男「SS書いたからちょっとみてくれ」友ABC「おk」 (229)

~第一章 前書き、注意書き~


男「投下したらかなりフルボッコにされたんだがどこがおかしいかわからないんだ……優しく教えてくれると助かる」

A「知らん。人に見せる以上はビシバシいく」

B「まあ、ほどほどにできてれば……」

C「日本語で書けてたらいいんじゃない?」

ABC「どれどれ……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1417873532

―――――――――――

ようこそ、このスレへ
僕はこのスレの作者、通称支配人です
ここで物語を書いていくので、お暇な時に読んでいってください
中々続きが書かれなくても待っててくれると助かります・・・
あと、感想くださったら画面の前で喜んで踊ります笑


以下注意書きです
・物語を書くのは初めてなので、おかしなところがあっても見逃してください汗
・部活が忙しくなったら投稿のペースがバラバラになるかもしれません
・中二病こじらせてます
・豆腐メンタルなので文句があったら見るのやめてください

―――――――――――

B「アホかーーーー!!!!」

男「えっ早くね?まだ1レス目までしか読んでないのに」

A「見る価値なし」

男「Aまで……」

C「え、なんで?わりと普通じゃない?」

男「!だ、だよな!普通だよな?」

B「普通じゃねーよ!お前いきなりこんな言い訳だらけで何がしたいんだよってんだよ!」

男「そ、そんな……俺はただ普通にSSを書いただけなのに……」

A「この分だとちょっとどころか色々誤解してるところがありそうだな、こうなったら……」

B「ああ、俺たちが教えてやるよ、本当のSSの書き方ってやつをな!」

C「そんなのあんの?今まで気にしたこともなかったけど、じゃあ僕も手伝うよ」

男「ありがとう……ありがとうお前ら……!」

A「じゃあ1レス目から見ていくとしよう。問題の1レス目だが……」

A「俺からするとこのレス自体がいらない」

男「マジかよ!?」

B「んー、俺としては……まあほぼ同意見……かなぁ……」

C「そう?僕いつもこんな感じだけど」

男「意見が合わないな、Bも歯切れ悪いし」

A「SS書きが三人集まると論争が起きるってぐらいだからな。じゃあ俺の添削から行くぞ」

ようこそ、このスレへ
●気遣いとしてはいいがSSには完全に不要、挨拶書く暇があったら本文を書け

僕はこのスレの作者、通称支配人です
●自分に名前を付ける、しかも支配人。痛すぎる

ここで物語を書いていくので、お暇な時に読んでいってください
●完全に無駄な一文。媚び。

中々続きが書かれなくても待っててくれると助かります・・・
●読者は一々待たないものと考えていいし、読みたきゃ読む

あと、感想くださったら画面の前で喜んで踊ります笑
●お前のことなどどうでもいい上に感想の催促とも取れる


以下注意書きです
●注意書きを書くという発想自体がすでに怪しい

・物語を書くのは初めてなので、おかしなところがあっても見逃してください汗
●初めて書くから、で許してもらってたら次の作品も下手なまま

・部活が忙しくなったら投稿のペースがバラバラになるかもしれません
●完全に私事、おまけに学生アピール

・中二病こじらせてます
●だから何なのか

・豆腐メンタルなので文句があったら見るのやめてください
●トドメに文句があったら見るな発言。媚びるなとは言ったが上から出るな。

男「おおぅ……全部駄目……」

A「最初に言っただろうが、このレス自体がいらないって」

男「いやでもさあ……注意書き書かないと何かあった時に……」

B「まあまあ、Aは確かに厳しいからな。俺からすれば1、2文ぐらいはあってもいいと思うんだよ」

B「今回は俺もだいたい同意見なんで改めて添削はしないけど、注意書きなら、時と場合に応じてはあってもいいと思うし」

男「どんな時と場合だよそれ」

B「例えば、二次創作とかで放送一週間以内のアニメの内容が出てくるときは『ネタバレ注意』とか」

B「あとは、例えば典型的なのはエログロ系かなぁ」

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注意
グロあり

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B「しかもこれぐらいでいいだろう」

C「あれ、『不快かもしれないのでそういうの苦手な人はブラウザバック推奨』とかは?」

B「『グロあり』だけで十分伝わるだろ?グロが苦手な人がこれみて突っ込んできて『お前がブラウザバックしろって書かなかったから読んで不快になった訴訟』とかなるか?」

男「アメリカレベルの訴訟だな……」

A「いや、そんな注意書きもいらん。エログロ読んで死ぬというならまだしも、ショックは受けてもそれもまた経験だ」

男「んな無茶な」

B「だが一理あると言えなくもない。例えばそうだな、有名どころで魔法少女まどかマギカの第三話だが」

C「ネタバレ注意!」

男「おお、こういう時に使うのか」

B「ありがと。でも放映からかなり時間経ってる場合はあまり気にしなくていいぞ」

B「例えばあの三話の後半でマミさんがパクッと逝かれたわけで、首こそ映さなかったがその露骨な死亡描写でお茶の間に衝撃を与えたわけだ」

A「だが、あの作品はそこまでに『これは魔法少女物ですよ、ハートフルですよ』というバックボーンを押していたわけだな。だからこその落差で衝撃が走っ

たんだが」

B「これがもし冒頭で『今作品には登場人物の死亡描写があります。不快に思われる方は視聴をお控えください』とあったとすれば」

男「ああ、実はそういう話なんだな……ってみんなわかるから衝撃もそんなにないってことか」

A「注意書きそのものがネタバレになる。あるいはなる可能性があるのならそんなもの不要だ」

C「でもさ、商業作品と比べるのおかしくない?だって僕らの書いてるのSSだよ?」

B「んむ、確かに素人作品であるのは自覚してるけど」

C「読む方も星の数ほどある中から自由に選んでるわけだし、楽しい作品だけ読んでたいって思うのは当たり前じゃない?」

C「それにこっちも色々言われたらだんだんやる気なくなっちゃうし、色々注意書きするのはお互いのためにいいんじゃないかって思うんだけど」

C「それに、SSは合間のレスが入る以上は一方通行じゃないから、不快に思った人が作品に割り込んで荒らしてくることもあるんだよ」

C「そういう不快に思う人を減らすためにも、注意書きはあったほうがいいんじゃないかな?」

A「だからといって批判まで封じてどうするんだ。『ここがつまらん』という感想は逆に『ここを変えればよくなる』というアドバイスでもあるぞ?」

A「イエスマンで固めた箱庭は気持ちいいだろうが、一生箱庭からは出られんだろう」

C「少人数でも楽しくやってられるんならそれでいいでしょ?」

A「インターネット上に公開してその言い訳は苦しいな。ならば友人集めて部屋でやってろ」

C「じゃあAもこんな素人集まりで書いてないで作品賞でも応募すればいいんじゃないの!?」

B「まあまあ、落ち着けって。どっちの言うことも一理あるからさ……」

AC「Bはどっちが正しいと思う!?」

B「お……俺はその……中立で」

A「……コウモリ……」

C「……日和った……」

B「うるさいなもう!」

男「本当に論争始まったな……じ、じゃあこの件について一言ずつまとめをお願いします」

A「書く以上は書いた作品に責任がある。称賛も批判も受ける責任がな。媚びへつらって逃げるな」

B「馴れ馴れしかったり言い訳は無い方がいい。少しぐらいは挨拶したり、衝撃が強そうなときは注意書きしてもいいだろう」

C「前書きはコミュニケーション。注意書きは防衛線。平和に楽しくやるためには必要」

B「ところでお前、SS書くの初めてだよな?」

男「え?そうだけど……」

B「初めて書くのにこれだけ防御線を築くってのは、いったい何があったらそうなるんだ」

男「いや、これが普通だと思ってたからそうしたんだけど……」

A「ふむ……男、ちょっと最近読んでみたSSを出してみろ」

男「うん、これとこれとこれと……これらが面白かったから俺も書いてみようと思ったんだよ」

A「……やはりな……」

B「なるほど……」

C「あ、これ僕の書いたやつもあるよ」

俺Cですわ

B「見事に前書きと注意書きがあるやつばかり読んでるな」

A「そしてこれをきっかけに書こうと思ったわけだから、当然前書きと注意書きはついてくるわけだな」

C「見る感じ、だいたい同じジャンルのものばかりだね」

A「そしてそのままこれが昨今の注意書き増殖に繋がってると俺は思う」

男「どういうこと?」

A「たとえば、X君があるジャンルの作品a、b、cを読むとしよう。X君はそのジャンルが好きで、そのジャンル以外は読まない」

A「ちなみにこのSSが投下されている場所にはこのabc以外注意書きを書いている作品は無いとする」

A「X君は『このSS面白い!僕も書いてみよう!』となり、当然abcを参考にする。注意書きも書くものだと思ってるから書く」

A「X君が書いた作品d、e、fを今度はY君が読む。Y君は『このSS面白い!僕も書いてみよう!』となり、当然defを参考にする。注意書きも書くものだと思ってるから書く」

A「Z君がabcdefを読んでSSの面白さに目覚める。今度は別のジャンルで作品g、h、iを書く。注意書きも書くものだと思ってるから書く」

A「こうして段々SSには注意書きが付き物だという認識が広まっていく。他のジャンルを見ればそうでないことは気づいたかもしれないが、ジャンルの取捨選択の段階でその可能性はなかった」



A「……まあ、仮説だがな」

B「何事もだけど、一部だけ見て全体だと思ってやるのはよくないってことだな」

B「あ、注意書き書くなってことじゃなくて、『必ず書くもの』と思い込むことはないってことで」

A「固定ジャンルばかりでなく、全体を見回してどんな雰囲気の作品があるか知るのもいいだろう」

C「結局は書きたいもの書けるのが一番いいだろうけどね。でも掲示板自体がどんなルールで構成されているかはチェック必須だよ。そこはフリーラインじゃなくて線引きがあるからね」


~第一章 終わり~

~第二章 読者の反応、作者の反応~

男「まさか1レス目であんなに長引くとは思わなかったよ」

A「まあいい、とにかく続きを見せろ」

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11:支配人
勇者の攻撃!ずばーん!

女僧侶の服ははじけ飛んだ!

女僧侶「まいっちんぐ」

勇者「はなぢぶー」

勇者に100のダメージ!勇者は倒れた!


12:名無し1
つまんね


13:名無し2
所々荒いけど、まあ面白いとおもうよ


14:支配人
>>12さん
すみません・・・どこがつまらないですかね

>>13さん
ありがとうございます!是非>>12さんにもどこが面白いか教えてあげてください!


男戦士「くそ、俺はホモだから大丈夫だが勇者がやられた!」

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A「無いな」

男「ここもかよ!?我ながら傑作ギャグシーンだと思うんだけど」

B「あー……うん、まあそこは人それぞれの感性によるから何とも言わないけど、そこじゃなくて」

C「んー、たぶんわかる、ここは僕もちょっと迷ってるところだよ」

男「Cもか……で、どこなんだ?」

―――――――――――

14:支配人
>>12さん
すみません・・・どこがつまらないですかね

>>13さん
ありがとうございます!是非>>12さんにもどこが面白いか教えてあげてください!

男戦士「くそ、俺はホモだから大丈夫だが勇者がやられた!」

―――――――――――

C「ここだよね?」

男「え?ここは普通にもらったレスに返事書いてるところだけど……」

A「本文投下中に返事など書くな。本文の邪魔だ」

男「ええっ!?せっかくもらったレスを無視しろってのかよ!」

A「読者はお前と楽しくお話しをしに来たわけではなく物語を読みに来てるんだ。お前の言葉など物語の邪魔だ」

B「相変わらずAは固いなあ。だがまあ邪魔とまでは言わないけど、分けたほうがいいかもしれないな」

男「分ける?」

C「つまり、例えば僕だったら……」

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14:支配人
>>12さん
すみません・・・どこがつまらないですかね

>>13さん
ありがとうございます!是非>>12さんにもどこが面白いか教えてあげてください!



15:支配人
男戦士「くそ、俺はホモだから大丈夫だが勇者がやられた!」

―――――――――――


C「こう、『本文レス』と『返信レス』は別にしちゃうわけ」

男「なるほど、こうすると本文に割り込んだようにならないから、物語に集中できるわけか」

B「後はそうだな、短かったら名前欄に書くというのもある」

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14:支配人 >>12すみません >>13ありがとうございます
男戦士「くそ、俺はホモだから大丈夫だが勇者がやられた!」

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B「まあ……やるとしたらこんな感じ?一度に二人以上も返してたら狭くなって視覚的に邪魔だけど」

男「確かにこのスペースじゃ狭くて言いたいことがほとんど言えないな。じゃあ俺はレス分けの方で……」

B「いや、ちょっと待ってほしい。そこでAの言うことになるわけだが……」

男「ガン無視しろって?それは失礼だろ読者に」

C「ノーリアクションは僕もまずいと思うよ」

B「リアクションはいいと思うよ、双方向にコミュニケーションできるのが掲示板方式の強みだし。ただな、男の返事は馴れ馴れしいとかじゃない気がする」

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>>13さん
ありがとうございます!是非>>12さんにもどこが面白いか教えてあげてください!

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B「俺が問題にするのはここだ。>>13に面白いって言ってもらって嬉しいのはわかるが」

B「その飛び火を面白くないと言ってる>>12にまで向けてる。これはどっちからしてもかなり鬱陶しいんじゃないだろうか」

男「い、いや、俺は面白いって言ってくれた読者の視点からどこが面白いかを伝えてもらったらいいと思って……」

B「>>12からすれば『なんでつまらん話の解説を作者でもないやつから聞かされなきゃいけないんだ』となるし」

A「>>13からすれば『なんで俺が人の話の面白さを説明しなきゃいけないんだ』となる」

A「それにお前、自分が作品で伝えるべき面白さを人に解説してもらって、それでいいのか?漫才のネタを細かく噛み砕いてもう一回伝えられるような痛さを感じないか?」

C「和気藹々としてたらそれもいいかもしれないけど……なんかそんな雰囲気じゃないしね、これ……」

A「ちなみに俺はここも引っかかるな」

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>>12さん
すみません・・・どこがつまらないですかね

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A「一見殊勝な態度で教えを乞うてるようにも見えるが……」

A「『聞けば詳細なアドバイスが返ってくる』と思うのがそもそも間違いだ。そんな親切でお節介な暇人は最初から細かく指摘してくる」

C「暇人って、それもどうなのさ……」

A「この話が書店で並んでる本だとすると、『つまんね』というのはぺらっとめくってすぐ閉じてすぐ忘れる、その程度だったということだ」

B「同人誌即売会とかに行ったことある人ならそっちの方がダイレクトだからわかりやすいかな?目の前で立ち読みしてもらって、そのまま去っていくあの感じ」

A「ここでこのシーンがどうとか、あの描写がどうとか言ってくれるのはまさに暇人。しかも忠告したがりで8割にわかだ」

男「おいおいおいおい、せっかくアドバイスしてくれてるのに随分な言い方じゃないか」

A「じゃあ逆に聞こう、読者の中にどれだけ物を書くということを勉強した、あるいは編集に携わった人間がいると思う?」

男「それは……まあ……うーん……あまりいるようには思えないな……」

A「そういう風に、『親身に相談にのっている気になって』アドバイスするやつの大半は、ズバリ言おう、作者側だ。純度100%の読者ではない。そしてそういうやつに限ってアドバイスしたがる」

C「だからって有象無象みたいないい方しなくてもいいじゃない。僕だって時々アドバイスされて、なるほどなってなって変えてみたことあるよ?」

B「ああ、それが自分に合うと考えてやったんならいいと思うよ。ただな」

A「にわかが多いとこうなる」

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103:名無し1
そのシーンはもっとあっさり終わらせた方がいいよ
長くすると冗長になる

