創設祭を見てきなよ。みんな、頑張ってくれたしね」

橘「いいんですか?」

桜井「うん。気にしないで行ってきてよ」

夕月「よっしゃ、それじゃあ回ってこようか、愛歌!」

飛羽「お言葉に甘えて」

桜井「ほら、橘君も行ってきなよ。せっかくなんだからサンタコンテスト見てきなって」

橘「本当に一人で片付け大丈夫なんですか?手伝ってからでも、僕は平気ですけど…」

桜井「うん、ありがとう。でも、私一人で十分だから」

桜井「遠慮しないで行ってきてよ。私の分も、香苗ちゃんを応援してきて」

橘「はは、わかりました。…それじゃあ、ちょっと行ってきます」

桜井「うん、いってらっしゃーい」

タッタッタッ…


橘(確かに、サンタコンテストの結果は僕も気になってたからな…)

橘(香苗先輩や、はるかのサンタ姿がどれだけ凄いのかも興味がある…!)

タッタッタッ…

橘(うーん。サンタコンテストの影響か、周りもガランとしてるなぁ…)

橘(創設祭の大目玉のイベントだからなぁ…仕方ないか)

橘「…」

橘「…ん?」

橘(ツリーの所に誰かいるぞ…?)


立花「…」
絢辻「…」

橘(絢辻先輩と立花先輩だ…。なんだか、楽しそうに話してるなぁ……)

橘(お互い、最後の創設祭だから色々あるんだろうな。…さ、僕は会場に急ごう)

タッタッタッ…

一周目の紳士は絢辻さんルートに行ったのか…
まぁ絢辻さん可愛いからね仕方ないね



がやがや…

橘(ここだな。…凄い人だかりだ)

橘(まだ、はるかや香苗先輩は出てきてないみたいだな。間に合って良かったよ)


棚町「さて、それではエントリーナンバースリー!!今まで誰も達成する事の出来なかった偉業が今夜、遂に実現されるのか!?三連覇を狙う、伊藤香苗さんの登場です!!」

橘(お、香苗先輩だ…)

観衆「ウオオオオッッ!!」

観衆「香苗さーんっ!」

梅原「好きだーっ!」

観衆「伝説を見せてくれー!」

橘(す、凄い人気だな。さすが、香苗先輩…)

香苗「メリークリスマース!!!」

橘(お、おお。なかなか大胆なサンタコスだな…)

橘(やっぱり、香苗先輩も気合入れてるんだなぁ…)

観衆「オオオオオッ!!!」

梅原「香苗さーん!」

棚町「おお、さすがは去年のサンタコンテストの王者!周りの男達の視線を釘付けにしているっ!!」

田中「…。(うう…やっぱり、凄いなぁ…)」

黒沢「…。(ま、まだよ…!負けが決まったわけじゃないもの…!!)」

香苗「みんな、ありがとー!」


橘(うーん、眼福、眼福…)

塚原「…さすがに、凄い人気だね」

橘「お、塚原」

塚原「お疲れ様。甘酒、美味しかったよ」

橘「そっか。良かった良かった」

橘「塚原も、今来たのか?」

塚原「ううん、私ははるかの着替えやメイクを手伝ってたの」

橘「そうなのか。…あの先輩は結構、レベル高いけど……はるかの方はどうなんだ?」

塚原「…うーん」

塚原「過激かもしれないわね」

橘「か、過激…!?」

塚原「ふふっ。まぁ、今出てくるから…」

橘「…」ゴクリ

棚町「はーい!!男ども、いい加減に静まりなさい!!!」

棚町「えー、次はなんと、一年生からの参加者です!!」

ざわざわ…

生徒「一年生だって?」

生徒「一年生が参加するなんて、今まであったか?」

梅原「香苗さんに挑むつもりか…命知らずな一年生だぜ……」

ざわざわ

田中(一年生…かぁ。勇気あるなぁ)

黒沢(わざわざ、恥を晒しに来るなんてね…)

香苗(一年生か…。どんな子なんだろう?)

棚町「では、エントリーナンバーフォー!!期待の新星、森島はるかさんでーす!どうぞ!!!」

美也「え!?はるかちゃん?」


橘(か、過激ってどういう事なんだ…!?)ドキドキ

森島「はーいっ!!!」ザッ

橘「!!」

塚原「…ふふっ」

観衆「!!!」

棚町「こ、これは……!」

梅原「なん…だと……」

香苗(な、なにこのコスチューム…!?ちょっと、キツキツした感じで……)

ボンッ

キュッ

ボンッッ

橘(は、はるかの魅力を完璧に主張している……!と、とんでもないコスチュームだ…!)

森島「みんなー、メリークリスマース!!!」

シーン……

森島「…ありゃ?」

塚原「ふふ、みんな言葉を失ったみたいね…」

橘「い、いや、あれは失うだろ…普通にモデルで通用する……っていうか、あんなコスチュームを何処で見つけたんだ…」

塚原「実はあれ、オーダーメイドなんだけど、頼む時にはるかが業者さんに『なるべくセクシーな感じで』って伝えたみたいで…」

橘「そ、それであれが出来上がったのか…」

塚原「うん。本当はもうちょっと控えめな感じだったんだけど……はるかを見て業者さんもノリノリに仕上げたんじゃないのかしら」

橘「な…なるほどなぁ……」


田中(ま、負けた…)ズーン

黒沢(は、反則じゃない…!一年生でそのスタイルは…)ズーン

香苗(

途中送信してしまった。
とりあえず今日はここまで

>>176
この紳士は絢辻ナカヨシルートを通っております

香苗(う…こ、これは凄いな……)

棚町「…」

棚町「はっ。い、いけない、つい見とれてしまってた…」

森島「うーん、イマイチだったかなぁ…」

棚町「えーと、森島さん。今回出場した理由はやはり、伊藤さんのように三連覇を狙っているからとか?」

森島「あ、いえ。面白そうだったのと、可愛い女の子達が見れると思ったからです!」

観衆「おおおぉ…!」

生徒「お、面白そうだから…?」

生徒「自慢のスタイルを披露しにきたわけじゃないのか…?」

梅原「香苗さんは眼中にないってのか…?!」

生徒「可愛い女の子って……実はそっち側の人なのか!?」

ざわざわ…

塚原「なんだか、変な誤解をしてる人達もいるみたいね」

橘「はは…。まぁ、はるかだからな……」


棚町「な、なるほど!純粋にサンタコンテストを楽しみに来たってわけですね!」

森島「はい、そうです!」

棚町「それでは最後に森島さん、会場のお客さん達に何かアピールをお願いしますっ!」

森島「え…アピール?……アピール…」

森島「…。…よしっ」

森島「ん~っ…チュッ♪」

観衆「!!!」

梅原「!!!」

観衆「ウオオオオオーーッッッ!!!」

香苗(これは…勝てなさそうだなぁ……あはは…)


塚原「う、うるさい…」

橘「し、仕方ないよこれは… ははは…」

『創設祭も無事に終わった… 片付けも終わったし、帰るとしよう』


桜井「みんなのお陰で、創設祭の出し物も無事に終わらせる事が出来ました!本当にありがとうっ」

パチパチパチパチ…

橘「部長、お疲れ様でした!」

夕月「3年間、お疲れ様です!」

飛羽「お疲れ様…」

桜井「えへへ、ありがとう。まだ引退は先だけどね」

桜井「…橘君、来年の創設祭はよろしく頼んだよ」

橘「は、はい。頑張ります!」

夕月「ま、私らが上手くサポートしてやるからさ」

飛羽「部長は、安心していい」

桜井「あはは、そうだね」

桜井「それじゃあ、もう時間も遅いし。帰ろうか」

橘「そうですね。…もう9時ですし」

夕月「結局、雪は降らなかったなぁ」

飛羽「残念…」

桜井「まあまあ、帰りに寒い思いしなくていいじゃない」

夕月「はは、まぁ、それもそうだね」

夕月「よーし、んじゃ帰るとしようか」

飛羽「うん」

橘「気を付けてな」

夕月「ああ。りほっち先輩も転ばないようにね」

桜井「あはは、転ばないよ~」

飛羽「それでは、お先に」

桜井「うん、お疲れ様~」

橘「お疲れー」

夕月「お疲れ様!」


……

桜井「さ、私達も帰ろっか」

橘「はい、帰りましょう」



スタスタ

橘(夕月達と帰る方向が逆でよかったな…。クリスマスに二人で帰れるなんて)

桜井「そういえば、サンタコンテスト凄かったんだってね~」

橘「そうですね。まさか、はるかが優勝するとは思わなかったですよ」

桜井「とても大胆な衣装だったんでしょ?」

橘「ええ…ちょっと刺激が強すぎる感じでしたね。あれは反則でしたよ」

桜井「あはは…」

橘「コンテストの後、香苗先輩と会ったんですよね?なにか言ってました?」

桜井「悔しいけど、仕方ないって言ってたよ。森島さんに三連覇の夢を託した…とか言ってたね。えへへ」

橘「はるかが三連覇ですか…本当にやりかねないですよ、あいつなら」

桜井「じゃあ、ちゃんと見届けないとね~」

橘「はは、そうですね」


スタスタ…

ヒュウウゥゥ…

桜井「う~、創設祭の時にはあまり気にならなかったけど、結構風が吹くね~」

橘「そうですね。仕事に夢中だったから、あまり気にならなかったですよ…」

橘「…ぁ」ピタッ

桜井「……?」

橘(この道は…)

