メリオダス「最初は」ギル坊「グー!!!」 (133)


メリオダス・ギル坊「じゃんけんほい!!!」


メリオダス グー


ギル坊 チョキ


メリオダス「あっち向いて」


ギル坊「っ!!」


メリオダス「ほい!!」ウエサシ


ギル坊「ふん!!!」ウエムキ


ギル坊「……」


メリオダス「俺の勝ち!!!」


ギル坊「……」


ギル坊「……で…」


メリオダス「どうしたギル坊~そんなにショックか?」


ギル坊「何で…」


メリオダス「ん?」


ギル坊「何で一回も勝てないんだーーーーー!!!!!」


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ネガティブ思考はある程度治ってきたギル坊が少しがんばる話

あと番外の小説は未読なので幼少期の言葉使いに誤りがあればしていただけると助かります


メリオダス「そりゃあなギル坊。俺があっち向いてほいの天才だからだ」フフン


ギル坊「それにしても今日だけで五十回はしてるんですよ!?それで一回も勝てないって!!?」


メリオダス「まあ通算したらその二十倍くらいはあっち向いてほいしてるけどな」


ギル坊「うわあああああああ!!?」


メリオダス「落ち着け落ち着け。むきになるな。それじゃ勝てるものも勝てないぞ」


ギル坊「勝てないからむきになってるんです!!!」


ギル坊「も…もう一回!!!」


メリオダス「悪いな!!今日はこれから『七つの大罪』でドラゴン討伐に出かけることになってるからできん!!!」


ギル坊「帰ってくるのは?夜?明日?もしかして明後日とか?」


メリオダス「一週間後」


ギル坊「うわああああああああ!!???」


メリオダス「でもよギル坊。よく考えてみろ。仮に俺が暇で明日も明後日もあっち向いてほいしたとしても勝てるのか?」


ギル坊「うっ!?」


メリオダス「もう千回近く負けてるのに?」


ギル坊「ううううっ…」ジワッ


メリオダス「おー泣くな泣くな。お前は聖騎士になるんだろ?なら泣いちゃ駄目だ」


ギル坊「ふんっ!!!」キリッ


メリオダス「いい機会だと思え。俺に勝つためにはどうしたらいいかを考えるための時間ができたって」


ギル坊「でも…どうやったらメリオダスさんに勝てるの?」


メリオダス「俺に聞いてどうする」ゴチン


ギル坊「痛いっ!!!」


ギル坊「頭ごつかないでください」スリスリ


メリオダス「それを自分で考えるのも大事なことなんだぞ?」


ギル坊「…強い聖騎士になるために?」


メリオダス「その通り!!」


ギル坊「……」


ディアンヌ「団長~!!!そろそろ行くよ~!!!」


メリオダス「分かった!!すぐに行く!!!」


メリオダス「じゃあなギル坊!!また来週!!!」


ギル坊「メリオダスさん!!一週間後には…あなたにあっち向いてほいで勝ちますから!!!」


メリオダス「期待してるぞ~」


ギル坊「そしたら!!!」


メリオダス「ん?」


ギル坊「『約束』したこと、しっかりと教えてくださいね!!!」


メリオダス「おう!!おれは嘘はつかないぞ!!!」


ギル坊「行ってらっしゃい!!」ノシ


メリオダス「行ってくる」ノシ


――――――――――――――――――――――――――――――


ギル坊「とは言ってみたけど…どうすればいいんだろ…」







ギル坊「どう思う?」


幼少ハウザー(以降:ハウ坊)「いや知らねーよ!!?」


幼少グリアモール(以降:グリ坊)「そもそもその話を聞いたのが今日初めてなんだが?」


ギル坊「メリオダスさんと何度も何度もやってるけど勝てないし、あっち向いてほいが強くなった気もしないし…一回相談してみようと思って…」


ハウ坊「そもそもメリオダスさんってあの『七つの大罪』のメリオダスさんだろ?そんな人と何であっち向いてほいしてるんだ?普通、剣の手ほどきとかを教えてもらうだろ?」


ギル坊「それはやってもらってるんだ。そのうえであっち向いてほいもやってる」


グリ坊「ますますあっち向いてほいをやってる理由がわからないんだが…意味なくやっているわけではないんだろ?」


ギル坊「もちろん!!ちょうど一か月前のことなんだけど…」


――――――――――――――――――――――――――――――

【一か月前】


メリオダス「俺がやってる鍛錬方法?」


ギル坊「はい!!僕は少しでも早く強い聖騎士になりたいんです!!」


メリオダス「何で俺の鍛錬方法なんだよ?親父さんに聞けばいいんじゃないか?」


ギル坊「父さんにも聞きました。そうしたら『基本の稽古を続けろ』と言われてしまって…それに僕はメリオダスさんのような聖騎士が憧れなんですよ!!!」


メリオダス「……うーん…同じ鍛錬をしたから同じように強くなれるわけじゃないぞ?体も心も魔力も何もかも違うからな」


メリオダス「無理な鍛錬は体に悪影響が出るし」


メリオダス「何より俺も親父さんと同意見だ」


メリオダス「特別な訓練はまだお前には必要ないよ。まずは基礎をしっかりさせないとな」


ギル坊「でも…」


メリオダス「お前はまだガキなんだから。焦る必要はまったくねーよ」


ギル坊「そう…ですか……」


メリオダス「…うーむ……」ポリポリ


ギル坊「うう…」


メリオダス「よし、分かった。かわりに今のお前でもできる効果的な鍛錬方法を教えてやる」


ギル坊「え!?」


ギル坊「本当ですか!?それは一体…」


メリオダス「右手出せ」


ギル坊「は、はい!!」


メリオダス「最初はグー!!」


ギル坊「ちょ!?メリオダスさん?」


メリオダス「ほれ出せ!!じゃんけん…」


ギル坊「ほ、ほい!!!」


メリオダス パー


ギル坊 グー


メリオダス「あっち向いてほい!!」ヒダリサシ


ギル坊「せいっ!!!」ヒダリムキ


ギル坊「……」


メリオダス「俺の勝ちだな」


ギル坊「あの…これはどういう…」


メリオダス「俺にあっち向いてほいで勝てたらさっき言った鍛錬法を教えてやる」


ギル坊「なっ!!?どうして!!」


メリオダス「ただ教えるんじゃつまんないだろ」ニカッ


ギル坊「そ、そんな~」


――――――――――――――――――――――――――――――


ギル坊「と…そういうわけで」


グリ坊「いやそんなわけでって…」


ハウ坊「お前バカ。ほんとバカ」


ギル坊「ななななんでそんなこと言うの~~~」


ハウ坊「それってアレだろ?要するに教えるのがめんどくさいから適当なこと言って茶を濁したんだろ。例えばの話でよ、ギルがメリオダスさんにあっち向いてほいで勝っても教えてくれねぇんじゃねえの?」


