泉新一「東京…喰種……?」 (167)


東京喰種×寄生獣

時系列は
東京喰種は最初から
寄生獣は原作終了からになります
アニメで寄生獣を追っている人はネタバレ注意です

ある程度書き溜めがあるので、数日で終わると思います


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419417631



食物連鎖の頂点とされる人を…

”食糧”として狩るもの達が存在する…

人間の死肉を漁る化け物として

彼らはこう呼ばれる

―――――――――――「食種」と


――――――――――――

………シンイチ……

……シンイチ……寝ている場合じゃないぞ……

…シンイチ!




新一「うわぁっ!」ガバッ

新一「…びっくりした……脅かすなよミギー……ミギー?……っ!」バッ

新一「……はは、ミギーが起きるわけないか…。…たまには起きてくれると嬉しいんだけどな…」ブルッ


新一「…寒い。…よく見ると、何処だここ?夜の…路地裏?たはは…寝ぼけてんのかな俺」キョロキョロ

新一「あ!ちょうどいいところにカップル!うっわ…抱き合ってやがる!ちょうどいい、あのカップルの痴態を盗み見てから場所きいてやろ」コソッ



女「―――――カネキさん」

男「」ビクッ

女「ホントは私気づいてたんです」

女「カネキさんが私を…見ていてくれたこと…」

男「……」

新一(おお!告白か!いいぞやったれ!)

女「カネキさん…私も……」

新一「……」ゴクリ







女「あ な た を 見 て い た の」ガブッ



男「…え?」ドサッ

新一「!!」

女「おいしぃ…」

男(噛?なんだ、なんだこの目!?)

新一(パラサイト!?いや、違うのか?)

女「カネキさん…その表情素敵です…ふふ。まさか思わなかったでしょう?私がグールだなんて!!」ズグゥ!

新一(背中から…触手!?パラサイトじゃないのか!?どうなってるんだ!?)



男「…う、うわあああああああ!」ダッ

女「うふふ♪」スタスタ…

新一「止めなきゃ…ミギー!ミギー!……くそっ、駄目か!とにかく追わないと!」ダッ




男(逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げ―――――)



ドギョッ!




男(お腹に…触手………?)

男「…あ……」ドサッ

女「あら、死んじゃった?…私、貴方みたいな体型の人好きよ」クスクス


女「程よく脂も乗ってるし、筋肉じゃないから柔らかくて――――――あら?」クルッ

新一「……間に合わなかった」

女「あらあら…見られていたのね。でもいいわ。あたし――――すごく、お腹がすいてるの」グワッ

新一(…来る!……あれは!?)

グラグラ プツンッ


ド  ガ  ァ  !



女「!!?…ア……ア……」バタバタ

新一「上から…鉄筋が落ちてきた……」

女「………………」

新一「…お前も、必死に生きようとしていたのかな」

男「……………」ピクッ

新一「彼は……まだ脈がある!誰か!誰か!彼を病院に―――――――」



金木「……」シュコー シュコー

新一「…」

新一(襲われていた彼の名前は金木研。すぐに病院に搬送されたこともあり、彼は一命を取り留めた。しかし―――――)

新一「パラサイトの臓器を移植した…彼は大丈夫なのかな…」

新一(どうやら俺は今までいた世界とは違う世界にいるらしい。車がスマートな形をしていたり、電化製品がやたらハイテクだったり…落ちついてられるのは、俺の中に残っているミギーのおかげだろうな…)

新一「なあミギー…俺、何処にきちまったんだろうな」







永近「…あのー…」

新一「え?」


―――――――――――

新一「ふーん…グール、ねえ?」スタスタ

永近「はい。この世界では…」スタスタ

新一「でも、君やけにあっさり俺のこと信じるんだな。別世界から来たなんて、ふつう信じないぜ?」

永近「永近でいいっす。俺、自分で言うのもあれなんですけど、結構人を見る目があるんすよ。泉さんの顔見てたらなんだか嘘をついてるとは思えないし、それに」

新一「それに?」

永近「…服装が古臭いので」

新一「なっ!おめーは!」


永近「はは…でも、本当にありがとうございました」

新一「ん?」

永近「金木の事です。あいつ、もう少し発見が遅かったら…」

新一「ああ、そのことか。気にしないでくれ」

新一(パラサイト…じゃなかった、グールに襲われてたことは黙っておこう。知ったことで不幸になることもある…)

永近「…なんだか、泉さんって不思議っすね」

新一「え?」

永近「別世界に来たっていう割には妙に落ち着いてます」

新一「ああ…まあ、そういう風な体質なんだよ。それよりさ…」

永近「なんすか?」

新一「一晩でいいからお世話になれないかな?行くところなくて…」


永近「お安い御用っすよ!」

新一「ありがとう。それと、俺、永近と同い年だから、敬語は大丈夫だぜ?」

永近「…え?」

新一「ま、浪人生だから大学は入ってないんだけどな!たはは……」

永近「…そっか!じゃ、まずはその服装をどうにかしようぜ」

新一「…そんなにダサいかなあ?別に………っ!?」

永近「どうした?」

新一(この臭いは…前にも嗅いだこの、嫌な臭いは!)

新一「…すまん永近!泊まりの話はなしだ!」ダダダッ

永近「泉!?…足はっや…」


ダダダダダダダッ

ザッ

新一「………これは!?」



グチャ グチャ

グール「……あ?」モグモグ

新一「これが…グールか?」

グール「お前…どうしてここが…!?グールじゃ、ない…?でも、人のにおいじゃない…」

新一「…」

グール「お前は、いったい―――――――――」






「どーん」ブチイッ!



新一「!」

新一(頭を一撃で吹っ飛ばした!?)

「ったく、俺の食い場で食事してんじゃねーっての。ん?」




西尾「お前、なんだ?ま、いっか」



西尾「人 な ら 食 う だ け だ」ゾブゥ


新一「…っ!」

新一(赤い瞳…こいつもグールか!)


すみません、今日はここまでにします。
当初は他のパラサイトを東京喰種の中に入れて、「頭赫」のグールとかやりたかったんですが断念しました。
ここまでで質問等あったらどうぞ。




シュン



新一「…!」

西尾「おらっ!」ブンッ

新一(回し蹴り?速いし食らったらひとたまりもないだろうが…このくらいならよけられる!)

シュン!

