八幡「異世界に飛ばされた」 (197)
八幡「……ここ、どこだ?」
八幡(修学旅行の帰り、新幹線に乗ってたはずだよな……)
八幡(光も届かないような深い森の中……夢かこれ?)
クラスメイト<ぎゃーぎゃー!
クラスメイト<ざわざわ!!
八幡(うるせーな……騒いだって始まらねーだろ)
八幡(とりあえず電波の確認を……)スッ
電波:圏外
八幡(まぁ……妥当だな)
葉山「みんなっ! 落ち着こう!!」
八幡「………」
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三浦「隼人ぉ///」
戸部「落ち着こうって言われたってこれやべぇっしょ!!?」
葉山「ここが森である以上、騒いだら熊やイノシシのような危険な動物が来るかもしれない!」
クラスメイト<ざわざわ!
八幡(……まっ、こんな状況でもいい子ちゃんして精々主人公やってろ)スッ
――ガシッ
八幡「!?」
彩加「八幡……?」
八幡(そ……うか、天使がいたか……だが…)
彩加「どこに行くの八幡?」
八幡「……彩加、本来なら説明をしてから決めてもらうところだが、そんな暇はない。今すぐ決めろ」
彩加「え、な、何を?」
八幡「……俺と二人でここを離れるか、ここに残るか、だ」
彩加「………」
八幡「………」ハァハァ
彩加「ね、ねぇ八幡」ハァハァ
八幡「今は喋るな。とにかく進むぞ」
八幡(できれば日が暮れる前に森を出たい……薄暗くて今が昼なのか分からないが)
彩加「走りながらでも良いから教えてよ! 何で皆と離れるの!?」
八幡「……大きな理由はない」
彩加「……え?」ピタッ
八幡「………」
八幡(ここで皆の所へ帰りたいと言ったら帰ってもらうべきか……)
彩加「なんだ、よかった」ニコッ
八幡「!?」
彩加「切羽詰まった顔してたから、八幡が危ない目に遭うのかと思ったよ」
八幡「彩加……」ウルッ
八幡(確信できるまで黙っておこうと思ったが……)
八幡「……彩加、これは憶測なんだが――」
三浦「み……見つけたし」ハァハァ
八幡「!?」
八幡(なんでここに三浦が!?)
三浦「あーしも連れてけし」
八幡「いや、お前は葉山が……」
三浦「……その事は後で説明するから」
彩加「八幡、それより憶測って……」
八幡「……いや、三浦もいるなら話は別だ。今は少しでも歩く方が先だ」
八幡(三浦の気が変わって皆の所へ伝えに行かれても面倒だからな)
彩加「分かった。信じるよ」
三浦「………」
八幡「………」ハァハァ
三浦「………」ハァハァ
彩加「………」ハァハァ
八幡(一時間くらい歩いたか……それでも森を抜けるどころか傾斜さえないということは…)
八幡「少し休もう」
三浦「……っはぁ……」ゼェゼェ
彩加「疲れたかも……」ハァハァ
八幡「二人とも、食べ物を持ってるか?」
三浦「……お土産は郵送したから」
彩加「僕はお菓子だけ……」
八幡(ということは彩加のお菓子と俺の持ってる八ツ橋とご当地インスタントラーメンだけが頼みの綱か……)
三浦「それがどうしたん?」
八幡「………」
八幡(正直、三浦がどうなろうと俺には関係ないし、食料を分けたくない……けど)チラッ
彩加「………?」
八幡(三浦を放置すれば彩加に不信感を持たせることになるから避けたい……)クッ
八幡「……とりあえず、八つ橋があるから一つずつ食べよう」
三浦「はぁ? 何であーしが――」
八幡「……食え」
三浦「……訳わかんねーし」モグモグ
彩加「美味しいね」モグモグ
八幡「………」
八幡(もし俺の予想が正しいなら、口内を清潔に保たないとマズいだろうな……)
八幡「二人とも歯ブラシは持ってるか?」
彩加「う、うん。八幡が荷物全部持って来いって言ったから」
三浦「……でかい荷物に入ってる…から」
八幡(三浦はない……か。まぁ森を抜けるか川に出ることができれば歯ブラシなくてもなんとかなるか……)
八幡「……三浦、お前何であいつらと離れたんだ」
三浦「………」
彩加「三浦さん……?」
三浦「……最初は…」
―回想―
葉山「皆! 危険なのは離れ離れになって自分がどこにいるのかも分からなくなることだ!」
大岡「確かに」
戸部「それやべーっしょ!」
クラスメイト<ヤベーヤベー!
葉山「だけど一緒にいれば何とかなる! 皆で協力して乗り切ろう!!」
クラスメイト<は・や・ま! は・や・ま!
葉山「………」プルプル
三浦(……?)
葉山「とりあえず各クラスで委員長が点呼をとってくれ!」
委員長「お、おう!」
委員長「こっちは全員いる!」
委員長「こっちも!」
委員長「うちも大丈夫!」
戸部「隼人クン! ヒキタニ君と戸塚がいねーべ」ボソボソ
結衣「えっ!?」
葉山「……あいつっ」ギリッ
三浦「隼人……?」
三浦(何でそんな怒って……)
葉山「……仕方ない。彼らはいることにしよう」
結衣「隼人くん!?」
葉山「今、クラスメイトの欠員が出ることは、非常にまずいんだ。彼らは後で探そう」
結衣「………」
三浦「………」
葉山「それじゃあ、各クラス食べ物を――」
―回想終わり―
八幡(俺は捨てても天使を見捨てるなよ……)ギリッ
三浦「……たぶん隼人は皆を助けられる。けど……全員が危険になった時、あーしを優先してはくれない……」グスッ
彩加「三浦さん……」
八幡(だろうな。あいつは今、異常な環境で集団のリーダーになったことで自分を特別視しているからな)
八幡「だけど、俺たちがお前を見捨てないとでも?」
彩加「八幡!?」
三浦「………」
八幡「……俺は自分を最優先する。次に彩加だ」
彩加「八幡……」
三浦「………」
八幡「その後で良いなら、その……一応見れる限りのことはしてやる」
八幡(俺がどうにかなった時に彩加と生きる奴がいた方がいいしな……)
三浦「……ありがと」
彩加「八幡!!」ギュッ
八幡「ちょっ///」
三浦「男同士で顔赤くして……キモい」
八幡(……やっぱ置いていこうかなこいつ…)
八幡「俺の予想では、ここは日本じゃない」
彩加「えっ!?」
三浦「………」
八幡「大体早歩きで一時間ほど歩いたから、少なくとも4、5キロは移動したはずだ。だが、森を抜けるどころか傾斜すら感じないのは、日本じゃありえない」
彩加「富士山の森は?」
八幡「あんな場所傾斜だらけだ。ソースは俺……じゃなくてテレビ番組」
八幡(あぶねー、中二エピソード晒すところだった)ドキドキ
三浦「じゃあ、一体ここはどこなんだし」
八幡「おそらく――
――異世界」
彩加「異世界?」
三浦「???」
八幡「まぁ、ファンタジー小説に出てくるようなご都合主義の魔法世界であることを願いたいが……」
八幡(一時間経っても森が続く展開がある以上、そう簡単には……)
八幡「とにかく、森を抜けることが先決だ。こんなでかい植物がある以上、どんな生き物がいるかも分からないからな」
彩加「う、うん……」
三浦「隼人達……」
八幡「三浦」
三浦「え、な、何?」
八幡「一つだけ言っておく。あいつらの事は忘れろ」
彩加「………」
三浦「………」
八幡「……いや、別に忘れろって言っても、あいつらは遠く離れた場所で幸せにやってんだろうなぁってくらいに思っておけってことだ。心配すればするほど疲れるぞ」
八幡(あっちは俺の事なんてとっくに忘れてるだろうけど)
三浦「………」コクリ
八幡「……よし、行くぞ」
森の出口
八幡「……抜け…」
三浦「あー疲れ――」
彩加「外だよはちま――」
八幡(……何でいきなり砂漠みたいに砂だ――)
八幡「二人とも出るな!!」バッ
三浦「え?」ジュッ
彩加「八幡?」ボッ
三浦「ぁあっぁああああああ!?」ビクッ
彩加「服に火が!?」
八幡「彩加!! 寝転がれ!!」グイッ
彩加「う、うんっ」ゴロンッ
三浦「あぁぁ!!」ジタバタ
八幡「………っ」ザッザッ
彩加「………」ホッ
八幡「三浦!!」
八幡(スカートで足を出してたから!!)
