カツオ「ドラえもん?」(40)
―空き地―
中島「ボール投げるぞ、磯野ーっ!」
カツオ「オッケー!」
カツオ「ん?」
ヒュルルルルル…
カツオ「空からなにか降ってきた!」
中島「え!?」
ドスンッ!
ドラえもん「あだだだ…!」
中島「これは…タヌキ?」
カツオ「空からタヌキが!タヌキが降ってきた!」
ドラえもん「ぼくはタヌキじゃない!」ガバッ
ドラえもん「うっ!」ズキッ…
ドラえもん「いたたたた…!」ガクッ
カツオ「大丈夫かい?」
中島「磯野、どこかに運んであげた方がいいんじゃないか?」
カツオ「じゃあ僕たちが肩を貸してあげるよ。よいしょ、と」グイッ
中島「よっと」グイッ
ドラえもん「あ、ありがとう」
中島「どうする、磯野?」
カツオ「そうだなぁ…。よし、とりあえず僕の家に運ぼう!」
カツオ「よいしょ、よいしょ」
カツオ「ところで…君、名前はなんていうの?」
ドラえもん「ぼく、ドラえもん」
中島「ドラえもん?タヌキにしては変な名前だなぁ」
ドラえもん「だからタヌキじゃないって言ってるでしょ!」
ドラえもん「ぼくは未来から来たネコ型ロボットだ!」
カツオ「ふうん…。よく分からないけど、しばらく家で休んでいきなよ」
ドラえもん「ありがとう…いたたた…!」ヨタヨタ…
―磯野家の玄関―
カツオ「ただいま~!」
サザエ「あらカツオ、おかえりってどうしたのよ、そのタヌキ!?」
ドラえもん「だから、ぼくはタヌキじゃないです!」
カツオ「これはドラえもんっていうネコ型ロボットだよ」
カツオ「ケガしてるから、しばらく家で休ませてあげたいんだ」
カツオ「いいでしょ、姉さん?」
サザエ「ネコ型ロボット?…何言ってんのよあんた」
サザエ「ま、いいわ。あがってちょうだい」
ドラえもん「お、おじゃまします…いたた…」ヨロヨロ…
―子供部屋―
カツオ「あ、ワカメとタラちゃんもいたのか」
ワカメ「おかえりなさい、お兄ちゃん!って、なによそのタヌキ!?」
タラオ「青くて丸いタヌキさんですぅ~」
ドラえもん「だから、タヌキじゃないってば!」
カツオ「タヌキじゃなくて、ネコ型ロボットのドラえもんさ」
カツオ「僕がケガしてるところを保護してあげたんだ」
カツオ「悪いんだけどさ、しばらくこの部屋で休ませてあげてよ」
ワカメ「ケガしてるの?分かったわ」
タラオ「分かったですぅ~」
カツオ「ところでさ、ドラえもん」
ドラえもん「えぇと、カツオ君だっけ。なんだい?」
カツオ「さっきはどうして空から降ってきたの?」
カツオ「空から降ってきたってことは、つまり空にいたってことだろ?」
カツオ「でも、ネコにせよタヌキにせよ、空は飛ばないはずだけど…」
カツオ「なにしろ空き地のど真ん中に落ちてきたんだからねぇ」
ドラえもん「ああ、あれはタケコプターって道具で飛んでいたんだよ」
カツオ「タケコプター?」
ドラえもん「うん、未来でもっともポピュラーな空飛ぶ道具のことだよ」
~ 回想 ~
―野比家―
ドラえもん「…」ゴロゴロ…
ドラえもん(のび太君はしずかちゃんちに遊びに行っちゃったし、暇だなぁ)
ドラえもん(スズメが空を飛んでる…)
ドラえもん「ようし、ぼくもたまには一人で空の旅でもしてみようかな」ムクッ
ドラえもん「そうと決まれば…」ゴソゴソ…
ドラえもん「タケコプタ~!」
―空―
プルルルルル…
ドラえもん(行き先を考えずに飛んでたら、知らない町に来ちゃったな)
ドラえもん(この辺は未来でいうセタガヤブロックかな?)キョロキョロ
ドラえもん「ん?」
カラス「カー、カー」バサバサ…
ドラえもん「わっ、カラス!」
カラス「カー、カー」ツンツン
ドラえもん「わっ、やめて!ぼくは生ゴミじゃないぞ!やめろってば!」
カラス「カー、カー」ツンツン
ドラえもん「シッ、シッ!」サッサッ
カラス「カァーッ!」ツンッ
ポロッ…
ドラえもん「わっ!タケコプターが!」
ドラえもん「うわあぁぁぁっ!!!」
ヒュルルルルル…
ドスンッ!