ギル坊「メリオダスさんは約束を守らないような人じゃないっ!!!!!」


ハウ坊「急に大声を出すな!!!」キーン


グリ坊「耳が痛い…」キーン


ギル坊「とにかく!!メリオダスさんにあっち向いてほいで勝たないことには始まらないんだ!!」


ギル坊「だからメリオダスさんがドラゴン討伐から帰ってくるまでの一週間の間に何とかしないと…」


ハウ坊「で?どうすんの?」


ギル坊「……」


グリ坊「……」


ハウ坊「……」


ギル坊「それを相談しに来たんだった…」


グリ坊・ハウ坊「ホントお前ってバカ」


ギル坊「やめてっ!!!」


ギル坊「何かいい案はないの!?」


グリ坊「とりあえず俺とハウザーでお前とあっち向いてほいをしてみようと思う」


ハウ坊「なーんでそんなことやらなくちゃいけないんだ?」


グリ坊「ギルサンダーの話を聞いてて思ったんだが、特定の人間と千回以上あっち向いてほいをして一度も勝てないというのはいくらなんでもあり得ないと思うんだ」


ハウ坊「確かにな。普通はありえねえ」


グリ坊「そこから考えられる可能性は二つ。メリオダスさんがものすごく強いかギルサンダーがものすごく弱いかだ」


ギル坊「なるほど…」


グリ坊「まずはそこから確かめてみよう。メリオダスさんがものすごく強いと言うことなら何とかなる可能性はゼロじゃない」


ギル坊「理には適ってるよね…ところでグリアモール」


グリ坊「何?」


ギル坊「もし僕がものすごく弱かった場合はどうする?」


グリ坊「……」


ギル坊「何で黙るの?」


ハウ坊「……」


ギル坊「何で目をそらすの!?」


グリ坊「と…とりあえずやろう!!あっち向いてほい!!!」


ハウ坊「そ、そうだなやろうぜ!!!」


ギル坊「答えてよ!!?質問に答えてよ!!?」


――――――――――――――――――――――――――――――

ギル坊「とりあえず十回ずつやってみたけど」


グリ坊「俺とは四勝六敗で俺の勝ち…、ハウザーとは七勝三敗でギルサンダーの勝ちか…」


ハウザー「マジかよ…俺ってそんなにあっち向いてほいが弱かったのか…」


ギル坊「僕に負け越したことが頭抱えるほどショックなの!?」


グリ坊「いや、この成績ならギルサンダーが極端に弱いという線はなくなったとみて間違いない」


ハウザー「それって…」


グリ坊「お前がそんなに弱いわけではないということだ」


ハウザー「だよなーーー!!!そうだよ俺がそんな弱いわけないじゃんバカヤローめ!!ホント焦らせやがってコノコノっ!!!」パンパンパンパン


ギルサンダー「痛いからそんなに肩たたかないでよ!!」


グリ坊(相変わらず調子いいなぁハウザーは…)


>>20のミス  ハウザー ×  →  ハウ坊 ○


ギル坊「でもそうなるとメリオダスさんがものすごく強いことになるんだよね」


グリ坊「多分」


ハウ坊「もしかしたらあっち向いてほいの必勝法かなんか知ってるのかもな」


ギル坊「必勝法か…でもそうだとしたら僕は一生メリオダスさんには勝てないんじゃ!?」


グリ坊「安心しろギルサンダー。それならばこちらがとるべき道ははっきりしている!!」


ギル坊「そ…それはいったい!?」


ハウ坊「俺もけっこう気になってるぜ!!ギルに負けっぱなしは省に合わねぇよ!!!」










グリ坊「特訓あるのみだ」


一同「…………」


ギル坊・ハウ坊「……は…はあ…」


ギル坊「それ…さっきまでやってたことと変わらないよね?」


ハウ坊「だよな…」


グリ坊「とにかくあっち向いてほいをやり続けて必勝法を見つけ出すんだ」


ギル坊(ごり押しってやつだね)


ハウ坊(ごり押しってやつだな)


ギル坊「でもそれしかないか…」


ハウ坊「正直なところ、あっち向いてほいの必勝法なんて思いつきもしねぇがな…」


グリ坊「だから数をこなしてその先にある法則を探して必勝法を見つけ出す!!」


ギル坊「よーし!!!メリオダスさんが帰ってくるまでにあっち向いてほいの必勝法を探すぞーーー!!!」


ハウ坊・グリ坊「おー!!!」


――――――――――――――――――――――――――――――


ギル坊「じゃあ今日はこれで解散しよう!!明日もこの時間に!!!」


ハウ坊「おう!!」


グリ坊「任せろ」


ギル坊「今日は相談に乗ってくれてありがとう!!また明日ーーー!!!」


ハウ坊「おーい!!!後ろ見ながら走るんじゃねえよ!!!こけるぞーーー!!!」


ダイジョウブダイジョ…ウワーーー!!!


ゴロゴロゴロドガラシャーーーン!!!


ハウ坊「あーあーあーあー」


グリ坊「盛大にこけたな」


ハウ坊「ネガティブが治ってきたと思ったら今度はそそっかしくなってねえかあいつ」


グリ坊「不安でしょうがない」


ハウ坊「だよなー」


ハウ坊「そういやよ?」


グリ坊「ん?」


ハウ坊「今回の件、グリアモールのりのりだな。最初は俺と同じで嫌々って感じだったのに今じゃ率先して解決しようとしてるし」


グリ坊「いや…なんだかんだ話は面白いと思ったからな。あっち向いてほいの必勝法」


ハウ坊「確かに」


グリ坊「それにギルサンダーが頑張ってるならほっとけないしな」


ハウ坊「だな」


グリ坊「それにだ!!!もし本当に『七つの大罪』団長のメリオダスさんから鍛錬法を教われるならそれをギルサンダーから聞いて俺たちはより強い聖騎士になれると思うんだ!!」


ハウ坊「な…なるほど!!?強い聖騎士に!!!」


ハウ坊・グリ坊「……」カオミアアセ


ハウ坊「おおーーー!!!何か俄然やる気がわいてきたぞ!!!」


グリ坊「不思議と俺もテンションあがってきたぞ!!!」


ハウ坊「よっしゃーーーーー!!!明日からあっち向いてほいの特訓だーーー!!!」


グリ坊「絶対ギルサンダーをメリオダスさんに勝たせるぞーーー!!!」


ハウ坊・グリ坊「えい・えい・おーーーーー!!!!」


今日はここまでです。

七つの大罪SSってほとんど見ないから需要あるかすごく心配


更新します


――――――――――――――――――――――――――――――


ドレファス「最近グリアモールの帰りが遅いんだ」


ドレファス「前までは言いつけ通り夕暮れまでに帰ってきていたが今では夜遅くになって帰ってくる」


ドレファス「何をしているのかを聞いても『訓練』としか言ってくれなくてな…」


ドレファス「俺は心配なんだ…悪い遊びを覚えたのではないかと」


ドレファス「いや、俺は息子のことを信じているんだ」


ドレファス「しかしあの子はまだ子供、鍛錬ばかりでは他のことに興味をひかれても仕方がない。のかもしれない」


ドレファス「そう考えると強い聖騎士にするためと息子に厳しく接していたのが間違いだったのかとも考えるようになって…」


ドレファス「さらにはあれが悪かったのかとかこれが悪かったのかとか考え出すときりがない」


ドレファス「妻にも相談したがろくに相手してくれないし…」


ドレファス「どう思うヘンドリクセン?」


ヘンドリクセン「まさかとは思うが…それを言いにわざわざ朝方から私の家に来たのか?」


ドレファス「そうだ」


ヘンドリクセン「それ以外の用事は?」


ドレファス「ない」


ドレファス「話す相手がいなくて悶々としていたからな。つい来てしまった」


ヘンドリクセン「奥さんはどうした?」


ドレファス「昨日から『聖騎士・嫁の会』の集いで旅行に行ってるんだ。あと二日は戻らん」


ヘンドリクセン「何その会、すごく気になる…」


ドレファス「それに妻へ相談したところで帰ってくる答えはどうせ『過保護すぎー』が関の山さ」


ヘンドリクセン「私もその意見に同意だな。お前は少し気にしすぎているような気がするよ」


ドレファス「しかし…」


ヘンドリクセン「もう少しグリアモールを信頼してあげてもいいんじゃないか?」


ドレファス「うーむ…」


ヘンドリクセン「まあ、私には子供がいないからな…説得力に欠けるところはあるだろうが」


ドレファス「お前なら顔もいいし女なんぞあっちから寄ってくるだろ。そろそろ身を固めてみたらどうだ?子供もいいもんだぞ」


ヘンドリクセン「私はまだ一人で研究をしている方が楽しいんだ。身を固めるのはもうしばらく先かな?」


ヘンドリクセン「っと…コーヒーできたな…飲むか?」


ドレファス「すまない。頼む」


ヘンドリクセン「はい、コーヒー」カチャ


ドレファス「ああ」


ヘンドリクセン「それとトースターね」カチャ


トースターらしきもの「」ゴポッボコボコ


ドレファス「いやちょっと待て」


ドレファス「俺はトースターなど頼んでないぞ」


ヘンドリクセン「お腹すいてると思ったんだが…ん?どうした?」


ドレファス「お前とはけっこう長い付き合いだ。だからお前の作る料理がいつも炭みたいになるのは知ってる。でもその炭の上に載ってるヘドロみたいなのは初めて見るぞ…一体なんだ…」


ヘンドリクセン「よく気付いたな!!今日のトースターにはスクランブルエッグを載せてみたんだ」


ドレファス「スクランブルエッグ…って卵のことだよな…」


ヘンドリクセン「そうに決まってるだろ」


ドレファス「……お前『腐蝕≪アシッド≫』使ってないよな?」


ヘンドリクセン「まさか。使うわけないだろ」


ドレファス(むしろどうやったら『腐蝕≪アシッド≫』使わないでこれを作れるんだ…?)


