シンジ「ぼ、僕が765プロのプロデューサー……ですか?」 (189)

同タイトルのssの修正バージョンです

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ここはどこなんだろう。

量産機にボロボロにされて……父さんが初号機に食われて……母さんが沈んで行って。

初号機……母さんはどこか遠くに行っちゃった。

その後僕はアスカを殺そうとしたんだ。

それで気づいたら眠ってて……起きたらここに居て。

……ここ、すごく気持ちいい場所だね、天国か何か?

……ふーん、L.C.L.の海なんだ。

うん、色々ありがとね、綾波。

僕は……前に進むって決めたからさ。

またこの世界を作ってみせるよ、僕が。

え? 誰と喋ってるんだって? やだなあ、綾波に話しかけてるんじゃないか。

あれ? 綾波? 君はそこに居るじゃないか。

…………うん、わかってたよ。

僕は一人だ。

みんなはLCLになっちゃった。

僕も仲間になりたいけど……ダメだ、どうしてもL.C.L.にはさせてくれないらしい。

僕がうじうじしてたからダメだったのかなぁ……。

ねえ……アスカ、綾波、ミサトさん、加持さん、母さん! 父さん!! カヲル君!!!

みんな……会いたいよ……。

シンジ「…………?」

ここはどこだろう。

……あはは、またさっきと同じことを言っちゃったね。

ここは……病院?

でもネルフの病院でもなさそうだ……。

シンジ「……知らない天井だ」

今度は何に巻き込まれちゃうんだろう、僕。

医者「碇……シンジさんだよね?」

シンジ「はい……そうですけど」

携帯も無いから時間もここの場所もわからない。

とりあえずナースコールを押したらこのお医者さんが来てくれた。

医者「非常…………に不可解なことなんだけど、君は14歳の時から成長が止まっているようですね」

シンジ「……は?」

このお医者さんは何を言っているんだろうか。

僕は元々14歳なんだけど……。

医者「何故か君のテロメアは短縮をしていない」

医者「つまりヘイフリック限界が無いんだ」

ヘイフリック……限界? 確かリツコさんがそんなことを言ってた気が……。

シンジ「それって、僕は不老不死になっちゃうんですか?」

医者「うーん、どうだろうねえ……ただ、心臓とかは限界があるから、老けないだけでいつかは死んでしまうだろう」

医者「テロメラーゼが無限に出てるわけでも無いから完全に原因不明。強いて言うなら霊的エネルギーとかかな?」

医者「ははっ、これは流石に僕もお手上げさ」

医者「ま、君はまだ20歳なんだ。成長はしないかもしれないけど、その代わり永遠に若いままだよ?」

シンジ「……今は西暦何年何月何日ですか?」

医者「えーと……20××年「20××年!?」

医者「ど、どうしたんだい?」

どういうことなんだよ……2015年より前じゃないか!!

シンジ「ネルフは!? 第3新東京市は!? エヴァは!?」

医者「お、落ち着きたまえ!! ネルフ? エヴァ? 第3新東京市? そんなものは存在しないよ?」

そん、な……。

みんながせっかくL.C.L.の海から戻って来たと思ってたのに……!

シンジ「うっ……げほっ、ゴホッ!!」

医者「あーあーなんで吐くかな……はい洗面器」

……僕はどうすればいいのかな。

家の場所もわからない。

自分がここで何をしていたかもわからない。

お医者さんは僕の名前から戸籍を見つけてくれたけど……住所は神奈川県のマンションだった。

年齢も20歳って書いてあった。

どういうこと……?

もうわけがわからないよ……。

「入っていいかい?」

ノックされた。

シンジ「は、はい!」

「おや? もう元気になったかね?」

僕の知らないおじさんが入って来た……誰?

「ああ、私は高木。高木順二郎だ」

高木「765プロというアイドルプロダクションの社長をやっているよ」

シンジ「はあ、おじさんが裸で倒れていた僕を助けてくれたんですか」

高木「いやあ私自身かなり焦ったんだけどね? なんとか救急車を呼ぶことに成功したよ」

……なんでこの人は楽しそうなんだろ。

高木「ところで……君は第3新東京市から来たそうだね? エヴァンゲリオン初号機パイロットのサードチルドレン、碇シンジ君?」

シンジ「…………!!」

このおじさん、何か知ってるの!?

高木「ははっ、そんなに驚かなくてもいいだろう? 何せ私は」

高木「君のお父さんのお気に入りの凄腕スパイだったんだからね」

……最悪じゃないか。

高木「私は一度みんなと一緒に溶けてしまったんだ。だけどそれが気持ち悪くてね……」

高木「早く元の世界に帰りたい!! って思ってたらこの世界に居たわけさ」

高木「大体1980年ぐらいかな? それぐらいの時期に飛ばされてね……当時25歳だった私があの事務所に拾ってもらえなかったら危なかったよ」

高木「その事務所のおかげで、今の私は765プロを立ち上げることができたってわけだよ」

シンジ「……色々大変だったんですね」

高木「そりゃあ大変だったさ。でも君の方が大変だったんじゃないのかい?」

高木「急にお父さんに呼び出されたと思ったらエヴァに乗せられて使徒という化け物と戦って。親友で使徒だった渚カヲル君も殺してしまって、綾波レイちゃんがクローンだと知って」

高木「……そして最終的には人類補完計画の要になった」

シンジ「人類補完計画……」

……父さんは、人類補完計画で何がしたかったんだろう。

母さんに会いたかったのかな?

……僕は眼中に無かったのかな。

シンジ「……うぅ……」

高木「……ほら、今だけは胸を貸してあげるよ。だから泣くなら今のうちに泣いておきなさい」

高木さん……いい人だな。

高木「その代わりと言ってはなんだが、うちのプロデューサーをやってみないかね? 現在人手不足でねえ……」

……やっぱりネルフの人はみんな意地悪だ。

シンジ「で、でも僕、まだ未成年だし……」

高木「何、君はこの世界では20歳なんだ。労働法に違反はしていないよ」

シンジ「……人と話すのは苦手で」

高木「今から慣れていけばいいさ」

シンジ「プロデューサーのノウハウとか知らないし……」

高木「今から覚えればいいさ」

シンジ「でも……」

高木「もう『でも』もうじうじするのも禁止だ! 君はここで今生きているんだから、今やれることを精一杯やりなさい」

……高木さんはどこかミサトさんみたいな人だ。

高木「私がその場所を提供してあげるから」

シンジ「……よろしくお願いします」

ああ、また流されてしまった。

でも……前に進むって綾波……いや、僕自身に約束したから。

僕はもうあの時みたいな悲劇にはさせない。

あの赤い世界を見なくてもよくなるようにするんだ。

……でも、アスカたちに還って来て欲しいって思うのは自由だよね?

既に体調は問題無かったから高木さんに765プロへ連れて行ってもらうことになった。

シンジ「……これって」

高木「ああ、すごいだろう? これは桜って言ってね。春に美しい花を咲かせるんだ」

桜……確か小さい頃に母さんが教えてくれた気がする。

あの世界には夏しか無かったから新鮮だなあ……あはは、この光景を綾波たちに見せてやりたいよ。

シンジ「……すごく……綺麗ですね」

高木「そうだろう? 春は私が一番好きな季節さ。夏もいいが、やっぱりぽかぽかして気持ちいいからね」

ぽかぽか……か。

高木「あっ、おーい天海君!!」

天海君?

もしかしてあの頭にリボンを付けてる人かな?

「社長!! ……ってわあああっと!! 」

高木「だ、大丈夫かね!?」

「えへへ、転びそうになっただけなんで大丈夫です!!」

……多分僕より歳上のはずなのにおっちょこちょいな人なんだな。

高木「紹介しよう。この子……うおっほん! こちらの彼がうちの新任プロデューサーの碇シンジ君だ」

「あっ、天海春香です!! ……ってこの子が!?」

いや、この子って言われても……。

シンジ「ええと、天海さん……でいいのかな? これからよろしくお願いします」

僕、春香さんとそんなに身長が変わらないなんて……。

春香「えへへ、よろしくお願いします!!」

高木「ちなみに彼は20歳だからね。勘違いしないように」

春香「ええっ!? 歳上さんだったんですか!?」

高木「そりゃあ未成年を雇うわけにはいかないからね」

僕だって自分が20歳なんて思えないよ。

高木「ま、弟とでも思ってくれればいいさ」

シンジ「た、高木さん!?」

春香「じゃあシンちゃんの頭ナデナデー」

シンジ「いやシンちゃんって」

……なんだか加持さんとミサトさんを相手してるみたいな気分だ。

春香「ええと……テロメア?」

高木「ははは、何故かシンジ君にはテロメアの限界、ヘイフリック限界が無いらしくてね。死ぬまで老けないそうだよ?」

春香「す、すごいですねそれ!!」

なんで高木さんがそれを知ってるんだって聞かない方がいいよね。

もしかし僕の病院着も高木さんが用意してくれた服にも盗聴器が付いてたりして……。

……いや、現実的に考えたら診察結果を聞いただけのことじゃないか。

春香「シンジ君♪ 何かあったらお姉さんに言ってね?」

シンジ「……もうそれでいいですよ」

春香「あー照れてるー!!」

高木「ほらほら、さっきも言ったけどシンジ君は君より歳上なんだよ?」

春香「えへへ、ついつい……」

……なんだろう、もしかして765プロってミサトさんの集まりか何かなのかな。

高木「ただいま」

春香「こんにちはー!!」

2人と話していたら直ぐに765プロに着いてしまった。

……誰かと話すって、やっぱり暖かいなあ。

春香「……? どうしたの? 入らないのシンジ君?」

シンジ「…………! お、お邪魔します!!」

高木「シンジ君、そうじゃないだろう?」

シンジ「……ただいま」

春香「おかえりなさい!!」

高木「ああ、おかえりなさい」

……やっぱりミサトさんばかりだ。

「わ→!! 亜美の方がビミョ→に身長高い!!」

「真美も真美も!!」

「あらあら〜♪プロデューサーさん、小さくてかわいいですね〜」

「真、その通りでございます」

「ご、合法ショタ……!」

……僕だって身長は気にしてるんだからそこまで言わなくてもいいじゃないか。

それに僕は本当は14歳だよ!!

僕より年下の人の方が少ないじゃないか!!

高木「紹介するよ。彼が律子君に続いて入って来てくれたプロデューサー、碇シンジ君だ!!」

シンジ「よ、よろしくお願いします!!」

……ああ、またどもってしまった。

っていうか僕より身長高い人ばかりだから威圧感が半端ないよ。

亜美「うりうり→!! 兄ちゃんちっちゃいYO!!」

真美「や→いチビー!!」

うるさいな……君たちは中1なのになんで中2の僕より大きいのさ!!

あずさ「あらあらうふふ〜」

シンジ「ちょっ、抱きつかないでくださいよ三浦さん!!」

貴音「三浦あずさ……」

あずさ「だってこの子かわいいんだもの〜♪」

シンジ「ぼ、僕20歳ですから!!」

……一応。

小鳥「ああっ! あずささんずるい!!」

なんで僕の周りには胸の大きな人が集まってくるの……。

千早「……くっ」

春香「ち、千早ちゃん……」

……本当に僕はちゃんとやっていけるのかな。

律子「ええと、ここはこうして……」

今は同僚になる秋月さんにパソコンについて教えてもらってるんだけど……このOS古くないかな……。

まあ使い方は大体分かるし大丈夫か。

高木「どうだね? 上手くやっていけそうかね?」

シンジ「……ええ、これぐらいなら」

高木「ま、当然だろうね」

律子「…………?」

ははは、やっぱり僕のことはなんでも知ってるか。

父さんのお気に入りだったらしいしね……。

高木「ま、今日は早いけど帰りたまえ。色々あって疲れただろう?」

シンジ「えっ、でも」

僕には家が……。

高木「私が送って行くよ。それでいいかい律子君?」

律子「え、ええ。私は構いませんけど……」

高木「じゃあ行こうか、シンジ君」

高木「……上手くやっていけそうかい?」

シンジ「……ええ、ネルフよりもいい人たちばかりなので」

高木「ははっ、それは言えてるねえ……」

……この車、ミサトさんと青の同じルノーだ。

高木「どうだねこの車? 懐かしいかい?」

シンジ「……もう居ない人を真似するなんて趣味悪いですよ高木さん」

高木「そうだねえ……葛城君はもう居ないかもしれない」

高木「でも……君と私が覚えていれば、それは存在することになるんじゃないかな?」

シンジ「……ぷっ、なんですかそれ」

高木「所詮人とはそんなものだよ。人は誰かから存在を認められているから存在するのだよ」

シンジ「余計わけがわかりませんよ」

高木「まあ哲学みたいなものだからね……あ、そうそうちょうどいいものがあるんだが」

シンジ「…………?」

高木さんのカバンから……S-DAT?

高木「これは私が個人的に購入したものだが……受け取ってくれ」

シンジ「こ、これは流石に受け取れないですよ!!」

昔、父さんのS-DATの値段を調べた時に驚愕した覚えがある。

高木「構わない。君にとってお父さんがどんな存在かはわからないが……それでも、覚えておくべきではないかね?」

高木「ほら、これは君が持っていた司令のものと同じものだよ。受け取りたまえ」

シンジ「……ありがとうございます」

高木「君なら一人暮らしでも問題無いだろうが……気をつけたまえよ。いざという時の護衛は居ないからね」

シンジ「……ここってものすごい高級なマンションですよね?」

高木「遠慮しないでくれたまえ。これでも私はそれなりに稼いでいたからね」

高木「……では、また明日、765プロで待ってるからね」

シンジ「……ありがとうございます」

高木「じゃあね?」

……ふふふ、あのルノーに本当にミサトさんが乗ってるみたいだ。

……みんないい人ってわけじゃなかったけど、やっぱりアスカたちが居ないと寂しいなあ……。

『生きていこうと思えばどこだって天国になるわ』

……母さん。

『だって生きているんですもの』

『……ね? シンジ。母さんはもう居ないけど……頑張るのよ?』

……大丈夫だよ母さん。

ここには……春も、夏も秋も冬も元の世界の人間の高木さんも僕に優しいアイドルの人たちも……全部、全部存在するから。

……綾波たちが居ないのはものすごく寂しいけど。

『……シンジ』

……ふふっ、父さんも応援してくれるの? 嬉しいなあ……。

……僕、こっちで精一杯頑張るからね。

シンジ「……あはは、また泣いちゃったなあ……」

じゃあ明日は……。

高木さんに怒られないように、もう自分を見失わないように。

その意味を込めて……泣かないようにしよう。

シンジ「……じゃあね。父さん、母さん」









第0話『プロローグ』、完







少し空けます
急な決定で申し訳ありませんでした









第1話『歩み始めたモノ』







シンジ「うわー……どうしよう」

とりあえず765プロへの最寄駅で降りたけど765プロへの行き方がわからない。

携帯が無いからGPSの地図も使えないし……。

っていうか携帯無いと営業とかできないんじゃないの?

「……ほら、新人プロデューサーのアンタ」

ん? 後ろから声が……。

確か……水瀬さん?

……なんなんですかそのめちゃくちゃ長い黒塗りのリムジンは。

シンジ「は、はい!!」

伊織「アンタ、どうせ迷っちゃったんでしょ? ほら、早く乗りなさい」

シンジ「え、でも」

伊織「天下の水瀬財閥の伊織様が乗れって言ってるのよ? いいから乗りなさい」

シンジ「……はい」

お金持ちってなんだか怖いや。

アスカもそうだったけど、僕って尻に敷かれるのが得意だよね……。

「運転手兼伊織お嬢様専用の執事の新堂でございます」

シンジ「は、はあ……わざわざ乗せてもらって申し訳ありません」

新堂「いえいえ、伊織お嬢様の御意向でございますので」

伊織「は、早く出しなさい!!」

シンジ「……顔が紅くなってるよ」

伊織「うるさい!! ……何か飲み物は要る? オレンジジュースかオレンジジュース」

シンジ「……じゃあオレンジジュースで」

オレンジジュースしか無いのになんでわざわざ僕に訊いたんだろう。

……あっ、ちょっとご満悦な顔してる。

伊織「…………」パカッ

……えっ、今からミキサーで作るの?

伊織「…………」ヴィィィィィィィィン

シンジ「……す、すごいね、手作りなんて」

伊織「え?」

シンジ「……なんでもないよ」

このリムジン、なんでも出てきそうだよなあ……。

伊織「はい、どうぞ」

シンジ「ああ、ありがとう水瀬さん」

伊織「フン、名字で呼ばれるのは好きじゃないから伊織って呼びなさい」

シンジ「……じゃあ伊織。いただきます」

伊織「どうぞ〜♪」

よくわからないけど嬉しそう。

……果肉たっぷりだね。

シンジ「うん、おいしいよ伊織!!」

伊織「ホント!? ……ゲフンゲフン、ま、この伊織ちゃんが作ってあげたんだから当然よねー!!」

シンジ「ははは……」

……伊織って実はアスカより歳上なんだよな。

……似た者同士だけどどちらかというと伊織の方がわかりやすいかも。

伊織「……アンタ、ヘイフリック限界が無いんですってね」

シンジ「ん? ……まあそうらしいけど」

なんで知ってるのさ……。

伊織「…………お願い!!」

シンジ「……!? どうしたの伊織!?」

まさか高飛車な伊織が僕に頭を下げてくるなんて。

伊織「実は……」

シンジ「僕の髪の毛……DNAが欲しい?」

伊織「そう……うちのお父様がヘイフリック限界が無いアンタに目を付けたのよ」

伊織「どうもそれの研究が成功したら多額の資金というか、お金が入るらしくて」

伊織「だから立場上一番アンタに近い私がアンタから研究サンプルの髪の毛を貰って来なければアイドルを辞めさせるって言われちゃったのよ……」

なんて父親なんだ……とは流石に言えないな。

シンジ「まあいいけど……「ホント!?」……ホントホント」

伊織「ありがとう!!」

……なんだか自分の髪の毛で喜ばれると複雑な気分だ。

シンジ「ち、ちなみに何本ほど要るの?」

伊織「100本」

シンジ「……10円ハゲになったらどうしよう」

シンジ「あー……禿げてないかなぁ……大丈夫かなぁ……」

伊織「満遍なく抜いたんだから大丈夫よ」

正直めちゃくちゃ痛かったんだけどね……。

伊織「その……わざわざありがとね。私のために……お金も要らないなんて」

シンジ「ははは、お金のやりとりがある関係ってなんか嫌だしさ、気にしなくていいよ」

お金は……欲しいだけくれるって言われてけど断った。

だってプロデュースするアイドルからお金を受け取るのってなんだか嫌だしね。

こんなのだからミサトさんに僕の給料を任せちゃったのかな……自分で管理してたらお金持ち気分を味わえたのに。

シンジ「りつ……秋月さん、僕って営業とかどうすればいいですか?」

リツコって名前の人が2人居るから紛らわしいなぁ……。

それはともかく、僕は早速みんなの仕事を取りに行くことにした。

律子「うーん……じゃあまずはお手本を見せますから、碇プロデューサーは私に着いて来てください」

シンジ「わかりました」

よし! 僕も頑張って仕事を取って来るぞ!!