三浦「……ぃたい…」グスッ
彩加「………」ジーッ
八幡「彩加、何かに反射して日光が目に入れば失明するかもしれないから」
彩加「あ、う、うんっ」ビクッ
三浦「……うぅ…」ポロポロ
八幡(足が爛れてる……外はどれほどの…)ゾクッ
八幡「三浦、立てそうか?」
三浦「………」グッ
三浦「ぁああああ!?」ジタバタ
八幡「お、落ち着け!!」ガシッ
彩加「三浦さん!!」ガシッ
三浦「いだぁいぃいいいい!!」
八幡「くそっ……」
八幡(残り少ない水だが……)スッ
三浦「! だ、だめっ!!」
八幡「え!?」
三浦「それ使ったら、飲み水がなくなるじゃん!」
八幡「いや、だけど……」
三浦「……ぅう…痛いよ……」グスッ
八幡(皮膚が爛れるほどの火傷なんて我慢できるもんじゃないぞ……どうする…)
彩加「八幡……」
八幡「……くそっ」スッ
三浦「ヒキオ……」
八幡「くそ、くそ、くそっ!」
彩加(濡れタオルを三浦さんの足に……)
三浦「ぐっ……ぅう!?」
八幡「俺の腕を掴め。少しは耐えられると思う」
三浦「………」ギューーーーッ
八幡「お、おいっ///」
彩加「八幡!! 今はそれよりも!!」
八幡「あ、ああ……」
三浦「………」ハァハァ
八幡(飲み水もなくなった。食糧にも限度がある……これからどうすれば…)
戸塚「八幡、僕たちは……」
八幡「彩加、少しの間だけ三浦を頼む」
戸塚「う、うん……」
八幡(木々の中には細いものも混じってる。あれくらいなら昇れないことはない……)グッ
戸塚「手に服を巻きつけてどうするの八幡……」
八幡「……昇る」
戸塚「えっ!?」
八幡「……もしかしたら、どこかに水があるかもしれない」
戸塚「でもっ、もし頭に日光が当たったら!?」
八幡「……その時は…キャンプファイアーでもしてくれ」ニヘラ
八幡(修学旅行だけに、なんつて)
戸塚「八幡……うまくないし笑えないよ…」
八幡「……すまん」
戸塚「でも、頑張って……」ギュッ
八幡「お、おぉ///(めっちゃ頑張れる気がしてきた!!)」
八幡「……ていうか、なんだこれ」グイグイ
八幡(木……なのか? まるで金属のような…)
八幡「だから日光に耐えられるのか?」
戸塚「八幡?」
八幡「戸塚、俺の鞄にサバイバルナイフがあるから、俺が昇っている間あのツヤツヤした木を掘ってみてくれないか」
戸塚「……なんでサバイバルナイフ持ってるの?」キョトン
八幡「……聞くな」
戸塚「じゃ、じゃあ……八幡の中、見ちゃうね?///」
八幡「お、おう……」ドキドキ///
八幡(って、ラブコメってる場合じゃねぇ!)グイッ
八幡「……高い」
八幡(下が見えない……)
八幡「くそ、どんだけ高い木なんだよ……」
八幡(横移動したいが、万が一折れたら……)ゾクッ
八幡「くそ……」ヨジヨジ
八幡「……光が漏れだしてる…」
八幡(ポケットティッシュ入ってたっけ)スッ
――ジュッ
八幡「……これ以上は無理か」
八幡「あれは……」
八幡(光を反射してる葉っぱがある……)
八幡「……くそ、この光さえなければ…」
八幡(あれがあれば外に行けるかも……)
八幡「………」
八幡「……はぁ…怖かった」ヨット
戸塚「八幡!!」
三浦「zzz」
八幡「三浦は寝たのか?」
戸塚「うん、気絶に近い感じだったけど……」
八幡「そうか……」
戸塚「何か見えた?」
八幡「……いや、外は見えなかった」
戸塚「そっか」
八幡「けど、上の方に光を反射する葉っぱがあった。あれさえあれば……」
戸塚「外に行けるの!?」
八幡「いや、トトロに出てくる大きな葉っぱレベルだし、危険すぎるだろ」
戸塚「そっか……」
八幡「だけど、あれがあればこの森の境界線上を歩くことは危険じゃなくなる」
戸塚「どういうこと?」
八幡「もし、あれがない状態でこの辺りをうろつくのは、さっきも言った通り光の反射が危険すぎる」
戸塚「……そっか」
八幡「だが、あれを先頭の奴が使えば、危険度は減る。……まぁ100%安全とは言えないが…」
戸塚「どっちみちあるに越したことはないもんね!」
八幡「ああ、だが問題は……」
戸塚「?」
八幡(俺の腕が持つかどうか……、そしてあの葉っぱが簡単に千切れる物なのかどうか……)
八幡「……そう言えばナイフはどうだった?」
戸塚「あ、うん! そうだ!! こっち来てよ八幡!!」
八幡「?」
戸塚と彩加時々間違えるごめん。
彩加「この植物、水が出たよ!!」
八幡「!!」
彩加「思ったより冷たくて美味しかったよ」ハァ///
八幡「飲んだのか!?」
彩加「え?」
八幡「毒が入ってたらどうすんだよ!!」
彩加「あ……」
八幡「あ、じゃねぇよ!! 次は絶対に確認するまでやめろ!!」ジワッ
彩加「八幡……泣いてる?」
八幡「!! な、泣いてねぇ……」グスッ
彩加「……えへへ/// はーちまん♪」ギューッ
八幡「や、やめろし///」ドキドキドキ
彩加「……怒ってくれて、ありがと」ジッ///
八幡「彩加……」
三浦「………」ジーッ
八幡「」
八幡「………」ゴクゴク
戸塚「………」ニコニコ
三浦「………」
八幡(とんでもなく高い木だからと言って、何でいつまでも水が溢れ続けるんだ?)
戸塚「八幡、三浦さんの分……」
八幡「あ、ああ」スッ
八幡(ペットボトルは一本だけか。……つくづくついてねぇな)
八幡「ほら」スッ
三浦「さ、さりげなく背中触るなっ///」
八幡「あほか、怪我人は黙ってろ」
三浦「……ごめん」シュン…
八幡「三浦?」
三浦「全部ヒキオが頑張ったから得られたのに、あーしワガママばっかりで……ごめん」
八幡「……全部自分のためだし謝られる筋合いはねぇ」
三浦「……じゃあ、あんがと」
八幡「…………おう」
八幡「三浦、手鏡持ってるか?」
三浦「う、うん」スッ
八幡「彩加、歯磨き粉あるか?」
彩加「うん! あるよ!!」
八幡「よし、それじゃあしっかり歯を磨いてこい」
彩加「うん!!」タタタッ
三浦「理由、聞かないんだ」
八幡「まぁ、彩加は天使だしな」
三浦「意味わかんねーし」ジトーッ
八幡「お菓子ってのは思っている以上に細菌を繁殖させるんだよ」
三浦「虫歯になるってこと?」
八幡「たぶん、先に歯周病や口内炎が広がって目も当てられん状況になるんじゃねーか?」
三浦「………」ゾクッ
八幡「だから、お前も嫌だろうけどどっちかの歯ブラシで歯を磨いてくれ」
三浦「……あ…」
彩加「磨いてきたよー」ニコニコ
八幡「じゃあ、次は俺が行ってくる」
三浦「………」ドキドキドキドキ
三浦(どっちかの歯ブラシーーーーー!?)カァ///
彩加「???」キョトン
八幡「………」シャコシャコ
八幡(問題は夜だな)シャコシャコ
八幡(獣の問題もあるが、それ以上に気温だ。砂漠なんかは昼の暑さよりも夜の寒さの方が危ないって言うしな……)
八幡「……それに…」チラッ
三浦「………」モジモジ///
八幡(三浦を“置いて行くかどうか”……)ペッ
八幡「……くそっ」
八幡「よし、三浦、どっちの歯ブラシ使う?」
三浦「………うぅ…」
彩加「………」
八幡(なんだよ、いつもみたく女王様丸出しで“お前の歯ブラシなんて使えるかバカ”とでも言えばいいのに)
三浦「………」チラッ///
八幡「……?」
彩加「あ、ぼ、僕そう言えば歯ブラシとか使い回しできないタイプだったんだ!」
八幡「え?」
三浦「!」
三浦「………」シャコシャコ///
八幡「彩加、ちょっと」
彩加「?」
八幡「三浦の事なんだが……」
彩加「うん、やっぱりおんぶだよね」
八幡「………(やっぱそうだよな)」ハァ…
彩加「八幡、ごめんね」
八幡「え?」
彩加「僕が弱いから。八幡が妥協してくれてるんだよね」ギュッ
八幡「彩加……」
彩加「僕ね、八幡がどうしてもって言うなら……」ウルウル
八幡「……いわねーよ」コツン
八幡(お前が泣いちゃ、ここまで来た意味ねーだろ)
彩加「えへへ、八幡大好き」
八幡「ばっ、ばかっ///」
彩加「三浦さんも八幡が好きになってるし、ハーレムだね!」ニコッ
八幡「み、三浦が?」
彩加「うんっ!」
八幡「そ、そんな訳ねーだろっ」アセアセ
彩加「そーかなー」
八幡(……ハーレム?)