ヘンドリクセン「でも今回は少し失敗してしまったんだよな」


ドレファス「ああ……さすがにこれは失ぱ…」


ヘンドリクセン「火が弱すぎたせいでスクランブルエッグが半熟になってしまった」


ドレファス「」


ヘンドリクセン「半熟も悪くはないがもっとこう強火で一気にいったしっかりとした形のスクランブルエッグが作りたかったんだが…」


ドレファス「」


ドレファス(趣味を否定するつもりはないがこのままだと料理で死人が出かねん…。何とかあいつを傷つけずに間違いに気付かせる方法はないだろうか…)ウーン


ヘンドリクセン(趣味で料理を初めて早二年…。最近納得できるものができず壁にぶつかっている感じがするな。そろそろ独学も限界と言うことか…)ウーン



ドレファス・ヘンドリクセン(今度、料理教室にでも行こうかな…)


ドレファス「グリアモールの方に話をもどそう」ズズー


ヘンドリクセン「遅くに帰ってくるって話だよな」


ドレファス「ああ…。兄にも相談してみたらどうやらギルサンダーも帰りが遅くなっているらしい。話を聞いた限りグリアモールの帰りが遅くなったタイミングと一致したから多分二人は一緒だ」


ヘンドリクセン「その二人が一緒ならハウザーもいるだろうな」


ドレファス「もしまた何かイタズラでも考えているなら親として止めねばいけないだろう…。そこで一つ策を考えた」


ヘンドリクセン「策?」


ドレファス「そうだ。お前にも協力してもらいたい」


ヘンドリクセン「それは構わないが…一体どうするつもりだ?」


ドレファス「それはな…」ニヤッ


――――――――――――――――――――――――――――――

先生「今日はこれまで!!あとは各自で反復し鍛錬を怠らないように!!」


ギル坊・グリ坊「ありがとうございました!!」


ガヤガヤ…


ギル坊「じゃあハウザーと合流してから今日もやっていくぞ」タッタッタッ


グリ坊「ああ、今日こそ何かつかめるといいんだが」タッタッタッ


……


???「行ったか?」


???「みたいだな」


???「よし、俺たちも行くぞ…」


ヘンドリクセン「しかしまあ…何だ…」


ヘンドリクセン「『尾行』がとっておきの策って聖騎士としてどうなのさ?」


ドレファス「声が大きいぞヘンドリクセン!!気づかれたらどうするんだ!!!」シー


ヘンドリクセン「今日の夕食をかけてもいい。絶対にお前の方が声が大きい」


ドレファス「これしか方法が思いつかなかったんだ。正面から切り崩せない相手は横から攻めていくのが常套手段だろ」


ヘンドリクセン「私なら搦め手で攻める。よくも悪くもお前は愚直すぎるよ」


ドレファス「それが俺のやり方さ。変えるつもりは……止まってくれ」スッ


ヘンドリクセン(追いついたか…)


ハウ坊「おせーぞお前ら!!!」


グリ坊「すまん。思ったより授業が長引いてな」


ギル坊「本当にごめん!!」


ハウ坊「そんじゃまぁ、全員集まったところで始めっか」


グリ坊「昨日はハウザーとギルサンダーからだったから今日は俺とギルサンダーからだな」


ギル坊「時間も限られてるんだ!!今日も頑張るぞ!!!」


ギル坊・ハウ坊・グリ坊「おおーーー!!!」


ヘンドリクセン(グリアモールに加えてギルサンダーとハウザーか…。まあこの三人はいつも一緒だからここにいても不思議ではないな)


ドレファス「時間が限られているというのが気になるが…まさかまた妙なことをたくらんでるんじゃないか?」


ヘンドリクセン「私には三人でこれから訓練するように見えるが…」


ドレファス「そ…そうだが…」


ヘンドリクセン(まあ隠れてやっているのだからただの訓練ではないと思うが…)


グリ坊「じゃあ行くぞギルサンダー!!!」


ギル坊「来いグリアモール!!!」


ヘンドリクセン「どうする?」


ドレファス「どうやらお前の言うように訓練らしいな。とりあえずは様子を見よう。危険があるようなら即刻中止させる」


ドレファス「だからいつでも割り込めるように準備はしておいてくれ」


ヘンドリクセン「分かった」


ハウ坊「はじめーーー!!!!!」


ヘンドリクセン(さて…剣も持たずにどうする気だ…)


ギル坊「……」ゴゴゴゴゴゴゴ!!!


グリ坊「……」ゴゴゴゴゴゴゴ!!!


ドレファス・ヘンドリクセン「……」


ギル坊・グリ坊「っ!!!」バッ!!!


ドレファス(動くっ!!)










ギル坊・グリ坊「最初はグー!!!じゃんけんほい!!!」


ヘンドリクセン(……………………ん?)


ギル坊「あっち向いてほい!!!」ミギサシ


グリ坊「へやっ!!」ウエムキ


ギル坊・グリ坊「……」


グリ坊「ふー。危うく右を向くところだったぞ…」ヘヘッ


ギル坊「やるなグリアモール…」フッ


ドレファス(んんん???)


サイショハグージャンケンホイ!!アイコデショ!!アイコデショ!!アッチムイテホイ!!!グワーマケターーーー!!!ツギハオレダーーー


ドレファス「あっち向いてほいしてるな…」


ヘンドリクセン「そうだな…」


ドレファス「…とりあえず危ないことはしてないみたいだからまあいいのか?」


ヘンドリクセン「これはこれで問題だと思うが…」


ドレファス「もう少し様子を見るか…」


ヘンドリクセン「ああ…」


― 三十分後 ―


サイショハグージャンケンホイ!!アッチムイテホイ!!!ナンデマケルンダーキョウハチョウシガワルイダケナンダ!!ミグルシイゾハウザー!!!


ドレファス「さっきからずっとあっち向いてほいばかりだ…」


ヘンドリクセン「なあ…そろそろ俺たちが出て行って事情を聴いてもよくないか?」


ドレファス「うむ…」


ヘンドリクセン「あんな真剣にあっち向いてほいしてるのは絶対に何か意味があるはずだ…。それを明らかにするのも目的の一つじゃないのか?」


ドレファス「確かにそうだな」


ヘンドリクセン「それじゃ…」


ドレファス「もう少し様子を見よう」


ヘンドリクセン「え」


― 一時間後 ―


サイショハグージャンケンホイ!!イマアトダシシタダロ!!シテネーヨオマエガスコシダスノオソカッタダケダロ!!!オマエラケンカスンナヨ!!


ヘンドリクセン「そろそろよくないか…。もう一時間は経ってるぞ」


ドレファス「そんなに経つのか…」


ヘンドリクセン「ここで私たちがただ見てるのは意味がない気がするんだ…やはり何でこんなことをしているのか理由をあの子たちから直接聞くべきだ」


ドレファス「その通りだ。このままでは埒が明かない」


ヘンドリクセン「よし。じゃあ…」


ドレファス「もう少し様子を見よう」


ヘンドリクセン「おい」


― 二時間後 ―


グリ坊「慣れてきたとはいえ千回ずつのあっち向いてほいはきつい…」


ギル坊「疲れた…」


ハウ坊「今日はこの辺にしておくか…」


ヘンドリクセン「で…二時間経過したわけだが何か私に言うことはないか…」


ドレファス「結局こんな遅い時間になってしまったぞ…」


ヘンドリクセン「お前が様子見るって言い続けた結果じゃないか!!」


ドレファス「いや、だって…」


ヘンドリクセン「お前バカだろ!!バカなんだろ!!!」


ドレファス「バッ…!!バカってひどくないか…」


ヘンドリクセン「じゃあスカポンタンだ!!結局二時間何もせずに傍観するっておかしいだろ!!」


ドレファス「ちょっと落ち着け…。声が…というかキャラが…」


ヘンドリクセン「金剛≪ダイヤモンド≫級の聖騎士二人が子供を尾行して壁の端から二時間凝視とか頭おかしいんじゃないか!!?ええ!!?おかしくないのかぁぁぁ!!???」