シンジ「……秋月さん。あの宣材写真は流石に……ねえ?」

律子「……そうですね」

結果は完敗。

相手の人は僕たちにはいい雰囲気で接してくれたんだけど……亜美ちゃん真美ちゃんの宣材写真を見た瞬間断られたよ。

なんで双海姉妹にサルの衣装を着せたんだろう。

イタズラっ子を意識したとしても普通はあんな衣装は着せないでしょ……。

シンジ「……宣材写真、録り直しましょうよ」

律子「……新しい衣装を買ったばかりだから経費がキツイですけど……ま、先行投資と考えれば大丈夫ですか」

まあ今回は交渉のノウハウがわかったからいいか。

律子「最悪社長のポケットマネーから出してもらいますしね!!」

……なかなかはっきり言う人なんだな、秋月さん。

カメラマン「はーいじゃあ撮るよー」

春香「よ、よろしくお願いします!!」

みんなかわいいなあ……。

……いや、アスカたちも可愛かったはずだ。

ただ単に僕の周りに集まってくる女の子が美少女だらけだってわけで……。

…………それはともかく、僕はいつの間にか9人もプロデュースすることになってたよ。

ヘイフリック限界が無いからなのかな?

よくわからないけど、不思議と疲れないからそこは問題無いんだけどさ。

正直真美ちゃんたちにチビ扱いされるのは……。

精神的には弱いからね、僕。

あはは、自分で言っちゃダメだね。

千早「…………」

……ん? 確か……あそこに居るのは如月さんだったっけ?

あんなに険しい顔してどうしたんだろう……。

よし、早速プロデューサーとして相談に乗ろう!!

シンジ「えと……そんなに暗い顔してどうしたんですか?」

千早「プロデューサー……いえ、なんでもありません」

シンジ「ふーん。じゃあなんでそんなに暗い顔してるんですか?」

僕がそう訊くと、如月さんはもっと暗い顔になった。

千早「……私、本当は歌手になりたかったんですけど」

シンジ「……はい」

千早「アイドルで名前が売れてから歌手にならないかってスカウトされて……でも、私はアイドルに向いてなくて」

シンジ「それは……どういうことですか?」

千早「私、上手く笑えないんです。それに、歌に関することじゃない今のこの時間も無駄に思えて……」

シンジ「……そうですか」

シンジ「……じゃあ、今はそのままでいいんじゃないですか?」

千早「え?」

シンジ「多分、今の如月さんは歌だけを追い求めているんですよ。何かに追い詰められてるように」

そう、初めて使徒を倒した後、トウジに殴られた時に僕が訓練ばかりしていたように。

千早「……ええ」

シンジ「でも、その何かはいつ解消されるかはわからない」

トウジと和解した時みたいに。

シンジ「だから……今は如月さんなりに頑張ればいいんじゃないですか? ……ほら、僕も歌の仕事を頑張って多めに取ってきますから」

シンジ「その代わり……バラエティ番組が取れた時は頑張ってくださいね?」

あはは……こうやって相手に押し付けるのは傲慢かな……。

千早「……ふふっ、なんだか中学生の子に説教されるなんて不思議な気分です」

シンジ「……一応大人なんだけど」

実際中学生だから否定できないよ……。

千早「でも、そんなプロデューサーが頑張ってくださるなら……私も少し努力してみようかと」

シンジ「…………! ありがとうございます如月さん!!」

千早「いえ、元々これが仕事なので……」

あ、そ、そうだったね。

如月さんはアイドルだったね。

カメラマン「じゃあ次、如月千早さん!! お願いしまーす!!」

千早「ふふ、じゃあ行ってきますね?」

シンジ「はい! 頑張ってくださいね?」

……なんだ、ちゃんと笑えるじゃないか。

あずさ「シンジさん、どうですか〜?」

シンジ「に、似合ってると思いますよ!」

なんで三浦さんは僕を名前にさん付けで呼ぶんだろう。

……胸が強調されてて……うん、率直に言うとエロいというか煽情的な衣装だ。

あずさ「あらあらうふふ〜♪」

シンジ「ちょ、ちょっと!!」

またそのセリフを言いながら抱きついてくるんだから……。

正直三浦さんの大きな胸が当たって役得だとは思っちゃうけどさ。

なんだか……母さんに抱きつかれてるみたいだ。

伊織「……フン、鼻の下伸ばしちゃって」

亜美「あれ→? いおりん妬いてるのかな→?」

真美「確かにシンちゃんって顔は整ってるしね→」

……若干周りからの目が怖いけど。

そういえば双海姉妹は僕を兄ちゃんってよぶんだよね。

……僕より背の高い子に兄ちゃんって呼ばれるのもなかなかクるものがあるよ。

亜美「ね→ね→いおりん! じゃあさ……」

亜美さんが悪そうな顔して何か吹き込んでるよ……。

伊織「……にひひっ♪」

いやいやなんで悪そうな顔してるのさ。

あーあ、よくわからないけど走って行っちゃった。

カメラマン「じゃあ次三浦あずささんお願いしまーす!!」

どうやら次は三浦さんらしい。

あ、撮影が終わった萩原さんがこっちに来た。

雪歩「お、終わりましたー……」

シンジ「お疲れ様です萩原さん」

雪歩「はうぅ……」

……やっぱりまだ怖がられてるなぁ……。

シンジ「ええと……やっぱり歳下みたいな僕でも怖いですか?」

本当は本当に歳下なんだけどね。

雪歩「うぅ……その……はいぃ」

シンジ「あはは、僕女の子っぽいってよく言われるんですけどね」

雪歩「そ、そうなんですか?」

ただ単に女々しいって思われてるだけだと思うんだけどね……。

シンジ「昔同居人が居たんですけど、料理も洗濯も全部僕がやってたんです」

シンジ「そしたらお嫁にしたいって言われまして……僕男ですよ? 酷いですよね」

シンジ「後はチェロを弾けたり……あ、なんか自慢みたいになっちゃいましたね、ごめんなさい」

雪歩「す、すごいですねプロデューサー!! 男の人なのに家事ができるなんて……私、昔からお母さんに任せっきりだから」

シンジ「むしろそっちの方が普通なんじゃないかな……」

雪歩「そ、そんなことないですよ!! 真ちゃんだってお母さんのお手伝いをしているらしいですし……私も頑張ってみようかなあ」

シンジ「うん、僕はいいと思いますよ!!」

雪歩「そ、そうですかぁ? えへへ……」

……女の子らしくてかわいいなぁ萩原さん。

やよい「プロデューサー!!」

ん? 高槻さ……ん?

亜美「うっふふ→ん!」

真美「どぉ?」

伊織「かしら!!」

……うん、僕はどうリアクションをすればいいのかな?

パッドを無理やり詰め込んだのかわからないけど凹凸ができてしまっている不自然な胸。

やたら濃い化粧。

シンジ「……何やってんのさ」

……一応僕って歳上だしもう敬語はやめようか。

シンジ「……あのさ、今日って宣材写真を撮るんだよね? 君たちのいいところを撮るんだよね?」

シンジ「だからさ……そんなに化粧が濃かったりパッドを詰めたりしたらあんまり意味が無いと思うよ?」

「「「「ハッ」」」」

……なんでそこでハッとしてるのさ。

伊織「…………」

あー、疲れた……。

いや、実際には疲れてないんだけど、精神的に疲れたよ……。

最終的にはあの4人もちゃんと撮影できたからよかったな。

みんなの名前呼びを強制されたり、やよいちゃんとハイタッチしたりして……まあ色々あったけどね。

シンジ「じゃあ、帰りましょうか」

高木「そうだね。もうみんなも帰ったし、君が帰るなら私も帰ろうか。飲んで行くかい?」

シンジ「……僕、未成年ですよ?」

高木「ははは、そうだったか。じゃあ私もそのまま真っ直ぐ帰るよ」

全く、高木さんは……。

シンジ「じゃあ、さよなら」

高木「ああ、明日もちゃんと来てくれよ?」

もちろん行くに決まってる。

だってここには僕の居場所があるから。

この世界の東京ってなんだか第2新東京市みたいだ。

でも国連本部はここじゃないんだよね……。

「……っ、いってえなオイ!!」

シンジ「ああ、すいません……」

肩をぶつけてしまったようだ。

全く痛くなかったし、振動も伝わって来なかったんだけど……当たり屋?

「すいませんで済んだら警察は……ってお前は……765プロのチビの新任プロデューサー?」

……しかもなんで僕のことを知ってるんだろう。

後チビって言うな。

「チッ、俺のことは知らねえのかよ。俺は天ヶ瀬冬馬! 961プロのジュピターのリーダーをやってる天ヶ瀬冬馬だ!!」

シンジ「ええと……天ヶ崎冬馬さん?」

冬馬「ちょっとずつ間違ってんじゃねえ!! 天ヶ瀬だ!!」

天ヶ瀬天ヶ瀬……よし覚えた。

冬馬「……チッ、なんでそんな目で見んだよ。汚え仕事してる癖に」

……何を言ってるんだろうこの人。

シンジ「汚い仕事?」

冬馬「……シラ切んのか? 賄賂とかのことだっての」

賄賂?

シンジ「あの……汚いことをしたのにも関わらず仕事がほとんど無いっておかしいとは思わないの?」

大体僕だってプロデューサーになってから2日目だし。

冬馬「……確かにおかしい」

なんで気付かないのさ……。

うーん、何故か認識がすれ違ってるみたいだね……。

冬馬(おっさんの言うことが間違ってるのか……?)

冬馬「……一回どこかでゆっくり話がしたい。これ、俺のメアドだから連絡してくれよ」

シンジ「あ、うんわかった」

ちょうど携帯が支給されてよかったよ。

冬馬「じゃあな……!? オイ早く逃げ——」ガシャアアアアアン

突然、ガラスと鉄が一斉に何かにぶつかったような音がした。

…………? 冬馬君はなんでこっちを見ているの?

冬馬「う、後ろ見てみろよ……ば、化け物か!?」

後ろ?

あー……バンパーとかフロントガラスとかがひしゃげたトラックが……。

トラックが!?









第1話『歩み始めたモノ』、完















第2話『ヒトとシト、及び偶像』







結局、僕は怪我もしていないのにお金を受け取ることになった。

高木さん曰く、『居眠り運転をしていた相手側の過失』だそうだ。

突然トラックがグシャグシャになるっていう前例が無いのに損失が発生するって……ちょっと可笑しいね。

確かに居眠り運転していた相手の方が悪いとは思うけどさ。

相手も打撲程度で済んでよかったよ……。

そういえばあの後冬馬君がオレンジ色の壁がどうとか言ってたけど……まさかね。

僕はいつの間にかATフィールドを使えるようになっちゃったのかな。

……うん、あれは偶然だよ。

初号機に乗っている時と同じ感覚でATフィールドを展開しようとしてみたけどATフィールドは出てこない。

いや、出るわけがないんだ。

だって僕はヒトなんだから……。

ヒト……だよね?

体が疲れないとか、老けないとか……まるでS2機関があるみたいだけど。

……本当は僕ってカヲル君みたいなヒト型の使徒だったりして。

……バカなこと考えてないで765プロに行こうか。

裁判とか僕の精密検査とかで色々手間取っちゃったから就業早々一週間もブランクができちゃったけどね。

律子「碇プロデューサー!! お体は大丈夫ですか!?」

小鳥「そのガラスのようなお肌に傷は付いてませんよね!?」

シンジ「い、いや僕は全然大丈夫でしたけど……」

小鳥さん、少し怖いよ。

亜美「確か兄ちゃんってさ→」

真美「ちょ→の→りょくに目覚めたんだよNE!!」

シンジ「そんなわけないでしょ!?」

……どこからATフィールド(かはわからないけど)の話が流れたんだろうか。

いや、この双子なら僕が無傷の時点で超能力って考えつくか……。

春香「でも不思議だよねー。プロデューサーさんに突っ込んできたトラックが勝手に潰れるなんて」

千早「……そうね、全くもって不可解だわ」

真「あ!! もしかして、本当はぶつけられたのにプロデューサーが気付いてないとか!?」

シンジ「それじゃ僕が超人になっちゃうじゃないか……」

やよい「うっうー!! プロデューサーはヤキニクマンですー!!」

雪歩「焼肉……今度食べに行こうかなぁ……」

伊織「いいわね焼肉。今度みんなを招待して焼肉パーティーでも開こうかしら」

シンジ「ははは……」

みんなフリーダムすぎるよ。

高木「あーシンジ君、ちょっといいかね?」

シンジ「ええ、構いませんけど……」

高木「……それで、君は無意識のうちにATフィールドを発生させた……と」

シンジ「ええ……多分。ジュピターの冬馬君がオレンジ色の壁が出現したと、僕に言いましたから」

高木「天ヶ瀬君の証言では勝手にトラックが潰れたと言っていたそうだが?」

冬馬君、ATフィールドのことは黙っててくれたのか……。

シンジ「……おそらく、僕と会えなくなるのを防ぎたかったんでしょう」

高木「……確かに、ATフィールドの存在が知れれば研究組織に攫われ……はしないか。ネルフじゃあるまいし」

逆説的に言うとネルフならやりかねないということか……。

高木「まあ君がメディアに露出することによって有名になると簡単に接触し辛くなるからだろうね。何か彼と接触する約束でもあったのかい?」

シンジ「それが——」

高木「……なるほど、961プロとこちらの見解が食い違っているから話し合おう、というわけか」

高木(……黒井のやつ)

シンジ「ええ、そうです」

高木「まあそれは君が好きにしてくれて構わない。だが少し厄介なことがあってね……」

……やっぱり僕は厄介ごとに好かれているらしい。

高木「シンジ君、君は水瀬グループに髪の毛……DNAを渡したね?」

シンジ「ええ、伊織がそうしないとアイドルを続けられないと言うので……」

もしかしてまずかったんだろうか。

高木「……もしかしたら、君のDNAからS2機関が製造されるかもしれない」

シンジ「それって」

高木「……アメリカ第2支部で起こった4号機のS2機関暴走のようなことが再び起こる可能性がある」

……しかも最悪の展開だ。

高木「これはあくまで私の推論だが……気分を悪くしたらすまない」

シンジ「ええ、構いませんよ」

高木「おそらく君は使徒だ。それも不完全なね」

……やっぱり僕は使徒?

シンジ「不完全……ですか?」

高木「おや、使徒ということには驚かないのかね?」

シンジ「ええ、人間も使徒らしいですから」

高木「そうか……まあそれならいいんだ」

シンジ「それで、どうして僕が使徒だと予想されたんですか?」

高木「これもまた途方も無い推論になってしまうのだが——」

シンジ「サードインパクトの副作用……ですか?」

高木「……まあサードインパクトは全くのブラックボックスだから私も断定することはできないのだがね」

高木「おそらくサードインパクトは神を作り出す儀式だ。そして今回、神に仕立て上げられたのはエヴァンゲリオン初号機パイロットである碇シンジ、君だ」

僕が……神に?

高木「あの白いエヴァンゲリオンは覚えているかい? あれは量産機という位置付けなんだが、あれは元々サードインパクトの儀式のために造られたエヴァンゲリオンなんだ」

高木「私も途中でL.C.L.に還ってしまったから詳しいことはよくわからないのだが……デストルドーを大きく増幅させた君に共鳴したロンギヌスの槍が宇宙から帰還、初号機に刺さることによって生命の樹となりリリスと融合したためサードインパクトが起こった……のだと思う」

で、デストルドー? 生命の樹?

高木「あまりよくわかってなさそうな顔だね? 簡単に言うと、君の死にたいという気持ちに引っ張られて飛んできたロンギヌスの槍のせいでサードインパクトが起きたんだよ」

シンジ「……うーん」

高木「まあここまではわかってなくてもいいさ。問題なのはデストルドーが増幅しているはずの君がL.C.L.からここへ来ることができたということだよ」

シンジ「その、デストルドーというのがあったらL.C.L.から元に戻ることができないんですか?」

高木「さあ……そこはわからない。が、生きたいという気持ち……リビドーを持った私だけがここに来ることができたということは、大多数の人間がデストルドーによってL.C.L.の束縛から逃れられることができなかったということじゃないかい?」

シンジ「……あまりよくわかりません」

高木「……まあとにかく、デストルドーに染まった君が何らかの要因によってL.C.L.から肉体を作り上げ、この世界に来ることができたということが不思議だと言っているんだ」

高木「じゃあその要因が何かと聞かれても私には答えることはできないが……それこそ、その要因は魔法のようなものだ。その過程で君が使徒の力を得てしまっても私は何も言えないよ」

高木「ははっ、これじゃ推論にもなっていないかな?」

シンジ「いえ、僕自身もよくわかっていませんので仕方ないと……」

デストルドーしかわからなかったよ……。

高木「ははは、予測が間違ってたらごめんね? ……そういえば、ATフィールドは普通に使えるのかい?」

シンジ「ええと……エヴァに乗ってる時と同じようにイメージしてみたんですけど……展開はしませんでした」

高木「ほほう、なるほどね……」

……高木さん、その振り上げた右腕は「えいっ」パフィィィン

高木「おおっ、本当にATフィールドが展開されたじゃないか!!」

シンジ「いやいやそれを確認するために僕に殴りかかろうとするってのはどういうことなんですか」

高木「ま、まあいいじゃないか。ほら、スナイパーに撃たれても多分自動展開するから安全だし」

シンジ「まずスナイパーに撃たれることなんてありませんよ」

高木「……よし、早速仕事に戻りたまえ」

誤魔化したね……。

シンジ「はあ……わかりました。仕事してきます」

高木「うむ、時間を取らせてしまってすまなかったね」

シンジ「では、失礼します」ガチャ

ニーチャンニーチャン、ナンノハナシシテタノー?

高木(……さて。水瀬がどう動くか、だな)

高木(伊織君を悲しませることにならないようにしてもらわないと困るのだが……)

高木(……いざという時は私が動かなければならないかもしれないな)

高木(もう私はいい歳なんだがねぇ……)

僕は使徒。

第18使徒の人間。

でも使徒。

人間って何なのかな。

使徒なのかな。

使徒って何なのかな。

人間の仲間じゃないのかな。

……僕は何なのかな。

人間? 使徒?

いや、厳密に言えば使徒だ。

でもそれは大した問題じゃない。

……僕はここに居ていいのかな。

僕はみんなに必要とされてるのかな。

……人の心がわからないって怖いね。

真「プロデューサー、行かないんですか?」

シンジ「ああ、ごめん。ボーッとしてたよ」

……ま、いっか。

今はプロデュースに専念しよう。

プロデューサーをしている間は僕にも居場所があるから。









第2話『ヒトとシト、及び偶像』、完







今日はここまででお願いします
投下は書き溜めがあるのにも関わらずクソみたいに遅いですが(修正と校正で手間取るため)、読んでくださる方々、何か矛盾点や感想、批判などがあれば指摘してくださればと思います

なんでこんなに反応がいいんだ(困惑)
今日はもう気力が尽きそうなので第3話だけ投下します

なんでこんなに反応がいいんだ(困惑)
今日はもう気力が尽きそうなのでなので第3話だけ投下









第3話『降郷村の夏祭り』







僕の朝は早い。

朝5時に起きて、まずはシャワーを浴びる。

正直面倒なんだけど特に今は暑い夏だし、人と接する仕事だから清潔にしておかないといけないからね。

まあ3ヶ月もこの生活をしてきたからもう慣れたよ。

シャワーが終わると、食パンを焼きながら目玉焼きを作る。

もちろん目玉焼きは半熟。

それをトーストの上に乗せるとすぐに食べられるから重宝しているよ。

ははは、ラピュタを見たら食べたくなるよね、これ。

椅子に座ると、テレビでニュースをチェックしながら、目玉焼きを乗せたトーストを食べる。

食べ終わると、僕は弁当を作り始める。

まあ……ほとんどおにぎりだけなんだけどね?