三浦「………ん///」
八幡「よく洗ったか?」
三浦「それはあーしの口が汚いってこと!?」カァ///
八幡「……さっきの話聞いてなかったのか。歯ブラシ自体が汚れてたら本末転倒だろうが」
三浦「……あ、うん……ょくぁらったかも…し」ゴニョゴニョ///
八幡「都合が悪くなると声小さくなるのな、三浦」
三浦「う、うるさいっ///」
八幡「足の調子はどうだ?」
三浦「……だいぶ痛くなくなったかも…」
八幡「そうか」
八幡(もう一度木に登って下りてくれば、何とか歩ける程度には気力が回復するか……?)
八幡「……よし、それじゃあちょっと行ってくる」
三浦「?」
彩加「頑張って!!」
三浦「どこへ?」
八幡「どこへって……上だよ」
三浦「うえ?」
八幡「……よし」グッグッ
三浦(本当に昇ってる……カッコいいかも…)ポーッ///
彩加「三浦さん?」
三浦「はえ!? な、何!?」カァ///
彩加「えへへ、ライバルだねっ」
三浦「らいばる?」キョトン
八幡「……こっちだとさらに昇れるんだな」
八幡(つーか、さっきから光が斜めに射してるけど、上はどうなってんだ?)
八幡「……よし、これだ」グイッ
――ぽきっ
八幡「簡単に折れた」
八幡「……もう少し登ってみるか?」
<ィヤァアアアアアアア!!!
八幡「!?」
不良「……ちっ、碌なもんねーじゃねぇか」
不良2「足跡追っかけてきて損した」
八幡(あいつら……荷物を狙って……。どうする…降りるか?)
三浦「あんたら! 隼人はどうしたん!?」
不良「は? なんで俺らがあいつのこと知ってなきゃいけねーんだ」
不良2「とっくの昔にあいつらとは離れたからしらねーよ」
不良「お、八つ橋発見。ラーメンもあるじゃねぇか!」
八幡(くそっ……俺の貴重なラーメン…)
不良「んじゃぁな。女の子二人旅は危険だから気をつけろよ」
不良2「ははは!」
彩加「………」
三浦「………」
数分後。。。
八幡「……ふぅ」ザッ
八幡(同じ場所にいるの逆にしんどかった)
三浦「ヒキオ……」シュン…
彩加「八幡……」ウゥ…
八幡「可愛い女の子を前にして性欲を優先しないってことは、案外冷静な奴らなのかもな」
三浦「か……」
彩加「可愛い///」
八幡「仲間にするか?」
二人「「絶対嫌!!」」
八幡「お、おう……」
八幡「この葉っぱなんだが」スッ
彩加「外に出しても燃えない!!」
八幡「彩加、近づくな!」
彩加「え?」ビクッ
八幡「葉っぱがこっち向いたら俺達全員火だるまだ」
彩加「う……」
八幡「だが、これがあれば日光は反射できる」
三浦「……移動、するの?」
八幡「……ああ、食料のことを考えると、な」
八幡(果物でもあればいいが……)
三浦「………」
八幡「……うーむ」
八幡(水の出る木がけっこうザクザク切れるから、切断したのに倒れない……)
八幡「やっぱりそういうことなのか?」
彩加「どういうこと?」
八幡「これはあくまで仮説だが、
この森の上には大地がある」
彩加「え?」
八幡「水が流れつづけるのは上の大地に水脈があるからだ」
彩加「う、浮いてるってこと?」
八幡「それは分からん。もしかしたら、森の中心に山があって、笠のように大地が伸びてるのかもしれんし」
八幡(いずれにせよ、日本じゃないのは確かだな……)
八幡「まぁだからこそ細い木を昇っても倒れずに助かったのだが」
彩加「そっか……」
八幡「三浦、歩けるか?」
三浦「……うん」
八幡「言っておくが、今ここで無理して悪化すれば、助かるもんも助からなくなるぞ」
三浦「……歩けない」ポロポロ
八幡「………」
彩加「三浦さん……」
三浦「めちゃくちゃ痛いし、熱いし……歩けない…」ポロポロ
八幡「……最初からそう言えバカ」ビシッ
三浦「いたいっ///」
三浦(ひ、ヒキオごときにチョップされた……)
八幡「彩加、荷物全部持てるか?」
八幡(いや、食料の無くなった今、荷物を整理すべきか?)
彩加「うん! 大丈夫だよ!」
八幡(……何が必要になるか分からないし、持てるなら持ってもらおう)
八幡「………よし」ジッ
三浦「……え?」
八幡「いやー、ツタ植物もあってよかったよかった」ズルズル
三浦「………」ブスッ
彩加「この葉っぱすごいね! ツルツルしてすべってくよ!」ズルズル
八幡(反射率が高いってことはそれだけおうとつがないってことだ。まぁ、こんな森の地面でも氷の上のように滑るとは思わなかったが……)
三浦「ヒキオ、重いとか言ったら殺すから」
八幡「は? 重くないと思ってんの? 人一人だぞ?」
三浦「……最悪!!」
彩加(……一歩リード…かな?)
八幡(怒る元気があって良かったが……)
―回想―
八幡「移動する前にタオルを取り換える。三浦は絶対見るなよ」
三浦「う、うん」
八幡(自分の症状見てショックで倒れたり死んだりする例があるからな。用心するに越したことはない……)スッ
八幡「!!」
三浦「……ヒキオ?」
八幡「……いや、大丈夫だ。ちょっと痛むが我慢しろよ」ジャバジャバ
三浦「ひぎっ!!」
八幡(素人目に見ても、このままじゃ……)
―回想終わり―
八幡「ちょっと外見てみる」
彩加「気をつけて!」
八幡「………」ジーッ
八幡(地平線が見えるほどずーっと砂地だ……)
八幡「……ん?」
八幡(あれは……鳥、か?)
八幡「あの日光を耐えられる鳥とかいんのかよ……」
八幡「………」
八幡「どう見てもドラゴンですありがとうございました」
彩加「ドラゴン!?」
八幡「いや、ドラゴンっぽいだけで鳥かもしれんし恐竜かもしれん。一つ言えるのはあの日光に耐えられるような空飛ぶ生き物がいるということだ」
彩加「怖いね……」
八幡「……横は…ん?」
八幡(あれは……水蒸気?)
八幡「………」
八幡「……川?」
八幡(いや、こんな傾斜のない場所で川なんてありえんのか?)
彩加「なんだか用水路みたいだね」
三浦「なんか直線的すぎるし」
八幡「ということは、文明があるっていうことか?」
八幡「………」
八幡(上流を目指して森の奥へ向かうかそれとも……)
彩加「すごいねこの川……」チラッ
八幡「ああ、外に出た瞬間全部蒸発してる……」
三浦「………」
<ウワァアアアアア!!
三人「!?」
不良だった炭「」
不良2「不良!! 不良!!」
八幡「……(外に出たのか?)」
彩加「どうしむぐっ」
八幡(今あいつにバレたら何してくるかわからん)ボソボソ
彩加「………」コクコク
三浦(戸塚とヒキオはやっぱり……)モヤモヤ
八幡(どうする……あいつに声をかけるか?)
不良2「くそっ!! くそっくそっ!!」
八幡「………」
八幡「………」
<クソガァアアア!!
八幡「……行ったか」
彩加「あの人、外に出たのかな」
八幡「分からん。場所的にはそれほど外に近い訳でもないし……」
八幡(いずれにせよ奥に進んだ方が身のため……か)
<ナニスルノッ!ヤメロ!
