はだしのラピュタ (205)
竜太「なんじゃあ? 空から女が降って来たぞ?」
竜太「あんちゃーん! 女じゃー! 女が降って来たぞー!」
ゲン「なに馬鹿げたこと言うとるんじゃ! シゴウしたるぞ!」
竜太「本当じゃ! わしがこんなくだらん嘘なんかつくか! 屋根から落っこちそうなんじゃ! 助けてくれや!」ギギギ
ゲン「まったく何を考えとるんじゃ……」ガラガラ
ゲン「やっ!?」
ゲン「おどりゃ、本当に女がおるじゃないか!」
竜太「そう言うたじゃろ!」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1414926488
***
ゲン「うんせうんせ」グイッ
竜太「ふいー、何とかなったわい……」
ゲン「この女、気絶しとるぞ」
竜太「こいつ、日本人じゃないのぅ、あんちゃん」
ゲン「アメ公か?」
竜太「分からんわい」
ゲン「それにしてもどっから落ちてきたんじゃ? B29か?」
竜太「ガハハ! B29なんかから落ちたらお陀仏じゃぞ!」
ゲン「ほうじゃのう……」
***
ピチチチチ
シータ「ハッ!」パチリ
勝子「あっ! 目が覚めたよ!」
シータ「……!?」
竜太「お、起きたか! おどりゃ、突然人様の家に降ってくるとはどういうつもりじゃ!」
シータ「!」ビクッ
ムスビ「やめんか竜太! 怖がっとるじゃないか。ええと……うぇ、うぇあー、あーゆーふろむ?」
シータ「」ビクビク
竜太「おどりゃ、なんか言わんかい!」
勝子「竜太、やめて!」
ムスビ「きゃ、きゃんゆーすぴーく、いんぐりっしゅ?」
シータ「え、えと……日本語なら話せるわ……」
竜太「何じゃ、お前日本語できるんか」ガクッ
勝子「ねぇ、あんたどこから来たの?」
シータ「悪い人たちに捕まって飛行船で運ばれていたんですが、その途中で海賊に襲われて……」
ムスビ「なんじゃか突拍子もない話がはじまったのぅ……」
シータ「逃げようとしてその飛行船から落ちてしまったの。それで気づいたらここに……」
勝子「そんな馬鹿な……」
竜太「じゃが、空から降ってきたのは本当じゃぞ? あ、そういえばおどれ、青く光るネックレスをしとったじゃろ」
シータ「え……これの事かしら?」チャラッ
ムスビ「別に光っとらんぞ?」
竜太「おう、それじゃ! ちょっと貸してみぃ。今からわしが飛んだるわい」パシッ ダダダッ
勝子「屋根の上に登ったら危ないよ!」
竜太「大丈夫じゃ! 見とれ!」ポーン
勝子「あっ!」
ムスビ「ひっ!」
シータ「!」ビクッ
ドシーン!!
竜太「ギエエー!! 痛いー痛い―!」ゴロゴロ
ゲン「ん? 何をやっとるんじゃ?」カランカラン
ムスビ「お! ゲンじゃないか」
勝子「昨日の子、目覚めたよ」
ゲン「おお、ほうか! そりゃ良かった!」
竜太「あ、足をひねった……」ギギギ
***
ゲン「ほぅ、それで落っこちてきたんか」ナルヘソ
シータ「ええ。お願い、しばらくかくまって欲しいの!」
ゲン「まぁ別にわしらは構わんが……。そういえばおどれ、名前はなんていうんじゃ?」
シータ「あ、ごめんなさい。私はシータ」
ゲン「シータか、変な名前じゃな」
竜太「あんちゃん、アメリカではそれが普通なんじゃ。あんちゃんは何にもしらんのぅ」
シータ「私の生まれはアメリカじゃないの。ヨーロッパの田舎で育ったの」
ゲン「コイツ、知ったかぶりを言うな!」ゴチン
竜太「ぎゃいん!」
ゲン「わしは中岡元じゃ」
竜太「近藤竜太じゃ」
勝子「ウチは勝子よ」
ムスビ「ムスビって呼んでくれや」
シータ「ゲンに竜太に勝子にムスビね。よろしくね」フフッ
ゲン(可愛いのぅ……///)
竜太「まぁなんじゃ、アメリカのコーシーとクッキーでも食べながら話そうかのぅ。勝子、出してくれや!」
勝子「はいはい」スック
ゲン「ほいじゃが、なんでシータは付け狙われとるんじゃ?」
シータ「それがよく分からないの……。この石を狙ってるのかしら? 家に古くから伝わっているものなの」
竜太「闇市で売れば結構な金になるぞ?」
ゲン「馬鹿たれ、そんな大事な物、そう簡単に売れるか!」
ムスビ「それにしてもきれいな石じゃのぅ」
***
勝子「はい、コーシーとクッキーよ。シータも食べて」トン
シータ「ありがとう」
ゲン「ぎゃー、おいちー! 日本がアメリカに負けた理由がわかるのぅ!」バタバタ
竜太「ほうじゃろう!」
シータ「? アメリカと戦争したの?」
ゲン「」
竜太「」
勝子「」
ムスビ「」
しーん
シータ「ご、ごめんなさい……」
ゲン「わしのお父ちゃんや英子姉ちゃん、進次に友子はアメリカがピカを落としたせいで死んだんじゃ……」
勝子「うぅ……お父ちゃん……お母ちゃん……」
ムスビ「うぅ……」
竜太「うぅ……クソッたれ! ピカのクソッたれ! アメリカのクソッたれ!」
しーん
シータ「……」
ブロロロ……
シータ「ハッ!」
ゲン「なんじゃ? ジープの音が聞こえるぞ?」
竜太「おどりゃ、アメ公か! 石を投げつけてやるわい!」ダッ
シータ「待って! あの人たち、海賊よ!」
ゲン「なんじゃと!?」
竜太「ならハジキを持ってかんといかんわい!」ペラッ
勝子「とりあえずシータはドングリの服を着て!」ポフッ
シータ「ドングリ?」
ゲン「」
竜太「」
勝子「」
ムスビ「」
しーん
シータ「ご、ごめんなさい……」
ゲン「……なんてやっとる場合か! 早う逃げるぞ!」
ムスビ「着替えたらこっちへ来い!」
***
ゲン「ようおっさん、早いのぅ!」タタタッ
竜太「ガハハ! 淋病もらって朝帰りか?」タタタッ
ルイ「よう、待ちな!」
ムスビ「なんじゃ? わしらは急いどるんじゃぞ」
ルイ「女の子がこの辺に来なかったかい?」
竜児「おう、昨日来たぞ? 孤児狩りから逃げてきた薄汚いのが」
ルイ「くそっ! 行っちまえ!」
ゲン「ほいじゃ!」
隆太「やっぱりあいつら、シータをねらっとるぞ」タッタッ
***
アンリ「ルイ! 女の子の服だ!」
ルイ「何!? 化けてたんだ! お前はママに報せろ!」
アンリ「あいよ!」
***
闇市
政「見かけねえな、浮浪児か?」
シャルル「かわいい子でね、黒い髪のおさげをしているんだ」
隆太「政兄ィー! 政兄ィー!」タッタッタ
シータ「はぁっ! はぁっ!」タッタッタ
政「あ、隆太! おどれ! この前はよくも撃ちやがったな!」
シャルル「ちょうどあのくらいの年頃でさ」
シータ「わぁっ!」バタッ
シャルル「ん?」
ルイ「ア、アニキー! そいつだぁー!」ブロロロ
隆太「あいつら海賊なんじゃ! 助けてくれよ、頼むよ!」
政「それがどうした! 浮浪児のお前を拾ってやった恩を仇で返しやがって‼」
隆太「肩を撃ったのは謝るよ! じゃからこの子を海賊から守ってほしいんじゃ!」
政「勝手ばかり抜かしやがって! おどれをぶち殺してやる!」バキッ!
隆太「ギエエ―ッ‼」
シャルル「」
ルイ「」
政「殺してやる! 殺してやるッ!」バキッ! バキッ!
隆太「」ギギギ
シータ「やめてっ!」バッ
政「邪魔するなクソガキッ‼」バキッ!
シータ「きゃあっ!」ドサッ
政「ふぅっ! ふぅっ! 調子に乗りやがって!」
ゲン「ええかげんにせえやっ!」パカーン
政「ギエッ!」
ゲン「シータ、大丈夫かッ!?」
シータ「い、痛い……」
ゲン「クソッたれ! 許さんぞおどれ!」バキッ!バキッ‼
政「ギエエ!」
隆太「女を殴るとはおどりゃ、生かしておけんのぅ……」ハァッハァッ
政「うぅ……」ギギギ
隆太「ヤクザでも少しの良心くらいは残っとるかと思うとったが、当てが外れたようじゃ……」ガチリ
政「ひ、ひいいい!! りゅ、隆太ッ! 何をする気だッ!?」アワアワ
ルイ「だ、ダメ……! それ以上はダメ……!」ビクビク
隆太「こうするんじゃッ!!」ズガーーーーン!!
政「ギエエエエエエエエエエエエ!!!!! 足があああ!!!」
隆太「フーーッ! フーーッ! これくらいじゃ済まさんぞッ!」チャッ
ムスビ「よせ、隆太! 今はシータを逃がしてやることが先じゃッ! おそらく追手は海賊だけじゃないぞ!」
隆太「ほ、ほうじゃった……」
ゲン「ここはわしが何とかするからお前らは早う行け!」
勝子「ゲン! 気を付けて!」タッタッタ
シャルル「あ、待てッ!!」ダッ
ゲン「させるかッ!」バッ
ルイ「馬鹿か、お前は! ガキ一人でどうやってジープを止めるんだ!?」
ゲン「おどれらのジープはとっくにお釈迦じゃ」
ルイ「はぁ!?」
ゲン「かけれるもんならエンジンをかけてみぃ」
ルイ「なーに言っちゃってんだか……」ガチャッ
ジープ「」プスン
ルイ「」
シャルル「な、何故だッ!?」
ゲン「ジープの給油口に角砂糖を入れたんじゃ。中で溶け固まって動かんようになるんじゃ」
ルイ「こ、このガキッ!」
ゲン「隆太がそこのヤクザに殴られとる間、わしらがただ傍観しとるとでも思っとったんか?」
シャルル「おのれ……」
ルイ「アニキッ! そんなガキ、ぶちのめせッ!」
シャルル「むうううう……」グググッ
シャルル「ふんッ!」ビリィッ!
ゲン「もったいないのぅ……高そうなシャツを……」
ルイ(こ、こいつ……全然ビビってねぇ……)
シャルル「いいか? お前はさっきのガキみたいにリボルバーを持っていないんだぞ?」
ゲン「当たり前じゃ。小学生がごく普通にハジキを持っててたまるか、馬鹿たれ」
シャルル「チッ! 泣いて謝ったって知らんぞ!」ブンッ!
ゲン「わしをなめるなッ!」バキッ!
シャルル「うぐぅっ!?」ドシャッ
ゲン「わしの喧嘩は年季が入っとるけぇのぉ。図体がでかいだけの木偶の坊に負けるわけないんじゃッ!」
ルイ「ひ、ひぃっ!」ガクガク
ゲン「わしらは一度、地獄を見とるんじゃ……おどれら如きにビビらんぞ、わしは……」
ルイ「……」ガクガク
ゲン「よってたかって女の子を虐めやがって! おどれらのちんぽこ逆剥けにしたるゾォ―――――ッ!」グワッ!