西尾「……あ?」

新一「ふぅ……」

西尾「なんだお前…やっぱ人じゃねえのかよ」


新一「…お前は」

西尾「あ?」

新一「人や、同じグールを殺すことになんとも思わねえのかよ」

西尾「…ちっ、うぜえ。殺すことになんでためらいが必要なんだよ」

新一「…」

西尾「それに、俺はなあ!俺の事を信じ切った奴を裏切って食ってやるのが一番好きなんだよ!間抜けな人間の顔ほど食欲をそそるもんはねえからな!」ニヤァ

新一「……っ!」

西尾「んだよその目は?」

新一「……お前は許せない」ゴッ

西尾「…あ?さっきからよ、俺はガキにむかつく口きかれるのが一番嫌いなんだよ」


西尾「もういい…赫子出してバラバラにしてやる」ズグゥ

新一「…触手か?」

西尾「触手と一緒にすんな。死ね!」カッ

新一「……っと!」

西尾「おーおーせいぜい頑張ってよけろ!最終的にはバラバラにしてやっからよ!」フォン!



新一「…おっと……!うわっ…!!」ズルッ


西尾「ははっ!」

新一(しまった!……心臓に向かって一直線か…やっぱりよく見える。…即死だな)

西尾「おらっ!」ブン!

新一「……くそっ」







カキイン!



西尾「………!?」

新一「…あれ?」



「まったく…君といるとスイッチも切れないのか」



西尾「な…んだよソレ?」

新一「……!あっ……あああ!!」ポロッ



「めそめそするんじゃない…シンイチ、今私たちは特別な状況にあるようだな。仕方ない、私がまた力を貸してやろう」



西尾「なんだよソレは!?なんで赫子が…それより、お前はいったい!」



新一「…遅えよ、ミギー」



ミギー「すまなかったな、シンイチ」



グ グ グ グ

西尾(なんだこいつの赫子…俺の赫子が…切られるっ!?)



西尾「ちっ!」バッ

新一「早速だがミギー、状況はわかってるか?」

ミギー「ああ。別世界、実に興味深い。グール…我々の仲間とは違うようだ」

新一「そうみたいだな…勝てるかな?」


ミギー「今回は昔取った戦法と同じで君は奴の攻撃をよけていればいい。馬力の差で勝つさ」

新一「そっか…じゃ!」ダッ

西尾「てめえ…てめえがグールだろうが、絶対ぶち殺してやる!」ダッ



シュッ カキイン! キン! ギン! チュイーン!




新一(向こうの触手の方が力はあるが…速さならこっちに分がある!)ヒョイヒョイ

西尾(…速え!…………っ!?)



ズブゥ! 