桜井「どしたの?橘君?」

橘「……いえ、ちょっと…」

桜井「?」

橘「…。…あ、あの、桜井先輩。ちょっとこっちに寄って行ってもいいですか?」

桜井「丘の上公園に?……うん、いいよー」

橘「あ、ありがとうございます」

丘の上公園


ヒュウウゥゥ…

桜井「久しぶだなー。この公園に来るのも」

橘「そうなんですか?」

桜井「うん。小さい頃は結構、遊びに来てたんだけどね」

橘「…」

桜井「でも、どうしてここに寄ろうと思ったの?」

橘「…え、と……そのですね」

桜井「うん」

橘「…先輩。一年前、ここで僕と会った事……覚えていませんよね?」

桜井「え…?」

桜井「一年前に…?」

橘(やっぱり、覚えてないよな)

橘「正確には今日じゃなくて、二日後の26日の夜なんですけどね」

桜井「26日……橘君とここで…?」

橘「はい。桜井先輩、ここで転んだんですよ。そして、袋に入ってた肉まんを…」

桜井「!」

桜井「あーっ!!お、思い出したぁ!肉まんで思い出したよ?!」

橘(に、肉まんで……。まぁ、桜井先輩らしいか)

桜井「そうそう!私、ここで転んだんだよ?!その時、ここにいた男の子に助けてもらったんだけど…」

桜井「まさか、それが橘君だったなんて……嘘でしょ?!?」

橘「本当ですよ。僕も学校で初めて先輩に会った時、前に会ったような気がしてまして。それからすぐに、ここで出会った事を思い出したんです」

桜井「初めて会った時って、テラスで私が勧誘してた時だよね?」

橘「はい、そうです」

桜井「う?……全然思い出せなかったよ…。ごめんね??」

橘「い、いやいや、謝らないでくださいよ」

橘「むしろ、僕は先輩に感謝しているんです」

桜井「ヘ?感謝…?」

橘「はい。一年前、先輩がここに来てくれたから、僕は立ち直れたんです」

桜井「立ち直れた?…そういえば、なんで橘君はあの時、ここにいたの?」

橘「…」

桜井「あ、ごめん。言いたくなかったら別に…」

橘「いえ、聞いてほしいんです。聞いてください」

橘「先輩と初めて会った前の日、ちょっと嫌な事があったんです」

桜井「…。嫌なこと……」

橘「中学の頃、好きな人がいたんですけど、その子にクリスマスにデートを誘ったんですよ」

橘「今思えば、デートに誘えるほど仲良くはなかったんですけど、あの時は周りが全然見えてなかったというか、勢いに任せてしまったというか…」

橘「向こうもイヴは都合が悪いから、次の日ならなんとか…って言ってオーケーしてくれたんです。」

桜井「…うん」

橘「そして、約束の日。待ち合わせの場所……この丘の上公園に来たら、沢山の女子がいました」

桜井「え…?」

橘「…からかわれたり、笑われたりしましたよ。『本当に来た、かっこいい』とか…」

桜井「ひ、酷い!それは酷いよ…!」

橘「嫌なら嫌だとハッキリ断ってくれたら良かったんですけどね。…その子の友達の一人が面白がってあんな事を考えたんだろうな…と思います」

桜井「う?…それは許せないよ…!やっていい事と悪い事があるよ!!」

橘「結局、それ以来その子と話はしていないので、なんでそんな事をしたのかはわからなかったですけど」

橘「でもまぁ…それは終わった事なんで、もうどうでもいいんです」

桜井「…」

橘「ただ、そんな目に遭ってとても落ち込んでいた時に、桜井先輩が僕の前に現れてくれたんですよ」

桜井「…!」

橘「あの時の先輩のおっちょこちょいな姿……そして笑顔に、僕の心は救われたんです」

桜井「あ、おっちょこちょいって…」

橘「はは、すみません。でも、あそこで先輩が来てくれてなかったら、ずっとこの事を引きずっていたと思います。本当にありがとうございます」

桜井「お、お礼なんて…そんな……」

橘「いえ、大袈裟に聞こえるかもしれませんが、本当に先輩のお陰でなんです」

桜井「…。そっか…」

橘(そうだ…僕は本当に、先輩のあの優しい笑顔に救われたんだ…)

橘(僕は、あの時から桜井先輩を好きになっていた…!)

橘(そして僕は、これからも……先輩のその笑顔を見ていたい…!)

橘(…い、言うか!?ここで…僕の気持ちを…?)

橘(…でも、もし断られたら……部活も一緒に居づらくなるかもしれない…)

橘(だけど、先輩は来年卒業してしまう…!年が明けたらあっという間だ…。あの時、言っておけばなんて、後悔はしたくない…)

橘(ど、どうしたらいいんだ…?)

桜井「…だね……」ボソッ

橘「え!は、はい?」

桜井「私と同じだね…って言ったの」

橘「え、え?…お、同じ?」

桜井「私もね、一年前に失恋してるんだよ」

橘「!」

桜井「私は今日でちょうど一年経つんだけどね」

橘(それって……創設祭に失恋したって事か?)

橘「あの…もしかして、その相手は……」

桜井「うん。純一だよ」

橘「…!(なんてことだ…桜井先輩が立花先輩に、振られてたなんて…)」

桜井「…別に、フラれたとかじゃないんだけどね」

橘「あ…そ、そうなんですか……」

桜井「純一と生徒会長の絢辻さんが付き合ってるのって知ってた?」

橘「あ、いえ…知らなかったです」

桜井「去年、純一は茶道部のかけもち部員をやっててくれてたんだけど、その時クリスマス委員の手伝いもやってたんだ。」

桜井「それで、クリスマス委員長を絢辻さんがやってたの。二人は同じクラスだし、よく一緒に仕事をしてて、だんだん仲良くなっていったみたい」

橘「…」

桜井「茶道部に顔を出してた時も、よく絢辻さんの話をしててね。純一が嬉しそうな顔を見てると私も嬉しくなっちゃって、応援してたんだ」

桜井「…それで、しばらく経って、創設祭が始まって…」

桜井「創設祭が終わった後に……その、見ちゃったんだよね」

橘「な、なにをですか…?」

桜井「創設祭が終わったら、ツリーのライトが消されたでしょ?」

橘「? はい…」

桜井「その時、私は茶道部の片付けをやってたんだけど、消えてた筈のツリーのライトがまた点いたのが見えたの」

桜井「それで、なんだろう?と思って、ツリーの方に行ったら…」

橘「……」

桜井「純一と絢辻さんが、ツリーの下で抱き合ってて…」

桜井「ツリーの近くにいたクリスマス委員の後輩達からも祝福されてて……」

橘(それは…辛いな……)

桜井「あ、梅原君もいたかな。遠くから『羨ましいぞこんちくしょ?!』とか叫んでたな。あはは…」

桜井「まるでドラマの場面みたいだったから、私もなんだか感動しちゃって、遠くで拍手しちゃった

橘「…」

桜井「純一もとても幸せそうで、その時は私もなんだか嬉しい気分だったんだけど…」

桜井「創設祭が終わった次の日とかは、やっぱり寂しい気分に変わっちゃって…」

桜井「想い続けてたら、いつかは願いは叶うんじゃないか……なんて信じてたけど」

桜井「やっぱり、現実は違ったよね…」

橘「先輩…」

桜井「もう一年経つっていうのに…。いい加減、気持ちに区切りをつけなきゃなっていつも思ってるのに……なんで、まだ引きずってるんだろうね…」

橘(それだけ…立花先輩の存在が桜井先輩にとって大きなものだったんだろうな……。きっと、先輩は小さい頃から本当に立花先輩の事が…)

桜井「…!あ、ご、ごめんね。なんか暗くなっちゃった」

橘「い、いえいえ。そんな…」

桜井「…はぁ、なんだか少しスッキリしちゃった」

橘「え?スッキリしたんですか?」

桜井「うん。…正直、今日は去年の事ばかり頭に浮かんじゃっててね」

桜井「誰かに、モヤモヤした気持ちをぶつけちゃいたかったのかもしれない」

橘「なるほど。じゃあ、ちょうど良かったですね。ははは」

桜井「あ、ごめんね…橘君」

橘「いえいえ、モヤモヤが溜まったらいつでもぶつけてくれて結構ですよ」

桜井「あはは、ありがとう」

桜井「…だけど、もうすぐで卒業なんだから、いい加減にしっかりしないとね」

橘「…」

桜井「あ、そうそう。あの時、君にあげた肉まんだったんだけどね…」

橘「え?は、はい…?」

桜井「本当はね……あれ、一人で全部食べるつもりだったんだー」

橘「ええっ?そ、そうだったんですか?」

桜井「うん。知らない人に見られたから恥ずかしくて嘘ついちゃったけど、本当はそうだったんだよ」

橘(まんま肉まんって、普通の肉まんより大きいよな…?あれを全部一人で…)

桜井「多分、食べる事で気をまぎらわせたかったんだね…。ここを寄ったのは、たまたまだったんだけど」

橘「そうだったんですか…。でも、それは別に僕に言わなくてもよかったんじゃ……」

桜井「…ぁ」

桜井「そうだよね。…でも、なんでだろ?君にはちゃんと言っておきたかったんだよ。えへへ」

橘「そ、そうですか」

桜井「誰にも言わないでよ?秘密だからね」

橘「はは、言いませんよ」

橘(うーん…告白するタイミングをまた逃してしまったかな……)

橘(僕が思っていた以上に、桜井先輩にとって立花先輩は大きな存在だった…)

橘(幼稚園の頃からの付き合いって言ってたもんな……楽しい思い出もいっぱいあっただろうし…)

橘(今の僕では、立花先輩に勝てる所がひとつもない…か)

ヒュウウゥゥ…!