ドラえもん「…というわけ」
カツオ「というわけ、っていわれてもねぇ…」
カツオ「タケコプター?空を飛ぶ?とても信じられないよ」
ワカメ「私も」
タラオ「ぼくもですぅ」
ドラえもん「よぉ~し、だったら証拠を出そう」ゴソゴソ…
ドラえもん「タケ…」
サザエ「カツオたち、おやつよ~!」
カツオ「あっ、姉さん!」
カツオ「おやつの時間だけど…」
カツオ「ドラえもんはどうする?食べてく?それとももう少し寝てる?」
ドラえもん「寝てようかな…まだ体が痛いし…」ゴロン…
ワカメ「お姉ちゃん、今日のおやつはなに?」
サザエ「どら焼きよ、さっき裏のおじいちゃんがくださったの」
ドラえもん「!」ピクッ
ドラえもん「ぼくも食べる!」ガバッ
カツオ「えっ!?だけど痛いって…」
ドラえもん「痛いけど、食べる!」ギロッ
カツオ「わ、分かったよ!」
カツオ(まるで人が変わったみたいになったぞ…!)
―居間―
ダダダッ!
ドラえもん「どら焼き!」ギンギン
フネ「これこれ、家の中を走り回るんじゃありませんよ。はしたない」
フネ「おや?青いタヌキなんて珍しいねぇ」
ドラえもん「ぼくはタヌキじゃないけど、今はそんなことはどうでもいいです」
ドラえもん「どら焼き!」
フネ(どら焼きが好きなタヌキなんているんだねぇ)
フネ「いっぱい頂きましたから、慌てなくても大丈夫ですよ」
カツオ「ひどいや、ひどいや!10個あったうちの7個を一人で食べちゃうなんて!」
ワカメ「目を離してたら、全部なくなってるんだもの!」
タラオ「食べすぎですぅ~!」
ドラえもん「ごめんなさい…」シュン…
ドラえもん「ぼく、どら焼きには目がなくて…」
フネ「あらあら、ドラえもんって名前なだけのことはあるねぇ」
サザエ「ドラ猫のドラかと思ったけど、どら焼きのドラなのかもね。ふふっ」
ドラえもん(ぼくとしたことが…トホホ)
ドラえもん「そ、そうだ!」
ドラえもん「カツオ君、ワカメちゃん、タラオ君」
ドラえもん「お詫びに、ぼくと一緒に空の旅をしよう!」ゴソゴソ…
ドラえもん「タケコプタ~!」
カツオ「これが…さっき言ってたタケコプター?」
ワカメ「ただの竹とんぼじゃない。ちょっと形が変わってるけど…」
タラオ「竹とんぼ飛ばすです~」
ドラえもん「ふふふ。ここじゃまずいから、庭に出てから出発しよう」
―庭―
ドラえもん「さっきみたいに取れても大丈夫なようにヒモをつけて、と」
ドラえもん「これをこうやって頭につけるんだ」スッ
カツオ「こうかい?」スッ
ワカメ「こう?」スッ
タラオ「こうですか?」スッ
プルルルルル…
フワァ~…
カツオ「わ、飛んだ!」
ワカメ「飛んだわ!」
タラオ「飛んだですぅ~!」
ドラえもん「それじゃ出発!」
プルルルルル…
ドラえもん「三人とも、上手上手」
ドラえもん(のび太君は最初、全然ダメだったけど…)
カツオ「すごいや、すごいや!」
ワカメ「わぁ~!」
タラオ「空を飛んでるです~」
ドラえもん「慣れてきたら、町中を飛び回ってみよう!」
プルルルルル…
中島「磯野!?」ギョッ
中島「それにワカメちゃんにタラちゃん、さっきのドラえもんまで!」
花沢「あら、目の錯覚かしら?磯野君たちが空を飛んでるような」
花沢「私ったらもう、磯野君のこと意識しすぎだよねぇ~!あははっ!」
三郎「ん?あれはカツオ君たち!?」キキィッ
三郎「いや…多分そっくりな風船かなにかだよな…」ブロロロロ…
リカ「あれは…タラちゃん!?まさかねぇ」
リカ「人間が空を飛べるはずないもの!」
堀川(ワカメちゃんやお兄さんが空を飛んでる?)