美希と他のみんなも一緒に食べるから20個程握っていく。

いつも昼は僕と美希だけで食べるんだけど……夕方ごろの軽食としてみんなにも配るから多めに作るんだ。

おかずが欲しい人は各自用意してもらうけどね。

美希は……たまにいちごババロアとシャケのおにぎりを一緒に食べ始めるから恐ろしいけど。

大きなタッパーにおにぎりを丁寧に並べて蓋をする。

いつもはそれをカバンに詰めて書類を確認すれば準備完了なんだけど……今日は違う。

今日は昼から電車で結構遠い降郷村まで行く予定。

僕はまだ教習所に免許を取りに行ってる途中だから運転できないし、律子さん1人で運転するのは負担が大きいから仕方なく電車で行くことした。

それから、向こうに着いたら今回ライブをさせてもらう降郷村の夏祭りの準備を手伝うんだ。

まあ向こうに着くのは夜だから実際に準備をするのは明日からなんだけどね……。

遠いところだし、泊まりになるから忘れ物があったら致命的。

だから僕は念入りに荷物の確認をしないと。

一応昨日の夜も確認したんだけどね。

下着類、カッターシャツ、パーカー、長袖のワイシャツ、Tシャツ……その他諸々。

……後はスポーツドリンクと保冷剤をクーラーボックスに詰めて……これ、どうしようかな。

一応アイドルたちの下着類が汚れたらいけないから恥を忍んでフリーサイズの下着を買っておいたんだけど……ま、一応持って行っておこうか。

練習着も何着か詰めたし……よし、準備完了だね。

荷物のことを考慮して、高木さんがマンションの前まで車で迎えに来てくれるらしいからしばらくティータイム。

今回のライブも無事に成功できたらいいなぁ……。

春香「プロデューサーさん!! 山ですよ山!!」

真「わぁ……随分と深いところまで電車が通ってるんだね……」

シンジ「ははは、確かに東京では見れない光景かもね」

雪歩「綺麗……」

伊織「ふ、フン! これぐらいなら私有地で……」

あずさ「伊織ちゃん、わざわざ張り合わなくてもいいのよ?」

亜美「……ね→兄ちゃ→ん……まだ着かないの→?」

真美「真美たちもう3時間は乗ってるよ→?」

律子「午後3時発の午後6時着だからもうちょっと我慢しなさい」

美希「Zzz……」

響「……美希を見てたら自分も眠くなってきたぞ」

最近はウケがいい美希と千早に頑張ってもらってたからなあ……。

……僕にもっとプロデュースする力があれば他のみんなの仕事も増やせるんだけど。

貴音「お腹が空きました……」

シンジ「おにぎりがまだあるけど……食べる?」

貴音「もちろんでございます!!」

やよい「うっうー!! 私もひとついただきますー!!」

千早「……私も、ひとついいですか?」

シンジ「うん! 全然いいよ!」

>次は○○駅、○○駅です。

律子「もう着くから荷物の準備しときなさいよー!」

亜美「やっと着いたYO……」

……みんなはまだこの先の地獄を知らない。

伊織「ね、ねえ……アンタ!! いつまで歩けば降郷村に着くのよ!!」

シンジ「うーん……後10分ぐらい?」

真美「こんな急な道を歩くことになるならキャリ→バッグじゃなくてリュックサックで来ればよかったYO……」

元々キャンプ目当てで車で来る人が多い村だからね……。

真「雪歩、大丈夫?」

雪歩「う、うん、大丈夫……」

律子「アイドルたる者スタミナが必要!! みんなシャキッとしなさいシャキッと!!」

「「「「「はーい……」」」」」

みんなはキツイだろうなあ……。

僕の荷物もかなり重いけど、疲れないっていうのが効いてるかも。

スポーツドリンクと保冷剤でパンパンのクーラーボックスと荷物がぎゅうぎゅう詰めのボストンバッグ、それに夕飯に使う大量の食材。

……僕、使徒でよかったかも。

僕が疲れないって知ってる社長はともかく、みんなは僕の荷物を見てギョッとしてたけどね。

「「「「「よろしくお願いしまーす……」」」」」

降郷村のキャンプ場の職員「いやいやこちらこそよろしくお願いします。わざわざ東京からこんな遠いところまで来てもらって……大変だったでしょう?」

亜美「全くだよ→……」

律子「いえいえ、アイドルにはスタミナが無いとやっていけませんからね。これぐらいでちょうどいいですよ」ガツン

亜美「うぅ……りっちゃんひどい→!!」

実際今回はかなりキツイと思うけどね。

スタミナがある真と響もグダーってしてるし、いつも元気なやよいも疲れ果ててる。

美希に至っては立ったまま寝ちゃってるよ……。

シンジ「はい美希。これで目を覚ましなよ」ヒタッ

美希「!? つ、冷たっ!? 一体なんなの!? ……ってプロデューサー! 冷たいボトルを頬っぺたに付けるなんてヒドイの!!」プクー

あはは、美希の頬っぺたがフグみたいに膨らんでるよ。

シンジ「ごめんごめん悪かったって。スポーツドリンクが欲しい人はこのクーラーボックスから取って行ってくださいねー!」

「「「「「はーい……」」」」」

美希「……まあいいの。ミキは早く寝れれば気にしないの……」

……これから夕飯とお風呂があるんだけどなぁ……。

職員「ここはキャンプ場ですが、流石にテントで寝泊まりしてもらうわけにもいきませんのし、早速宿舎まで案内します」

シンジ「はい、お願いします」

職員(……もしかしてこの子もプロデューサーか何かの人?)

……職員さんに疑惑の目で見られてるのが一発でわかったよ、僕。

亜美「やっと着いた→……」

真美「もう眠たいYO……」

やよい「お腹空いちゃいましたー……」

伊織「……アンタたち、これから夕食なのよ」

亜美「だって夕飯なのに外に集合っしょ→?」

真美「イノシシとか狩りに行かないといけないパタ→ンかもよ……」

やよい「うっうー……山菜ならおばあちゃんが採り方を教えてくれましたけど……」

伊織「……早く行くわよ」

亜美「やだやだこのいい匂いがする畳の上で寝たい→!!」

真美「……亜美、行くよ」

亜美「真美隊員……私を裏切るというのか!?」

真美「真美もお腹空いたの→!!!!」ズルズル

亜美「あ〜れ〜……」ズルズル

伊織「……やよい、私たちも行きましょ」

やよい「はい!!」

美希「Zzz……」

響「……美希、寝ちゃってるぞ」

春香「うーん……これから夜ご飯なんだけど……」

貴音「……プロデューサーの持っていた食材と外に集合という点から考慮すれば……ずばり! 今日の夕餉はばぁべきゅぅでしょう!!」

春香「バーベキューかー……溢れる肉汁」

美希「…………」ビクッ

響「確かおにぎりも残ってたはずだから……それを肉汁と混ざったタレに漬けて焼けば」

美希「早速食べに行くのー!!」ダダダダダダダ

貴音「……面妖な」ダダダダダダダ

春香「あはは、貴音さんも付いて行くんだね……」

響「なんだかいつも通りで安心したぞ!!」

雪歩「うわぁ……畳だよ真ちゃん!!」

真「ははは、雪歩の家も畳じゃないか」

雪歩「それにこれ!! この備え付けのお茶っ葉高いやつだよ!!」

真「わ、わかった、わかったから落ち着こうよ雪歩、ね?」

千早「萩原さん、いつもより楽しそうね……」

雪歩「えへへ、お友達とお泊まりなんて滅多にできないから……今日はすっごく楽しみにしてきたんだよ?」

真「まあ確かにそんな機会は滅多に無いよねぇ……」

千早(それよりこの壁……照明のスイッチがぽつんと……くっ)

雪歩(千早ちゃん、また壁見て暗くなってる……)

真(……ボクも千早と1cmしか変わらないんだけどな)

律子「……なんでこんな部屋割りなんでしょうか」

あずさ「あらあら〜……襲っちゃメッ! ですよ〜?」

シンジ「お、襲ったりしませんから!!」

もう……なんであずささんはそんなことを言うんだろ。

律子「はあ……ま、大人組ってことで社長がまとめたんですかね」

あずさ「そうですね〜……」

シンジ「……とりあえず夜ご飯にしましょうか」

律子「ええ、早速食材の下拵えをしましょうか」

シンジ「あ、もうしてありますんで後は持って行くだけでいいですよ?」

律子「……流石碇プロデューサー。現地での手間を省くためにご自宅で下拵えをしてくるなんて……」

あずさ「恐ろしい子!」

それは古いって言ったらあずささんに怒られるんだろうなあ……。

やよい「こ、このお肉……とっても美味しいですー!!」

シンジ「ははは、ちょっと奮発してよかったよ」

奮発と言ってもそんなに高いわけじゃないけど。

……やよい、今度みんなで焼肉パーティーしようね。

千早「あの……プロデューサー、ビール買って来たんですけど」

シンジ「ああ、ええと……」

どうやって買ったんだろう……年齢確認とか無かったのかな?

っていうか僕ビール飲めないや……。

社長とか小鳥さんとかと飲みに行った時もお酒は控えてきたしね。

……ええい、ままよ!!

シンジ「じゃあ……一本貰おうかな」

使徒って便利なもので、何故かビールを飲んでも全く酔わない。

……でもなんとなく気持ち悪さは感じるけど。

今は夜の9時。

あずささんとりつ……秋月さんがお風呂の用意をしているから今は外に投げ出されているんだ。

……あれ? 貴音?

シンジ「どうしたの貴音? 散歩?」

貴音「ええ、まあ……」

シンジ「……そう」

……貴音はちょっと掴みにくいから苦手かなぁ……。

まあよくラーメンを一緒に食べに行く仲なんだけどね。

貴音「……あなた様」

シンジ「だからあなた様って……いや、いいか。どうしたの?」

貴音「……何か隠し事をなさっているのではございませんか?」

シンジ「……いや、そんなことは無いよ?」

……どこかでボロが出たのかな。

貴音「おかしいですね……あなた様の中に複数の気配を感じるのですが」

シンジ「……何を言ってるのかわからないよ?」

……背中に嫌な汗が滲んで不快だ。

シンジ「大体、気配なんてあるわけ無いじゃないか」

貴音「いいえ、確かに私は先ほど述べましたようにあなた様から複数の気配を感じ取っております」

……ありえないよ、そんなこと。

もしかして……貴音も使徒か何か?

シンジ「そんなの気のせいだよ。僕はここに居るじゃないか、たった1人でさ」

貴音「……あなた様は嘘吐きでございます。私が気付かないとでもお思いでしたか?」

シンジ「……今日はおかしいよ、貴音」

嘘だ……嘘だよそんなの。

……なんでそんなことがわかるのさ。

ダメだ、ダメだよ僕。

ここで化け物だってバレたらみんなに捨てられて……!

シンジ「…………、っ」

貴音「あなた……様?」

シンジ「い、あ……や、やめて……!」

貴音「どうして? どうしてでございますか?」

シンジ「ひ、……あぁ」

やめてよ……。

僕に触ろうとしないでよ!!

きっと今君に触られたら……僕は君を拒絶してしまう。

だから……その手を引っ込めてよ……。

貴音「何を怖がっているのですか?」

今すぐ逃げ出したい。

使徒だってバレたくない。

今この生活を捨てたくない。

だから……。

だからやめてよ……!

貴音「あなた様、顔が真っ青になっているのでございますよ?」

シンジ「…………」

貴音「……ほら、汗を」

シンジ「…………っ!」パフィィィィン

貴音「っ……!?」バチッ

ああ……やっちゃった。

貴音に対してATフィールドを展開してしまった。

貴音がすごい目で僕を見てるよ。

……これで僕もおしまいか。

僕は使徒だ。

……決して貴音たちと共存できるような生き物じゃない。

ほら、まだATフィールドが展開されてる。

……僕は貴音を完全に拒絶してしまったんだ。

貴音「……あなた様……っ!!」グググググググ

シンジ「……何やってるの?」

貴音は僕のATフィールドに両手を当てている。

貴音「きっとこの壁はあなた様の心の壁……」

シンジ「……そうだよ。僕は君を拒絶しているんだ」

貴音「何故……!」

シンジ「……僕がもう人間じゃないって君にバレてしまったからだよ。だから僕はみんなと一緒に居られない」

貴音「そんなことは……ありません!!」

シンジ「……それこそ何故、だよ」

なんで……貴音はまだ僕を見つめているのさ。

シンジ「僕は使徒だ。人間じゃない」

本当は人間で居たい。

貴音「シト、というものが何かは存じませんがプロデューサーはプロデューサーでございます」

シンジ「それはただの屁理屈だよ」

本当はそう思いたい。

貴音「あなた様がシトだとしても私には人間にしか見えません。だから私はあなたをプロデューサーだと認識しております」

シンジ「……僕は疲れない。老けない。僕には半永久的なエネルギーがあるんだ」

本当はこんな体質なんて要らない。

貴音「それはただの勘違い。本当はスタミナが一般人に比べて多いだけでございます」

シンジ「こんな壁だって展開できるんだ」

本当はこんな能力なんて欲しくなかった。

貴音「ならば人間の私が破ってみせましょう」

シンジ「……なんでまだ諦めてくれないの?」

本当は助けて欲しい。

貴音「それはあなた様が765プロ……いえ、私にとっての重要な人物だからです」

シンジ「……嘘だ」

シンジ「僕が重要なんてありえないよ!! そんなの信じられるわけないでしょ!?」

どうせ貴音だって……心の中では僕を軽蔑してるんだ。

……でも本当はちやほやして欲しいと思ってる。

貴音「……シトのあなた様が765プロにもたらしたもの。それは何かご存知ですか?」

シンジ「……そんなものなんて無いよ」

あったらどれだけいいことか。

貴音「まずはアイドルとしての仕事」

シンジ「……それは僕じゃなくてもできるよ」

プロデューサーの代わりなんて幾らでも利くさ。

貴音「笑顔」

シンジ「僕が居なくてもみんなは笑ってるじゃないか」

きっと僕がL.C.L.の海に居たままでも、みんなは笑っていることができたはずさ。

貴音「団結」

シンジ「……もうやめてよ」

僕が居なくたってみんなは団結してるよ。

貴音「……私の初恋」グググ

シンジ「もう僕に構わないで……え?」シュイン

はつ……こい?

貴音「……やっと解いてくださりましたね、プロデューサー」ダキッ

シンジ「たか……ね……」

……ダメ……だよ……僕に抱きついたら……。

貴音「……ええ、わかっておりますよ」

貴音「私がとっぷあいどるを目指す限り、決して叶う恋ではありません。プロデューサーとアイドルの関係なのですから」

シンジ「…………」

貴音「ですが……片想いなら、片想いならば何も問題はございません」

シンジ「…………ごめん、でも僕は」

貴音「例え!! 例えあなた様が人外であろうと、化け物じみた力を持とうと、私の恋心はなんら揺るぎません」

貴音「私は……あなたの皆に対してひた向きなところに惹かれましたから。ですから、765プロ、いや、私に背を向けるようなことは……決してして欲しくはありません」

……僕は……僕は。

どうすれば……いいんだろう。

貴音「……先程のことは私とあなた様の秘密でございます。ですから……早く皆のところへ戻りましょう」

……僕は甘えていいのかな。

僕はこんなダメ人間……いや、ダメ使徒なのにみんなと居ていいのかな。

貴音「……ほら、今度は汗でなく涙も流れていますよ」

シンジ「……はは」

……この前も泣かないって決めたのにね。

貴音「……今はいいのです。私の恋心も、プロデューサーとしての役目も、人間じゃないのだということも。全て忘れてしまえばいいのです」

貴音「……今は思う存分甘えてくだされば……私としても、満足でございます」

シンジ「……ありがとう」

……そして……ごめんね、貴音。

真「それー!!」バシャッ

雪歩「キャッ……もう真ちゃん!!」

……なんで僕はこんなところに来てしまったんだろう。

というか貴音に連れてこられてしまったんだろう。

シンジ「……秋月さん」

律子「……ええ、碇プロデューサーの仰りたいことはわかってます」

千早「……何故わざわざうちのためにプールを貸してくださったんでしょうか。水を入れ替えるのにもお金がかかるのに……」

……しかも学校にあるような巨大なプールだ。

律子「これもギャラのうち、だそうよ」

職員「ははは、気に入っていただけましたか?」

律子「わざわざここまでしていただいて……本当にありがとうございます!!」

あ、部屋まで案内してくれた職員さん……ってその右手の海パンは……。

職員「ああ、女の子たちにはうちの水着を貸し出したんですけど……そういえば男の子……いや、男性のプロデューサーが1人居たな、と思い出しましてね。これ、使ってください」

シンジ「ああ、ありがとうございます……」

職員(……さっきのアレ、いいモノ見せてもらいましたよ?)

げっ……まさかATフィールドを。

職員(プロデューサーとアイドルの禁断の恋愛に乾杯!! ってわけで今回はサービスですからね)

ほっ……ATフィールドは見られてなかったか。

シンジ(……忘れてください)

職員(わかってますって♪ ……彼女さん、大事にしてくださいね?)

シンジ(彼女じゃないですから!!)

律子「はいはいあんたたちー!! もうすぐ10時だからお風呂入りに行くわよー!!」

えっ!?

亜美「え→!? まだ15分しか遊んでないYO!!」

春香「プロデューサーさんと貴音さんに至っては足も浸けていませんよ!?」

貴音「……せっかくすく水なるものに着替えて参りましたのに」

シンジ「たっ、貴音!?」

何それエr……煽情的。

真美「あ→!! シンちゃんがお姫ちんみてコ→フンしてる→!!」

響「……変態だぞ」

シンジ「あーもううるさい!! 早くお風呂入りに行こうよ!!」

律子「プールなら明日もう1泊するんだからまた明日入ればいいじゃない」

律子「…………リハも本番もセットの準備もちゃんとできたらの話だけど」

秋月さん、顔怖いです。

シンジ「あー……疲れた」

ハム蔵「ヂュイ……」

ここは温泉……と言えば温泉かな。

ただもう遅いから僕1人の貸切状態だけど。

シンジ「ハム蔵、次は露天風呂に行く?」

ハム蔵「ヂュイ!!」

ええと……手を挙げたから行くってことでいいのかな?

まあいいや、早速行ってみよう。

亜美『喰らえミキミキ→!!』

美希『わぶっ!! ……よくもやってくれたのー!!』ビチャッ

やよい『あ、亜美!! タオルを美希さんの顔に投げつけたらダメですよー!!』

真美『へへっ、やよいっちも喰らえー!! ……え?』

律子『……真美、アンタ』ビチャッ

亜美『ひ、ひびきん!! りっちゃんの顔のタオルを急いでどっかに投げて!!』

響『わ、わかったぞ!!』ポーイ

あずさ『あ、あらあら〜……男湯の方に行っちゃいましたね〜』

シンジ「」ビチャッ

……濡れタオルって痛い。

痛いよ響……。

シンジ「投げ返すよー!!」

響『うぅ……ごめんなさいプロデューサー……』

シンジ「いいっていいって……それっ!!」ポーイ

ベチーン

あ、あれ?

誰かにヒットしちゃった!?

亜美『お、お姫ちんのお尻ちんにクリティカルヒットしたよ兄ちゃん!!』

真美『赤くなっててちょっとエロいよシンちゃん!!』

貴音『……あなた様、そのようなぷれいをご所望……』

シンジ「ご、ごめん貴音!! 後双海姉妹は静かにして!!」

真『……そういえば貴音のお尻って大きいよね〜』

お尻……。

春香『胸も大きいし……』

胸……。

千早『……くっ』

まな板……。

雪歩『え、ええと……ボン! キュッ! ボン! ですよねぇー……』

美希『確かにそのボディはズルいの……』

貴音『……そうでしょうか?』

あずさ『うふふ、そうよ。ね? プロデューサーさん?』

シンジ「と、唐突にそんなこと聞かないでくださいよ!!」

……さっき僕の胸に貴音の胸が……こう……密着?