ルイ「ひぃいいいいいいいいいい!!!!!!!!」ダダダッ
ゲン「なんじゃ、あいつ……逃げおったぞ……」ポカーン
シャルル「」ピクピク
***
ドーラ「待ちなァ――――ッ!! 逃がさないよ―――ッ!」ブロロロ
ムスビ「りゅ、隆太っ! 少し休もう!」ハァッハァッ
隆太「馬鹿たれ、ちんたらしとったらあのババアに捕まるわい!」ハァッハァッ
ムスビ「ほいじゃがもうシータが限界じゃ! こりゃあもう持たんよ……」ハァッハァッ
勝子「シータ、しっかり!」ハァッハァッ
シータ「はぁっ……はぁっ……おぶぅおぇっ!」ビチチチ
隆太「おどれシータ! ちょっと走ったぐらいで根をあげるなッ!」
勝子「やめて隆太! シータはウチらとは鍛え方が違うんよ!」
隆太「……。仕方ないのぅ……。ムスビ! リヤカーちょろまかして来い!」
ムスビ「分かったよ」タッタッタ
隆太「何とか広島駅まで行ければええんじゃが……」
ドーラ「とうとう観念したようだね。さっさとその子の持ってる飛行石をわt」ブロロロ
隆太「うるさいわいっ!」ズガーーーーン!!!!
ドーラ「うわっ!」ゴロゴロ
アンリ「ママ!」
ドーラ「ガキンチョのくせになかなかやるね」ドゴーーーーン!!!!
隆太「あのババア、反撃してきたぞ! 勝子! シータと一緒に隠れとれ!」ガチリ
***
ドーラ「そろそろあっちは弾切れだね」ガチャッ
隆太(しもうた……弾を使いすぎたわい……)カチンカチン
ドーラ「さあ諦めな! もうお前たちに打つ手はないよ!」
隆太「おどりゃババア! あんまりわしらをなめるなよ!」
ドーラ「何ができるっていうんだい!」
隆太「これが見えんのか!」スッ
アンリ「だ、だいなまいと……」ビクビク
ドーラ「そ、それで何をする気だい……」
隆太「こいつは導線を短うしとるからのぉ。火をつけたらあっという間じゃわい……」シュボッ
ドーラ「!」
隆太「おどれらの欲しいこの石も粉みじんじゃぞ!」チャラッ
ドーラ「は、はったりだね! お前たちも死ぬじゃないか!」
隆太「どうせこのままじゃおどれらに殺されるんじゃ。それなら一矢報いてやる方がええわい!」フーッフーッ
ドーラ(こ、この目……本気だね……)
ドーラ「わ、分かった……落ち着こうじゃないか……」
隆太「まずハジキを捨てんかい、わりゃ!」
ドーラ「くっ……アンリ、武器を捨てな……」ガシャンッ
アンリ「」ガシャンッ
隆太「ほんでゆっくりこっちに来るんじゃ……。ゆっくりじゃぞ……」
ドーラ「こ、このまま一緒について来いってのかい……」
隆太「馬鹿たれ、何が悲しゅうてババアと歩かにゃならんのじゃ。ハジキは弾を撃つためだけじゃないわいッ!」ガキッ
ドーラ「うっ!」ドサッ
アンリ「ママ!」
隆太「それからお前にはこのダイナマイトをやるわい」ポイッ
アンリ「!?」パシッ
アンリ「こ、これは……!」
隆太「そうじゃ、ただの紙を丸めただけの偽物じゃ。さすがに闇市でもそう簡単には手に入らんのよ」
隆太「人間、焦っとると正常な判断が出来んくなるけえのぉ……」
アンリ「く、くそッ!」
隆太「とりあえず眠っとれや」ガキッ
アンリ「うっ!」ドサッ
***
ムスビ「おーい、リヤカー持ってきたぞー!」ガラガラ
隆太「おう、来たか! ムスビ、兄ちゃんを見とらんか?」
ムスビ「途中で会うたわい。ほいじゃがゲンの奴、一応お母ちゃんに断ってくると言うとったぞ。先に広島駅に行けじゃと」
勝子「ゲン、お母ちゃん思いじゃね」
隆太「美人なお母ちゃんじゃからのぉ……。羨ましいわい、お母ちゃんが居ると言うのは……」
勝子「」
ムスビ「」
隆太「」
しーん
***
広島駅
ゲン「すまんのぉ! 待たせたか?」タッタッタ
シータ「ううん、ちっとも! それより駅前の立ち食いそばっておいしいのね! びっくりしちゃった」フフッ
ゲン「ほ、ほうか! そいつは良かった! ///」
勝子「シータが元気でウチは何よりよ」フフッ
ムスビ「それにしても隆太の奴、シータのために随分奮発したのぉ。普段は芋しか食うとらんのに」
隆太「う、うるへー! そばぐらい何でもないわい! ///」
シータ「ご、ごめんなさい! 高かったの?」
ゲン「ええんじゃ、ええんじゃ! 日本の食いもんを美味いといってくれて、わしらは嬉しいんよ!」
勝子「そうよ! せっかくじゃけん、ちょっとでも日本を楽しんでってつかあさい!」
シータ「ありがとう///」
ムスビ「ほれ、隆太。いつまでも財布を見つめとるな。女々しいぞ」
隆太「ぐすん……」
***
シュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュ……ポオーッ!
隆太「シュッシュポッポシュッシュポッポ! ガハハハ! さすがにSLは速いのぅ!」
勝子「あんまり身を乗り出すと落ちるよ」フフッ
シータ「隆太って面白い人ね」フフッ
勝子「もう心配で見とれんのよ」
ムスビ「ゲン、それにしてもわしらはどこへ向かっとるんじゃ?」
ゲン「九州じゃ」
隆太「九州!?」
ムスビ「なんでまた九州なんじゃ?」
ゲン「今帰省しとる浩二兄ちゃんは九州の炭鉱に出稼ぎに行っとるけえのぉ。蒼く光る石について訊いてみたんじゃ」
シータ「……お兄さんは何て……?」
ゲン「見たことがあると言うとったわい。地下坑道で偶に岩盤が蒼く光ることがあるそうじゃ。何でも飛行石が含まれとるらしいぞ」
隆太「そう言えばさっき追いかけてきたババアも飛行石が何とかって言うとったぞ」
ゲン「もしかしたらその石の手がかりがつかめるかもしれんし、身を隠すにも九州は打ってつけじゃ」
ムスビ「なるほどのぅ」
ゲン「そう言えば面白い話も聞いたぞ」
勝子「なんね、その話って?」
ゲン「ハァー! ペンペン!」
シータ「!」
隆太「いよっ! 待ってましたぁ!」
ムスビ「ガハハ、また始まったぞ!」
ゲン「ハァー! 昔の昔、その昔!」
隆太「はい!」
ゲン「ラピュ~タ人がおりました!」
隆太「っよ!」
ゲン「ラピュタの人は結晶を!」
隆太「ソレ!」
ゲン「作る技術を持ちました!」
隆太「ヨイ!」
ゲン「お腰につけた飛行石!」
隆太「ひとつ飛ばしてくださいな!」
ゲン「大きな大きな結晶で!」
隆太「はっ!」
ゲン「でっかい島も飛びました! これで終わりでございます!」
ムスビ「ガハハ! 良かったぞ!」パチパチ
隆太「いやー、さすがじゃのう、兄ちゃん!」
シータ(……ラピュタ……)
シータ「……私、まだ皆に言ってないことがあるの……」
ゲン「なんじゃ? 乗り物酔いでもしたんか?」
シータ「ううん……私の家に古い秘密の名前があって……」
シータ「この石を継ぐとき、その名前も私、継いだの……」
ムスビ「わしも本名はムスビじゃないぞ」
隆太「馬鹿たれ、知っとるわいそんなこと!」
シータ「……継いだ名前はリュシータ……」
シータ「リュシータ・トエル・ウル……」
シータ「ラピュタ……」
ゲン「リュシータ? なんじゃか隆太に似とるのぉ」
隆太「ガハハ! わしはコンドー・リュータじゃ!」
ムスビ「ゲン、ラピュタに反応してやらんと……」
キキ――――ッ
ゲン「な、なんじゃぁ? SLが止まったぞ?」
隆太「ぽ、ポリ公が入って来たぞ! わ、わしはヤクザを二人も殺しとるけぇ……」
シータ「二人殺してるの!?」ビクッ
ムスビ「なんでポリ公が……」
ゲン「おそらくヤミ米の取締じゃろう……わしらには関係ないわい」
黒眼鏡「」キョロキョロ
シータ「ッ!」
シータ「さよなら!」ダダダッ
黒眼鏡「! 待てーッ!」
勝子「ど、どうしたんね!?」ダダダッ
シータ「来ちゃダメ――ッ!」
ゲン「おどりゃ、ポリ公もわしらを虐めるんか!」
警察「そこをどけッ!」ガッ
ゲン「」ギギギ
隆太「あ! 兄ちゃん! おどりゃ、よくも兄ちゃんを!」
警察「大人しくせんかッ!」ガシッ
勝子「アーッ! やめて―ッ!」ジタバタ
隆太「おどれら! 離さんかい! シゴウしたるぞ!」ジタバタ
ムスビ「む、無理じゃ隆太! 数が多すぎるわい!」
シータ「ゲーン! 隆太―! 勝子ー! ムスビ―!」ジタバタ
黒眼鏡「お前はこっちに来い!」グイッ
シータ「放して―――ッ!」
***
ゲン「ハッ!」パチリ
隆太「おお! 目を覚ましたわい!」
勝子「もう起きんのじゃないかと心配したんよ!」
ゲン「こ、ここはどこじゃ?」
ムスビ「留置所じゃ。もう何時間も檻の中じゃ」
ゲン「アッ! シータはどこじゃ!? 連れてかれたんか!?」
隆太「わしらも列車のなかで引き離されてしもうたんよ」
ムスビ「拷問を受けとらんにゃええがのぅ……」
ゲン「や、やめぇよ! シータはヒョロヒョロなんじゃ……うぅ……考えただけでも恐ろしいよ……」
隆太「シータの心配ばかりもしとれんぞ。わしらだってどんな目に遭うか……」アワアワ
ゲン「わしは戦時中に戦争反対を唱える人たちが、どんなに残酷な拷問を受けとったかを知っとるんじゃ……。素っ裸にされ、宙づりにされ、木刀で嫌というほど殴られるんじゃ……」ガタガタ
隆太「」ガタガタ
勝子「」ガタガタ
ムスビ「……すっぽんぽんのシータ……///」
隆太「///」
ゲン「///」
勝子「やめんさい! 変なこと言うたらいけんよ!」
ゲン「そ、そうじゃ! 生爪を剥がされ、歯を抜かれ、面白半分に女性器に一升瓶を叩き込まれるんじゃぞ!」ガタガタ
隆太「」ガタガタ
勝子「」ガタガタ
ムスビ「……無理矢理一升瓶を叩き込まれるシータ……///」
隆太「///」
ゲン「///」
勝子「ムスビ! それ以上なんか言うたらウチが許さんよ!」
***
その頃
ムスカ「よく眠れたかな?」
シータ「ゲン達は!? ゲン達に会わせて!」
ムスカ「流行りの服は嫌いですか?」
ムスカ「彼らなら安心したまえ。あれはどう考えてもあり得ない数の死線をくぐり抜けてきている。ちょっとやそっとじゃ死なんよ」
ムスカ「来たまえ。ぜひ見てもらいたいものがあるんだ」
***
ムスカ「入りたまえ」ギイイ
シータ「ハッ!」
シータ「これは……?」
ムスカ「凄まじい破壊力を持つ、ロボットの兵隊だよ」
ムスカ「こいつが空から降ってこなければ誰も信じなかっただろう」