堀川(いや…きっと飛行機と見間違えたんだろう、うん)
イクラ「ハァ~イ、ハァ~イ!」
タイコ「どうしたの、イクラ?」
イクラ「バブー、バブー!チャーン!」スッ
タイコ「え、お空?」クルッ
タイコ(あら、あれはカツオちゃんたち?どうして空を飛んでいるのかしら?)
タイコ「私ったら、疲れてるのかしら…」
甚六「あれぇ?カツオ君たちが空を飛んでる!?」
ウキエ「えっ、どこに?」
甚六「あれ…?今たしかに…」
甚六「俺もノイローゼかなぁ…こんな幻覚を見るなんて」
ウキエ「兄貴、受験勉強のしすぎじゃない?少しはリラックスしないと」
―庭―
カツオ「あ~、面白かった!」
ワカメ「私、こんな楽しいのはじめて!」
タラオ「ぼくもですぅ~!」
ドラえもん「楽しんでもらえて、ぼくも嬉しいよ」
ドラえもん(やれやれ、本当はこんなこといけないかもしれないけど)
ドラえもん(これでどら焼きの借りは返せたかな…)ホッ…
カツオ「ねえドラえもん、せっかくだから今夜は泊まっていったら?」
ワカメ「そうよ!」
タラオ「泊まるですぅ~」
ドラえもん「う~ん…」
ドラえもん「でもきっと、家のみんなが心配すると思うし…」
カツオ「だったら、電話して聞いてみればいいじゃないか」
ドラえもん(きっとのび太君あたりが「帰ってこい」なんていうだろうけど)
ドラえもん(ここまでせがまれて、むげに断るのもなぁ)
ドラえもん「分かったよ、家に電話してみる」
ママ『あらそうなの?分かったわ、ご迷惑をかけないようにね、ドラちゃん』
のび太『うん、分かった!じゃあまた明日ね!』
ドラえもん「…」
ドラえもん(てっきり心配してくれたり帰ってこいといわれるかと思いきや…)
ドラえもん(ホッとしたけど、なんだか複雑な気分…)
ドラえもん「えぇと、カツオ君、オッケーをもらったから今夜は泊らせてもらうよ」
カツオ「やったぁ!」
ワカメ「よかったぁ」
タラオ「わ~いです!」
―居間―
ハッハッハッハッハ…!
波平「いやはや驚いたよ」
波平「科学は日進月歩というが、未来ではこんなに賢いロボットができるのか」
波平「にわかには信じがたいが、実物を見てしまってはな」
マスオ「しかも自由に空を飛べる道具なんて、驚きですねぇ~、お義父さん」
ドラえもん「いやぁ、それほどでも…」
波平「それにしても、タヌキのロボットとは珍しい!」
ドラえもん「…」ムスッ
波平「え…」
カツオ「お父さん、ドラえもんはタヌキじゃなくてネコなんだってば」ボソッ…
波平「…あ、こりゃ失礼」ショボン…
マスオ「ところで、ドラえもん君のお腹にある大きなポケットはなんなんだい?」
ドラえもん「これは四次元ポケットといって、中に色んな道具が入っています」
マスオ「へぇ~」
カツオ「さっき話したタケコプターも、この中に入ってたんだよ」
ワカメ「そうそう、手品みたいだったわ」
タラオ「いっぱい入るですぅ~」
サザエ「ってことは、ポケットの中にはまだまだ道具がいっぱいあるの?」
ドラえもん「もっちろん!」
ワカメ「じゃあ私、可愛いお洋服を作る道具が欲し~い!」
タラオ「ぼくは絵本が欲しいです~!」
波平「コラコラ、ワカメもタラちゃんもよしなさい。ドラえもん君に悪いじゃないか」
フネ「そうですよ、お客さんなんですから」
カツオ「そうだぞ、二人とも!」
カツオ「ところでドラえもん、テストで楽に100点取れる道具なんてのは…」
波平「バッカモン!!!」
カツオ「ひぃ…」
ドラえもん(カツオ君はかなりしっかりしてるけど)
ドラえもん(どことなくのび太君に似てるところがあるな)
サザエ「呆れた」
サザエ「道具で100点取ったって、なんの意味もないでしょうが」
カツオ「はぁ~い」
サザエ「ところで、未来の化粧品とかってあるの?」
ドラえもん「えぇとそれは…」
波平「サザエ、お前もなにいっとるんだ!化粧品ぐらい自分で買わんか!」