桜井「うう、風が強くなってきたね」

橘「そうですね…もう、帰りましょうか」

桜井「うん。そうしよっ」

橘「先輩、話を聞いてもらってありがとうござました」

桜井「ううん。私の話も聞いてもらったし、おあいこって事で。えへへ」

橘「それじゃあ、帰りましょう」

桜井「うん」

橘「…また転ばないでくださいね」

桜井「むっ。もう、転びませんー!」

桜井「去年は今年より冷えてたから、ここも滑りやすくなって……うわわっ」ツルッ

橘「あっ!」

ドシーーッン!!

橘「…っ」

桜井「い、いたた……な、なんで…もう言った側からぁ…」

橘「ふふ……あははははっ!!」

桜井「わ、笑わないでよ?!」

橘「いやぁ、すみません。先輩って面白いなぁと…つい」

桜井「好きで転んでるんじゃないんだからねー?…もう」

橘「はい。立ってください」スッ

桜井「…!…あ、ありがとう」ギュ

橘「じゃあ、行きましょう」

桜井「う、うん…」

橘「支えていきましょうか?」

桜井「! こ、こら?!先輩をからかうな?!!」

橘「あはは、すみません」

桜井「もう、今転んだのはたまたまなんだからね!そんなに何回もころ…」ツルッ

桜井「わわっ!?」グラッ
橘「え… うわっ!!」

ドシーーッッン!!!

橘「ぐえっ!」

桜井「きゃあっ!だ、大丈夫!?」

橘「…お……重い…」ガクッ

桜井「お…重くないよー!!って、橘君!しっかりしてー!!」

……

やっぱり、?が文字化けするな…



そして、あっという間に月日は過ぎ…

僕は結局、桜井先輩に気持ちを伝える事が出来ずに、卒業式の日を迎えてしまった…

『桜井先輩が卒業してしまう。 …いい加減に僕の気持ちを伝えよう…!!』


早朝 橘家


橘「…」

ガチャ

美也「にぃにー、朝だよ…ってあれ?起きてたんだ」

橘「美也、ノックくらいしろよ」

美也「寝てるんだと思ってたんだもん。今日は卒業式なんだから、寝坊したら大変なんだからね」

橘「卒業式に寝坊するほど、ぬけてないよ。僕は…」

橘「…」

美也「…?にぃに、どうしたの?」

橘「え?」

美也「なんだか、元気ないけど」

橘「え。そ、そうか…?」

美也「卒業したら寂しい先輩とかでもいるの?」

橘「い、いや、そんな事は……ない」

美也「あ、もしかして…あの可愛い部長さんのこと?」

橘「! ち、違うよ」

美也「もう、しっかりしてよ。二年生になるんだし、みゃーも入学するんだから」

美也「学校でくらい、しっかりしたお兄ちゃんを演じてよね。みゃーに恥をかかせないためにも!」

橘「学校でくらいってなんだよ。失礼なやつだな…」

橘「とにかく、制服に着替えるから出てってくれ」

美也「はいはい」

ガチャ バタン


橘「……」

橘「はぁ……もう、卒業式か…」

橘(結局、桜井先輩には今日まで自分の想いを伝えられなかった……)

橘(先輩は卒業したら大学に行ってしまう……会える機会は殆ど無くなってしまうだろう…)

橘(いいのか…このままで……)

橘「…」

橘(…いや、よくない。よくないに決まってる…!!)

橘(とにかく、僕の気持ちを桜井先輩に伝えるんだ!!)

輝日東高校 体育館


「…それでは、卒業生の入場です」


ざわざわ…

パチパチパチパチ…


橘(始まった…。桜井先輩は何処に……)

橘「…あっ」

桜井「…」

橘(桜井先輩、晴れ着姿だ…)

桜井「……!」

桜井「…」フリフリ

橘「!(い、今、僕に手を振ったのか?!)」

夕月「おお!りほっち先輩、綺麗だなぁ…」

飛羽「とても似合う…」

橘(昨日、着てくるとは言ってたけど、ここまで似合うとは…)

橘(素敵だなぁ…本当に)


夕月「おい、愛歌。橘を見てみろ」

橘「…」ボーッ

飛羽「骨抜き…」

夕月「りほっち先輩の晴れ着を一番楽しみにしてたのは、あいつだからなぁ」

飛羽「やれやれ…と、言いたい所だけど」

夕月「ま、仕方ないよなぁ」

飛羽「…本当に綺麗」

卒業式終了後 茶道部 部室


夕月「りほっち先輩!」
飛羽「ご卒業」
橘「おめでとうございますっ!!」

桜井「えへへ…。ありがとう」

桜井「ようやく、卒業するんだなって実感が湧いてきたよ。…もう、この部室に来れなくなるのも寂しいなぁ」

夕月「私らも寂しいよ、先輩…」

飛羽「うん、うん」

橘「…」

桜井「みんな、茶道部をよろしくね。新入生の勧誘が一番大変だと思うけど、頑張ってね!」

橘「はい、任せてください」

桜井「今年の創設祭、必ず行くからね。楽しみにしてるよ」

夕月「今年はりほっち先輩の為にお菓子を沢山調達しなきゃなぁ」

飛羽「予算オーバーの危険性、大」

桜井「ちょ、ちょっと~」

橘「あははは…」

……

桜井「さて、それじゃあ私はそろそろ行くね」

橘「! 帰るんですか?」

桜井「ううん。香苗ちゃんとか、他の友達とカラオケに行くことになってるんだ~」

橘「…」

夕月「…ん?」

飛羽「…?」

橘「…あ、あの、桜井先輩」

桜井「…ん、なに?」

橘「その前に…ちょっと付き合ってもらえませんか?」

夕月(お、おおっ!?ま、愛歌、これは…)

飛羽(まさか…)

桜井「…」

桜井「…うん、いいよー」

橘「あ、ありがとうございます」

橘「じゃあ、ちょっとついてきてもらえますか?」

桜井「うん。…それじゃあ二人とも、またね」

夕月「あ、はい…」

飛羽「いってらっしゃ~い…」

スタスタ…

ガラッ ピシャッ

夕月「…」

飛羽「…」

夕月「あいつ……やるつもりだよな?」

飛羽「うん…多分」

夕月「し、しかし…卒業式に告白だなんて……」

飛羽「どこのゲームの世界だ…」

スタスタ…

桜井「ねえ、何処に行くの?」

橘「えーと…」

橘「お、屋上です。…駄目ですかね?」

桜井「屋上?ううん、別に駄目じゃないよ」

橘「そ、そうですか。良かったです」

スタスタ…

橘(いくら桜井先輩でも、これから僕が何をするかは気づいているよな…!?それにしては、なんか落ち着いてるというか……)

桜井「…」

橘(まさか…断る返事を考えているとか……)

橘(いやいや!マイナス思考はやめろ!!どっちにしろ、僕は自分の気持ちを伝えなきゃならないんだ!)

桜井「…!あ、ちょっと待って、橘君」

橘「えっ!な、なんですか!?」

香苗「おーい、桜井~!」

梅原「探したぜ。今、茶道部の方に行こうと思ってたんだ」

橘(先輩達…)

桜井「ご、ごめんね二人とも」

香苗「……お?あれれ?」

橘「あ、先輩方、卒業おめでとうございます」

梅原「若大将じゃねえか。どうしたんだ?」

桜井「ごめん、香苗ちゃん。ちょっと用が出来ちゃったから、先に行っててもらえるかな?後でちゃんと行くから」

香苗「…用?」チラッ

梅原「…用?」チラッ

橘「…」

香苗「ほっほーう…」ニヤリ

梅原「なるほどなぁ」ニヤリ

香苗「おっけーおっけー!それじゃあ、私たちは先に行ってるね!」

桜井「うん、ごめんね~」

梅原「じゃあ後でな、桜井さん!」

梅原(頑張れよ、若大将!)グッ

橘「…!はは…」

タッタッタッ…

桜井「ちょうど会えて良かったよ。…じゃあ、行こうか」

橘「あ……は、はい!」

廊下


スタスタ…

橘「…」

桜井「…」

橘(うう…屋上に近づくにつれて、心臓が……)ドクンドクン

桜井「いつも見てる景色だけど、卒業となると別物みたいに感じるね~」

橘「は、はは、そうですよね」

橘(覚悟を決めろ純一!もう、やるしかないんだ!!)


