悟天「『あんてぃく』の可愛い子が気になるんだ」 (33)

悟天はトランクスを連れて喫茶店にやってきていた。

コーヒーを飲み干したトランクスが悟天に切り出した。

「それで、例のコーヒー屋の可愛い子ってどれ?」

大きな声に慌てる悟天を他所にトランクスが一人の店員を指さした。

「もしかして、あの子?」

「いや、あの子は店のバイト……僕が言ってるのはお客さんだから……」

悟天の否定に構わず、トランクスが店員を呼ぶ。

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「すいません!注文いいですか?」

件の店員が「はーい」と返事をしながら急いで二人の元に駆け寄る。

「俺はカプチーノ。悟天は?」

「ぼ、僕はまだ飲んでるから………」

「それではカプチーノですね」

注文を確認する店員にトランクスが声をかける。

「お姉さんのお名前はなんて言うんですか?」

「霧島トーカですけど…」

トランクスは店員の名前を聞き出すや否や、

「恋人は居るんですか?」

と畳みかける。

店員は突然の出来事に驚き、「居ません」とだけ答えて逃げ出すようにその場を離れていった。

「トランクス君!!なにをするんだよ!この店があの子との唯一の繋がりなんだよ!もし、出禁にでもなったら----」

悟天は猛然と抗議するが、トランクスは反省する風もなく「悪い、悪い」と言うだけだった。

と、そこに一人の女性客がやってきた。

その女性を見た途端、悟天は急に大人しくなり顔を伏せた。

「どうしたんだ?」

悟天の態度が急変したことを訝しんだトランクスが尋ねる。

「あ、あの子……」

それに対して、悟天が照れながら答えた。

悟天の視線の先を確認したトランクスは一人の女性を見つける。

それを確認すると悟天の肩を手で叩き、「あきらめろ」と声をかけた。

「や、やっぱりダメかなぁ……目が合うと微笑んでくれるんだけど……」

悟天は自信なさげ、かつ、未練をたっぷり残した様に言いよどむ。

「まぁ、悟天が気になるって女も見れたし、俺はもういいや!頑張れよ!」

トランクスはそれだけ言うとテーブルに代金を置いて出て行った。

悟天はその女性が本を読む姿をうっとりと眺めた。

悟天は話を合わせようと同じ本を買ってはみたものの、面倒くさくなり三頁で飽きた。

ポーズだけでもとろうと今もその本を開いているが、当然のことながら全く読んでいないし、読む気も起こしていない。

そんな悟天の方に、件の女性客が近づいてきた。

そして、『偶然』にも悟天の本とぶつかり本がテーブルから落ちる。

正確には落ちそうになった。落ちる前に悟天が落下中に捕まえたので落ちてはいない。

予想外の出来事に女性客は少々驚きながら、

「運動神経がいいんですね」

と話を振ってきた。

「え!?たまたまですよ!たまたま!それに、おとうさんとか兄ちゃんには敵わないし……」

思いがけずに話す機会を得た悟天は緊張しながらも応じる。

そして、それがきっかけとなり悟天にとっては思いもかけず、話が盛り上がった。

その様子を霧島トーカが注視していたことに気が付いていた悟天だが、その事にはさしたる意味を感じなかった。

悟天はそのまま意気投合し、神代利世という名前を聞き出しただけでなく、一緒に遊びに行く約束もしたのだった。

そして、その当日。

興味がないものの、あると答えてしまった為に本屋巡りをするはめとなった悟天は神代利世とファミレスに来ていた。

「悟天さんのお勧めなんですか?」

ようやく本屋巡りから解放されて一安心していた悟天は急に話を振られて驚いた。

「や、やっぱり『かめかめ波』かなぁ?」

よく解らないので自分のオリジナルの技を進めたようだ。

「『かめかめ波』……ですか?」

神代利世は首を傾げる。

答えが違ったと思い慌てた悟天は話をそらすことにした。

「リ、リゼさんはサンドイッチしか食べないんですか?」

そういう悟天の前にはスパゲティーが盛ってあった皿が山積みとなっている。

「ちょっと最近食べすぎちゃって……ダイエットというか……」

神代利世は慌てた様な、照れた様な様子で答えた。

「えーーー!!そんな絶対に健康に悪いですって!!」

悟天は心底驚き、店内一杯に響くほどの驚きの声を上げた。

「す、すいません。お、お手洗いに」

神代利世は逃げる様にその場から離れた。

その後姿を悟天は、ダイエット……意味が解らないなぁと思いながら見送った。

「リゼさんってAB型なんですか?僕は血液型を知らないんですよ」

夜となり、神代利世を送る悟天のテンションは高かった。

「本当ですか?病院で調べて貰った方がいいですよ」

神代利世も楽しそうに微笑みながら悟天の話に応じている。

その笑顔をみながら悟天はイケるかもしれないと思うのだった。

そして駅前まで送ったところで二人は別れの挨拶をした。

「それじゃあ、悟天さん……今日はありがとうございました」

「い、いえ!こちらこそ楽しかったです」

「じゃあ、僕は向こうなので----」

悟天がどこかで筋斗雲を呼ばないとと思っていると、神代利世が恐る恐る声をかけてきた。

「…あの……わたし、高田ビル通りの少し先に住んでて……」

神代利世は生唾を飲み込みながら続ける。

「最近…事件がありましたよね?」

「…事件……ですか?」

「ええ……喰種(グール)の……」

「えっと……うちテレビが無いし、新聞も取ってないんで……」

悟天は、家から遠いからどの道知らないよなぁ~と思いながらも、頭を掻き恥ずかしそうに答えた。

「…え…えっと……とにかく帰り道が怖いんです」

神代利世は能天気に答える悟天が予想外だったのか明らかに苛立ちながらも恐怖を訴え出た。

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