………………………………思い出したら膨張してしまった。

ハム蔵「ヂュイ……」

噛まないでねハム蔵。

律子「襲ったら通報ですからね!! おやすみなさい!!」

あずさ「おやすみなさーい」

シンジ「わかってますって……おやすみなさい」

そう、今の僕は性欲を超えた存在なんだ。

……というのは冗談で、非常にドキドキしている。

僕が左端で秋月さんが真ん中、あずささんが右端。

……布団がくっついてるから少なくとも嫌われてはないか。

律子「……碇プロデューサー。……何か隠してますよね、あなたは」

あずさ「…………」

……なんでみんなはそんなに鋭いの?

さっき貴音と一悶着あったところじゃないか……。

シンジ「何を言ってるんですか?」

律子「老けないし酔わない。それにあの大荷物を汗もかかないで運び切って……明らかに常人ではありえませんけど」

確かに我ながら異常だ。

……まあ……僕が使徒だからじゃないかな。

シンジ「体質としか言えませんけど……」

律子「……そうですか」

律子「……碇プロデューサー、無理をなさらなくても構わないんですよ?」

僕が……無理?

あずさ「だってプロデューサーさん、いつも何かに追われてるような顔をしてるんですよ?」

げっ、そんな顔してたかな……。

シンジ「……そうですか?」

律子「ええそうです。いつも美希とみんなの分のおにぎりを作って、それでアイドル全員分の営業もやって……書類もきちんと完成させてくる。私だったら持ちませんよそんな生活」

あずさ「だから……たまにはゆっくり休んでください。明日は私たちで準備しますから」

シンジ「……嫌ですよ」

律子「何故ですか!? いつも頑張ってくださってるんだから明日1日ぐらい甘えてくださっても……」

甘える……か。

なんでみんな貴音みたいなことを言うんだ。

……なんでみんなはこんなにも優しいんだ。

シンジ「……僕は、誰かに頼られたいんですよ」

あずさ「いつも頼らせてもらっていますけど……」

シンジ「……僕は僕だけの居場所が欲しいんですよ」

そう、これが僕の本心だ。

シンジ「僕は……常に誰かから存在を求められたい」

シンジ「1人ぼっちになりたくない」

みんながL.C.L.になってアスカからも拒絶された孤独の赤い世界。

シンジ「裏切られたくない、失望されたくない」

……僕の周りの人間はみんな勝手に消えて行った。

いや、僕が消した。

シンジ「……だから、僕はみんなの期待を裏切らないように頑張っているんです」

僕はわがままだ。

律子「……やっぱり追い詰められてるじゃないですか」

あずさ「……私たちはプロデューサーさんを裏切ったり、失望したりしません」

律子「そうですよ。頑張っていらっしゃるんですから、失望なんてするわけがありません。むしろ私の方がダメダメですよ」

あずさ「プロデューサーさんは765プロに来てから一度も失敗したことがありませんけど、例え失敗しても誰も失望したりしませんよ?」

……人との繋がりなんて直ぐに消えてしまう儚いモノなのに。

どうしてそれが続くなんて信じられるの?

律子「でもまあ……辛かったら私を頼ってくださいね?」

シンジ「……なんか病んでるみたいですいません」

あずさ「うふふ、いいんですよ病んでても」

…………?

あずさ「他人に存在を認められたい。他人にどう思われているかわからなくて怖い。それは人間誰しもが感じることなんです」

あずさ「プロデューサーさんは……その気持ちが人より強いんですよきっと。それは過去に人間関係にトラウマがあったとか、何がショックを受けたとか……そんなことがあったから怖いんだと思います」

確かにトラウマ……だよね。

あずさ「でも、今は今。うちのアイドルのみんないい子たちばかりだから……ゆっくりでも構いません。少しずつ、その恐怖心を解消させていきましょう」

あずさ「うふふ、ちょっと偉そうでごめんなさいね〜?」

シンジ「……いえ、こちらこそごめんなさい。僕のことをそんなに気にかけてくれるなんて……」

律子「……気付いていらっしゃらないとは思いますけど、碇プロデューサーは765プロのみんなだけでなく、今や芸能界でもそこそこ人気なんですよ?」

え!?

律子「敏腕中学生プロデューサー!! ……らしいですよ。今は仕事はあまり多くないですけど、そこそこ有名なアーティストさんやディレクターさんに目を付けられてるようで」

うぅ……僕だって身長的な意味で成長したいよ……。

……ま、僕の頑張りが認められてきたってことで素直に喜んでいいのかな。

あずさ「……よし、明日も頑張りましょうね?」

シンジ「はい、もちろんです!!」

律子「じゃあ、2回目ですけどおやすみなさい」

……ふふ、嬉しいな。

僕が本当に好かれているのかはわからないけど、誰かとこんな風に過ごせるのは……幸せで、暖かいな。

シンジ「……おやすみなさい」

あずさ「ええ、おやすみなさい」

……ところでこのシチュエーションってケンスケが……いや、気にしないでおこう、うん。

明日が楽しみだなぁ……。

シンジ「ふわあぁ……」

今何時だろう……朝の5時?

いつもの起床時間ぐらいか……。

食堂の厨房で朝食の支度の手伝いでもしようかな……ん?

誰かの声が聞こえる……。

シンジ「こんな朝から発声練習?」

千早「あっ、プロデューサー、おはようございます!」

シンジ「うん、おはよう」

やっぱり千早だったのか。

千早「発声練習が終わったら走りに行こうかと思ってたところなんですけど……一緒に走りますか?」

シンジ「いいよ、じゃあ行こうか」

……僕はいくら走っても疲れないからそんなに意味があるとは思えないけどね。

シンジ「最近はどう? 千早と美希の仕事が増えてるけど……大変?」

千早「ええ、大変ですよ?」

……やっぱり2人に頼り過ぎかな……。

千早「でも幸せです。だって歌の仕事がドンドン入ってくるんですから」

シンジ「でも……歌だけじゃなくてバラエティもあるよね?」

まあバラエティも入れてるのは僕なんだけどね。

千早「確かにバラエティは苦手ですけど……でも、最近はようやく慣れてきました」

シンジ「……そっか」

千早も成長したっていうことか。

シンジ「千早が頑張ってるんだから、僕もみんなに仕事を持ってこないとね?」

千早「その仕事が今日のライブじゃないんですか?」

はは、そうだったね。

千早「……そういえば、最近気になることがあるんです」

シンジ「どうしたの?」

まさか千早も僕のこと……。

千早「この前初めて961プロのジュピターと共演したんですけど……なんだか疑うような感じの視線を向けられてたんです」

シンジ「へえ、ジュピターが……あっ!!」

千早「どうかしましたか?」

完全に冬馬君にメールするの忘れてた……。

向こうの社長は765プロを敵視してるようだし、メールのことを指摘しようにもプロデュースしてくれてる黒井社長の前ではなかなか僕に会えなかったんだろうなあ……失敗した。

3ヶ月も経ってるし……怒られるだろうなあ……。

……後でちゃんとした謝罪文を送っておこう。

シンジ「…………………うん、気にしないで」

シンジ「ほら、こんな感じで……」ザクザクザクザク

千早「なるほど……」

今は千早と一緒に朝食の準備のお手伝い。

おばちゃん「へえ、あんた男なのに手際いいわね?」

シンジ「ははは、慣れてますから」

……あ、今指切っちゃった。

シンジ「じゃあ千早、失敗してもいいからキャベツを千切りにしてみなよ。僕ちょっと指切っちゃったから絆創膏貼ってくる」

千早「わかりました」シャキン

シンジ「刀じゃないんだからちゃんとキャベツに手を添えて!! ……違う違う指は伸ばしちゃダメだよ。ニャンコの手にしないと」

千早「ニャンコの手?」ニャン

かわいい……じゃなくて。

シンジ「そう、そうしたらよっぽど不器用じゃない限り指を切ることが無いからね」

千早「わかりました」

千早は危ないなあ……。

確かポケットに絆創膏が……ってあれ?

確か左手の人差し指を切ったはずなんだけど……傷口が無い?

……きっと指を切ったって勘違いしちゃったんだな、僕。

何やってんだろ……。

気づけばステージまで後20分だ。

亜美たちが違う衣装を持ってきたから私服で参加することになったけど……。

みんなは僕が思っている以上に早く仕事をこなしてくれた。

でもそれは早くプールに入りたいという団結から成るものだったけどね。

塩素臭くなったらどうするんだよ……とは思いつつもみんなの無邪気で楽しそうな笑顔を見てしまってはプールに入らせないわけにはいかない。

……下心が無かったとは言えないが、僕も少しだけプールに入った。

楽しかった。

あんなに純粋に楽しめたのはトウジたちとゲーセンに行った時だけだった。

やっぱり今の僕の居場所はここなんだと感じた。

……でも僕の存在に疑問が生まれた。

貴音は僕が使徒だろうと受け止めてくれると言ってくれた。

でも結局は、僕が使徒だということがバレたら765プロから弾き出されるかもしれない。

みんなは優しいけれど、心の奥底なんて知りようがないから怖い。

……そして今の僕には危険が1つ。

水瀬財閥に髪の毛を渡してしまったことだ。

もしかしたらもう解析が済んでしまったかもしれない。

もしかしたらS2機関が作られてしまったかもしれない。

……もしかしたら僕が使徒だってことがバレてしまったかもしれない。

僕はいつだってそうだ。

僕はいつ爆発するかわからない爆弾を抱えて生きてきた。

でもその爆弾は、いつも僕の手の届かないところにあって、いつも僕を苦しめる。

人類補完計画、ダミープラグによるトウジの怪我、カヲル君……そして今回の僕の遺伝子の解析。

……最近毎日こんな感じのことを考えてる気がする。

全く、考えても意味ないのになあ……。

シンジ「雪歩、もうすぐステージだけど大丈夫?」

雪歩「は、はい!!」

真「雪歩、まだ足が震えてるよ?」

雪歩「あうぅ……」

シンジ「ごめんね……今回は美希たちに比べてまだあまり売れてない君たちの認知度を上げるステージだからさ……」

春香「そ、そうだったんですかぁ!?」

いや、そんなにオーバーなリアクションすることかな……。

シンジ「ま、観客席を見てくれたらわかると思うけど、今回成功したらかなり大きいと思うよ?」

雪歩「か、観客さんがいっぱい…………!? い、犬が居ます!!」

あ、しまった。

観客のおばあちゃんが犬を抱えてる……。

雪歩「い、犬はダメええぇぇぇ!!!!」

真「あっ、ちょっと雪歩!!」

シンジ「あはは、僕が追いかけてくるよ」

男の人には慣れたのに犬はまだダメなのか……。

シンジ「ゆーきーほー!」

雪歩「…………」ビクッ

なんだ、そんなところに居たんだ。

シンジ「……やっぱり犬は怖い?」

雪歩「は、はい……」

シンジ「そっか……」

小型犬だったんだけど……。

シンジ「あのわんちゃん可愛くなかった?」

雪歩「ええと……やっぱり怖さが優先されちゃって……」

シンジ「……うーん、残念だなぁ……」

雪歩「ご、ごめんなさい!!」

シンジ「いやいや謝らなくてもいいんだけどね……」

シンジ「……僕もよく嫌なことから逃げちゃうんだけどさ」

雪歩「……ぷ、プロデューサーさんが?」

シンジ「うん、僕が」

シンジ「……でもさ、それで友達を失って、父さんたちも失って……いいことなんかなかった」

雪歩「…………」

シンジ「でも……僕は今こうして生きてる。幸せを享受してる」

シンジ「……嫌なことから逃げても案外なんとかなるよ。まあそりゃあ逃げないのが一番だけどね?」

シンジ「だからさ、雪歩」

シンジ「……さっき逃げちゃったから、もう一度立ち上がってみない?」

雪歩「立ち上がる……?」

シンジ「うん、立ち上がるんだよ」

シンジ「立ち上がって恥をかいても、失敗しかても大丈夫。僕だって仕事で失敗してもなんとかなってるんだからさ」

シンジ「それに……雪歩にはみんなが居る」

シンジ「雪歩が失敗しても、みんながフォローする。もちろん僕もフォローする。それでいいじゃないか」

シンジ「だから今からでもいい。頑張って今日のステージを最高のステージにしようよ!!」

雪歩「は、はい!!」

シンジ「うん、いい顔。ほら、早く二人のところに行ってきなよ。もう始まっちゃってるかもしれないよ?」

雪歩「わ、私、頑張ります!!」タッタッタッタッタッ

……言いたいことだけ言っちゃったけど大丈夫かな。

ま、いっか。雪歩が前に進めたなら。

「「「ALRIGHT*!! 今日が笑えたら〜♪」」」

シンジ「……可愛いですね、そのわんちゃん」

おばあちゃん「あらあなたは……あの子たちのプロデューサーさん?」

シンジ「ええ、そうです」

おばあちゃん「みんな若いのに頑張るねぇ……あなたも随分若いように見えるけれど」

シンジ「あはは、よく言われます……」

そりゃあ僕14歳……いや、誕生日があったから15歳になったのか。

おばあちゃん「……あなた、あの子たちに何か引け目を感じているのかい?」

シンジ「…………ええ、少し」

おばあちゃん「ふーん……そうかい」

おばあちゃん「……ま、悩みすぎてもいけないよ? 人との繋がり、関係なんてロジックじゃないからね。考えるだけ無駄さ」

シンジ「ロジック……じゃない、ですか」

おばあちゃん「そうだよ。私の夫なんて母さんと親子d「ちょ、ちょっと何を!?」……いや、気にしないでおくれ」

おばあちゃん「とにかく、今のあの子たちとの関係は大事にしなさい。だってあの子たち、とてもいい目をしているもの」

シンジ「……ええ、わかっています」

おばあちゃん「ははは、歳を取るとどうも説教臭くなってしまってかなわんねぇ……」

……若くても説教臭いのがここに居るけどね。

「「「さあ出発、オーライ*!!」」」

観客「「「「「わあああああああああ!!!!」」」」」パチパチ

おばあちゃん「ふふふ、いい歌だったねぇ」パチパチ

シンジ「ははは、ありがとうございます」

おばあちゃん「私はあなたたちを応援してるからね? 頑張ってください756プロさん」

シンジ「……765プロです」

……雪歩、よく頑張ってくれたな。

僕も、もっと仕事を取ってこれるように頑張ろう!!

「……ここは……?」

「……研究室? にしか見えないけど……どういうことなんだ」

「うわ、ペトリ皿踏んじゃってるし……足の裏が血まみれだよ……」

研究員「誰か居るのか……!? 誰だお前は!!!!」

「あれ、ここの人? それはともかく誰だお前っていうのはこっちのセリフなんだけどねぇ……」

研究員「ぐっ!!」バン

「こんな狭いところで銃を使わないでくれ」パフィィィン

研究員「ひ、ひいっ!!」

研究員(お、オレンジ色の壁が銃弾を防いだ!?)

「それに君は日本語を喋っている……ということはここは日本? 銃刀法違反じゃないのかい?」

「まあネルフやゼーレも銃を持ってたし、今更か」

「そこの君、何か着るものをくれないかい?」

研究員「あ、ああ、とりあえずこの白衣を……」

「そんなに震えなくてもいいのに……」

研究員「な、名前は……あるのか!?」

「名前かい? そうだねえ……」

カヲル「渚カヲル、と名乗っておこうか」









第3話 『降郷村の夏祭り』、完







あー第3話は書き直した方が良かったかも…
一話だけですが今日はここまでです

前のは読んじゃらめええええええ
というのは冗談で第4話を投下









第4話『シ者と怒り』







『名前は』

カヲル「渚カヲル」

『歳は』

カヲル「15……かな?」

『何者だ』

カヲル「さあ? そんなことは知らないね」

『目的は』

カヲル「アダムの肉体への回帰……のはずだったけど、どうもアダムの場所がわからないね」

『アダムとは?』

カヲル「使徒だよ使徒!! もういいかい? いい加減この何もない部屋が退屈なんだけど」

『……君は碇シンジのDNAから生まれたのにも関わらず姿形が全く違い、その上銃弾をも跳ね返すオレンジ色の壁を扱うのだ。ならば君を警戒するのは当然のことだろう』

カヲル(碇……シンジ君?)

カヲル「……そのシンジ君に会いたいんだけど」

『……構わない。私の質問に全て答えたら戸籍ぐらいは作ってやろう』

カヲル「全く、面倒なお方だ……」

カヲル(この世界にはシンジ君が居る。でもネルフやゼーレは無いらしいし、アダムもリリスも存在が感じられない。……少し厄介だね)

『ここがどこか、君は理解しているのかね?』

カヲル「そうだねぇ……ここに連れてきてくれた研究員のニイジマさんのネームプレートには水瀬財閥、医薬研究部門って書いてあったけど」

『……水瀬財閥がどのようなものかは?』

カヲル「さあね。ただこれだけの施設を揃えるにはかなりの資金が必要だから、日本でもそれなりの財閥じゃないのかい?」

カヲル「特に今僕が居る場所なんてそうだ。一面真っ白だけど、スピーカー、カメラ、マイクがどこかに隠されている。それに僕をここに入れるということは対ショック性能とかも万全なんだろうね」

『大した観察眼だ。本当に碇シンジから生まれたのかと目を疑うレベルだよ』

カヲル「僕だって気が付いたらここに居たんだからさ。シンジ君どうのこうのは関係ないと思うけどね」

『……どういうことだね?』

カヲル(……さて、これ以上前の知識を追求されると面倒なことになりそうだね)

カヲル(と言ってもさっきアダムについて漏らしちゃったから既にまずいんだけど……)

カヲル「何故か僕には知識が存在するんだ。言語は日本語、ドイツ語、英語のトリリンガル。後は一般人程度の知識だけさ」

『……興味深いな。2ヶ月培養しても変化無しであった碇シンジの髪の毛が一瞬にして君を作り上げたたのも興味深い』

カヲル(僕はそんな気持ちの悪い情報欲しくなかったけどね)

『まあそれは後から君を調べれば問題ない。とにかく私が聞きたいのは……君は我々人間の敵か? 味方か?』

カヲル「そんなの確定的な情報が無いんだからわからない。でも……」

カヲル「僕は常にシンジ君の味方さ」

『……君はバイセクシャルか何かなのかね?』

カヲル「バイセクシャル? 僕はただ好きな人間の味方で居たいだけだよ?」

『……もういい。これから精密検査を受けてもらう。そうすれば君の戸籍は君のものだ』

『もちろん、場合によっては制限をつけさせてもらうがね?』

カヲル「……いいよ」

カヲル(全く、自由意志の天使であるタブリスの僕が縛られるなんて皮肉なことだよ)

カヲル(……ま、これ程度の壁ならATフィールドで切り裂けるからいつでも逃げ出せるんだけど)

カヲル(……早く会いたいよ、シンジ君)

最近、よくイライラするようになった。

常に喪失感……なんというか、パズルのピースが完成直前で一つ足りなくなった時みたいな。

そんな喪失感が常に僕に纏わりついてくるようになった。

確かに、最近はみんなの仕事が増えてきて僕の時間が取れなくなったからかもしれないけど……。

それでも何かが違う。

心に穴が空いた気がするんだ。

冬馬「オイ、注文してから黙っちまってどうしたんだよ?」

シンジ「ああ、ごめん……」

僕は久しぶりに有給というか、休みを取った。

そして今、都内の少し寂れた喫茶店で変装した冬馬君と向き合っている。

というか僕が一方的に黙ってただけなんだけど。

シンジ「ええと……うちの話だったっけ?」

冬馬「そうそう、3ヶ月も待たせやがったからお前らも有名になってきて信用できなくなってきたけどな」

シンジ「あはは、ごめんごめん」

「メロンソーダフロートとミックスジュースになります」

冬馬「お、来たか♪」

……冬馬君、メロンソーダがそんなに好きなんだね。

シンジ「……意外と子供っぽい」

冬馬「メロンソーダが好きで悪いか!! ……お前だってミックスジュースじゃねえか」

シンジ「営業先でブラックコーヒーばかりだから……たまにはね?」

冬馬「……地味に辛いなそれ」

コーヒー飲んだ後の口臭対策も面倒だしね……。

シンジ「で? 765プロは汚い手を使って伸びてきている……黒井社長はそう言ってるんだね?」

冬馬「そうだ。俺が961プロのオーディションに受かった時からそうやって言われてきたんだが……俺の短絡さに気付いてから疑問に思い始めたわけだ」

冬馬「……最近は実際に伸びてきてるからまた疑い始めたけど」

シンジ「だから実力だって……まあいいや。実はうちのアイドルもジュピターが不正をしているように考え始めているんだ」

冬馬「…………! ふざけんな!! 俺たちは実力で……」

シンジ「ちょっと落ち着きなよ。変装の意味が無くなっちゃうよ?」

冬馬「……悪い」

実力を否定されて熱くなった時の冬馬君の目は本気だった。

……ジュピター自体はいい人たちばかりなのかな。

シンジ「僕らはテレビに出演できるほどには伸びてきてるんだけど……何故か大抵の場合、直前にゲストとしてジュピターが抜擢されるんだ。冬馬君もやたらうちとの共演が多かったとは思わない?」

冬馬「……確かに、ほぼ飛び入り参加で出演させられる番組も多いな」

シンジ「他にも僕らが出るオーディションが中止になった代わりにジュピターが出たり、うちがいつも頼んでる作曲家さんへの作曲依頼が何故かジュピターの作曲依頼が優先されたせいで潰されたり……」

冬馬「……確かにそれはおかしい」

シンジ「でしょ? だからうちのアイドルも、961プロがなんらかの工作をしてるって考え始めたんだ」

冬馬「……そうするとわけがわからねえ。なんでおっさんは765プロの邪魔をしようとするんだ?」

シンジ「……黒井社長は高木社長が嫌い?」

冬馬「……確かにそんな節はあるが……」

高木さんも、黒井社長の名前を聞いた時に苦い顔をしてたしね。

冬馬「あのおっさんが私情を仕事にまで持ち込むか……?」

シンジ「わからない。僕はそれほど黒井社長と接する機会が無いからね。でも……可能性としてはありえないことではないんじゃないかな」

冬馬「ふーん……」

真「あれ? プロデューサー、今日は休みだと思ったらここに来てたんですね?」

雪歩「こ、こんにちはプロデューサー!!」

シンジ「う、うん、奇遇だね」

冬馬(……765プロの……菊地と萩原か?)

