巫女「口裂け女がやってきた」 (15)

巫女「わーすごーい、すごーい。口裂けてる」

口裂け女「あ、はぁ…」

巫女「その口だとお茶とか飲むの大変じゃない? あと煎餅食べるとボロボロ菓子クズ落としそうだね」

口裂け女「いやもうそういうの良いんで、本当良いんでそろそろ真面目に聞いて下さいよ」

巫女「私は何時だって真面目よ、ただ常時真面目過ぎて周りからは巫山戯てる人って思われるけどね」

口裂け女「すっごいめんどくさいこの巫女」

巫女「妖怪に言われたくないわ、んで……相談って何?」

口裂け女「……その、実は……好きな人が、出来ました」

巫女「わぁ巫女さんびっくり、カントリーロードでも歌いながら自転車二人乗りして事故にでも合わないかしらこの妖怪」

口裂け女「ちょちょちょ、まだ恋しただけなのに何でそこまで酷い事言われないとならないの!?」

巫女「うるへー、こちとらアンタ達みたいにのんびり人間観察したりする時間がねーんですぅ。毎日毎日神様の下僕ですぅ」

口裂け女「うわ、これが巫女の口から出る言葉とは思えない。と言うか貴女も休日はテレビ見て横になってるんでしょ? その時間を恋する時間に割り当てれば……」

巫女「巫山戯んなよ妖怪もどき、休日は仲間と一緒に冒険して治安維持の為に戦っているのよ」

口裂け女「オンラインゲーム廃人一歩手前の巫女なんかに相談しにくるんじゃなかった」

巫女「廃人じゃないわ、エンジョイしながらキャラクリした自キャラをペロペロしつつ破廉恥な衣装を着させて脳内ロープレを楽しんでいるだけだわ」

口裂け女「やめて、その末期のオンラインゲームやってる時のプレイヤーみたいな楽しみ方はやめて。サービス終了一週間前みたいな空気になるからやめてあげて」

巫女「ちなみに女性キャラしか作らないわ、男なんて作っても楽しくない。あと衣装のバリエーション的に女性キャラのが優遇されてると百合にでもなりそうな気分。レズレベル上がっちゃうわ私」