ムスカ「こいつは地上で作られたものではない。この体が金属なのか粘土なのか、それすら我々の科学力では分からないんだ」
***
隆太「なんとか脱出する方法はないかのぅ……」
ムスビ「壁でも掘るか?」
ゲン「掘るにしたってシャベルがないといけんわい」
隆太「ピッキングなんてどうじゃ?」
ゲン「お前出来るんか?」
隆太「政兄ィのとこで色々学んどるけん。まぁ見よう見真似じゃわい」
ゲン「……ほいじゃが針金がないとどうにもならんわい」
隆太「兄ちゃんの学生服の金ボタンを叩いて伸ばすんじゃ」
ゲン「あぁ、それはダメじゃ」
隆太「なんでじゃ?」
ゲン「戦時中日本は金属不足じゃけん、金ボタンは陶器で代用されたんじゃ。わしらも金属のボタンに憧れとったがのぅ……」
隆太「なるへそ! 兄ちゃんはよう知っとるのぅ!」
ゲン「おつむの出来がお前とは違うわい」ガハハ
ムスビ「学の無いわしらには、これが金属なんか粘土なんかも分からんのぅ……」
***
ムスカ「ここを見てくれ」
シータ「!」
ムスカ「おびえることはない。こいつは初めから死んでいる」
シータ「……」
ムスカ「そこだ」
シータ「ハッ!」
ムスカ「同じ印が君の家の古い暖炉にもあった」
ムスカ「この石にもね」チャラッ
ムスカ「こいつは君の手にあるときにしか働かない」
シータ「ああ……」
ムスカ「石は持ち主を守り、いつの日にか天空のラピュタへ帰る時の道しるべとして君に受けつがれたんだ」
シータ「そんな! 私なんにも知りません! 石が欲しいならあげます! 私たちをほっといて!」
ムスカ「君はラピュタを宝島か何かのように考えているのかね?」
ムスカ「ラピュタはかつておそるべき科学力で天空にあり、全地上を支配した恐怖の帝国だったのだ!」
ムスカ「そんなものがまだ空中をさまよっているとしたら、平和にとってどれだけ危険なことか君にもわかるだろう」
ムスカ「私に協力してほしい」
ムスカ「飛行石にラピュタの位置を示させる呪文を、君は知っているはずだ」
シータ「本当に知らないんです! ゲン達に会わせて……」
ムスカ「私は手荒なことはしたくないが、あの少年の運命は君が握っているんだよ」
シータ「えっ?」
ムスカ「君が協力してくれるのなら、あの少年を自由の身にしてやれるんだ」
ムスカ「リュシータ…トエル・ウル・ラピュタ」
シータ「どうしてそれを?」ハッ
ムスカ「ウルはラピュタ語で王。トエルは真。君はラピュタの正当な王位継承者、リュシータ王女だ」
***
ゲン「腹が減ったのぅ……」
隆太「あの時シータの食っとったそばを分けてもらえばよかったわい」グルルル
ムスビ「わしはシータがすすりよったそばを、反対側からすすりたかったわい……」
隆太「///」
ゲン「///」
勝子「またムスビはいらんことを言いよんね! ええ加減、怒るよ!」
ムスビ「もう怒っとるじゃないか……」
警察「出ろ!」ガチャン
ゲン「やッ! シータッ!」
シータ「ゲン! 皆! ケガは!?」
ゲン「わしらは大丈夫じゃ! シータはどうなんじゃ!? 拷問とか受けんかったか!?」
ムスカ「中岡君、君たちを誤解していた。許してくれたまえ」
ゲン「おどりゃ、許せと言われて簡単に許してくれるなら警察なんかいらんわい! 戦争もおきんわい!」バキッ!
ムスカ「グエッ!」ドシャッ!
隆太「何が許してくれたまえじゃ、バーカ! お高くとまりやがって!」ペッ
ムスカ「ほ、本当に誤解していたんだ……! 君たちが海賊からこの子を守るために奮戦してくれたとは知らなかったんだ!」ヨロヨロ
ゲン「シータはおどれらから逃げようとしとったじゃないか! ふざけたことを抜かすな!」バキッ! バキッ!
ムスカ「うぐっ!」ポタッ ポタッ
黒眼鏡「大佐ッ!?」
ムスカ「……大丈夫だ……手荒な真似はしたくなかったが、これは致し方ないようだね……」フラフラ
ムスカ「とりあえず、話を聞いて貰おうか……」チャッ
ゲン「わしをなめるなッ!」パカーン!
ムスカ「ギエエエエ!!」
ゲン「撃鉄も下ろしとらんハジキが怖くて喧嘩なんかできるか! おどれがわしに挑むなんて10年早いんじゃッ!」
ムスカ「」ギギギ
シータ「ゲン! お願いがあるの!」
ゲン「な、なんじゃ?」
シータ「ラピュタのことは忘れて欲しいの」
ゲン「なんじゃ、ラピュタって?」
シータ「」
ムスビ「ほ、ほらゲン! お前が言うとったじゃないか、飛行石の結晶がどうとかの……」
ゲン「お、おお! 忘れとったわい! ほうじゃ、ラピュタじゃ! ほいでシータはラピュタに何かしらの関係があるんじゃった!」
ムスカ「そ、そのことでシータさんには我々に協力してもらうことになったのだよ……。だから君たちh」ハァッハァッ
ゲン「おどれは勝手に抜かすな!」バキッ!
ムスカ「」ギギギ
ゲン「このサングラスの言うとることは本当か!?」
シータ「ほ、本当よ……。協力することにしたの。だから私のことも忘れて」
ゲン「おどりゃ、嘘を抜かすな! 悲しそうな顔をしとるじゃないか! わしらはお前のためにどこにだって一緒に逃げてやるぞ!」
シータ「で、でも協力しなければこの世界が大変なことになるのよ!」
ゲン「馬鹿たれ! ピカよりも恐ろしいものがこの世にあるか!」
ムスカ「き、君の言っているピカとは、原子爆弾のことかね……?」グフッ
ゲン「? ほ、ほうじゃ!」
ムスカ「ラピュタの雷は原子爆弾よりも恐ろしいのだよ……」
ゲン「そのラピュタの雷には放射能があるんか!?」
ムスカ「い、いや……放射能はないと思うが……」
ゲン「ピカの本当の恐ろしさは放射能なんじゃッ! ピカが落ちてから3年も経つというのに、未だにバタバタと人が苦しんで死んでいきよるんじゃぞ!」
ムスカ「す、すまない……今のは言葉の綾だ……」ビクビク
ゲン「昨日まで元気に働きおったやつが、突然血を吐いてぽっくりじゃ! 皆苦しんで死んでいったんじゃ!」
ムスカ「……」
ゲン「わしのお母ちゃんも原爆症でいつ死んでしまうかわからんのじゃぞ! この怖さがおどれに分かるんか!!」
ムスカ「ひっ……!」
ゲン「実際に原爆を喰らったこともない、見たこともないやつが! 簡単に口先だけで恐ろしさを語るなッ!」
ムスカ「しゅ、しゅみまひぇんでひた……」ジョボボボ
ゲン「」ハァッハァッ
隆太「」
勝子「」
ムスビ「」
しーん
シータ「と、とにかく! ラピュタだってとても危険なの! だから……!」
ゲン「ほんならわしらも協力してやるわい」
ムスカ「へ?」
ゲン「協力してやる言うたんじゃ。危険な兵器はこの世から無くさんといけんわい」
ムスカ「だがこれは政府が極秘裏に……」
ゲン「馬鹿たれ! そんな危険な兵器を一つの国が所有したらもっと大変なことになるわい!」
隆太「ほうじゃ! 極秘裏にアメリカがピカを開発した結果がこれじゃ!」
ムスカ「う、うぅ……」
ゲン「ん? さては貴様ら、それが目当てか!」
ムスカ(うぅ……ただの子供にほとんど言い当てられてしまった……)
ゲン「おどれ許さんぞ! 貴様ら大人の勝手で一体どれだけの子供が死んだと思うとるんじゃ!」
隆太「兄ちゃん、コイツやっぱりぶち殺そう!」
ムスカ「……調子に乗るのもそこまでだ」スッ
警察「」ジャキッ
ゲン「!」
隆太「!」
勝子「!」
ムスビ「!」
シータ「!」
ムスカ「拳の強さが力の強さだとでも思っているのかね?」ハァッハァッ
シータ「や、やめて!」
隆太「あ、兄ちゃん……こいつらカービン銃を持っとるぞ……」アワアワ
ゲン「た、ただの日本の警察じゃないわい……。こいつらの国の軍部がバックについとるようじゃ……」ガクガク
ムスビ「あんなので撃たれたら蜂の巣じゃぞ……」ブルブル
勝子「う、ウチら、死ぬるん……?」ビクビク
ムスカ「君たちがここで手を引くなら見逃してやろう。我々としても子どもを殺すのはあまり気持ちのいいものではないからね」
シータ「お願い! ゲン! 私のことは忘れて!」ポロポロ
ゲン「う、うぅ……」
***
ゲン「」トボトボ
隆太「」トボトボ
勝子「」トボトボ
ムスビ「」トボトボ
朴「ゲン! さっき話してた女の子は無事か……?」タッタッ
ゲン「……もう、無理なんじゃ……」
朴「ゲン……」
***
ゲン「はぁ……」トボトボ
ワイワイガヤガヤ
ムスビ「ん? 何の音じゃ?」
隆太「むッ! わしらの家に誰か居るようじゃぞ!」
ゲン「浮浪児が迷い込んだんかもしれんのぅ」
隆太「勝手に上がりやがって!」
ゲン「そう怒るな。困った時はお互い様じゃ」
隆太「こらぁ! 誰に断っt」ギイッ!
ドーラ「ちょっと借りてるよ、坊や」ムシャムシャ
ゲン「おどれら!!」
シャルル「ひぃっ!」ビクッ
ルイ「やっぱこいつらの家はやめようよ、ママ!」ガクガク
アンリ「殺されちゃうよ!」ブルブル
ドーラ「なーに、ちょっと上がらせてもらってるだけじゃないか。食いもんでもあるかと思えば、出てきたのは芋の切れ端だけ」ムシャムシャ
隆太「そ、そんな肉やチーズ、どこから持ってきたんじゃ!?」
ドーラ「あたしらの船ン中だよ。欲しいかい?」ホレッ
隆太「なにっ! くれるんか!? 兄ちゃん、こいつら意外と良いやつらじゃぞ!」
ゲン「馬鹿たれ! 食いもんにつられる奴があるかっ!」ゴチン
ドーラ「それで? 金でも貰って手を引けって言われたのかい? それでも男かい! ええ!?」
ゲン「金ごときで手を引くか! サングラスのおっさんをシゴウしとったらライフルを突きつけられたんじゃ!」
隆太「ついでにおっさんの財布をちょろまかしただけじゃ、馬鹿たれ!」
ルイ(スゲェ……)ビクビク
ドーラ「はん! 結局ノコノコ帰って来てんじゃないかい!」
ゲン「おどりゃ、勝手抜かすな! おどれらだってシータを狙っとるじゃないか!」
ドーラ「あたりまえさね! 海賊が財宝を狙ってどこが悪い!」
ゲン「馬鹿たれ! 人は助け合って生きていかんと死ぬるんじゃ! おどれらは鮫島と一緒じゃ!」
アンリ(誰だ、鮫島って……)
シャルル(っていうかママ相手に一歩も引かないところがスゲェ……)
ジリリリリ
ドーラ「!」バッ
ドーラ「」ツートントントンツートントン
ムスビ(ゲン、何じゃあれは?)
