男「クリスマスなのに仕事で山奥とか…」ハァ(20)

~深夜 山奥の廃村~

女「…」

夕方から穏やかに降り始めた雪が村を包む。
女は村の真ん中に佇み空を見上げる。

女「あ゙ぁぁ~」

誰も居ない世界。

女「…」

ザッ…ザッ…ザッ…

何かが村に近づいてくる。

女「!?…」サッ…コソコソ…

ザッ…ザッ…ザッ…

女「…人?」

男「うぅ~寒…もう辺りは暗いし、ここで朝を待つか…」

男「おじゃまします」

男は一軒の廃屋に入った。

女「…」スススッ…コソ~ッ

男「…相変わらず寒いけど、屋外よりはましか…まったく…クリスマスになにしてるんだろ…」

女「(クリスマス?)」…ジィ~ッ

男「ん?どちらさま?」

女「ひゃっ…!」ヒュッ…

女「(私のこと…見えてる!?)」

男「こんばんは」…ヌッ

女「ひゃあっ…!」ビクッ

男「あっすいません…驚かせてしまって…外は冷えるのでよければ中へ」

女「は…はい…(あなたの家じゃないのに…)」

~~~~~

男「いや~雪ですね」

女「えっえぇ」

男「冬は日が暮れるのも早くて…仕事で山に入って、あっという間に夜でしたよ~」アハハ…

女「は…はぁ…」

男「あ~見知らぬ男と話してもつまらないですよね」

女「いっ…いえっ…そんなことは…」

男「やさしいんですね、女さんはどうしてここに?」

女「…(なんで私の名前…どうしてって言われても…)」

男「…なにか複雑な事情ですか?」

女「えぇ…そんな所です…あと…無愛想な態度だって受け取られてしまわれてますよね…」

女「違うんです…いきなりこんな所で人に会うなんて思わなくて、ちょっとビックリしてしまって…(私のことが見えてるみたいだし…)」

男「うん気にしないで、お気遣いありがとう」

男「女さんは普段なにしてるの?」

女「…えっと…お散歩とかですかね」

男「そっか、いいね。冬はちょっと寒いから大変そうだけど…」

女「冬でもへっちゃらです!雪が積もった朝なんて嬉しくなって思わず外に出ちゃうんですよ?」…エヘヘ

男「友だちは?」

女「…友だち…」

男「…」

女「冬は暖かい季節に比べて少なくなってしまうんですが、鳥さんや…」
男「人の友だちは?」

女「うっ…」

男「お父さん、お母さん、村の人たちは?」

女「…」

男「さみしくない?」

女「…さみしくなんて…」

男「女さんは…もうここに居てはいけないよ…?」

女「…」

男「かえるべき所にかえらないとね…」

女「…あなたは…」

男「女さん、今までお疲れ様」ニコッ

女「…」ウルウル…ポロッ

女「…何が…で…すか?」ポロポロ

男「…」

女「あれ…なんで私…泣いて…」グスッ

男「…この村のこと、大好きだったんだよね?」

女「…」ポロポロ

男「一度、この村で病が流行ったね。女さんもその病にかかって…」

女「…ヒック…」

男「村の話し合いで人柱を用意する事になって、女さんは自らその役目を買って出た…」

女「全部…知っていたんですね」ポロッ

男「女さんはやさしくて責任感がとっても強い人だったから、村が廃れた今もなお、この村を…守り続けた」

女「…ヒック…グスッ」

男「それでもやっぱり1人は寂しくて、女さんは悪霊になりかけていた…」

女「…祓いに…来て下さったんですね…」ポロッポロッ

男「祓いはしないよ」

女「…えっ?」

男「祓うってのは魂を消し去ることなんだ、それはしたくない」

男「女さんには自分で納得して成仏してほしいと思ってる、そうすれば生まれ変われるからね」

女「…」

男「今まで寂しい思いをしてきたんだ、次の人生では友だちいっぱい見つけて、楽しく過ごしてもらいたいなって…」

女「ありがグスッとう…ござヒックいます…」

男「世の中は常に変化しててね、女さんは知らないと思うけど、今日明日はクリスマスっていうお祭りなんだ」

女「…クリス…マス?」

男「愛し合った男女が仲良く過ごす日でね、女さんも生まれ変われば、ね?」

女「…素敵ですね、生まれ変わったら、クリスマス行ってみたいです!」

男「うん、きっと楽しいよ!」ニコッ

女「私…いこうと思います。本当に…ありがとうございました!!さようなら…また…」ゴシゴシ…ニコッ…スウッ

男「…はぁ…どちらにせよ一泊か…(クリスマスの喧騒から離れられて丁度いいかな…)」

ピリリリリ!!

男の携帯が鳴る

男「はい、もしもし」

友t「おお男か、お前まためんどくさい祓い方してんのか?」

男「お前の祓い方は逆に異常だろうが…」

友t「まぁそんなことよりさ、明日の夜空いてる?合コン行こうぜ?合コン!!」

男「断ったら?」

友t「伝家の宝刀出しちゃうよ?」

男「…行くよ」…ピッ

~翌日 合コン会場~

友t「それじゃ~乾杯~!!」

一同「乾杯~!!」

ワイワイ破ァ~ガヤ破ァ~ガヤ

男「…(合コン苦手なのに…まぁ静かに飲み食いしてよう…)」モグモグ

女「あの…」モジモジ

男「ん?どうかしました?」パクパク

目の前に帽子を深くかぶった女性

女「こんなこと、初対面で言うのって変かもしれないんですけど…」モジモジ

男「ん~?」チビチビ

女「変な…子だと思わないで下さいね?」モジモジ

女が帽子をとり、男を見つめる。

女「私、あなたとどこかで…」
男「うわっ!?うっ…」ゲホゲホ

女「あっ…だっ大丈夫ですか!?」

女が駆け寄り男の背をさする

男「…やさしいね…(早すぎじゃない?)」ケホケホ

おわり

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