口裂け女「何故私を見る」

巫女「今夜…どう?」

口裂け女「巻き込まないでお願い、そして手を握って来ないで。私は今恋してるってさっき言ったでしょ!?」

巫女「冗談よ。今日来たのは恋愛相談だけなの?」

口裂け女「そっちはついでに相談しに来ただけです。居住許可更新日が近いから届け出をしに来たのが本命」

巫女「妖怪は大変よねー、でも現代妖怪に分類されてるだけ居住許可証は取りやすいかー」

口裂け女「都市伝説由来だとチカラも然程強くないですからね、本家本元の妖怪に比べれば雑魚ですよ」

巫女「まぁ人の形を保っているだけマシよ……あ、でも最近はそういう事に配慮して人型化の護符とか販売してるわよ」

口裂け女「擬人化!?」

巫女「人間社会に溶け込んで生きるのも大変だからかしらね、あと妖力をあまり消費しないから楽なんですって」

口裂け女「なにその便利道具欲しい」

巫女「興味あるなら使ってみる? 今なら特別初回キャンペーンでタダにしてあげる」

口裂け女「えっ本当?」

巫女「本当本当、巫女嘘つかない。その代わりに閻魔様にちょっくらあって来なさいよ、地獄往復護符あげるから」

口裂け女「え、閻魔様とか私みたいなゴミ妖怪に会ってくれるの!?」

巫女「基本あの人は妖怪幽霊関係なく会ってくれるわ。んで、その理由なんだけど……」

巫女「貴女が住んでる場所……今居る場所の近くが小学校じゃない?」

口裂け女「そりゃあ私の仕事もやりやすいですし」

巫女「んで、トイレの花子さんがこの前出張で遠くに行っちゃってさ、ヘルプの花子さんが来たは良いんだけど住む場所が決まらないのよね」

口裂け女「あ、嫌な予感してきた」

巫女「アンタの住んでる場所なら学校まですぐだし、ちょうど良いんだよねー……」

口裂け女「チラ見しないで、するなコラ」

巫女「あの辺は妖怪にも競争率高いしぃ? いくらヘルプと言えど一年間ホテル泊まりは可哀想じゃない?」

口裂け女「わ、私に引っ越せと?」

巫女「違う違う、シェアして貰いたいのよ。それもほんの……ひと月程」

口裂け女「断ります、と言うかヘルプで来る間に物件抑えられなかったんですか!?」

巫女「いやどうにもねぇ、あの辺りは小中高に近く、病院や公園、お墓まで歩いても30分圏内じゃない? 凄い良い立地なのよ。他にも住みたい人が多過ぎてヤバい、キャパシティオーバーってレベルなの」

口裂け女「それでも嫌ですよ!!」

巫女「あー残念だなー、このお願い聞いてくれれば見返りも大きいんだけどなぁー」

口裂け女「も、物では釣られませんよ?」

巫女「なんとなんと、ここにあるのは居住許可証に付け加え、最近出来た妖怪専門エステサロンの特別招待券。更に人型化の護符を五束分セットで渡してあげるのになぁー、あー残念だなー」

口裂け女「ちょ、なんでそんな沢山!?」

巫女「いやーヘルプの花子さんが少し厄介な性格なんだけど、ひと月我慢して貰いたいからねぇ……ちなみに人型化の護符って、口が裂けてるのもしっかり隠せるのよねー」

口裂け女「ぐぬぬ……」

巫女「恋せよ乙女、エステサロンで綺麗になって護符で更に美人、あなたの心のキューピッドの巫女でございます」

口裂け女「悪魔にしか見えないです。ち、ちなみに…護符は何日分くらい?」

巫女「20枚入り五束、一枚26時間持続致します。さぁどうする? 好きな人にアタックする良い機会だと思うわよ?」

口裂け女「っ~~~っっ!!」














口裂け女「乗った!」

巫女「はい交渉成立、じゃあ閻魔様にこの書類渡して来てねー。判子貰えば良いから」

口裂け女「任せてください、それから私……地獄に行った事無いんですけどどのくらい時間かかります?」

巫女「片道六時間」

口裂け女「遠くない!?」

巫女「んで、閻魔様に会うまで二日ほど」

口裂け女「泊まり!?」

巫女「閻魔様も大変なのよ、毎日毎日死んだ人間をどうするか話を聞いて裁かないとならないし、現世の妖怪とか幽霊とかの現状も確認しないとならないし。あの人超多忙、寝てる時間あんのかよってレベル」

口裂け女「ひぇぇ……大変ですねぇ。でも地獄に行ってる間はこっちでの仕事とかどうすれば…」

巫女「その辺は私に任せなさい、伊達に巫女やってないから」

口裂け女「巫女って何だっけ」

巫女「妖怪と人間が共存する架け橋、それから管理者、後はフレと世界救ってる」

口裂け女「最後のが無ければカッコよかったのに」

巫女「いやいや、オンラインゲームで人付き合いしておくと便利よ?」

口裂け女「何処がですか」

巫女「私と閻魔様フレだもん」

口裂け女「ええええええ!?」

巫女「この前ログインしてたから会いに行ったら上級装備完璧に仕立ててた辺り、まだまだ私は未熟ね…」

口裂け女「廃人!?」

巫女「まぁそんな訳で、こっちの心配はしなくて良いし地獄観光をついでにして来てくれても良いから。お願いねー」

口裂け女「ま、まぁ…わかりました。色々ありがとうございます」

巫女「人の世界に平穏を、妖怪の世界に秩序を。それが仕事だから気にしない気にしない」

口裂け女「貴女らしいですね、じゃあすぐ行って来ます」

巫女「お土産待ってるよん」

口裂け女「はいはい、居住許可証よろしくお願いします」

巫女「はいはい」









巫女「さてと、次はヘルプの花子さんに話でもしに行かないとねぇ……」

暇つぶしでした、さよーならー

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