姉「元気でやってるかい?」(26)
弟「え?は…?」
姉「むー、なんだいお姉ちゃんの顔見るなりその顔はぁ!」
弟「いや…なんで…?」
姉「なんでって一人暮らししてる弟ちゃんの様子見に来て不満でもあるのかな?」
弟「ないけど…」
姉「ならいいじゃないか」
弟「いやいや、よくはないって」
姉「そんな事よりどう?一人で生活するのって」
弟「…わりと快適だよ」
姉「この惨状でかい?」
姉「そうだね…部屋を見た感じ、実にフリーダム!」
弟「うるせえよ…」
弟「汚れてるって言いたいんだろ?」
姉「おっ、やっとキミらしい反応してくれたね」
弟「突然すぎてまともな思考じゃなかったんだよ」
姉「おっほっほ、この汚れた汚部屋に可憐な天使が舞い降りたからね!」
弟「意味の分からないこと言ってんじゃねぇよ」ガサガサ
姉「と、言いつつ掃除を始める我が弟」
弟「客が来たら座るところぐらい確保する必要あるだろ」ゴソゴソ
姉「でもこの積み上がった本は片さない精神」
弟「手が届く範囲にあったら便利だろう」
姉「そんなことするから汚部屋化するんだろうが!とぉ!!」
弟「分かったからそこに飛び込むなよ…」
姉「あ、この小説お姉ちゃんも読んだわぁ」
弟「わりとメジャーなやつだしな」
姉「こういうのもちゃんと読んでるんだね」
弟「どんなジャンルでも話題は必要だからな」
姉「じゃあうふふな本もどこかにあるとみた!こことか!?」
弟「やめろ!そんなもんないわ!!」バサバサバサ
姉「止められちゃった」
弟「普通止めるわ…」
姉「ところで彼女はできたのかね?」
弟「いいや」
姉「この前、かわいい後輩に告白したとか言ってなかったっけ?」
弟「何で姉ちゃんが知ってんだよ…」
姉「母さんがうれしそうに話してきたし」
弟「母さんにまで会ってきたのか」
姉「ちゃんと顔見せておかないと心配されちゃうしね!」
姉「それより告白したその子の反応は?」
弟「すんげぇ挙動不審になってほとんど会話にならなかった」
姉「あっはっは!そりゃいきなり告白なんてされたら慌てるわなぁ!」
弟「こっちは緊張しまくってそれどころじゃなかったのにさ」
弟「あそこまで会話にならないとさすがに冷静になるわ…」
姉「それで返事は?」
弟「なんとか近いうち返事するってまともな返答はもらえた」
姉「それで今に至る…か」
弟「あの後はさすがに色々あったしな…」
弟「いい子だし、ちゃんと返事は返してくれると思ってるけど」
姉「…いい返事もらえるといいね」
弟「あぁ」
姉「あ、そろそろお昼だけど何食べるの?」
弟「今日は簡単に目玉焼きと茶漬けかな」カチャカチャ ジャー
姉「まだ若いのに何質素な食事してるんだよー」
姉「お肉とか食べて力つけなさい!」
弟「あんたはオカンか」カツン パカ ジュー
姉「ただお姉ちゃんは心配なんです」
弟「はいはいありがとうございました」チーン
姉「何終わらせようとしてるんだ!まだこれからよ!」
弟「まだ帰らないつもり?」モグモグ
姉「だから心配なんだって」
姉「例えば変な連中といないかとか」
弟「昨日、友人宅でゲーム大会開いて騒いだ」
姉「変な宗教とかにハマってないかとか」
弟「この前、宇宙の力がどうとか言われたからそりゃ地球は宇宙からできましたよねって返した」
弟「その後に俺も国家権力ならあなたに味あわせられるって警察に通報したら逃げた」
姉「わぉ、パーフェクト…」
姉「…」
弟「自分が役立つ場面がないからってそんながっかりするなよ…」
姉「だってー…ぐしゅん」
弟「まぁなんだ…心配してくれるだけで十分だよ…」ポリポリ
姉「弟ちゃん…」
弟「それより、もう高校生なんだから弟ちゃんはやめね?」
姉「弟ちゃんは弟ちゃんだし弟ちゃんじゃなけりゃ誰が弟ちゃんなわけさ!?」
弟「連呼するな、それに言ってる意味が分からん」
姉「くそぅ…」
弟「姉ちゃんさ…暇なの?」
姉「 だ か ら 言 っ て い る だ ろ う ! 」