シンジ「……そういえば今日は2人ともオフだったっけ。真も雪歩もここ知ってたの?」

真「ええ。というか765プロのみんなは大抵この喫茶店を知ってると思いますけど……」

あちゃー……ちょっと失敗しちゃったな。

雪歩「も、もしかして……ジュピターの……天ヶ崎冬馬さん?」

冬馬「天ヶ瀬!! 天ヶ瀬冬馬だよ!! 微妙に間違えんじゃねえ!!」

真「……プロデューサー」

そんな目で見ないでよ真。

シンジ「ま、まあ2人もここに座りなよ。せっかくだから一緒に何か食べない? もう昼時だしさ」

真「……はい、わかりました」

シンジ「じゃあビーフシチューと黒豚のサンドウィッチ……オムライスとビーフカレーライスをお願いします。2人とも、飲み物はどうする?」

真「あ、ボクはカシスオレンジジュースで」

雪歩「私はマンゴージュースでお願いします」

シンジ「……じゃあ以上で」

「かしこまりました」

真「…………」

雪歩(真ちゃん、どうして黙っちゃうの……)

冬馬「…………」

……真が親の仇を見るかのように冬馬君を睨んでる。

まあ努力して取ってきたみんなの仕事がジュピターに取られていくんだもんなぁ……確かに敵視してしまうのも仕方ないかもしれない。

シンジ「え、ええと……彼はご存知の通り961プロ所属、ジュピターの天ヶ瀬冬馬君です。あまとうとでも呼んでやってください」

冬馬「おいふざけん「あまとう」…………菊地」

真「あまとう、これからよろしくね?」ニヤニヤ

……女の怖さを垣間見た気がする。

いや確かにあまとうと呼ばせることになったきっかけは僕だけどさ。

……仲良くなってもらうためのあだ名だったんだけどなぁ……。

冬馬「……よろしくな、オトコンナ」

真「…………」ピキピキ

雪歩「ま、真ちゃん「雪歩、悪いけど黙ってて」……うぅ……」

あれ、何気にまずい雰囲気になってる?

真「……最近ジュピターって調子いいみたいだね」

冬馬「……そっちこそ」

真「汚いことして手に入れたお金で飲むメロンフロートは美味しい?」

冬馬「……俺は俺の実力だけで勝ち上がってきたつもりだが」ピキピキ

真「あっ、賄賂が要るから結局はプラマイゼロなのか。もしかしてジュピターってボランティア団体なの?」

冬馬「…………!! だから俺は汚いことなんて——」

シンジ「ああもうわかった!!」

「「「!?」」」ビクッ

シンジ「僕が説明するから仲良くしてよ!?」

……それなら最初から早く説明しろって話なんだけどね。

シンジ「まずは黒井社長なんだけどね——」

真「……やっぱり961プロの不正が……」

シンジ「確実な証拠は無いんだけど……おそらくその通りだろうね」

雪歩「…………私、悔しいです」

冬馬「…………」

雪歩……。

雪歩「みんなが頑張ってきたのに、結局その努力がお金に奪われるなんて、その……私は嫌です、絶対に」

真「そうですよプロデューサー!! ボクらだって必死に頑張ってきたのに!!」

冬馬「……悪い。多分うちのおっさんのせいだ」

シンジ「冬馬君……」

真「…………」

雪歩「…………」

冬馬「だが、俺にはおっさんにアイドルとして育ててもらった恩がある。説得はやってみるが……確かな証拠が無い今、あまり強く言うことができないし、ジュピター3人で961プロを辞めるわけにもいかない。事態の収束には期待しないでくれ」

……確かに完璧な解決は無理だろうね。

真「……お願いします、あまとう」

雪歩「……真ちゃん!」

真「だってさ、ちょっとでも解決の見込みがあるならその可能性に賭けた方が絶対にいいよね?」

シンジ「……ありがとう、真」

冬馬(敬語とあまとうってどういう反応をすればいいのかわかんねえよ……)

冬馬「おう、やれるだけやってやるぜ!!」

雪歩「……私からもお願いします、あまとうさん」

冬馬(あまとうにさん付けって余計反応に困るじゃねえかオイ。あまとうを定着させたこのチビプロデューサーは許さねえ)

冬馬「……おう」

よかった、2人とも冬馬君への誤解は解けたみたいだ。

……若干冬馬君からの視線が気になるけど。

というかこの中で僕が一番背が低いの!?

真「プロデューサー……この後……ショッピングに行きましょうよ!!」モグモグ

シンジ「いやそれはいいんだけどさ……」

冬馬「食ってから喋れよ菊地……」

雪歩「もう、真ちゃんも女の子なんだからちゃんとしないと……」

真「だってこのオムライス……美味しいし……」モグモグ

シンジ「……男っぽいよ、今の真」

真「」ハッ

冬馬「そんなだからオトコンナなんだよ」

シンジ「……確かに最近イケメンアイドルとしての番組出演の声がよくかかるようになったね。もっとそっち方面で売り出した方がいいかな?」

真「……反省します」

だからってちょびちょび食べなくてもいいんだよ真?

真「……あまとうって子供っぽいよね」

冬馬「ああ!?」

……あーあ、言っちゃった。

真「メロンソーダとかカレーとか……うん、なんとなく子供っぽい」

冬馬「別にいいじゃねえかメロンソーダとカレーぐらい!!」

雪歩「うーん……子供っぽいから男の人なのに私もそれほど怖くないのかな」

冬馬「……それは喜んだ方がいいのか?」

シンジ「冬馬君、ちょっとズレ始めてるよ」

冬馬「おっといけねえ。どうも765プロのやつと居るとペースを崩されちまうぜ」

亜美真美と共演した時も弄られてたからね……。

コンコン

『入りたまえ』

カヲル「……失礼するよ」ガチャ

「……ほう、なかなか似合っているではないか」

カヲル「学生服に似合ってるも何も無いと思うけどね」

「それもそうだな。……私の自己紹介は要るか?」

カヲル「……君は水瀬基二。水瀬財閥の最高責任者だね」

基二「大した視力だな。これほど小さなネームプレートさえもその距離から読めてしまうとは」

カヲル「……そんなことはどうでもいいよ。この頑丈そうな手錠を付けられて君の前に放り出された僕はどうなるんだい?」

基二「せっかちなやつだ……まあ良い。今日行ったのは精密検査のSTEP1のようなものだ。ひとまず最も重要で優先されるべき情報を調べるためのな」

カヲル「……それで?」

基二「君には碇シンジと同様、ヘイフリック限界が無いことが判明した」

カヲル(……シンジ君も?)

基二「それは構わん。すでに前例があるからそれほど珍しくはない。いや、珍しいことには珍しいのだが……」

カヲル「……なんなんだい?」

基二「君には常になんらかのエネルギーを作り出している球状の器官が心臓の隣に付いていてね。ある意味それが付いていない碇シンジよりも調査が進めやすいかもしれない。何しろヘイフリック限界が無いことに対して決着が付けられるかもしれないからね」

基二「……我々はその半永久機関の器官を"コア"と名付けたよ」

カヲル(……また面倒なことになってしまったね)

カヲル「で? 僕はどうすればいいんだい?」

基二「……偶然とはいえ、我々は碇シンジのクローンとも言える君を生み出してしまった。が、私も人の子だ。当然人間の形をした君を実験動物のように扱うわけにはいかない」

基二「……しかし君を研究することによって得られる利益は莫大だ。寿命を解消する手段ともなり得るのだからな」

カヲル「……長すぎる命はいつか人口過多で社会の破滅をもたらす。僕に関する研究資料は封印するべきだ」

基二「それぐらいはわかっている。強すぎる力とはいえ、いくらでも制御のしようはあるだろう?」

カヲル「……それはどうかな」

基二「まあそれは後で考えればいい。とにかく私が言いたいのは、君に協力して欲しいのだよ。我々が行う君自身の研究をね?」

カヲル「全く、リリ……君の利益優先の考え方はよくわからないね。……大方、僕の生活を約束する代わりにここに研究されに来いとでも言うんだろう?」

基二「随分と物分かりがいいじゃないか」

カヲル「……いいよ。僕だってこんな窮屈な場所はつまらないからね」

カヲル(それに、真っ当な暮らしが得られるならそっちを優先した方がいいに決まってる)

基二「よく言ってくれた。では住居、戸籍、生活資金などは全て援助させてもらおう」

基二「その代わり……私の呼び出しには必ず応えてもらおうか」

カヲル「……どうしても外せない用事がある時は?」

基二「もちろん配慮する」

カヲル「はあ……いいよ、僕だってそこまでしてくれるなら君の願いを無視するわけにはいかない」

基二「ふっ、交渉成立だな」ニヤリ

カヲル「……よろしく頼むよ」

真「ねえねえ雪歩!! このスカート可愛くない!?」フリフリ

雪歩「真ちゃんはジーンズとかパンツ系の方が似合うと思うけど……」

真「えー!? ボクだってたまにはフリフリな服着たいよー……プロデューサー、これどう思います? 似合ってますか?」

シンジ「え、ええと……」

冬馬「……正直それはセンス無いだろ」

真「あ、あまとうだってチェック柄のシャツとジーンズのオタクファッションじゃないか!!」

冬馬「お、俺はオタクじゃねえ!! てかオタクファッションってなんなんだよ!! 別に普通だろうがこの格好!!」

うん、ポスターが刺さったリュックとハチマキがあれば完璧だね。

シンジ「うーん、僕スカートはよくわからないから無難に良く似合うジーンズでいいと思うんだけど……」

真「うー……みんなしてそんなこと言うんですからー……もういいです、他の店行きましょう!!」テクテク

雪歩「……プロデューサー、上手くフォローしてください」

冬馬「……ああ、確かに今のは悪手だったな」

シンジ「冬馬君に言われたくなかったよ……」

冬馬「うっせえ!! 俺はライバルポジションだから多少キツイこと言っても大丈夫なんだよ!! ……それよりさ、多分なんだけどよ……菊地、お前を意識してるぞ」

シンジ「……は?」

いしき……イシキ……意識?

起きてるんだから意識はあるに決まってるでしょ?

雪歩「……確かに最近の真ちゃん、プロデューサーの前では髪を良くいじってますけど」

冬馬「だろ? 絶対菊地はアンタに惚れてるって」

ほれてる……惚れてる!?

シンジ「いや無い無い無い無い絶対にあり得ないって!!」

真「みんな!! 早く行こうよー!!」

シンジ「う、うん、ごめん」タッタッタッ

冬馬「……あいつ、20なのに随分と初心なんだな」

カヲル「全く、こんなにも美しい庭園なのにわざわざ車で移動するなんてナンセンスだ。高速で移動したら美しい木々が見えないじゃないか」

伊織「……アンタ、当然のように私と同じリムジンに乗ってきたけど何者なのよ」

カヲル「ふふっ、敢えて言うならば……シ者……かな?」

伊織「……随分とキザで偉そうなの、ねっ!」

カヲル「痛い痛い痛い痛い謝りますから足をヒールのカカトで踏まないで!!」グググググググ

伊織「全く……で? 本当のところは?」

カヲル「な、渚カヲル15歳……イタタタタタ!!」グググググググ

伊織「何者かを教えなさいよ!!!!」

カヲル「ぐぅ……よ、養子みたいなものだよ。なんだか僕の体質が珍しいらしくてね、それで」

伊織「研究させろ、って言われたんでしょ?」

カヲル「……知ってるなら足を踏まないでよ」

伊織「私はお父様の行動パターンを予測して言っただけだけど?」

カヲル(……水瀬のお嬢さんか)

カヲル「……ふーん」

伊織「あら、褒めてくれてもいいのよ?」

カヲル「生憎、僕は君のような人間を見てきたからね。褒めてつけあがらせる気は無いよ」

伊織「私はそんなのでつけあがるほど子供じゃないわよ」

カヲル「そう言ってるうちは子供なのさ」

伊織「タメのあんたが何言ってるのよ」

カヲル「経験談から考慮して言っただけさ」

伊織「……あんた、ムカつくわね」

カヲル「それは光栄だ。お嬢様に気に入られたんだからね」

伊織「気に入ってなんかないわよ!!」

カヲル「好意と悪意は表裏一体。どちらにしても君は僕を気に入ったのさ」

伊織「……新堂、こいつの行き先は?」

新堂「○○のショッピングモールですが……」

伊織「変更。765プロへ変更よ」

カヲル「ちょ、ちょっと「かしこまりました」ねえ新堂さん!!」

伊織「にひひっ♪ あんた顔だけはいいからアイドルにしてあげるわ!! 私の苦労も味わいなさい!!」

カヲル「は、はあ!? アイドル!?」

伊織「あんた、ちょっとホモっぽいからちょうどいいじゃない。プロデューサーは男よ? あんたと同じぐらいの身長の」

カヲル「僕はホモじゃないよ!! ただ好きな人が男ってだけで……」

伊織「……えっ、あんた本当にホモだったの」

カヲル「だから僕は…………もういい。諦めたよ僕は。どこでも好きに連れて行ってくれ」

伊織「最初っからそうしとけばいいのよ。それよりも……あんたお父様と」

カヲル「ありえないって!!」

新堂「……私も背後には気をつけておきます」

カヲル「もうやめてくれないか!!」

シンジ「真、そいつの後ろにもう1体隠れてるよ」バンバン

……服を見に行くんじゃなかったのかなぁ……。

真がゾンビを倒す2人プレイのシューティングゲームをやりたいって言うから僕が付き合ってるんだけど。

真「は、はい!!」バンバン

シンジ「後10体。制限時間余裕だね」

冬馬「……意外と上手いなアンタ。シューティングゲームは良くするのか?」

シンジ「まあ……そこそこね」

そりゃあエヴァのシミュレーションテストとトウジたちとのゲーセンでの扱きに耐え抜いてきたんだからこれぐらいは余裕だよ。

冬馬「……それはともかく萩原ってゾンビとかは苦手じゃないのか? いつも何かにビビってるイメージがあるんだが」

雪歩「あ、はい。わりと平気です」

真「……ゾンビみたいなグロテスクなのが平気なのに」

シンジ「犬と男の人が苦手って……ねえ?」

冬馬「キャラ作りの一環か?」

雪歩「ち、違いますよ!!」

シンジ「冗談だよ冗談! ……よし、クリアしたね」

真「へへっ、やーりぃ!! プロデューサーのおかげですね!!」コツン

シンジ「そんなことないよ。僕の言う通りにしてくれた真のおかげだよ」コツン

冬馬(……ごく自然な流れで拳と拳をコツンってしたな)

冬馬「もう結婚しろよお前ら」

真「えっ!? ……えへへ、嫌だなぁ……変なこと言わないでよあまとう!!///」

シンジ「あはは、僕には勿体無いよ、真は。なんたって今や売れっ子アイドルなんだからね」

冬馬(……いくらなんでも)

雪歩(鈍すぎですぅ……)

伊織「こんにちはー……って社長だけ?」

高木「おお、おかえり水瀬君。音無君も居るがね」

小鳥「伊織ちゃん、たまには私のことも思い出してぇ……」

伊織「わ、悪かったわね!!」

『ねえ、まだ入ったらダメなのかい?』

伊織「……ダメ、まだ待ちなさい」

高木「…………? 誰か待たせているのかい?」

伊織「ええちょっと……スカウトしてきたのよ、新人アイドルを」

高木「本当かね!? いやあ人を見る目がある水瀬君がスカウトしてきてくれた子なら間違い無いだろう!! どれ、早速入ってもらっていいかい?」

伊織「……入っていいわよ」

カヲル「お邪魔しまーす……」ガチャリ

高木「…………!? ……水瀬君、その子は元の段ボールに返してきなさい」

伊織「こいつは捨て犬じゃないわよ!!」

カヲル(あれ? この社長、どこかで見た気が……!?)

カヲル(確か碇司令の子飼いのスパイ!? ゼーレの老人たちに資料で見せてもらった気が……)

カヲル「あ、え、えと……急用を思い出したので……」

高木「……待て渚カヲル」

伊織「あら、ご存知だったんですか?」

高木「ああ、少し、ね? ……渚君、向こうのお部屋でお話しようか」ガシッ

カヲル「……見逃してくれよ、青髭の旦那ァ……」ズルズル

高木「私は髭を蓄えたことなど無いがね」ズルズル

伊織(……青髭の旦那?)

冬馬「残酷な天使のテーゼ〜♪」ドンドン

雪歩「あ、あぅ……全然できないよぅ……」ドン…ドン

真「頑張れー雪歩!! まだ終わってないんだから大丈夫だって!!」

シンジ「……冬馬君上手いなぁ……あれって鬼難易度だよね?」

冬馬「……っせい!! っしゃあフルコンボゲッチュ!! どうだ765プロ!!」

雪歩「ふ、ふつうにしたのに全然ダメでした……」

モウイッカイアソベルドン!!