ドレファス「聞こえるって!!!子供たちに聞こえるって!!!」


ギル坊「あれ?ドレファス叔父さんにヘンドリクセンさんだ!!こんにちは!!!」ヒョコ


ヘンドリクセン「あっ」


ドレファス「だから言ったのに…」


ハウ坊「うおおお!!!ドレファス様にヘンドリクセン様じゃないですか!!!」ヒョコ


グリ坊「父さんがいるのか!!?何でこんなところに!!?」ヒョコ


ドレファス「それはだな…その…別にお前の跡を追っていたとかでは断じてなくだな……」ダラダラ


ヘンドリクセン「はぁー…私から説明するよ。とりあえず汗がすごいから拭け。ほらハンカチ」


ドレファス「すまん」フキフキ


ヘンドリクセン「実はな…」


――――――――――――――――――――――――――――――


ヘンドリクセン「…と私からの説明はこんなところか」


ドレファス「改めて説明されると何してるんだろうな俺…」ズーン


グリ坊「父さん!!」


ドレファス「はい!!!」


グリ坊「申し訳ありません!!!あまり人に言いたくはないことだったので言いませんでしたが…まさか父さんがそこまで悩んでいらしていたなんてつゆほども思っていませんでした!!」


ドレファス「グリアモール…」


グリ坊「私は騎士になるための鍛錬に飽きたことなど一度もありません!!!すべては強い聖騎士になるために!!父さんのような誇り高き騎士になるために私は精進しているのです!!」


ドレファス「グリアモ~ル~~~」ヒッック


ドレファス「お前は…ヒック…こんな父を、息子を疑った父を許してくれるか…」ヒックヒック


グリ坊「もちろんです!!」


ドレファス「グリアモ~ル~~~~~~~!!!!!」ガシッ


グリ坊「父さ~~~~~~~ん!!!!!」ガシッ


ヘンドリクセン(一件落着…ではないよな。むしろ何も解決してないし…)


ハウ坊(お前…年がら年中ベロニカのために強くなるとか言ってるだろうが…)


ギル坊「あ!!蝶が飛んでる!!見て!!すごく綺麗な蝶が飛んでるよ!!!」


ヘンドリクセン「よし!!今度は君たちに説明してもらおうか」パンパン!!


ギル坊「ああ!!蝶があっちの方に行っちゃった!!!」ガーン!!


ヘンドリクセン「…聞いてるかい?」


ギル坊「す!?スイマセン!!!聞いてませんでした!!!」


ヘンドリクセン「ギルサンダー、ハウザー、グリアモール。君たち三人が何であっち向いてほいを延々とやっているかについて聞かせてもらいたい。何だってあんなことをしていたんだ?」


ギル坊「そ…それは僕から説明させてもらいます」


――――――――――――――――――――――――――――――

ギル坊「…と言うわけで」


ドレファス「そうか…あのメリオダスさんがそんなことを…」


ヘンドリクセン「ふうむ…」


ヘンドリクセン(メリオダス…、鍛錬法…、あっち向いてほい…)


ヘンドリクセン「……」


ヘンドリクセン(なるほど…。そういうことか…)


ヘンドリクセン「あの人らしいと言えばあの人らしいな…」ボソッ


ドレファス「何か言ったか?」


ヘンドリクセン「いや、何でもない」


ヘンドリクセン(さて、どうしたものか…)


ギル坊「だからあっち向いてほいをやり続けていれば何か勝つためのヒントが得られると思って…こんな時間までやっていたんです」


ドレファス「そうだったのか…」


ギル坊「だからドレファス叔父さん、ヘンドリクセンさん!!!二人は僕のわがままに付き合っていただけなんです!!悪いのは全部僕なんです!!!本当にごめんなさい!!!お仕置きなら全部僕が…」


ハウ坊「おい!!何言ってるんだ!!」


グリ坊「これは三人で納得済みの話だっただろう!!!」


ギル坊「でも…」


ドレファス「確かに親に何も話さずこんな遅くまで外にいるのは怒られて当然のことだ。お前たちはまだ子供なのだから」


ギル坊「はい…」


ドレファス「だから明日からは私の家でやりなさい」


ギル坊「はい…」


ギル坊「……」


ギル坊「はい!!?」


ハウ坊「マジですか!!?」


グリ坊「いいのか父さん!!?」


ドレファス「外でやるよりずっといいだろう。兄の方にも私から適当な理由を伝えておく」


ギル坊「ドレファス叔父さん…っ!!!」


ハウ坊「さすがドレファス様です!!器が大きいぜ!!!」


グリ坊「これで気兼ねなくあっち向いてほいの特訓ができるようになったな」


ギル坊「うん!!メリオダスさんが帰ってくるまであと四日!!これなら…」


ヘンドリクセン「無理だな」


ギル坊「え…」


ヘンドリクセン「水を差すようだが…」


ヘンドリクセン「四日あろうが一か月あろうが、このままではメリオダスさんには勝てない。一生な」


ギル坊「そ…そんな……。なんで…」


今日はここまでです。

寝ます。


卒論からの逃走。悲しみの投稿


ヘンドリクセン「さらに言えばメリオダスさんはおろか私にも勝てないだろう!!!」


ギル坊「えーー!!?」


ヘンドリクセン「さらにさらに!!!あろうことかドレファスにすら勝てない!!!!!」


ドレファス「ちょっと待ってくれ!!あろうことかってどういう…」


ギル坊「ドレファス叔父さんは弱いから勝てる」


ドレファス「えーーーーー!!???」


ギル坊「とりあえずドレファス叔父さんのことは置いておいて…どうしてですか!!?僕は一生メリオダスさんにあっち向いてほいで勝つことはできないんですか?」


ハウ坊「俺たちの努力は全部意味なかったってことですか!?」


ヘンドリクセン「そうとは言っていないだろ。ちゃんと説明してあげるから落ち着け。『このままでは』だ」


グリ坊「しかし…一体どうすれば」


ヘンドリクセン「いつもやっている騎士の訓練と考え方は同じだ。ただやみくもに剣を振っても上達はしない。大切なのは意識と目的だ」


ヘンドリクセン「訓練を例とするなら剣捌きの上達が目的で、そのために習った腕の振り方や足の位置を意識して振る。これらがセットで初めて上達への努力と言えるんだ」


ヘンドリクセン「三人は向かうべき目的を探すために努力していたわけだから間違いではないのかな…?」


ギル坊「…ドユコト???」


ヘンドリクセン「この場合はあっち向いてほいで勝つための方法会得が目的でその方法を使いこなすために必要なポイントを意識することになるな」


ハウ坊「ますますわからん」


グリ坊「言わんとしていることは分かりますが…その手段を知りたいんです」


ギル坊「!!??!???!!!??」シュー


ドレファス「!?!!!?!?!?!????!?」ボン!!!


ヘンドリクセン「あっち向いてほいの必勝法…。必勝…とまではいかないが勝つ確率が大幅に上がる方法ならばある」


ギル坊「本当ですか!!?」


ヘンドリクセン「順序立てて考えていこう。唐突だがギルサンダー。あっち向いてほいにおける強者とはどんな人間のことを言うと思う?」


ギル坊「え?え~と…?どういう人が強い人なんだ?」


グリ坊「じゃんけんと指差しが強い人ですよね」


ヘンドリクセン「その通り。あっち向いてほいで勝つためにはじゃんけんと指差しの二つで勝たなくてはいけない。この二つで勝って初めて勝利なんだ」


ヘンドリクセン「しかしこの二つ…勝つために必要不可欠な能力は同じだとしたらどうする?」


ハウ坊「まじですか!!?それっていったい…」


ヘンドリクセン「『洞察力』だ」


ギル坊「洞察力っ!!!何で???」


ドレファス「こういったゲームの類なら反射神経とかがいい方が有利なのではないのか?」


ヘンドリクセン「もちろん反射神経もあるに越したことはない。だがじゃんけんだけならまだしも指差しは指と首が動くのはほぼ同時。見てから動いて当てる力ではなく、見る前に動いて当てる力、それも確実なものが必要なんだ。特定の動作を起こしたら次に何をするのかなどの癖を見つけるのにも洞察力は一役買うしな」