新一「…決まった」

ミギー「ああ、だが油断するな。腹は貫いたが、感触が人間と全然違う。再生するやもしれんぞ」



西尾「……くそ…が…っ」ドサッ





ミギー「…再生はしなかったようだな」

新一「…ふぅ、改めて久しぶりだな、ミギー」

ミギー「ああ、久しぶりだシンイチ。随分と面倒に巻き込まれたようだね」

新一「そうみたいだ。状況がつかめないんだけど…お前、グールについて何か知ってる?」

ミギー「いや、辞書で見たことはあるが、今必要な知識ではないだろう。それより…」

新一「ん?」

ミギー「実に興味深い世界だよ、ここは。我々と同じような生物が昔から存在している」


新一「そうみたいだな。パラサイトみたいに乗っ取られたわけじゃなく、生まれた時から人を食べる…」

ミギー「君は昔も人だパラサイトだと悩んでいたが、この世界から何かつかめるといいな」

新一「ああ。でも、今はそれより…」グウウ

ミギー「ああ、君は空腹を感じているようだね。…肉ならそこに」

新一「馬鹿言うんじゃねえ!俺は人だぞ!それに――――」




「ふーん、あんた人なんだ」



ミギー「!シンイチ、上だ!」

新一「何っ!」バッ

トーカ「じゃあ、教えてよ。その手のそれはなんなの?」バッ


シュタッ


新一「…おい、ミギー」ボソボソ

ミギー「…なんだ」

新一「あいつから殺意は感じるか?」ボソボソ

ミギー「…いや、感じない。純粋に興味で聞いているようだ」

新一「…よし。君はグールなのか?」

トーカ「そうだけど…あんたは?」

新一「俺は…人、かな」

トーカ「ふーん…確かに目は染まってない。右手のそれは?」


新一「こいつは……」

ミギー「私はミギーという。シンイチの右手に寄生している”生物”だな」

トーカ「…人なら”殺して”たけど、ニシキの馬鹿を倒したみたいだし…」

新一「君は、彼の仲間か?」

トーカ「は?馬鹿にすんな。ここに来たのは食い場を荒らしたニシキを咎めに来ただけ」

新一「じゃあ君は…人を殺したりはしないのか?」

トーカ「…うざ。人を食わないと私たちは生きていけない。わかってて聞いてんの?」

新一「………」

ミギー「…面白い。実に興味深い」

新一「は?」

ミギー「食糧が酷似していながら、食い場…我々が持ちえなかった共同体まで発達していると見えた」

トーカ「…何言ってんの?」

ミギー「シンイチ、この世界では我々の世界では達成しなかった共生が達成されているぞ。君が一時悩んでいたテーマの一つの答えがここにあるじゃないか!」

新一「うーん…そういうことになるのか?」

トーカ「…ま、いいや。きなよ」

新一「え?」


トーカ「あんたらの言う、”共同体”のリーダーに会わせてあげる」

新一「…どういうつもりだ?」

トーカ「あんたはただの人じゃない。さっきも言ったけど、人なら殺してた」

新一「…」

トーカ「私があんたを殺せるかわかんないし、あんたのそれ、赫子じゃないみたい」

ミギー「赫子…ここではあの青年の出したような触手はこう呼ぶらしいな」

新一「まぁ、ミギーは確かに触手だけど、かぐ…ね?とか言うのではないな」

トーカ「だから、とりあえずあんたを連れてく。あんたの処遇を決めるために」

新一「…断ったら?」

トーカ「あんたを殺す」

新一「…どうするよ、ミギー」

ミギー「ま、誘いに乗るのが最善だろうな。さっきも言ったが殺意は感じないし、この状況に私は興奮している」ウネウネ

新一「ま、宿無し行くところなしだしな」

トーカ「話は決まった?」

新一「ああ。君についていくよ。俺は泉新一。君は?」

トーカ「霧嶋董香」

新一「トーカちゃんね、よろしく」

トーカ「…変な奴」






ミギー「うむ……だが……しかし…」ウネウネ

新一「とりあえずお前は落ち着けっての!」

今日はここまでにします。
金木はまだ出てきてないですが、出ないことはありません。


――――――――――――――

芳村「初めまして、私は芳村。喫茶店”あんていく”の店長をしているよ」

新一「は、初めまして。俺は泉新一といいます。こいつは…」

ミギー「ミギーだ」

芳村「…右手だから、ミギーかい?」

ミギー「うむ。我々にとって名前などどうでもよいことだからな」



新一「おい、ミギー」ボソボソ

ミギー「うん?」

新一「この人普通のおじさんにしか見えないんだけど、本当に強いのか?」ボソボソ

ミギー「いや、シンイチ。この人は強いよ。後藤と同じか…あるいは…」

新一「ほんとかよ!?」

芳村「ミギー、と言ったかな。君たちは独立して思考しているのかい?」

ミギー「そうだ。私とシンイチはもともとは違う種の生物だからな」

芳村「違う種の…生物?」

新一「まあ、そうです。信じてもらえないかもしれないけど、俺たちの話を聞いてもらえますか?」

芳村「うん。構わないから、話してみなさい」

新一「えっと、何処から話せばいいかな。まずは――――――」


――――――――――――――――――

新一「ま、かいつまんで話すとこういうことです」

芳村「パラサイト…随分と我々グールと生態が似ていたようだね」

新一「信じて…くれますか?」

芳村「そうだね。そうしなければ、君の右手の説明がつかないこともあるし、とりあえず信じることにしよう」



新一「…で、ミギー」

ミギー「どうした」

新一「気になってることがあるんだろ?あらかたこちらの事情は説明したし、なんかあるなら聞いていいぞ」

ミギー「そうだな。じゃ、芳村」

芳村「なんだい?」

ミギー「シンイチの下手な説明からわかる通り、我々のいた世界でのパラサイトとこちらのグールは似通っている」

新一「下手は余計だっつの!」

芳村「確かに似通っているようだ。それで?」

ミギー「うむ。その似通っている中で、君らグールが人間をどのようにとらえているのか、私は興味がある」

新一「…どのようにとらえているか?」

ミギー「シンイチ、私は以前、田村玲子の行動について理解が出来なかったんだ」

新一「…ああ、自分の身を犠牲にして子供をかばったことか」

ミギー「そうだ。あの時の奴の行動は、確実に我々の本能に逆らう行為だ。だが、それも少し理解できるようになった。君と接している内にな」

新一「そっか」

ミギー「我々パラサイトとグールの間には明確な差がある。ずばり、時間だ」

芳村「……」


ミギー「我々はある程度発達した体を乗っ取ることで生きながらえるが、グールは我々と同じ性質を持ちつつ生まれた時からグールではないか」

芳村「…なるほど。つまり、君は生まれながらにして人間を食べる私たちにとっての人間とは、と聞きたいのだね?」

ミギー「そういうことだ。我々の価値観の差異は、多分時間とともに埋まることになるだろう。その時、どう思うのか私は気になる」

新一「…あの、芳村さん」

芳村「…なんだい?」

新一「芳村さんは、どうして喫茶店をやっているんでしょうか」

芳村「どうして、とは?」

新一「俺の世界では…パラサイトにとっての人間って、食料でしかなかったんです」

芳村「…」

新一「当然例外みたいなのもいましたし、うまく社会と溶け込んだ奴もいるみたいですけど…。でも、芳村さんは社会に溶け込むために喫茶店をやっているんじゃないような気がするんです」

芳村「…そうだな。質問に答えようか」

ミギー「…」

芳村「ミギー、新一くん。私はね、人間が好きなんだよ」

新一「!」


ミギー「それは、どういう意味だい?」

芳村「もちろん、そのままの意味さ。新一くんの言ったように、人をただの食料のように思っているグールもいる。だが、それが我々のすべてではない」

ミギー「人が好き、か」

芳村「そうだ。我々は飢えた獣ではない」

新一「…そうですか」

芳村「…ふむ、よくわからないという顔だね」

新一「…」

芳村「では、こうしよう。君たちには”あんていく”で働いてもらおう」

新一「え?」

芳村「行くところもないのだろう?我々と一緒に生活をして、そして君たちが自分で判断を下すといい。どうだい?」

新一「そりゃ、願ってもないことですけど…ミギーはどう思う?」

ミギー「反対する理由が見当たらないな。ここなら、君が襲われる危険性も減るだろうし、私も思考ができる。君ももうスリで生計を立てたくないだろう?」

新一「そりゃそうだ。じゃ、お願いします」

芳村「よろしくね。この店の二階の部屋に空きがあるから、そこを使うといい」

ミギー(人間を…愛するか。捕食対象であるというのに…)


―――――――――――



コポコポ



新一「……」

ミギー「ほお、コーヒーを淹れるのもなかなか様になってきたじゃないか」

新一「話しかけんな!こうやって、ゆっくり…」



コポコポ



新一「…よし!これでどうすか、芳村さん」

芳村「…」ゴクッ

新一「……」




芳村「…おいしいよ。これならお店で出しても大丈夫だね」

新一「よしっ!」グッ

ミギー「しかし、平和なものだな。自殺をした死体を回収するとは、我々では思いつきもしなかった」

芳村「そうだね。私は、できるだけ無用に人を殺すことはしたくないんだ」

新一「そんで、グールとして人前に出る時はマスク…か。やっぱり、人としての生活を大事にしたいんですかね」

芳村「もちろん、顔を覚えられると大変だ、ということもあるけどね。人としての生活を大切にしたいと思う気持ちも強いんだよ」


新一「…俺のマスクまで作ってくれなくてもよかったのに」

芳村「ま、一応だね。使う機会がないといいんだけど」

新一「はは…」

新一(こんな風に…俺の世界でもこうすることが出来ていたら…)

ミギー「ただ生きることではなく、善く生きることである」

新一「ん?」

ミギー「ソクラテスの言葉だよ。まったく、君は本当に受験生だったのかい?」

新一「うっせ。…でも、そういうことなのかな」

芳村「大体あっているよ。”あんていく”のグールには、助け合って善く生きてほしい、そう思っている」

新一「…」

芳村「さ、今日はもういいよ。新一くん、少し散歩でもしておいで」

新一「はい、そうします」


――――――――――――

新一「…」スタスタ

ミギー「珍しいじゃないか。君だって考えたりするんだな」

新一「外で話しかけんな。…なあミギー」

ミギー「なんだい?」

新一「ここにきてしばらくたったけどさ…俺たちの世界で必要なのは”あんていく”みたいなところじゃないかな」

ミギー「ふむ。だが、それは土台無理な話だよ」

新一「どうして?」

ミギー「私達は命を受けて生まれてきているんだ。つまり”その種を食い殺せ”」

新一「…」スタスタ

ミギー「それに、グールがみな彼らのようではないさ。だからこの世界でも人間とグールの争いが起っている」

新一「…それはそうかもな」


ミギー「つまり………ん?」


新一「…どうした?」

ミギー「不思議な気配がする。グールとも違うようだ」

新一「そういや、お前グールの気配も察知できたっけ。…どう違うんだ?」

ミギー「グールのような強い気配ではない。だが、人の気配でもないようだ」

新一「行ってみるか?」

ミギー「確認するのがいいだろう。まずいものだったら逃げればいいし、何より興味がある」

新一「ったく…で、どっちだ?」

ミギー「そこを曲がったところの路地裏だな」

新一「…了解。ミギー、一応しゃべるなよ」



スタスタスタ  バッ!