真「……あまとう、次はボクとやろうよ。雪歩の仇を取ってみせる!!」

冬馬「いいぜ!! 来いよ菊地!!」

シンジ「が、頑張れ〜!」

楽しそうだなぁ……。

高木「さあ、全て吐いてもらおうか渚カヲル」

カヲル「……そんなの僕が聞きたいぐらいだよ……」

高木「お前は何をしに来た。またサードインパクトを起こすのか?」

カヲル「アダムがどこにあるかもわからないんだから不可能だ。僕が知ってるのはこの世界にシンジ君と君と僕というエヴァの存在を知ったイレギュラーが居るってことだけさ」

高木「……つまりアダムへの回帰は不可能、と」

カヲル「そういうことになるね」

高木「……本当か?」

カヲル「僕を疑うのかい?」

高木「そりゃあ疑うさ。使徒は攻めてくるたびに進化している。ならば君が私を騙すように進化している可能性があるかもしれないだろう?」

カヲル「……進化に気付いたのか」

高木「長年の積み重ねの賜物さ」

カヲル「悪いけど、僕は本当にアダムの場所がわからない。僕が認知できないということは……おそらく宇宙にあるか。それか本当に存在しないかの2択さ」

高木「……まあ構わない。一応は信じておこう。では私からシンジ君に関する質問だ」

カヲル「……さっきも言ったはずだ。僕が質問したい側なんだけど」

高木「シンジ君にはヘイフリック限界が無く、ATフィールドの展開もできると言ったらどうする?」

カヲル(ヘイフリック限界が無いとは聞いていたが……ATフィールドまで!?)

高木「……やはりシンジ君は使徒か」

カヲル「……さあ、僕もよくわからない。シンジ君の魂に強大な魂が宿っているのはわかるけど……それが何かは遠すぎて知覚できないね」

高木「……魂?」

カヲル「消去法で行けば綾波レイ……リリスかな」

高木「……そうか……使徒としての魂が、か」

高木「まあ使徒かどうかはこの世界にエヴァやゼーレ、ネルフが存在しない以上、特に問題は無いんだ。それは君も然りだがね」

カヲル「……確かに」

高木「渚君。アイドル……やってみないかね?」

カヲル「僕でいいのかい?」

高木「どうせ暇なのだろう?」

カヲル「シンジ君に会いたいんだけど」

高木「シンジ君はうちの優秀なプロデューサーだ」

カヲル「是非お願いします」

高木「よろしい」

フルコンボダドン!!

真「へへっ、やーりぃ!! どうだ961プロ!!」

冬馬「……たった一回のミスで負けたぜ……」ガクッ

雪歩「ま、真ちゃんありがとう!!」ダキッ

真「わああっと!! ……もう、わざわざ抱きつかなくてもいいじゃないか雪歩」

あはは、みんな青春してるなぁ。

って僕も15歳だから青春できる年齢か。

もうすっかり大人の気分だよ。

冬馬「……アンタはやらなくていいのか?」

シンジ「え? 僕? 僕はいいよ、みんなが楽しそうにしてるのを見てるだけで楽しいし」

真「プロデューサー、なんだかおじさん臭いですよ」

シンジ「なっ、失礼な!!」

雪歩「……でも、ちょっと寂しいかな」

……雪歩?

シンジ「どうして?」

雪歩「プロデューサーはすごく優秀な人だから、きっとこれからも仕事が増えていくんだと思います」

雪歩「……でも、忙しくなったら今日みたいにみんなで遊べなくなっちゃうから」

雪歩「今のうちに思い出を作っておいた方がいいかなって考えたんです、私」

冬馬「……なんなら俺がお前たちの仕事を盗っていってやろうか? もちろん実力で」

真「……あまとう風情に負けたりしないよボクらは」

冬馬「それでもやってやる!! おっさんの力を頼らないでな!!」

シンジ「まあまあ2人とも落ち着いて、ね? ……そりゃあ、僕もみんなと遊んでいたいよ」

シンジ「でも……日々の仕事もみんなとの思い出だから、僕は忙しくなっても幸せ……だと思う」

雪歩「プロデューサー……」

真「…………」

な、なんでみんな黙り込むのさ。

シンジ「ほら、そんな暗い顔しないで、ね? そろそろいい時間だし、僕も事務所に忘れ物があるから取りに帰らないといけないから……そろそろ解散にしない?」

真「うーん……自主練してから帰りたいからボクも事務所に行きます」

シンジ「ん、わかった。2人はどうする?」

雪歩「私は……お父さんが待ってるはずなので帰ります」

冬馬「俺も今日は帰るぜ」

シンジ「わかった。じゃあまた今度会えたらその時はよろしくね、冬馬君。雪歩はまた明日だけど」

冬馬「おう、またな」

雪歩「さ、さよならです」

シンジ「うん、バイバイ」

真「また明日ねー!!」

シンジ「……じゃ、行こうか」

シンジ「真、今の仕事は楽しい?」

真「もちろんです!! ボクの理想のアイドル像の通りにやれてますから!!」

真「それと何よりも……女の子らしい仕事もできるのが嬉しいかな、って」

シンジ「……ふふっ、実は僕もそれを意識して仕事を取ってるんだよ?」

真「ほ、ホントですか!?」

シンジ「ホントホント。真が少女漫画読んでるのは知ってるから、普段ボーイッシュな仕事をこなしてる真は実は女の子っぽいのが大好きなのかなって」

真「……プロデューサー、よくわかりましたね」

シンジ「そりゃあみんなを完璧にプロデュースするのに必死でみんなの特徴をメモ帳にぎっしり書き込んでたからね……みんなのことはよくわかっている"つもり"だよ」

……人間の本質なんて簡単にはわからないから。

真「……えへへ、ちょっと嬉しいです。プロデューサーがボクのことをよく見ていてくれてるって」

シンジ「そう……かな? 僕は引かれると思ったんだけど」

真「まあ確かに方法はストーカーみたいですけどね」

シンジ「タハハ……確かにストーカーっぽいね」

真「……プロデューサー、あの……」

シンジ「ん? どうしたの?」

真「ええと、その……——」

突然、何かが光ると同時に耳をつんざくような爆音が発生した。

もう、真の声が聞こえなかったじゃないか……。

……真? なんで車道側を見てるの? 何かあるの?

トラック?

またトラックが僕に突っ込んで来たの? 危なっかしいな……。

まあATフィールドがあるから……ってあれ、トラックってこんなに小さかったっけ?

あ、燃え盛ってるトラックの残骸から誰か出てきた、運転手さんかな?

「はぁ……せっかく斬り刻んだ後華麗に回避しようとしたのに予想以上に爆発してしまった。失敗してしまったねぇ……」

……カヲル君?

「……久しぶりだね。元気にしてたかい? シンジ君?」

シンジ「カヲ……ル君……!!」

……僕の心の足りないピースが埋まった気がした。

真「プロデュー……サー?」

それと同時に何かを失った気もした。









第4話『渚と碇』、完







今日はここまでです
新幹少女の口調がイマイチ把握できてないから第6話が書けない……

失礼、色々と手間取ってました
では第5話投下









第5話『甘美なる媚薬のリンゴ(チエノミ)』







何か欲しい物があったわけじゃない。

物欲に駆られたわけじゃない。

ただ僕は暖かい人間関係を求めて必死に頑張ってきただけだ。

僕に優しくしてくれる人を求めてきただけだ。

僕はようやくそれを手に入れた。

アイドルたちとの関係。

765プロという居場所。

高木さんという過去を共有できる存在。

使徒の僕を認めてくれた貴音。

色んなものを手に入れた。

そして僕は最大の存在を手に入れた。

カヲル君。

僕に優しくしてくれたカヲル君。

単純であまり褒められた理由ではないけれど、それでも僕の心を満たしてくれたカヲル君。

でも現実は厳しい。

僕はせっかくカヲル君に出会えたのに。

その対価として真の信用を失った。

僕の居場所のピースを1つ失った。

なんで僕はこんなにも不幸なの?

僕が何をしたっていうの?

使徒を殺したこと?

トウジの足を奪ったこと?

2人目の綾波を死なせてしまったこと?

3人目の綾波に冷たくしたこと?

カヲル君を握りつぶしたこと?

昏睡状態のアスカで……その……シテしまったこと?

サードインパクトを起こしたこと?

……生まれてきてしまったこと?

わからない。

僕にはわからないよ……。

カヲル「大丈夫かい? シンジ君」

だからこそ——

シンジ「……カヲル君!!」

——僕は目の前にあるアマい果実に手を染めてしまう。

そして——

真「…………プロデューサーのバカ」

——また1つ、ピースを失う。

カヲル君。

僕の目の前には燃え盛るトラックをバックにカヲル君が立っている。

シンジ「……本当にカヲル君なの?」

もしかしたら目の前のカヲル君は僕の幻覚かもしれない。

カヲル「当たり前だろう? 僕は僕さ」スッ

カヲル君が手を伸ばして来た。

僕はカヲル君の白い手に触れる。

……暖かい。

ちゃんとした人……使徒かもしれないけど、温もりを感じる。

これは夢じゃないんだ……!

シンジ「どうして……カヲル君がここに来てくれたの?」

カヲル「わからない。ただ僕は君の危険を察知したからここに来ただけさ」

シンジ「……そっか」

本当に本当にカヲル君が来てくれたんだ!!

僕が望んだ、僕に優しい人……僕を理解してくれる人。

カヲル「……さっきシンジ君とそこに居た子が見えないけど……帰ったのかい?」

真が……?

シンジ「……わからないよ」

カヲル「……そう。大切な人じゃないのかい?」

大切な人……恋人?

シンジ「確かに大切な人だけど……カヲル君も大切だよ」

カヲル「ふふ、嬉しいね……けど、彼女は君がプロデュースしているアイドルじゃないのかい?」

シンジ「……どうしてカヲル君がそれを?」

カヲル「だって僕は——」

……そっか、カヲル君は高木さんに誘われて765プロ初の男性アイドルになったのか。

あはは、嬉しいなぁ……プロデューサーとして僕がカヲル君と一緒に居られるなんて。

それに、アダムもリリスも居ないからインパクトが起きないし、戦う必要も無いらしい。

……やっぱりこの世界が僕の居場所なんだ。

ピロリロリン♪

……メール?

From:菊地真
To:碇シンジ
Sub:件名無し
本文:

今日はやっぱり家に帰りますね。









































……さっきのトラックの運転手さん、どこに行ったんですかね。
燃えてるトラックから脱出できるようなマジシャンか何かなんでしょうか?

プロデューサーとさっきの銀髪の人、付き合ってらっしゃるんですか?
…………だとしたらお似合いですね。嘘吐きで裏切り者のプロデューサーと人殺しの化け物のカップルなんですから。性別なんて関係ありませんよね?

……今回のことは胸に秘めておきますけど、ボクの気持ちを裏切ったプロデューサーの顔は見たくありません。

トラック……どうやって動かすんだったっけ?

確かエンジンを入れてアクセルを踏んで……でもそれって誰がやるの?

運転手……さん、だよね。

シンジ「……カヲル君、運転手さんは……どうしたの?」

カヲル「…………? もちろんシンジ君に危害が行かないようにトラックごとATフィールドで切り刻んだけど?」

シンジ「あ、あはは、そ、そうだよね……」

今回もトラック側が僕に突っ込んで来たんだ。

僕は何もしていない。

強いて言うなら爆風をATフィールドが勝手に防いだだけだ。

今ミンチになってトラックの残骸と一緒に焼かれてる運転手が悪いんだ。

……確かアスカの大好きなハンバーグが焼けた時の匂いってこんな感じだったっけ。

シンジ「うっ…………げほっ、ごぼっ……」ベチャッ

カヲル「し、シンジ君!? 大丈夫かい!?」

……ダメだ。

また僕は失敗した。

神様は……僕を持ち上げてから落とすのが好きなんだね。

僕は運転手さんを殺した。

真からは嫌われた。

……また僕のせいだ。

僕の悪いところが全部胃液と一緒に流れていってくれたらいいのに。

全部全部忘れられたらいいのに。

……でも、僕の胸と脳に刻まれたこの罪と後悔と人が焼ける匂いの記憶は——

カヲル「ほら、このハンカチを使って……誰か!! 警察に連絡をお願いします!!」

シンジ「……ごめんねカヲル君」

——当分消え去りそうにない。

高木「……災難だったね、シンジ君」

シンジ「……いえ、もう慣れましたから」

なんで僕がこんな目に遭うんだ。

本当はわかっている、今回はカヲル君も悪いんだ。

でもカヲル君は僕を助けてくれたんだ。

……僕はカヲル君を憎むことができない。

あの時、カヲル君が助けてくれなければ……僕も運転手さんも助かったかもしれない。

でもカヲル君は好意でやったんだ……!!

カヲル君は人としての感情が少し足りないだけなんだ。

そう、悪いのはあの運転手。

悪いのは僕を轢きそうになったあのトラックの運転手なんだ……!!

自業自得。

そう、自業自得なんだ!!

みんなみんなあの運転手が悪いんだ!!

……あの運転手が悪いんだ。

僕とカヲル君は証人として警察に呼ばれた。

謎の要因でトラックと一緒にレコーダーも破壊されたから、らしい。

僕は自分が体験した通りに語った。

『突然何かが爆発したと思ったらトラックが粉々になって燃え盛っていました』……って。

カヲル君はあらかじめ高木さんに教えられた通りの台本のまま答えたらしい。

『さあ、僕にはわかりかねます。僕はあくまで突然爆発してトラックを見つけただけなので』

……本人も嘘を吐くのは嫌だったらしいけどね。

カヲル君は予想以上にすごかった。

トラックが僕に突っ込んでくる直前に765プロの窓から飛び出したカヲル君は、トラックを捉えている全ての監視カメラを破壊。

その後にトラックをATフィールドの刃で切り刻んだらしい。

……あの時は僕に対して手を抜いていただけで、本当は最強の使徒じゃないかと思う。

通行人の中には燃えているトラックの中から出てくるカヲル君を見たって人も居たけど、証拠が無い以上、ただの幻覚として処理されたらしい。

真も証人として呼ばれたらしいけど……概ねカヲル君と同じように答えたらしい。

高木さんが盗聴器で聞いた情報らしいから確実だ。

……コトの全てが765プロに都合よく動いていく。

結局、今回は運転手が死亡してしまったことも考慮された上で賠償金などの金銭のやりとりは無かった。

通常の運行ではあり得ない、明らかにおかしな場所でトラックが爆発したからだそうだ。

ちなみに後の処理は高木さんがやってくれることになっている。

『水瀬もATフィールドを知っていながら黙秘するとは……運がいいのか水瀬を疑うべきなのか』って言ってたけど、どういうことなのかな?

……そこまでは良いんだ、うちは何も害を負っていないんだから。

強いて言うなら週間記事に『事故多発、765プロの闇!?』って取り上げられたことぐらいかな。

でも、それもどうでもいいんだ、誰も信じやしないから。

それよりまずいのが……。

あの事件からかれこれ1週間……真が765プロに来ていない、ということ。

高木(……明らかにおかしい)

高木(普通数ヶ月の間に2度もトラックが突っ込んでくることなどあるだろうか?)

高木(いや、ありえない)

高木(…………黒井か水瀬、若しくは第3者の可能性が高いな)

高木(黒井は優秀なプロデューサーであるシンジ君の抹殺、それかシンジ君のATフィールドを証明することによるスキャンダル? ……いや、黒井はATフィールドを知らないはずだ)

高木(水瀬は……どうだろうか? シンジ君のATフィールドを観測したかったのか、はたまた渚カヲルの力を観測したかったのか……少なくとも研究対象であるシンジ君と渚カヲルを殺しにかかることは無いだろう)

高木(……渚カヲルは予想以上に恐ろしい存在だ。他人の命に関する認識が軽すぎる。その上一瞬で多数の監視カメラを認識、破壊する程の探知能力と精密なATフィールドを備えている……まさしく化け物だな)

高木(……あのゴシップ誌も案外ハズレではなかったかもしれない)

高木(ま、うちのアイドルになった以上、私たちの仲間だ。なんとか暴走だけはしないように教育しないと)

高木(……今回のも全て偶然の事故だといいんだが)

高木「……シンジ君、菊地君は?」

シンジ「…………いえ、僕にはわかりません」

高木(菊地君が来るまで仕事に没頭するということか)

高木「はあ……ここ1週間のプロデュース業はとこ通りなく回っている。が、菊地君が来ないということは予想以上に皆への精神的負担になってしまっている」

シンジ「…………」

高木「今は皆の努力で補えてはいるが、菊地君が居ないというのはかなりの痛手だ。そのうち皆に負担が大きくなる……例えば萩原君とか」

高木「……それに、渚君は君のことをボヤいているよ? 菊地君のことが気になって仕方ないんじゃないか。仕事に身が入ってないんじゃないか……と」

シンジ「……高木、さん」

高木「どうしたんだね?」

シンジ「……僕、辛いんです」

高木「……そうか」

高木(……私もまた、シンジ君にも負担をかけ過ぎていたか)

シンジ「僕は必死に努力してここまでやってきた」

シンジ「僕は必死に努力して今の生活を手に入れた」

シンジ「765プロのアイドルのみんな、小鳥さん、秋月さん、高木さん、マンションのお隣さん……それとカヲル君」

シンジ「僕は幸せだった。エヴァに乗ってた頃には無かったものが全て手に入っていったんだから」

高木「…………」

シンジ「貴音は僕が使徒だってことを受け入れてくれた。秋月さんとあずささんは僕の心を一緒に治していこうって言ってくれた」

高木(……四条君が、か)

シンジ「僕はエヴァもネルフもゼーレも街を襲ってくる使徒も兵器が溢れた第3新東京市もロンギヌスの槍もアダムもリリスも全部全部無い世界に来ることができたんだ」

シンジ「……でも!! 僕の運命は変えられなかった!!」

シンジ「いつだってそうだ。預けられた家の人に料理を振る舞ったら捨てられて、父さんに期待してネルフに行ったらエヴァに乗って使徒と戦えって言われて、必死に使徒を倒したらトウジに殴られて」

シンジ「それでも踏ん張って、トウジたちと仲良くなって、アスカと一緒に住むことになって、アスカはわがままだったけどそれでも幸せな生活だった!!」

シンジ「でもダメだった!! 僕がテストでアスカを抜いたらアスカが無理をするようになった!! それが嫌で僕が手を抜いたら馬鹿にしてるのかってまた罵られた!!」

シンジ「……それからアスカは壊れた。使徒に精神を壊された。僕は悲しかった。僕がアスカより弱かった時は例え使徒が襲って来ようと毎日が楽しかったんだ。でも僕がそれを壊した。使徒がアスカを襲ってる時も僕は何もできなかった。父さんに逆らえなかったから」

シンジ「……それから綾波が死んだ。僕にとっての綾波、2人目の綾波が自爆した。涙を流してまで。使徒と一緒に自爆した!!」

シンジ「……綾波は生きてた。僕はてっきり綾波が死んでしまったと思ってたよ。でも僕の目の前にはいつもの綾波が居た」

シンジ「でもそれは綾波じゃなかった。綾波のクローンの1人、つまり3人目の綾波だった。僕のことも、アスカたちと学校に通ってたことも、全て覚えていなかった」

シンジ「そんなのもう僕の知ってる綾波じゃないって拒絶した。僕には頼れる人間が居なかった。僕は僕に優しくしてくれる人間が欲しかった」

シンジ「そんな時にカヲル君が現れた。カヲル君は僕に無いものを沢山持ってた。ルックス、スタイル、精神的なゆとり、透き通るような声、そしてこんな僕を受け入れてくれた優しさ……僕はそんなカヲル君に依存した」

