クリスタ「こんばんは、ヒストリア」(23)


※63話バレあり



ヒストリア「今更、何? あなたはもう必要ないの」

クリスタ「うん。だから最後に、話をしたくて」

ヒストリア「……」

クリスタ「ここなら誰もいないし、いいでしょ?」

ヒストリア「…勝手にすれば」

クリスタ「ありがとう」


クリスタ「色々、あったね」

ヒストリア「……」

クリスタ「私ね、たくさん『いいこと』をしようとしてきたの。あなたなら知ってるよね」

クリスタ「でも…結局、彼には何一つしてあげることができなかった」


クリスタ「私、訓練兵の中じゃ背が低かったから、ちょっと憧れてたんだ」

クリスタ「成績だっていつも上位にいて、すごいなって」

クリスタ「あまり話す方ではなかったけど、真面目だし、お願いしたら手伝ってくれる優しさもあって」

クリスタ「それでいて、誰にも頼ろうとしない。一人を除いてだけど。とにかく自分で何でもやっちゃうの」


クリスタ「だからね、ちょっとだけ…彼に、親近感っていうのかな、感じちゃって」

クリスタ「色々、話そうとしたの。彼のこと知りたくて、でも…」

クリスタ「彼は決して、心を開いてくれなかった。話はしてくれるんだけど」

クリスタ「…私には、出来なかった」


クリスタ「他の人と一緒に誘ったりしたんだけど、それも迷惑だったみたい」

クリスタ「ライナーは喜んでくれてたんだけどな…」

クリスタ「でもそうだよね、親友が自分のこと放って他人と話してたら、あまりいい気分じゃないよね」

クリスタ「だから彼だけ誘ったこともあったの。でも…なんていうのかな、言葉にはしなかったけど、困ってたというか、やっぱり迷惑だったみたい」


クリスタ「彼のこと何か助けてあげたいなって思うようになって」

クリスタ「観察してたら、わかったの。彼、アニのこと気になるんだって」

クリスタ「口下手で奥手なんだって、勝手に解釈して。アニに話しかけた時に彼を呼んだりして」

クリスタ「頑張ったんだけど、いっこうに進展ないから2人きりになった時に聞いたの」


クリスタ「『アニのこと好きなの?』って」

クリスタ「そしたら彼、違うって言うのよ。だから無理に場を作ろうとしないでくれって」

クリスタ「うん、バレてたみたい。でも気にはしてると思ったんだけど」

クリスタ「そりゃ話せないよね。実は一緒に壁を壊した仲間なんです、だなんて」


クリスタ「やることなすこと、どれも迷惑がられちゃって。結局何もしてあげられなかった」

クリスタ「うん…」

クリスタ「だから」

クリスタ「ユミルは、私のかわりに、いいことしてくれてるの」


クリスタ「私にできなかったことを、してくれてるの。お節介だから、ユミルって」

クリスタ「だから…だから、私を、棄てたわけじゃないんだよ。ユミルは、私のかわりに」

ヒストリア「やめてよ!」

ヒストリア「あんたの言い訳なんか聞きたくない! ユミルは! 私を置いてった! 私のかわりになんかじゃない!」

ヒストリア「ベルトルトは壁を壊した悪い人じゃない。そんな人を助ける? 馬鹿みたい」


クリスタ「でも、巨人にもいいところはあるって、ユミルが、だからユミルは、」

ヒストリア「馬鹿よ、あなたは。人はすぐ裏切るものよ。あなたも私なら知ってるでしょう?」

クリスタ「……」

ヒストリア「私を救おうとしてるの? 最後まで、いいことしようとしてる? …馬鹿みたい。あなたはおとぎ話のクリスタ、作られた幻想よ」

クリスタ「……」


ヒストリア「消えて」

クリスタ「…ごめんね」

ヒストリア「もう来ないで」

クリスタ「…ごめん」


ヒストリア「……」

ヒストリア「ユミル、どうして?」

ヒストリア「どうしてあんなやつ助けようとしたの? 私なんかより、大切だって言うの?」

ヒストリア「馬鹿ユミル。一緒に生きようって言ったのに」


ヒストリア「返してよ…私、あなたのこと救えなかったけど、だからってユミルを奪わなくてもいいじゃない」

ヒストリア「一人にしないで。返してよ、ユミルを。返してよ…」

─────

───


アルミン「…ヒストリアは?」

ミカサ「屋根裏で見張り。今は…そっとしといてあげよう」

コニー「けどよ、なんでユミルは向こうに行ったんだ?」

アルミン「僕らは知らないことを、ユミルは知ってたんだろうね」


コニー「知らないこと?」

アルミン「ユミルとライナーたちは、仲間ではなかった。でも巨人同士として何か思うことはあったんだと思う」

コニー「うーん…でもよ、あいつがクリスタを置いてくってよっぽどだぞ」

アルミン「ヒストリアだよ、コニー。でも…そうだね、僕らはまだ何も知らなすぎる」


アルミン(そう…知らなすぎるんだ。彼らのことも、この世界のことも)

アルミン(ユミル、君はどうしてあちら側についたの)

アルミン(今の僕らがやろうとしていることが、間違いだというのだろうか)

アルミン(いや、本当に間違いだったならユミルは彼らを見捨てたはずだ)


アルミン(間違いではない、けれども正解だとも言えない、か)

アルミン(もしユミルが、僕らのことを信じて託してくれているのだとすれば)

アルミン(きっと近いうちに再会するとこになる。その時僕らは…)

アルミン(何を知り、何を選択しているだろう)


―――――

―――



ヒストリア「何で…今まで忘れてたんだろう…」

ヒストリア「私は一人じゃなかった…私には…あのお姉さんがいた」


クリスタ「こんばんは、ヒストリア」

ヒストリア「来ないでって言ったじゃない」

クリスタ「……」

ヒストリア「私にはあのお姉さんがいた。でも、死んでしまった」

ヒストリア「殺されて、しまった」


クリスタ「…ねぇ、ヒストリア」

ヒストリア「なによ」

クリスタ「ユミルのことは、忘れてしまうの?」

ヒストリア「知らない。もう、知らないの」


―――

ロッド「フリーダの記憶はまだ生きている。姉さんに会いたいか?」

ヒストリア「…うん。会いたい」




クリスタ「…ヒストリア。可哀想なヒストリア」

クリスタ「あなたは何も知らなさすぎる」

クリスタ「お願い、誰か…彼女を、助けて」

→64話へ続く( ゚Д゚)オワル
特に意味のない小話。クリスタがまだ生きてるといいなぁ。

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