グリ坊「ルール的にも一度向いた方向を変えることはできませんからね」


ギル坊「そんな風に考えたことなかったな…」


ヘンドリクセン「それが意識への第一歩だ」


ヘンドリクセン「次に何を意識するかだな。ギルサンダー、私と一回あっち向いてほいをしよう。ゆっくりと」


ギル坊「分かりました!!」


ヘンドリクセン「まずはじゃんけん。コツは最初はグーで相手に拳を作らせるところだ」


ギル坊「そこからなんですか?」


ヘンドリクセン「そうすると指の変化が見やすくなって次の手が読みやすくなる」


ヘンドリクセン「行くぞ。最…初…はグー!!」


ギル坊「じゃん…けん…」


ヘンドリクセン「ここだ!!この手が振り下ろされる瞬間に見極めろ!!肘や腕、特に指を見てくれ!!!」


ヘンドリクセン「人差し指と中指だけが動くならチョキ。全部動くならパー。素振りがなければグーだ!!!」


ヘンドリクセン・ギル坊「ほい!!」


ヘンドリクセン パー


ギル坊 チョキ


ハウ坊・グリ坊・ドレファス「おおおお!!」


ギル坊「おおおおおおおおおお!!!!!」


ヘンドリクセン「次は指差しだ!!こっちの方が見極めは難しいぞ!!」


ギル坊「あっち向いて…」


ヘンドリクセン「意識しろ!!!肩に!!眼に!!首に!!!表情すら捉えきれ!!些細な筋肉の動きを見逃さないように!!!」


ギル坊(ふぬぬぬぬぬ!!!つ…疲れる!!)


ギル坊「ほい!!!」ウエサシ


ヘンドリクセン「はっ!!」ミギムキ


ギル坊「ぎゃああああああああ!!!!!」ヘタコイター!!


ヘンドリクセン「ほら!!落ち込むな!!!立って立って!!!」パンパン!!


ギル坊「しんどいです…こんなに疲れるなんて…」


ヘンドリクセン「…落ち込まないこともあっち向いてほいの重要なポイントなんだぞ」


ギル坊「そこまでぇ!!?」


ヘンドリクセン「じゃんけんの場合は出した瞬間にほとんど勝負が決まると言っていい。しかしあっち向いてほいならじゃんけんに負けても指差しの所で回避のチャンスがあるし、そこで上手く回避ができればまたじゃんけんにつながっていく」


ヘンドリクセン「こうして勝敗が決まるまでの中で小さな勝負が繰り返されていくんだ。ここで精神的に崩れれば勝てるものも勝てない」


ギル坊「でも僕そういうのは苦手…」


ヘンドリクセン「ならせめて気持ちをすぐに立て直せるようしろ。相手はメリオダスさん、聖騎士の中でも随一の精神力を誇る人だ」







ヘンドリクセン「勝ちたいのだろう?」


ギル坊「…うん!!」


ハウ坊「よーし!!やることは大体分かったぜ!!!」


グリ坊「これなら俺達でも練習できるな」


ハウ坊「ああ!!さっそく俺とやろうぜギル!!!」


ギル坊「分かった!!!」


グリ坊「次は俺とな」


ギル坊「もちろん!!!」


ワイワイガヤガヤ


ヘンドリクセン(とりあえずこんなもので大丈夫だろう…)


ドレファス「しかし…」


ヘンドリクセン「ん?」


ドレファス「お前があっち向いてほいについてこんなに詳しいなんて知らなかった…。いや、そもそもあんなふうに真剣に考えたことはなかったな…」


ヘンドリクセン「普通はそうだろうな」


ドレファス「お前は何かきっかけでもあったのか?」


ヘンドリクセン「きっかけか…」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『こんなことして何になるんですか?僕はあなたの強さの秘密を聞いたはずなんですが…』


『だから答えてるだろ?』


『延々とあっち向いてほいをしているだけで何もないじゃないですか』


『ん~~~。まだまだ甘いな…。俺のやってることに気が付けないとは』


『そんなこと言われても…』


『でもまあ俺は答えの一つを出してるので、それをどうとらえるかはお前次第だ』


『……』


『俺から勝ちを奪うことができれば気づけるかもしれないな』


『じゃあ…私が勝ったらしっかり説明してもらいますからね!!』


『もちろん!!勝てたらな』ニカッ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ヘンドリクセン「いや…特には思いつかないな」


ドレファス「???」


ヘンドリクセン「邪魔をしては悪いから俺たちは先に帰ろう。お前も仕事残ってるだろ?仕事を終わらせてからじゃないとあの子たちを家に上げるのは難しいぞ」


ドレファス「それもそうだな」


グリ坊「父さんたちは帰るんですか?」


ドレファス「ああ、もう少し遅くなってきたらうちに来なさい」


ハウ坊「わっかりました!!!」


ギル坊「あ!!ヘンドリクセンさん!!!」


ヘンドリクセン「何だ?」


ギル坊「ヘンドリクセンさん、今日はありがとうございました!!!ヘンドリクセンさんに言われたアドバイスを守って練習します!!!」


ヘンドリクセン「ああ、期待してるよ」


ヘンドリクセン「それと…」


ヘンドリクセン「…ギルサンダー、一つアドバイスだ」


ギル坊「何ですか?」


ヘンドリクセン「…あの人はああ見えてかなりのひねくれ者だ。気をつけなさい」フッ


ギル坊「そうなんですか?」


ヘンドリクセン「お前の年ではまだわからんだろうが相当なものだ。心の片隅にでも置いておいてくれ」


ギル坊「分かりました!!」


――――――――――――――――――――――――――――――


ギル坊「さようならーーーーー!!!!!」ノシ


ハウ坊「また何かあったらお願いしまーーーす!!!」ノシ


グリ坊「遅くならないうちになるべく早く帰りまーーーーーす!!!」ノシ



ドレファス「必ずだぞーーーーー!!!」ノシ


――――――――――――――――――――――――――――――


ドレファス「さてと…さっさとやることを終わらせてあの子たちを迎える準備でもするか」


ヘンドリクセン「そうだな。あの子たちも頑張ってるから俺たちでサポートしてやらないと」


ヘンドリクセン「そんなわけでドレファス。ちょっと買い物に付き合ってくれないか?」


ドレファス「買い物?」





















ヘンドリクセン「頑張ってるあの子たちのためにもパンケーキの一つでも作ってあげようと思ってな」ニコッ


ドレファス「え」




















ヘンドリクセン「今日はぜいたくに色々トッピングを合わせた、舌もとろけるパンケーキを目指して作ろう!!」


ドレファス(舌も…融解ける…)ザワッ!!


ヘンドリクセン「そんなわけで買い出しに行くぞ!!まずは魚屋からだ!!!」


ドレファス「待て!!落ち着け!!!何でパンケーキを作るのに魚を買いに行くんだ!!?」


ヘンドリクセン「~~~♪」


ドレファス「話を聞いてくれ!!!なんで魚屋なんだ!!?」


ドレファス「何でそうなるんだーーーーーーーーーーー!!???」


おまけ 2レス劇場「ドレファス宅にて」



ヘンドリクセン「……」ミギチラッ


グリ坊「」


ハウ坊「」


ヘンドリクセン「……」ヒダリチラッ


ギル坊「」


ドレファス「」


ヘンドリクセン「どうしてこうなった…」


ヘンドリクセン「みんな泡を吹きながら白目を向くとは…」



ヘンドリクセン「今日のパンケーキは気絶するほど上手くできてたのか!!?」アマリイイデキデハナイトオモッテイタンダガ


パンケーキだったはずのもの「」ヌチャベチャゴッポゥ


ヘンドリクセン「これからもさらに精進しよう…」モグモグ


今日はここまで。寝ます


本編もアニメもゴウセル目立ってきているのでテンションあがっています


遅くなりましたが更新します


こうしてヘンドリクセンさんとドレファスさんの助けも借りながら…


着実にあっち向いてほいの技術が上達していくギル…


子供ながらさまざま苦労を重ねながら…


あっという間に4日は過ぎました…


ザッ… ザッ… ザッ… ザッ…


メリオダス「…やっぱり待ってると思ってたぜ。ギル坊」


ギル坊「朝からずっと待ってました…」


ギル坊「他の『七つの大罪』の人たちは?」


メリオダス「まだ帰ってくる途中だ。ゆっくり帰ってきてるからこっちにつくのはもう少し遅れると思うぞ?とりあえず俺はマーリンに頼んではひとっ飛びしてきたけど」オイッチニ!!サンシ!!


