真姫(21)「高坂穂乃果との同棲生活」 (104)

「真姫ちゃん、真姫ちゃん」

 そう呼びかけられ、私は睡眠の中から揺り起こされた。

「シャワー浴びるんだよね、もう起きないと学校に遅れちゃうよ」

 徐々に意識が覚醒してくる。
 クイーンサイズのベッドで仰向けになっている私の視界には、真っ白い天井と可愛らしい同居人の姿が映っていた。

「ん……おはよう、穂乃果。貴女がいなかったら臨床の時間にすら間に合わない日々を過ごしているでしょうね」

「今日もこのままなら遅刻だよっ、ほらシャワーすぐに浴びれるから」

 また朝ごはん食べないんでしょ、と半ば諦め顔で言う穂乃果。ベッドに取り付けてあるデジタル時計で時間を確認すると、確かにそろそろ起きないと本格的に遅刻が濃厚になりそうだ。

「シャワー浴びる前にお水もらえるかしら? 水道水でいいから」

「はい。そう言うかなと思って用意してるから、真姫ちゃんもまず上体を起こすところから急いでねー」

 気が効くわね、なんて思いながらこれ以上この子を困らせるのも申し訳ないのでゆっくりとベッドから起き上がる。
 シーツの崩れを直している穂乃果を見て、良いお嫁さんになりそうね。という感想を抱きつつも、もう一つだけ迷惑をかける事にした。