新一「……!」






男「はぁ…はぁ…」


新一「大丈夫ですか!?」

男「はぁ……はぁ…匂う」

新一「え?」

男「食欲をそそる香ばしい香り…」

新一(…こいつ!)

男「僕が、食べてあげないと」ギンッ

新一「片目だけ…赤い!?」

ミギー「グールだ!気をつけろ、シンイチ!」

男「……」ズグゥ

新一「赫子……腰から出たってことは」

ミギー「鱗赫のグールらしいな。シンイチ、無理をすることはない。逃げるぞ」


新一「…待てよ、こいつ…」

ミギー「どうした?」

新一「この世界に来た時に襲われていた大学生だ!名前は確か…金木とか言ったっけ。…グールじゃなかったはずだ」

ミギー「…体に臓器を取り込んだことで変化が起きたのか?」

金木「……おいしそうだ……」

新一「…ミギー、彼を連れて”あんていく”にいくぞ」

ミギー「いや、まだ彼の力がどれほどか」

新一「いいんだ。彼、すごく苦しそうじゃないか」

ミギー「…しかたないな」

金木「…食べなきゃ……食べなきゃ!」ダッ!

新一「……一撃で決める。ミギー…防御頼む」

ミギー「……!」フォン

金木「!」ズグゥ フォン




キイ―――――ン!  ・・・ドスッ




新一「……」

金木「……」ドサッ



新一「ふぃー」

ミギー「全く…危ない戦い方だな」

新一「手が痛い…普通の人間じゃグールには太刀打ちできないな」

ミギー「君は世界最高の”人間”としての身体能力があるからどうにかなっているがな」

新一「人間…ねえ。ま、この体も殆どミギーのおかげだけどな……よっと」ドサッ

金木「……うう…」

新一「…なあ、もし彼がグールの細胞を移植されていたんだとしたらさ」

ミギー「ああ」

新一「彼は人間なのかな。それとも…」

ミギー「生物的にはグールのようになってしまっているだろう。だが、君が言いたいのはそうじゃないだろう?」

新一「まあね。彼は、俺と境遇が似てるかもな」

ミギー「…」

新一「違いはミギーみたいに話せる奴がいるかいないかだけ。そう思わないか?」

ミギー「そうかもしれんな」

新一(今更だが…俺も、彼も。人間……なのかな)

新一「…」

ミギー「どうした?」

新一「…いや、なんでもない。早く運ぶか」

ザッザッザッザ……


――――――――――――――――




金木「………!」パチ

金木「ここは…」

新一「よ、気が付いたか」

金木「あなたは…?」

新一「俺は泉新一。君は、金木君だろ?」

金木「どうして僕の名前を…それに、ここは?」




芳村「―――ここは”あんていく”の二階だよ」

金木「…!」

芳村「……苦しかったろうね」


金木「僕は…っ!」

芳村「…」

金木「さっきまで死にそうな飢餓感で…自分でも訳が分からなくって…でも、今は…」

芳村「…我々が空腹を満たす方法は一つしかない。君もわかっているだろう?」

金木「…っ!」

芳村「泉君が君を連れてこなかったら、きっと君は人を殺めていたよ…自分が何者なのか知りなさい」

金木「……僕はっ!…人でもグールでもない僕はっ」ポロッ

金木「もう人としては生きられない…グールの世界でも生きていけない…僕は……独りだっ…」ポロポロ


新一「……」

芳村「…どちらでもない?それは違うな」

金木「…」

芳村「君はグールであり、同時に人間でもある…」



芳村「二つの世界に居場所を持てる、唯一人の存在なんだよ」


新一「!」

ミギー(……)