森島「あれ?ねぇ、ひびき。あそこにいるの純一じゃない?」

塚原「ん…。ほんとだ」

森島「一緒にいるのは、茶道部の部長さんよね?私、挨拶に行ってこようかな」

塚原「…はるか、今はやめておきなさい」

森島「え?どうして??」

塚原「橘君のあの真剣な顔を見れば、わかるでしょ?」

森島「えー?」


橘「…」


森島「…わお」

森島「あんな真剣な純一の顔、初めて見た。……も、もしかして純一…」

塚原「…多分、そういう事なんでしょう」

森島「うーん…気になるけど、これは邪魔したら悪いわねぇ」

塚原「そうそう。私たちはもう行きましょう」

森島「そうね…。…純一、ファイトッ!」

屋上


ヒュウゥゥ…

橘(来た……ついに来てしまった)

桜井「屋上の鍵、かかってないんだね。こういう行事の時は鍵をかけてると思ってたよ」

橘「いえ、本来は鍵をかけてるみたいですよ」

桜井「え…?じゃあ、かけ忘れ?」

橘「まぁ…そうなんでしょうね。開いてて、良かったです」

橘(本当は、高橋先生に頼んで卒業式が終わった後、30分だけ開けておいてもらったんだけど…)

橘(次の創設祭で甘酒の大量サービスを交渉材料に…ね)

桜井「えーと……それで…」

橘「!」

桜井「……」

橘「…」ドクンドクン

桜井「一応、聞くけど…用ってなにかな?」

橘「は、はいっ。その……」

桜井「…」

橘「さ、桜井先輩っ!」

桜井「は、はいっ」

橘「すいません。こういうの初めてで…上手く伝えられないかもしれませんが……」

桜井「う、うん…」

橘「ぼ…僕は、桜井先輩の事がずっと好きでした。この学校で出会った時からではなく、一年前、初めて公園で出会った時からです」

桜井「…」

橘「桜井先輩の優しさや、おっちょこちょいな所、…あと、お菓子を幸せそうに食べる姿も、全てが僕の気持ちを明るくさせてくれました」

橘「なにより、僕は桜井先輩の笑顔が大好きです。卒業してしまったら、もうその笑顔も見れなくなると考えると……寂しくて仕方ありませんでした」

橘「ぼ、僕は、これからも桜井先輩の事を見ていたいんです…!」

桜井「橘君…」

桜井(橘君……私の事をそんなに想っていてくれてたんだね…)

桜井(私の事を直接、こんな風に言ってくれる人は初めてだよ…)

桜井(本当に嬉しい…。告白するのはとても勇気のいるものだし、いつまでも純一に気持ちを伝えられなかった私なんかよりもずっと立派だよ…)

橘「…」

桜井(でも……私はこんな時にまで、純一の顔が浮かんでしまう…)

桜井(純一との子供の頃からの思い出が頭に次々と浮かんでしまう…)

桜井(ほんとに駄目だなぁ…私は……)

桜井(こんな私に、橘君の気持ちを受け入れる資格なんて…あるわけないよ……)

桜井「…あのね、橘君」

橘「…今、立花先輩の事を考えてましたか?」

桜井「え…」

桜井「そ、その……」

橘「はは、やっぱり…。先輩の顔を見てると、なんとなく何を考えてるのかわかる気がしますよ」

桜井「…ぁぅ」

橘「立花先輩が、桜井先輩にとって大事な人だったっていうのは、わかっているつもりです」

橘「小さい頃からの幼馴染みでしたし、楽しかった思い出も沢山あるでしょう」

橘「知り合って一年しか経たない僕では、その立花先輩との思い出に敵わない事も十分わかってます」

桜井「…」

橘「ですが、それでも!僕は桜井先輩を諦める事が出来ません」

桜井「…!」

橘「今回、こうやって屋上に来てもらったのは、実は告白だけじゃないんです」

桜井「告白…だけじゃないって…」

橘「もし、桜井先輩が良ければ…迷惑でなければなんですが、卒業した後も僕と……」

橘「僕と会ってもらえませんか?」

桜井「…。え…?」

橘「立花先輩との思い出に負けないような…僕と先輩だけの思い出を作っていきたいんです」

桜井「…」

橘「そして、いつか…先輩後輩じゃなく、お互い名前で呼び合えるような関係に……なりたいんです」

桜井「……」

橘「…ダ、ダメでしょうか…?」

ヒュウウゥゥゥ……


橘(…ッ。とにかく、自分の気持ちは全部吐き出せた…!断られても……後悔はしない…!)

桜井「…」

桜井「……本当にいいの?」

橘「え?」

桜井「本当に、こんなどうしようもない…私なんかでいいの?」

橘「! も、もちろんです!それに、先輩はどうしようもなくなんてないです!!」

桜井「…そっか……」

橘「…」ドキドキ

桜井「…うん。橘君がそう言ってくれるなら……是非、これからも…」

桜井「私も…君といろんな場所に行ってみたいな。えへへ……」

橘「!!ほ、本当ですか!?」

桜井「うん、よろしくお願いします」ペコッ

橘(や…やった……)ヘナッ

桜井「あ、あれ?どうしたの?」

橘「い、いえ、急に力が抜けてしまって…すみません」

桜井「あはは…締まらないね。でも、君らしいかな。…ほら、立って」スッ

橘「あ、すいません…」ググッ




高橋「もう約束の時間が過ぎたけど…橘君はまだいるのかしら……」

高橋「…」

高橋(卒業式に、屋上で告白だなんて……なかなかニクい事をするわね。上手く行ってたらいいけど…)

高橋(告白最中に現れるのも悪いから、コッソリ覗いてみましょうかね…)

高橋「どれどれ…」


キィ…


高橋「…ええと………あっ…!」

ガシッ

ぎゅっ

橘「え…、ええっ!?さ、桜井先輩?」

桜井「えへへ…」

橘「あ、あの…」

むにゅむにゅ

橘(や、柔らかいのが当たってる…!)

桜井「ありがとうね、橘君。告白してくれて…」

桜井「私も…君と名前で呼びあえる仲になりたいよ……」

橘「…。はい…」


高橋(……やれやれ。もう少し、他を見回ってきた方が良さそうね…)パタン


桜井「これからもよろしくね、橘君」

橘「こちらこそ、よろしくお願いします…」

………

『いよいよ、創設祭が始まる。部長として、しっかり頑張ろう!!』


~一年後~


がやがや…

夕月「おーい部長、甘酒運んでおいてくれー」

橘「はいはい」

美也「お兄ちゃーん、これもついでに運んでー」

橘「…おい、美也。部活では部長と呼べと何度も言ってるだろ」

美也「えー、だって……なんか気持ち悪いじゃん」

橘「き、気持ち悪いってなんだよ…!」

中多「部長、頼まれた物を持ってきました」

橘「お、ありがとう紗江ちゃん。向こうに置いておいてくれるかな」

中多「はい、わかりました」

橘(紗江ちゃんはともかく、美也も茶道部に入って来た時は心配だったけど、結構真面目にやってくれてて安心したよ…)

夕月「いやいや、頼りになる後輩がいてくれて、私らも大助かりだよ」

美也「にっしっし、褒められたー」

飛羽「着物もとても似合う…。将来が楽しみ」

中多「え、ほ、本当ですか?」

橘「うん、紗江ちゃんの着物姿は本当に似合ってる。綺麗だよ」

中多「あ…ありがとうございます…!」

美也「ちょっとちょっと、お兄ちゃん。美也はどうなの?」

橘「お前の着物姿は昔から見慣れてるからな…。まあ、似合ってると思うぞ」

美也「まぁってなに!?まぁって!!」

橘「似合ってるって言ってるだろ」

美也「美也だって、レディーなんだからもうちょっとちゃんとした誉め方があるでしょ!?」

橘「はいはい、キレイデスヨミヤチャン」

美也「心がこもってない…」

橘(ところで……まだ来てないのかな)

夕月「ん、どうした?」

飛羽「なんだか落ち着きがない」

橘「え。い、いや、なんでもないよ」

夕月「! はっはーん、りほっち先輩が来るのが待ち遠しいんだな?」

飛羽「なるほど」

橘「う…。そ、そうだよ。部長を任されたんだから、ちゃんとやってる所を見せたいからな…」

夕月「本当にそれだけかなぁー?」

飛羽「ふふ。どうだか…」

橘「う、うるさいな…」

タッタッタッ…

桜井「おーい、みんな~」

橘「!」

夕月「お、来た!」

飛羽「まさに、噂をすれば…」

桜井「えへへ。みんな、お久しぶりです」

夕月「久しぶり、りほっち先輩!」

飛羽「おひさー」

橘「ど、どうも。こんばんは」

桜井「こんばんは~」ニコッ

夕月「また会えて嬉しいよ。……誰かさんはプライベートで会ってるみたいだから、そう懐かしくはないようだけどね」

飛羽「ふふ…」

橘「な、なんだよ…」

桜井「えへへ…」

美也「あ、りほちゃん!」

中多「こ、こんばんは…」ペコッ

桜井「二人とも、こんばんは~」

夕月「え、りほちゃん?…美也っち、りほっち先輩と会った事があるのかい?」

美也「うん、たまに家に遊び来てお話…もごご」

橘「あまり余計な事は言わなくていい…!」

美也「むー!」

中多「み、美也ちゃん…」

桜井「あはは…」

飛羽「やれやれ…」

夕月「私らの知らない間に、随分仲良くなってるみたいだねぇ…」



橘「…どうぞ、先輩。粗茶ですが」

桜井「わあ、本当に抹茶用意してくれたんだね~!」

橘「はい、先輩の為に特別に用意しました」

桜井「ありがとう、いただきま~す」


夕月「…なぁ、美也っち。お菓子つまみ食いしてる所を悪いんだが」

美也「…ふぇ?」モグモグ

夕月「あの二人って、付き合ってるのかい?」

美也「…ううん、まだそこまでは行ってないみたいだよ」

夕月「そ、そうなのか?いい感じな仲に見えるけど…」

美也「お兄ちゃんも恥ずかしがって、あまり二人の仲の事は教えてくれないんだよね~」

夕月「そうなのか…まぁ、あの二人なら上手くやっていくんだろうな」



桜井「…ねえ、時間が出来たらさ。ツリーを見に行かない?」

橘「はい、喜んで」

桜井「えへへ、良かった」


タッタッタッ…

森島「純一~!」

橘「ん?」

桜井「?」


森島「やっほー!甘酒貰いに来ちゃった!」

橘「おお、はるかに逢ちゃんか」

七咲「こ、こんばんは。先輩」

桜井「わあ、二人とも可愛い。サンタコンテストの衣装かな?」

橘「…はるかはわかるんだが、なんで逢ちゃんまでサンタの格好を?」

森島「そりゃもちろん、二人でサンタコンテストに出るからよ!」

七咲「え、ええっ!?おでん屋台の宣伝って言ってたじゃないですか!」

森島「まぁまぁ、せっかく着たんだし出てみようよ!水泳部のダブル優勝を目指すの!」

橘「おいおい、優勝者は一人だけだろ?」

森島「あ、そっか。…それじゃあ、逢ちゃん優勝狙ってね!」

七咲「む、無理ですよ!優勝だなんて…!」

森島「えー?そうかな?とっても可愛いと思うけど…」

七咲(森島先輩には絶対に勝てないよ…)