「穂乃果」

「んー?」

「昨晩は、とても可愛かったわよ」

 ドグシャア、という音を出しながら折角ヨリを直したシーツが再び皺をつくる。

「私、真姫ちゃんのそういういじわるなところキライ」

 顔を赤くしながら再度、ベッドメイキングを始める穂乃果。それを後ろから見ていると、形の良いお尻が彼女の趣味に合った下着に包まれ、いやに可愛らしい。

「……声は、もう少し抑えた方がお隣さんにも聞こえなくて良いと思……っ」



 ……言い終える前に、枕が顔にぶつけられた。


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ーー……

真姫「ふぅ……さっぱりしたわ」

穂乃果「コーヒーとミルク、好きな方選んでね」

真姫「ならコーヒーをお願い。一本ね」

穂乃果「あっ、シュガースティック買っておかないと……」

真姫「ついでにコーヒー豆もお願い」

カチャ…

穂乃果「真姫ちゃん、その私のミルクをスプーンですくってコーヒーに入れるの、よくやるけどお行儀がわるいよ」

真姫「んー、なんででしょうね。穂乃果の入れたデミタスって、なぜかミルクも欲しくなるのよねえ……」

真姫「それに、穂乃果ってこの頃しっかりしてきたって皆褒めていたわよ」

穂乃果「そうかなあ? 変わらないと思うけど……って、話題を逸らさないの」

真姫「今日はおウチの手伝い?」

穂乃果「うん。たまには顔を出さないとね」ニコ

真姫「私もご挨拶に行かないとね……」

穂乃果「真姫ちゃん、うちの家族に気に入られてるから。きっと皆喜ぶよ」エヘ

穂乃果「そうだ、今度μ'sの皆で集まろうって話。聞いてた?」

真姫「そういえば近々あるらしいわね」

穂乃果「久しぶりだね。皆が揃うの」ニコ

真姫「そうね」

真姫「……にこちゃんには少し会いたくないかも」

穂乃果「どうして?」

真姫「なんとなくね。一応学生の身とはいえ、生活費にマンション充てがってもらってるって前に話したら、長時間愚痴を聞かされて」ハァ

穂乃果「はは……にこちゃん、特に真姫ちゃんには厳しいから」

真姫「親の総合的な援助を断って、簡単にいくなら私だってそうしてるわよ」

穂乃果「まあまあ、そう愚痴らず」

真姫「良い機会だから、お酒の席で色々言ってあげようかしら」ムゥ

穂乃果「お酒はほどほどに、だよ」

真姫「……」

穂乃果「?」

真姫「それに、海未たちとも改めて話す事があるだろうし……」ハァ

穂乃果「うん?」キョトン

ーー……【高坂家】

穂乃果「ただいまー」

高坂母「おかえり穂乃果。早かったのね」

穂乃果「うんっ、真姫ちゃんの生活リズムに合わせていたらいつの間にか早起きする習慣が出来て……」

高坂母「やっぱり真姫ちゃんに穂乃果を任せて正解だったわね。前と比べてすごく大人になったと思うわ」ウンウン

穂乃果「あはは、真姫ちゃんにも今朝同じ事を言われたよー」

穂乃果「あれ? 雪穂いるんだ」

高坂母「今日は午後からだからって、まだ寝てるわよ」

穂乃果「ほうほう」

高坂母「最近は、ほんと穂乃果の方がお姉ちゃんらしくて」フゥ

穂乃果「穂乃果はずっとお姉ちゃんらしいつもりなんだけど……」

高坂母「アナタには、5年間好きにして良いって話だけど……ウチの仕事をしてもらうワケだから、今のうちに遊んでおきなさい」

穂乃果「大丈夫。いますっごく楽しいから」ニコ

『ふわぁ……お姉ちゃん来てたんだ』

穂乃果「あっ、雪穂。おはよう!」

雪穂「待って、これから二度寝だから……お姉ちゃん朝から元気すぎ……」ハァ

穂乃果「若さが足りないよー? 若さが」ニコニコ

雪穂「……真姫さんは?」

穂乃果「真姫ちゃん? 学校だよ?」

雪穂「そう……」

高坂母「穂乃果からも何か言ってやってよ。雪穂ったら昨日も『明日は昼まで寝るから!』って宣言して、家事を手伝わないし……」

雪穂「学生も疲れるんだよ、お母さん……」フワァ

雪穂「……って、お姉ちゃん。なにしてるの?」

穂乃果「なにって……食器洗ってるだけだけど……?」

高坂母「まあっ」パチパチ

雪穂「ええぇ……」

雪穂「お姉ちゃんがしっかりしてる……」

穂乃果「雪穂まで、まるで私がしっかりしていなかったみたいな言い方して……」

雪穂「やっぱり、真姫さんの影響?」

高坂母「間違いないわね」

穂乃果「むぅ……」

穂乃果「今は、穂乃果の方が真姫ちゃんの面倒をみている事が多いんだからね。まったく」

雪穂「はは、まっさかー」

穂乃果「今日も、真姫ちゃん中々起きてくれないから苦労したよー」

雪穂「……」

雪穂「えっ、ほんとに?」

高坂母「あの真姫ちゃんがねえ……」

穂乃果「それと、シーツ直すのいつも私だからって真姫ちゃん御構い無しに皺くちゃにするし……」

雪穂「はあ……」

高坂母「まあ、雪穂にはまだ早いわね。二度寝してらっしゃい」

高坂母「さあ穂乃果、ウチはお茶受けには困らないから、こっちで詳しく話聞かせなさい」

雪穂「もう、子ども扱いして……」

雪穂「あっ、お姉ちゃん。この前海未さんがウチに顔出してたよ」

穂乃果「海未ちゃんが……?」

ーー……【飲み会当日】

穂乃果「集合場所に来てみたけど……」キョロ

穂乃果「私が一番乗りかあ、真姫ちゃんも遅れて来るって話だし……」

穂乃果「こうしてお座敷に通されたワケだし、座るところを一番に決められるのは特権だよね? うんっ」ニコ

穂乃果「ええと、上座は絵里ちゃん達の誰かで……」

ガラッ

『ほ、穂乃……果?』

穂乃果「?」

 ☆ 園田海未 ☆

 先に到着している人がいる事は知ってましたが、まさかそれが穂乃果だとは。
 それに、この状況は二人きり……なんて緊張するシチュエーションなのでしょう。

「ほ、穂乃……果?」

「?」

 無意識の内に名前を呼んでいた私の方に、穂乃果は顔を向ける。
 ああ、数ヶ月ぶりに見る穂乃果は更に綺麗になって……。可愛らしさと美しさが同居していて、本当に今からでもトップアイドルを目指せると太鼓判を押せます。

 しかし、そうなると次は長テーブルのどこに座るか。
 穂乃果の隣に? まだ誰も集まっていない内にぴったりと横につけるのは露骨ではないのでしょうか。
 少しスペースを開けて座る? いや、これでは意識しているのがあからさまにわかってしまうかも。
 向かいの席? やはり、出来れば隣に座りたいと思いますし……。