八幡「……この声…」
八幡(聞いたことがあるようなないような、気が強くてポニーテールで黒のレースの……)
彩加「八幡!」
八幡「あーもう、くそっ!!」ダッ
三浦「………」
沙希「やめろっ! 離せよ!!」ジタバタッ
不良2「はっ! どうせ死ぬなら最後に女でも抱いて死ぬ!」ハァハァ
沙希(こいつ目がおかしい……)ゾクッ
不良2「ひゃっは―――」
八幡「うぉおおおおおおお!」ブスッ
不良2「」ブシュゥウウウウウッ
川崎「」ビチャビチャビチャ
八幡「………」ハァハァハァ
八幡(殺した……殺してしまった…)ハァハァ
川崎「……あ、んた…」プルプル
八幡「えっと……川………大丈夫か?」
川崎「……大丈夫、じゃないかも」ドサッ
八幡「そりゃそうだ」
八幡「はぁはぁ……」ズルズル
沙希「………」
三浦(なんであーしが引きずられて川崎を背負ってんのこいつ……)
彩加(八幡すごい汗……)
八幡(不良や川崎がいくらアウトローだったとは言え、このままじゃ集団と接触するかもしれない。それまでにできるだけあの現場から離れておかないと……)
湖
八幡「なんだ……ここ」
彩加「おっきな湖……」
三浦「それにあの中心の棒って……滝?」
八幡「やっぱり俺の予想は正しかったのか……」
八幡(うっすらと黄土色の巨大な塊が見える……やっぱ大地か…)
八幡「さっきの植物が育ってたと言うことは、水質に問題はなさそうだな……」
八幡(だが、寄生虫や細菌の問題もあるし下手に飲むのは……)
彩加「ここの水も美味しい!」ゴクゴク
八幡「」
三浦「………」
八幡「言っておくが足を入れようとか思うなよ」
三浦「そ、そんなことしねーし!」
八幡「それほど大した傷じゃねーから痛むんだ。だから安心して俺に治療されとけ」
三浦「……うん」
八幡(もちろん嘘だが……どうしたものか)
八幡「とりあえず、川崎の身体を綺麗にしないと」
八幡(いくら川崎を助けるためだからって、殺すことは……いや、下手に傷つけるほうがあいつを苦しめることに……)
三浦「ちょちょちょ! ちょっと待つし!」
八幡「?」
三浦「あんた、川崎の服脱がせる訳?」ジトーッ
八幡「……あ」
三浦「……あーしがやるからそっちに引き寄せて」
八幡「あい……」
彩加「ほんと広いねー! 琵琶湖くらい!?」
八幡「一応向こう岸見えるが、瀬戸内海くらい広いんじゃないか?」
八幡(離れてろって言われたが、森に戻ったら迷いそうだし、どうすれば……)
彩加「ねぇ八幡。水浴びしない?」
八幡「え?」
彩加「……決定、だね」脱ぎっ
八幡「ちょっ!?」
彩加「………八幡も、脱いで?」ハァハァ///
八幡「ちょ、ちょっと彩加さん?」ドキドキ///
八幡(ななな、何を欲情してんだ俺は!)ハァハァ///
つい彩加♀にしようとしてしまう。ちょっと休憩してきます!
と、思ったらコーヒーなかったから続き行きます!
彩加「あー気持ちいぃ」フーッ///
八幡(温泉のように入る彩加とつかわいい///)ジャバジャバ
八幡「大体ファンタジーだったらその世界の物質取り込んだら魔法使えたりするんだけどな」グッ
八幡「……出る訳ねーか」
彩加「はーちまん♪」ギューッ
八幡「おわ!?」
彩加「ここまで助けてくれてありがとね八幡!」ギューッ
八幡(何これ柔らかいすごい何かあたってるけどそれが逆に気持ちいい)
彩加「えいっ」グイッ
八幡「うぇ!?」ガボッ
八幡(み、水の中って目に寄生虫が入ったらやば――)
八幡「……?」
八幡(あの湖の底にあるやつ……なんだ?)
八幡「……ぷはっ!」ザバッ
彩加「えへへ、楽しいね♪」
八幡「あ、ああ……」
八幡(あれは……剣?)
八幡「……寄生虫がいたらもう遅い、か」ザパッ
八幡(……やっぱり、底に何か剣のような物が刺さってる……)
八幡(……いや、違う…“ありとあらゆる武器が底に溜まってる”……)
八幡「……ぷはっ」
彩加「八幡?」
八幡「……上で、何が起きてるんだ?」
彩加「上?」
八幡(少なくとも、剣や槍を使った“何か”が行われてるのは確かだ……)ゾクッ
八幡「二人の所へ戻るか」
彩加「うん!」
三浦「二人ともおそ……って、ななな、何で裸ぁ!?」カァ///
八幡「いや、濡れたから」
三浦「濡れたぁああ!?」カァ///
彩加「えへへ、気持ち良かった///」
三浦「はぁああああ!?」モジモジ///
八幡「いや、誤解だから。たぶんその顔誤解だから」
三浦「ヒキオの変態! クズ! ニート!」
八幡「おい、変態とクズは認めるが、ニートじゃない学生だ」
川崎「……うるさい」ムクッ
彩加「川崎さん!」
川崎「……えっと…」
川崎(あたしは1人で森を歩いてて、それで……)
――ビチャビチャビチャ
川崎「うっ」ダダダッ
川崎「……はぁはぁ」
八幡「川崎……」
川崎「なんで?」
八幡「………」
川崎「何で殺したの?」
八幡「……お前を助けるためだ」
川崎「……あたしを助けるために人を殺したの?」
八幡「……ああ」
川崎「………」
八幡「………」
川崎「………」
八幡「……すまん、お前のせいにするところだった。俺はあいつが怖くて殺したんだ」
川崎「………」
八幡「は、はは……今頃になって自分のしたことが怖くなってきた」プルプル
川崎「比企谷……」
八幡「俺は……人殺し…」
川崎「比企谷!」ギュッ
八幡「……っ」
八幡「………」
川崎「落ち着いた?」
八幡「ああ、すまん……」
川崎「なら、どさくさにまぎれて胸に手を置いてるの、離してくれる?」///
八幡「お、おうふ」バッ///
川崎「……殺したのはやりすぎだと思うけど、そのおかげであたしは助かったんだ。千葉に帰ったら一緒に罰を受けるよ」
八幡「川崎……」
川崎「……あたしも一緒に行っていい?」
八幡「あ、ああ」コクリ
八幡(正直三浦の世話とか困ってたし、凄く助かるな)
川崎「じゃあ皆の所へもどろ」
八幡「………」コクリ
三浦「………」ゴゴゴゴゴゴゴ
八幡「」
川崎「あんた、怪我してるんだって?」
三浦「……大した怪我じゃない」
川崎「見せて」
三浦「嫌」
川崎「………」
八幡「お、おい三浦……」
三浦「ヒキオじゃなきゃ、嫌」プイッ
八幡(うぇえええええ!?)
川崎「………」
彩加(み、三浦さん大胆すぎだよぉ!!)アセアセ
川崎「服を着替える時は?」
三浦「………」ピクッ
川崎「水浴びする時は、寝る時は、うんちする時は比企谷に任せるの?」
八幡(う、うんちって///)
三浦「うんちとか女の子がいうなし///」
川崎「小さい兄弟がいれば普通だよ」
三浦「………」
彩加(なんだかこの世界に来て三浦さんが可愛く見えるなぁ)ホッコリ
川崎「あんたの気持ちは分かるけど、
これ以上比企谷の負担になりたくないだろう?」
三浦「………っ!」ジッ
八幡「!」
三浦「………」ウルウル
八幡(そんな……目で見るなよ……)ドキドキ
川崎「………」ハァ…
八幡「………」
三浦「………」
八幡(皮膚がグジュグジュになってる……やっぱ濡らすのはよくなかったのか?)
三浦「ヒキオ……本当の事を言って…」
八幡「え?」
三浦「なんかだんだん足の感覚がなくなってきてる……もう、だいぶやばいっしょ?」
八幡「………」
三浦「……置い「いかねーよ、バカ」ペシッ
三浦「……だって…」
八幡「お前がいなくなったら誰が川崎のうんち処理するんだよ」
三浦「……ぷっ」
八幡「だから頑張れ。……きっと何とかなる」
三浦「………」コクリ
八幡(……きっと何とかなる…か)
川崎「全部聞こえてるんだけど?」プルプル///
彩加「八幡……」ハァ…
八幡「」
三浦「………」スゥスゥ
川崎「………」スゥスゥ
彩加「……えへへぇ、そんなにいっぱい出しちゃだめだよぉ///」ムニャムニャ
八幡「……///」
八幡(しかし、文明があると言うことが分かっただけでもでかいな)
八幡(しかも遠目で見る限り剣や槍の形は地球と同じものだった)
八幡(つまり、上で戦争してるのは人間と限りなく近い姿をした生き物ってことだ)
八幡(意思疎通ができれば良いけど……)
prrrrrrr
八幡「……え?」
【由比ヶ浜】
八幡「なん……で?」
八幡(電波が回復してる……?)ダッ
八幡「おい、由比ヶ浜!?」
結衣『……ざざっ…すけて……』
八幡「おいっ! おい!!」
結衣『ざっ…ッキー……けて!!』
八幡「由比ヶ浜!?」
結衣『…………あ…』
――ブツッ!!