ギル坊「別に急がなくてもよかったのに」


メリオダス「俺が勝手に急いだんだ。約束破るわけにもいかねぇしな」ニーニー!!サンシ!!


メリオダス「よし!!準備運動終わり!!!」


メリオダス「じゃあさっそく始めるか!!ちゃんと練習してきたか?」ニシシ


ギル坊「もちろん!!この一週間の修行の成果、しっかり見届けてもらいます!!」


ギル坊「そのうえで勝ちます!!」


そう言い切った彼の顔には自信と決意があふれていました…


やさしい無垢な心がそのまま顔へと表れていたかのような、普段の天使と間違わんばかりのギルとは違い…


その瞳は朱く燃え、鋭く目の前の英雄を見定めています…


まるで…そう、まるで騎士のような精悍さを漂わせている彼は男らしく美しい…


今、自分の英雄との、誇りをかけた戦いが…
























ビビアン「始まるのであった…っと」


ビビアン「ああ…私のかわいいギル!!愛しいギル!!ぺろぺろしちゃいたい!!!」ハァハァハァハァ


ビビアン「恥ずかしくてこんな草むらの影からしか見守れないけど…」


ビビアン「私はあなたの戦いが終わるまでずっとあなたのそばに…」


マーリン「ビビアン。私が帰って来たので修行を再開するぞ」


ビビアン「うるせえ。空気読めよ年増」


マーリン「強制転移!!!」ユビパッチン!!


ビビアン「いやああああああああああああああああ!!!ギルゥゥゥゥゥゥゥ!!!私のギ…」ヒュン


マーリン「まったく…今日の修業はいつもより厳しくやるか…」


マーリン「期待してるぞギルサンダー。何せこの私はおろか『七つの大罪』で団長にあっち向いてほいで勝った者は今だいないのだからな」クスッ


マーリン「じゃあな」ヒュン


メリオダス「そんで?勝負の方法はどうする?3回勝負でも5回勝負でもいいぞ?何なら10回勝負とか…」


ギル坊「1回勝負で行きましょう!!」ニヤッ!!


メリオダス「なぬ!?」


ギル坊「……」


メリオダス「ほほう…ずいぶんと自信満々じゃねぇか」


ギル坊「1週間前とは違うんです…。今のぼくは1人じゃない!!ぼくが今ここに居れるのは他の人がぼくに力を貸してくれたからだ!!!」


ギル坊(ハウザー…)


ギル坊(グリアモール…)


ギル坊(ヘンドリクセンさん…)


ギル坊(……)









ギル坊(…………)









ギル坊(あとドレファス叔父さん)


グリ坊「…もちろん受けてくれますよね」


メリオダス「もちろん。いい顔してるぞギル坊」


メリオダス(な~んか作戦ありみたいだな…)


メリオダス(さてさてさ~て、一体どうするつもりなんだ?ギル坊?)


ギル坊(コツを教えてもらったけど…メリオダスさんと闘うには僕の実力はまだまだ足りない…)


ギル坊(当然だ。相手は伝説とまで呼ばれる『七つの大罪』団長で、僕は聖騎士見習いにも劣る子供…)


ギル坊(だからこそ!!メリオダスさんが気を抜いている状態の今!!まだ僕の力量が測れていない今こそがチャンス!!!)


ギル坊(ぼろが出る前に勢いで押し切る!!!)


ギル坊(作戦はずばり!!油断してるメリオダスさんへの奇襲!!!)ズドーーン!!


ギル坊(…騎士っぽくないのが欠点だけど!!)


ギル坊(勝負は最初の1回目…。そこに全てをかける!!!)


メリオダス「……」


ギル坊「……」


コソコソ


ハウ坊「どうだ…?」


グリ坊「…2人とも黙って向かい合っているだけだ…」


ハウ坊「何やってんだギル…」


ドレファス「お互い、呼吸を整えて集中力を高めているんだ」


ヘンドリクセン「さあ…始まるぞ…」






メリオダス「それじゃあ…」


ギル坊「いざ勝負!!」


メリオダス・ギル坊「「最初はグー!!!」」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


メリオダス「じゃん」



ギル坊(メリオダスさんは何を出す!!?見ろ見ろ見ろ見ろ!!!)



メリオダス「けん」



ギル坊(みろみろみろみろみろみろみろ!!!!!)



メリオダス「ほ」



ピクッ…



ギル坊(薬指がほんの少し動いた!!なら!!!)



メリオダス「い!!!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


メリオダス・ギル坊「「じゃんけんほい!!!」」


メリオダス パー


ギル坊 チョキ


メリオダス「あり?」


ギル坊「……」


ギル坊(じゃんけん勝ったああああああああああああああ!!!!!)ウォォォォ!!?


ギル坊「あ、あっち向いて!!」


メリオダス「おっ!?」


ギル坊(第一関門突破!!ここで決める!!!)


ギル坊(集中!!!)バッ!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


メリオダス「……」


ギル坊(必ず…どこかに…動きがあるはず!!)


メリオダス「……」


ギル坊(捉えるんだ…絶対に見逃すな…)


メリオダス「……」


ギル坊(……)


メリオダス「……」


ギル坊(……)


メリオダス「……」


ギル坊(そろそろ…動くはずなのに…)


メリオダス「……」


ギル坊(まだ…動かない…)


メリオダス「……」


ギル坊(動く…はずな…のに…)


メリオダス「……」


ギル坊(これ…じゃ…こっち…が…待ち…きれ…ない…)


メリオダス「……」


ギル坊(もう…少し…なの…に…)


メリオダス「……」


ギル坊(だめだ…もう待てな…)


メリオダス「……」ピクッ


ギル坊(!!?)


ギル坊(来た!!首の右側が少し動いた!!!)


メリオダス「……」クイ


ギル坊(右に向く!!)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ギル坊(これで…)


ギル坊(僕の勝ちだ!!!)


ギル坊「ほい!!!」


メリオダス「……」




























ギル坊「……………………何で…?」








ギル坊「……何で!?」ヒダリサシ


メリオダス「…おしかったなギル坊」ヒダリムキ







ギル坊(どうして…間違いなくメリオダスさんは右へ向こうとしていたはずなのに…)


ギル坊(どうして左を向いているんだ?何で右じゃないんだ?)


ギル坊(何で!?どうして!!?)


ヘンドリクセン(ギルサンダーの粘りを逆手にとられたか!?)


ヘンドリクセン(まずメリオダスさんは隙を見せず、向く方向のヒントを一切与えなかった…)


ヘンドリクセン(ここでギルサンダーはまず粘る…。このチャンスを確実にとるために…)


ヘンドリクセン(だがギルサンダーはまだ見習い程度の力しかない…、そこまで長く待つことはできなかった…)


ヘンドリクセン(メリオダスさんもおそらく見抜いていただろう…)


ヘンドリクセン(その上でワザと右に向くそぶりを見せた…)


ヘンドリクセン(余裕もなくなっていたギルサンダーは当然、反応して左を差すだろうが、メリオダスさんが右を向くそぶりをしたのは一瞬…すぐに切り返して左を向いた!!!)


ヘンドリクセン「ギルサンダーの狙いも悪くなかったが…」




メリオダス「最初はグー!!!」


ギル坊「……くっ!!」




ハウ坊「ギル!!」


グリアモール「ギルサンダー!!!」


ドレファス(立て直せギルサンダー!!)


ドレファス(あっち向いてほいは精神力の勝負でもあるとヘンドリクセンは言っていた!!ならば、ここで踏みとどまればまたチャンスは巡ってくるはず…)


一度は掴み取ったと思えた勝利…


ここで踏みとどまるにはまだ彼は幼かった…




メリオダス「じゃんけんほい!!」


メリオダス グー


ギル坊 チョキ




ドレファスの思いもむなしく…


最初の勝負に全てをかけた少年は…




メリオダス「あっち向いてほい!!」ウエサシ


ギル坊「ふん!!」ウエムキ




敗北を喫した…


今日はここまでです。


2月頭まで更新はできそうもないのでそこのところご了承ください。


ようやく更新です


メリオダス「ふう…」


ギル坊「うう…」ガクッ!!