104:名無し2
そのシーンはもっとじっくりやったほうがいいよ
短くすると雰囲気が損なわれる

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A「どっちだよ、と。なぜこうなるかといえば、理論なく感じたままで意見を出してるからだ」

A「井戸端会議の政治談議と変わらん」

A「ただし全てが悪いというわけでもない。時には的確なアドバイスであることもあるし、持って回った論評よりストレートなだけに対応しやすいこともある」

B「どっちが正しいのか?どっちも正しくないのか?この答えは、物書きで飯を食えるレベルのアドバイザーが身近にいないのならば自分で答えを探すしかないな」

C「別に気にしなくてもいいけどね。だって自分が楽しくかけてたらいいんじゃない?」

A「反応を無視して続けるんなら成長はありえないがな。反省しないやつに未来はない」

C「いいもん別にプロ目指してるわけじゃないし、成長しなくていいじゃん」

A「そんな態度でよくまあ全世界に向けて発信できるな」

C「見たくない人は見なくていいっていってるでしょ?」

B「あーもうまた長引きそうだからはい男!」

男「えっあっじゃあ一言ずつまとめお願いします」

A「読者はお前と話したいんじゃなく物語が読みたい。邪魔になる会話は省くか、最悪後ろにまとめろ。アドバイスは選べ」

B「物語を妨げるほど話し込むと迷惑かも?読者同士を絡ませるのは控えたほうがいい。アドバイスは聞こう」

C「見やすさを大事にするとお互いに楽しい。アドバイスは有りがたいよ!」


~第二章 終わり~

~第三章 メタネタの扱い~

―――――――――――

43:支配人
外国人「コニチワミナサン、ヨーコソ」

勇者「おお、日本語ペラペラじゃないか」

戦士「作者が英語分からないからな」

支配人「悪かったな、俺は理系なんだよ」

勇者「エキサイト翻訳とかでも使えばいいだろ・・・」

戦士「つーか出てくんな」

支配人「ごめんね☆」

戦士「まあSSだし、読者がわかればそれでいいだろ。いいですよね読者のみなさん?」

―――――――――――

A「黒歴史予備軍だな」

B「痛い……が、俺にも覚えがある……」

C「あー僕もよくやる、つい作品に入っちゃうよね」

A「よくやってたまるかこんなもん」

男「もう大人しく聞くことにするよ……今回はどこが問題ですかね」

A「そうだな、これは二つの問題に分けることが出来るだろう」

A「一つは『第四の壁』の話、もう一つは『作者登場』だな」

男「ついに専門用語が出始めた……」

B「いや、別に作者登場は専門用語じゃないと思う」

A「簡単なほうからいこう。『作者登場』はそのまま、『作中に作者が出ること』だ」

A「今現在作品を書いているのなら、作者は21世紀の人間だ。一方作品が勇者ものなら大抵は中世であったり、SFなら未来であったりするだろう」

A「その物語に本来そぐわない人間が、しかも神の視点で割りこんでくる。となるとどうなるか?」

男「えっと……物語に集中できなくなる?」

A「そのとおり。例としてあげると……」

―――――――――――

勇者「くそ、女僧侶が病気でやられた!」

戦士「このままじゃ俺たち全滅しちまうよ!」

作者「しょうがないな、今回だけだよ?はい正露丸あげる」

女僧侶は全快した!

勇者「ありがとう作者!」

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A「この瞬間、物語は崩壊する。『ああ、何かあっても作者がストーリーをいじって助けてくれるんだな』と」

A「そうなるともうワクワク感はない。どんなピンチに陥っても何とかなる。しかも理不尽にかつ説明不要な力で」

男「なるほど……作品に作者が出るのはご法度なんだな……」

C「そんなことないと思うよ?だってマンガとかでも結構作者が出てくる作品多いし」

B「そういえばそうだな、別に商業と並べるわけじゃないが、そのたびに破綻してたんじゃ成り立ってない物語が多すぎる」

男「えっ?じゃあ……どういうことなんだ?」

A「ああ、好き嫌いが分かれることもあり、そして俺はあまり好きではないが、これは一つの手法と考えていい。つまりご法度ではないんだ」

男「さっきは物語が破綻と言ったり実はご法度ではないとか……一体何が本当なんだ……?」

B「俺が思うに、『ギャグ』ならいいんじゃないかな。俺が読んだ中ではシリアスな物語やミステリなんかには作者が出てこなかった気がする」

A「そうだな、作者が出ることが笑いにつながる、あるいはその話の狂言回しとして出る程度であればいいのだろう」

A「逆にトリックが肝となる推理物や、登場人物同士の戦いが重要な作品で神の手が降りてきたらどれだけ興ざめか……」

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探偵「こんな密室で全員のアリバイもはっきりしてる中で、被害者を殺せるのは……」

探偵「そう、作者お前だけだ!」

作者「くそばれたか、完璧だったはずなのに!」

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―――――――――――

戦士「なんだこいつ、全部の攻撃か効かないぞ!」

作者「ふふん、俺は作者だから作者ガードで護られているのだ!」

―――――――――――


男「……これ、ギャグじゃね?」

A「そう、ギャグにしか見えない。たとえそれまでどれだけシリアスでもな」

B「『息抜き』として挟むのはいいかもしれないけど、真面目なシーンでこれやると雰囲気ぶち壊しだからな」

C「僕あんまりシリアス書かないから意識したことなかったけどそういうものなんだね」

A「だがそのデメリットの割に、このような悲劇はいわゆるSS初心者にとって非常に多い……なぜかわかるか?」

B「楽しいから……かな?後から思えばかなり痛かったけど、楽しかったし」

C「うん、つい楽しくなっちゃうよね」

男「?楽しいんならいいんじゃないか?SSは楽しいほうがいいだろ」

A「楽しい、の対象が違う。この場合は『作品が』楽しいのではなく……」

B「『作者が』楽しいのか」

A「書いてるやつはそれはもうノリノリだ。楽屋裏的なノリで話しまくれるし、キャラもなぜかイキイキしてくる」

B「ぼくのかんがえたたのしいせかいに参加してるんだから当然といえば当然だなあ」

A「が、傍から見てると寒い身内ノリだ。作者だけが楽しい……これを独りよがりという」

C「あんまり脇にそれてキャラと自分だけで『いいから続きはやく』って言われたこと僕もあるよ」

B「俺としてはSS書くのが苦行になるのも嫌だし、もちろん楽しみながら書くのがいいんだけど、自分だけが楽しくなっちゃうと読まれなくなるんだよな」

A「何度も言うが読者は物語を読みに来てるんであって、お前のファンではない。お前と話すことが主目的ではない」

C「楽しむならみんなでってことかな?僕は楽しんでると思うけど……」

男「なんかまとめっぽくなっちゃったけどもう一つあったよな、えーっと……」

A「『第四の壁』だな。こっちはちゃんとした用語だぞ」

男「そうそれ……だけど、意味が分からんから解説をお願いしたい」

A「そうだな、意味合いとしては『フィクションと観客との境界線』だろうか」

A「基本的にドラマなどを見ている観客は、物語上のいわゆるご都合に対して過度なツッコミを入れない。『物語だからこういうものだろう』という無意識の壁を置いて、繰り広げられる非日常と自分のいる日常を分けている」

A「よくドラマの最初に『この物語はフィクションです』などと書かれることがあるだろう。あれはこの壁を置くための一種の準備だが、あえて言わずともほとんどの場合は最初から成立していることが多い」

A「この壁があることで、画面の向こうとこちらは互いに完全に分かれた別の存在として違和感なく受け入れることが出来るのだが、このSSの場合……」

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戦士「まあSSだし、読者がわかればそれでいいだろ。いいですよね読者のみなさん?」

―――――――――――

B「ここか。登場人物が観客に向けて話しかけてる」

A「ああ、これによってあちらの創作とこちらの日常の境目が曖昧になる。完全に分かれたものでなく、互いに認識し合う関係になった」

A「これを『第四の壁を破る』という」

C「なんか難しくなってきたね、いつもこんなこと考えて書いてるの?」

A「基礎知識だ」

B「雑学だろ、知らなくてもいいし」

男「で、これもひょっとしてさっきの感じでいうとご法度ではなく……」

A「表現技法の一種だろう。ただこちらも使いどころが難しい。とにかくメタというのは迂闊に使うとバランスが崩れるんだ」

B「露骨に、頻繁に使えば覚める危険性があるな。逆に奥が深いともいえるかな?」

C「別にいつもそんな深く考えたことないけど。気を付けたほうがいいの?」

B「うーん、どうだろうな、Aなんかはガッチガチに気を付けてる時もあるけど、自分が気を付けたいと思った時でいいんじゃないかな」

C「それっていつ?」

A「今の男のようなときだ」

男「フルボッコにされたときね……」

B「いや、男はその結果どうにかしたいと思ったんだろ?そういう時に気にし始めればいいんだよ」

C「僕はそうだな、こうすると荒れちゃうのかとか、ああすると不味いのかとかは時々見るけど、だからってわざわざ勉強までしようとは思わないよ」

B「それもまた一つだな。趣味でやってるものなんだから、その気になった時に考えればいい」

B「ただこれは俺の考えだが、『所詮アマチュアだし』とか『どうせ素人だから』という、面白くならないことを自分を下げるような理由で結論付けるのはよくないだろう」

B「人に聞かせたら怒られる……とかではなく、卑下は謙遜とは違う。何かあるごとに『どうせ俺なんて』っていってたら、ほら、なんつーか、しんどいだろ?」

男「そうだな、どうせやるなら前向きに、倒れるなら前のめりって昔の人も言ってたしな」

A「その意気だ。そのやる気のあるうちにこれを読んでこい。明日までにな」

男「……なにこれ?」

A「正しい小説の書き方辞典、全1800ページ」

男「読めるか!はいまとめろ!」

A「メタは上手く使うのは難しい。ギャグにしないならやるな。ギャグでも自信がないならやるな」

B「作者が物語に出張るのはよくないだろうな。メタは諸刃の剣だけど割とお手軽だぞ」

C「作者とキャラの会話は楽しいから、あんまり長引かせないように気を付けよう」

男「ところで『第四の壁』ってことは一、二、三もあるのか?」

A「別にナンバリングしたわけではない。語源は演劇などの三方の壁からだ」

男「俺演劇見たことない……」

A「まあ要するに、演劇は右、左、奥の壁三枚で囲われた空間で行われると考えてみろ」

A「そして観客と舞台の境目、ここは当然本物の壁があったら役者が見えなくて邪魔なだけだろう。ここにあるのが仮想の壁一枚で、実際の壁と合わせて四枚目だから『第四の壁』だ」

B「あ、俺からも一つ聞きたいんだけど」

A「俺は辞書じゃないぞ」

B「いやそういう話じゃなく、作者が物語に出てくるあたりの話では随分Aも実感を持ったような話をしたなと思ってたんだが」

A「…………」

B「ひょっとしてぇ……」

C「あのガチガチのAもぉ……」

男「昔はぁ……」

A「やめろお前らそういう目で見るな。俺は反省した過去は流したノートは焼いた成長したんだ」

B「誰もが通る道だもんな、わかるよ」

C「僕、今日からもう少しAと仲良くなれそう」

A「不本意だ……」


~第三章 終わり~

~第四章 小説とSSの文法について~

A「さて、正しい小説の書き方辞典は当然読んできたな?」

男「読めるかっつったろ!三日も経ってねーよ!」

A「何だお前、この程度も読めずによくSSが書けるな」

B「この基準が採用されたら多分ほとんどの人間が脱落するだろうな」

C「大体、SSに正しい書き方とかあるの?自由に書いていいじゃない」

B「そうだな、じゃあ今回はそこを見ていくか」

B「じゃあまず、そこらへんで売ってる小説とここで書かれるSSの違いについて、たぶん一番大きな違いって何だと思う?はい男答えてください」

男「えっ……えっと……?」

B「わからなかったらそこのラノベでも国語の教科書でもいいから見てみろ」

男「どれどれ……うーん……?あ、小説には喋る人の名前がかぎかっこの前に書いてない……とか?」

B「あー、うん、それも正解。ただSSにはそうじゃないものもあるし、それは後で話すけど、もっと直接的な違いがあるんだよ」

A「ヒントは、小説とSSの違いというより紙と掲示板方式の違いによるものだな」

男「あっわかった!縦書きと横書きだ!」

B「そう、一般的な原稿用紙などに書かれる場合は縦書き、掲示板やインターネットなどに書かれる文章は多くが横書き、これが違いだ」

A「PC画面などは縦にスクロールすることが多いからな、基本的には横書きの文で縦に層で積んでいく方が見やすくなる」

B「他にも『地の文』『台本形式』『文法作法』などいろいろ後で話すけど、まずこの違いを頭に入れておいてくれ」

C「これが何か違うの?縦と横が変わっただけで同じ文章じゃない?」

B「そうだなー、じゃあまず例を出してみよう。わかりやすいように掲示板で使われるネットスラングとかで比較してみるぞ」

―――――――――――
☆横書き

人生オワタ\(^o^)/wwww

―――――――――――

B「これをそのまま縦書き変換すると……」

―――――――――――
☆縦書き
     人
     生
     オ
     ワ
     タ
     \
     (
     ^
     o
     ^
     )
     /
     w
     w
     w
     w
―――――――――――

男「これはひどい」

B「まあこれは極端に過ぎる例だが、要するに縦書きと横書きでは違う文化があるってことだよ」

A「もっといい例を出すなら、数字を表すときは縦書きは漢数字、横書きは算用数字が望ましい、などだな」

B「理解不能なルールじゃなく、見やすさから則ったルールが基本のはずだ。だから縦書きの参考書を全て鵜呑みにしては、横書きでは見にくくなる場合

もあるから気を付けよう」

男「えっ?Aから借りた本はぱらっとめくった限り縦書きのことしか書いてなかったけど……」

A「小説の書き方だから当然だろう?それに共通ルールもあるのだから損にはならん」

B「そうだな、共通する項目もある……が」

男「が?」

B「果たしてルールと言っていいものか……俺はあえて『文化』と言わせてもらおう」

B「そのうえで『小説の文化』『文章全体の文化』『SS独自の文化』などなどが散らばっているわけで……」

男「うおおめんどくさそうになってきたぞ」

C「ビジネス文書じゃないんだからルールなんてない、そう思ってて間違いないとおもうよ」

A「文章を甘く見るなよ、人に見せる以上最低限のルールは存在する」

B「こうなるから文化って言いたいんだよ俺は」

男「ああ……じゃあその文化を教えてくれるか、出来るだけ短く優しく」

B「お、おう……かなり難しいけど頑張ってみる」

B「まずは『文章全体の文化』から言ってみるか。まあ固いことなしにほとんどは無意識に使ってることも多いだろう」

男「というと?」

B「句読点や感嘆符とかだな。文の初めから『。』までを一文、一文の間の適当な区切りを『、』で表す。やってるだろ?」

男「そういえばあまり意識はしてないけどやってるな」

B「『!』や『?』も、なんなら『!?』も使ってるだろうと思う。『「」』で言葉をくくればセリフにも見えるし、『()』も用途は様々だ」

男「なるほど、確かにそうだな」

B「まあ『「」』や『()』は用途が多くて一言じゃ言えないんだけど、まあ普段日本語を書いたり話したりしてればあまり大きく外れることはしないだろう……から、ここは軽く流す」