八幡「!?」
八幡(何が……)ハァハァ
八幡「………」スゥ
――ザパンッ
八幡(くそっ、何してんだ俺は!)スイスイ
『ヒッキー! 助けて!!』
八幡(ああなるのを見越してその場を離れたんだろうが!!)スイスイ
『ヒッキー!!』
八幡(こんな武器で、何とかなるとでも思ってんのか!?)ガチャガチャッ
八幡「……(これは?)」スッ
八幡(八幡的に中二心揺さぶる槍だな……)グイッ
八幡「………」
八幡「ぷはっ!」ザバッ
八幡「………」スッ
八幡(棒の部分は長くて、先端はどういう訳か刃が繋がってないのにくっついてる……)
八幡「ロンギヌスの槍っぽいな」
八幡(逆に言えば上の世界の文明が地球を上回ってるってことか……もしくは魔法があるとか)
八幡「……いや、これで本当に戦いに行くのか…?」
八幡(しかも彩加達を置いて……?)
三人「「………」」スゥスゥ
八幡「………」
そう遠くない場所
戸部「パねェよ!! あれなんだよ!?」
葉山「くっ……」
鳥?「ギャァギャァ!!」ガッ
生徒「きゃぁあああああ!?」
葉山「!!」
トカゲ?「………」ガブッ
生徒「ぐぅうううう!?」ドサッ
葉山(何で……こんなことに…)
雪乃「葉山君、嘆いている場合じゃないのだけれど」
葉山「雪ノ下……」
雪乃「ここまで皆を導いたのはあなたよ。何人死のうが最後まで導きなさい」
葉山「だが……俺のせいで…」クッ
雪乃「………」パシンッ
葉山「……っ」ジンジン
雪乃「迷っている暇はないわよ」ジッ
葉山「………」
結衣「ゆきのん!!」
雪乃「……え?」
鳥?「ギャァアアアアアアア!!」バッ
雪乃「!!」
鳥?「ぐ、げ……げぇ」ピクピク
雪乃「……?」
結衣「……ひっきー…」グスッ
雪乃「え?」
八幡「……おもっ」ブンッ
鳥?「」ドサッ
雪乃「……比企谷君…」
八幡「よぉ、いつもの威勢はどこに行ったんだよ雪ノ下」
雪乃「……あなた、生意気だわ」ニコッ
第一部 完
※この物語はヒッキーageのお話です。葉山君の活躍の場所は皆無です。気をつけてご覧ください。
お仕事しますので続きは夜中か翌日になります。本日はおつカレー
∧ ∧
/ ヽ ./ .∧
i´`Y´`Y`ヽ(⌒) / `、 / ∧
ヽ_人_.人_ノ`~ ヽ /  ̄ ̄  ̄ ヽ
\___ \ (  ̄ ̄カレー  ̄ ̄ ̄ ̄)
\_ 〉/ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
ヽ -=・=-′ ヽ-=・=- / おつカレー
\___/ /
: \/
(⌒)
. ノ Y`Y´`Yヽ
(´ ̄ .i__人_人_ノ
トカゲ?「ぐぇええええええ!」ドサッ
八幡「………はぁはぁ」ドロッ
八幡(異世界に行ったなら少しは地球人補正くれてもいいだろうに……)ゼェゼェ
結衣「ヒッキー!」
雪乃「………」
八幡「……大丈夫かよ」ハァハァ
結衣「ヒッキーの方こそ……」
雪乃「比企谷君、それは何?」
八幡「ああ、ちょっとな」
葉山「比企谷!!」
八幡「………」
生徒「あいつ、化け物と戦ってたぜ」ボソボソ
生徒「ちょっと暗いし危なくね?」ザワザワ
生徒「目つきも怖いしな」ボソボソ
八幡「………」
第二章
葉山「優美子が!?」
海老名「そんな……」
八幡「あっちだ。早く行ってやってくれ」
葉山「だが……」チラッ
生徒達「………」ザワザワ
八幡(……やっぱりお前は…)
八幡「いや、葉山、やっぱりお前はここで指揮してやってくれ。お前にしかできないからな」ポン
葉山「比企谷……」
八幡「ここは異世界だ。主人公は任せるぜ葉山」ポン
葉山「お前、この槍は……」
八幡「俺には必要ない」
八幡(実際、必要ないんだ……俺は生き残るために全力を尽くすんだから……)
結衣「ヒッキー……」
雪乃(無理してるようにしか見えないわよ比企谷君……)
八幡「いいか、その方向へ歩き続ければ森を抜ける。だが、絶対に外に出るな」
葉山「なぜだ?」
八幡「外の日差しは人間に耐えられるものじゃない。三浦もそのせいで火傷を負ったんだ」
葉山「……分かった」
八幡「俺は戻る。行きたいなら行けばいいが、方向的に向こうの方が良いと思うぞ」
雪乃「なぜ?」
八幡「たぶん向こうには山か壁がある。……もしかしたら文明も」
結衣「ヒッキー達が帰ってくるの待ってるよ」
八幡「いや、俺は行かない」チラッ
生徒達「………」
雪乃「彼らなら気にする必要は――」
八幡「どちらにせよ三浦はみんなと同じペースでは歩けない。だから……」
結衣「……私もそっちへ行く」
八幡「………」
八幡「雪ノ下は……どうする?」
雪乃「あら、その言い方じゃ私がそっちに行きたいみたいじゃない」
八幡「別に嫌なら……」
葉山「駄目だ!!」
結衣「隼人君……?」
雪乃「………」
葉山「雪ノ下さんは駄目だ。俺が守る」
八幡「………」
葉山「俺が守らなくちゃ……父さんに…」ギリッ
雪乃「……そういう訳だから。ごめんなさい」
八幡「ああ……」
雪乃「………」スッ
八幡「……気を付けてな」クルッ
雪乃「……ぁ…」
海老名「私は……」
戸部「海老名さんは俺が守る!!」
海老名「………」
八幡「由比ヶ浜……行くぞ」
結衣「う、うん……」コクリ
八幡「……ん? あれは……」
不良3「おら、持てよ!」
材木座「痛いことはやめろっ!」
不良4「やめてくださいだろうが!」バキッ
材木座「くぅううう!」ドサッ
八幡「材木座!!」
材木座「……はちまぁん!!」パァッ
不良3「あ?」
不良4「お前……さっきの」
八幡「何やってんだ材木座」ハァ…
材木座「い、いや、クラスメイトとコミュニケーションを……」
八幡「……あんたら、こいつ連れていくけど文句ある?」
不良3「………」
不良4(全身血だらけで、そんな凄まれたら断れねーだろ……)チッ
不良4「行けよ」ゲシッ
材木座「相棒!! 我が助けてくれようぞ!!」
八幡「はいはい」
不良3・4「………」チッ
葉山「皆、少し方向転換する!!」
相模「えっ!?」
生徒達「ざわざわ」
葉山「大丈夫だ! 俺を信じてくれ!」バッ
生徒「あの槍、なんか神々しい……」ウットリ
戸部「やっぱ隼人クンについて行けば間違いないぜ!」
大岡「だな!」
海老名「………」
女子生徒「雪ノ下さん……私」
雪乃「大丈夫。私と葉山君がついてるから……」
女子生徒「う、うん……」
雪乃(一部の呑気な男子たちが女子に対して嫌な感情を持ち始めてる……やはり離れなくて正解ね)
雪乃「比企谷君……由比ヶ浜さんを頼むわよ…」
結衣「えぇ!? ヒッキー木登りしたの!?」
材木座「ケプコォン! そ、そんな主人公みたいなことを!?」
八幡「運動は得意な方だって言っただろ」
結衣「で、でも……そんなカッコいいと困る……///」モジモジ
八幡「は?」
結衣「ヒッキーがモテモテになったらあたし!!」ジッ///
八幡「……っ///」ドキッ
材木座「う、うらやまけしからん……」
結衣「………」ジーッ///
八幡「さ、先を急ぐぞ」
結衣「……あっ」シュン…
材木座「うむ、それでこそ相棒!」ニハハハハハッ!
八幡(こんなのつり橋効果だ! 期待するな俺!!)
結衣(心配だよヒッキー……)ウゥ…
八幡「彩加!!」
彩加「八幡!!」ギューッ
八幡「こっちは大丈夫だったか?」
彩加「うん!!」スリスリスリ
結衣「」
川崎「由比ヶ浜……と、えっと…」
材木座「我は材木座義輝! この世界の主人公たる男!!」
川崎「えっと、何でこっちに?」
結衣「うん、優美子が心配で……」
川崎「ああ、それなら……」
三浦「ヒキオ!!」ヨロヨロ
八幡「お前っ!? なんで歩いて!」ダッ
結衣「えっ?」
結衣(ヒッキーが優美子に駆け寄った!?)