ギル坊(やっぱり…この人には勝てないのか…)


ハウ坊「ギル!!」


グリ坊「ギルサンダー!!」


ギル坊「ハウザー…グリアモール…。なんでここに…」


ハウ坊「心配してたからこっそり見てたんだよ!!」


ギル坊「そっかぁ…」


ギル坊「二人とも…ごめんね」


グリ坊「ど、どうしたんだ急に?」


ギル坊「ごめんね…二人にはずっと手伝ってもらったのに…」グスッ…


ギル坊「僕は…僕は…何もできなかった…」グスグスッ…


ハウ坊「そんなことないぜギル!!」


グリ坊「ああ!!いい勝負だった!!!」


ギル坊「でも…僕…うっ」


ギル坊「うっ…うぇ……うええええええええええええええん!!!」


ナクナヨオマエ!!ダッテーーーーー!!!


ドレファス「……」コソッ


ドレファス(ここで俺が出ていくのは野暮と言うものだな…)


ドレファス(ギルサンダー、今のうちに泣いておくといい…)


ドレファス(これからお前は成長し、立派な聖騎士になるための『道』を歩き続ける…)


ドレファス(その道を歩く中で辛いこと、苦しいこと、すべてを投げ出してしまいたいとさえ思うこともあるだろう…)


ドレファス(やさしいお前のことだ…辛さを拾うのも人一倍だろうな…)


ドレファス(だが…聖騎士たる者はそのような苦難でこそ歯を食いしばり立ち向かわなくてはいけない…)


ドレファス(守るべき国のため…守るべき王のため…守るべき民のため…)


ドレファス(そして、守るべき『己の信念』のために…)


ドレファス(お前には頼れる仲間がいる…。しかし、己にとって、本当の苦難と言うものは結局は己でしか解決することはできないんだ…)


ドレファス(手を取り合うことも大事だが、仲間に甘えるな…)


ドレファス(一人で立つんだ…立たねばならぬのだ!!大事なもののために…)


ドレファス(だから今のうちに泣いておけ。本当の苦難に身を裂かれぬよう…)


ドレファス(男は泣いて強くなる…)


ドレファス(だから頑張れギルサンダー)


ドレファス(俺は影ながら応援しているぞ…)


メリオダス「にししし…」


メリオダス「で?まだ隠れてるつもりなのか?」


ヘンドリクセン「……さすが」ガサッ


メリオダス「ギル坊の強さが前とは比べ物にならないほど上がってると思ったらヘンドリクセン、お前が入れ知恵してたな?」


ヘンドリクセン「そうしないとフェアじゃないと思いまして」


ヘンドリクセン「わずか十数秒の勝負ではあったが濃密な勝負だったと感じました」


ヘンドリクセン「一週間でこれなら上々だと思いませんか?メリオダス殿」


メリオダス「あやうく一杯食わされるところだったぜ。十年前の意趣返しにしては陰湿じゃないか?」


ヘンドリクセン「その件は関係ないですよ。ギルサンダーが困ってて、僕がそれを助けた。それだけの話です」


メリオダス「にゃろめぇ…」


ギル坊「うえええええええええ!!!」


グリ坊「ほら、そろそろ泣き止め」


ギル坊「ひええええええええええええええええ!!?」


ハウ坊「いいかげんに泣き止め!!」ガチコーン!!


ギル坊「ぎゃん!!?」


ギル坊「痛い!!」


ハウ坊「おめえが泣き止まねえからだ!!!」


ハウ坊「う~~~~」スリスリ


メリオダス「お~泣き止んだか~~?」


ヘンドリクセン「もう平気そうだな」


ドレファス「ギルサンダ~~~~~!!!」


ギル坊「メリオダスさん!!ヘンドリクセンさんにドレファス叔父さんも!!」


ドレファス「ギルサンダ~~~。お前は頑張ったぞ~!!!」ダキッ!!


ギル坊「わっ!!ドレファス叔父さん!!!やめてよ恥ずかしい!!!」


ドレファス「す、すまん。ついな」


ヘンドリクセン「いい年こいてるオッサンがみっともないぞドレファス…」


ドレファス「みっともないは言いすぎじゃ…」


ギル坊「みっともない」


グリ坊「みっともない」ハァ…


ハウ坊「み…みっともないっす」


メリオダス「みっともない(笑)」


ドレファス「がはっ!!?」


ハハハハハハハハハ!!!


メリオダス「でも…本当にお前はよくやったよ。俺も一瞬ひやっとしたぜ」


ギル坊「…本当ですか?」ジー


メリオダス「何でそんな疑いの目で俺を見てるんだ?」


ギル坊「だってそんな感じに見えなかったし…」ムスー


メリオダス「ほ~う。俺の言葉を疑うのか?」


ギル坊「むす~~~~」ジー


メリオダス「あ~あ、せっかくギル坊ががんばったから約束してた鍛錬方法教えてやろうと思ってたんだけどな~」ニヤニヤ


ギル坊「え!?」


メリオダス「そっか~。俺の言葉信用してくれてないのか~~~」ニヤニヤニヤ


ギル坊「ちょっと待ってください!?ちょっと!?」


メリオダス「信用されてないんじゃ教えたくはないな~」ニヤニヤニヤニヤ


ハウ坊(め、めんどくせえ!!!)


ギル坊「信用します!!信用しますってば!!!」


メリオダス「そうかそうか。よーし、ならば教えてやろう!!」


ギル坊・ハウ坊・グリ坊「……」


グリ坊(教えてもらえるのか…。『七つの大罪』団長から直々に!!)


ハウ坊(ついに…この時が来たぜ!!)


ギル坊(一体…どんな鍛錬方法なんだ!?)


メリオダス「今のお前でもできる効果的な鍛錬方法…。それは…」


ギル坊「……」ゴクッ!!



















メリオダス「『あっち向いてほい』だ」


ギル坊・ハウ坊・グリ坊「……………………」


ギル坊「………………すいません。何か聞き違いをしたみたいで…もう一度言ってもらっても…」


メリオダス「いやいや、聞き違いじゃねーよ。『あっち向いてほい』が今のお前たちにもできる効果的な鍛錬方法だ」エッヘン


ギル坊・ハウ坊・グリ坊「……」


ギル坊・ハウ坊・グリ坊「「「はい~~~~~~~~~~~!!?」」」


ハウ坊「ちょっと待ってくださいよ!?言ってる意味がわかんねえっす!!?」


グリ坊「いや…その…予想外すぎるのですが…」


ギル坊「えーと、つまり僕たちは『あっち向いてほい』を教えてもらうために『あっち向いてほい』で勝負して『あっち向いてほい』で勝つために訓練してたのに鍛錬方法が『あっち向いてほい』でって…」プスプス…


ギル坊「あれれ~~~~~!??」シュー


グリ坊「まずい!!ギルサンダーの頭がショートしだしたぞ!!!雷帝≪サンダーボルト≫だけに!!!」


ハウ坊「とりあえず説明をきこうぜ!!だから一回落ち着け!!!」


ドレファス「……」


ヘンドリクセン「…何なんだ、その悟りを開いたような顔は」


ドレファス「……考えても混乱するのが目に見えてたからな…」


ドレファス「とりあえず考えることをやめてみた」ニコッ


ヘンドリクセン(何も言えん…)


メリオダス「お~い、ギル坊~~。大丈夫か~?」


ギル坊「…な、なんとか」


メリオダス「やっぱ分からないか?」


ヘンドリクセン「分かるわけないでしょう。あんな説明で」


メリオダス「それもそうか。じゃあ改めて説明するぞ~」


ギル坊「お、お願いします!!」


メリオダス「ギル坊はヘンドリクセンからあっち向いてほいについていろいろ教わったと思うんだが、そのとき何が大事だって言われた?」


ギル坊「え~と、『洞察力』だったと思います」


メリオダス「そう、洞察力。相手がどんな手を出すか、どの方向を向くか、相手の動きを見極めるために無くてはならないものなわけだが…」


メリオダス「だがしか~し、実はこの理屈、そのままそっくり戦いにもあてはまるんだ」


グリ坊「と言いますと?」


メリオダス「戦いってのはわからないことだらけでな。どんな武器を持ってるか、どんな魔力を有しているのか、力は、速さは、剣の腕は、何ができて何ができないのか、お互いにわからない状態のまま戦いになることだってそう珍しいことじゃない」


メリオダス「どんな奴が相手でも、その力量を正確に見極めないとしっぺ返しを食らうからな。そういった危険を事前に察知するためにも、相手の挙動から敵の力量を瞬時に理解するための能力が必要不可欠になってくる。それが洞察力ってわけだ」


ハウ坊「そんなもん地力つけて真っ向からねじふせりゃあいいでしょうが。こっちが油断しなけりゃ多少の小細工なんて意味ないっすよ」


メリオダス「お前はすでに死んでいる」ハァー


ハウ坊「いきなり!?」


メリオダス「確かハウザーだったよな?ドレファスが言ってたぜ。ギル坊に並ぶ期待の聖騎士見習いだって」


ハウ坊(まじで!?すげーうれしい!!!)