B「あとはてにをはとかもあるけど、これは逆に難しいな。主語や述語、目的語がはっきりしないと伝えたいことがぼやけてしまう、とだけとりあえず押さえておいてくれ」

A「特に日本語は主語がなくても文が成立することも多いからな、だからこその表現幅もあるのだが」

B「さーてここからがしんどいぞ、『小説の文化』だ」

B「とはいえ俺が勝手に分けてるだけで、さっきの『文章全体の文化』とかぶってるところもあるだろう。ひょっとしたら俺が勝手に文化と思ってるだけで文化じゃないものもあるかもしれない」

男「やけに予防線を張るなぁ」

B「本気で考察したらそれだけで一冊本が出るんだよ……あくまで雰囲気とよく見る例題だけで許してくれ」

男「ああ、じゃあよろしく頼む」

・『…』(三点リーダ)、『―』(ダッシュ)は偶数個で使う
○「そうか……お前が犯人だったのか」
×「そうか…お前が犯人だったのか」

・『!』『?』などの感嘆符や疑問符の後は一マス開ける(後ろがかぎかっこの時は開けない)
○「うるさい黙れ! 俺の勝手だ!」
×「うるさい黙れ!俺の勝手だ!」

・「俺は朝飯を食った。」のように、『。』をかぎかっこの前におかない
○「明日は、駅で買い物をしよう」
×「明日は、駅で買い物をしよう。」

・間違ってもネットスラングは使わない
○「大変面白かった」
×「クソワロタwwwwwwwww」

○「OK、任せろ……ってちょっと待て!」
×「おk、まかせr……ってちょっと待て!」

B「……まあ、数え上げたらキリがないんだけど、よく見たり言われるのはこういうのかな。特に三点リーダと感嘆符や疑問符」

男「なるほど、普段手書きやメールだけで文章に接してる人には特に意識され無さそうだな」

B「ああ、だが一応厳密に定まっているらしい。どれぐらい厳密かというと、小説投稿サイトなどで三点リーダを間違えると読者に鬼の首を獲ったように騒がれるとかなんとか」

B「あとはあれだ、なんとか賞に応募するときこれが出来てなければ即ダストボックスにシュートされるとか」

男「マジか……怖いところだったんだな小説界ってのは」

B「細かいところは怖くなった時に自分で調べてくれ……といいたいところだが、もし男がSSしか書かないんであれば当面は気にしなくていいかもしれない」

男「どういうこと?」

B「Cが言ってたろ?『ルールなんてない』って」

男「まさか……SS界ってのは……」

B「そう、あえて言おう、SSにルールはない!」

B「ここでSS独自の文化に触れる。ネットの掲示板で発達した分野のSSはそのまま横書き文化にも通じることが多いから、横書き文化ともいえるだろう」

B「また、SSのウリは『手軽に読めること』だ、と俺は思う。普段小説など読まないような人でも楽しく読める。さて男、お前小説は読むか?」

男「お恥ずかしながらあまり……」

B「ふむ、では漫画はどうだ?」

男「それなら、毎週欠かさず読んでるよ」

B「重ねて聞こう、なぜ小説は読まないけど漫画は読むんだ?」

男「えっと……小説は文字ばかりで疲れるっていうか……漫画は文字だけじゃなく絵もあるし、誰が何やってるかもわかりやすいし」

B「そう、文章だけで想像力の翼を広げなければならない小説に比べ、漫画は情景描写やキャラの表情などを絵で視覚的に表現できる。その分脳を使わないから手軽に楽しめるというわけだ」

B「そして、SSはこの手軽さを獲得するために様々なものを試み、手に入れてきた。その例がこれらだ」

・文章作法に拘らない
『……』ではなく『・・・』も使う
『!』の後も一マス開けないでもいい

・『台本形式』と『地の文』に派生を始めた
後述

・擬音(など)を主に半角カタカナで表す
例:「自爆スイッチ~~~~~、ぽちっとな☆」チュドーン
例:「やあ、今日もカッコいい僕のために集まってくれてありがとう!」キャーキャーステキーダイテー

・文と文の間は基本的に一行空ける
ただしこの例のように、特定の固まりが見えるときは空けないときもある
理由は見やすさのため

B「これもほんの一例だが、特に『台本形式』と『半角擬音』が使われていると高確率でSSと分類されるだろう」

男「で、台本形式と地の文って何?」

B「『地の文』と呼ばれるものは、主にセリフ以外の部分を指す。一般的な小説などでこの地の文を見ないものは、狙ってやったのでない限りまず無いだろう」

B「対して『台本形式』というのは……ここまでずっと続けてきてる、俺たちの会話だ」

男「あ、メタ入った」

B「前回のおさらいも軽くやっとかないとな。さて、台本形式とは簡単に言うと、SSの中身が100%、またはそれに近い割合で」

(喋る人の名前)「喋る内容」

B「のようになっているものだ。演劇の台本などではこのように、話す人が頭に、その下に話すセリフが書いてある。だから『台本形式』だ」

B「ただし台本形式と地の文の分類も難しくてなあ……数行でも地の文が入ったら地の文形式だという人もいれば、地の文が多くてもかぎかっこの前に話す人の名前がつけば台本形式だという人もいる」

男「確かに……一般の小説ではかぎかっこの前に名前なんてついてないもんな」

B「別に図書館じゃないんだから、分類しなくてもだいたいのニュアンスで感じ取ってくれればいいけどな」

B「さて、先ほど台本形式と半角擬音が使われてたら高確率でSSだと言ったが、これがさっきの手軽に読めるというメリットにつながるわけだ」

B「台本形式が手軽な理由は、誰が喋っているか一目でわかることだ」

男「そりゃまあ……書いてるもんな」

B「ところが普通の小説だと、登場人物が多いと誰が喋っているか途中で見失ってしまうこともある。言葉に特徴がないとますます混乱する」

B「試しに第一章や第二章の適当なところのAとBを消してみるといい。どっちが喋ってるかわからなくなるはずだ」

C「あれ、僕は?」

B「Cは一人称が『僕』だ。対して男、A、そしてBは『俺』だ。語尾にヤンスとかウィッシュとかつけない限り見分けはつきにくいだろう」

男「なるほどでヤンス」

B「無理しなくていいぞ。そういったわけで小説では、地の文で誰々が喋ったと補足をつけたり、メインの女性は一人だけだから女性言葉を使ったらこの人だな、とわかるよう工夫してあることが多い」

B「一方台本形式は考える努力が全く必要ない。たとえこの先D~Zまでが出てきて次々と喋ったとしても、誰がどのセリフを言ったか一目でわかるわけだからな」

B「漫画でいえばキャラの顔から吹き出しが出てるようなものだ。視覚的にわかりやすいから手軽さが増える」

B「そしてもう一つ、半角擬音だ。漫画などでは割とお馴染みだろうし、視覚的だからわかりやすいという点で効果的だ」

B「これも例を出すと……」


―――――――――――

男「山田さーん、宅急便ですー!」

女「あらあら、ありがとうございます」

男「サインか判子おねしゃーす」

女「えっと、じゃあ判子で」

男「あじゃじゃしたー」

―――――――――――


―――――――――――

男「山田さーん、宅急便ですー!」ピンポーン

女「あらあら、ありがとうございます」ガチャ

男「サインか判子おねしゃーす」

女「えっと、じゃあ判子で」

男「あじゃじゃしたー」タッタッタッ

―――――――――――

B「上と比べてどうだ?」

男「下の方が、チャイム押してドアが開いて、最後男が走り去ったところまでわかるな」

B「ちなみにもう二個例を載せるぞ、まずは半角セリフバージョンだ」


―――――――――――

男「山田さーん、宅急便ですー!」ウーサムイサムイ

女「あらあら、ありがとうございます」スイマセンオマタセシテ

男「サインか判子おねしゃーす」イエイエシゴトナンデ

女「えっと、じゃあ判子で」イツモアリガトウゴザイマス

男「あじゃじゃしたー」マタヨロシクオネガイシマース

―――――――――――

C「僕はこれ結構使うね、ここまで毎文は入れてないけど」

B「先に言っておくと、割とこれ半角文化の中でも抵抗ある人多いんだよ」

男「えっ?でも情報増えてお得じゃね?」

B「情報が増えるから、かな。擬音なら流し読みできるが、文章だとしっかり読まなきゃ意味が伝わらない。そして半角カタカナは読みにくい」

B「あと、セリフならかぎかっこの中に入れればいいだろ?っていう意見だ」

C「でも漫画でも吹き出しの外にちょこっと書いてるのとかあるでしょ?ああいうの意識してるんだけど」

B「そう、つまりこれはさらに視覚的なイメージを優先させた結果だろうと思うんだ」

B「で、あと一つはおまけ、マシマシバージョン」


―――――――――――

男「山田さーん、宅急便ですー!」ピンポーンドンドンピンポドンドンドンドピンポピポピポピンポドンピドーン

女「あらあら、ありがとうございます」ベキバキバキバキガチャバァン!

男「サインか判子おねしゃーす」ビクッガクガクブルブルジョワー

女「えっと、じゃあ判子で」シュンシュンシュンシュンキュイィィィィィィン……ドッスン!!!

男「あじゃじゃしたー」スタコラサッサー

―――――――――――

男「何が裏で起きたんだ一体」

B「まあ、やりすぎるとかえって良くないってことで……」

男「しかし、おまけはともかく大体は何が起こってるのか結構わかりやすかったな、これが半角のメリットか」

B「そうだな、試しにこれを半角擬音でなく地の文でやってみると……」


―――――――――――

男「山田さーん、宅急便ですー!」

男はインターホンを押した。

女「あらあら、ありがとうございます」

ドアを開けて出て来た女は男の予想以上に若く、美しかった。さらに昼下がりの油断であろうか、胸元が緩く谷間がしっかりと覗いている。

男「サインか判子おねしゃーす」

男は動揺を隠しつつ形式通りの言葉を発した……つもりだったが、緊張のあまり呂律が怪しくなってしまう。

女「えっと、じゃあ判子で」

しかし女はそれに気づいた様子もなく、判子を押すために前かがみになった。自然、その無防備な谷間はさらに男の目前、手を伸ばせば触れることの出来る位置まで近づき、男は欲望と理性の狭間に揺れていた。

男「あじゃじゃしたー」

最後になんとかそれだけを言い残し、男は猛る己の分身を邪魔に感じながら急ぎ足で立ち去るのであった……。

―――――――――――

B「な?」

男「な?じゃねえよ。何でいきなり艶めかしくなってんだ」

B「つまり、地の文で背景描写を入れることは、文学的に……というのかは知らんが、細かい感情や動きの揺れまで描写できるというメリットがあるってことだ」

B「代わりにスペースを取る。さっきの半角擬音の二倍の行数になったぞ。あと結構背景描写を地の文で入れるのは難しい」

男「なんで?『男はそこの棚からメモ用紙を取った』とかでわかりやすくて簡単じゃね?」

B「毎回毎回~~をした、~~をする、って入れるのか?それでは流れも切れるし冗長になってテンポが悪くなるだろう。試しにやってみたらいい」

B「かといって台本と半角がいつも楽かというとそうでもない。セリフだけでは伝えきれない背景は地の文で伝えたほうがいっそ楽な時もあるからな」

男「どんな時?」

B「そうだな……たとえば戦闘描写、『ザクッ!スパッ!ドカン!』では何が起きてるかさっぱりわからない」

B「あとは……エロとか、かな……」

B「『んほぉぉぉ男君の肉棒しゅごいのぉぉぉ私の赤ちゃんのお部屋ノックしてりゅううううう』とか事細かにセリフで説明されても萎えるし、こんな女はいない」

男「いきなりんほーとか言うからBが壊れたかと思った……」

B「うるせえ俺も恥ずかしいんだよ」

男「ところでAはずっと黙ってるけど寝てるの?」

B「いや、Aはアンチ半角だから」

A「別に言うこともない。描写能力の薄さを半角で逃げるようなことは俺はしないだけだ。お前らは好きに使えばいい」

C「一々棘があるなぁ……あ、さっきも言ったけど僕は擬音もセリフも半角を使う派だよ。楽だしわかりやすいし」

B「ちなみに俺は擬音はやる。セリフはちょっと抵抗があってな……あと、地の文は挑戦中だ」

B「そういえばAは地の文だけでやってるんだっけ?」

A「どっちもやる。かぎかっこ無しで一本書き上げたこともあれば完全に台本でやったこともある。だが台本でも三点リーダなどは厳守しているぞ」

B「まとめの前に補足しておこう。さっき俺は、半角のセリフについて抵抗ある人が多いと言ったが……」

B「これははっきりとは知らないが、俺が普通に受け入れている半角擬音だって最初はそれは抵抗が大きかったんじゃないかと思うんだ。何故なら普通の小説から言えばまず考えられないテクだからな」

B「だが、俺は普通に受け入れている。このように、いずれは半角セリフも、第一章の注意書きも、普通のものとして見ることになるのかもしれないな」

男「時の流れってやつだな、馴染むのか埋もれるのか、あるいははっきりと分かれるのか。というところでまとめお願いします」

A「文章規則の基礎は同じ。半角文字は逃げ」

B「わかりやすく楽しいこと、見やすいこと、文章として成り立つこと、これらがあれば大抵のことは許されるはず、ただしまだまだ賛否両論」

C「SSは自由。何をやっても文句を言われる筋合い無し。時代が僕らに追いついていないだけ、ぐらいの気持ちで」

男「ところでさ、ライトノベルってあるじゃん。あれもなんか『最近のライトノベルはふざけてる』とか結構聞くんだけど」

B「ああ、良く言えば新時代の表現、悪く言えば小説ぶっ壊し……ってとこかな」

A「あれこそ文章への冒涜だ。フォントの変更や絵文字などばかげている」

C「工夫があって面白いじゃん?SSでは出来ないけど」


壁壁壁壁壁
壁●  箱
壁俺壁 <oh my God!
壁箱



B「これぐらいならなんとか……○とか●とか☆とかで記号化したほうが見やすいけどな。壁がゲシュタルト崩壊起こしそうだ」

B「ちなみにこの手のものを見たかったら『野崎まど劇場』という本が割とおすすめだ。持ってる友達を探して借りてこい」

C「そこは買おうよ」

男「SSからは離れるけど、AAを使った物語とかもよく見かけるな」

B「あれこそ漫画的な手法を多く取り入れてるな。文字の集まりだが絵があることと同じだし」

A「逃げだな」

B「お前今日それしか言ってねえな」


~第四章 終わり~

~第五章 書き溜め、即興、安価~


―――――――――――

242:支配人
勇者「おら、持ってきたぞ頼まれてた伝説の蛙の心臓!」

老賢者「おお、よくぞ成し遂げたな勇者よ。では約束通りお主に力を授けよう。右手を出すがいい」

勇者「ほらよ」

老賢者「むむむむむ・・・・・・・・・・・・きえーっ!」

勇者「な、なんだこれは、俺の右手が光って・・・・・・!?」

次の瞬間・・・・・・


243:名無し1
続きマダー?