芳村「”あんていく”に来なさい。グールの世界を教えよう。…頼りになる先輩もいることだしね」ニコリ

新一「お、俺ですか…?」

金木「……あ、あの……僕、バイトとかしたことなくて…僕でもできますか?」

芳村「新一くんでもできたんだ。君でもできるはずさ」ニコッ

新一「ちょ、芳村さん!」

金木「…ふふ。新一さん、これからよろしくお願いしますね」ニコ


こうして、似たような境遇を持つ後輩を持つことになった。



――二つの世界に居場所を持てる、か。俺は、前の世界であいつらを理解してあげられたんだろうか――――――――


少し休憩します。
寄生獣では、別生物同士では分かり合えないだろうっていう結論になりましたよね。


――――――――――――――――



カラン カラン


リョーコ「こんにちは。あら、新人さん?」

ヒナミ「……」オロオロ

金木「あ…はい。金木と申します」

新一「こいつ、俺より鈍くさいですよ!」

金木「ちょ、新一くん!」

リョーコ「ふふ…。笛口と言います。ほら、ヒナミも挨拶なさい」


ヒナミ「……っ」サッ

リョーコ「全く…この子ったら…ごめんなさいね」

金木「いいえ…」

新一「あ、芳村さん二階で待ってますよ」

リョーコ「わかりました。いくわよ、ヒナミ」

ヒナミ「…うん」





金木「…グール?」

新一「そ。荷物を取りに来たんだ」

金木「荷物?」

新一「前に話したろ?自分で人を殺せないから、芳村さんから食べ物をもらってんの」

金木「…ああ、ヨモさんが持ってくる?」

新一「ああ、一回ついて行ったんだっけな。そう、あれ」

金木「なるほど」

新一「別に、グールが皆むやみに人を殺すわけじゃないんだよ。そういうことをしたくないグールも多い」

金木「…」

新一「どした?」


金木「…新一くんは、グールじゃないよね?」

新一「ああ」

金木「どうしてそこまでグールのことを…」

新一「グールだって必死に生きているしな。それに、”あんていく”に集まるグールは”違う”から」

金木「違う?」

新一「…ま、いろいろ考えさせられるってことだよ。反省も、参考にしたいこともな」

金木「……?」

新一「この話終わり!二階から豆持ってきてくれ。あ、食事を見るのはタブーらしいから、ドアとか勝手に開けんなよ?」

金木「ああ、うん」

タッタッタ…




ミギー「…シンイチ」

新一「なんだ?」

ミギー「彼には、私のことを教えないのか?」

新一「まあ、そのつもりだ」

ミギー「どうして?」

新一「…前に芳村さんが言ってたろ。金木は二つの世界に居場所を持てるって」

ミギー「…」

新一「あいつの”人としての場所”は狭まっちまってるから、せめて俺は人として接したいと思って」

ミギー「ま、君がそういうのならいいだろう」

新一「ま、あいつ大学も通ってるんだけどな…そういや永近もいたか」



リョーコ「今までありがとうございました」

芳村「…そういうことならわかりました。これから頑張ってくださいね」

新一「……?」

リョーコ「新一くんも、いままでありがとう」

新一「え、もうここには…?」

リョーコ「うん。ヨモさんみたいに、人は傷つけないようにして自分で食べるものを探そうと思って」

新一「そうすか…また来てくださいね」

リョーコ「うん。……ヒナミ!」



ヒョコッ トコトコ



ヒナミ「お母さん。あの、金木さんがたくさん字、教えてくれて」

金木「はは…」

リョーコ「ありがとうね金木君」

金木「僕も楽しかったですし」



リョーコ「…よし、じゃあ帰ります。ありがとうございました。ヒナミもあいさつしなさい」

ヒナミ「新一くん、金木さん。さよなら」ペコ

新一「じゃあね、ヒナミちゃん」

金木「じゃあね、また来たら教えてあげるから」



金木「…ふぅ」

新一「……疲れた」

芳村「二人ともお疲れ様。明日からトーカちゃん帰ってくると思うから、仕事は少し楽になると思うよ」

新一「…そうだ!金木、お前の家で勉強教えてくれよ」

金木「え?」

新一「忘れがちなんだけど俺浪人生なんだって!テキストとかもってなくってさ、頼むよ」

金木「…いいよ。行こうか」


芳村「……」ニコニコ

新一「じゃ、芳村さん、行ってきますね」

芳村「うん」


ガチャ



芳村「…二人が仲良くなってくれてよかった」


金木「新一くんはさ」スタスタ

新一「うん?」スタスタ

金木「別世界から来たっていうけど…」

新一「ま、嘘は言ってねえよ」

金木「ホントかなあ?」

新一「本当だって!本当だから”あんていく”にいるんだ」

金木「それは…」

新一「違う世界から来ちゃって、心細かったところを芳村さんに拾われたの!」

金木「ふぅん…」

新一「あ、その顔!信じてねえな?」

金木「しんじてるよ」

新一「くぅ………」







ミギー(……!?)ビクッ

新一「うわっ!」

金木「どうしたの?」

新一「…なんでもない。………おい、ミギー」ヒソヒソ

ミギー「殺気を感じた。大きいのが二つ…いやな殺気だ。気をつけろよシンイチ」ヒソヒソ

金木「…?」

新一「…よし!…じゃ、お前んちまで競争な!」

金木「え?いきなりどう―――――――」







「金木さん!!新一くん!!」






金木「!」

新一「ヒナミ…ちゃん?」



ヒナミ「グスッ……お母さんが……お母さんがぁあ!」ポロポロ






新一「リョーコさんが…ヒナミちゃんをかばって…」ダダダダダ!

ヒナミ「はぁ…はぁ……」ダッダッダ

金木「……はぁ……新一くん…速い……」ダッダッダ





新一「……!二人はそっちに隠れろ!」



サッ

金木「……」

ヒナミ「……」ギュッ





真戸「―――――まったく愚かだな」

リョーコ「……」ボロッ



真戸「大人しくしていればこんな道の真ん中で死ぬことはなかった。ゆっくり 解 体 してやったのに」


新一「っ!」

ミギー「落ちつけシンイチ!向こうは4人いる。君一人じゃ勝てっこない」

新一「……黙れ!」

ミギー「…致し方あるまい」シュッ ドムッ!

新一「ぐえっ……み、ぎー?」

ミギー「一度落ち着け。今言っても殺されるだけだ」

新一「く………そ…」ギリッ



真戸「せっかくだ、辞世の句でも聞いてやる」

金木(どうすればいい!?どうすれば…)



真戸「……」

リョーコ「……ヒナミ………生」ニコ





スパアァン!




金木(……っ!!首を…)

ヒナミ「ああぁぁぁ……ああぁぁ!」ポロポロ




真戸「すまないな 時 間 切 れ だ 」ニヤァ


亜門「……」


新一「ヒナミちゃんの……お母さんを……」ドクン




かあさん……


――――新一!

―――――――大丈夫!?新一!




笛口さん……

―――グスッ、お母さんが、私を逃がすために………

――――……ヒナミ………生




新一「……殺す」





―――――まったく愚かだな

大人しくしていればこんな道の真ん中で死ぬことはなかった。ゆっくり 解 体 してやったのに




新一「殺す!」ビリビリ

ミギー「シンイチ…」


金木「……!?」

金木(こ、の殺気は…しんいち…くん?)




亜門「!!」バッ

真戸「…どうかしたかね?」

亜門「…いえ。一瞬殺気を感じたような気がしまして」

真戸「……私も嫌な予感がするな。早めに撤収するとしよう」

今日はここまでにします。母親は大切にしないといけない(戒め)
東京喰種のキャラは、出るにつれて評価が上がる人が多いですね。真戸さんとか西尾先輩とか
明日には完結させます。

――――――――――――


新一「……」

金木「……」

芳村「……」

トーカ「…ヒナミは?」

芳村「奥で寝かせているよ」

トーカ「…仇を取ろう」

芳村「駄目だ」

トーカ「冗談でしょ店長!?仲間が殺されたのに黙って指をくわえてみてるのがいいっていうんですか?ヒナミは…両親を殺された…仇が討てなきゃ可愛そうよ……!!」


芳村「………」



芳村「可哀相なのは仇が討てないことじゃない…本当に哀れなのは、復讐にとらわれて自分の人生を生きられないことだ」


トーカ「…ッ」ギリッ


スタスタ バダン!