メリオダス「問題は剣技や体術、魔力で勝ってても相性ひとつで勝敗が決まる場合もあるってことだ。例えばうちのゴウセル、あいつは『侵入≪インベイション≫』っつー精神に作用する魔力を持ってるから下手に挑むと一発で精神支配を受ける。あとは俺の『全反撃≪フルカウンター≫』みたいなカウンター系の魔力をもってるやつもいる」


メリオダス「ちなみにこの『全反撃≪フルカウンター≫』は相手の攻撃系の魔力を無力化、その魔力を倍にして返す魔力だ。だからさっきの真っ向からねじふせるなんて俺から見れば格好の標的だぞ?なんせ力が強ければ強いほどこっちが有利になるんだから」


ハウ坊「た…確かに」


メリオダス「油断しなけりゃ勝てるってのがそもそも油断の種だから気を付けるように」


ギル坊「はい!!質問していいですか!!」ビシッ!!


メリオダス「質問を許可します!!」バシッ!!


ギル坊「危険を察知するためにもって言ってましたよね。そういった危険を察知する能力ってよく言われる直感とかではないんですか?前にお父さんやドレファス叔父さんに聞いたときは直感が大事って言ってました」


メリオダス「それは間違ってないぞ。直感で危険を察知することは大事だ。むしろそれができなきゃ聖騎士としてやっていくのは難しいと思う」ウンウン


ギル坊「え?でもさっきの話と矛盾してませんか?二つとも必要ってことなんですか?」


メリオダス「じゃあ逆に聞くけどよギル坊、その直感の元になってるものって何だと思う?」


ギル坊「直感の元?直感に元なんてあるんですか?」


メリオダス「俺は経験が直感の元だと思ってる」


ギル坊「?」


メリオダス「例えばギル坊が俺に誘われて行ったら落とし穴に落ちたとしよう」


ギル坊「え!?」キョロキョロ


メリオダス「例えばだからな」


メリオダス「お前はとっても嫌な気持ちになったわけだ」


メリオダス「そんで次、また同じように俺に誘われたらギル坊はどうする?」


ギル坊「行きます!!」


メリオダス「……」


ハウ坊(だよな)


グリ坊(だろうな)


メリオダス「普通はここで落とし穴を思い出して警戒するわな。前に落とし穴に落とされた経験があるから」


メリオダス「こんな経験が増えれば増えるほど自分の中に蓄積されていくんだ。そして最終的には似た状況に遭遇すると無意識に警戒するようになる。これが直感で危険を感じる理屈だな」


メリオダス「人は経験することで学ぶ生き物だ。その経験の上澄みが直感として、危険を教えるってのが俺の持論だ」


メリオダス「だから、俺に言わせれば経験を持たない人間の直感は信じられるもんじゃないな。もちろん例外もいるけど」


ギル坊「なるほど~」


ヘンドリクセン「……」


メリオダス「…何だその顔は?」


ヘンドリクセン「いや、すごく真面目にやってるなと思いまして…」


メリオダス「馬鹿野郎。ギル坊が真面目にやってたのに俺が不真面目になんかやれねーよ」


メリオダス「俺は話のはぐらかしや隠し事は思いっきりするけど約束は守るぞ」


ドレファス(自慢できねー)


メリオダス「…ってなわけで瞬間的な判断の連続を行うことで聖騎士に必要な洞察力を安全かつお手軽に鍛えられる夢の鍛錬こそ『あっち向いてほい』だったというわけだ!!!」ドーン!!


ギル坊「おおーーー!!!」


ハウ坊「何か…こう、無理やりな感じがするけど…」


グリ坊「まあ…理屈は分からんでもないからな…。しかし、鍛錬法が遊びだなんて…」


メリオダス「ま!!子供のころからそんなかたっ苦しくなるなってことだな。遊べるうちに遊んでおけよ~」


ギル坊「分かりました!!ありがとうございます!!」ペコー


ギル坊「こうなったらまたあっち向いてほいをやろう!!今すぐやろう!!!」


グリ坊「今からか!?」


ギル坊「今から!!早く早く!!!あっちでやろう!!!」タッタッタッ


ハウ坊「しゃーねえな…。付き合ってやんか!!!」タッタッタッ


グリ坊「そうだな!!」タッタッタッ


ジャーサイショハダレガヤル?ソリャアオマエデイインジャナイカ?マテマテアイダヲトッテオレガ


メリオダス「…まあ~こんなもんでよかったかな?」


ヘンドリクセン「ええ…」


メリオダス「…子供のころから騎士になる訓練なんて俺はやりたくないな」ドーン!!!


ドレファス「ふんぞり返って言うことではありませんよ。同意はしますが」ドーン!!!


ヘンドリクセン「おい」


ドレファス「立派な聖騎士になるため…いずれ来るであろう聖戦のため…と言えば聞こえはいいですが…」


ドレファス「本当なら子供たちには戦いなんてしてほしくないのが本音なんです…」


ドレファス「子供たちは戦のことなど考えず笑っていてくれさえすればいいんですよ…」


ヘンドリクセン「ドレファス…」


メリオダス「そのための『聖騎士(俺たち)』…だろ?」ニカッ!!


ドレファス「ん!?…ええ、確かに」


ヘンドリクセン「彼らも自分で聖騎士への道を選んだ…」


ヘンドリクセン「戦うためではなく大事なものを護るためにな」


メリオダス「その通り。俺たちからあいつら下の世代へ、あいつらからそのまた下の世代へ、そうやって続いていくんだよ」


ドレファス「……」


ヘンドリクセン「……」


チュンチュン… チュンチュン…


マタマケチマッタチクショーボクノカチダ!!!ツギハオレノバンダー


メリオダス「おっ、小鳥か…」


ドレファス「平和だなぁ…」


ヘンドリクセン「そうだな…」


チュンチュン… チュンチュン…


これは七つの大罪が国を追われる数年前のことである…


彼らはまだ知らない。これより十余年の月日が流れたその日、リオネス王国のみならず、ブリタニア全土を巻き込む≪聖戦≫が始まることを…


彼らはまだ知る由もない。誇りを、信念を、正義を、野望を、己の罪を、すべてを賭けて戦うその日が近づいていることを…


おまけ 2レス劇場 影ながら応援できなかった者たち


マーガレット「そういえば…今日はギルとメリオダスさんが約束した日ね」


マーガレット「結果はどうなったんでしょうか…」


マーガレット「…勝ったらお祝いのために、負けたら慰めるために」


マーガレット「どちらにしてもお菓子を用意しておいた方がいいのかしらね」クスッ


マーガレット「どっちでしょう…?早く帰ってきてくれないかしら?」ニコニコ


マーガレット「さっそくお菓子の材料を用意しなきゃ♪」


ビビアン「はっ!!今、ギルの涙の落ちる音が聞こえた!!!」


ビビアン「待っててギル!!今すぐ…」


マーリン「どこへ行く気だ?まだ修行は終わってないぞ」


ビビアン「…この行き遅れが!!!私たちの愛を邪魔しないでよ!!!」


マーリン「私たちってどういうことだ…」


マーリン「まあいい…。とにかく向こうには行かせないぞ。行き遅れは訂正してもらうぞ…」ゴゴゴゴゴ!!!


ビビアン「ぶちのめす!!!」ゴゴゴゴゴ!!!


マーリン「やれるものならやってみろ。来い!!!」


ビビアン「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」


ビビアン(待っててギル!!すぐに行くわ!!!)


これにて終わりです。見てくださった人たちは本当にありがとうございました。

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