所恵美「相方と年越し」 (7)
「はーいお待たせー。やー伸びなくてよかったわー」
「ああはいはい。持つ持つ」
器用な動きで2つの丼を持つその手を制し、1つを両手で受け取る。
湯気の中では、金色に輝く海老天が私達との対面を待ち構えていた。
12月31の大晦日、その日を相方の家で迎えられる。この時間がどれだけ幸せだろう。
「ごめんねー。私飲んじゃうけど、恵美はまだ高校生だからさー」
「わかったわかった。もう、ビール飲まなくても酔ったようなテンションじゃん」
苦笑しながらコーラをグラスに注ぎ、既にビールを並々注いだ相方と乾杯する。
彼女の名前は藤井ゆきよ。
アタシ、こと所恵美の唯一無二の相棒である。
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「いやー。でも、今年もいろいろあったねえ」
「そうだねえ……いや、ほんとにそうだね……」
そばをつまみながらこの一年を振り返る。2014年という年は、本当に色んなことがあった。
「さいたまスーパーアリーナでさ、麻美が出てきたのはびっくりしたよね」
「ね! ね! 麻美さんと歌えたの嬉しかったなあ」
さいたまスーパーアリーナで行われた大型ライブ。そこでゆきよは尊敬する先輩と共に同じステージに立った。なんとなくだけど、ゆきよが変わったのはその時からのような気がする。
「でもあれじゃん。中野の時よくやったよね。麻美の歌二曲でしょ? 歌っていうかパート? ほら。relationsとBlueSynphonyの麻美のとこ。よく歌えたね。すごいよ」
「めっちゃ緊張したよー! でも、やっぱ麻美さんも来てくれたし。プロデューサーさんの応援にも応えたかったしね。貴方達がいるから、私と恵美はいつだって幸せだよって伝えたかった」
「ほんと? 初めて聞いた」
「でも、恵美もそうでしょ?」
「まあね」
それはもちろんだ。ゆきよがいて仲間がいて、そして応援してくれるプロデューサーの皆がいるからアタシ達は輝いていられるんだ。この瞬間が夢なら覚めないで欲しいって、ライブの度にそう思う。
「あとは……LTHと公録。やー。LTHは目が幸せだったねー」
「やーめーてー! あの格好すごい恥ずかしかったの! いや少しは恵美みたいになれるかなってた思ってた着たけど! 恥ずかったよ!」
んー。ゆきよの性格ならそうだろうねえ。でも、ゆきよがあの服を着てくれたのは本当に嬉しかった。
「あはは、でもほんとにさ。ゆきよやみんなとすごせて本当に楽しかったよ」
「私だってそうだよ。恵美がいたから……ううん、恵美といられたら私はいつた幸せだよぉ」
顔を真っ赤にしたゆきよがアタシの肩に頭を預けそんなことを呟く。
ありがとゆきよ。アタシも、あんたといられて幸せだよ。
「はーい終わり、うわ、流石元モデル。何着ても似合うわ」
「いや、あんたもでしょ」
着付けを終わって神社に向かう。朝の張り詰めた空気が肌を刺すようで気持ちがいい。やっぱり日本人なのか、晴れ着を着たら背筋がピンとなる。
「何願うの?」
「あんたは」
「じゃあせーのでいおうか」
「こういうのって、願う前に言ったらかなわないんじゃないの?」
「そんな神様アタシ信じないし」
「自由か。今から初詣なんでしょうが」
軽口を叩き合いながら苦笑する。今年も、いや、これからも、この子とはこんな関係が続けばいいなとぼんやり思う。
「じゃあ行くよ、せーの!」
「はいよ!」
声を揃え阿吽の呼吸で互いに答える。もう一年以上の付き合いだ。これくらいなんてことはない。
「恵美がトップアイドルになりますように」
「ゆきよが子供達から愛される声優になりますように!」
あけましておめでとうございます
ゆきよさんと恵美に2014年を回想してもらいました
2015年も二人が幸せでありますように
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