新一「……」

金木「あ、あの…」

芳村「誰が悪いというのではない。我々グールですら捜査官を相手にすることは躊躇してしまうんだ」

新一「……俺が」

芳村「……二人とも、自分を責めてはいけないよ」


――――――――

新一「なあ、金木」

金木「…何?」

新一「彼らのやったことは正しいんだろうか」

金木「……彼等グール捜査官は人の平和のためにグールを退治している…世間的に排斥されるべきはグールのほうなんだ」

新一「…」

金木「悪いのは…人を殺して食らうグールじゃないか…」

新一「…そうかな」

金木「彼等は間違っていないよ…間違って……」

新一「…」

金木「僕は……何もできなかった……」グッ

コナン「毛利蘭が死んで悲しむのなんて毛利蘭に自己投影した売れ残りBBAだけだから」

コナン「生産性も需要もないクソブサイクの毛利蘭は死ねばいいんだ」


新一「…みんな地球で生まれてきたんだろう?グール捜査官が正しいなんて人間の物差しで測っちゃだめだと思う」

金木「人間の…物差し」

新一「ああ…リョーコさんだって、人を殺さないように生きようとしていた」

金木「でも、たとえそうだとしても…捜査官の知るところじゃないじゃないか」

新一「ああ…だけど、それを教えることもできるじゃないか」

金木「……うん」

新一「グールだって人の命を奪うかもしれない、だけど、誰かの手で大切な人の命を奪われたのはヒナミちゃんも同じじゃないか」

金木「うん」


書き込もうとすると連投規制にかかってしまいます。昨日までは問題なかったのに…
すみませんが、もし見ていただける人いたら、支援いただけると嬉しいです。書き溜めてあるので、割とすぐ終わります


新一「グールにだって感情がある。だから……俺たちが教えるんだ」

金木「…僕が?」

新一「――それに気づけるのも、それを伝えられるのも…」

金木「……」



新一「きっと、お前と、俺だけだ」

金木「!」

新一「だから……それを伝えよう。俺たちで」

金木「…うん」

新一「つってもお前弱いけどな!赫子くらいだせるようになれよ!はっはっは」ポンポン

金木「君だってただの人じゃないか!でも………新一くんは、強いね」

新一「何が?」

金木「いや、そう思っただけだよ。…ありがとう」






ミギー「随分とそれらしいことを言っていたな」

新一「…茶化すなよ。…前の世界でもこんな風に考えたことがあってさ」

ミギー「私としてはあの時の激情に流されて仇を取ると言わなかったことはありがたいがな」

新一「…俺も、前の世界では捜査官と同じことをしていたから」

ミギー「我々に社会はなかった。彼らのしていることは、見方によっては我々のしたこととよりも残酷だよ」

新一「……そうかな」

ミギー「そうだとも。だから笛口リョーコが殺されて君は取り乱したんじゃないか」

新一「………」

ミギー「だが、それは人として当然の感情だと思うよ。善悪ではなく、主観でものを見る。人とはそういうものだろう?」

新一「…そうだな」

ミギー「君が正しいと思ったことをすればいいさ。そのかわり、死にそうな行動は私が止める。それでいいだろう?」

新一「ああ…ありがとう、ミギー」


――――――――――


コンコン

新一「ヒナミちゃん?」

ヒナミ「……」

新一「入るよ」

ガチャ

ヒナミ「……」

新一「ヒナミちゃん、何日もご飯食べてないんだって?駄目だよ、食べなきゃ」

ヒナミ「…うん……」

新一「………」

ヒナミ「…………」




新一「……俺もさ」

ヒナミ「…?」

新一「母親を殺されたんだ…前の世界で」

ヒナミ「……ほんと?」

新一「うん。すごく…すごく辛かった」

ヒナミ「……うん」

新一「だから、ヒナミちゃんの気持ち…少しはわかるかな」

ヒナミ「…」

新一「だから…なんだろ、うまくは言えないけど…元気出して」

ヒナミ「…うん」

新一「ほら、これ」スッ

ヒナミ「え?」

新一「金木が渡してくれって。字の勉強とかしてるんでしょ?」

ヒナミ「…ありがと。わからない字があったら金木さんに聞くね」

新一「俺には聞かねえのかよ?はは…」

ヒナミ「…ありがとう」

新一「おう。…じゃ、俺は戻るから」





ガチャ バダン

ヒナミ「……」


新一「どうしたらいいんだろ、俺」

ミギー「どうしたら、とは?」

新一「色々」

ミギー「…ま、考えたらいいさ」

新一「ああ…」


カ ァ ァ ン

新一「ありゃ、下からだ。金木の奴、なんか落としやがったな?…あれ?」

トーカ「……」

新一「あ、トーカちゃん。金木の奴…」

トーカ「うっさい!」

スタスタスタ

新一「なんだァ?ま、とりあえず下に行くか」


トコトコ

金木「何を言ってるんですか!」

新一「!」

芳村「駄目だ。捜査官に手を出したということは、彼女がすべての責任を負う覚悟をしたということだ」

金木「そんな…でも…」

芳村「君は…”あんていく”のグールだけで数千ものグール捜査官に立ち向かえると思うのかい?」

金木「…っ」

新一(……)

金木「…店長は、いろんなことが見えていて…そのうえで決断されているんだと思います」

芳村「…」

金木「でも…僕は、まだ、何一つわかりません…だから…」

金木「だから、ちゃんと自分の目で見てからどうするか決めます!」

新一「!」

芳村「……うん、そうしなさい」ニコリ

金木「はい!」



新一「よし、そういうことなら俺も協力しよう!」

金木「新一くん!」

新一「俺もこいつについて行って、構いませんよね?店長」

芳村「君がそういうなら、そうしなさい」

金木「でも…君は人間じゃ…」

新一「問題ない!マスクは作ってもらってあるし」

金木「そういうことじゃ、ないんだけど…」

新一「ま、いざとなったら逃げるから心配すんなよ。逃げ足は速いんだぜ?」

金木「…うん。ありがとう」

ミギー(やれやれ…全く世話がかかるなこの二人は…)


――――――

金木「で、結局トーカちゃんに稽古つけてもらってるんだ」

新一「ふぅん。確かにお前あんまり強くなさそうだもんな」

金木「え゛っ」

新一「赫子がなきゃ俺の方が強いかもな」

金木「あはは…冗談キツイよ」

新一(冗談じゃないんだけどな…)

新一「…で、ヒナミちゃんのことだけど」

金木「うん。少し前までは寝不足だったみたいだけど、最近は少し元気出てきたかな」

新一「寝不足なのはお前が本貸すからだろ?」

金木「はは…」

新一「グール捜査官は?」

金木「トーカちゃんと本部に行ったけど、まだバレてないみたい」

新一「捜査本部に行ったのかよ!?お前、意外と度胸あんのな」

金木「トーカちゃんが強引に…」

新一「…なら俺が行った方が良かったんじゃねえの?人間だし…」

金木「制服が借りられなかったみたい。新一くん、かなりガタイいいから」

新一「ありゃ」

金木「まあ、とにかく、しばらくは――――――――――」






バンッ!

