似たようなssを見て自分もやってみたくなった。地の文有りか無しかはお題で決めるつもり。
1レスssなので、あまり壮大な話は書けそうにもない。そこのところもよろしく頼む。では、お題を。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1369578463
バルコニー
>>2
「......じいさん、聞いてるかい」
「遂にこの家、取り壊す事になったそうだよ。何でも、震度5弱の地震にも耐えられない程痛んでるんだってさ」
「50年も昔に建てたんだ。いくら継ぎ接ぎで家を保とうとしたって、そうは問屋が降ろさないってこったね」
「結局、和彦の家にお世話して貰うことになったよ。此処からはだいぶ遠くなるけど、毎日いっちゃんやさっちゃんに会えると思えば安いもんさね。どうだい、羨ましいだろう? 」
「......その代わり、じいさん、あんたにはあんまり会えなくなるかもね」
「三ヶ月に一回......くらいかしら」
「......」
「この間はコスモスを飾っておいたけど、どうせあんたにゃ花なんてどれも一緒に見えるだろう? 折角選んでやったのに台無しさね」
「それがあたしの気持ちだって言ったところで、さ。あんたは老いぼれの婆さんが何言ってやがるって愚痴をこぼすだろうね。いつもみたいに、このバルコニーで」
「......」
「そう考えてみると、あんたは愚痴ばっかりのちっぽけな男だったわね。それ以外はぶすっと黙り込んでさ、場を盛り上げようとはちっとも考えない」
「偶に早く帰って来たかと思えば、ただいまも言わずに瓶を取り出して、一人ここに座る。つまみを持って行っても、相変わらずの無表情で口に運ぶだけ。少しくらい労ってくれても良かったんじゃなかったかねぇ」
「......」
「だから、よく覚えているわよ。一緒になった30年目の記念日に、あんたが呟いたのを」
「ありがとう、ってね」
「......あんたがそんなことを覚えてるなんて思わなかったよ。つまみをいつものより豪華にしたって、気付きっこないかと思ってた」
「だからね、あたしは何も言えなかったんさ。涙を堪えるのに必死だったからね」
「......」
「あの日も丁度、今みたいに夕陽が綺麗だったわね。息子夫婦はとっくに出て行ってさ、家に居たのは二人だけだった」
「今も、あたしとあんたのふたりきり。夫婦水入らずの時間って奴ね。だから、勝手に、させてもらうさね」
「あの日の続きを」
「ありがとう」
「ついでに、コスモスの花言葉も教えておこうかね。きっと、調べることもないだろうし」
「乙女の愛情。あたしは、あんたのことを愛してるよ」
「今までも、これからも」
「だから、一旦お別れさね」
「さようなら」
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