「海未ちゃん久しぶりっ、穂乃果の横にきてよ!」

 ぽんぽん、と隣の座布団を叩く穂乃果。その笑顔と救いの手に、思わず本当の天使かと思ってしまいそうになるほどです。

「で、では……そうします」

「海未ちゃんまた綺麗になったねー、思わず見惚れちゃった」

「あ、ありがとうございます。真姫は来ていないのですか?」

「真姫ちゃん?」

 ああ、急に真姫の名前を出すのは唐突すぎですかね……。緊張のし過ぎで思わず話題を変えようと急いてしまいました。

「真姫ちゃん最近あまり構ってくれなくて……」

 おや、穂乃果がこういう事を言うのは珍しいですね。

「今日は、海未ちゃん達と会えるからすっごく楽しみにしていたんだっ!」

 もっぎゅー! と穂乃果が私に抱きついてきます。

「海未ちゃん、明日はお休みなんだよね? 遅くまで一緒にいられるね!」

 穂乃果は変わりませんね。あの頃と同じく、こちらが元気になる笑顔で……

 ん? この抱擁。それに、「遅くまで一緒にいられるね……」ウットリ(脚色有り)

 こ、これは……



海未「(もしかするとですが……穂乃果は『今晩帰りたくないの……』と、暗に私を誘っているのではないのでしょうかっ!?)」ビビーンッ!!

 本作では真面目そうに見える部分がある場合もありますが、シリアスはありません。

 完結までお付き合いいただけると幸いです。
 三ヶ日は落ち着いて投下出来そうです。

 乙です。

穂乃果「海未ちゃん、そういえば穂乃果に用があって家に来たんでしょ?」

海未「ああ……その事なんですが… 『あら、二人とも早かったのね。先輩として一番乗りするつもりだったんだけど……』

海未「?」

穂乃果「あっ!」

絵里「久しぶりね。二人は一緒に来たの?」

海未「いえ、私達は別行動です」

絵里「そう……」

海未「ちなみに、のっけから穂乃果の熱い抱擁を受けました」フフン

絵里「な、なんですって!?」

絵里「”穂乃果からの抱きつき”の欄にシールを貼ってあげたいところだけど、今はまだ希がいないから……」

海未「ええ。私達、穂乃果を除くμ’sメンバーは『穂乃会議』を定期的に開いて、素敵な穂乃エピを共有し合うといった固い絆で結ばれていました」

絵里「今はそれぞれ落ち着いて、真姫に穂乃果を任せているワケだけど…… 『エリチに海未ちゃん、説明ご苦労さん』

穂乃果「希ちゃんっ!!」

ダキッ!!

希「久しぶりやねえ、穂乃果ちゃん」ニコ

穂乃果「海未ちゃんと絵里ちゃんが、穂乃果を無視してヒソヒソ話してるんだよー」ムゥ

希「それはヒドいエリチやね、ウチがこらしめてあげるわ」

ナデナデ

穂乃果「えへへ……希ちゃんは変わらずに優しいね」ニコッ

希「なにかあったらいつでもウチのところにおいで。穂乃果ちゃんなら大歓迎やよ」

穂乃果「ぅわぁ〜いっ、希ちゃんだーい好きっ!」

モッギュー!!