ゲン(おそらく無線を傍受しとるんじゃ……)
ドーラ「ヘヘヘ 暗合を変えたってムダだよ。……飛行船艦を呼びよせたな」
ドーラ「娘を乗せて出発する気だ。急がないと手が出せなくなる」バッ
ドーラ「出かけるよ! いつまで食べてるんだい!」
ルイ「は、はいママ!」
隆太「シータをさらいに行くんか?」
ドーラ「嫁はいらねぇ。飛行石さ」
隆太「ほいじゃがわしが飛行石持っても飛べんかったぞ」
ドーラ「……つまりあの娘がいないとただの石ってことかい」
ゲン「ほうかもしれんわい」
ゲン「ばあさん、わしらも連れてってくれんか? シータを助けたいんじゃ。頼むよ!」
ドーラ「甘ったれんじゃないよ! そういうことは自分の力でやるもんだ」
ゲン「わしらに情けをかけてつかあさい! シータが助かればそれでええんじゃ!」
ドーラ「お前達を連れてって、アタシらに何のメリットがあるんだい」
隆太「兄ちゃんはお経を読むのがうまいぞ!」
ゲン「ほ、ほうじゃ! サングラスのおっさんたちと戦争したらばあさんたちの中にも死ぬる人は出るはずじゃ」
ドーラ「縁起でもない! アタシらはそんなヤワじゃないよ!」
ゲン「財宝とかはどうでもええんじゃ! 頼むよ!」
ルイ「ほぅ、泣かせるねぇ」
ドーラ「お黙りっ!」
ルイ「はい」
ドーラ「その方が娘がいうことを聞くかもしれないね……」ボソッ
ドーラ「二度とここには帰ってこれなくなるよ」
ゲン「馬鹿たれ、帰ってくるわい! お母ちゃんを残すわけにはいかんのじゃ!」
ドーラ「……。まぁ母親を大事にするのはいいことだ。40秒で支度しな!」
隆太「40秒もかからんわい!」
ムスビ「わしら、ピカで皆奪われたんじゃ!」
勝子「鞄に詰める、ナイフもランプもないんよ!」
ゲン「戦争の馬鹿たれー! アメリカの馬鹿たれー!」
隆太「うぅ……」
ゲン「うぅ……」
勝子「うぅ……」
ムスビ「うぅ……」
しーん
ドーラ「こいつをベルトに結びな」ブブブブ
ゲン「変てこな乗り物じゃのう。本当に飛ぶんか?」
ドーラ「お前たちは本船でお待ち!」
***
ドーラ「グズグズしてると夜が明けっちまうよ」ブイーン
隆太「兄ちゃん! この乗り物、案外早いのぅ!」ブイーン
ゲン「ジェットエンジンまでついとるぞ。英米独が第二次大戦の後半でようやくジェットエンジンを搭載した航空機を開発したというのに、大戦後わずか3年で海賊の手に入っとるとは……。わしは科学の進化のスピードが恐ろしいよ」ブルブル
ムスビ「ほいじゃがどう考えてもこの羽は無駄じゃのぅ」ブイーン
ゲン「非効率的すぎじゃ! 何をどう考えたらこんなデザインになるんじゃ!」ブイーン
***
――――――――
―――――――
―――――
シータ(幼)「うあああああ……ひっく……」ポロポロ
おばあさん「それは困ったねえ。そうだシータ、いいこと教えてあげよう」
おばあさん「困った時のおまじない」
シータ(幼)「おまじない?」
おばあさん「そう。古い古い、秘密の言葉」
おばあさん「リテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール」
シータ(幼)「リーテ……ア?」
おばあさん「“われを助けよ、光よ、よみがえれ”という意味なの」
おばあさん「リテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール」
―――――
―――――――
――――――――
シータ「……リテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール……」
ビカアアアアアア
シータ「ああ! あああ!!」
ムスカ「!」ガチャッ
ムスカ「すばらしい……」
***
――――――――
―――――――
―――――
数か月前
ゲン「なまんだぶ、なまんだぶ、なまんだぶ」チンチン
ゲン「ガイコツに天国へ行けるようお経をあげたぞ」チンチン
隆太「あんちゃんはお経がうまいのう。なんだかほんとうにありがたくなって、ええ気持ちじゃ」
ゲン「ガハハハ! 年季がちがうけえのう」
おっさん「!」
おっさん「」ガッ
おっさん「」スッスッ 『怨』
ゲン「おっさん、なんでこんな字を書くんね?」
おっさん「『怨』。うらみじゃ」
おっさん「このガイコツがアメリカ兵に買われてアメリカへ渡ったら、アメリカにいる原爆を落とした奴らを恨み殺してもらいたいんじゃ……!」
おっさん「本当にひどい原爆を落としやがって……!」ワナワナ
おっさん「わしの家族をお化けのように殺しやがって……!」フルフル
おっさん「今もわしらを苦しめている恨みを晴らしてもらいたいんじゃ……! みんな、たのむぞ! たのむぞ!」スッ 『怨』
おっさん「わしゃ戦争さえ無かったら、原爆さえ無かったらと毎日毎日泣き暮らしてきたが……」
おっさん「この恨みはわすれられんわい……!」ツー
ゲン「そ、そうじゃ……。おっさんのいうとうりじゃ」ツー
隆太「……」
ムスビ「……」
―――――
―――――――
――――――――
ゲン「……『怨』……」ブイーン
***
ムスカ「古文書にあった通りだ……。この光こそ聖なる光だ……!」
シータ「聖なる光……?」
ムスカ「」ソーッ つ 飛行石
飛行石「」バチッ!
ムスカ「うわッ!」
ムスカ「どんな呪文だ……? 教えろ、その言葉を!」
***
ロボット「」キュインッ
ロボット「」フィィーーン
警備A「お、おい……」
警備B「ああ……」ガシャン ウィーン
――――それは“あけてはいけない扉”だった――――
ロボット「」プシューッ
ロボット「」ガオオオオオオオオオオオン ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
警備A「」ガシャンッ
――――何故滅びたのかが分からない、殺戮の文明・ラピュタ――――
警備B「……おいおい……嘘だろ……」ガクガクガクガク
――――その圧倒的な科学力で地上の民を支配し、淘汰してきた――――
ロボット「」グググググググググ
――――血の帝国である――――
ロボット「」オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
警備A「あァァァァァァ――――――――――――――ッッ!!!!!!!!!」ダダダダダダダダダダダダダダ
ロボット「」チュインチュインチュインチュイン
ロボット「」シュッ
警備A「あ……あ……」ブチッ ブチッ
警備A「嘘……」ブシューーーッ!!
***
警備C「近づくなァァ――――――――ッ! ねじ切られるぞォ―――――――――――ッ!!」ズガンズガンズガン
警備D「嫌だァああああああ!!!! 痛゛ィいいいいいいいいいいいい!!!!」ギリリリリリリリ
警備E「ひィいいいいい!!!!!!!!!」ゴキンゴキンゴキン
警備F「撤退だァああああああああ!!!! 撤t」
ロボット「」フィィィン
ビカッ!
警備F「熱ッ! ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!!!!」ジュウウウウウウウウウウウウウ
***
ムスカ「凄い……! そうか、その光だ!!」
ムスカ「聖なる光でロボットの封印が解けたのだ!」
シータ「!」
ムスカ「ラピュタへの道が拓けた! 来い!!」グイッ
シータ「嫌ァ――ッ!」
ロボット「」ビュイン ――――Θ>> 吊り橋
ジュウウウウウウウ
ムスカ「うわっ!」
ロボット「」バサッ ズゴゴゴゴゴゴゴゴ
ムスカ「飛ぶ気か!?」
ロボット「」ブシュウウウウウウウウウウ ↑↑↑↑
***
ビュイン ビュイン ビュイン ビュイン ビュイン――――
ッバッ―――――――――ン!!!!!!!!!!!!!!
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!!!!!!!!
ボンボンボンボンボンボン!!!!!!!!!!
ゲン「な、なんじゃアレは!?」ブイーン
ドーラ「どうしたんだい、まるで戦だよ!」
ゲン「行くぞ、ばあさんッ!」
ドーラ「船長とお呼び!」
ルイ「ママ! ゴリアテが動き始めた!」
ドーラ「このまま行くとあいつの弾幕に飛び込んじまう。出直しだ!」
ゲン「ばあさんッ! あそこにシータがおるぞ!」
ドーラ「どこだって?」
ゲン「このまま真っ直ぐ飛んでくれや! 小さな塔の上におるわい!」
ドーラ「女は度胸だ! お前達援護しな!」ブイーン
***
シータ「あぁ……!」
ゲン「シータアアアアアアアアアアア!!」ブイーン
ゲン「わりゃ、大丈夫かァ――ッ!?」
シータ「ゲェ―――――――――ン!!」
ゲン「ばあさん、もっと寄せえや!」
C(ΘΜΘ)つΓ ガリガリッ!
ドーラ「アッ!」
ゲン「何やっとるんじゃ下手くそ! もうええわい! そこで待っとれ!」ダッ!
ルイ(マジかよ!? 飛びやがった!!)ビクッ!
隆太「流石あんちゃんじゃ!」
ゲン「おりゃあっ!」タンッ
シータ「ゲン!」
ゲン「おどりゃ、シータ! わしにしがみつけ! 離したら死ぬるぞ!」
シータ「え!? 嘘!? ちょっと待って!」アワアワ
ゲン「待てるか! 行くぞ! 1、2のそれ!」ポーン
シータ「きゃあああああああああ!!!!!!!!!!」
シャルル「」
ルイ「」
アンリ「」
ゲン「ふんッ!」ダンッ!