新一「!」

金木「うわっ!」




トーカ「……」



金木「トーカ、ちゃん?」

新一「…どした?」




トーカ「ヒナミが……いない」



――――――――――――――――


ダッ

トーカ「遅いっ!先に行くよ!」グッ

バッ シュン



金木「はぁ…はぁっ…」タタタ

新一「俺も行くから、後から来いよ!」ダダダ

金木「は、速いよ二人とも…」





新一「…ふぅ……はぁ…速いなトーカちゃん」

ミギー「君は体力はないからな。――――!シンイチ!」

新一「どうした?」

ミギー「向こうのほうに強烈な殺気を感じる!近いぞ!」

新一「まさか!」

ミギー「可能性はある。適当に走るよりは、向こうに向かった方がいい」

新一「ああ!」



ダッ

新一「…はぁ…はぁ…」

ミギー「シンイチ」

新一「うん?」

ミギー「もしグール捜査官と会ったらどうするつもりだ?」


新一「え?……そういや考えてなかった」

ミギー「まったく…殺すのか?」

新一「どうだろ。前は殺そうと思ったけど…人間だしな」

ミギー「我々の時とは逆の行動をとることになるな」

新一「…ま、とりあえずヒナミちゃんを守るよ。そのことは後で考える」

ミギー「そうか」

新一「…………!あれは…」





トーカ「……」

ヒナミ「うう……グスッ…」




ユラァ


真戸「………」ニヤァ





新一「…くそ、やるしかないのか!」ダッ

ミギー(どうしようと……君の決断に任せるさ、シンイチ)


――――――――――――

金木「ふう……!…あれは!」



亜門「この前の河川ですね!私もすぐに向かいます!」ピッ

金木(あの人は…前の……)

亜門「…」ダッ

金木(前の…河川?ヒナミちゃんが見つかったのか?)

金木「……僕は」





バッ

金木「……」

亜門「…なんだ貴様は」

金木(もうリョーコさんの時と同じ思いはしたくない!)

亜門「邪魔だ、消えろ」

金木「…ここを通すわけにはいきません!」ギンッ

亜門「!……グールか。調度いい、貴様らに聞きたいことがあったんだ」

金木「ききたい…こと?」

亜門「罪のない人々を兵器で殺め…己の欲望のまま食らう」

亜門「貴様らの手で親を失った子供もたくさんいる…残されたものの気持ち…それを想像したことはあるか?」

金木「……」

亜門「ラビット…と呼ばれるグールがいる。奴が私の仲間を殺した…ほんの数日前に」

金木(トーカちゃん…なんでこの人は僕と話を?)

亜門「彼はなぜ殺された…?彼のっ…彼のどこにっ…」ツツー

亜門「何処に殺される理由があったんだ!……この世界は間違っている…!ゆがめているのは貴様らだ!」

金木「……」


金木「……」

金木(確かに……彼の言う通りかもしれない。でも…)


――

ヒナミ「ああぁぁぁ……ああぁぁ!」ポロポロ

――

金木(家族を失ったのは…ヒナミちゃんだって一緒じゃないか)

金木(そこには目を向けてくれないのか?…目を向けてくれたら―――――)


―――――みんな地球で生まれてきたんだろう?グール捜査官が正しいなんて、人間の物差しで測っちゃだめだと思う



金木(―――あ)


金木「…多くのグールは道を誤った」

亜門「…!」

金木「ラビット…というグールもその一人だと思います」

亜門「…」

金木「でも…相手のことをよく知らないまま間違ってると決めてしまうなんて…そんなのが正しいとは思えない」

亜門「…何を言っているんだ…全く分からないぞ…」

金木「……わからないなら」



―――――

――――グールにだって感情がある。だから……俺たちが教えるんだ

―――――それに気づけるのも、それを伝えられるのも…

―――――



金木「僕が、わ か ら せ ま す」ゾブゥ





――――――きっと、お前と、俺だけだ





亜門「…やはり、グールを許すことはできん!」ガッ





金木「……そっちはお願いね、新一」




――――――――――――キィン!



―――――――――――――――――

真戸「久しぶりだね、笛口の娘に――――――」


真戸「ラビット、と言えばいいのかな?」ニタァ

トーカ「…っ」

真戸「お前がわざわざ敵陣に乗り出してきた理由がわかった…笛口の娘の為だろう?」

ヒナミ「!」

真戸「我々が明確な対象の情報を得ていないとすれば、顔を見ている私達だけ殺してしまえば捜査力は一気に弱まり、笛口の娘は以前と同じような平穏な生活が送れるようになる……か?」



真戸「反 吐 が 出 る ね」



トーカ「!!」

ヒナミ「……」ポロッ

真戸「さあ、お前も仲良く家族の所に送ってやる。この――――」



「―――――――――待て!」




真戸「……ん?」




トーカ「あんた…」

ヒナミ「…おにいちゃん」




ザッ

「中々そのマスク、様になっているぞ」

新一「…うっせ」

真戸「…新たなグールか?しかし…赫子らしきものは出ているが赫眼はでていない…」

新一「俺は…」


新一「家族を守れる程度の……ちっぽけな人間だ!」ダッ


真戸「ふん!」ブォン

ミギー「弾くぞ!」

新一「ああ!頼む!」



キン キィン!



真戸「……!?ちぃっ!」カチャ

新一「!」

新一(バッグが…もう一つ)

ミギー「危険だ!下がれ!」


バッ バサアッ



新一「…!」バッ

ヒナミ「そんな…お母さん?いや………」ポロッ

トーカ「…てめえ!まさか!」





真戸「クク…お前の大好きな 母 親 だ」

新一「はは…おや…!」ドクン

ミギー「……!シンイチ!落ちつけ!」

新一「はぁー…はぁー…」ドクンドクン

ヒナミ「いや、いやぁあぁぁぁぁ!!」

トーカ「…っの、ゲスやろおおおおおおお!!」ダッ

ミギー「まずい!」

真戸「相変わらず愚かだ…ラビット」ガシッ

トーカ「っ!」




ブゥン ドガァ!





トーカ「……あ…あああああああああ!」ブシュウウウウウ

ヒナミ「お姉ちゃん!」

新一「…ぁ…」ゼェゼェ

ミギー「とりあえず呼吸を整えろ!シンイチ!」

真戸「他愛もない…死肉をむさぼるハイエナめ」

ミギー「……」

トーカ「…生きたいと思って何が悪い」

真戸「あ?」

トーカ「人しか食えないなら…そうするしかないだろ!こんな体で…どうやって正しく生きればいいんだ!」

新一「!」

トーカ「私だって…あんたらみたいに生きたいよ……」

ミギー「……」






真戸「…それはそれは。聞くに堪えんよ。―――――死ね!」ブォン!

トーカ「……っ!」





「――――――ミギー」




カキィン!



真戸「……なんだ?」




「なんだ、シンイチ」




「俺、やっと決めたよ」





「この世界では、人とグールは一緒に生きられる。きっと――――だから」





新一「皆で、頑張ろう」

ミギー「…ふむ。どうやるのか、私も興味があるよ」

真戸「…しゃべる甲赫か…。ぜひクインケにしたいものだ!」グワッ

新一「だから、とりあえず防御頼む」

ミギー「ああ」



新一「うおお!」ダッ



チュイン! キィン!