……

森島「それじゃねー」

七咲「ごちそうさまでした」ペコリ

橘「頑張れよ~」

桜井「…ふふ、森島さんも相変わらずだね~」

橘「ええ、さっそく後輩が振り回されてましたね。はは…」

あぁこれ良いけど幼馴染の森島先輩ルートも見てみたいな

橘(しかし、今年のはるかの衣装もとてもよく似合ってるなぁ…)

桜井「…ん?」

桜井「こらこら~、じ…橘君。鼻の下が伸びてるよ~?」

橘「え?い、いやいや!そんな事ないですよ!!」

桜井「本当かなぁ?」

橘「ええ、僕は桜井先輩一筋ですから!」

桜井「ちょ…!ちょっと、声が大きいよ」

橘「あ、すみません。つい…ははは……」

夕月「おーい、エロ部長~」

橘「エ、エロは余計だ…」

飛羽「冗談、冗談」

桜井「あはは…」

夕月「落ち着いてきたし、先に創設祭回ってきなよ」

橘「え?で、でも…いいのか?」

飛羽「問題なし」

夕月「今年は人手がいるからね」

飛羽「優秀な後輩が二人もいる」

美也「にっしし、そういう事ー」

中多「こちらの事は気にしないで、行ってきてください…」

橘「美也、紗江ちゃん…」

桜井「あはは、頼りになる後輩だね~」

橘「そうか……それじゃあ、お言葉に甘えて。行きましょうか、先輩?」

桜井「うん、そうだね~。気を使わせちゃってごめんね、みんな」

夕月「いいから、いいから!」

飛羽「いってらっしゃ~い…」

美也「お兄ちゃん!ちゃんとエスコートするんだよ!」

橘「う、うるさいな。わかってるっての…」

桜井「えへへ…じゃあ、行こうか」

橘「はいっ」

クリスマスツリー前


ざわざわ…


橘「…」

桜井「…綺麗だね」

橘「はい」

桜井「毎年見てるけど、今年のツリーは去年よりもずっと輝いて見えるよ…」

橘「そうなんですか?」

桜井「うんっ! 純一君と一緒だからだろうね…」

橘「先輩…」

桜井「ふふっ。君はいつになったら、私の事を先輩以外で呼んでくれるのかな?」

橘「あはは…慣れてしまった呼び名を変えるのはなかなか難しいですよね…」

桜井「そうかもね…。いいよ、ゆっくりで」

橘「はい…」

桜井「…ありがとうね、純一君。あなたがいつも側にいてくれたお陰で、今日という日を楽しみに迎えられたよ…」

橘「そんな、お礼なんて…」

桜井「ううん、本当に。贅沢な悩みかもしれないけれど、君と後一年早く出会えてたらな…って思うよ」

橘「!」

桜井「えへへ…正直、学生だった時も何回かそう思ってたんだよ」

橘「そ、そうだったんですか。…嬉しいです」

橘「…でも、僕は一年早く出会えてたら…とは思いません」

桜井「え?…ど、どうして?」

橘「あの時、丘の上公園で出会えたからこそ、今があるんだと思ってるんです」

桜井「…」

桜井「…そっかぁ。言われてみれば確かに、そうかもね」

橘「だから、お礼を言うのはこっちの方です。先輩、あの時に僕と出会ってくれて、本当にありがとうございます」

桜井「…じゃあ、私からもお礼を。あの時に私と出会ってくれて本当にありがとう」

橘「ははは…」

桜井「ふふふ…」

チラ…  チラ……

橘「ん…」

桜井「あ…!」

子供「わー、雪だぁ!」

子供「ツリーがキラキラしてるー!」


桜井「ホワイトクリスマスだね…」

橘「はい。…クリスマスツリーがよけいに輝いて見えますね」

桜井「うん…本当に綺麗」

桜井「…」

橘「…」

桜井「…ねぇ、純一君」

橘「…はい?」

桜井「これからも…宜しくね?」ギュ

橘「! …はい、こちらこそよろしくお願いします。」

橘「僕はこれからも、ずっと…桜井先輩の事を見てきます!」ギュ

桜井「えへへ…ありがとう、本当に嬉しいな…」

桜井「今年のクリスマスはとてもいい思い出になりそうだよ…」

橘「そう言って貰えると、僕も本当に幸せです。先輩…」

桜井「うん…。私も幸せだよ」ニコッ



……


※おしまい※

…というわけで桜井梨穂子編完結です。
誤字多くて本当にすまんかった
支援してくれた人達サンクス

>>250
森島ルートか…
考えてみようかな



ミルク嫌いストーカーもオシャナス

>>264
この設定でやると三年生にストーキングされるのか…怖すぎる

とりあえず次は幼馴染み森島ルートでやるよ。
このスレそのまま使う予定

…10年前 森島家


はるか「それでね、わたしのおじいちゃんはチャペルでおばあちゃんにプロポーズをしたの!」

じゅんいち「シャベル?」

はるか「ちがうー!チャ・ペ・ル!」

みや「チャペルってなにー?」

はるか「チャペルって教会のこと!じゅんいちも、わたしとチャペルでプロポーズしてね!」

じゅんいち「ええー!?」

みや「だめだよー!おにいちゃんは、みゃーとケッコンするんだもん!」ガシッ

はるか「だめー!じゅんいちは、はるかとケッコンするの!!やくそくー!」ガシッ

じゅんいち「わああ、ひっぱるなよー」


ジリリリリリ…!


橘「…はっ!」

橘「…夢、か」

橘(……随分懐かしい夢だったな…)

…………………

橘「…」スタスタ

橘「……ふわぁ~…ぁ…」ノビッ

橘(昨日は夜更かししすぎたな……眠い…)

橘(教室ついたら少し眠るか…って、いやいや…それじゃあ中学の時となにも変わらないじゃないか)

橘(僕ももう、高校生なんだからしっかりしないとな…)


タッタッタッ…

森島「おっはよー!純一!」

橘「わっ」

橘「はるかか…。びっくりさせるなよ」

森嶋「なんだか眠そうね。昨日、遅かったの?」

橘「うん、まぁね…」

森嶋「ふむふむ。えっちな本を熟読して寝不足になったわけね?」

橘「な、なんでそうなるんだよ…!」

森嶋「だって…純一が夜更かしする理由なんて、それくらいしかないでしょ?」

橘「それくらいって……いや、それくらいしかないかもしれないけどな…!」

森島「あはは、怒っちゃった?」

橘「はぁ、まったく…」

スタスタ…

橘「そういえば、今日懐かしい夢を見たぞ」

森島「え?なになに??」

橘「小さい頃、はるかの家でお祖父さんの話を聞いた時の夢だよ。…覚えてるか?」

森島「え…?お祖父ちゃん……?」

森島「…」

橘「ほら、チャペルがどうとかって……」

森島「あー!思い出した!!純一が私にプロポーズしてくれるって約束した時の話ね!」

橘「こ、声がでかいよ!」

生徒「な、なんだ…?」ヒソヒソ

女子生徒「プロポーズって聞こえた…?」

森島「あはは、ゴメンゴメン」

橘「通学路なんだから、変な誤解される事言うなよ…。というか、僕はそんな約束はしてないぞ」

森島「うそー、してくれたわよ~」

スタスタ…

塚原「…朝から元気ね。二人とも」

橘「お、塚原」

森島「おはよう、ひびき!」

塚原「おはよう。…遠くから聞こえてたけど、小さい頃にそんな約束をしていたなんて、知らなかったわ」

橘「いやいや。だからしてないってば…」

森島「えー?絶対にしたわよ~」

塚原「ふふっ…どちらが本当なのかしらね?」

森島「むむ。ひびきったら、私の言う
事が信じられないの?」

橘「はるかは物忘れが多いからな…」

塚原「…あ、確かにそうね」

森島「うう、それを言われると……」



森嶋「…でね?下駄箱を開けたら、ラブレターがドバーッ て……」

橘「はは。大変だな」

塚原「入学して早々、だもんね。…少し羨ましいかも」

森嶋「もー、本当に大変なんだから…」

橘(はるかは中学の頃から男子にモテてたけど、高校生になるとさらに凄いみたいだな…)

塚原「…そういえば、橘君は部活とか決めたの?」

橘「え?部活?……いや、まだ決めてないかな」

森島「ひびきは水泳部に入るのよね」

塚原「ええ、まあね」

橘「はるかはどうするんだ?」

森島「うーん、私も泳ぐの好きだから水泳部に入ろうと思ったんだけど、部活入ってまではどうかなぁって悩んでて…」

橘「ふーん。そうなのか…」

橘(水泳部のはるかの姿もなかなか……って、朝っぱらから何を考えているんだ僕は…)