244:名無し2
書き溜め無しかよ
即興やるには遅すぎ

―――――――――――

男「……と言われたわけだが」

A「ふむ、では今回は書き溜めと即興の違いについて説明するか」

B「まあそのままだけどな。作品をメモ帳などに書き溜めてるか、即興で書いた端から投稿してるかの違いだ」

A「それぞれのメリットデメリットについて箇条書きでまとめてみたぞ。まずは書き溜めだが」



☆書き溜めのメリット
・誤字脱字のチェックがしっかり出来る
・ストーリーのチェックが出来るから物語が破綻しにくい
・しっかりしたプロットが出来るし、凝った伏線も仕込める
・(完結まで書き溜めた場合)途中で作品が頓挫しない
・投稿する時間の目安がわかる(何レスあるから一レスあたり何分、という計算)
・ミステリ系やシリアス系、長編に向く


★書き溜めのデメリット
・うっかり大長編に手を伸ばしてしまい、完結させる前にギブアップ
・「続きは明日やろう」がエンドレス
・力を入れ過ぎて空回り
・注入した労力の割にレスポンスがなくがっかり

A「他にもあるだろうが、さらっと思いついた分ではこんなもんだな。デメリットの多くが単に作者の心情問題だというのは面白い」

B「書店とかで並んでる本は当然だが書き溜め状態だからな。こっちのほうが触れる機会も多いだろう」

A「ちなみに、例えば全三話構成で一話ずつ書き溜めて投稿というのも書き溜めの分類だ。メリットの(完結まで書き溜めた場合)というのはそういうことだ」

A「続いて即興のメリットデメリットを見てみよう」



☆即興のメリット
・反応を見て軌道修正がしやすい
・やろうと思った時にすぐできる
・こつこつ書き溜める習慣が必要ない


★即興のデメリット
・細かいチェックが出来ない
・次の投稿までが遅いと読者に飽きられる
・タイピング速度が必要
・話が修復不可能な方向へ飛んでいくと誰も戻せない

男「あんまりいいことない……かな?この軌道修正がしやすいってなんだ?」

B「身近な例でいえばジャンプやサンデーとかだな。週刊連載はアンケートで人気がわかる。落ちてると思ったらテコ入れをして人気回復を望めるわけだ」

A「引きを上手く使ったり謎の新キャラ、唐突なエロシーンなどなど……興味を引く要素を好きに差しこめるのが即興のメリットだろう。書き溜めると一部を修正するために全体がねじ曲がってしまう危険もある」

B「だがテコ入れをやりすぎると修復不可能になっていくからな。こうなるとあとは夢オチにするしかないとなるわけだ」

A「最後の手段だぞ。夢オチはオチじゃないからな」

B「さて、即興の最大のメリットは読者と作者がリアルタイムで時間を共有しているところにある。これを最大限に生かすのが『安価』だろう。安価こそ即興が最大限に輝く方式だ」

男「ちょちょ、ちょっと待ってくれ。なんで値段の話が出てくるんだ」

B「値段?」

男「いきなり安価がどうとか……即興には金がかかるのか?」

C「あはは、そうじゃないよ。『安価』っていうのも一つの書き方なんだ」

B「掲示板独特の手法と言っていいだろうな。元々は、基本的に全員名無しの掲示板の中で誰に向かって発言しているのかわかりやすくするように指し示したものだ……というか、おまえやってただろ?」

A「>>○○、というように>>のあとに数字を書くと、それに応じたレス番号の相手に発言しているとわかりやすい、ということだ」

男「ああ、これが安価っていうのか……」

A「通常は前に発言した相手……つまり過去に向けて指す過去安価だが、作品などで『このあとどうする?』と聞く場合は先に向けて安価する。これは未来安価というが、まあ呼び方は二つ合わせて安価と覚えておけばいい」

A「ちなみに正式名称は『アンカー』だな、誰も使ってないが。ではメリットとデメリットだが、先ほどの即興のメリットデメリットと合わせてみろ」

☆安価のメリット
・読者参加型が可能となるため盛り上がりやすい
・(作者を含めて)誰も先が読めないため、ドキドキする
・いつもより脳を使って楽しい


★安価のデメリット
・人が少ないと安価を誰も取りに来ず、話が進まない
・どうなるかわからないため、物語破綻度は高い
・いつもより脳を使って辛い


○安価関連用語
安価下:安価指定されたレスの一つ下のレスのこと。安価先が「安価下」と言っていたら、一つ下のレスを安価内容にしてくださいね、という意思表示。単純に「↓」、「下」と表すことも
安価上:安価下の上版
ksk:「加速」の略。安価先までレス番号がかなり遠いとき、速度を上げて速くそこまで到達するための消費用レス。
st:「下」と同じ意味。単体で使われることは少なく、「kskst」で速度を上げ、うっかり安価を取ってしまったら下にずらしてもらう、という使い方が多い
再安価:もう一度安価すること。安価先が遠すぎたり通り過ぎていたり不慮の事故が発生していた時は推奨。面倒なときは安価下でもいい

B「安価最大のメリットは、リアルタイムのライブ感に尽きるだろうな。一読者が、自分のアイディアで物語を動かすきっかけを作れる。安価争奪が激しいほど、選ばれた読者は嬉しいだろう」

A「もちろん相応に作者の腕が試される。タイピング速度もそうだが、脳の回転が試されるわけだ。上手く安価を話しに取り込んだ時など称賛の嵐で脳汁がドバドバだぞ」

男「メリットとデメリットに『脳を使って』が入ってるんだけど、どっちなんだこれ?」

A「自分の引き出しを最大限に活用できて楽しい。だがその安価作品が続いている限りは集中力と指をフル活用していて、疲労も激しいということだ」

B「安価は一種のスポーツだという話もあるほどだな」


C「ちょっと待って、デメリットに大切なことが抜けてると思うんだけど」

男「どういうことだ?」

C「『酷い安価が来たら物語が壊れる』は?大切なことでしょ?」

A「ふぅ……やはりCには安価のなんたるかを最初から教え込まなければならないか……」

A「いいか、安価をやる上で必ず守らなければならないことがある。この言葉を心に刻め、さもなくば安価などやるな」

『安価は絶対』

B「ああ、やはり避けては通れないのか」

男「その口ぶりだとまたややこしい問題のようだな」

B「ややこしいなんてもんじゃないな、安価において最も大変な問題だと言えるだろう」

男「そんなに……?」

B「この問題によって潰れた安価スレは一つや二つではない……が、だからこそ説明しないわけにもいかない。悲劇は繰り返してはならぬ。俺頑張るよ」

男「なんか悪いないつも……」

B「落ち着いて説明したいからAとCはあまり口挟まないでくれ」

A「いいだろう」

C「わかったよ」

B「まあ説明するまでもないが、『安価は絶対』の言葉の意味を説明しようか」

男「『安価で指定されたことは絶対に守れ』ってことだろ?」

B「そうだな、そしてそこから色々な悲劇が起こる……可能性がある、ともいえるだろう」

男「歯切れ悪いなぁ」

B「一概に悲劇とは言えないからだよ。まあとりあえず、いくつか悲劇の例を見てくれ」

―――――――――――

21:作者
勇者(Lv1)「今日から俺も勇者だ!じゃあまずは>>23をするぜ!」

22:名無し
スライム狩り

23:名無し
魔王に突撃

24:名無し
アルバイト

24:名無し
おいふざけんな>>23

25:名無し
文句言いたきゃ自分で安価とれよ

26:作者
勇者(Lv1)「覚悟だ魔王!」

魔王「何だこの雑魚」ザクッ

勇者は死んだ
GAMEOVER

27:名無し
糞安価
>>23も氏ね
>>1も安価下にしろや

―――――――――――

B「さあ止まらないぞ、火ぶたは切って落とされた」

男「ああ、もう荒れに荒れるのが目に浮かぶ」

B「さて問題です、この先荒れたとして今回一体誰が悪かったのでしょうか?はいA」

A「決まっているだろ、安価に文句を言っている奴らだ。作者もひねりがないとはいえ素直に受け取り素直に実行した。安価で安価通り動いて何が悪い」

男「ああ、こんな喧嘩売ったような発言しなきゃ荒れそうにはなかったし、作者はそのとおり動いただけだから怒られる筋合いはないな」

B「ではC」

C「作者が悪いよこれは。いきなり勝てない戦いでゲームオーバーにしたらブーイングが出るのも読めてたはずなのに安価下にする機転も効かないなんて」

男「そう言われれば、作者がいきなりゲームオーバーなんて危ない橋渡らなければそもそも悪口は発生しなかっただろうな」

B「本当にそうだろうか?ではもう一つのパターンを見てみよう」

―――――――――――

21:作者
勇者「よし、じゃあ次は>>23をするぜ!」

22:名無し
スライム狩り

23:名無し
魔王に突撃

24:名無し
アルバイト

24:名無し
おいふざけんな>>23

25:作者
勇者「よし、アルバイトで金を稼ぐぞ!」

勇者は100ゴールド手に入れた!

26:名無し
は?何勝手に安価下にしてんだよ
選り好みするなら安価なんてやんじゃねーよ

―――――――――――

B「はい第二ラウンド」

男「今度は回避した結果こうなったのか……」

B「じゃあさっきと同じ質問だが」

A「安価をしておいて選ぶのであれば安価の意味がない。安価を取った相手にも失礼だ」

C「無茶な安価は流せばいいよ、その方が話がまともに進むし」

A「まともだと?安価に読者がそれを求めてると思ってるのか?何より安価を変えるのは自分がその展開を書く自信がないだけだろう?」

C「だったら尚更酷い安価は避けるべきじゃないかなあ。そのままグッダグダになって終わるより数千倍いいはずだけど」

B「今いいキーワードが出たな。『酷い安価』……では、いったい何がどうなれば酷いのか?」

男「そうだな……いきなり誰かが死んだり?」

B「他には?」

男「話の流れを無視するような場所に移動したり?」

B「ふむふむ、他には?」

男「えっと……誰かが死ぬとか……?」

B「もうネタ切れかよ。まあいいや、例文もないのにいきなり酷いものを考えろと言う方が難しいし」

B「で、今あげてもらった例も含めて一体何が酷い安価なのかと言えば……」

男「言えば……?」

B「『全て酷い安価ではない』かな」

男「はあ?だってお前、さっきは勇者が魔王に突撃しただけで荒れたんだぞ、あれで荒れてこれでどうして酷くないんだよ」

B「まあ待て、その後に『俺にとっては』がつく。男よ、さっきAがあげた安価のメリット覚えてるか?」

男「ああ、参加型とか先が読めないとか……」

B「まさにそこなんだよ。『不意な登場人物の死亡』はまるで先が読めない。『いきなりの強引な移動』も展開が全然読めない。そして、先が読めないからこそ面白いんだ」

男「いやいや、そんなこと言ったって人が死んだりしてなんで面白くなるんだよ……」

A「わからんぞ?例えば死んだことを後で何かに関連付けて、セル戦の悟空悟飯親子かめはめ波みたいな展開に持っていくこともできるかもしれない」

B「そういった化学反応が起きてこそ、安価の醍醐味がある……そう考える人は少なくないんだ」

B「別にそんなふうに捻らなくても、安価通り誰かが死ぬだけ、どこかに移動するだけでも何か新しい展開は起きるだろうし」

B「別に『安価は絶対』でなくても、『作品が滅茶苦茶になる安価』と作者が思わないなら取り入れるだろう」

B「が、その線引きは人それぞれだ。先ほどのように、その読者にとって物語を壊した酷い安価であれば、悪態の一つ二つ投げかけていくことも稀ではない」

男「なるほど、やっぱり出来るだけ安価は絶対のほうがいいんだな……できるだけ絶対って何か矛盾してるな」

B「ところが、必ずしも安価が絶対であるとは……少なくとも俺は思わないな」

男「どういうことだ?さっきは守ったほうがみたいなこと言ってたのに」

B「この『安価は絶対』……基本的には雑談板のネタスレ文化だと思うんだよ。SSには必ずしも適用されなくていいと俺は思うんだ」

―――――――――――

1:いっち
鍋の具安価で決める
>>3
>>5
>>8

3:名無し
白菜

5:名無し
豆腐

8:名無し
イチゴジャム

10:いっち
安価は絶対だからやるけどもう食う前からこんなん絶対不味いですやん

―――――――――――


B「こういうときイチゴジャムを再安価すると面白みは減るな」

男「でも『たわし』とかだったらどうすんだよ……それでも安価は絶対なのか?」

B「そうだな……人によるが、鍋の具と言っているのだから最低限食い物であれば守る、食い物以外であれば再安価しても許されるだろうか」

B「もちろん本当にたわしを煮てるところの写真を見せたら盛り上がるだろうが。あくまでネタ的に」

B「そんなふうに無茶を無理に押し通して楽しいのはネタスレだからこそであって、SSが同種かと言えば少し違うと思うんだ」

B「かといってSSの安価で無茶ぶりは出来ないのか?といえば、それもまた違うと思う。SSは創作だからこそ、ありえないような無茶が可能になるんだ」

B「いわゆる無茶ぶりというやつを、現実とSSのそれぞれの例で考えてみると……」


―――――――――――

1:いっち
東京からチャリでどこでもいく
行き先>>3


3:名無し
イタリア


4:いっち
チャリっつってんだろうがヴォケ

―――――――――――


男「これは……流石に無理だな」

B「『どこでも』と言った以上仕方ないが、現実的に不可能すぎると流石に興ざめになってしまう。だがSSは創作なので……」

―――――――――――

1:作者
男「あー、放課後暇だな、おいどっか遊びに行こうぜ」

友「おう、どこいく?」

行き先>>3


3:名無し
イタリア


4:作者
友「イタリアでも行くか。おいセバスチャン、自家用ジェットの用意を」

セバスチャン「御意」

男「え、いや冗談のつもりだったんだけど……ってかお前お坊ちゃまかよ!」

―――――――――――


男「なんというやりたい放題」

B「だがこれが出来るのがSSだ。だからこそ面白い」

B「そしてイタリアに行ったからにはまた色々な新しい展開が生まれるだろう……あるいは次のレスで既にブラジルに飛ばされてるかもしれないが」

B「話がとっちらかってきたから軽くまとめると、『安価は絶対』は『酷い安価』には適用しにくいが、『酷い安価』は人による、ということだ」

B「これを見失うと、作者にとっては何てことない内容でも、それを気に入らない読者が暴れがちになってしまう」

男「ということは、やっぱり読者が気に入らなさそうな安価はスルーしろってことか……?」

B「いやー、俺のスタンスは『基本的に遵守』だからそうは言えないな。というかそんな反応ばかり気にしてたら疲れるだけで楽しくないし」

B「つーかもう何書いても気に入らないと思うやつはいるしな!」

男「うわぶっちゃけやがった」

B「だが大事な意識だ。どんな名作でも何かしら誰かに気に入られないところは存在する、ということを、とりあえず知っておくだけでいいから覚えておこう。そういうものだと知っていることが大切だから」

B「さて、散々絶対がどうの無茶ぶりがこうのと話してきたが、ここまでで安価スレに対してどう思った?」

男「いやぁ……俺はあまり頭の回転早くなさそうだし、いきなり話がぐるっと変わるような安価を放り込まれたら処理しきれなくなりそうで難しそうだなと」

B「そうだな、メリットとデメリットでもあげたが、とにかく脳を使うだろう。なぜ使うかと言えば自分が想定もしていない事態を物語に落とし込まなければいけないからだ」

B「だが、実はこの負担を軽くする方法がある。Cはやったことあるだろうな。Aは?」

A「ある。もちろん自由安価付きだが」

B「じゃあ交代な。俺はもう疲れた」

A「なっ……まあいいだろう」

A「さて、先ほどからBが繰り返していたように、安価が大変なのは想定しない事態が起こるからだ。では、どうすれば大変でなくなるのか?」

A「答えは簡単、ある程度その先を想定していればいい。そうすればあらかじめ道筋が構築できる分、疲労も軽減されるだろう」

男「あらかじめって……どうやるんだよ?心でも読むのか?メンタリズムか?」

A「何が来るかわからないのは、読者が好きに安価に答えるからだ。これを『自由安価』などと言う」

A「そして、その逆にこちらで展開の選択肢を用意し、その中から選ばせる。これを『選択安価』などと言う」

男「選択肢を作る……ノベルゲーみたいにするってことか」

―――――――――――

1:作者
男「あー、放課後暇だな、おいどっか遊びに行こうぜ」

友「おう、どこいく?」

行き先>>3
1:公園
2:ゲーセン
3:友の家


3:名無し



4:作者
男「よっしゃ、ゲーセン行こうぜ」

友「久しぶりに腕が鳴るな」

―――――――――――


A「このようにすれば、選択肢を選ばれる前からある程度それぞれの展開を想像することが出来る。選ばれた後はそれをつつがなく処理すれば焦らず進行できるだろう」

男「なるほど、これなら俺にもできそうだな」

A「だが、自由安価と比べて読者が自分で物語を動かしている感じが薄れるという効果がある。男はノベルゲーをやったとき、『自分が物語を作っている』と感じるようなことはあるか?」