八幡「無茶すんなよ!」ガシッ
三浦「だ、大丈夫。なんかここの水が火傷に効くみたい……」ハァハァ
八幡「そうなのか?」
川崎「ヒキオにしか確認させないみたいだから、確認してやって」
八幡「あ、ああ……三浦、こっちへ」グイッ
三浦「……ぅん」コクリ
結衣「ヒッキー……優美子……」
材木座「おお!! 聖なる水ホーリーウォーター!!」ゴクゴク
彩加「やっぱ飲むよねぇ」ウンウン
八幡「………」ゾクッ
三浦「どう……?」
八幡「あ、ああいや、大丈夫だ……」
三浦「……?」
八幡「……ちょっと離れる…」
八幡「……うっ…おぇ……ぐぅ」ビチャビチャ
八幡(あ、あれは何なんだ!?)
三浦「……見たんだ…」
八幡「……みう…ら…」ハァハァ
三浦「何が悪かったんだろう……」ペラッ
【火傷の後に蠢く蟲のような“何か”】
八幡「………」ゾワッ
三浦「……あーし、死ぬのかな…」ハハ
八幡「……分からん」
三浦「あんた正直すぎ……」プルプル
八幡「ああ、こんな状況で嘘ついても仕方ねーだろ」
八幡(実際、気力でどうにかなる問題じゃない。……自分で決めてもらわねーと)
三浦「……あーし…」
八幡「………」
三浦「まだ…死にたくない……」ポロポロ
八幡「………」
三浦「隼人ぉ……なんであーしだけを見ててくれないんだよぉ…」ポロポロ
八幡「………」
三浦「うっ……ぁああ……うぁあああああ」
八幡「……三浦、行こう」
三浦「……?」グスッ
八幡「葉山に会いに、行こう。それで、今度こそ守ってもらえ」
三浦「……うん」
八幡(……だが、“もしも”のことを考えると、一本くらい武器があってもいいな)
三浦「………」
八幡「………」スゥ
結衣「大丈夫なの?」
彩加「うん、八幡なら大丈夫だよ!」ニコッ
材木座「くぅ~! 我がもう5キロくらい痩せていれば!」
川崎「それくらいじゃ無理でしょ……」ハァ
八幡「………」ドポンッ
八幡(銃とかもあるけど、水に浸かってるし危険なのか……?)スイスイ
八幡(材木座にも持たせるか? あいつなら皆を脅したりしねーだろうし……)
八幡(これは……刀?)
八幡(材木座はこれでいいか)ハッ
八幡「ぷはっ!」ザバァ
結衣「ヒッキー!」
八幡「はぁはぁ」ガチャ
材木座「おーーーっ! それは名刀エクスキャリバー!」
八幡「……いや、刀だぞ?」
材木座「細かいことは気にするなぁ!」
八幡「……ふぅ」
結衣「ヒッキーそれは?」
八幡「RPGでいうダガーっていうのかな。二刀流とかカッコいいだろ?」ジャキッ
彩加「八幡カッコいい!」
八幡(俺はあくまで自衛のため……そして…)チラッ
三浦「……?」
八幡(もしものためだ……攻撃力なんて必要ない…)
材木座「それでこれからどうするのだ!?」
八幡「……みんなのところへ戻る」
結衣「え!?」
八幡「……大丈夫か?」
三浦「なんかどんどん調子が良くなってるっつーか……」
三浦(むしろ以前より……)
八幡(そういう寄生虫なのか? 宿主の運動能力を上げてより栄養を取らせる……)
材木座「ぐはははは! 斬れる! 斬れるぞぉおおお!」ザシュッザシュッ
結衣「中二怖い……」
川崎「まだあたしが持った方が良いんじゃ……」
八幡「………」
結衣「……ねぇヒッキー」
八幡「言うな見るな」
結衣「……う、うん」
八幡(さっき助けられなかった生徒……)
彩加「八幡……さっき何があったの?」
八幡「……トカゲと鳥みたいなもんが皆を襲ってただけだ」
結衣「ヒッキーかっこよかったねぇ」エヘヘ///
八幡「必死だっただけじゃねぇか」
結衣「ううん……かっこよかったよ」
八幡「………///」プイッ
川崎・三浦((見たかったな……///))ピクッ
八幡「………」
結衣「………」ハァハァ
川崎「………」ハァハァ
彩加「………」ハァハァ
三浦「………」テクテク
材木座「………」ヒィハァ
八幡(駄目だな。人が増えれば増えるほど注意力が散漫になる……)
八幡「いったん休憩しよ――」
不良3「おらぁ!!」
八幡「!?」
八幡(さっきの!?)
三浦「ヒキオ!」バッ
――バキッ!
三浦「くっ!!」ドサッ
八幡「……お前…」ギリッ
不良3「!!」ゾクッ
三浦「ヒキオ!」
八幡「!!」ピタッ
三浦「あーしは大丈夫だから」
八幡「………」ハァハァ
川崎(比企谷……キレやすくなってる?)
不良3「び、ビビらせやがって……」
材木座「我は殺すぞ?」チャキッ
不良3「ひっ!!?」ビクッ
不良4「お、お前っ!!」
材木座「……お前ら…よくも……よくも……」ギリッ
結衣「駄目……やめて…」
彩加「材木座君……」
材木座「よくもぉおおおおおお!!」バッ
不良3「ひぃいいい!?」
八幡「………」ドッ
材木座「ごぼぉっ」ゲホッゲホッ
不良3「………」ガタガタ
八幡「………」ジッ
不良3・4「ひっ!?」ビクッ
八幡(そうか……“俺も”…か)
八幡「行け」
不良3「くっ、くそっ!」ダッ
不良4「覚えてろよ!」ダッ
材木座「相棒……ヒドイでござる…」ウゥ…
八幡「お前、武器持ったくらいで強くなったつもりとかだせーよ」
材木座「……うぅ…だって…」グスッ
八幡「本当のヒーローならカッコつけてみろよ」
材木座「……かっこ…つける……」
八幡「ま、とりあえずそれは没収な」チャキッ
材木座「あうぅ……」
八幡(ダガーに刀って重すぎるだろ……)ハァ…
八幡「………」
八幡(重くない……むしろ、さっきより軽いくらいだ……)
三浦「………」
結衣「中々追い付けないね」
彩加「向こうも移動してるからだろうね」
川崎「足は大丈夫?」
三浦「あ、ああうん。大丈夫」
八幡(三浦以外は違和感がなさそうだ……。原因は湖の水だけって訳じゃないらしい)
八幡「……今なら魔法とかも使えそうだな…」
材木座「え?」
八幡「いや、こっちの話だ」
材木座「………?」
葉山「………」ザシュッ
蛙?「グァァァェ!」ブシュッ
生徒達「おーーーっ!」ザワザワ
葉山(どうやら、この世界の生き物程度なら武器があれば何とかなるみたいだ)
戸部「隼人クンマジかっけー! まじ勇者!」
葉山「っ!」ゾクゾクッ
相模「葉山君がいなきゃウチらとっくに死んでたよね!」
ゆっこ「ねー!」
葉山「―――っ!」ゾクゾクゾクッ
葉山(気持ちいい……っ)
雪乃「………」
雪乃(典型的なスタンフォード監獄実験の症例ね。葉山君は今勇者という役割に陶酔してる……でも、それはとても危うい事だわ……)
葉山「さぁ、もう少し頑張ろう!」
雪乃「葉山君、心なしか傾斜があるような気がするわ。ここは慎重に行きましょう」
葉山「雪ノ下さん」
雪乃「?」
葉山「俺を信じて」ジッ
雪乃「……っ」ゾクッ
雪乃(危険だわ……とても)
葉山「……大丈夫かい」スッ
雪乃「ええ…」サッ
葉山「………」
――止まれ!!
葉山「!?」
雪乃「……?」
??「止まれと言っているんだ」
戸部「だ、誰だ!?」
海老名「ファンタジーに出てきそうな鎧……」
騎士「これ以上近づくな」
戸部「人……?」
相模「助かった……」ホッ
海老名「外人さんなの……?」
生徒「た、たすけ――」
――ザシュッ!!