ゲン「ばあさん、乗ったぞ!」ブイーン
シータ「」グッタリ
ドーラ「ずらかるよ!」
ルイ「それにしてもあの警備たち、なんで手から紙をぶら下げて歩いてるんだ?」
ドーラ「あたしが知るわけないだろ!」
ゲン「……あれは溶けた皮膚じゃ」
ルイ「」
ゲン「人間の皮膚だって超高温にさらされると、ああやって溶けるんじゃ。恐ろしいのう……ピカの日みたいじゃ……」
シャルル「」
ゲン「正直わしらはラピュタをなめとったわい……。あのロボット、あいつらが始末したようじゃが心配じゃのう……。放射能を撒き散らさんとええんじゃが……」
アンリ「」
***
黒眼鏡「大佐、こちらです」ツカツカ
ムスカ「おお……! 聖なる光を失わない……。この飛行石はラピュタの位置を示している!」
ムスカ「将軍に伝えろ。予定通りラピュタへ出発すると」ファサッ ポロポロ
黒眼鏡「!」
ムスカ「どうした? 私の顔に何かついているか?」ポロポロ
黒眼鏡「い、いえ大佐……。髪が……その……」
ムスカ「髪?」クシャッ ポロポロ
ムスカ「!」バッ! ボロボロボロボロ
ムスカ「な、何だコレは!? 髪がッ! 私の髪が――ッ!!」ボロボロボロボロ
***
シータ「うっうっ……」シクシク
ゲン「おうおう、怖かったのう。でもいつまでも泣いとったらいかんわい。わしらは踏まれてもしっかりと芽を出す、麦にならんといけんのじゃ」トントン
ルイ「いいなぁー……」ブイーン
隆太「よっ! 羨ましいぞあんちゃん!」ヒューヒュー
ゲン「馬鹿たれ! おどりゃ、わしをからかうなッ! ///」
ドーラ「……お前の谷だ」ブイーン
ドーラ「全く……とんでもない無駄足だったよ」
シータ「……」
ゲン「ばあさん、わしらも船に乗せてくれや」
ドーラ「船長といいな! ……飛行石を持たないお前たちを乗せて、何の得があるんだい」
隆太「あんちゃんはお経を読むのが上手いぞ!」
ドーラ「それはもう聞いたよ!」
ゲン「……働くけぇ、乗せてくれや」
シータ「ラピュタの本当の姿を、この目で確かめたいんです」
ドーラ「……ふん! 宝はいらないとか、ラピュタの正体を確かめるとか……。海賊船に乗るには動機が不純だよ」
ルイ「ママ!? 連れてくの!?」
ドーラ「変なマネしたら、海に叩き込むからね!」
ゲン「やってみぃ! 返り討ちにしたるわい」ガハハ
隆太「わしらをなめとると怖いぞ!」ガハハ
ルイ「やったぁー! 掃除洗濯、しなくて済むぞォー!」ブィーン
アンリ「皿洗いもだ!」ブィーン
シャルル「イモの皮むきもな!」ブィーン
シャルル「お前、プディング作れるか?」ブィーン
ゲン「かぼちゃの種を天日干しにした奴なら作れるぞ?」
シャルル(お前に訊いてねーよ……)
ルイ「俺ね、ミンスミートパイが好きなんだ!」
ゲン「馬鹿たれ! 牛肉なんぞ高すぎて手が出せるか!」
ルイ(お前に言ってねーよ……)
アンリ「俺ね! えーと、えーと、何でも食う!」
ゲン「当たり前じゃ! 食えるもんはありがたく頂かんといかんのじゃ!」
アンリ(これも怒られんのかよ……)
ドーラ「いい加減にしな! まったく……いつまでたっても子どもなんだから……」
***
ドーラ「降りな」
隆太「あっ!」グニュ
隆太「この船、布が張ってあるぞ」
ムスビ「意外と貧乏なんじゃのう」
ドーラ「壊すんじゃないよ!」
ゲン「零戦も布でできているぞ。エンジンの弱さを軽さでカバーしとるからのぅ……コックピットすら弾を防いではくれんのじゃ」
隆太「機銃掃射されたらたまらんのう……」
ルイ「グズグズしねえで、せまいんだから」
***
機関部
ゲン「すごいエンジンじゃのぅ……」
隆太「金物屋に売ったらええ金になりそうじゃ」
ルイ「どこ行っちゃったのかな……」
ルイ「じっちゃん! じっちゃん!」
モトロ「」ヒョコッ
ルイ「じっちゃん! ほら、欲しがっていた助手だ!」
モトロ「でっけえ声を出すなッ! 聞こえとるわい」スッ
モトロ「」クイックイッ
ルイ「行けよ。ママより怖いんだ。気ぃつけろ」ボソッ
ゲン「わしのお父ちゃんの方が何倍も怖いわい」
隆太「ガハハ! 昭あんちゃんも忘れたらいかんぞ!」
ゲン「うぅ……ラピュタから帰ったら『おどりゃ、どこを遊び歩いていたんじゃ!』とか言って、また殴られるのぅ……」ブルブル
ルイ(こいつらより強ぇのがまだいるのかよ……)ビクビク
モトロ「狭くて手が入らねえ」
ゲン「すまんがおっさん、わしらは機械の事なんかさっぱり分からんぞ」
モトロ「は?」
隆太「わしらはそういった仕事をしたことがないけぇのぅ」
モトロ「じゃ、じゃあテメエらは何が出来るんだ?」
隆太「ええと、スリに殺しに賭場荒らしじゃのぅ」
ムスビ「わしは靴磨きをようしとるぞ」
ゲン「それからクソ取りもやったし人骨をアメリカ兵に売ったし、お経で稼いだこともあるのぅ」
モトロ(こ、こいつら全ッ然使えねえッ……!)
***
ドーラ「ほとんど真東だね? 飛行石の光がさしたのは。まちがいないだろうね?」
シータ「私のいた塔から日の出が見えました。今は最後の草刈りの季節だから、日の出は真東よりちょっと南へ動いています」
シータ「光は 日の出た丘の左はしをさしたから……」
ドーラ「いい答えだ」
勝子「シータは頭が良いんね!」
シータ「そ、そんなこと///」
ドーラ「今からゴリアテを追跡するよ! 貿易風を捕まえて、明日には接触だ!」
ドーラ「ゴリアテを見つけた者には金貨10枚出すよ!」キーン
***
隆太「あんちゃん、あのババアが金貨10枚出すと言っとるぞ?」
ゲン「馬鹿たれ、そんな美味い話があるか! わしらは銅を集めるのにも命懸けで盗みに行かんといけんのだぞ!」
ムスビ「ほうじゃのう……」
モトロ「テメエら! サボっとらんでそこの計器をチェックしてろ!」
隆太「あいあい! かしこまったでござる!」
ゲン「おさるのおケツは真っ赤でござる!」
ムスビ「ガハハ!」
モトロ(くそぉ、本当に使えねえ……)
***
ドーラ「……そのなりじゃ何にも出来やしないね。お前達、これを着な!」ボフッ
シータ(うわぁ、おっきい……)
勝子「これじゃぶかぶかで動けんよ。おばさん、この船にミシンはあるんね?」
ドーラ「一応あるけど、何する気だい?」
勝子「仕立て直すんよ。ウチは服を縫えるけぇ」
ドーラ(なかなか有能だね、この子たち……)ホウ
***
ルイ「おーい、じっちゃん! 調子はどうだ?」
モトロ「」カチャカチャ
ゲン「」カキカキ
ルイ「あれ、何やってんだ?」
モトロ「コイツ、絵は得意だっつうもんだからワシの肖像画を描かせてんだ! 残りの2人は床を磨かせてるよ」
ルイ「へー……絵ねぇ……」
ゲン「おっさん、出来たぞ!」バッ
モトロ「おう、早ぇな! 見せてみろ!」
ゲン「パンパカパーン! 中岡元作、ハラ・モトロの肖像でありまーす!」
モトロ「」
ゲン「ん? どうしたおっさん? 感動して言葉もでんか?」
モトロ「馬鹿やろう! なんで手足が6本もあるんだッ! 釜爺みたいになってんじゃねえかッ!」
ゲン「そ、そんなに怒るなや……。肖像画は写真と違うんじゃ……」
モトロ「見たとおりに描かんかいッ!」
ルイ(めっちゃ似てる!)プクク
***
夕食
ルイ「こりゃうまいな!」ガツガツ
シャルル「たまんねぇ!」ガツガツ
隆太「ギャー! おいちいおいちい! 美味いのぅ! 生きがいを感じるのぅ!」ガツガツ
ゲン「りゅ、隆太! ほ、本物の牛肉じゃぞ! 闇市でもなかなか手に入らんぞ!」ムシャムシャ
ムスビ「それに見てみい、このエビ! 死体の肉を食うて丸々太っとったエビより数段でかいぞ!」バリッ バリッ
ドーラファミリー(う、うるせえなコイツら……)ズーン
シータ「あの、おかわりあるから……」
ルイ「おかわり!」
シャルル「おかわり!」
アンリ「おかわり!」
隆太「おかわりまであるんか!? わしらは幸せじゃ!」
ゲン「……」
ムスビ「どうした、ゲン? おかわりせんのか?」
ゲン「わ、わしはええよ……。入れ物をもらってお母ちゃんに持っていくわい……」
隆太「……わしらも出来ることならお母ちゃんに食べさせてあげたいわい……」
ムスビ「……」
勝子「うわーん! お父ちゃーん! お母ちゃーん!」
隆太「な、泣くなや勝子……」
ゲン「」
隆太「」
ムスビ「」
しーん
ドーラファミリー(うぅ……食いづれえ……)ズーン
***
深夜
ルイ「おい、起きろ。当直の時間だ」
ゲン「……わしゃ許さんぞ……アメリカを許さんぞ……ピカを許さんぞ……」zzz
隆太「……ノロ……しっかりぶっ殺してこい……」zzz
ムスビ「……こ、これはビタミン剤じゃ……」zzz
ルイ「起きろって」ゲシッ
ゲン「?」ムニャ
隆太「?」
ムスビ「……た、頼むけぇ注射をくれや……」zzz
ルイ「起きねえか!」ゴチン
ムスビ「!」
ルイ「持ってけ、寒いぞ」つ毛布
ゲン「見張りか?」
ルイ「ああ。お前は上だ」
シータ「!」
勝子「!」
***
アンリ「寒ぃ~」ブルブル
ゲン「わりゃ、交代じゃ」
アンリ「あ、ありがてぇ~!」
隆太「ほいじゃが、本当に冷えるのぅ~」ガクガク
ムスビ「せっかく気持ちのええ夢をみておったのに……」ブルブル
***
シータ「はぁっはぁっ」カツンカツン
勝子「うんせうんせ」カツンカツン
ゲン「お? シータと勝子じゃ」
隆太「どうした? 眠れんのか?」
ムスビ「わしが添い寝してやろうか?」
ゲン「///」
隆太「///」
勝子「またムスビは変なこと言うて!」
シータ「うわぁ、きれい……」
シータ「うぅ!」ブルッ
ゲン「寒いんか?」
隆太「毛布一枚じゃ5人も包めんぞ」
ムスビ「おしくらまんじゅうでもするか……」
シータ「あ、私それ知ってるわ。『おしくらまんじゅう、押されて泣くな』って歌いながら押し合いっこするのよね」
ゲン「わしらはちょっと違う歌を歌いながらやるんじゃ」
シータ「違う歌?」
ゲン「せーの!」
ゲン「♪ 馬鹿が行く行く 女郎買いに」ウンセウンセ
隆太「♪ 青い顔して 朝帰り」ウンセウンセ
ムスビ「♪ 土産にもらった 淋病で」ウンセウンセ
ゲ隆ム「♪ 痛い痛いと 泣きました」ウンセウンセ
ゲン「どうじゃ、シータ? 覚えたか?」
シータ「///」
勝子「ゲンっ! 何て下品な歌を歌いよるんね!」
シータ「……ゲン」
ゲン「なんじゃ?」
シータ「私、怖くてたまらないの。本当はラピュタなんかちっとも行きたくない」
シータ「ゴリアテなんか見つからなければいいのにって思ってる」
ゲン「じゃ、じゃあ……」
シータ「ううん 光のさした方向は本当。でも……」
ゲン「あのロボットか? あれが太平洋戦争中に動いとれば、負けることも無かったのにのぅ」
隆太「ピカを落とされることも無かったわい」
ムスビ「惜しいことをしたよ……」
シータ「おばあさんに教わったおまじないであんなことがおこるなんて……」
シータ「私、他にも沢山おまじないを教わったわ」
シータ「もの探しや病気をなおすのや……」
シータ「……絶対使っちゃいけない言葉もあるの……」
隆太「絶対使っちゃいけない言葉?」
ゲン「シータ、そういう考えはいかんぞ。危険じゃ」
シータ「え? どうして?」
ゲン「戦時中の治安維持法と同じじゃ。国は国民に戦争に協力させるため、まず言論の自由を奪ったんじゃ」
シータ「あ、いや、そう意味じゃ……」
ゲン「わしのお父ちゃんも絶対に使うちゃいけん言葉、『戦争反対』を唱えて特高に捕まったんじゃ。顔じゅう痣だらけで帰って来たよ……」
シータ「」
シータ「……と、とにかくあの石は外に持ち出しちゃいけない物だったのよ!」
シータ「だからいつも暖炉の穴に隠してあって、結婚式にしかつけなかったんだわ!」
隆太「アホ! そりゃ宝の持ち腐れじゃ!」
ムスビ「要らんのならわしらにくれや」
勝子「隆太もムスビも、シータの話を邪魔しちゃいけんよ!」
シータ「あんな石、早く捨ててしまえば良かった……」
ゲン「それは違うわい」
シータ「!?」
ゲン「わしらはあの石のおかげでシータに会うたんじゃないか」
ゲン「石を捨てたってラピュタは無くならんわい。それにおどれはアメリカの爆撃機がどれくらいの高度で飛べるか知らんのか?」
ゲン「いずれアメリカに見つかるわい……。見つかったらおしまいじゃ……」
ゲン「ラピュタに関わった奴はあのサングラスのおっさんも含めて、アメリカに捕まってひどい拷問を受けることになるんじゃ……」
シータ「でもゲン達を海賊にしたくないッ!」
隆太「ガハハ! 海賊にはならんわい! ああいった奴らはわしらのような子供をなんと呼んどるか知っとるか?」
シータ「?」
隆太「……鉄砲玉じゃ……」
ムスビ「勢いよく飛び出したが最後、絶対戻って来ん鉄砲玉じゃ……」
隆太「口先では幹部にしてやるとか上手いこと言っておいて、結局わしらを利用するだけなんじゃ……」
ムスビ「……ドングリ……」
ゲン「」
隆太「」
勝子「」
ムスビ「」
しーん
***
ドーラ(そんな風に呼んでないよッ!)