真戸「ちっ…父親のほうは防がれてしまうか。ならば!」バサァ!

新一「羽の方か!うわっ!」

ミギー「向こうのほうが威力がある…まともにやったら厳しいぞ」


ブン!

新一「おっと!うわ!どうすんだよミギー!」ヒョイヒョイ

ミギー「…シンイチ!これを!」ポイッ

新一「…!なるほど」バッ

真戸「はは!避けているだけでは私に近づくことはできんぞ!」ブン!ブン!

新一「確かに…おっと。…でも」

ミギー「ここだ!」




ブゥン  カキィン!




真戸「っちぃ!」

ミギー「今だ!シンイチ!」



新一「近づく必要は、ないさ」――フォン!





真戸「!!」

真戸(小石だと!?駄目だ、避けられ――――)




コォン

真戸「このような…よくわからない奴に……不覚を取るとは……」ドサッ 




新一「…ふぅ」

ミギー「よくやったぞ。利き手じゃないほうだが、よくあてたな」

新一「はは…そりゃ、お前が石投げたら貫通しちまうからな…大丈夫?トーカちゃん」スッ

トーカ「…うるさい」

新一「結構出血してる。肩、貸すよ」

トーカ「…いい。ヒナミ」

ヒナミ「え?」

トーカ「こいつ、殺さなきゃ」ビッ




真戸「…………」

新一「ヒナミちゃん…」

ヒナミ「…わたし」

新一(……)



ヒナミ「わたし、できない」ポロッ

トーカ「どうして!……あんたの両親の仇なのよ!」

ヒナミ「わたしも考えたんだ…この人を殺せば、この胸のもやもやが消えてくれるんじゃないかって」

トーカ「なら早く!」

ヒナミ「…でも、かなしいだけだった…また、お父さんとお母さんと三人で……」ポロポロ

トーカ「ヒナミ…」


新一「…うん。それでいいよ…」

ヒナミ「…お兄ちゃん」

新一「それでいいんだ…行こう」

トーカ「……。おい、肩貸せ」

新一「え?」

トーカ「肩貸せって」

新一「最初からそういえばいいのに」ヒョイ

トーカ「…つうか、お前ら名前で呼び合ったらマスクの意味ねえだろ」

新一「げっ!」

ミギー「まあ、私たちは戸籍もないからな。顔がばれなければ問題ないだろう」

新一「お気楽に言っちゃってくれるぜ…」


トーカ「…はぁ。…ねえ、さっき言ってた、人とグールは一緒に生きられるって」

新一「うん」

トーカ「…せいぜい頑張りなよ」

新一「うん」

ヒナミ「お、お兄ちゃん」

新一「ん?」

ヒナミ「わたしも協力するから…頑張ろうね?」

新一「…ああ!」

ミギー「…大見得切ったのはいいが、具体的には何をするんだ?」

新一「…あはは」

ミギー「まったく」





ザッザッザッザ

四方「おい、大丈夫か」

金木「……」

新一「あ、四方さん。金木も…」

ヒナミ「金木お兄ちゃん…怪我してる…」

金木「はは…別に大したことないよ。あ…そこの人…」

新一「殺してないよ。さ、早く移動しようぜ」





「………」

スッ



ミギー「…!」

新一「およ?どうした」

ミギー「いや、なんでもない」

新一「…?」

ミギー(………なるほど。そういうことをするから”店長”なのか)





亜門「あいつは…なぜ俺を」フラ…フラ



真戸「……」

亜門「…!真戸さん!」ダッ



ユサユサ

真戸「…ん。亜門君か…その怪我は…」

亜門「大丈夫です、この程度…。真戸さんは?」

真戸「大丈夫…少し小石にぶつかっただけさ…」

亜門「…?」

真戸(甲赫……”シンイチ”と”ミギー”……か。厄介だ…梟よりかはましだがな…)

真戸「…今の君と私じゃ20区は気が重そうだ…」

亜門「…はい」

真戸「一度本部に戻ろう。…また、新しいクインケでここに戻ってくるために」

亜門「はい!」




真戸(……共に生きる……か。随分馬鹿げたことを……)


――――――――――――――

新一「…疲れたなぁ」

金木「はは…ねえ」

新一「ん?」

金木「どうして…捜査官の人を殺さなかったの?」

新一「ああ、あれは…ヒナミちゃんがそういったから。ま、俺は戦ったわけじゃないけどな」

ミギー(別にもう私のことを隠す必要はないと思うが…まあいいか)

金木「…僕が戦った捜査官の人がさ」

新一「ああ」

金木「グールが世界を歪めているって…そういったんだ」

新一「…そうか」

金木「でも、新一くんに言われたこと思い出してさ、グールのこともわかってもらおうと思って」

新一「うん」

金木「僕たち、もっとお互い分かり合うべきだって…そう思ったから」



新一「…そっか。じゃ、俺たち仲間だな!」

金木「え?」

新一「俺はこの前グールも人も一緒に生きられるようにするって、啖呵切っちまった。だから……方法を一緒に探そうぜ!」

金木「…!うん!」

新一「とはいっても、何すればいいのかはわかんないけどな!はは…」

金木「ふふ…」

新一「……よし!じゃ、交渉成立だな!」スッ

金木「…?」

新一「察しが悪いな…ほら、手出せ」

金木「あっ…うん!」スッ




ガシッ!



新一「よろしくな、研!」

金木「……!よろしく!新一!」




ミギー(似た者同士…か。さて、せいぜい私は二人が死なないようにバックアップしてやるか…)



終わり


一旦これで終わりです。沢山の支援、本当にありがとうございました。
寄生獣も東京喰種も、テーマとか、設定とかが結構似てるな、と思って書こうと思いました。
両作品ともめちゃくちゃ面白いので是非読んでみてください。
最後に、これを書くにあたって協力してくれた友人のwkbys君、本当にありがとナス!


改めて本当に支援ありがとうございました。

……これ書くのすら結構苦労したんですよ。
続編を書くのは基本的にはないと思っていただければ…
長編を書くとうちのeモバイルは連投規制かかりますし…
誰か書いてもええんやで(ニッコリ)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月26日 (金) 23:24:11   ID: 3at5ztgr

なかなか面白いな!
頑張れ!!

2 :  SS好きの774さん   2015年02月14日 (土) 20:50:53   ID: eD1izRgL

面白かったです
両方とも見たので名場面がちりばめられてるのがわかりました
このssの続編期待してます!

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