雪乃「!!」
騎士「……警告はした。容赦はしない」
葉山「あなたは人じゃないのか!?」
騎士「愚問だな。我は騎士。この世界を護る者なり」
葉山「な、なら同じ人同士!!」
騎士「同じ……?」
騎士「侵略者が戯言を」
葉山「侵略……?」
騎士「最終警告だ!! 聞け!!」
一同「!?」ザワッ
騎士「我々“人間”に完全降伏し、一切の権利を必要としないなら、奴隷として命は保証してやろう!」
生徒達「!?」ザワッ
葉山「そんな! 俺たちは日本人だぞ!」
騎士「ニホンジン? そんな者はこの世界に存在しない!」
葉山「……っ」
騎士「奴隷となってでも生を望むものは両手をあげて前にでよ!」
生徒達「………」
葉山「みんな!!」
雪乃「………」
生徒「俺……こんなところで死にたくない…」スッ
葉山「!?」
生徒「俺も……」
生徒「私も……」
葉山「みんな!?」
騎士「………」パチンッ
兵士達「………」ザッザッ
葉山「くっ……」
騎士「手を挙げている者たちを捕えよ」
兵士達「はっ!」ダッ
葉山「くそ……」
騎士「………」
葉山(一歩でも動けば殺される……)ギリッ
生徒「痛い!!」ズリズリ
生徒「うぁああああ!」ズリズリ
兵士「………」グイグイ
生徒「いやぁああああ!」
葉山「……く、そ…」ガシャッ
葉山(俺は……なんて無力なんだ…)
海老名「葉山君?」
相模「葉山君?」
雪乃「あなたまさか……」
葉山「は、はは……死んだらどうしようもないだろ…」スッ
騎士「……あいつも捕えよ」
兵士「はっ!」
雪乃「……くっ…」
騎士「……残るは2匹か…」
騎士(プライドもなく媚びるように奴隷になっていった……こいつらは虫以下か?)
兵士「どうします?」
騎士「好きにしろ。私は王へ報告してくる」
兵士「はっ!」
雪乃「海老名さん、あの騎士が離れたら全速力で逃げるわよ」
海老名「う、うん……」
騎士「………」ザッザッ
兵士「へへっ、見た目は人間ってことは、久々の異世界人か」
兵士「しかも極上だぜ二人とも」ジュルリ
雪乃「………っ」
海老名「………」ガタガタ
兵士「ひゃっはーーーーー!」
兵士2「いただきだぜーーー!」
雪乃「比企谷君……っ」ギュッ
海老名「………っ」
兵士「ひゃっはぁああああ!」ビリビリッ
雪乃「くっ!」ドサッ
雪乃(こんな辱めを……)
兵士2「俺はこっちを……」
海老名「いやぁあああ!」ビリビリッ
兵士「はぁはぁ……」ボロンッ
雪乃「い、いや……」
兵士「大人しくしやがれぇ!」ガバッ
雪乃「いや、いや、いやぁあああああ!!」
――ずぷっ……
雪乃「……っ、はっ……」
兵士「」ドサッ
雪乃「………」ハァハァ
兵士「」ピューッ
雪乃「……血?」
兵士2「ぐぁあああああ!」ドサッ
海老名「きゃぁああああ!!」
兵士2「」ドサッ
八幡「………」ハァハァ
雪乃「比企谷君……」フラッ
結衣「ゆきのん!」ダッ
三浦「姫菜!」ダッ
彩加「……人だ…」
川崎「……人だね」
材木座「うーむ、相棒が出しゃばらなければ我が殲滅したというのに」
八幡「……!?」ゾクッ
八幡(何だ今の気配……)
八幡「……向こう…から?」
騎士「………」ザッザッザッ
材木座「あれは……?」
八幡「材木座……みんなを連れて逃げろ」
材木座「え?」
八幡「早く!」
材木座「お、おう!」
結衣「でもゆきのんが!」
八幡「……っ、置いていけ!!」
結衣「そ、そんなの……っ」
八幡「川崎!」
川崎「あ、ああ……」グイッ
結衣「ヒッキー!! ゆきのん!!」
八幡「………」
八幡(やっべー……こいつラスボス級だわ…)
騎士「………」ザッ
騎士「油断していたとはいえ、我が軍の兵士を二人も殺すとは……」
八幡「いや、油断しまくりだろ。しつけがなってねーんじゃねぇの」
八幡(意思疎通できんのかよ……まぁ、だからって許してくれそうな相手じゃねぇな)
騎士「貴様には警告していなかったな」
八幡「………?」
騎士「貴様も他の者のように一切の権利を放棄し、奴隷として生きる道を選ぶなら、我が命だけは助けてやろう」
八幡「……奴隷」
騎士「お前らの隊長のような男は、すでに奴隷として迎え入れている」
八幡「葉山が……」
八幡(いや、さすがにこの状況ならそうするか……)
騎士「どうする?」
八幡「俺は……」チラッ
雪乃「」
八幡「わりぃな。ぼっちでも人間なんだ」
騎士「そうか……ならば、死ね」ジャキッ
八幡「……っ」ゾクッ
八幡(馬みたいなドラゴンに跨って、人間並みにでかい槍を扱うってどんなファンタジー漫画だよ!)チャキッ
騎士「死ね!」ブゥンッ
八幡「おわっ!?」サッ
騎士「ぬぅうううん!」ブンッ
八幡「くっ!?」ギィンッ
八幡(こ、コロサレル!?)
騎士「剣技に長けているという訳ではないのか……残念だ」ジャキッ
八幡「……ここまでかよ…」
騎士「……その目…」
八幡「?」
騎士「濁った泥水のような眼」
八幡(悪かったな)チッ
騎士「――の奥に眠る、翡翠の光……」
八幡「?」
騎士「貴様、どうやって“聖水ホーリーウォーター”を飲んだというのだ!」
八幡「……………は?」
八幡「いや、何? 聖水ホーリーウォーター?」
騎士「それは我らも立ち入りを許可されぬ上世界の王宮でのみ飲むことのできる水。一口飲めば千里を駆け、二口飲めば岩を砕き、三口飲めば魔力をも得ると呼ばれる伝説の水だ!」
八幡「……もしかして」
八幡(あの時の木がつながってたのか?)
騎士「許さぬ……許さぬぞぉおおおお!」
八幡「そ、そんなこと言ったって仕方ないだろ!! 生きるためなんだから!」
騎士「貴様は自分の命のためなら神の所有物を手にしても何とも思わないというのか!」ブンッ
八幡「し・る・か・よっ!」ギリギリギリ
八幡(つーかそんな大事なもんなら木に垂れ流すな馬鹿!)
騎士「……死をもって償え!!」ブゥンッ
―――パァンッ‼!
八幡「え……」
騎士「……ごふっ」フラッ
八幡「誰が……」
彩加「………」ジャキッ
八幡「彩加!?」
騎士「おの…れ……」ハァハァ
彩加「次は頭を狙います」
騎士「……やめろ」
彩加「なら、一切の権利を放棄し、僕たちに忠誠を誓いなさい」
騎士「そ、それは……」
彩加「次は――」
騎士「……くっ…」
八幡「………」
騎士「……分かった」クッ
彩加「……ふぅ」
八幡「彩加……なんで」
彩加「実は八幡が行った後僕も潜ってみたんだ!」エヘヘ
八幡「そう……か」
三浦「……治ってる…」
騎士「聖水を飲んだというのなら、当然だ」
八幡「でも、蟲のようなものが火傷の後を……」
騎士「それは蟲ではない魔力だ」
三浦「魔力?」
騎士「魔力は時折生物のような姿で現れる。翡翠の目を持つハチマンとユミコならそう見えるのも頷ける」
騎士「もちろん、主も」
彩加「えへへ///」
川崎「……それで、あんたは国を裏切ってもよかったの?」
騎士「我の国はもとよりこの世界にはない」
海老名「それって……」
騎士「我もまた、異世界人だ」
八幡「………」
八幡「じゃあ、捕まった奴らは……」
騎士「奴隷は我の管轄ではない。どうなるかは分からぬ」
結衣「そうなんだ……」
騎士「だが、見た目がこの世界の人間と近い貴様らなら、きっと上奴隷になれるだろう」
海老名「上奴隷?」
騎士「ああ、上奴隷は身の回りの世話。中奴隷は建物の整備、建設、町の清掃。そして、下奴隷は――
――人間のおもちゃだ」
材木座「おもちゃ……」ゾクッ
騎士「それより、これからどうするのだ? この森で一生暮らすわけにもいくまい?」
彩加「元の世界に帰る方法とかないの?」
騎士「……分からぬ」
彩加「そっか……」
騎士「だが、神ならあるいは……」
結衣「神様?」
騎士「………」コクリ
八幡(騎士やら魔法やら神様やら、急に胡散臭い世界になりやがった……)ハァ…
騎士「神の居場所は我には分からぬ。だが、神のみが外界を自由に飛び回れると聞いている」
八幡「外……?」ピクッ
騎士「姿はドラゴンのように雄々しく鳥のように優雅だ」
八幡「ドラゴン……鳥……」
彩加「八幡それって……」
八幡「ああ、あの時の……」
騎士「見たというのか!?」
八幡「たぶん……」
騎士「主たちは幸運の星の下で生まれたようだな……」
八幡「それにしては俺は不幸続きの人生だったけどな」
結衣「ヒッキー……」ハァ
三浦「で、そいつが実在したとして、あーしらでどうやってそいつと会うのさ」
八幡「……それは…」
一同から少し離れた場所
雪乃「………」
八幡「すみません」ドゲザ
雪乃「もう少しでバージンを失いかけたわ」ジトーッ
八幡「確実に殺したかったんです」ドゲザ
雪乃「あの人たちに裸を見られたわ」
八幡「俺も見たんで許してください」ドゲザ
雪乃「余計許せないじゃない」
八幡「………」
雪乃「……地球に帰ったら、責任取ってもらうわよ」
八幡「は? そ、それってぷろ――」
雪乃「馬鹿なこと言わないで比企谷君。
自首に決まってるじゃない。強姦罪の」
八幡「」
雪乃「絶対……生きて帰るわよ」
八幡「……ああ」
人間世界の入り口
騎士「本当に良いのだな」
八幡「ああ」
騎士「……分かった」ギィッ
兵士「隊長!!」
兵士「隊長!!」
騎士「心配かけたな」
兵士「よくぞご無事で!!」
八幡「………」
騎士「この男は、
奴隷として連行してくれ」
八幡「………」
第二部、完
第三部では、奴隷になった相模のあんなところやこんなところが見えます。
さらに葉山君のあんな所や戸部っちのあんなところが見えます。
冗談です。でも冗談じゃないです。
たぶん第4か5部で終わるんじゃないでしょうか。
おやすみなさい。
サキサキがいない、まさか八幡がいないことにすら気付かず他の奴らといっしょにいるのか?