男「いや、選択肢から分岐してるストーリーを追っている、としか思わないかな。自分で作ってるとはとてもとても……」

A「そう、読者参加型でありながら読者の参加感が薄れる。これは非常にもったいない事であると俺は思う。そこで、多くのスレでも採用されている複合型がある」

―――――――――――

1:作者
男「あー、放課後暇だな、おいどっか遊びに行こうぜ」

友「おう、どこいく?」

行き先>>3
1:公園
2:ゲーセン
3:友の家
4:自由(行き先指定)


3:名無し
男の家


4:作者
男「久々にうち来いよ」

友「じゃあ一回家戻ってゲームのコントローラ持ってくるわ」

―――――――――――


A「作者はある程度思考に備えがあり、読者は自由に選ぶこともできる。ある意味いいとこどりというやつだな」

男「ちなみに、ここで『イタリア』が出たら……」

A「無論実行しろ。選択肢に自由安価を置くということはそういうことだ」

男「うへぇ、やっぱりか……捌く自信がねーよ俺には」

C「そんなときにはいいアイディアがあるよ!」

男「お、どんなのだ?」

C「最初に注意書きをするんだよ!」

男「注意書き……うっ、あたまが……」

C「なんでトラウマになってんのさ!とにかく、安価をやると唐突にとんでもない方向に飛ばされることがあるよね、それを防ぐ手段だよ」


―――――――――――

1:作者
※エロ、グロは安価下

男「あー、放課後暇だな、おいどっか遊びに行こうぜ」

友「おう、どこいく?」

行き先>>3


3:名無し
おっぱいパブ

4:名無し
男の家


5:作者
男「久々にうち来いよ」

友「じゃあ一回家戻ってゲームのコントローラ持ってくるわ」

―――――――――――


男「なるほど……こうすることで意図せぬ方向や苦手な方向に飛んでいくのを防ぐのか。でもなあ……これでも安価は絶対だろとか言われるんだろうなあ……」

B「いや、このパターンの場合はそういうことはほとんど見ない、と考えていいだろう」

男「お帰りB。で、なんで?」

B「そうだな、安価スレというのは読者参加型だと何度も言っているけど、作者も読者も混じった遊びみたいなものなんだ。みんなで一つの話を作る遊び」

B「だが、遊びにも決まりは……ここ、あえてルールって言わないのをなんとなくニュアンスで伝わってくれると嬉しいんだが、決まりがないと収まりがつかないこともあるだろう」

B「安価スレはTRPGのように自由度が高い。そして、作者はその中でGM、ゲームマスターともいえるんだ。実際に話を紡ぐのは作者一人だしな」

B「だから、安価スレで楽しく遊べるために作者、GMがちょっとだけ縛る。さっきの例で言えば、今回はエロ話方面で遊ぶわけじゃありませんよ、と言うんだ」

B「そうすれば読者にも伝わり、みんなもそういう遊びをしようと思ってくれる。それでこそお互いに作り上げる遊びだろう」

B「再度ぶっちゃけると、手綱がないとすぐにエロかホモに飛び込んでいくこともままあってな……」

A「俺の場合は野球部で女子マネージャーと付き合うのを目指す話だと思っていたら、気が付いたら男子部員全員を攻略することに目標がすり替わっていたぞ」

男「おおう……」

B「あ、決まりを宣言するときの注意だが、出来るだけ最初のほうに言うのがいい。安価が取られてから『ごめん、それ無理☆』って言うと乱闘が起きるぞ」

A「安価を取るのは気持ちいい。そして、それを取り上げるのは非情なものだ」

C「2回ぐらいやっちゃったことあるけど、特に何も言われなかったよ?」

B「運が良かったと思うべきだなそれは」

男「随分長くなっちゃったけどそろそろまとめお願いします」

B「うーむ、書き溜めと即興について話してるはずがほとんど安価について話してた気がする……」

A「書き溜めは大変だが安全。安価は絶対。自由安価は疲れるがやり遂げた時は快感」

B「慣れないうちは書き溜めたほうがいいかも。リアルタイムで遊びたければ安価は楽しい。怖ければ選択肢でも」

C「僕は話しながら作っていくタイプだからあまり書き溜めはしないかな。安価は楽しいけど、再安価を出すときは元の安価が意地悪なものじゃなかったらちゃんとごめんなさいしようね」

B「安価の専門用語と言えば……」

A「あったな、酷い事件が……」

男「なんだ?二人とも怖い顔して」

B「いや、安価の専門用語のところでいくつか話しただろ、その中でな……」

A「『kskst』という単語の意味を知らない作者がいたのだよ。そして、『何かよくわからない意味不明の単語』として処理してしまい……」

B「……ああ、思い出すだけで……!」

男「なんだよ、そこまで言ったなら言えよ……」

A「いや、これも練習だ。『知らないことは調べよう』といういい訓練だろう」

C「画面の前の皆も、気になったらググってみよう!」

男「あ、メタだ」


~第五章 終わり~

~第六章 オリジナル、二次創作~

男「ふむふむ、しかし改めて掲示板のスレッド一覧を見てみると、SSって大量にあるんだなあ」

B「そうだな、誰でも始められるし、ネットに繋がれば出来るという点では楽な娯楽かもしれないな」

男「でもタイトルの多くが『○○「~~~~」』になってるけど、これ台本形式の一文みたいだな」

A「普通に凝ったようなタイトルを考えるよりも、作品の性質がわかりやすいという利点がある。タイトルは普通に考えるよりも重要だぞ」

A「タイトルは表紙のようなものだ。ここでインパクトを与えれば思わずスレを開く読者もいるだろう」

B「普通に『エロゲ版桃太郎』って書くよりも『桃太郎「犬猿雉が全員美少女だった……」』のほうが目を引くと思わないか」

男「その例はもうどっちも気になるけど。でも、俺が名づけた登場人物が『義雄「由美子が性転換してマッチョになって帰ってきた」』とか言ってても気になるか?」

A「ふむ、では今回はそこを考えるために、オリジナルと二次創作について考えようと思う……が」

男「が?」

A「俺は二次創作は一切やらない。そしておそらく二次創作のほうが説明を先にした方がいいので、誰か先にやれ」

B「じゃあまた俺が……」

C「はいはい、二次創作なら僕が説明するよ!」

男「おお、珍しくやる気なCだな」

C「今までずっと不遇な扱いを受けてきたような気がするからね。今回はしっかり出張らせてもらうよ」

B「まあ、補足があったら俺がしよう」

男「じゃあC、よろしくお願いします」

C「まず基本事項だけど、二次創作ってなんでしょうか?」

男「そうだな、コミケとかで売ってる同人誌とか?」

C「んーと……半分当たりだけど半分外れかな」

B「同人と言えば二次創作でエロ、なぜかそんなイメージが付きまとっているようだが同人にも一次創作はある、というか別に少なくないぞ」

B「ただ今回の話の中に同人と商業の話まで入れるといよいよ日が暮れても終わらないので、流通や著作権の事も含めてまとめてスルーさせてもらう」

C「『二次』とついているように、元作品から影響を受けたり舞台を借りて創作したものが二次創作なんだ」

C「二次創作に影響を受けて作られたものを三次創作、さらに四次、五次という見方もあるけど、基本的には『一次創作=オリジナル』との対比として考えてくれたらいいよ」

男「ざっくりいうと、元ネタあり=二次創作、元ネタなし=オリジナル、ということかな」

C「二次創作をやるってのは読者も作者も嬉しいことがあるんだけど、どんなことだと思う?」

男「えっと、俺の場合は基本的に読者だったからそっちを考えると……好きなキャラや作品のいろんな話が見れることかな?」

C「そう!読者は面白い作品を読みたいし、それが元々好きな作品だったのなら思い入れもあるから余計楽しめるんだ」

B「イラストなんかでいうと、オリジナルの絵と明らかに違う画風だとしても、それが同じキャラだと認識出来ればそれで十分楽しめるわけだしな。それだけ好きな作品という補正は強い」

C「そして読者がそれだけ好きな作品ということは、その二次創作だというだけで見てくれる可能性があるんだよ。これが作者にとって嬉しいことの一つだね」

男「なるほどな、書いた以上は多くの人に見てもらいたい。ファンが多い作品になればなるほど見てくれる人も多くなるということか」

B「リアルタイム、もしくは寸前まで放送されていたアニメ作品などは特にその二次創作が増える時期だ。……ほとんどはその後時期を置かずに激減するんだが」

C「大量消費社会の闇だねー」

B「そしてもう一つ、二次創作にとって大変な強みがある。それは、設定の説明をしなくていい事だ」

男「設定の説明?」

B「そうだな……たとえば男、世界一有名な配管工ことマリオの世界といえばどんなことが思いつく?」

男「えっと、マリオは赤くて帽子でヒゲで、キノコのキノピオとかお城のピーチ姫とかがいて、敵には亀のノコノコとかでかい亀のクッパとかがいて……」

C「……っていうのを一から説明する必要がないってことだね。何故なら有名な元ネタがある作品だから、お互いに設定を知っているわけだから」

男「でもさ、仮にマリオを知らない人がいたらどうするんだ?置いてきぼりか?」

B「そういう人は、マリオの二次創作を基本的には見ない」

男「ああなるほど……だからアニメ化された作品の二次創作が増えるのか」

C「そうだね、アニメ化されたということは有名になったということだからマイナーな作品よりずっと書きやすいはずだよ」

B「ただしここで注意がある。二次創作をやる上ではある意味では最も注意しなければならないことだ。作品に人気があるほど注意すべきだろう」

男「それは……?」

B「呼称だ。これを間違えるや否や『にわか乙!』で1000まで埋まると言っても過言ではない」

C「過言だよ流石に」

B「基本的に二次創作は『その作品が好きだからやっている』というスタンスだ。なのに大事なキャラ同士の呼び合いなどで名前を間違えるということは『実はあまり知らない=好きではない』と思われることに繋がってしまう」

B「俗に有名なのは『魔法少女リリカルなのは』の『八神はやて』の一人称かな。このキャラは関西弁なのでついつい『うち』にされがちなのだが、正確には『わたし』なんだ」

B「しかもこういうのはキャラが多ければ多いほど大変だろうな。今すぐ手元に届くところに原典がないときは、しっかり調べておいたほうがいいぞ」

B「さて、ここでタイトルの話に戻って来ようと思う。タイトルの付け方と言えば『わかりやすい』『目を引く』のが理想だが、ある作品の二次創作のSSを読む人にとってわかりやすいタイトルとは?」

男「そりゃもちろん、タイトルを書くことだろ。【ドラえもん】みたいにしてる作品も見たぞ」

B「それも一つ。そしてもう一つは、その登場人物の名前を使ってセリフを言わせることだ」

B「『のび太「ドラえもんが液体金属のボディになった」』と書かれていれば、一目で作品の軽い説明と元ネタを説明できるうえに、目を引くワードで興味を持ってもらうことが出来るだろう」

男「ああ、だからその形式のタイトルが多いのか!」

B「もちろん普通にタイトルを書いているものもあるが、いまだにセリフタイトルのほうが根強いようだな」

C「さて、タイトルの話も分かったところで、さらにもう一つ二次創作の醍醐味を教えてあげよう」

男「醍醐味だと……?さらにこの上に凄いのがあるのか」

C「そりゃもう凄いよ。公式には絶対に産まれない組み合わせすら出来るのが二次創作だからね」

C「ずばり、『クロス』だよ!」

男「クロス?」

B「ある作品と別の作品の世界観や登場人物を掛け合わせた作品の通称だ。例えば『鉄腕アトム』と『サザエさん』のように一見何の関係もなさそうな組み合わせでも作者の自由に作ることが出来る」

男「お魚くわえたどら猫追っかけてマッハ5の世界か……見たいような見たくないような」

C「自分の好きな作品と好きな作品を合わせて話を作れるんだから楽しいよ!」

B「しかも場合によっては二つの作品のうちどちらかだけを知ってる人でも見る可能性があるから集客率は二倍まで行くかもしれない」

男「おお、凄いなクロス」

B「だが一つ問題が……」

男「いやもう覚悟してた。何かやるたびに問題があるんだもんな」

B「まあ聞け。このクロス作品、無事に終わった試しが……いやあるんだけど、下手すると無事に終わらないこともあるんだ」

男「無事にとかどうとかまた物騒だが、どういうこと?」

B「例えばそうだな、『ドラゴンボールVSドラえもん、頂上決戦!』という作品を書いたとしよう」

男「両方大人気漫画だな。何故それを組み合わせたか気になるところだが」

B「そして両方ファンが多い作品となる。ここで悟空がドラえもんを叩きのめしたとしたらどうなるか」

男「うーん、ドラえもんのファンから文句が出る?あの道具使えば余裕だろ、みたいな」

B「その通り。そして逆もまた然り、というわけだ。二つの作品を組み合わせた時に、優劣を決めてしまうのは大変恐ろしいことなんだ」

B「フレディVSジェイソン、エイリアンVSプレデター、ルパンVSホームズ……俺の知る限り、このどれも明確に優劣をつけることをしなかった。商業だからこそ出来なかったんだろう」

B「二次創作の舞台でも、安易に掛け合わせて安易に優劣を決めるのは、どちらかのファンにとって、あるいは両方にとって気持ちが良くないものだろう。やるなら慎重に、だな」

男「でもこの前は批判はどうやっても出るんだから好きなものを書けばいいって言ってなかったっけ?」

B「それは、何かを貶めないときだ。作品間に明確に優劣をつけてしまうことは、望むと望まざるにかかわらず一方を上げ他方を下げることになってしまう」

男「難しいんだなあ。Cはどうやってるんだ?」

C「僕?僕別にバトル物とか書かないもん。大抵緩いギャグとかだよ」

男「ああ、その手があったか……」

B「クロスついでにもう一つ話しておこうか。といっても今度は既存の作品とクロスさせるわけではない方法だ」

男「既存ではない……?」

B「そう、作品にオリジナルキャラクターを混ぜてしまうという、ある意味小学生のころからの夢の具現化のようなものだ。この場合追加されるキャラは『男』『俺』などになる場合が多い」

男「『俺』って……作者登場?」

B「いや、この場合のニュアンスはほとんど名無しに近い。作者自身が色濃く反映されているわけでもない」

B「そして、その男なり俺なりが既存の作品でキャッキャウフフしたり未知の能力で無双したりするわけだな」

B「……言っておくが、あまりどちらもお勧めしないぞ。少なくとも今の時世で俺TUEEEEEは万人に快く迎え入れられることは少ないだろう」

男(ちょっといいなと思ってしまった)