ヤッ!? ナンジャアレハ!
ドーラ「!」
ゴリアテジャ! マシタニオルゾ!
ドーラ「面舵逃げろォ!」
ゴリアテ「」ドンッ ドンッ ――――Θ))
***
将軍「ムスカッ! 何故追わんッ!? 逃がすと厄介だぞ!!」
ムスカ「雲の中では無駄骨です。手は打ちます」
ムスカ「どうせ奴らは遠くへは逃げません。航海は極めて順調ですよ」
将軍(ムスカの奴……いったい何を企んでいるんだ? 突然ぼんぼんのついたニット帽をかぶりだすし……)
ムスカ(ラピュタの科学力なら、私の死に絶えた毛根を甦らすことも可能なはずだ……)
ムスカ(放射能めッ! 許せんッ!!)ポロポロ
ドーラ「予想より針路が北だった……」
ドーラ「ゲン、時間がない。よく聞きな」
ドーラ「ゴリアテに振りきられたらおしまいだ。お前は目がいい。見張り台だけ雲から出して追跡する」
ゲン「どうするんじゃ?」
ドーラ「その見張り台は凧になる。中にハンドルがあるだろう」
ゲン「あったぞ」
ドーラ「時計まわりに回しな」
ゲン「うんせうんせ」キュルキュル
ドーラ「フックがかかったら上のハンドルを回せば翼がひらく」
隆太「これじゃこれじゃ」グルングルン
ドーラ「ひらいたらワイヤーを張りな。操縦は体でおぼえるんだ!」
ドーラ「シータと勝子、そこにいるね」
シータ「はい」
勝子「なんね?」
ドーラ「お前たちは戻っておいで」
シータ「何故?」
ドーラ「! 何故ってお前達は女の子だよ?」
シータ「あら、おばさまだって女よ」
隆太「あれはもう女じゃないわい。図体のでかいババアじゃ」ガハハ
ドーラ「隆太ッ! 聞こえてるよッ!」
シータ「それにやれお国のためだ、バンザイバンザイと言って夫や息子を喜んで戦場へ送り出す女にも責任の一端は……」
ドーラ「誰だいッ! シータにそういう思想を植え付けたのはッ!」クワッ
シータ「それから私、山育ちで眼が良いの。ゲンもそうしろって」
ドーラ「ハッハッハッハ! ……上がったら伝声菅は使えないよ。中に電話があるから……」
ジリリリ
ドーラ「!」ガチャッ
オサルノオケツハマッカデゴザル
ドーラ「ゲンッ! イタズラに使うんじゃないよッ!」
ゲン「ガハハ! 言うたった! 言うたった!」
***
ゲン「ばあさん、でかい雲が近づいて来るぞ」
ドーラ「雲?」
ゲン「……ああ、大きな雲じゃ……。大きな……」
ルイ(あ、また原子爆弾の話になるぞコレ……)
ゲン「……思い出すのぅ……8月6日の青空に浮かぶ大きなキノコ雲を……ッ!」
ルイ(そら来た……)ハァー
ドーラ「そ、それはきっと龍の巣だよ! 入った途端バラバラになっちまう!」アセアセ
シャルル(ママ、うまい! 何とか話題を逸らした!)ナイスッ
ゲン「そうじゃ……。バラバラになったガラスの破片が体中に突き刺さり、鮮血で真っ赤に染まった人間を、わしは何人も見てきたんじゃ……」
ルイ(そしてこいつは上手いこと話を戻した!)クソッ!
***
龍の巣・内部
ビュオオオオオオオオオオオオオオオオ
シータ「キャアアアア!!」
ゴオオオオオオオオオオオオ
ゲン「……そして黒い雨が降って来たんじゃ……放射能をたっぷり含んだ……黒い雨が……ッ!」
隆太「あんちゃん! さすがに今はピカの日を振り返っとる場合じゃないぞ!」アレー
ムスビ「ほうじゃ! だいたいもう、電話も向こうにつながっとらんじゃろ!」ヒー
勝子「シータ! 皆! この紐を体に結ぶんよッ!」
ビュオオオオオオオオオオオオオ
***
ラピュタ
ピチチチ チュンチュン
ゲン「う、うーん……」
ゲン「……ハッ!」
ゲン「! ど、どこじゃここは!?」
シータ「あ、ゲンが気がついたわ!」
隆太「あんちゃん! 早う起きて見てみい! 凄いぞ!」
ムスビ「とうとうわしらはラピュタに辿り着いたんじゃ!」
勝子「み、みんな急かしたらいけんよ。頭を打っとるかもしれんけん」
ゲン「わ、わしなら大丈夫じゃ……。それにしても……スゴイ景色じゃのぅ……。雲が下に見えるぞ」
シータ「本当にこんな島が空に浮かんでいるなんて……。信じられないわ」
ムスビ「まるで天国にでも来てしまったみたいじゃのう」
シータ「……それよりおばさま達は大丈夫かしら……?」
隆太「ババアたちはきっと、もっと高いところで安らかに眠っとるわい」ガハハ
ゲン「あのばあさんなら問題ないじゃろう……。とりあえず探しに行くか」
ズシーン ズシーン
ムスビ「やッ!? 留置所で暴れ回っとったロボットがやって来たぞ!」
ロボット「」ズシーン ズシーン
勝子「きっとシータを出迎えに来たんよ」
シータ「でも私、飛行石持ってないわ」
隆太「こんな足場の悪いところをノコノコやってくるとはアホじゃのう……」
ゲン「まったくじゃ」ドカッ
ロボット「」ヒュー ↓↓↓↓
シータ「」
ゲン「落ちおったぞ」
隆太「あっけないのう」
シータ「」
***
ムスビ「それにしてもラピュタは広いわい。もうかなり歩いとるぞ」テクテク
勝子「本当におばさんたちはどこ行ったんね……」テクテク
シータ「あっ! 皆見て! 町があるわ!」
ゲン「本当じゃ! かなり栄えとったみたいだぞ」
隆太「それにあんちゃん、空が見えるぞ? 建物の中のはずなのにのう」
シータ「こんなに立派な町がどうして滅んだのかしら……。科学だってずっと進んでいたのに……」
ゲン「……おそらく進み過ぎたんじゃ……。進み過ぎた科学は、今度はおどれ自信を滅ぼしてしまうんじゃ……」
ムスビ「皮肉なもんよのう……。生活を良くするはずの科学が、逆に人を殺してしまうんじゃからのう……」
***
ゲン「それにしても困ったのう……。ばあさんたちが見つからんことにはわしら帰れんぞ」テクテク
ドッガ――――――ッン!!!!!!!!!!!!!!!!!
隆太「な、なんじゃ今の爆音は!?」
ムスビ「こっちじゃ!!」ダッ
***
ゲン「裏側は崩れとったんか……」スッ
隆太「アッ! 見てみい! タイガーモス号がやられとるぞ!」
シータ「おばさま達、無事だといいんだけど……」
ムスビ「む! シータ、あそこじゃ!」ビッ
シータ「ああっ! 皆捕まってるわ!」
ゲン「そう言えば海賊は捕まったらすぐ縛り首になると聞いたことがあるぞ」
シータ「大変ッ!」
隆太「当然と言えば当然じゃ。今まで略奪ばかりしとったんじゃ。殺されても文句は言えんわい」
ムスビ「ほうじゃのう」
シータ「」
勝子「皆何を言っとるんね! 早う助けんと取り返しがつかんよッ!」
ゲン「わしらもあのばあさんらに助けて貰うたんじゃ。恩を返さんといけんわい」ダッ
***
兵士「将軍ッ! 街の突入口が開きました」
兵士「ご覧ください、中は宝の山です!」ジャラッ
将軍「な、なんと……!」
ルイ「すげえ……」
将軍「フフフ、どうだ、欲しいか?」
将軍「お前らにはたっぷり縄をくれてやる」
将軍「本国にラピュタ発見の報告をしたか?」
ムスカ「これからです」
将軍「せいぜい難しい暗号を組むんだな!」
兵士「うほほ」ウンセウンセ
兵士「すげえや!」ウンセウンセ
将軍「コラーッ! ネコババするなぁーッ!!」
ムスカ「馬鹿どもにはいい目くらましだ」ツカツカ
***
ゲン「ばあさんのところまではどうやって行ったもんかのう」ウーン
シータ「見て、ゲン」
ゲン「やッ!?」
兵士「せーのッ!」ドゴーン
兵士「運び出せぇッ!」
兵士「発破!」カチッ
ッバーーーーーーーーーーーーーッン!!!!!
シータ「ひどい……」
ゲン「凄いのう……。宝の山じゃ……」ゴクリ
隆太「あんちゃん、ババアには宝なんか要らんと言うてしもうたが、やっぱり貰おう!」
ゲン「あれだけあればお母ちゃんにいい薬が買えるわい」
ムスビ「ほいじゃがアイツらが居るとどうにもならんのう……」
シータ「」
ゲン「そのうち隙をうかがって、わしらも手に入れてやるわい。アイツらだけにええ思いはさせんぞ……!」
隆太「それにあのサングラスのおっさんも気になるのう」
ゲン「あのおっさん、ラピュタを軍事利用するつもりじゃけん、放ってはおけんわい」
ゲン「よく分からんが、あの飛行石が鍵じゃ。何とか取り返さんと……」
隆太「スリなら任しとけ!」
シータ「で、でも飛行石を取り返しても私、どうしたらいいか……」
シータ「ハッ! あの言葉……」
ゲン「そう、あの言葉……『怨』じゃ……」
シータ「何それ……」
隆太「違うみたいじゃのう、あんちゃん……」
***
ゲン「……下からまわれそうじゃ」スッ
ムスビ「ほいじゃが結構な幅があるぞ?」
隆太「ひとまずわしが跳ぶわい」
勝子「隆太、危ないよッ!」
隆太「こんなもん、賭場荒らしに比べたら屁の河童よ!」
隆太「東京ブギウギ!」タッタッタ
隆太「ヤ――ッ!!」バーンッ!
隆太「ふんッ!」ダンッ
隆太「ほれ見い! 何ともないぞ!」
シータ(も、もはや人の身体能力じゃない……)
ゲン「ガハハハ! 鐘が鳴ります、キンコンカ~ン! ハイハイ!」ピョーン
ゲン「おりゃ」ダンッ
シータ(ゲンに至っては助走もつけずに……!)ビクッ
ゴゴゴゴッ
ゲン「やッ!? 崩れるぞッ!」ゲッ!