サザエ「えへへ、ごめんなさい」
ドラえもん(似たもの姉弟だなぁ)
サザエ「マスオさんはなにかないの?こういう道具欲しいな、とか」
マスオ「僕は特にないよ」
マスオ(新しいゴルフクラブ、なんていっちゃマズイだろうなぁ…)
サザエ「母さんは?」
フネ「私はありませんよ」
サザエ「じゃあ父さんは?」
波平「あるわけなかろう」
波平「わしには母さんやみんながいれば、それでいいんだ」
カツオ「そう、家族がいればそれでいいんだ!」
カツオ「さっすが父さん!いよっ、大黒柱!」
波平「また調子に乗りよって、こいつめ」
カツオ「えへへ…」
フネ「ドラえもん君は、今夜はカツオたちの部屋で寝てちょうだいね」
フネ「布団は敷いておきますから」
ドラえもん「ありがとうございます」ペコッ
タマ「ニャァ~ン」
ドラえもん「いやぁ、そんなことないよ」
―子供部屋―
カツオ「あのさ、ドラえもん」
カツオ「ドラえもんは未来から来たって言ったけど、どうして未来からやって来たの?」
ドラえもん「う~ん、あまり詳しくは話せないんだけど」
ドラえもん「ある男の子を助けるためなんだ」
カツオ「いったいどんな子なんだい?」
ドラえもん「えぇ~と、優しくて、勇気があって、射撃が上手くて、よく眠る、かな」
カツオ「ふうん、わざわざ未来から来て助ける必要がある子には思えないけどなぁ」
ドラえもん(我ながら、よくいいすぎたかな)
ドラえもん(でもまあ、嘘はついてないよね、うん)
カツオ「あ~あ、僕もドラえもんみたいなロボットが来てくれたらなぁ~」
ドラえもん「ぼくのようなロボットが来ないってことは」
ドラえもん「きっと君は幸せな人生を歩むんだよ」
ドラえもん「綺麗な女の人と結婚して、可愛い子供ができて…ってね」
カツオ「そういうものかなぁ」
ワカメ「お兄ちゃんの結婚相手は、きっと花沢さんね!」クスッ
カツオ「な、なにいってるんだよ、ワカメ!なんで花沢さんなんだよ!」
ワカメ「だってお似合いなんだもん」
カツオ「あ~もう、この話は終わり!寝るぞ!!」ガバッ
ワカメ「おやすみ、お兄ちゃん、ドラえもんさん」ファサッ
ドラえもん「おやすみなさい」ガバッ
ドラえもん(ぼくの勘だけど、きっとカツオ君は花沢さんって人と結婚するだろうな)
―翌朝―
波平「ゆうべはよく眠れたかね?」
ドラえもん「おかげさまで、グッスリと」
ドラえもん(いつもなら、夜中にのび太君が宿題やってなかったって騒ぐもんな)
サザエ「また来てちょうだいね」
フネ「どら焼きで歓迎しますよ」
マスオ「同じ東京に住んでるのなら、気軽に来れるだろうからね」
ドラえもん「ありがとうございます!」
カツオ「それじゃあ、またね!」
ワカメ「また遊びに来てね!」
タラオ「バイバイですぅ~!」
タマ「ニャァ~ン」
ドラえもん「さようなら~!」プルルルル…
マスオ「本当に飛んでいっちゃいましたねぇ」
波平「世の中には、わしらが知らないことがまだまだあるということだ」
波平「それにしても、まさかロボットが我が家にやってくる時代になるとはなぁ」
フネ「でも、ロボットとはいえ、ほとんど人間みたいでしたけどね」
サザエ「そうね、なんたってどら焼きが好物だし」
カツオ「食い意地は、人間である姉さんにどっこいどっこいってところかな?」
サザエ「コラッ、カツオ~!」ダダダッ
カツオ「うわぁ~!」ダダダッ
サザエ「待ちなさぁ~い!」ダダダッ
波平「コラコラ、二人ともやめんか!」
―洗面所―
波平「さて、髪を整えるか」
波平「…」スッスッ…
波平「…」サッサ…
波平(あのドラえもん君に…)
波平(未来の髪を生やす薬を、もらっておけばよかったかもしれんな…)
~ お し ま い ~
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フジテレビとテレ朝の国民的アニメキャラの夢の共演!