森島「?」

塚原「放課後にテラスの方で部活の勧誘とかやってるみたいよ。興味あったら見てきたらどう?」

橘「へえ、そういうのもやってるんだなぁ」

森島「面白そうね!純一、一緒に行きましょうよ」

橘「ああ、そうするか」

森島「どんな部活があるのか楽しみねー」

放課後 テラス

ガヤガヤ…

橘「結構、いるなぁ…」

森島「うん、やっぱり運動系の部活が多いみたいね」

橘「サッカー、バレー、テニス部か…。なんか、僕のイメージじゃないなぁ」

森島「純一、帰宅部のエリートだったもんね」

橘「なんだよ、帰宅部のエリートって…」

森島「中学の頃は3年間帰宅部一本だったし、小学生の頃もクラブ活動には消極的だったじゃない?だから、純一は帰宅部のエリート!」

橘「意味がわからん…」

橘(小学生の頃のクラブ活動は、はるかに引っ張り回されてばっかりだったな。そういえば…)

橘(う~ん…幼馴染みといえば当たり前だけど、はるかとの付き合いも長くなったよなぁ……)

橘(中身は全然変わらないけど、外見はかなり色っぽくなったよなぁ…)チラッ

森島「ん?どうかした?」

橘「い、いや、別に…なんでもない」

森島「…むむ?」


???「純一ぃ~」


橘「…え!」

森島「え?」


桜井「…あれぇ、何処に行っちゃったのかな~」キョロキョロ

タッタッタッ…


橘「…」

森島「…」

橘「なんだ、同じ名前の人を呼んだのか。ビックリしたよ」

森島「あはは、そうだね」

橘「思わず、『はいっ!』って返事しそうになったよ」

森島「うんうん、私も!」

橘「な、なんではるかが返事するんだよ」

森島「え?なんでって………条件反射?」

森島「純一だって、いきなり『はるか~』って聞こえたら振り返っちゃうでしょ?」

橘「…ま、まぁ、そうかもな」

森島「ふふっ、だからそういう事!」


???「あ、あの…ちょっといいかな」

森島「え…?」

橘「ん?」

???「君、森島はるかさんだよね?」

森島「は、はい。そうですけど」

橘(なんだこの人…?独特な雰囲気だな)

アニメ研究所部長「僕はアニメ研究所って部の部長なんだけど…」

森島「研究所…?」

部長「君、こういう格好とか興味ないかな?」スッ

森島「え、これって…」

橘(な、なんだこれは…!きわどい衣装を着たキャラクターの画集か…?)

部長「君、とてもキレイだし…こういう格好が凄く似合うと思うんだよね…」

森島「ふーん…結構、可愛い服装もあるんですね」パラパラ

部長「う、うん。そうなんだよ…気に入ってくれたかな?」

部長「も、もし、君がこういう格好をしてくれたら、君は間違いなく姫になれる!」

森島「お姫様に私が?」

橘(なんだこの人…なんか怪しいぞ)

部長「ど、どうかな?体験入部からでもいいから、ちょっと試してみない?」

森島「うーん、どうしようかな~…」

橘「…」

橘「あ、あのっ!僕たちたまたま通りがかっただけですので!!失礼しますっ!!」

部長「え?」

グイッ
森島「きゃあ!?ちょ、ちょっと純一…」

タッタッタッ…

タッタッタッ…

森島「もう、話してた途中だったのに」

橘「…直感だけど、あの部に関わったら危険だと思ったんだ」

森島「えー?だって、アニメのキャラクターの衣装を着るだけでしょ?」

橘「どう見てもそれだけで済むとは思わなかったんだよ」

橘「なんていうか…はるかが変わってしまう気がした」

森島「…ふーん……」

森島「じゃあ、純一は私を守ってくれたんだ?」

橘「え?…まぁ、結果的にはそうなるのか……」

森島「ふふっ、ありがとっ!」

橘(はるかの性格ならホイホイついて行きそうだからな…。まったく)

橘「いいか、はるか?同じ学校の人とはいえ、変な人に声を掛けられても簡単についていっちゃ駄目だぞ?」

森島「はーいっ」

橘(これじゃまるで保護者だな…)

森島「ふふっ、なんだか楽しいね?」

橘「僕はなんだか疲れたよ」

森島「あはは、ちょっと走っただけなのに」

橘「校門前まで来ちゃったし、今日はもう帰ろう」

森島「うん、そうね。帰ろう帰ろう!」

森島「純一と二人で帰るのもなんだか久しぶりね!」

橘「…そういえばそうだな。いつも塚原と3人で帰ってたからな…」



男子生徒「おい、あれ森島さんじゃないか?」ヒソヒソ

男子生徒「本当だ。…一緒に帰ってるのは誰だ?」ヒソヒソ

男子生徒「羨ましい…俺も誘ってみようかな」ヒソヒソ

『はるかが僕の名前を呼びながら走ってくる… 一体なんだ?』


放課後 廊下


橘(さて帰るか……)

橘(そうだ、帰る前にゲーセンに寄っていこうかな?新作の格ゲーが入ったって噂だし…)


タッタッタッ…

「じゅんいち~~!!」

橘「…ん?」

タッタッタッ…

森島「純一~!!」

橘「え?な、なんだ?」

橘(はるかがこっちに走ってくるけど…)

男子生徒「森島さ~ん、ちょっと待ってよー!」

男子生徒「一緒に帰ろうぜー!」

橘(沢山の男子生徒に追いかけられてるのか!?)

森島「た、助けて~」

橘「ど、どうしたんだよ。何か悪い事でもしたのか?」

森島「ち、違うわよ!」

ドドドド…

男子生徒「森島さん!俺達と一緒に帰ろう!」

男子生徒「帰りにゲーセン寄っていこうぜ!」

男子生徒「俺、おいしいケーキ屋とか知ってるんだけど、一緒にどう?」

森島「一緒に帰ろうってみんなに声を掛けられて…」

橘「す、凄いな…」

森島「…でも、純一がちょうどいてくれて良かった」

橘「え?」

森島「…ごめんね、みんな?私、この人と一緒に帰る約束をしてたんだ。」

橘「え?」

男子生徒「えええっ!?」

男子生徒「そ、そんなぁ…」

男子生徒「同じクラスの橘じゃんか!」

男子生徒「なに!?昨日も森島さんと帰ってたって噂の!??」

橘(う、噂が流れているのか?し、しかし凄い圧力だ…!)

橘「お、おい、はるか…」

森島「変な人についていったら駄目って純一が言ってたでしょ?また守ってくれるよね?」ヒソヒソ

橘(た、確かに言ったけど、この大人数を前にどうしろと…)

???「ちょっと、あなた達」

男子生徒「ん?」

森島「?」

橘「え…」

絢辻「廊下で走ったら危ないでしょう?それに、一人の女の子を大勢で追いかけるなんて、どういうつもりなのかしら?」

男子生徒「あ、生徒会長の…」

橘(確か……絢辻先輩!)

男子生徒「い、いやその…僕達はただ、一緒に帰ろうと…」

絢辻「でも、彼女はあなた達から逃げていたように見えたけれど」

梅原(や、やべぇ…)ソロソロ

絢辻「! う、梅原君!?あなたまで…」

梅原「げっ、見つかった…」

絢辻「もう、1年生の模範になるべきあなたまで1年生と同じ事をしてどうするの…」

梅原「す、すまねぇ絢辻さん!男の性には逆らえないというか…」


男子生徒「お、おい。今のうちに行こうぜ」ヒソヒソ

男子生徒「そ、そうだな」

男子生徒「森島さん、ごめんね」

タッタッタッ…

橘「…た、助かったな」

森島「う、うん…」



絢辻「大丈夫だった?森島さん」

森島「ありがとうございます!」

橘「本当に助かりました。どうしようかと思いましたよ…」

絢辻「ふふ、助けになれて良かった。」

絢辻「それじゃあ、気を付けて帰るのよ」

スタスタ…

橘「あ、ありがとうございました!」

森島「お疲れ様です!」

スタスタ…

橘「いやぁ、本当に大変だったな」

森島「そうね。たまに声をかけられる事はあったけど、あんなに大勢で来られたのは初めてよ。…なんでだろ?」

橘「うーん…」

橘「……あ、わかったぞ」

森島「え?なに??」

橘「塚原がいないからだよ」

森島「え?ひびきが?…どうして?」

橘「はるかに近寄る男子達も、塚原の鋭い眼光があってなかなか手が出せなかったんだろ」

森島「あはは、なにそれ」

橘「しかし、塚原も水泳部に入った事によって、他の男子達が付け入る隙が出来たんだろう」

森島「…あ、そっか。確かに一緒に帰れる時間は少なくなったね」

橘「つまり、はるかはこれからも今日みたいな災難に遭う事になるわけだ…」

森島「えーっ、そんなぁ…。それは疲れちゃうなぁ……」

橘「他に仲のいい女子はいないのか?」

森島「うーん。いるけど、それじゃあその子にまで迷惑かけちゃうし……」

橘「それもそうか…」

森島「やっぱり、純一が一番適役ね!」

橘「ぼ、僕かよ…!今日の一件で男子達を数人敵に回したような気がしたのに…」

森島「幼馴染みの仲なんだから、これぐらい協力してよ~」

橘「いやまぁ、いいけどさ…」

橘「ただ、周りは僕達が幼馴染みだって事を知らない人が多いだろ…中学とは違うんだし」

森島「そんなの気にしたってしょうがないじゃない!別に私は噂されても気にしないしっ」

橘「えっ…」

森島「うん、それで決まりね! じゃあ、明日からよろしくね!!」

橘「え、あぁ…」

橘(どういう意味だろう。相手がはるかだけに深読みしてしまうぞ…)