隆太「うわあい! あんちゃんの馬鹿たれ! あんちゃんのせいだぞ!」ガシッ
ゲン「長い年月が経ってもろくなっとったんじゃ! 落ちたら死ぬるぞッ!」ガシッ
シータ「ああッ!」
シータ(神様……ッ!)
ゲン「うんせうんせ」ヒョイッ
隆太「ふぅ、危なかったわい」ドッコイセ
シータ「」
***
ムスカ「コレだ……」ツカツカ つ飛行石
壁「」フィン
黒眼鏡「おおッ!」
***
ゲン「しかし困ったぞ。シータやムスビや勝子と引き離されてしもうた……」
隆太「おーい! おどれらは別の道を探せや!」
シータ「!」
***
オーイ! オドレラハベツノミチヲサガセヤ!
黒眼鏡「! アイツだッ!」スチャッ
黒眼鏡「」ズガーーーーン
ゲン「ひっ! 撃ってきやがったぞ!」
隆太「おどれ!」ズガーーン ズガーーン
シータ「えいッ!」ドカッ
黒眼鏡「ぐふっ!」ドサッ
隆太「シータッ!」
ゲン「しもうたッ!」
兵士「大佐ッ! 何事ですかッ!」タタタッ
ムスカ「海賊の残りだ。もう2匹、危険なのが君らの足元に潜んでいるぞ」
兵士「下だッ」ズガガガガガガガガ
ムスカ「さて、王女様はわたしに着いて来て貰おうか。コイツらは海賊共と縛っておけ」
黒眼鏡「ハッ!」
黒眼鏡「来いッ!」グイッ
ムスビ「痛た! 髪を引っ張るなや!」
勝子「痛い痛い、やめて! 髪は女の命なんよ!」
シータ「ムスビッ! 勝子ッ!」
ムスビ「そんなに引っ張ったら禿げてしまうわい!」
ムスカ「」ポロポロ
ムスビ「な、なんじゃ? おっさん泣いとるんか?」
黒眼鏡「黙れッ! 大佐にとって今は『髪』や『禿げ』は禁句なのだッ!」
ムスカ「だ、大丈夫だ! 私の髪は亡びぬ! 何度だって甦るさ!」ゴシゴシ
***
黒眼鏡「逃げ出そうとするなよッ!」ギュッ
ムスビ「うぅ……」ジタバタ
勝子「動けんよ……」ジタバタ
ドーラ「あんたらも捕まったんだね……。シータは?」
ムスビ「サングラスでボンボンのついたニット帽のおっさんに連れてかれたわい……」
シャルル「すげえシュールな光景だな、それ」
ルイ「シータ……。心配だなぁ……」
勝子「ほんでゲンと隆太が銃で追いかけ回されとるんよ……」
ドーラファミリー(あの二人は絶対心配ねえよ……)
***
兵士「手投げ弾を持ってこい!」
ルイ(ゲン達だな……)
兵士「」ピンッ ポイッ
ドカ―――――ッン!!!!!
***
ボフンッ!
ドーラ「!」
ルイ「なに? あ!」
ムスビ「ガハハ! ばあさん、盛大な屁をこくのう! わしらも芋ばっか食うとるけえ、よう屁が出るんじゃ」ブー
ドーラ「ちがうわっ! ///」
ドーラ「ん?」
ガラガラ
ゲン「ようばあさん、大丈夫か?」ヨッコイセ
隆太「あいつらわしらに向けて爆弾なんか投げやがって、死ぬるかと思ったわい」ウンセウンセ
勝子「ゲンッ! 隆太ッ! 生きとったんね!」
ゲン「当たり前じゃ。そう簡単に死ぬるか!」ガハハ
ルイ(全然驚きも感動もねえな……。予想通りすぎて……)
隆太「縄を切るけえ、ババアらは早よ逃げえや。上手く逃げるんじゃぞ」バチンッ シュッ
ゲン「それから勝子とムスビもばあさん達と一緒に逃げるんじゃ。シータはわしと隆太で助けるわい」
隆太「ほれじゃあのッ!」
ドーラ「お待ちッ」
ゲン「なんじゃあばあさん? 時間が無いんじゃぞ?」セカセカ
ドーラ「これをもってお行き」スッ つ小型バズーカ
隆太「……助かるわい。もう弾が一発しか残っとらんかったんじゃ」
ムスビ「それからゲンッ! あのサングラスには『髪』とか『禿げ』とか言う言葉が効くみたいじゃぞッ!」
ゲン「? よう分からんが、覚えとくわい」
***
将軍「なんだと!? ムスカが無線機を全部ぶっこわしただと!!」
兵士「ハッ! 艦内が手うすになった隙をつかれました! 当直の兵 数名が重傷です!」
兵士「大佐は下部の黒い半球体の中です。兵が目撃しました」
将軍「青二才め……本性をあらわしおったな……」
将軍「兵をあつめろ! スパイ狩りだ!」
兵士「小隊あつまれ!」
兵士「こら! 早くしろ!」
兵士「抵抗する場合は射殺してかまわん!」
兵士「入り口をさがせ!」
***
黒眼鏡「大佐、ここはいったい…」
ムスカ「ラピュタの中枢だ。上の城などガラクタにすぎん」
ムスカ「ラピュタの科学は。すべてここに結晶しているのだ」
壁「」フィン
ムスカ「お前たちはここで待て」
黒眼鏡「大佐!」
壁「」フィン
黒眼鏡「大佐! 大佐!」ドンドン
***
タイサッ! タイサッ! ドンドン!
ムスカ「この先は王族しか入れない聖域なのだ」シュイーン
タイサッ! オボウシガオチマシタッ! タイサッ! ドンドン!
ムスカ「」
***
黒眼鏡「大佐っ! 大佐っ!」ドンドン
壁「」フィン
ムスカ「」
黒眼鏡「これを!」スッ つボンボン付ニット
ムスカ「すまない」パシッ
壁「」フィン
***
ムスカ「……つくづく私はいい部下を持ったものだ……」
シータ「?」
***
シュイン
ムスカ「なんだ、コレはッ!」ビクッ
ムスカ「ぬ、抜け毛が床一面にビッシリと……」カサカサ
ムスカ「……くッ! 一段落したら焼き払ってやる……!」
シータ「……」
ムスカ「来たまえ。こっちだ」
ムスカ「クソッ! ここにも抜け毛がッ!」カサカサ
ムスカ「あったぞ! コレだ!」
ムスカ「見たまえ この巨大な飛行石を! これこそ ラピュタの力の根源なのだ!」
ムスカ「……すばらしい。700年もの間、王の帰りを待っていたのだ!」
シータ「700年……?」
ムスカ「君の一族はそんなことも忘れてしまったのかね?」
ムスカ「! 黒い石だ! 伝承の通りだ!」カサカサ
ムスカ「ええい! 尋常じゃないぞこの毛は!」パッパッ
ムスカ「読める……! 読めるぞッ!!」
シータ「あなたは一体、誰!?」
ムスカ「私も古い秘密の名前を持っているんだよ、リュシータ……」
シータ「!」
ムスカ「私の名前はロムスカ・パロ・ウル……」
ムスカ「ラヒュタ」ガリッ
ムスカ「ラピュタ」
シータ「えッ!!」
ムスカ「君の一族と私の一族はもともと一つの王家だったのだ」
ムスカ「地上に降りた時 二つに分かれたがね」
***
ドカ―――――ンッ!!!!!!
兵士「ヒビひとつ入ってないぞ……」
兵士「ただの石じゃないな」
将軍「爆薬をありったけ仕掛けろ!」
―そんなことをせずとも入れますよ―
将軍「ムスカ! どこにいるッ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!!!!!!
兵士「うわ――――ッ!!」
入口「」ズシーン
将軍「」ダラダラ
―さあ、何をためらうのです―
―中へお進みください、閣下―
将軍「……ええいッ! 来いッ!」
兵士「閣下に続けぇッ!!」
ワ―――ッ!!!!!!
将軍「な、な、何だココはッ!? ムスカッ! 出てこいッ!!」タタタッ
ムスカ「お静かに」ビュイン
将軍「何のマネだッ!!」
ムスカ「言葉を慎みたまえ。君はラピュタ王の前にいるのだ」
将軍「貴様、正気かッ!?」
***
隆太「あんちゃん、あのおっさん狂っとるぞ。かわいそうにのう……」
ゲン「ほうじゃのう……。悪いもんでも拾うて食うたんじゃろう……」
隆太「それからあのおっさんの隣にシータがおるぞ」
ゲン「早く助けてやらんと、本当に殺されかねんわい」
***
ムスカ「これから王国の復活を祝って、諸君にラピュタの力を見せてやろうと思ってね」
ウイイイイ―――――――ン
将軍「!」
ムスカ「見せてあげようッ! ラピュタの雷をッ!」ブンッ
バチチチチチチチチチチチチチチチチ……
ビュンッ!!!!!!!!!
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!!!!!!!!!!
ゲン「ッ!」
隆太「ッ!」
将軍「ッ!」
シータ「ッ!」
ムスカ「ソドムとゴモラを滅ぼした、天の火だよ」
ムスカ「ラーマヤーナではインドラの矢とも伝えているがね……」
ムスカ「全世界は再びラピュタのもとにひれ伏すことになるだろう」
ゲン「や……やりやがった……」ワナワナ
隆太「やりやがったわい……。本当にやりやがったわい……」フルフル
ゲン「こ……この……馬鹿たれが……! 馬鹿たれが……!」ブルブルブルブル
隆太「殺したる……殺したるぞ……!」ワナワナワナワナ
将軍「すばらしい! ムスカくん!」
将軍「君は英雄だ! 大変な功績だ!」
将軍「」スチャッ
ズガンッ! ズガンッ! ズガンズガンズガン! カチッカチッ!
ムスカ「……」
ムスカ「君のアホ面には心底うんざりさせられる」スッ
シータ「!」ガッ
ムスカ「むッ!」
シータ「みんな逃げて―――ッ!!」
ムスカ「ふんッ!」ガッ
シータ「きゃああッ!!」
ムスカ「死ねええええええええええッ!!!!!!!!!!」ブンッ
あああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!!!!!
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ロボット「」ガシン
ああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!
ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!!!!!!!!!!!!!
助けてええええええええええええええええええッ!!!!!!!!!!!!!!
***
ムスカ「ふんッ!」バシッ
シータ「ああッ!」ドサッ
ムスカ「あまり私を怒らせない方がいいぞ。当分ここに二人で住むのだからな」
ゴリアテ「」ブブブブブブブブブ
ムスカ「ハハハ! さっさと逃げればいいものを」
ゴリアテ「」ドゴンッ! ドゴンッ!
ムスカ「ハハハ! 私と戦うつもりか?」
***
ウイイイイーーーーーーーン
ゲン「しめたぞッ! ロボットの射出口じゃッ!」ダッ
隆太「これなら内部に入れるわい! おっさんを殺せるわいッ!」スタタタタタタタ
ゲン「あの一発の光で何人が死んだんじゃ……! 何で同じ過ちを繰り返すんじゃ……!」スタタタタ ポロポロ
ゲン「うぅ……。醜いのう……情けないのう……!」ズガガガガガ ポロポロ
***
わああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!