A「随分長く待たされたが、ではオリジナルの話に移ろうか」

男「と言っても、オリジナルってそのままオリジナルってことだろ?」

A「そうだな、二次創作と比べれば多くは話すこともない。が、一応少しは押さえておけ」

A「さてまず男、お前が例えば小説の賞にオリジナル作品を投稿しようと思うとき、まず何を考える?」

男「そうだな、やっぱりストーリーがないと困るな」

A「他には?」

男「えっと……キャラを考えるかな。名前とか容姿とか」

A「そこだ。その作業においてSSとは大きく違うところがある」

男「えっ……まさか名前?」

A「そう、名前はいらない。なぜなら基本的に必要がないからだ」

男「それじゃどうやってキャラを見分けるんだ?」

A「キャラが男なら『男』、女なら『女』、友達は『友』、兄弟姉妹はそれぞれ『兄』『弟』『姉』『妹』、父、母、幼馴染、金髪、幼女……これでは見分けがつかないか?」

男「いや、それだったら友達が複数とか、二人目の金髪とか見分けがつかないだろ」

A「複数出るなら123でもABCでもつければいい。属性がかぶるキャラは出す必要がどうしてもあるのでなければ出さなくていい」

男「なんでそこまでして名前をつけないんだ……?」

A「簡単だ。名前は『情報』だからだ。しかもかなりウェイトが大きい」

男「情報?」

A「例をあげよう。ここに、『雄太』『哲也』『高志』の三人の高校生がいたとする」


―――――――――――

雄太「おはよー」

哲也「おう雄太おはよう」

雄太「高志は?」

高志「あっぶねー!遅刻ギリギリセーッフ!」

哲也「今日もかよ。お前毎日走ってんな」

高志「いやー、今日は道に迷ってた猫を道案内してる途中で、車道から飛び出したお婆ちゃんに轢かれかけた車を助けててさ」

雄太「混ざってる混ざってる、わけがわかんねーよもう」

権一「おーいお前ら席につけー」

―――――――――――


A「さて、ここから物語が始まったとして、誰が話の主人公だろうか?」

男「え……最初に喋った雄太?」

B「いや、ここはドラマチックな朝を過ごした高志だな」

C「主人公は最初に出番が少ないもんだよ、哲也でしょ?」

A「正解は……権一だ」

男BC「なんでだよ!!!」

A「教師物語だったんだな実は」

A「まあこれはひっかけ問題のようなものだが、名前とは覚えにくいものだ。特に今回はわざと漢字二文字で統一しているからなおさらな」

A「後になって読者が『あれ?朝遅刻しかけたのは雄太だっけ?高志だっけ?』となったときもう一度ここを読み返さなければならないのか、それはとても面倒だろう」

A「そこで簡単にこいつらをABCと男で分類してみるとだな」


―――――――――――

A「おはよー」

B「おう雄太おはよう」

A「高志は?」

C「あっぶねー!遅刻ギリギリセーッフ!」

B「今日もかよ。お前毎日走ってんな」

C「いやー、今日は道に迷ってた猫を道案内してる途中で、道に飛び出したお婆ちゃんに轢かれかけた車を助けててさ」

A「混ざってる混ざってる、わけがわかんねーよもう」

男「おーいお前ら席につけー」

―――――――――――


A「いかにもABCはモブだな」

男「確かにモブの名前は特に覚えなくてもいい情報なのか」

A「『男』と『友』がいれば『男』のほうがメインキャラだろう。名前という余分な情報なしにそのキャラの持つ属性を的確に表す。これがSSで一般的なオリジナルだ」

男「うん、まあ名前が覚えにくいのはわかったけど、それだけで没個性な名前にしちゃうってのもどうなんだろう」

A「ほう、男、お前は没個性をデメリットだと思っているようだな」

男「え?だって普通は個性あるキャラのほうがいいっていうじゃん。個性が薄いから目立たないとか」

A「個性があるのはキャラをたてるのには必要なことだ。だがSSにおけるキャラ、特に主人公においては特に個性は必要ない事が多い」

男「どういうことだよ……?」

A「では男よ、キャラに『普通の男子高校生』としか書かれていないとき、お前は不便を感じるか?」

男「良くありがちな冒頭のキャラ説明だよな。別に不自由したことはないな」

A「では重ねて聞くが、お前にとって普通の男子高校生とは?」

男「えっ……そりゃ学ランで、黒髪で、適当な運動部に入ってるような……」

B「うちの学校はブレザーだし、茶髪OKだな」

C「うちは制服無いよ。半分ぐらい文化部だったし」

A「そう、『普通の男子高校生』と言いながら、その実普遍的なものなどまず無い。そもそも『普通の男子高校生』は個性足りえないんだ」

A「ではなぜその一文でもキャラ説明が済んだ気になるのか。それは、各々が自分の中で補完するからだ。男と言われれば自分の中にある男の像を、美少女と言われれば美少女を」

A「そして読者が世界観に入り込むときに、強烈な個性は邪魔をする。そこには自分を投影する隙間がないからだ。この時に没個性はデメリットどころか大きなメリットとなる」

A「まあこれは自己投影できる作品の話であって、特にそうでないことも多いがな。名前がつかない大きな理由はやはり覚えにくい、覚える手間が面倒である、情報過多である、というところだろう」

A「ちなみに、名前がつかないのがオリジナルで一般的なことから、逆に名前がついていたら何かの二次創作だと思われることも少なくない」

A「そうなると『俺はこの作品知らないからパス』となってしまうこともある。最初に男が上げたような例はそういう危険を含んでいるからあまりお勧めできないんだ」

B「重ねて補足すると、台本形式の場合は頭の位置が大体あってる方がいいんだよ。『男』『友』とかなら一文字で済むから合いやすい。幼女を『幼』のように縮めて一文字にするのも同じ理由だ」

A「さて、オリジナルについて話すことはとりあえずこれでいいだろう」

B「最後に、オリジナルなのか二次創作なのか境が曖昧なところにあるジャンルの話もしよう」

男「オリジナルか二次創作か曖昧?さっき元ネタのあるなしで分けれたはずだけど」

B「別に分ける必要もないが、どちらとも言い難いという点で言及しておこうと思ってな。色々あるが、一例としては『勇者魔王もの』というジャンルだ」

A「さて男よ、勇者が魔王を倒すという物語があったとする。どんな世界観だと思う?」

男「そりゃやっぱり舞台は中世、剣と魔法のファンタジーだろ」

B「ああ、この世界観の説明が要らないという点は二次創作で話したところだな。ではその観点で書かれた勇者魔王ものは何かの二次創作か?」

男「え?いや、それは……なんかの作品を真似たつもりもないし、オリジナル……かな?あれ?」

B「そう、明確にストーリーに元ネタがあるわけではなく、しかし世界観はみんなが共有している。厳密にはシェアワールドと言うのかもしれないが、わかりやすくするためにどちらかに分類はしにくい、ということだけ述べておこう」

C「でもキャラがホイミとか言ってたら明らかにドラクエだよね?」

B「固有名詞が出たらしょうがないな。いくらオリジナルと言い張ってもそこはドラクエだろうと言わざるを得ない」

B「そもそも『勇者魔王=剣と魔法のファンタジー』が定着したのは日本ではドラクエが原因で間違いないだろうから、ある意味ではほとんどの勇者魔王ものはドラクエの二次創作と言えなくもないんだろうな」

男「なるほど。じゃあそろそろ一段落ついたので、まとめお願いします」

A「オリジナルは二次創作と違い事前情報がない。新しく詰め込ませる情報は少ない方がいいだろう」

B「二次創作は作る方もある意味楽で、読む方も楽しんでくれる。だからこそ呼称に注意」

C「流行りのアニメは自分の作品を読んでくれるチャンス!ガンガン書いてみよう!」

B「名前と言えば、二次創作でも難しいことがあってな」

男「なんで?二次創作はキャラ立ってるから余分な情報じゃないだろ?」

B「いや、同じ名前のキャラが……」

A「よく見るのは『凛』だな。大抵語尾に『にゃ』がついたタイトルなんだが、凛と言えば誰を思い出す?」

男「Fate?遠坂凛。猫語と言えばネコアルクもいるし」

C「ラブライブにもいるね。星空凛。にゃーにゃー言ってるし」

B「モバマスにもいるんだ。渋谷凛。ちなみにモバマスには猫語を話すアイドルも別にいる」

A「『凛「~~にゃ」』という名前のSSが立つ度に、遠坂か渋谷のどちらかが猫化したかと思った読者は数知れずという話だ。大抵ラブライブなんだが」

B「逆手にとって本当に猫化SSも混じってたかもしれないがな、俺は見たことないが」

C「そういう時はタイトルに作品名を書いておくとすぐわかるからいいよね」

B「あまりタイトルには作品名まで入れたくないんだけどな……まああまりにも紛らわしいと仕方ないか」


~第六章 終わり~

~第七章 エタ~

男「この作品も……この作品も……この作品まで……はぁ」

C「どうしたの?さっきから誰かのSS見てはガッカリしてるけど」

男「ああ、この作品が楽しかったから楽しみに続きを待ってたんだけどさ」


―――――――――――

288:作者
すみません、私用で続けられなくなったので終了します

―――――――――――

C「あー……あるよねこれ」

B「エタったのか。残念ながら少なくないんだよな」

男「エタ?」

A「『エタ』とは未完結のまま終了する、あるいは放棄することだ。語源がeternal(永遠の)ということで、『永遠に完結しない』という意味を込められている。『エターなる』『エタる』などと日本語の動詞のように使われることもあるぞ」

A「夢オチのように最低限のオチを無理矢理にでも付けたものと違い、完全にオチることを放棄している投げっぱなしだ」

男「えー、自分で好きで始めといて投げっぱなしとかおかしくないか?」

B「と、最初は誰でも思うんだな。だが実際にはエタは存在する。それもありふれているといっていいレベルで」

B「別にエタるのはSSだけの話じゃないぞ。ゲーム制作も含めたあらゆる創作活動に付きまとっているだろう」

B「今回はエタる原因などについて話していこうか」

A「精神的が脆弱だから。終わり」

男「ちょっ」

B「あはは……いやまあ確かにそうかもしれないけど、もうちょっと詳しく見ていくぞ」

B「俺調べによると、エタの原因はその多くが精神的なもの、あとは物理的な問題だ」

男「俺調べってのが胡散臭いな」

B「箇条書きにしたから上から説明していくぞ。あと、例によってこれは思いつくだけの例であってその他もあり得るということも覚えててくれ」


・飽きた
・続きがどうしても思いつかなくなった
・批判にショックを受けて継続する気がなくなった
・荒らされてまともに継続できなくなった
・書き溜めていたデータが不慮の事故で消えた
・仕事やテストなどで忙しくなった、病気で暇がなかった
・アマゾンの奥地に転勤になった


B「……その他諸々、ということだな」

男「飽きたってこれまたどういうことだよ」

B「そのまんまだ。特に長編を作っているときなどにあり得る」

B「書き溜めのところで話したと思うが、『完結まで書き溜めた場合は途中で作品が頓挫しない』……すなわち、完結まで書き溜めなかった場合は途中で頓挫することがよくあるんだ」

男「ああ、それが二番目の続きが思いつかなかったってやつか」

B「違う。プロットも全部立てている場合でもだ。たとえクライマックス目前でも。……あるいはクライマックス目前だからこそかもしれないが」

男「話の筋は全部思いついて、あと書くだけなんだろ?なんでそれで書かないんだよ」

B「そうだな、これは技量というより心もちの問題かもしれないんだけど……男、好きな映画はなんだ?」

男「映画か……バックトゥザフューチャーとか好きだけど」

B「よし、じゃあそれの1の冒頭のタイムスリップのシーンあるだろ。あれを思い出して、SSにして書いてみてくれ」

男「ああ、もう覚えるほど見たからバッチリだよ。じゃあドクが撃たれるあたりから……」

―――――――――――

ワン!ワンワン!

ドク「どうしたんだ、アインシュタイン・・・」

ぶるぅーん

ドク「こりゃいかん、やつらだ!どうしてここがわかったんだ!逃げろマーティ!」

マーティ「えっ何、どうしたの」

ドク「過激派が来た、仕返しに来た!」

過激派「いたぞー!」バキュンバキュン

マーティ「銃を持ってる!」

ドク「くそっ」カチン、カチン

過激派「おらあああああ!!」バババババ

ドク「うああああああ」ババババドタッ

マーティ「ドクー!」

―――――――――――

男「………………」

A「どうした?さあ続きを」

男「なんだこれ」

A「ああ、なんだこれだな」

B「そう、全くそうなんだ」

C「どゆこと?」

男「俺の頭の中にはちゃんと撃たれて、マーティが車に飛び込んで、時速88マイルまで加速してタイムスリップまで刻み込まれているというのに……」

男「ぜんっぜん書けない!思うとおりに表現できない!」

B「別にSS書きだけではなく、脳内のものをアウトプットするというのはクリエイターにとってとても大変なんだ。それが素晴らしいシーンを想像していればいるほど」

A「今回は有名な映画という共通認識の図れそうなシーンをチョイスしたが、それでもおそらくこの文では伝えたいことは再現できていないだろう。ましてや自分の脳内にしかない感動のシーンをどう伝えればいいものか」

B「クライマックスほど、今までの盛り上がりもあって素晴らしいシーンが脳内にある。だがその素晴らしいシーンを言葉で、擬音で、魅せ方で表現するだけの技能がない」

B「書いてはみたものの自分の中にある素晴らしいシーンとはかけ離れた文章になる。気合いを入れれば装飾過多、手を抜けば荒い文に」

B「そして思うわけだ。『もうこれ書けないからやめよう』と」

B「もちろん単純に『なんかもう書くのだるくなったしSSに興味が薄くなったからやーめよ』という『飽きた』もあるが、これもその一種と言えるだろう」

A「自分の理想と現実の差に打ちひしがれ挫折すると言ってもいいな。絵を描いてみようと思ったやつには特に心当たりがあるのではないか」

C「そうなんだ、でも僕そんなこと思ったことないよ」

男「なんだと?まさかCは完璧に脳内を再現できる能力者……」

B「……というわけではもちろんないだろう。多分これは個人の性格の違いにもよるだろうな」

B「さっきAが言った通り理想と現実の差でやめたくなるわけだ。つまりそもそもの理想が高い、あるいはプライドが高い作者ほどこうなりやすい」

B「『もっといいシーンなのに!もっと書けるはずなのに!こんな未完成品ではとても人に見せられない!』……そしてお蔵入りと」

A「理想が低いのは成長が期待できない。だが理想が高すぎるのは人に見せる機会が減る分やはり成長が期待できないだろう」

B「一方Cのように書くこと自体を楽しんでいる人は簡単にはそうはならない。上手い下手はともかくただ書き続け人に見せることが楽しいからだ。反応を気にしない、というわけではもちろんないのだろうが」

A「その分、何を書いているのかさっぱりわからんというものが出来上がる可能性もある」

A「小さな子供がよく擬音だけで何かの話を伝えようとしているが、周りの大人にはその子の脳内で繰り広げられている大スペクタクルが伝わらない……そんな感じだろう」

B「二番目の続きが思いつかなくなったってのはもうそのままだな。書いてる途中にネタが浮かばなくなった。書けないからやめるというわけだ」

B「これが週刊連載などの〆切が存在すると意地でもひねり出さなければいけないわけだが、まあ個人で好きに不定期にやっているとこうもなる」

A「創作活動全般に言えることだが〆切とは意外に重要なものだ。首を絞めるものだと思われがちだが、期限があることで意識が高まることもまたよくある」


B「続いて三番目の批判にショックだが、俗に心が折れるというやつだなこれは」

A「けちょんけちょんに貶された時、もちろん落ち込むだろう。ただそれに対する俺のスタンスはすでに十分話したと思うから繰り返しはしない」

C「がっかりしても一晩寝れば忘れられるよ、そしたらまた続ける気になれるはずだから」

B「人に見せる以上は称賛ばかり得られないのは当たり前だが、批判ばかりでは確かに辛いはず。でも無節操な悪口でないならやっぱどこかに理由があるはずだ。それを探すのもいいんじゃないだろうか」