森島「うーん…私も誰か彼氏を見つければこういう目に合わないのかな?」

橘「そ…、そうかもな…」

森島「あーあ、ひびきちゃんが男の子だったらいいのになぁ~。ひびきちゃん、どうして女の子なの?」

橘「無茶言うなよ…」

森島「あははっ」

『休みの日だっていうのに誰かが来たみたいだ… 誰だろう?』


橘家


橘「う~ん……休みの日だからって寝過ぎたな…」コキ

橘「もう昼過ぎか…。父さんも母さんも出掛けていないし、夕御飯まで寝てようかな…」

ピンポーン

橘「ん?誰だろう?」

橘「美也ー、出てくれ~!」

シーン…

橘「美也ー?」

橘「…」

橘(あっ、そうだ!美也も紗江ちゃん達と街に出掛けるとかで朝からいないんだったな)

橘(仕方ない。僕が出るしかないか)

ガチャ…

橘「はーい…」

「ワンワンワンッ!!!」

橘「うおっ!?な、なんだ!?」

森島「こーら、ジョン!ダメでしょ!!」

橘「は、はるか?」

森島「やっほー、純一!ごめんね、驚かせちゃって」

橘「ど、どうしたんだ?」

森島「ジョンの散歩の途中に通りがかったんだけどさ。純一にジョンの姿見せたくなっちゃってね」

橘「ああ、そういう事か。しばらく会ってなかったなぁ、そういえば」

橘「ジョンもだいぶ老けたなぁ」ナデナデ

森島「うん…。散歩もあまり長く出来なくなっちゃったしね」

森島「今、ヒマ?良かったら、一緒に散歩に行かない?」

橘「ああ、たまにはいいかもな。今、着替えてくるよ」

森島「よかった。それじゃあ、外で待ってるね」

橘「おう」

スタスタ…

橘「…。ははは、なんだか年寄りっぽい歩き方だな、ジョン」

森島「だって、おじいちゃんだもん」


橘「昔は、はるかを引っ張り回ってたのになぁ」

森島「あはは、そうだったね」

橘「はるかの家に遊びに行ってた時も、はるかと美也にもみくちゃにされた後、ジョンにベロベロ舐められて大変だったな」

森島「うんうん!あったあった!懐かしいなぁ~」

森島「そういえば、私…久しぶりに純一の家に行ったかも」

橘「ああ、そうだな。小さい頃は毎日お互いの家を行き来してたよな…」

森島「うんうん。お泊まり会とかもよくしてたよね~」

橘「してたなぁ。懐かしいよ…」

森島「また、美也ちゃんと3人で騒ぎたいわね!」

橘「ん?まぁ…な」

森島「う~ん…」

森島「ねぇ!今度、純一の家に泊まりに行ってもいい?」

橘「は?」

森島「久しぶりにお泊まり会やりましょうよ~」

橘「あ、あのな…」

森島「あ、嫌だった?」

橘「い…嫌って訳じゃないけど、僕達だって小さい頃の時とは違うんだから、色々あるだろう…!」

森島「え~、幼馴染みじゃない。いまさら、恥ずかしがる仲でもないでしょ?」

橘「いや、だけどな…」

橘(昔のお泊まり会では、はるかはよく僕の布団に入ってきたり、一緒にお風呂に入って洗いっこしてたからな……もし、今のはるかにそんな事されたら、僕の理性が…!!)

森島「…むむむ?……純一、さてはえっちな妄想してるわね?」

橘「…!ち、違うよ」

森島「あははは!さすがに私も小さい頃と同じ事はしないわよ~。」

橘(だ、だよなぁ…さすがにはるかでも、それはないか……)

橘(…って、なんで少しガッカリしてるんだよ僕は!!)

森島「寝る時は美也ちゃんと寝るし、お風呂も美也ちゃんと一緒に入るから、純一はな~んの心配もしなくていいのよ?」

橘(み、美也と一緒にお風呂…!?)

橘(美也のことだから、はるかの胸にまず注目するハズ…!という事は美也のとる行動はただひとつ…!)

モンモン…

美也『はるかちゃん、相変わらずスタイルいいね~。特に…胸が……』

森島『ほんと?ありがと、美也ちゃん。良かったら触ってみる?』

美也『うん!みゃーにもご利益欲しい!!』モミモミ

森島『あん、くすぐった~い』

美也『いいなぁこれ~。にっしっし!』

森島『そうだ!美也ちゃん、私がいつもやってるマッサージをしてあげる!!』

美也『え?マッサージ?』

森島『うん。大きくなりますようにって、こうやって…』

美也『ぁ…』ピクッ


橘(うわああああ!!!なんで美也の妄想までしてるんだ僕は!!妹だぞ!)

橘(ぼ、僕はそんな変態では断じてないハズだ!!)

橘(し、しかし…それだけの事でもやはり、僕には刺激が…)

森島「純一~?」

橘「え!?あ…」

森島「ほら、こっちこっち!ジョン、GOGO!!」

タッタッタッ…

橘「な、なんだ、もう丘の上公園の前まで来てたのか…」

今日はここまで
なんか森島先輩だとポンポン展開が思い浮かぶなぁ…

丘の上公園


「ハッハッハッハッ…」タッタッタッ

チョコン

橘「ははは、やっぱりジョンはそこに座るのか」

森島「ジョンの指定席だもんね?」

「ワンッ」

橘「賢い奴だよなぁ…」

橘(なんだか、はるかと一緒に出掛けるのも結構楽しいな。少し騒がしい奴だけど、楽に話せるっていうか…)

森島「ねぇ純一、喉乾かない?」

橘「ん?…そうだな、喋ってるから少し乾いたかな」

森島「あそこに自販機あるから、ジュース買ってきてよ!」

橘「…やれやれ、仕方ないな。いい気分転換になったから、僕がおごってあげよう」

森島「ほんと?ラッキー!」

橘「えーと…」ゴゾゴソ

橘「…あれ?しまった、財布を忘れてしまった」

森島「えー?…もう、仕方ないなぁ」

森島「それじゃあ、特別に私がご馳走してあげる。ジョンのリード持っててくれる?」

橘「あ、ああ。…なんかカッコ悪いな」

森島「ふふっ、気にしないでよ。誘ったのはこっちなんだから」

森島「ジュースなら何でもいいの?」

橘「ああ、はるかに任せるよ」

森島「オッケー!」

タッタッタッ…



???「……ん?あれは…」

タッタッタッ…

森島「はい、お待たせ!」

橘「おお…ってあれ?ひとつしか買ってないじゃないか」

森島「うん。半分飲んだら私にちょうだい」

橘「…は?」

森島「私は一本じゃ多すぎるから半分でいいの!さ、飲んで飲んでっ」

橘「そ、それじゃあお前…」

橘(間接キスになるだろ…!)

森島「え?別にそれくらいいいじゃない。今更照れること?」

橘(本当にこいつは…なんというか……)

森島「…もう、ジュース一本にじれったいなぁ」

プシュッ

橘「あ」

ゴクッゴクッゴクッ

森島「…ふぅっ、生き返る~!」

森島「はい、純一。残り飲んで」スッ

橘「…」

森島「捨てるのもったいないでしょ?ほら、グイッと!」

橘「う、うん…。いただきます」

森島「へ、変な意識しないでよね。こっちまで恥ずかしいじゃない」

橘「ご、ごめんごめん」

ゴクッゴクッゴクッ

橘(他の男子達に大人気のはるかが飲んだ、ジュース…)

橘(それを僕が簡単に飲めるって……な、なんだか凄いことじゃないか?)

橘「…ふぅ」

森島「初めて買ったけど、なかなか美味しいね!そのジュース」

橘「あ、あぁ。そうだな…」

橘(変な事考えてたから味がよくわからなかった…)

森島「久しぶりに純一と散歩に来れて良かったな。」

橘「ああ、僕もなんだか楽しいよ」

森島「ほんと?良かったね、ジョン!」

「ワン!」






???「……」ギリッ

『登校中に見覚えのある奴に声をかけられたぞ…』


スタスタ…

橘「~♪」

???「…」

???「あの、先輩」

橘「…ん?」

???「おはようございます…」

橘「え?えーと…」

橘(誰だっけ?なんか、見覚えがあるんだけど…名前が出てこない)

???「…その顔だと、僕の事は覚えてないみたいですね。……まぁ、先輩と顔合わせした事もそんなになかったですし…」

樹里「改めて自己紹介させてもらいます。輝日東中の樹里路美雄です」

橘(あっ…!思い出した、こいつはアレだ。中学の後輩で…はるかにやたらとアプローチしてた…!)

橘「ああ、樹里ね。はるかから君の話は何回か聞いた事があるけど…」

樹里「…はるか……」ギリッ

橘(確かこいつ、はるかにすっごい惚れてたんだよなぁ…。中学の卒業式の時も告白してあっさり振られたとか聞いてたけど…)

樹里「…あの、先輩に聞きたい事があります。その為に先輩を待っていたんです」

橘「そ、そうなのか。…聞きたい事ってなんだ?」

樹里「……橘先輩は、森島先輩と付き合っているんですか?」

橘「ええっ!?」

樹里「昨日、丘の上公園で森島先輩とデートしてましたよね?たまたま僕も公園に来ていて、見てしまったんです」

橘「あ、あれはデートじゃないよ。犬の散歩に付き合わされただけだよ」

樹里「…」

橘(まさか、樹里のやつ…まだはるかの事を諦められないでいるのか…?)