ムスカ「素晴らしい……ッ! 最高のショーだとは思わんかねッ!?」カサカサ
ムスカ「ほう……」カサカサカサ
ムスカ「見ろッ! 人がゴミのようだッ!!」カサカサカサカサ
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ……
ムスカ「あああッ! 鬱陶しいッ!! このゴミ(抜け毛)がああああああッ!!!」ズガンッ ズガンッ
シータ「!」ガッ パシッ! つ飛行石
ムスカ「! 何をするッ!!」
シータ「ハアッ! ハアッ!」ダッ
ムスカ「返したまえ、いい子だから」ツカツカ
ムスカ「スリなんて誰が教えたんだね……?」ツカツカ
――――――――――
――――――――
――――――
シータ回想シーン
隆太「岡内組ではいろんな用事をして忙しかったよ」
シータ「どんな用事?」
隆太「う、うん……。バクチの見張りや……」
隆太(大きい声じゃ言えんがのう……。チャリンコもやっとったんよ)ボソッ
シータ「チャリンコ? なあに、それ?」
隆太「知らんのか? 調子狂うのう……」
隆太「」サッ
隆太「シータ、何か無くなっていないか探してみいや」
シータ「えッ?」
シータ「ああッ! 私のカチューシャがッ!!」
隆太「えへへへ」
ゲン「馬鹿たれ! 堅気の女の子にくだらんことを教えるなッ!」ゴチン
隆太「ぎゃいん!」
――――――
――――――――
――――――――――
シータ「はあッ! はあッ!」タッタッタ
ムスカ「ハハハハハ! どこへ行こうと言うのかね?」カツカツ
ゲン「シータァ!!! わりゃ、どこじゃああああああ!!!!!!!!!」ズガガガガガガ
隆太「居るんか居らんのかッ! 居らんのなら居らんと返事せぇやァッ!!!!!」ズガガガガガガ
ムスカ「!!」
シータ「ゲ――――ンッ!!! 隆太ァ―――――――――ッ!!!」
ゲン「シ――――――タァ――――――――――ッ!!!!!!!!!!!!!!」
ムスカ「ッ!!!!!」
***
そのときムスカの脳裏によぎったのは――紛れもない敗北――
避けられない己の“死”
当然すべき『命乞い』
――しかし――
世界を支配する力を持つラピュタ王に君臨しているというカリソメの現状が
計算高い彼の頭を鈍らせた
***
シータ「ゲンッ!」
ゲン「今行くぞッ! 隆太ッ!!」
隆太「ちょっと下っとれ! 根っこに穴をあけるけぇッ!」ガシャンッ
ドゴンッ!!!
ゲン「クソォ、手が通りぬけるほどにしか開かんかったわい! もう一発じゃッ!!」
シータ「待って! それよりもこの石を海に捨てて! 早くッ!」
シータ「あッ!!」ドサッ
ゲン「シータッ!?」
ムスカのリボルバー「」ニョキッ
ズガンッ!
ゲン「ぐわッ!」
隆太「あんちゃんッ!」
ムスカ「その石を大事に持ってろ。小娘の命と引き換えだ」スッ
ゲン「おどれェ……!!」
***
ズガンッ!!
シータ「」ドサッ
ムスカ「立て。鬼ごっこは終わりだ」
シータ「」ハァッハァッ
ムスカ「終点が玉座の間とは上出来じゃないか」
ムスカ「ここへ来い……」
シータ「ここが玉座ですって……?」
シータ「ここはお墓よ。あなたと私の」
ムスカ「……」
シータ「国が亡びたのに王だけ生きてるなんて滑稽だわ」
ムスカ「……」
シータ「まるで毛根が死滅したのに抜け毛が生きていると信じている哀れな愚者のようね……」
ムスカ「やめろッ! 髪の毛の話は関係ないだろッ!!」
シータ「いいえ。……あなたはその丸坊主の頭が放射能のせいだと思っているようね」
ムスカ「当たり前だッ! あのロボットの残骸から飛行石を探していたときに抜け出したんだッ!」
シータ「ならあなたの周りにいた人で一人でも……。たった一人でも血を吐いて死んだ人はいたの?」
ムスカ「!?」
シータ「その脱毛症は先天的要因よ。私のお父さんもお爺さんも、お爺さんのお爺さんも……皆朝日を受けて輝いていたもの」
ムスカ「ち、違うッ!! これは明らかに放射能だッ! 放射能のせいなんだッ!」
シータ「なぜ王族の男系の毛根が生まれたばかりの小鹿の足のように頼りないのか……今なら分かるわ。人は人を恐怖で支配するということに、知らず知らずの内にとてつもないストレスを感じるのよ」
シータ「地上で生活することを選ばざるをえなかったのは、このお墓に散らばる無残な抜け毛を見れば明らかだもの」
ムスカ「ッ!」
シータ「あなたに石は渡さないッ! ラピュタの科学があなたの頭皮を救えないと分かった今、あなたの考えることは一つ……」
シータ「苦しむ者を生み出すことによる虚しい慰めよ!」
シータ「あなたはここを出ることも出来ないまま、寂しく頭皮に刺激でも与えてればいいわ!」
ズガンッ!
ズガンッ!
シータ「!」
ムスカ「次は耳だ」
ムスカ「ひざまづけ。命乞いをしろ」
ムスカ「小僧どもから石を取り戻せ」
シータ「絶対に渡さないわッ!!」
ズガンッ!
シータ「ッ!」
右耳「さよなら……」
右耳「さよなら……ロムスカ・パロ・ウル……ラピュタ……」ポトッ
ムスカ「がああああああああああああああああああ!!!!!!!!! 耳がああああああああああ!!!!!!!」
ゲン「ふーッ! 何とか間に合うたわい」ハァハァ
隆太「次は左耳じゃのう、あんちゃん」
ゲン「おう、やれ! しっかり狙えよ!」
シータ「ゲンッ! 隆太ッ!」
ムスカ「う、うぐぅ……!! よくもッ! よくも私の耳を飛ばしてくれたなッ!」ギギギ
隆太「おどりゃ耳ごときでうるさいんじゃッ! おどれが落とした雷を食らった奴は、今頃皮膚を剥がされ、腸ははみ出て、お化けのようになって死んでいきよるんじゃッ!」ガチリ
ムスカ「ひいいい!! やめろッ! 撃つなぁッ!!!」ギギギ
隆太「やかましいッ!!」グッ!
カチン
隆太「ん?」カチンカチン
ムスカ「!?」
ゲン「ばッ馬鹿ッ! おどれがさっき、弾は一発しかないと言うたんじゃないかッ!!」
隆太「ひッ! 忘れとったわい!」
ムスカ「ハハハハハ! やはりお前らのような薄汚い浮浪児には弾の数を数えることも出来ないようだな!」チャッ
ゲン「調子に乗るな馬鹿たれッ!」パカーン
ムスカ「ギエエエエエエエ!!!」
ゲン「耳を飛ばされてフラフラしとるおっさんがハジキを持っとっても何も怖くないんじゃッ!」バキッ バキッ
ムスカ「ギギギギギ」
ゲン「おどりゃ、本当に残酷なことをしたのうッ! ひどいことをしたのうッ!」バキッ! バキッ! ポロポロ
ムスカ「ギエエエエ! やめてくれえええ!!!」ギギギギギギ
ゲン「よくもシータを虐めたのう! 関係の無い人をたくさん殺したのう!」バキッ! バキッ! バキッバキッバキッ! ポロポロ
ムスカ「がああああああああああああああああああッ!!!!!! 死ぬううううううッ!!!!!!!」ギギギギギ
ゲン「おどりゃ、わしをなめるんじゃないぞおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!」バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!!!!!!!!!!! ポロポロ
ムスカ「」ブシュウウウウウウウウウウ
ムスカ「」ドシャッ
ゲン「はあッはあッ……。三分間だけ待ってやるわい……。三分きっかりにおどれに滅びの呪文を叩き込むわいッ!」ハァッハァッ
ムスカ(ぐ……なめやがって……)ギギギ
ムスカ(滅びの呪文? こっちの家系には伝わっていないとでも思っているのか……?)ギギギ
ムスカ(こ、これは言った者勝ちの滅びの呪文……。唱えた者とその者にもっとも近い者だけが助かるのだ……)ギギギ
ムスカ(いいだろう……私も唱えてやる……。3分きっかりに『バルス』を……!)ギギギ
ムスカ(血縁上、シータが最も近い……。だから貴様らは二人仲良く、ラピュタと共に亡びるのだッ!)ギギギ
カチッ…… カチッ…… カチッ……
ムスカ「」ハァッハァッ
カチッ…… カチッ…… カチッ……
ゲン「」ハァッハァッ
カチッ…… カチッ…… カチッ……
カチッ…… カチッ…… カチッ!
ムスカ「ッ!」
ゲン「ッ!」
ムスカ(反応速度は私が上ッ! しかも向こうはこれがスピード勝負だと知らないッ!)
ムスカ「ば……ッ!」
シータ「ッ!」
ムスカ「バリュスッ!!」ガリッ
ムスカ「バルスッ!!!!」
しーん
ムスカ(な、何故だあッ!? 何故なにも起きないッ!!)
ゲン「おっさん……それ(バルス)は石を持っとらんと唱えても意味がないということを知らんのか?」
ムスカ「ッ!?」
ゲン「わしは既にシータから亡びの呪文の発動の条件と代償について聞いておったんじゃ。わしらは3人じゃけえのう……それをここで唱えるわけにはいかんわい」
ムスカ「ギギギ……」
ゲン「わしらが唱えるのはラピュタ滅亡の呪文じゃないわいッ! おっさんの心をメタメタに破壊する、呪いの言葉なんじゃッ!」
ムスカ「ま、まさか……ッ!!!」
ゲン「せえのッ!!!!」
ムスカ「やめろおッ!!!!!」
ゲン・隆太・シータ「「「この禿げッ!」」」
ムスカ「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
***
ムスカ「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ……」カタカタカタカタ
ゲン「シータ、隆太、帰ろう……」
隆太「あんちゃん、こいつを殺さんのか?」
ゲン「殺したらいけんわい。死んでしもうたらもう戻らんのじゃ。命は大切にせんといけんわい」
隆太「なんじゃ、つまらんのう……」
ゲン「シータ、あいつをもう許してやってくれんか? シータは殺したいかもしれんが……」
シータ「だ、大丈夫ッ! あの人の思い通りにならなければそれでいいわ(というか完全に心が壊れてるけど…)」
ゲン「ほうか! ならばあさんらのとこへ戻ろう! 心配しとるぞ!」
***
ドーラ「無事だったかいッ!」
ゲン「おう! わしは何ともないぞ!」ガハハ
ドーラファミリー(知ってるっつーの……)
シータ「おばさまッ!」ダキッ
ドーラ「かわいそうに、髪の毛を切られて……。つらかったねぇ……」
勝子「隆太ッ! 良かった! 生きとってホント良かった!」ダキッ
隆太「か、勝子……皆の前なんじゃ……わしゃ恥ずかしいよ///」
ムスビ「わしゃ心配したぞ、ゲン!」ガハハ
ゲン「ガハハ! あんなおっさん、チョロイわい!」ガハハ
モトロ「くうう……わしの可愛いボロ船が……」
ドーラ「みみっちいこと言ってんじゃないよ! 命あっての物種だろう!」
隆太「それにクズ鉄でも持って帰ればええ金になるぞ!」
シャルル「まぁ本船があればもっとお宝を持ち帰れたがな!」ニッ つ首飾り
ルイ「惜しいことをしたなぁ!」 つ王冠
アンリ「まったくだ!」つ金塊
ゲン「おっさんらもやるのう!」ガハハハ
シータ「アハハ!」
ドーラ「結局あの使ってはいけない言葉とやらは使わなかったのかい?」
ゲン「“バルス”のことか? あれはラピュタのなかで使うたら二人しか助からんのじゃ。だから使うわけには……」ジャラッ
ビカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!
ゲン「な、なんじゃああああああああああッ!?」
ドーラ「今、“バルス”って唱えただろう!!」
ゲン「しもうたッ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!!
ムスカ「……ぎぎっ?」
おしまい
制作 スタジオ・ギギギ
このSSまとめへのコメント
ギギギ・・・