B「似たような理由では、感想があまりにも来なくて本当に読んでいる人がいるのかわからなくなった……などというのもあるかな。延々と一人でやってる気分になるのもなかなか辛い」

C「あ、そんなときは『誰か見てる人いますか』って」

A「聞くなよ絶対に」

男「もうこの光景もすっかりお馴染みだな」

B「四番目、荒らされて継続できなくなった」

A「厳しい意見どうこうではなく、無意味な言葉の羅列や暴言、無駄な空白が1や2ではなく数十の単位でレスされてスレがまともに機能しなくなることも稀にある」

男「このNG機能ってのを使えば見えなくなるから気にならなくなるんじゃないか?」

B「専ブラ、いわゆるスレッド形式の掲示板を見る専用のブラウザにはしばしばそう言った機能があるな。レス抽出やNGなどで色々な工夫が出来るだろうけど」

C「専ブラってなに?」

A「と、その存在を知らない、あるいは知っていても機能を使っていない作者や読者にはどうにもできない」

B「他にもIDがどうとかもあるが、ここで全部触れていては長くなるので割愛するぞ」

B「とにかくこういうときはスレッド形式であればスレッドを立て直すといいかもしれない。日を置くと更にいいだろう」

B「それでも荒らされ続けるようなら掲示板の管理者にお願いすると何とかしてもらえることもある。が、基本のスタンスは『無視』だ」

A「掲示板黎明期のころから荒らしへの最善の対処は『無視』だ。話を聞く相手ではないから説得など無駄で不要だ。だが読者の中にはこれまたお節介で世話焼きが紛れ込んでいて、荒らしに説教し始めるやつがいる」

A「はっきり言おう、両方邪魔だ。荒らしは邪魔だ消えろ。説教は俺のスレでやるな消えろ」

男「ええー、荒らしはともかく説教してる側はなんとかしようとしてくれてるんじゃないのか、それを消えろって」

A「男、お前はまずネチケットというものを学べ。すでに死語に近付いているようだが、だからこそだ。だからここで一々説明はしない。前にも言った通り、必要なことは自分で調べて身に付けるものだ」

B「五番目、データが消えた」

C「間違えてゴミ箱とか、間違えて上書き保存とか、PCがクラッシュとか……あるよね……」

男「データはオンラインストレージとかCDとかで保存してた方がいいかもな、特に設定が凝ってるやつは」

A「手書きのころでいうとインク壺倒したなどということになるだろうな」

B「ちなみにこの理由、俺調べで胡散臭さナンバーワンだ」

男「出たよ俺調べ。胡散臭いって何がだ」

B「データが消えるという事故は何時でも誰にでも起こる。ゆえに、続きが書けないことの言い訳に使われることもあるとかないとか」

男「なんだそれ、そもそもそんな嘘ついて何になるんだよ」

―――――――――――

598:作者
すいません、データが消えました……
続きはしばらく待ってください(泣)

599:名無し
無理せずゆっくりでいいよ

600:名無し
俺は何時までも待ってるぞ

―――――――――――


B「と、慰めと励ましと読者確認が出来て作者が嬉しい」

A「浅はかな……」

C「僕もこれ言われたことあるよ……違うよ、僕は本当に消えたんだよ!」

男「いや何も言ってないから」

B「六番目はさっきのに近いかな、今度はもっとダイレクトに自分のことを理由にあげている」

A「読者は作者のプライベートなど興味がない。お前が昇進して仕事が忙しくなろうがクビになって毎日日曜日だろうがそんなこと聞かされてもどうしようもない」

C「部活が忙しくて、とかは僕も言ったことがあるなぁ。じゃあどうすればいいの?」

B「『所用で時間が取れない』とか、まあそんなんでいいんじゃないかな?」

A「誠意のために理由を説明したいと考えるかもしれないが、聞いてもどうしようもない理由などいらない。同情を求めたいのなら別だがな」

B「七番目」

男「なんだこれ、アマゾンの奥地ってどういう理由だよ」

A「これは流石に無理だな」

C「僕も無理だよ」

男「Aまで……!?一体アマゾンの奥地に何が……」

B「いや、そんな大層な理由じゃなくて、つまり……」








B「電気がないんだ」

男「じゃあ無理だな。というか何故ちょっともったいぶった」

B「演出の一環だな。こうしてると溜めた感が出るだろう?」

男「この前からそういうのちょいちょい放り込んでくるね」

B「さて、ここまで一通り説明してきたが、この中に当てはまりそうなものはあるか?」

男「うーん、いくつかは気を付けてたら防げそうだけど、批判に心折れてくじけてエタるのはひょっとしたらあるかも……」

男「……という風にどれかに当てはまったら書かないほうがいいんだよな、多分。エタる可能性があるのに書くなんて作者失格だろ?」

B「…………」

男「おい、なんか言えよ……不安になるじゃないか」

B「いいか、これは俺がエタったから言うわけではない。そして今から言うのはおそらく完全に矛盾した内容だ」

B「AとCが言いそうな内容も全部俺がまとめて言う。何が正しいかは、お前が決めてくれ」

男「お、おう。なんか物々しいな」

B「『作品を最後まで書くのは作者の責任』、『作品を途中でやめるのは作者の権利』だ」

男「……何だって?」

男「終わらせるのが責任なのにやめる権利があるって……どういうこと?」

B「言っただろう、矛盾しているって。だがどちらも正しいはずだ。問題はどちらに重きを置くかだ」

B「説明するぞ、『作品を最後まで書くのは作者の責任』だが、この責任はどこにあるのか」

男「そりゃやっぱり、読んでくれてる人だろ?俺も未完の作品でもっと頑張れよ作者って思ったし」

B「それが一つ。そしてもう一つは作品自体への責任だ」

男「作品自体?」

B「自分が生み出した世界やストーリー、物語のキャラの関係や行動……これらに終着点を作り、物語に安らぎを与える。たとえ幾分無理があったとしても、終わりの三文字の元に読者も作者も物語も落ち着きを得る、これが責任だと思うんだ」

男「なるほど……続きを待っているのは読者だけじゃなく、作者も、物語の中のキャラもってことか」

男「決着をつければ皆もう来ない続きを焦れて待つ必要がなくなるもんな……」

B「ああ、『完結は正義』と言われるほどだ。100本の大長編を未完で終わらせるより一本の短編を完結させた方が、その責任という点では遥かに果たしているといえるだろう」

B「そしてもう一方『作品と途中でやめるのは作者の権利』だ」

男「さっきとまるで逆だな」

B「もちろん完結させるにこしたことはないし、未完が完結より称賛されることはない」

B「だが作品を作っているのは基本的に作者一人だ。これは安価でさえ結局は作者が話を作っているのだから、作者一人だと言える」

B「作者は趣味で、誰にも執筆作業を課せられることなく書いている。作品を始められるのも書けるのも作者だけだ」

B「そして同時に、『好きな時にやめられる』のも作者だけだ。『自由に書ける権利』と『自由にやめる権利』を同時に持っているんだ」

男「そりゃそうだけど『俺にはやめる権利があるからこのSSはここでやめます』とか言われちゃうとちょっと……」

B「権利という言葉はちょっと意味合いとして強かったかもしれないな。そして、それがあるからといっていつでも堂々と振り回していいわけではない」

B「ここで言いたいのは『何が何でも絶対に書かなければいけない、俺には責任があるんだ』と思い詰める必要はない、むしろそこまで思い詰めるほど重荷になるなら最後の手段として投げ捨ててもいいんだよ、と言うことを伝えたいんだ」

男「なんか社畜とか過労死とかいうワードが頭をちらついたんだが」

B「社畜型の人間は最後の手段は意地でも使わないからなあ。責任は持たなければならない。だが責任に縛られ過ぎてはいけない。これもSSだけに限らないけどな」

男「最初はSSを見せただけなのにいつの間にか人生について勉強してる気がする」

C「お得!」

A「ポジティブだなCは」

男「それじゃまとめを……」

A「今回は俺たちから教えたことはほとんどないからまとめは無しだ」

C「どうまとめても『エタらないよう気を付けよう』ぐらいにしかならないよ」

B「誰だって最初からエタるつもりで書いてるわけじゃないからな」

男「そうか、じゃあ今回はここで終わりだな」

A「ああそうだ、そういえば一つあったな気を付けるべきことが」

男「どんなこと?」

A「掛け持ち……すなわち複数作品を同時並行で進めることだが、これがとにかくエタりやすい」


・作品Xがちょっと行き詰った、息抜きに作品Yを書こう

・作品Y楽しい。どんどん進む。反応もいい。作品Xはちょっと置いておこう

・作品Yも行き詰った、息抜きに作品Zを書こう

・作品Z楽しい。どんどん進む。反応もいい。作品Yはちょっと置いておこう


A「二作品エタ確定だな」

男「いやいや、戻ってきてくれるだろ、XとYを待ってる人もいるんだろ?」

A「詰まって先を考えるのが辛くて作者も読者も忘れかけている物語より、新しくて書いてて楽しい物語に飛び込む選択を選んだんだぞ。戻ってくると思うか?」

男「それは……」

A「例えどれだけ途中で盛り上がったとしても、未完で終わればそれまでだ。終わりを待っている全てのために、完結させることを心得てほしい」



B「最遊記はあのペースでちゃんと終わるのかな……」

C「ルイズの新刊まだ?」

男「おいバカやめろ」


~第七章 終わり~

~最終章 後書き~


男「……そうして勇者は末永く暮らしました、めでたしめでたし……っと。終わった!」

A「お疲れ様」

B「お疲れ様!」

C「乙!」

男「幾多の苦難を乗り越え、ようやく最後のレスを投下できた……やっぱ嬉しいな」

B「ああ、この達成感があればこそ作者をやってる甲斐があるってもんだよな」

C「結構見てくれてる人多かったみたいだね、乙の数がそこそこあるよ」

A「途中までかなり展開など苦労していたようだし、その分色々なところが工夫されたものになったと思うぞ」

男「え~?えへへ、そんなこともないこともないよふふふ」カタカタ

B「ん?もう終わったのにまだ打ち込んでるのか男……まさか!」


―――――――――――

765:支配人
なんとか無事終わりました
今俺は感動の涙で部屋を洪水にしています
特に苦労したのは戦士が敵になった後改心したところかな・・・
あそこはノリと深夜のテンションで書いちゃったんで見直した時ヤバいって思いましたけど
上手いこと最初の出会いのところと結び付けられてよかったです!マジノープラン(笑)

戦士「まったく、おかげで死ぬところだったぜ・・・」

勇者「まあそういうなよ、最後にはちゃんとみんな無事でめでたしめでたしじゃないか」

僧侶「あの~、私だけエピローグに出てないんですけど・・・」

>>1「やっべ忘れてた」

勇者「許さねえぞ>>1!勇者斬り!」ズバッ

>>1「うぎゃー!>>1先生の次回作に御期待下さいー!」ブシューバタン









…………なんかリクエストあったらちょっとだけ後日談書くかも(チラッチラッ


766:名無し
うわなんだこれ
俺の感動を返せ

767:名無し
どこを縦読み?

768:名無し
最後の最後でクソ化決定

769:名無し
コピペ?

―――――――――――

B「だからなんでお前はーーーーー!!!」

男「えっあっなんだこれ手が勝手に」

A「はぁ……貴様もついに出会ったようだな、後書きの魔物に……」

男「後書きの魔物……?」

A「古来より人は何かを成し遂げ解放された時、普段では考えられないような行動をすることがある。普段では絶対にしないような恥ずかしい行為をな」

C「阪神ファンが道頓堀に入水するようなものかな」

B「いや自殺じゃねえからあれ」

A「何かを作り上げ、人からよくやったね、と褒められたとき、人は嬉しくなり、語りたくなるものだ。特に工夫した点があるならば、そこの解説をしたくてしたくてたまらないだろう」

B「この伏線は、この描写は、この単語の意味は、裏設定は、元ネタは……」

B「それらの情報を、設定資料集のように淡々とではなく『ここ頑張ったんだよ!こことここも!ねえ凄いでしょ褒めて褒めて!』とばかりにひけらかし始める」

B「『おお凄いな気付かなかったよ』の言葉が欲しいから……ただそれだけのために」

A「または、終わった時の己の感動を分かち合ってほしくて皆に伝えだす。伝わるはずもないほどの絶対的な温度差があるにもかかわらず」

A「最後には続きのリクエストを……というか、『誰かに求められること』を欲しがるばかりにリクエストをネタに見せかけて本気で欲しがっている。言っておくが気付かれてるぞ」

男「う、うーん……全部そうかもしれないけど……でも、それってそんなダメなことかな?反応も欲しいし工夫してるところは気づいてほしいし……」

A「ふむ……まあ実のところ後で述べるが、全てが必ずしも非ではないのだが、その前に一つ想像してみろ」

男「おし、いいぞ」

A「男がBTTFの映画を劇場で見ていたとしよう。終了してエンドクレジットだ」

男「ふむ」

A「と、エンドクレジットで余韻に浸ってるところでいきなり場面が変わってロバート・ゼメキスが現れる」

男「ゼメキスの顔知らないけど」

A「じゃあスピルバーグで代用しておけ。映っているのはゼメキスだけで背景はブルースクリーン、周りには映画で使ったらしき小道具が山のようにある」

男「うん」

A「そしてゼメキスが喋りだす」

R.ゼメキス「やあジャパンの皆、僕の映画はどうだったかな?この映画は作るのがすごく大変だったんだよ!まず作る前から会社の社長があれこれ注文付けてきてね!しかもあの社長ドケチで中々金出さないからずっと予算不足だったんだよHAHAHA!あ、実は最後のシーンは雷じゃなくて原子力発電所でエネルギーを充電する予定だったんだけどそれしたら今度こそ映画が10本作れちゃうから泣く泣く没にしたよ!まあそのおかげでカッコいいシーンになったと思うんだけど、あそこの合成はスタッフが三日徹夜でやってくれてね、ようやく完成というところで猫が舞い込んできて機材で爪を研ぎそうになるからみんな眠いのに大慌てで、そういえばうちの猫がこの前子供を産んだんだけど旦那は誰なんだろうね?僕の予想では三軒隣のルーカスさんちの猫が怪しいと思ってるんだけどまあ猫は今はどうでもいいか。ほらこの小道具のこここれ見てよ小っちゃくロバートって書いてるだろ、どうしても映画に出演したかったからスタッフに内緒でこっそり書いたら気づかれずにそのまま通ったよ、多分今頃この映像見てる彼は驚いて僕に電話をかけてくるだろうね!そしたら僕はこういってやるんだ『そういう君だって自分の好きな銘柄の煙草をあっちこっちに置いてたじゃないか』って。他にも彼は僕から500ドルの借金をしてるからこれ以上は強く言えないと思うよ。お金と言えばこの映画がヒットしたら2とか3とか作りたいと思ってるからみんなもっと応援してくれると嬉しいね!映画館に足を運ぶとかもいいけどスタジオに手紙を送ってくれるとスタッフもみんな喜ぶよ!しかし今は休みたいから一週間ぐらいハワイにでも行ってみようかな。海を見ながらビーチに寝転がってパラソルを刺してジュースを飲んでペラペラペラペラペラペラ」

