リツコ「肉体接待したもの」
マヤ「え?」
リツコ「そもそも、わけも分からず呼ばれた彼が、何故いきなりエヴァに搭乗したのか知ってる?」
マヤ「い、いえ。私ずっと初号機の調整の方に回ってて」
リツコ「機体の方も初出撃だったものね」
マヤ「本当に、死に物狂いって感じでしたから……他のことまでは意識がいきませんでした」
リツコ「じゃあ教えてあげるわ。潔癖症のあなたには面白くない話でしょうけど」
リツコ「まず―――使徒襲来を予期して、シンジ君を呼び出した。出迎えに行ったのはミサト」
マヤ「はい」
リツコ「『わざわざミサトが?』とは思わなかった?」
マヤ「それは……気にはなってました。現状況下でどうして作戦指揮官が、って」
リツコ「当然の疑問ね。そして、その答えは『色仕掛を行うため』よ」
マヤ「!?」
リツコ「事前の打ち合わせ通りに仕掛けたなら、あえて挑発的な服装で、スキンシップを交えながらたっぷり身体を見せつけたでしょうね」
リツコ「シンジ君はわりに奥手のようだけど……所詮中学生のオトコのコだもの。ミサトほど女の特徴の目立つ肉体を眼前に突き出されては、劣情を感じずにいられなかったはずよ」
マヤ「そ、そういうものですか……?」
リツコ「健康な反応を理解してあげないのは、かえって男が可哀想よ、マヤ」
マヤ「……」
リツコ「そうやって下準備をしておいて、本部に着いたらすぐ別室に通したの。レイをあてがうために」
リツコ「性欲を炙られた状態で、美しい少女と二人。緊張したでしょうし、邪な想いも抱いたでしょうね」
マヤ「でも。レイは色仕掛けなんて」
リツコ「学ばせればこなすわ。覚えのいい子よ、とても」
マヤ「じゃあ、覚えさせたんですか……?」
リツコ「ええ。本やビデオでだけど」
マヤ「そんな、まだ子供なのに」
リツコ「年齢を気にしていられるなら、まず子供を人類代表で戦わせたりしてないわよ」
マヤ「……」
リツコ「『多少強引でも不自然でもいいから、できるだけエロティックに彼と親密になれ』。『"邪な妄想"を実現させて理性を奪え』。レイにはそう指示しておいたわ」
リツコ「マヤ。大人しめの男の願望、想像できて?」
マヤ「願望……なんとなくしか……」
リツコ「なんとなくではなくて、具体で教えてあげる。例えばこんな感じよ。『手付かずの美少女に偶然出会い、瞬く間に惚れられ、何もせずとも向こうから積極的に性的行為をしてくれる』」
マヤ「ちょ、ちょっと都合良すぎませんか? それって」
リツコ「勿論。ただの願望、妄想には、物語性や説得力が込められているわけではないもの」
マヤ「それは確かに、そうですけど……なら、レイがシンジ君相手に"実現"してみせたのって」
リツコ「ええ」
リツコ「映像で確認したけれど、最初は彼、ネルフに自分と同年代の少女がいる事にとても驚いていたわ」
マヤ「……」
リツコ「レイは彼の世話係を自称して―――嘘ではないものね―――まずは説明をしたの。自らが特殊兵器のパイロットであることや、シンジ君がその予備として招かれたこと。碇司令があの子の恩人であることや、写真などでシンジ君を昔から知っていることも添えて」
マヤ「シンジ君、余計に驚いたんじゃないですか?」
リツコ「狼狽していたわね。予備とはいえ、突如言い渡される仕事にしては責任も危険も大きすぎるもの」
マヤ「そうですよね……可哀想」
リツコ「でも同時に、別のことにも狼狽えていたわよ。レイとの距離が、近すぎて」
リツコ「二人はソファに並んで座っていたの。座った時点では、充分スペースを取っていたのだけど」
マヤ「レイが?」
リツコ「そう、レイがゆっくりと詰めた。わざと緩い服で、彼を見つめながらね」
マヤ「あのレイが……ですか」
リツコ「胸元や脚や瞳、吐息にまで、随分と心を乱された様子だったわよシンジ君。視線を奪われては慌てて逸らしてを繰り返していて、中々可愛らしかったわ」
マヤ「……」
リツコ「最後には隙間なく身体を寄せて、彼の胸に手を置いて、ほとんど耳に囁くように会話していた。会話と言ってもシンジ君は、真っ赤になって固まっていただけだけど」
マヤ「あ、あの!」
リツコ「なに? マヤ」
マヤ「さっきからの話だと……レイはシンジ君にその、『好き』とか……そういう嘘までついたってことなんですか?」
リツコ「そう伝わる可能性のある嘘ならばね。『写真で見たあなたに会いたかった』とか」
マヤ「……」
リツコ「不満がありそうね。でも、必要なのだと理解はできるでしょう?」
マヤ「……はい」
リツコ「その続きで、『いつ死ぬか分からない身だから思い出が欲しい』―――さすがに言い方は違ったけど、そんな台詞で彼の自由を奪いもした。レイにそう囁かれたらとてもキスを拒めないもの」
マヤ「……」
リツコ「あるいは、"拒まなくていい理由をあげた"と表現したほうが正確かしら」
リツコ「レイは本当によくやってくれたわ」
マヤ「私は、未だに上手く想像ができなくて……」
リツコ「ふふ、キスも大したものだったわよ。初めはとにかく唇を合わせて。いかにも初々しくね。そこから、シンジ君の唇を探るように舐めたりもして……後であなたも映像を見てみる?」
マヤ「え!? いっ、いえ、いいです」
リツコ「あなたの場合、少しは仕事以外のことも覚えたほうがいいと思うけど」
マヤ「でも……覗きみたいな意味合いで見るのは悪いですよ」
リツコ「相変わらずの生真面目ね」
マヤ「普通です」
リツコ「まあいいわ―――とにかくレイは、シンジ君をすっかりメロメロにすることに成功したわけ。軽く舌まで使われて何度もキスされて、彼、すっかり惚けていたわ」
マヤ「……」
リツコ「そのタイミングで、碇司令の元にシンジ君を連れ出したの。レイと一緒にね」
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