樹里「…じゃあ、あれはなんなんですか!?」

橘「あれ?」

樹里「森島先輩の飲んだジュースを先輩が飲んだ事ですよ!!!」

橘「い、いきなりでかい声出すなよ!」

樹里「おかしいでしょう!?付き合ってもいないのに、あんな事を普通に出来るなんて!!」

橘「そ、そんな事言われてもな……僕とはるかが幼馴染みだってのはお前も知ってるだろ?」

樹里「幼馴染みだからって、付き合ってもいないのにそんな羨ましい事が出来るわけないでしょう!」

橘(なんなんだこいつは…朝から……)

スタスタ…

森島「…あっ、純一だ」

森島「……?」

森島「あれ?一緒にいる子って確か…」



橘「と、とにかく落ち着けよ」

樹里「…。すみません、つい熱くなってしまいました」

樹里「…でも、先輩と森島先輩は付き合ってはいないのは確かなんですね?」

橘「ああ、はるかとは幼馴染みの仲。ただ、それだけだよ」

樹里「恋愛対象にはならないという事ですね?」

橘「…」

樹里「な、なんで黙るんですか…!」

橘「いや、だってお前…いきなり聞かれて即答なんか出来ないだろ」

樹里「くっ…でも、僕は負けませんからね…!」

樹里「先輩が森島先輩をただの幼馴染みとしか見ていないのなら、まだ僕にもチャンスはあるはずですから!」

橘(いや、ないだろ…学校違うし)

樹里「それでは僕はここで。失礼します」

タッタッタッ…

橘「…」

橘「…はぁ、なんか朝から疲れた」

森島「…お疲れ、純一」

橘「うわっ!は、はるか…」

森島「今の、樹里君だよね?なに話してたの?」

橘「ん…あぁ、僕とはるかが付き合ってるって聞かれたんだよ」

森島「えっ…。そ、そうなんだ」

森島「それで、純一はなんて答えたの?」

橘「幼馴染みだって答えたよ。当然」

森島「…。ふーん…」

橘「あいつ、まだはるかの事を諦めてなかったっぽいぞ」

森島「そっか……卒業式の時に、キッパリお断りしたんだけどなぁ…」

森島「嘘でもいいから、俺の彼女だ!とか言ってくれたらよかったのに」

橘「そんな事言ったら、あいつめちゃくちゃへこむと思うぞ」

森島「でも、いつまでも私の事を想われるのもねぇ…。私は樹里君の気持ちには応えられないし…」

森島「彼には、早く新しい人を見つけて欲しいと思うんだよね。気持ちは本当に嬉しいんだけど」

橘「卒業しても諦めてないからな…かなり本気なんだろう」

森島「…」

森島「ねぇ、純一。試しに私と付き合ってみない?」

橘「…」

橘「は?…え?」

橘「え…じょ、冗談だろ?」

森島「…」

橘「な、なんか言えよ!」

森島「ふふ、どうかなぁ~?」

森島「でも私と純一がそういう関係になれば、樹里君も諦めてくれるだろうし、私宛のラブレターもなくなるだろうし」

橘「う~…ん……」

森島「別に、今までと付き合い方だって大して変わらないと思うけど?」

橘(それは…そうなのか……?)

塚原「ふふっ、それはどうかしらね?」

橘「わっ!」

森島「ひ、ひびきちゃん…」

塚原「橘君も男の子だし、幼馴染みのような付き合い方じゃ物足りなくなっちゃうんじゃない?…ね?」

橘「なっ!?お、おい塚原…」

森島「そうなの?純一」

橘「し、知らないよ!」

塚原「ふふ。…でも、私は二人が付き合うのは賛成かな」

森島「ほんと?ほら、純一!ひびも賛成だって!」

橘「えぇっ…」

塚原「でもはるか、橘君の気持ちもちゃんと考えてあげないと」

森島「そっか。それもそうね」

森島「純一、私じゃイヤ?」

橘「い、嫌とかそういうのじゃなくてな…」

塚原「あのね、はるか。いくらなんでもストレートすぎるでしょ…」

森島「え、そう?…じゃあ、純一は今、誰か好きな人とかいるの?」

橘「それはいないけど…」

森島「じゃあ、ちょうどいいじゃない!お試しで付き合ってみようよ!」

橘「お試し…かぁ」

橘(お試しとはいえ、はるかとそんな関係になるなんて考えた事もなかったぞ…)

橘(でもまぁ…僕にこういう風に言ってくれる女の子なんて、そういないよなぁ)

橘(試しで付き合ってみるだけなら……いいかもしれないな)

橘(しかし、こんな所を樹里や他の男子達に見られたらエライ事だな…)

森島「ねえ?純一、どうなの?」

橘「あ、ああ」

橘「…僕なんかでいいなら、試しに付き合ってみるか?」

森島「ほんと?やったぁ!」

橘「声がでかい…」

塚原「おめでとう。幼馴染みからひとつ、階段を上がったわね」パチパチ

森島「ふふっ!よろしくね、ダーリン?」ギュッ

橘「ダーリンはやめろ…って、おいっ?なにしてるんだよ?!」

森島「え?だって付き合ってるんだから、腕くらい組んで歩くでしょ?」

塚原「なにも私の前でやらなくても…」

森島「いいじゃない、ひびき公認カップルなんだし!」

橘「た、頼むから学校の中ではやらないでくれよ?」

森島「え?どうして?」

橘「だって…そんな所を他の男子に見られてみろ。僕がどんな目にあうか……」

森島「えー、それじゃあ付き合う意味がないじゃない」

塚原「ふむ…。でも確かに、物凄く嫉妬されそうね」

橘「それに、あくまでお試しなんだからな。あまりベタベタしすぎるのもどうかと思う」

森島「うーん。…まぁ、純一がそこまで言うなら仕方ないわね」

橘(ああ良かった。なんとかわかってくれた)

橘(しかし、お試しと考えると線引きが難しいなぁ…)


塚原「ふふっ…これから大変ね。さ、早く学校に行きましょう」

橘「ああ」

森島「よーし、純一!GOGO!!」

橘「ひ、引っ張るな…」

タッタッタッ…

橘(うーん、しかしこんな簡単にはるかと付き合う事になるとは…)

橘(お試しとはいえ…これからどうなってしまうんだろう?)


まだ残ってたとは

『……一方その頃』


放課後 校門前


???「……」ジーッ



橘「…」スタスタ

タッタッタッタッ…

森島「こら~!純一ー!」

???「…!」

橘「え? …どうした、はるか?」

森島「どうして置いてくのよー?一緒に帰るって言ってたでしょ?」

橘「ご、ごめんごめん。腹減ってぼーっとしてたよ」



???(…あの二人……)

???(あの二人は幼馴染み…それは知ってるけど……)


森島「お腹減ってるの?じゃあ、何か食べて帰ろっか!」

橘「ああ、僕もそうして帰ろうかなって思ってたところだよ」

森島「そっか。それじゃ、行きましょう!」ギュッ

橘「お、おい…!学校にいる時は腕を組むなって言っただろ…」

森島「いいじゃない、誰も見てないんだし!だって私達は…」

橘「わああっ!大きい声で言うなって…!」

森島「あははっ。さ、行こ行こ!!」

スタスタ…

???(い……今…腕を組んでた?)

???(どういう事…?あの二人はただの幼馴染みなのに……)

???(森島さんが人懐っこいのはいつもの事だけど……あんな事は普段しないはず……)

???(まさか………)

???(そうだよ…!あの橘君の反応……!)

???(迷惑してるんだ…森島さんの過度なスキンシップに……!)

???(いくら幼馴染みだとはいえ、うんざりしてるんだね!きっと…!)

???(でも橘君は優しいから、断る事が出来ないんだ……)

???(かわいそうに…橘君……)

???(守ってあげなきゃ……)

上崎(あたしが、守ってあげなきゃ…!)

その夜 橘家


橘「ただいま、と…」

美也「おかえりー。にぃに、来週の土日はお父さんとお母さん出掛けるからいないってさ」

橘「え、そうなのか。わかったよ」

美也「…ん?」クンクン

橘「?」

美也「むむ…」クンクン

橘「な、なんだよ?」

美也「にぃに、なんかいい匂いがする」

橘「えっ」

美也「香水でもつけてるの?」

橘「つけてないっての。僕がそんなのつける男に見えるか?」

美也「うーん…いつものにぃにの匂いじゃないような感じがするんだけどなぁ…」

橘(もしかして、はるかの匂いが残ってるのか…?)

橘(…)

橘(帰り道はずっと腕を離さなかったからな…あいつ)


森島『ねえ、純一。…こういうのって、結構ドキドキするね…』ニコッ


橘「…」

橘「…うへへ」ニヘラ

美也「な、なに急に…気持ち悪……」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年05月31日 (火) 06:44:49   ID: 6xRLTyJQ

食べるところと転ぶことしか梨穂子の見せ場がない。梨穂子の魅力を生かし切れていない。
アニメのダメダメな設定は使うわりには、原作の梨穂子の凄い部分描いていない。
作者は本当に原作をやったのか。某アマガミアニメの梨穂子編を見せられた気分

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