希「それで、真姫ちゃんはまだ来ていないみたいやね」

穂乃果「? うん……少し遅れて来るって」

凛『わ〜っ、皆久しぶりー!!』

花陽『もしかして私たち遅かったかな?』

穂乃果「二人とも久しぶりだね!」

モッギュー!! ×2

凛「わ、わわ……穂乃果ちゃん。凛の心構えがまだ出来ていないにゃー」カァ

花陽「にこちゃんから遅れるって連絡きてたよ。先に始めてて、だって」

絵里「そう、なら後はことりだけね」

穂乃果「?」

ピッ

穂乃果「……今、ことりちゃんから『時間に間に合いそうにないです。ごめんね』って。にこちゃんと同じで先に始めてて良いって」

絵里「そういう事なら先に始めてましょうか」

海未「そうと決まれば、それぞれ好きな席についてください。同時にオーダーもとりますから……」

テキパキ テキパキ…

穂乃果「海未ちゃんと絵里ちゃんがいれば上手に仕切ってくれるから、すごく助かるなあ」

花陽「そういえば穂乃果ちゃん」

花陽「真姫ちゃんは一緒じゃなかったの?」

穂乃果「穂乃果達もいつも一緒ってワケじゃないから……」ハハ

穂乃果「少しだけ遅れるけど、後からちゃんと来るって」ニコ

花陽「そうなんだ……」

穂乃果「?」

花陽「えっと、皆気になってると思うから……」エヘヘ

穂乃果「? うん……」

『かんぱ〜いっ!!』×6

ゴクッ ゴクッ

穂乃果「ぷはぁ〜この一杯のために生きてるってやつだね、うんうん」

海未「穂乃果のはジュースじゃないですか」クス

穂乃果「うん。真姫ちゃんがお酒を呑むなっていうから」

海未「そ、そうですか……真姫が」

凛「でも、こういう時くらいなら少しだけでも良いんじゃ……」

希「まるっきりお酒がダメっていうワケではないんだろうし、少しだけなら自分の雰囲気作りにも一役買うと思うんよ?」

穂乃果「うーん、なら絵里ちゃんのをちょっとだけもらおうかな」ニコ

穂乃果「良い? 絵里ちゃん??」

絵里「ええ。このグラスのまま呑んで良いわよ」

凛「真姫ちゃんといえば、穂乃果ちゃん最近ご飯にも凝ってるって」

花陽「?!」
ガタッ

穂乃果「実家を出てからパンばかり食べててね、真姫ちゃんが一日一食はご飯に変えなさいって」

海未「園田家の食卓に馴染めますね。和食の良さに気づけたならいつでも家庭に入れます」

穂乃果「パンとご飯で半々くらいの割合かなあ、今は」

花陽「穂乃果ちゃんがパン食とご飯とを半々……ご飯党としては感激の一言だよう」グスッ

『遅れてごめんなさい……希の隣が空いてるのかしら』

穂乃果「真姫ちゃんっ、早かったね」ニコッ

真姫「久しぶりに皆が集まるんだから。急いできたわよ」

絵里「あの真姫がこんな素直な事を言うなんて……」

真姫「? 穂乃果……それ」

穂乃果「これ? 少しだけなら呑んでも良いのかな、って」ニコ

真姫「……ダメだって、約束したでしょ?」

穂乃果「ご、ごめんなさい……」シュン

絵里「真姫、そこまで強く言わなくてもいいじゃない」

真姫「これは私と穂乃果、二人の話よ。エリーは口を出さないで」

希「ごめんなあ真姫ちゃん。穂乃果ちゃんを唆したのはウチや、ウチが謝るよ」

真姫「……穂乃果は事前に飲酒をしないって言わなかった? むしろ私は、貴方は禁酒している事の意図を汲んで穂乃果を止めてくれる側だと思っていたけど」

凛「真姫ちゃん。まずは座ろ? ね??」ポンポン

真姫「私だって怒りたくないわよ……」

穂乃果「……ごめんね、真姫ちゃん」

真姫「…………今はもういいわ」

『なになにー? みんなシケた顔して。ここはお通夜会場かしら??』

穂乃果「にこちゃん……」

にこ「まあ、ちょっとだけ話は聞こえていたけど……この件で真姫ちゃんを責めるのは筋違いよ」

真姫「……」

にこ「飲む量はこの場合関係ないわ。真姫ちゃんがショックを受けているのは呑まないっていう約束を反故にされた事だろうしね」

にこ「まっ、怒るだけの理由があってもガマン出来ずにこの場で追及しちゃうあたり、真姫ちゃんもまだまだお子ちゃまってことかしら」クス

真姫「……うるさいわね。わかってるわよ自分でも」

にこ「うんうん、最近の素直な真姫ちゃん。にこは嫌いじゃないニコ」ニコッ

絵里「にこにまとめられちゃったけど、気を取り直して飲み会の続き開始しましょうか」

海未「そうですね。では改めて、二人ともお久しぶりで……『遅れてごめんね!』

ことり『こんなに走ったのμ’sで活動していた依頼……』チラ

穂乃果「……」

ことり「……穂乃果ちゃん?」

ーー…… カクカク シカジカ


ことり『穂乃果ちゃんを責めるのは間違いだよっ!!』

バンッ!


絵里「ああもう……」ハァ

 続きの投下は明日です。

 乙です。

 完結してからまとめて投下します。
 HTML化申請出してきます。
 貴重な意見参考にさせてもらいます。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月11日 (日) 05:20:30   ID: TdF70AeL

最近ほのまきは荒らされるな……

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