弟「『弟ちゃんが心配なんだよ~』ってか?」
姉「んま!お姉ちゃんを弄んでこの子はぁ!!」
弟「弄んでねぇし誰でも分かるだろ」
弟「あと首を絞めるな」
姉「ふーんだ」
弟「勝手にすねてるし」
弟「まぁあれよ…」
姉「?」
弟「俺の事は心配するな」
弟「ちゃんとやってるし、元気でやってるよ」
弟「悪い事してまたこうやって姉ちゃんに来られても困るからな」ニッ
姉「弟ちゃん…」
弟「こうして一人飛び出して生活してたら色々分かってくるんだよ」
弟「例えば離れたっていつも心配してくれてる人がいるとか、な?」
姉「うん」
姉「お姉ちゃんも一人で出て、すごくそういうの分かったよ」
姉「母さんしょっちゅう電話してきたし」
弟「オレにもかなり頻繁にかかってきてたよ」
姉「お姉ちゃんもね!」
弟「あんたは自分の愚痴を話してストレス発散させてただけだろうが」
姉「…」
弟「やめろ、そのなぜばれたしって顔」
姉「ああいうのってなぜか友達には話したくないんだよね」
弟「普通、愚痴聞かされるのは好かれないからな」
姉「でも家族だとあら不思議!」
弟「あら不思議でもねぇし、それでも嫌がるわ」
姉「でも弟ちゃんは聞いてくれてたよね?」
弟「泣きながら話されるとつい聞いてしまうだろうが…」
姉「あれは半分うそ泣きだけど」
弟「知ってるわ、どれだけ一緒に住んでたと思ってるんだよ」
姉「やっぱりキミは優しいよね」
姉「そりゃ後輩さんにも泣かれるわけだ」
弟「だからなぜそこまで知っているんだ!?」
姉「母さんがノリノリで話してくれたし?」
弟「あんたらが親子なのすごい納得だわ…」
姉「えへへ~それほどでも~」
弟「褒めてない、褒めてないから」
姉「さーて、そろそろお姉ちゃん帰るね」
弟「そうか」
姉「部屋の中でずっと篭らないようにね」
弟「分かってる」
姉「ふっふ、やっぱり心配だなぁ」
弟「はいはいそうですか」
姉「じゃあね」
弟「おう」
姉「きっと後輩さんからいい返事もらえるよ」
弟「だといいけどな」
姉「あとたまには実家に帰るんだよ?」
姉「お姉ちゃんも帰ってくるからさ」
弟「あんたはいらねぇ」
姉「はーい、ツンデレだと思って受け取っておくよー」
姉「ばぁ~い」
弟「…かえったか」ガチャ
母「あら、どこかお出かけ?」
弟「なんだ、もう来たの?」
母「質問を質問で返すとはどこで教育受けたのやら…」
弟「あんたが絡んでるのは確かだ」
母「ふっふ、ところでこのゴミ部屋何?」ゴチャゴチャ
弟「さっきまで姉ちゃんが来て説教のようなものされたわ」
母「…そう…ふふ」
弟「なに?」
母「母さん達のところにもあの子来てね、もうちょっと綺麗に掃除しようよって言われちゃったわ」
弟「母さんすぐ手を抜くからな…」
母「あの子って世話好きだったからねぇ」
弟「昔は姉ちゃんとデキてるんじゃないかって疑われたぐらいだよ」
母「そんな事言われてたの?」
弟「いい迷惑だったよ」ゴソゴソ
母「そんな弟にも彼女ができるのね」
弟「まだ返事もらってないし」♪~
弟「…なんてタイミングでメールが」
母「その子から?」
弟「今日、時間取れないかってさ」
弟「『用事が終わってからすぐ連絡するから待ってて』っと」ピッピッピッ
母「あら、期待しちゃいなよ!」バシバシ
弟「期待すんのはえぇよ…そして姉ちゃんのノリで話すなっての…」
母「元々このノリはあの子に教えたのよー」
弟「元凶は母さんだったのか…はぁ」
母「でもちゃんと言われたとおり掃除はやってるのね」
弟「また来られたらたまらないからだよ」
母「しょうがないからあとで少しだけ手伝ってあげるわ」
弟「へーい、よろしくー」
母「先に行かないといけない所あるしね」
弟「そうだね」
弟「それじゃあ行きますか」ガチャ
「姉ちゃんのお墓へ――」
END
短い上、無駄に日を空けてごめんなさい。
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