A「ペラペラ……と。以後15分ほど続く」

男「うわぁ……裏話がちょこっと聞けたような気もするけどほぼ雑談で埋められてたな……」

C「三軒隣のルーカスさんって……」

B「一応言っておくけどほぼ作り話だからな。念のため」

A「例えばオーディオコメンタリーなどで『そういうものを聞く』という場面であればいいだろう。あるいはクランクアップ後のお疲れ様会のような会場で、スタッフを集めて身内話をするのならそれでもまたいいだろう」

A「だが監督の素性、顔や声も知らぬ人々が映画の後にいきなりこれを見せられたらどうなるか、考えてみろ」

男「俺は……俺はこんな恐ろしいことをやっていたのか」

B「まあさっきの例えが適切かどうかは難しいけど、SSの場合は『終わり』のあとは何も残さず消え去るのも一つの形として推奨されているな」

男「何か書くとついうっかりボロが出そうだもんな……じゃあ後書きは無い方がいいのか。……ん?でもさっきAは全部だめじゃないよみたいなこと言ってたような」

A「そうだな、さっき見せた例でいかにも終わった後にベラベラと自分のことを喋るのはよくない、という捉え方をするような説明をしたが……実はそんなこともないんだ」

男「どういうことだ?今回の結論は『あとがきで自分のことを喋るのは悪い』じゃないのか?」

A「もしそうならば、世にある数多の小説にあとがきの欄は存在しないだろう。だが実際にはかなりの確率で存在する」

男「確かにそうだな……しかも中身は親しい人への謝辞とかだったりもするし」

A「つまり、前書きと違い存在すること自体が悪いというものではないということだ」

B「前書きがなぜ好まれないかというと、物語に飛び込もうとしているところで作者が出てきてストップをかけるようなことが多いからかな。特に前書きでの作者登場のパターンをある人は『開幕楽屋裏』と例えたぞ」

B「物語と現実の境が曖昧になる話はメタのところでやっただろう」

B「対して後書き、こちらはすでに物語が終了しているわけだ。つまりすでに現実側のほうに傾いているから、作者が一言述べることによって物語を阻害することはない。……もちろんここで物語のキャラが出たらまた曖昧になるがな」

B「かといって何を言ってもいいのか?といえば……いやもちろん何を言おうが止める権利もないから何を言ってもいいんだが、やめておいたほうがいいことはいくつかあるわけだ」

男「やめておいたほうがいい……余韻を壊すとかそういうことが起きるのか」

B「『ドヤ顔』『卑屈』『作者登場』『長文語り』『自己紹介』ぐらいかな、特徴的なのは」

男「もうなんとなくわかるな」

B「『ドヤ顔』は『こんな文章書ける俺凄かっただろドヤァ……』って感じの文章を書いちゃうパターンだ。にじみ出るぐらいなら可愛いが、グイグイ来るからなこういう場合」

B「対して『卑屈』は『こんな糞文章に長々と付き合って頂いて、時間を無駄にして申し訳ありません……』とか言っちゃうパターンだ。こっちは謙遜っぽく見えるから荒れはしないが……」

A「過ぎた謙遜は卑屈になるというやつだ。作者自らが駄文だ糞作品だと言っては、面白いと思ってくれた読者まで貶めることになる」

B「『作者登場』は……もうわかるだろうから飛ばすぞ」

B「『長文語り』もそのまま、元ネタであったり自分で思ったこと、感じてほしいこと、苦労したことやその他関係のないことを『延々と』語り出すことだ。一行二行じゃないぞ。逆に言えばそういうことも一行二行ならいいだろうということだ」

B「『自己紹介』は特に学生に多いな。散々エロSSを書いた後に『高2童貞しかも明日テストなのに何やってんだ俺』とか自虐風に言われても困るということだ」

男「ん?結局一行二行ならいいのか?」

A「シンプルに一言、ありがとうございました。これで大抵は事足りる」

B「その他に一言二言添えるのは、まあ作者ボーナスのようなもんだ。よく頑張ったから、一言ぐらいは発信してもいいのさ多分」

男「その一言が一行に、一行が一レスになって……」

B「……なっていかないように気をつけなきゃな。特に深夜で気分がハイになってるときはそういう過ちが起きやすい」

男「ところでCの姿が全然見えないんだが何やってんだあいつは」

C「あ、ちょうど今印刷終わったから持ってきたよ」

男「なになに、『痛い後書きまとめ』……?」

C「ネットで調べたら山のように出てくるからね。これを紹介していけばいいんじゃないかなって思って持ってきたんだけど」

A「ふむCよ、わざわざ持ってきてくれたのはありがたいが……」

B「ちょっとこれをここで紹介するわけにはいかないなぁ……」

C「なんで?」

B「いやほら、ここで実在の痛い後書きを紹介したら、目的がこき下ろすことにすり替わっちゃうから……」

A「特定の何かを貶めるために男にSSを教え始めたわけではないからな」

C「そっか……じゃあ男だけで読んどいてね。はいこれ」

男「ああわかっ……うわぁ……」

B「はい一文目から1うわぁ頂きました」

A「結局のところ後書きというのは前書き以上に難しいものであるのは確かだな」

B「最後に質問に答える場にもなるし、全く書かないというのも掲示板形式の双方向性を生かさないような気もするしな」

C「僕の場合は最後は片っ端からあれはこうでそれはこうで……ってしつこいぐらいに補注を入れちゃうときもあったかな」

C「終わった後はいつも質問タイムにしてるんだけどあれどういう意味?ってよく言われちゃうからね」

A「描写力不足というやつだな。そこを直していけばもっといいものが書けるようになるだろう」

B「男がうわぁループにはまってるから今回もまとめはなし、ということで。なにせ今回は今までのどれよりも答えを探しにくい問題だったし」

A「もし永久にネタにされない後書きでいたいと望むのならば、先人のうわぁ……を眺めておくといいだろう。反面教師も必要だ」

C「逆に自分がうわぁ……と思わなくてもネタにされてるようなら、そこは他人のラインに合わせてもいいし、自分のラインで突き進んでもいいと思うよ」

~最終章 終わり~

~エピローグ~

男「よし、じゃあ新しいSSを書くか」

B「お、やる気だな男。俺も書こうかな」

A「もうあのような後書きは書くなよ?」

男「大丈夫だよ、俺にはこれがあるからな!」

C「なにこれ……『SSの書き方注意事項』?」

男「ああ、AとBとCから教えてもらったことを全部書いてある。お前らがダメって言ったことは何一つやらないから安心してくれ!」

C「ふーん、ちょっと貸して……はいBパス」

B「はいAパス」

A「はい焼却」

男「うわあ何すんだお前ら返せ!うわあっち!あっつ!あーもうほとんど燃えちまったじゃねえか!」

C「考え方が極端だねぇ……実に極端だよ」

B「ダメって言われたからやらない……そんなんでいいと思ってんのか!」

男「ええー……お前ら散々あれはダメこれはダメって言ってきただろうよ……」

A「だからこそ信じるなと言っているのだ」

男「どういうことだよ」

A「いいか、今回お前にSSの書き方を教えたのはA、B、Cの三人だ。奇しくもそれぞれが違う思考の持ち主であり、堅い方から柔らかい方まで揃っていたから様々な意見を聞けた……と思っているのだろう」

A「だが仮に今回お前に教えたのがAとA’という人間だったら?きっとお前は『SSとは注意書きは絶対に無く、半角擬音は逃げであり、安価は絶対で、読者とはコミュニケーションを取らないものだ』と信じ込んだのではないか?」

C「または、CとC’だったら『SSとは注意書きを書くもので、残った読者と話しながら作って雑談も交えつつ、第四の壁って何?』ってなってたんだろうね」

B「さらに言えばここにいない第四の視点を持ったDという人間がいればまた別の意見をお前に与えたわけだ。ABCで全方面の意見をカバーできたと思ったら別の意見が出て来た!となる。たとえば『安価などSSではない』とか言ったかもしれないなそいつは」

男「んなこと言ってもじゃあどうすればいいんだよ」

C「読んで」

B「書いて」

A「そして学ぶことだ。俺たちが教えたのは現在の時流にそった書き方に過ぎん。お前が書き続ける中でまた変わっていくものもあるだろう」

B「あるいは男自身が書いていく中でこれはいい、これは悪いと見つけていく、それこそがSSの書き方なんだよ」

C「いっぱい読んでいっぱい書いて、経験を積んで初めてどういうものか見えてくるもの……それが自分に合ったSSの書き方なんだよ」

男「そうか……一朝一夕で、お前らの話を聞いただけで書けるほど甘くない……考えれば当たり前だったな」

A「誰だって最初は初心者だ。どれほど経験を積めば初心者から抜け出せるのかの線引きは無いが、俺たちがその手助けを出来たのならば嬉しく思う」

男「A……」

B「多分に主観も入り混じってるけどな。だからこそこれからは男自身が、SSに限らず色々なものをインプットしていってほしい」

男「B……」

C「楽しんで書いて、読者も楽しんでもらえたら嬉しいよね。みんなで楽しみたいもん!」

男「C……」

A「さあ、そろそろ目覚める時間だ」

男「目覚める……?」

B「ああ、実はここは男の精神世界の中なんだ」

男「な、なんだよいきなり……」

C「男はね、現実では最初のSSの酷評にショックを受けてそのまま倒れて意識不明になってるんだよ」

男「嘘だろ……?」

A「そして二度とSSを書きたくないという気持ちが自分をこの精神世界に閉じ込めた……だが、もう男なら大丈夫だ」

B「ああ、今ならしっかり自分のSSと向き合えるはずさ」

C「お別れだね、男。ちょっと寂しいけど、でもまたいつか会えるから!あ、でもまたこっちに引きこもっちゃダメだよ!」

男「A、B、C……!俺は……俺はまだお前らと一緒にSSを書いていたいのに……!」

男「せめて……お礼……だ……でも……ゃんと……いたかっ……」


―――――――――――
―――――――――
―――――――

 

目覚めた時、俺は自分の部屋の床に椅子と一緒に倒れ込んでいた。

外を見ると、世界が夕日で赤く染まり始める時間であった。

SSを投下したのは昼も大分過ぎてからだったから、あの世界で過ごした時間はこちらではほんの数時間ということだったらしい。

男「全部……夢、だったのか……AもBもCも……」

彼らと語り合い、推敲し、作品を生み出したあの日々が、人々ごと幻であったという事実。

それを認識した途端、目の前が涙でぼやけはじめた。

男「――っ……うぅっ……?」

ふと、伸ばした手の先が何かに触れる。

涙を拭いてその何かを見てみると、それは燃えた紙片の残りかすのようなもので、1ページ目なのか中心には焦げ、薄くかすれたタイトルが見えた。

かろうじて読めたそのタイトルは――


~エピローグ 終わり~

~補章 小技とか~

A「……というのを巷では超展開と言うのだな」

男「余韻台無しだよ!」

B「伏線ゼロでもなんとなく感動した気になれる。でもやっぱりいきなりすぎる展開……超展開と言われるのも仕方ないだろう」

C「結局本当に精神世界かどうかなんて語るのは野暮なので、今回はSSの書き方から離れる話も含めて小ネタとか小技をちょっとだけ説明していくよ」

A「その一個目が今のだ。驚くような展開というのは、その前にさりげなく根拠がちりばめられていることで『あの時のあれはこういうことだったのか!』という気づきと快感に繋がる」

A「そういう前触れが一切無いというのは、推理小説で探偵が証拠を探す場面を全部飛ばしていきなり犯人を当てるようなものだ。全員ポカーンだろう」

B「ということで続けて伏線の話をしようか。伏線には大きく分けて二種類あると思う。『気付かれる伏線』と『気付かれない伏線』で、『気付かれない伏線』が見事に決まるほど名作とか言われたりするな」

B「ちなみに伏線の張り方とか気付かれないやり方とか始めたら小ネタを超えて大ネタになるのでその辺は各自で調べてほしい。今回言いたいのは、『伏線に気付いた読者は嬉しい』ということだ」

男「どういうこと?」

B「例えば授業で先生がこの問題分かる人手を上げろって言ったとき、自分だけわかっていたらなんとなく嬉しいだろう?クイズでもいいけど、『自分だけが気付いた』というのは自分が優秀な気がして、あるいは実際に優秀なんだがとにかくうれしいんだ」

A「気付かれる伏線などが堂々と存在するのはそういう点もあるだろう。例えば恋人が主人公に御守りを渡した時、『お、この御守りはどこかで何かしてくれるな?』と勘の鋭い読者は気づくわけだ」

B「そして実際に御守りが主人公を助けた時、『やっぱりね、俺は気づいてたよドヤァ』となる」

C「まあ基本的にドヤ顔って嬉しいときに出るものだからね」

B「ただし『これこうなんだろ?ん?当たってるだろ?』と直接聞いてくるようなのは御免だ。ちゃんと回収されてからドヤ顔してくれ」

A「そう言った心理を利用して、『気付かれるか気付かれないか難しいライン』の伏線を仕込むと、当てた読者はさらに喜ぶな。謎は難しいほど解いたときの感動が大きい」

B「といってすぐそんなギリギリを攻められたら誰も苦労しないんだけどな」

B「三個目は叙述トリックについてさらっと触れてみようか」

男「叙述トリックねえ……でもミスリードを誘うような展開あったっけ」

A「実はCは僕っ娘だ」

男「マジかよ!?」

C「一度も僕が男だなんて言ってないからね」

A「さらにBは犬だ」

B「一度も俺が人間なんて言ってないからな」

A「そして『俺』は『お前』だ」

男「もうホラーだよそれは。はい全部嘘です!」

B「四個目は時間経過や回想、想像などの表現だな」

A「過去の会話であれば、上下に空白を十分取ったうえでセリフを『』などもいいだろうか」



A『やめろお前らそういう目で見るな。俺は反省した過去は流したノートは焼いた成長したんだ』



A「おい何故ここを選んだ」

B「他にも想像や時間経過ならエピローグのようにダッシュを適当な長さ繋げたものを短くしていくか長くしていくかしたり、ダッシュの代わりに三点リーダを使ってもいいかもな」

C「なんか曖昧だね」

B「わかればいいんだよわかれば。逆に言うとわからないと視点が右往左往してわけがわからなくなるから気を付けよう」

B「最後は、インプットの効果についてだ」

A「創作はアウトプットだが、一方的にアウトし続けるとどんどん干からびていくような気がするな。気がするだけなんだろうが」

B「そんな時は映画を見たり漫画を読んだりすると色々なものがインプットできていいぞ。干からびた時のオススメは今まで手を出したことのないジャンルだ」

C「逆に今まで散々見たことのある作品はもう吸収しきっちゃって効果が薄いかもね。息抜きにはなるけど」

男「ホラーとか苦手なんだけど、見たほうがいいのかな……」

B「何事も経験ではあるけど、修行僧じゃないんだから苦痛を感じるレベルなら無理しなくていいぞ」

A「というわけで、ここで終了だ」

B「他にも色々とあるだろうけど、あとはまあ個人で調べてくれ」

C「じゃあ坂でものぼる?」

男「坂?」

C「ほらあの、『オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな』ってやつ」

B「未完にする気かお前は」

A「SS坂が果てしないのは間違いないが」

男「夢オチにも未完オチにも植物人間オチにも精神世界オチにもしないからな!二度もやってたまるか!」


~補章 終わり~

参考スレ

俺「SSの書き方とかよく分かんないけど皆のアドバイス貰えばなんとかなるだろ」

こちらが『キャラが解説する参考書』のようなものだとすると、あちらは『マンガでわかる~』系のものだと勝手に思ってる
軽快なギャグなどを交えとても読みやすいが残念ながらhtml化ルールに引っかかった模様で未完となった

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