シンジ「でもカヲル君は使徒だった。カヲル君は僕を裏切ったんだ。でも僕はカヲル君が使徒でも良かった。人間の形をした使徒なんて人間と変わらないはずなんだ。でもネルフの人たちはカヲル君を殺せと言った。カヲル君は僕に殺してくれって言った」

シンジ「僕はカヲル君を殺した。体を握りつぶした。僕の手の中でカヲル君が潰れていく感触とカヲル君の首がL.C.L.に落ちた水音は一生忘れない。今でもカヲル君を見るとたまにそれを思い出すほどには!!」

シンジ「それから僕はアスカに最低なことをした。ミサトさんが僕の前で死んでいった。それからサードインパクトを起こした。僕は何もできなかった」

シンジ「……一面赤い世界に包まれた。僕の隣にはアスカが居た。でも僕はアスカを首を絞めて殺した。もう誰にも拒絶されたくなかったから。僕が欲しかったのは僕に優しい人間だから。自分勝手だってわかってるけど、それでも僕は僕に優しい人間が欲しかった」

シンジ「僕はみんなと一緒になろうと赤い海に飛び込んだ。でも何も無かった。ただ液体の中で息ができただけだ。それ以外は何も無い世界。僕には自分への嫌悪感だけが積もっていった」

シンジ「……どれぐらいの時間が経ったかはわからなかったけど、僕の目の前に綾波が現れた。僕は嬉しかった。あの綾波が帰ってきてくれたんだから。僕はずっと、ずーっと綾波と話していた」

シンジ「そのうち僕は元の世界が恋しくなったんだ。このままおしゃべりしてても何も変わらないんだから、僕がこの世界を作り変えてやろうって、平和な世界にしてやるんだって」

シンジ「そしたら綾波が消えた。僕の綾波は幻覚だったんだ。全部僕が作り出した幻覚だったんだ」

シンジ「……それから気が付いたらこっちの世界に来てた。こっちの世界は暖かかった。高木さんっていう僕の仲間が居た。アイドルたちっていう優しい存在が居た。僕はそんなみんなを捨てたくなかった」

シンジ「だから僕は頑張ってきた。偶然貴音っていう僕を認めてくれる存在ができた。カヲル君もこっちに来ることができた」

シンジ「……でも僕の運命は変わらないんだ。いつだって持ち上げられた後に落とされるんだ。最初っからわかっていたことなんだ。でも僕は期待せずにはいられなかった」

シンジ「……でも真に裏切られた。僕にはわからないけど僕も真を裏切った。真は使徒の僕を拒絶した。世の中貴音みたいな人間ばかりじゃないってわかってた。でも僕は心の奥で真に期待していた。きっと真なら僕を受け入れてくれるって」

高木「……それは違うだろうシンジ君」

高木「菊地君……いや、765プロのアイドルたちは決して君を拒絶したりしない」

シンジ「そんなこと、ありえるわけがありません」

高木「だがありえるのだよ。私は皆、支え合って団結できるようなアイドルたちをスカウトしてきたのだから」

高木「皆が皆君と菊地君、それに渚君を支えようと頑張っているよ。萩原君は毎日菊地君の家に行っているらしいし、如月君と天海君は少しでも君の負担を減らそうとセルフプロデュースし始めた。君にだって心当たりはあるだろう? 彼女たちが仕事を任せてくれと言ったこと。……それで、だ。何故君はここまでしてくれている皆を信用できない?」

シンジ「……現に真は僕とカヲル君を拒絶しました」

高木「……キミィ、菊地君の本当の気持ちを知っているのかい? 知った上でそれを言ってるのならとんだ外道だよ、君は」

シンジ「……人の気持ちなんてそんなに簡単にわかるわけないじゃないですか……!! わかったら僕は苦労なんかしていないんですよ!!」

高木「……フン!!」バシイッ!

シンジ「…………っ!」ヒリヒリ

高木「……あまり舐めたことを言うんじゃないぞ碇シンジ」

高木「人の心なんて誰にもわかりやしない。それは人間誰しもが抱えている問題だ」

高木「誰かが怖いなら、自分1人だけで生きて行けるなら壁を作ればいい。だが今の君はどうだ? 碇シンジ。君は私の平手打ちにさえATフィールドを張ることができなかった。いや、張らなかったんだ。これがどういうことかわかるか?」

高木「君は無意識に誰かを求めているんだ。無意識に菊地君という欠けたピースを求めているんだ。だったらウジウジしてないでさっさと菊地君を連れ戻して来たらいい!! 相手が来ないなら自分で歩み寄って掴み取りに行く!! それはいつも君がやっていることだろう!!」

シンジ「……僕は」

高木「君はプロデューサーだ!! 765プロの優秀なプロデューサーだ!! だったら何故できない!? 菊地君の心を理解できていない!? それは君が勝手に考えることを放棄しているからだ!!」

シンジ「心……?」

高木「そうだ心だ!! ……菊地君はいつも君のことになると嬉しそうにしていたよ。『プロデューサーに褒めてもらった』、とか『プロデューサーに昼食を奢ってもらった』……などとな。じゃあ何故今回は君を拒絶したと思う?」

高木「君がいくら辛い過去を語ろうと、辛い過去を持っていようと、今この世界を生きる菊地君には関係無い。菊地君は拒絶がどうのこうのなんて小難しいことは考えていない!!」

高木「……単に菊地君は今回の君が嫌だったのだよ。ATフィールドが使えるのを隠していたこと、突然現れた渚君に君を盗られたこと、自分の思いを裏切られたこと」

高木「菊地君は……悔しかったんだよ」

シンジ「…………………………………………」

高木「……もう、いいかい?」

シンジ「………………今から真のところに行ってきます」ガチャリ

高木「……すまない。私では解決できないのだよ、この問題は」

高木(偉そうにしてすまなかった、シンジ君)

カヲル「……シンジ君は大丈夫かな」

高木「……ああ、彼ならやってくれるさ。昔からシンジ君を監視してきた私が言うのだから間違いない」

カヲル「へぇ……昔から」

高木「仕方ないだろう命令だったんだから。私も加持みたいな仕事の方が楽で良かったよ」

カヲル「君には葛城1尉を口説けるとは思わないけど」

高木「話術にはそこそこ自信があるんだけどねぇ……なあ、四条君。確か君も私に口説かれた1人だっただろう?」

貴音「……いつから気付いていらっしゃったのでございますか」

高木「最初から、かな。私とシンジ君の話を聞いていたのだろう?」

カヲル「君の気配は僕でも簡単に掴めたからね」

貴音「申し訳ございません、私としてもプロデューサーのことが心配で……」

高木「ああ、謝らなくていいよ四条君。別に私が元スパイだからといって君を撃ち抜いたりはしないよ」

カヲル「……ふっ、これでまた元の世界を知った人間が1人増えてしまったね?」

高木「まあいいじゃないか。流石にメディアに知られると困るが、その方が楽でいい」

貴音「やはりプロデューサーとあなたたち2人は……別世界の人間なのでございますか?」

カヲル「……別世界、というのは正しくないかな」

高木「そうだねぇ……正しく言えば2巡目の世界……かな?」

貴音「なんと……!!」

カヲル「アダムの魂を持った僕が記憶を持ったままここに居る、ということはアダムの本体がどこかにあるかもしれないということ」

カヲル「そして……シンジ君もまた、リリスの魂を宿している。僕にはわからないけどリリスの身体もどこかにあるんだろうね」

高木「ふむ……私の予想が外れたか。……シンジ君はまたしても厄介なことに巻き込まれてしまうんだろうね」

貴音「…………」

カヲル「ま、大丈夫だよ」

カヲル「僕がシンジ君を守るから、ね?」

高木「ははは、最強の第17使徒のタブリスがそう言ってくれるなら頼もしいな」

カヲル「出力的には第14使徒のゼルエルの方が強いんじゃないかい?」

高木「おっとそうだったか、これは失敬。でもATフィールドの扱いは君の方が長けているだろう?」

カヲル「そうかもしれないけどね」

貴音(全く話に付いていけないのでございます……)

高木「それにしても……君たちは本当に良く似ているね」

貴音「私と……」

カヲル「四条さんが?」

高木「うむ。赤眼と銀髪……まるで姉弟のようだ」

貴音「私が姉……?」

カヲル「へぇ、言われてみれば確かに共通点は多いね。デュエットでも組んでみるかい?」

高木「それは面白いねぇ! マイティヴァンパイアでも着てみるかい?」

貴音「いえ、私は別に構わないのでございますけど……」チラッ

カヲル「……えっ、僕もあの服着るの?」

シンジ「はあっ、はあ……!!」

や、やっと着いた……。

インターホン……早くインターホンを押さないと!

シンジ「…………」ピンポーン

『……はい』

シンジ「…………!! 真!!」

『……プロデューサー』

シンジ「え、ええと……真に言いたいことがあって来たんだけど『帰ってください』……え?」

『帰ってください!! ……ボクはもう、何もしたくないしプロデューサーの顔も見たくありません』

シンジ「そ、そんなこと言わないで——」

ブチッ

……真……。

……いや、まだ諦めないよ。

あの時僕は雪歩に立ち上がれって言ったんだ!!

今みんなは僕の代わりに頑張ってくれてるんだ!!

だから、僕自身が解決しないと。

……でもどうやって入ろうか?

シンジ「くそっ、どうすれば……」

…………? あの窓から覗いてるのは真……?

…………よし、弁償と通報覚悟で強行突破しよう。

真「……プロデューサーのバカ」

なんで今更迎えに来るのさ。

なんで今頃そんなに必死になってるのさ。

……なんでボクはあんな嫌なメールを送っちゃったんだろう。

本当はあんなこと言うつもりじゃなかったのに。

あの銀髪の人……渚さんだったっけ? と出会った時のプロデューサーの嬉しそうな顔を見てたら……どんどん黒い気持ちになっちゃって。

それで……765プロに行きたくなくなって。

雪歩からのメールでボクが化け物って言っちゃった渚さんもアイドルになるって知って。

……それでまた行きたくなくなって。

学校に行ったらまた765プロの人たちに会ってしまいそうだったから学校にも行かなくなって。

……日課だったランニングもやめちゃって。

そんなダメ人間になっちゃったボクを。

……どうしてボクを迎えに来てくれるの、プロデューサー。

…………どうして今のボクには王子様に見えるの、プロデューサー。

僕がどうなったっていい。

シンジ「ええと……あ、駐車場の屋根からならベランダの地面あたりにある隙間までジャンプできそう」

通報されたってっていい!!

シンジ「せーのっ……!!」ピョン

だけど真は……。

シンジ「ぐぅ……指が辛い」プルプル

せめて真だけは……!!

シンジ「ふんぬぅ……!!」グググググ

絶対に助ける!!

『……っはあ……はあ……やっと見つけたよ、真』

……プロデューサー?

この部屋のベランダって……2階にあるんだよ!?

まさか外の壁を登ってきたっていうの!?

やればできるんじゃないか、僕。

……確かカヲル君はATフィールドを物体の間に展開させてあのトラックを切り刻んだんだよね。

ATフィールドでできるなら……僕にもできるはず!!

……集中、集中するんだ僕。

もうATフィールドは僕を守るだけのものじゃないんだ。

僕がATフィールドを操るんだ!!

そうだ、この窓ガラスを70センチ四方ぐらいに切ればいいんだ。

ガラスの間にATフィールドを展開……!!

パリッ

……や、やった!!

ちゃんとガラスを切れたぞ!!

伊織「…………むふっ」プルプル

千早「…………っ……」プルプル

カヲル「な、なんで僕がこんなスカートの衣装を着ないといけないんだい!?」フリフリ

貴音「け、結構似合ってるのでございます……よ」ブフォッ

高木「いやあ星井君の衣装のサイズがピッタリで良かったよ。私が必死に着付けた甲斐があったね、渚君?」

高木(いつの間にか如月君と水瀬君が帰ってきてたのには焦ったがね)

カヲル「……しかもこの衣装の曲って……きゅんっ! ヴァンパイアガール……!? 僕は男なんだけど!!」

貴音「問題ありません。今のあなたはまるで真のようでございます」

伊織「あんた真に怒られるわよ」

高木「ま、まあ聞いてみたまえ」ポチッ

〜〜♪

シンジ「……久しぶり、真」

真「……プロデューサーも……その……」

シンジ「……ごめん、隠してた。僕もカヲル君と同じだ」

真「……バカ」

シンジ「うん、僕はバカだ」

真「なんで言ってくれなかったんですか」

シンジ「……みんなにバレたら怖がられると思ってたから」

真「そんなわけ……ないじゃないですか」

シンジ「……ごめん」

真「……ボクも酷いメールを送っちゃいました。ごめんなさい……」

シンジ「……僕もカヲル君も気にしてないよ」

真「……プロデューサーと渚さんって……どういう関係なんですか?」

シンジ「……できるだけ秘密にしといて欲しいんだけど」

真「ええ、わかってます」

シンジ「………………僕とカヲル君はね、使徒って呼ばれる生き物なんだよ」

シンジ「真は……エヴァンゲリオンっていう巨大ロボットがあったって言ったら……信じる?」

真「……信じられませんよ、そんなこと」

シンジ「ふふ、そうだね。でも僕はエヴァンゲリオンのパイロットだったんだ」

真「……ホントですか?」

シンジ「うん、ホント。そのエヴァンゲリオンは使徒っていう敵と戦うために造られたロボットでさ。ATフィールドっていうバリアを使うことができるんだ」

シンジ「ほら、カヲル君がトラックを切り刻んだでしょ? 僕もさっき窓ガラスに四角い穴を開けたでしょ? あれもATフィールドの応用なんだ」

真「……一応信じます」

シンジ「ありがとう、真」

シンジ「……でね? 僕は失敗して世界を滅ぼしちゃったんだ」

真「!?」

シンジ「あはは、信じられないよね……まあいいか。実は真やみんな、それに僕が今生きてる世界は前と違う世界なんだよ」

真「……また信じられなくなりました」

シンジ「まあ……僕もあんまり詳しいことはわからないから省くけどさ。何故か僕はその時から使徒になっちゃったんだよ」

真「その……使徒って一体なんなんですか?」

シンジ「そうだね……はは、僕もよくわかんないや」

真「……ダメじゃないですか」

シンジ「でもさ、僕って疲れないし老けないんだよ。それも原因不明でね」

真「…………羨ましいです」

シンジ「僕は身長が伸びないから嫌なんだけどね……。でね、多分なんだけど……それってS2機関っていう永久機関が機能してるんだと思うんだ」

真「永久機関……?」

シンジ「そう、永久機関だよ。これがあるから僕は使徒だって言えるのさ」

シンジ「……ATフィールド……いや、あのバリア自体は一応人間も使えるからなんとも言えないんだけどね」

真「……ボクでも使えるんですか?」

シンジ「そうだね……。人間ってさ、自分の形を保つためのATフィールドしか無いから、難しいかもしれないよ?」

真「……そっか、残念ですね」

シンジ「今の説明でわかったの?」

真「使えないってことはわかりました」

シンジ「あはは、ダメじゃないか……ま、僕とカヲル君は昔からの友達ってだけだから別に付き合ってるとかじゃないよ」

真「も、もう!! あれはボクが焦って送ったメールなんだから忘れてくださいよ!!」

シンジ「ごめんごめん!」

……でも、運転手さんが死んじゃったのは事実なんだよね。

今度お供えしに行こう。

シンジ「……真は、これからどうしたい?」

真「……プロデューサーはどうするんですか?」

シンジ「僕? 僕はね……できれば真とみんなと一緒に居たい……かな?」

真「……ボクは……いえ、ボクも一緒に居たいです。みんなが許してくれるなら」

シンジ「…………!! ありがとう真!! それと……ごめんね、真の想いに気付いてあげられなくて」

真「……いえ、大丈夫です。だってボクとプロデューサーは、アイドルとプロデューサーですから。最初っから叶わない恋だってわかってました」

シンジ(恋……?)

真「だから……」チュッ

シンジ「…………!!」

真「今はほっぺにチューで済ましておきますっ!! じゃあボク、今から765プロに行く前にシャワー浴びてきますんでちょっと待っててください!!」タッタッタッタッ

シンジ「え、あ、うん」カアアアアアア

キス……されちゃった。

……恋……って、どういうことなんだろう。

カヲル『どこかへお出かけ、お嬢様♪』

貴音『喉がからから限界ギリギリ、発狂寸前♪』

『『きゅんっ♪』』

千早「ちょ、ブフォッ」

カヲル『2番目にイケてる、人がいい♪』

貴音『いいえヒトなら誰でもいいの、贅沢言わない♪』

『『発見!!』』

カヲル『美味しそうな男の子、じゅるるん♪』

伊織「や、ヤバイってホモがそれ歌ったちゃダメよ!!」プルプル

貴音『いいものあげる、暗闇で〜♪』

カヲル『思わせぶりにウィンク〜♪』

貴音『はにかみながら、目を伏せて〜♪』

貴音『パッと舞って〜♪』

カヲル『ガッとやってチュッと吸って』

シン真「「ただいま帰——」」

『『haaaaaaaaaaaaaan♪』』

シンジ「」

カヲル「」

真「」

貴音「」

高木「ああ、おかえりシンジ君、菊地君」

「全く、せっかくのチャンスだったというのに撮る直前にカメラが壊れるとはどういうことなのだ!!」

「そんなこと言われましてもねぇ……こう、構えてたらカメラがぱかっと割れたんですよ、縦に」

「……というかいくらなんでも今回の件は異常ですよ黒井さん。目標の碇シンジにトラックを突っ込ませた瞬間を撮影しろって……何もかもがめちゃくちゃです」

黒井「……わかっている。元々無理があると承知した上での作戦だ」

黒井「だが……どうしてもあのプロデューサーを失脚させたいのだよ、私は」

「……それにしてもトラックを衝突させろって……よくあの運転手も引き受けたもんですよ」

黒井「フン、5000万ほどの金を積めばそれ程度造作もない。ま、結局は払う前に原因不明の事故でハンバーグとなったがな」

「……ま、俺も金で動いていますし、あまり偉そうには言いませんけど」

黒井(……765プロの碇シンジ、それに突然現れた渚カヲル)

黒井(やつらは明らかにおかしい。これは前のトラック衝突事故の時からわかりきっていたことだ)

黒井(大体証人として呼ばれた後の冬馬の表情を見ればわかる。偶然碇シンジに傷が付かなかったなんてありえない。物理法則を超えてしまっている!!)