異世界に来て早々に衣服をなくした雪ノ下と海老名wwwwww
八幡(進撃の巨人のように果てのない壁、さらに上空の大地まで伸び続けたそれを抜けた世界は――)
通行人「ざわざわ」
通行人「ざわざわ」
八幡(まさに、ファンタジーの街と言っていいような世界だった)
騎士「あまりキョロキョロするな。通常の奴隷は記憶を消され、魔法で自我を消されているのだから」
八幡「え……」
八幡(じゃあ、葉山達も……?)
騎士「まぁ、消されたと言っても厳密に言えば上書きだ。貴族の中には異世界の話を聞きたがるもの好きがいるからな」
八幡「そう……か」
騎士「主達を置いて行って大丈夫だったのか?」
八幡「当たり前だろ。こんな危険な場所で奴隷なんてさせられるかよ」
八幡(天使が豚みたいなやつに犯されてるなんてありえない!)
彩加『はちまぁ……んっ///』
八幡「………///」
――ドンッ
??「すみません……」
八幡「……相模?」
相模?「………?」
貴族「何をしている。行くぞ」グイッ
相模?「は、はいっ」
八幡(まさにオークと呼ぶにふさわしい豚に連れられていた……)
競売所
八幡(ここが……)
騎士「新たな奴隷候補だ。SSクラス、どういう訳か翡翠の瞳をしている」
奴隷商「ほぅ……これは珍しい。腐ったドブのような瞳の奥にきらりと輝く……」ジロジロ
八幡(悪かったな……)チッ
奴隷商「ふむ、……こんなもんか?」
騎士「……分かった。その半分で良いからこの奴隷に餞別をくれてやってもいいか?」
八幡(餞別?)
奴隷商「同郷か?」
騎士「いや、戦いの礼だ」
奴隷商「ほんと、戦闘狂だねぇ」
騎士「……ハチマン、これを」
八幡「あれ、俺が拾ったダガー?」
騎士「餞別された物は奴隷の主であっても奪うことができない。きっと役に立つだろう」
八幡「……じゃあ、遠慮なく」
騎士「できるだけ高貴な者の目に留まるようにな」ポン
八幡「……はぁ」
八幡(日本で誰も相手にされなかった俺がどうやって誰かの目に留まるんだよ……)
奴隷商「それじゃあ、行くぞ」
八幡「………」コクリ
奴隷商「さぁさぁ! たった今入荷された異世界人だよ! なんと翡翠の目を持つSSクラスの男だ!!」
貴族達「ざわっ!」
八幡(お、おおふ……豚みたいな奴らが必死に……)
奴隷商「10000Gから!」
貴族達「たけーぞ!!」ザワザワ
貴族「だが、あれは貴重だ……」ゴクリ
貴族「12000!」
貴族「15000!」
貴族「18000!」
八幡「………」
八幡(俺じゃなくて翡翠の目に群がってるだけなのに、必要とされて少し嬉しい自分が情けない……)
令嬢「100000!!」
一同「「!?」」ザワッ
奴隷商「10万! 売った!!」
八幡「……雪ノ下?」
令嬢「………」
貴族の屋敷
八幡「でけぇ……」
令嬢「何をしているの? 早く入りなさい」
八幡「………」
八幡(見た目貴族の服着た雪ノ下なのに、性格はさらにどぎつい……)
令嬢「今日からあなたは私の奴隷よ」
八幡「はぁ」
八幡(もっと豚みたいなやつにこき使われるのかと思ってたから少し拍子抜けした……)
令嬢「あなた、名前は?」
八幡「………」
八幡(記憶消されてる奴に名前聞くとか馬鹿なの?)
執事「ユキお嬢様、彼は記憶を消されております」
ユキ「し、知ってるわよそれぐらい!! 早くこいつの記憶を戻しなさいよ!!」
執事「いいのですか? 従順な奴隷にはならない可能性が――」
ユキ「口答えしない!!」
執事「はっ、はいっ!」
このSSまとめへのコメント
期待してます!!
はよ〜(^.^)
これはおもろいな
続きが気になる
楽しみに待ってます♪
私続きが
気になります!‼︎!‼︎
超期待
きになる!
更新求む
面白い!ここまで面白いとは思わなかった!凄く期待です!
更新求む。
やべー、超面白い。続き期待!
のめり込んでしまった!
面白いっす(*´∀`*)ノ
気になって仕方ない
続き…
つづきはよ
エタんなよ。
男だろ…(知らない)
さっさと続き書けや!!!!!
中途半端にやめる位なら始めから書くなよ、質が悪い
聖戦士八幡!
活躍に期待してますわ。
続きはよー
久々の期待作!!
続きとても楽しみにしてます!(`・∀・´)
待っとるで
どうして未完でやめちまうんだよおおおおおおおおおおおおおお
はよー
まだかああああ!!!!
更新してくれよ!!
みんな待ってんだよ!!!!
ふぅ~
更新あくしろよ
もうまてねぇんだよぉ〜
続き書いてくれたら私のおっぱいもんでいいから…書いてくれる?
失踪したらもう許さねえからな~?
すごく期待しています
期待してます!
続く………よね?
続きを書いてくださぁぁぁぁぁい!!
期待感!!絶大!!
最高に楽しいssですね!
これは、ハマってしまいます!
続きを期待してます!
マジで!!!
続き期待してます。!
がんばってください!
早く続きが見たいんで早くしてくだせー
続きみたいです
なんでもするから早く更新してくれー
続きはよしてくれやぁぁぁぁぁぁ
(訳:お願いします続きを早く書いてください!!)
早く、続きを!
けぷこん。お願いいたします。
なにとぞ、続きを‼️
続きは?
どうか八幡に剣の天賦の才を
エタった≫1に乾杯
面白い!
期待
途中で書かないなら最初から書くなよ
ks
続き、
まだー?
キスしたいのー
材木座が書いてんだろ?
そして途中で逃げたな
はい屑作うー
更新してくれー!
最後までいくよね.........?
くそつまらん
つっづーき♪つっづーき♪
…早くしろ(激怒)
一年経ってんじゃねーか
ちゃんと終わらせろよ
待っておるぞ!
待っているから早く頼むm(_ _)m
やべえ、面白すぎる
はよ続き書け
もう無理だよね 1年以上更新無いし
まだですか?
逃げたな?
すごく見たいけどもうやらないと思うこの人は
続き書けよォォォォ
期待のタグつけたらBLのタグに変換されっとた
もう2018年だよ
あぼーん
ゴミサイトさんお疲れ様です!
エタってるゴミをまとめんなクソが
続きはよ
誰か変わって続きかけば?