黒井(……認めるのはシャクだが、あのプロデューサーは有能だ)

黒井(だからこそ、あのプロデューサーがなんらかの方法で爆風や衝突から身を防いだ化け物だと証明すれば……765プロも傾くはず)

黒井(……いや、わかっている。この方法は馬鹿げている。大体そんな力があるわけがないし、例え公表したとしても認められるわけがないだろう。私だってそれぐらいの常識は弁えている)

黒井(が……私自身好奇心というものも感じているのも事実。認めなければならない)

黒井(……碇シンジのスキャンダルにはあまり期待しないでおこうか。セレブな私はスタンダードにリッチな方法で765プロのアイドルたちを攻めるとしよう)

黒井「……では今日は帰りたまえ。またの機会に世話になるぞ」

「ええ、じゃあこの壊れたカメラ代も上乗せした給料を振り込んでおいてくださいね?」

黒井「ウィ。約束は守る」

黒井(……フン、はした金で動かせる駒とはいえ、何も収穫が無いのは腹が立つ)

黒井(それにしても……)チラッ

黒井「……冬馬、ドアの前で聞き耳を立てて何をしている?」

冬馬「……アンタに話があってな」ガチャリ

黒井「フン、そんなる暇があるならレッスンに行くか営業するかしておけ」

冬馬「……おっさん、汚いことはやらないで欲しい」

黒井「……私が汚いことだと?」

冬馬「最近俺たちと765プロの仕事が被るのも、765プロの出るオーディションが不自然に中止になってるのも……全部アンタの仕業なんだろ?」

黒井「……はあ……何を言いだすかと思えば……そんなくだらんことを貴重な時間を割いてまで言いに来たのか冬馬よ」

黒井「私は汚いことなどしておらん。オーディションが中止になるのは番組側の決定であって私はなんら関与していない。仕事の共演についても同じだ」

黒井「ま、共演に関しては大方弱小事務所の765プロが我々961プロの人気に縋ろうとしているということだろう。お前の言う『汚いこと』は765プロがやっているのではないのか?」

冬馬「……それもそうだな。疑って悪かったよおっさん」

黒井「わかったらさっさとレッスンなり営業なりしてこい」

冬馬「ああ、わかってる」ガチャリ

冬馬(……あのプロデューサーは除外。高木か黒井が『クロ』、だな)

黒井「……冬馬はチョロすぎて心配になるな」

黒井「さて、次の765プロの仕事は……芸能事務所対抗大運動会か」

黒井「……出場者が女子限定ならば仕方ない。精々ジュピターのパフォーマンスを披露する程度にしておいてやる」

黒井「フハハ、ジュピターの圧倒的なパフォーマンスに慄くが良い!! 765プロ!!」

今日はここまで
間が空いてしまい申し訳ありませんでした
次は少しシナリオを変えます

ちなみに今回の変更点
シンジ君の半ニート状態解除
高木社長の理不尽さ軽減
シンジ君の真の部屋に突入する描写を追加
冬馬の頭が少しキレるように

真のメールも変えた方が良かったか……?









第5話『甘美なる媚薬のリンゴ(チエノミ)』 、完







失礼、〆忘れていました
第6話を途中まで投下









第6話『前進』







高木「いやはや、そろそろ忙しくなってきたというのにわざわざ集まってもらってすまないねぇ」

春香「ええと……重大発表、っていうのがあるってプロデューサーさんから言われたので」

千早「私もよ。みんなもそうだったのかしら?」

シンジ「ごめんね? どうしても社長がサプライズとして発表したいって言うから……」

高木「わ、私のせいなのかい!?」

律子「ええ、社長のご意見ですよ」ジトッ

小鳥「社長、昔からこういうのが大好きでしたからね」

高木「……ごほん。まずは菊地君、復帰おめでとう」

真「あ、ありがとうございます……みんな、迷惑かけてごめんね?」

伊織「もう、昨日から思ってたけど何回謝ったら気が済むのよアンタは!!」

美希「ミキ、謝るよりも先に結果で示したほうがいいと思うな」

真「そ、そうだよね。ボク、これからジャンジャンバリバリ頑張っちゃいますからねー!!」

高木「うむ、その意気や良し!!

高木「いやはや、そろそろ忙しくなってきたというのにわざわざ集まってもらってすまないねぇ」

春香「ええと……重大発表、っていうのがあるってプロデューサーさんから言われたので」

千早「私もよ。みんなもそうだったのかしら?」

シンジ「ごめんね? どうしても社長がサプライズとして発表したいって言うから……」

高木「わ、私のせいなのかい!?」

律子「ええ、社長のご意見ですよ」ジトッ

小鳥「社長、昔からこういうのが大好きでしたからね」

高木「……ごほん。まずは菊地君、復帰おめでとう」

真「あ、ありがとうございます……みんな、迷惑かけてごめんね?」

伊織「もう、昨日から思ってたけど何回謝ったら気が済むのよアンタは!!」

美希「ミキ、謝るよりも先に結果で示したほうがいいと思うな」

真「そ、そうだよね。ボク、これからジャンジャンバリバリ頑張っちゃいますからねー!!」

高木「うむ、その意気や良し!! これからも頑張ってくれたまえ!!」

高木「そしてもう一つ、既に何人かは知っているかもしれないが、765プロに初の男性アイドルが所属することになった!!」ガチャリ

カヲル「渚カヲル15歳、よろしく」ニコッ

雪歩「ひうぅ……」ビクビク

伊織「……ホントに採用されちゃったのね、アンタ」

カヲル「おや、不服でこざいますかお嬢様?」クスクス

伊織「アンタねぇ……!!」ピキピキ

春香「す、ストーップ!! 二人ともケンカしない!! えーっと、これからよろしくねカヲル君!!」

カヲル「ああ、よろしくね天海さん」ニコッ

春香「え、あ、う、うん……?」

シンジ「みんな、仲良くしてあげてね? ……そこ、穴掘ろうとしない」

雪歩「だ、だって……」

冬馬君は大丈夫だったのにカヲル君はダメ……?

律子「じゃあ次の発表は……碇プロデューサー、お願いします」

シンジ「ああ、はい。わかりました秋月さん」

「「「「「…………?」」」」」

シンジ「…………今からちょうど1ヶ月後、来月の日曜日に765プロオールスターライブが開催されることになりました!!」

パチパチパチパチ

真美「兄ちゃんそれマジ!? 真美たちだけでライブできんの!?」

シンジ「うん!! みんな揃ってのライブだよ!!」

真「すごいじゃないですかプロデューサー!! いつの間にそんな仕事を!?」

美希「あはっ☆プロデューサーのおかげでもっとキラキラできるなんて嬉しいの!!」

律子「ちょ、ちょっと私も頑張ったんですからね!? 機材のレンタルとかスケジュール調整とか!!」

あずさ「うふふ、流石律子さんですね〜♪」ナデナデ

律子「な、撫でないでくださいあずささん……」

伊織「にひひっ♪アンタにしてはいい仕事したじゃないの♪」

亜美「兄ちゃん……亜美の見ていない間に立派になって……ウルウル」

やよい「うっうー!! みんなでステージに立てるなんてとーっても素敵ですー!!」

春香「す、すごいよ千早ちゃん!! みんなで大きな舞台で歌えるんだよ!?」バシバシ

千早「わ、わかったから!! 私も嬉しいから叩かないで春香!!」

雪歩「あうぅ……緊張しますぅ……」

響「そんなに緊張しなくてもきっとみんなでならなんくるないさー!!」

貴音「ふふふ、私は緊張するどころか心が躍ってまいりました」

カヲル「僕もやっときゅんパイアを披露する時が来たんだね」

シンジ「み、みんな落ち着いて……」

後カヲル君それはないから、絶対にさせないから。

高木「うおっほん!!」

ビクッ

高木「あー、あー……いいかね? 初のオールスターライブということでわくわくしているところに水を差して悪いが、我々はそのオールスターライブにて、未来へ向けた綱渡りをしなければならないんだ」

「「「「「綱渡り……?」」」」」

高木「では律子君、頼んだよ」

律子「はい!!」

真美「りっちゃん?」

律子「……実はこの度、私秋月律子がプロデュースすることになったユニット、竜宮小町の結成が決まりました!!」

「「「「「……竜宮小町?」」」」」

春香「お米のPRでもするんですか?」

カヲル「……それはあきたこまちじゃないかい?」

千早「むふっ…………六歌仙の1人かしら……ぷふっ」プルプル

雪歩「それは小野小町……」

律子「違う違う!! 竜宮小町!! 竜宮城の竜宮に小さな町で竜宮小町よ!!」

シンジ「今までは僕と秋月さんの2人3脚でみんなをプロデュースしてたけど、これからは秋月さんが竜宮小町のプロデュースに専念することになるんだ」

美希「誰がメンバーなの!? ミキ!?」

響「じ、自分だよな!?」

律子「残念ながら2人ともハズレ。確かに海をモチーフにしてるから沖縄の海とイメージが強い響は強ち間違いじゃないんだけど……今回は海に関する名字の3人を選んだから諦めなさい」

響美「「えー!?」」

春香「じゃ、じゃあ私!?」

真美「いやいや真美っしょ→?」

律子「……リーダーの伊織、あずささん、亜美の3人よ。ごめんなさいね真美……」

伊織「私がリーダー!?」

あずさ「あ、あらあら〜」

亜美「えっ、亜美が!?」

律子「あら、不満かしら? 不満ならメンバー変更も考えるけれど?」

亜美「そ、そんなわけないYO!! 是非是非やらせてもらうNE!!」

真美「…………」

真美……?

シンジ「どうかしたの真美?」

真美「ふぇっ!? あ、いや、何もないよ!? 真美ど→にもしてないから!!」

シンジ「いやどう見ても何も無いようには——「いいなー亜美!! ミキも竜宮小町やりたかったの!!」

真美「真美も真美も→!!」

真美……。

律子「美希は今更ユニットで売り出さなくてもソロで売れてるでしょ? 今あなたをユニットに組み込むよりも比較的知名度が低い3人をユニットで売り出した方が圧倒的にメリットがあるのよ」

美希「確かに一理あるの……」

伊織「……つまりそれは私とあずさと亜美が全く売れてないって宣言してるのかしら?」

律子「売れてないとは言わない。でも主力の千早や美希に比べるとどうしても差が出てしまうわ。だからまずはユニットで一気に売り出すのよ。そうすれば簡単に3人の知名度が上がるでしょう?」

あずさ「確かにその通りですね」

高木「実のところ、765プロ初のユニットということで竜宮小町は試験的なものとしてデビューすることになるのだが……私も私のコネクションを限界まで使って君たち3人を売り出す。リスクは大きいもののこれで成功すれば765プロの未来は大分明るくなると思う。……どうか引き受けてはくれないかね水瀬君?」

伊織「……アンタたちはどうなのよ? 私がリーダーでいいの?」

亜美「亜美は別にいおりんでいいと思うよ? いおりんってなんだかんだしっかりしてるしNE!!」

あずさ「私も伊織ちゃんで構わないわよ〜?」

伊織「……ならやるわ。私が、竜宮小町のリーダーになる。よろしくね律子」

律子「…………!! ええ、こちらこそよろしく伊織!!」

高木「うむ、よく言ってくれたね水瀬君!!」

律子「まずは2週間後に開催される芸能事務所対抗大運動会のパフォーマンス枠で竜宮小町を世間に発表するわ。折角美希と千早が取ってきてくれた2枠の内1枠を消費しちゃうんだけど……ごめんなさいね美希、千早」

美希「うんうん、全然問題ないの!! だって……」ガシッ

千早「え、私?」キョトン

美希「千早さんとデュエットで歌えばノープロブレムなの!!」

シンジ「……そうだね。僕も2人用の音源を用意しておくよ」

律子「……迷惑かけてしまってすみません。全て私の独断で決めてしまって……」

シンジ「な、なんで謝るんですか秋月さん。仲間の門出を祝うのは当然のことじゃないですか」

春香「そうですよ律子さん!! そりゃ竜宮小町に入れなくて残念、って気持ちはありますけど、それでも竜宮小町を恨んだりはしません、絶対に!!」

やよい「うぅ……難しいことはよくわからないですけど、それでも伊織ちゃんたちが有名になれるならそれはとってもいいことかなーって」

伊織「やよい……」

あずさ「うふふ、やよいちゃんは偉いのね〜」ナデナデ

やよい「えへへ……」

亜美「りっちゃん、これからど→すんの? ボ→ゼンとしてるだけじゃ何も始まらないよ?」

律子「……え、あ……コホン。発表はこれで終わりよ。後は各担当に別れてスケジュールの細部を詰めてもらうわ」

雪歩「だから今日は仕事が無いのに出勤することになってたんですか……」

律子「ええそうよ。……碇プロデューサー、結果的に担当アイドルの人数が10人になってしまって申し訳ないです」

シンジ「だ、大丈夫です。まだ全然余裕を持って動けてますし、最近は時々春香と千早が自分で営業をしてくれるようになりましたから」

小鳥「事務仕事だって私がほとんど引き受けちゃってますしね♪」

律子「そ、そうですか? ……なら、これで全体ミーティングを終了するわ。何か、他に連絡事項があればお願いします社長、碇プロデューサー」

高木「私からは特に無いよ。みんな、これからも頑張ってくれたまえ!!」

「「「「「はい!!!!」」」」」

シンジ「……………………あっ、忘れてたけどオールスターライブの時にはカヲル君の発表も行うからね」

カヲル「酷くないかいシンジ君!?」

シンジ「はい、これが当日のセットリスト。あまり長い時間会場を借りられなかったから個人曲は基本1人1曲、複数人で歌う曲は5曲だけどあくまで予定だから変更点とかあったら教えてね」ピラッ

貴音「……あなた様、この私と渚カヲルが担当することとなっている『新曲』とは?」

シンジ「ああ、それはカヲル君のデビュー曲だよ。まだ作ってないんだけどね……」

カヲル「デビュー曲なのに2人? デュエットで売り出すのかい?」

シンジ「いや……2人って似てるでしょ? 目が赤いところとか銀髪とか……」

千早「……確かに似てるわね」

春香「兄妹……年齢的には姉弟だけど、姉弟アイドルとして売り出しても十分売り出せそうですね」

シンジ「実は女性アイドルオンリーだった765プロから男のカヲル君がデビューするっていうのは結構危険なことなんだ。アイドル同士の恋愛が噂されたり、そのせいで事務所の評判が落ちたり……」

シンジ「だからミステリアスなキャラで売り出してる貴音と登場させることで『あの2人って実は姉弟?』って思わせることができればればある程度は印象操作できるかと思ってさ。2人が関係について取材で訊かれても『とっぷしぃくれっとです』で通せばもっと血縁関係があるように見えるでしょ? そうやって765プロの恋愛関係の話から注目を逸らすんだ」

シンジ「あ、勿論恋愛は禁止だよ?」

貴真(プロデューサー[あなた様]がそれを……)

カヲル「僕はシンジ君一筋だから特に問題は無いと思うんだけどねぇ……」

「「「「「えっ」」」」」ドンビキ

やよい「え、え、」

千早「高槻さん聞いちゃダメよ」ミミフサギ

シンジ「……ゲイなんて公表したら大変なことになるでしょカヲル君」

カヲル「だから僕はゲイじゃないと何度言えば。あくまで好きな人がシンジ君ってだけで」

美希「それはゲイって言うんだと思うな」

カヲル「なんということだ……神は僕の自由意志まで遮るというのか!?」

シンジ「神様のせいにしないのカヲル君」

響「神は僕の自由意志まで遮るというのか!? ……キリッ!!」

春香「ひ、響ちゃんそれダメ……無理……」プルプル

カヲル「……僕は至極真面目に言ったつもりなんだけどねぇ……」

真「し、シゴく!? 渚s……カヲルが!?」

シンジ「女の子がそんなこと言っちゃダメだから」

真「お、女の子……へへっ」

雪歩「真ちゃん……」

「ミキ、もっとキラキラしたいから2曲やりたいの!!」

「あっ、ずるい!! ボクも2曲やりたいです!!」

「自分ももっとやれるぞ!!」

「ならマリオネットの心を美希メインで響と真の3人に担当。後は各持ち曲ということで……」

「あ、それなんですけどプロデューサー、この流れなら雰囲気の転換として迷走Mindより自転車の方がいいと思います!!」

「わ、私もKosmos,CosmosよりALRIGHT*の方が……」

「僕はきゅんパイアを……」

「それなら私は乙女よ大志を抱け!! の方が会場を暖められていいですよね!!」

「私はソロだけでなくデュエットでも歌った方がいいんじゃないでしょうか? Relationsを美希とでなんてどうですかプロデューサー」

「あはっ☆ミキも千早さんと歌えるならやりたいの!!」

「で、でもそれだと美希さん3曲もやることになっちゃいますよー!?」

「な、ならボクだって3曲……」

「あーもうそれならソロ曲を削ってユニット曲を多めにしよう!! それならやりたいだけやれるでしょ!? 後カヲル君はいい加減諦めて!!」

シンジ「あー疲れた……」

小鳥「お疲れ様ですプロデューサーさん」コトッ

シンジ「ああ、ありがとうございます小鳥さん」ズゾゾ

小鳥「いえいえ、お茶を淹れるぐらいならいくらでも。カヲル君にも淹れてきたけど要るかしら?」

カヲル「わざわざ訊くのは僕に渡したくないという気持ちがあるからかい?」

小鳥「ふふふ、冗談よ。はいこれ」コトッ

カヲル「ありがたく頂くよ」ズゾゾ

小鳥「あ、ちなみにプロデューサーさんが今飲んでるのは普段真ちゃんが使ってるマグカップでカヲル君が飲んでるのは貴音ちゃんのよ」

カヲシン「「!?」」ブフォッ

小鳥「きゃあああっ!?」バッシャアアア

シンジ「ゲホッ、ゴホッ……大丈夫ですか小鳥s……じゃなくて!! なんてことするんですか小鳥さん!!」

カヲル「湯のみがあるのに何故マグカップにお茶を淹れたんだと思ってたら……そういうことだったのかリリン!!」

小鳥「もう……ビチョビチョじゃないですか」スケスケ

シンジ「…………」ゴクリ

カヲル「早く着替えてきたらどうだい? 僕とシンジ君にそんなことをするからバチが当たったのさ」

小鳥「はいはい着替えてきまーす」スタスタ

カヲル「全くあの人は……ん? どうして碇司令みたいな座り方なんだいシンジ君?」

シンジ「熱膨張って知ってる?」

高木(若いねぇ……)

全く話が展開していなくて申し訳ないのですが今日はここまでです、ありがとうございました

何週間も待たせてしまった挙句本当に申し訳ないのですが、html化依頼を出させていただこうかと思います。

ただいま続きの構想を練りながら執筆していたのですがどうしても行き詰まってしまい、先が書けなくなってしまいました。
このまま無理に書き続けても同じストーリーの繰り返し(事件発生→誰かが失踪→それを説得する→事件発生……の無限ループ)となってしまい、どうしても納得の行くssとなりそうにないという結論に至ってしまいました。
終盤の締め方はある程度決まっているけど中盤のストーリーからの切り替え方がよくわからなくなってしまっている状況です。

具体的な失敗点としては、
1:アイドルを一気に動かそうとし過ぎてグダグダになってしまった。
2:カヲルを早く出し過ぎてしまった。
3:中途半端に恋愛要素を入れた挙句、恋愛フラグの回収ができなくなってしまった。
4:ジュピターとの絡みが完全な蛇足に。
5:高木社長の設定が使い切れない。
6:シンジのATフィールドの存在が無理矢理非日常へ導かないといけない足枷となってしまった……etc
などなど多岐に渡る失敗点が積み重なってしまい、先が行き詰まってしまいました。

これらは全て自分の文章力、構成力の無さが原因です。申し訳ありませんでした。
本当は全ての設定を練り直して最後まで書き溜めたものをもう一度投下したいところなのですが、流石にこれ以上設定を二転三転させるのはマズイと思いますので止めておきます。

……そもそも短編程度に収めておけばよかったものを、無理に自分の苦手な長編へ仕立て上げてしまったのが間違いでした。
(いらっしゃるかはわかりませんが)続編を期待してくださっていた方、申し訳ありませんでした。
いつかエヴァ×アイマスのssを完成させられればいいなとは思いますがしばらく長編とこのクロスのssは自重しておきます。ssも書き溜めを全て完成させてから投下します。
何度も重ねて申し上げますが、本当に申し訳ありませんでした。

げぇ乙、自分の中で納得がいかないならしょうがない
一回全部書き上げてからもう一度スレ立てればいいと思うよ

>>184もうホント新年早々申し訳ありませんでした
絶対に全て書き上げようと焦って投下していたのが仇となってしまいました…
修正版のスレなのに何やってんだ…

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