わらいや(73)

注1、特に笑いはありません
注2、登場人物は徐々に増えていきます
注3、主に部活のお話です
注4、おおらかな気持ちで見てください
注5、特に笑いはありません

#01『笑い屋発足』

「えーと・・・ここはどこなのですか?」

「部室よ」

「俺は何故ここへ連れてこられたのでしょうか?」

「それは、あなたが後輩だからよ」

「・・・はぁ、先輩。俺はあなたと面識はまったくありませんが」

「何を言っているのかしら、およそ9分と30秒前に知り合ったじゃない」

「拉致されただけです・・・、で、ここはどこなのですか?」

「質問がループしてい「一体何の活動をしている部活で、俺が連れてこられた理由を可及的速やかに説明して頂きたい!」

「ふぅ・・・本日をもってコミュニティー系部活動『笑い屋』を発足したわ。部長は私、副部長はたった今貴方に任命されました。貴方が連れてこられた理由は暇そうだったから。部活の内容はこの場に笑いをもたらすこと、以上よ」

「えーと、部長・・・」

「大将よ、大将と呼びなさい」

「な、なぜ大将に変わった?」

「そっちの方が面白そうだからよ」

「なら、俺は中将あたりになるのでしょうか?」

「何を言っているの?貴方は副部長でしょうが」

(あかん、ここはあかん!この人は危険だ!)

「あのぅ、それでは大将・・・俺は副部長になるつもりも、そもそも入部するつもりもありませんので。失礼します」

「・・・待ちなさい」ガシッ

「痛たた・・・腕を掴まないでください!」

「では、こうかしら?」フニッ

「う・・腕を組まないで下さい!あ・あ、あ当たってます!」

「腕じゃ物足りないのね・・・この変態、それならば」モミッ

「て・て・て、俺の手を掴んで何故胸にー!」

「そんでもって」ピロリン

「なにケータイで撮ってんですか!」

「さぁ、神海 直樹(こうみ なおき)くん、私を笑わせてくれるかしら?」

今日のところは解散にしてくれた。せめてもの温情らしい。明日までにネタを準備しておきなさいとのこと。

俺は果たしてあのクールビューティーの名で有名な麻木 志乃(あさき しの)を笑わせられるのだろうか?

―――本日 大将を笑わせるまでという条件付きで笑い屋に入部致しました。

#02『無茶振り』

直樹「・・・大将。この方は?」

志乃「料理研究部唯一の部員である、柏崎 愛美ちゃんよ。本日をもって笑い屋を掛け持ちすることになったわ」

愛美「えーと、良く分からないですけどぉ。笑いには料理が必要とかで連れてこられましたー。柏崎 愛美、1年生ですぅ」

直樹(・・・同級生か)

直樹「で、目の前にある料理は一体?笑いとは全く皆無だとおもうんですが」

愛美「30秒で支度しろって言われて、簡単にできるチャーハンつくったんですよぅ。」

直樹「30秒で作ったんですか!?」

愛美「結局ですねー、10分かかりましたー。」テヘッ

直樹(天然ッ!?)

志乃「・・・食べなさい」

直樹「はぁ・・・」パクッ

直樹「わっ!凄い旨い!」

愛美「えへへー。ありがとございますぅ。嬉しいですぅ」

直樹(うっ、笑顔がカワイイ!・・・で、大将は―)チラッ

志乃「・・・・・」

直樹(怒ってはる、起こってはるわー!)

志乃「感想を求めているのではないわ。キッチリ納得のいくリアクションをとりなさい。とりあえず間食するまで時間をあげます」

直樹「なんて無茶振りッ!」

直樹(えーい、ままよ・・・)パクパク

志乃「・・・」ジー

直樹(ヤバイ、なにこのプレッシャー)パクパク

直樹(落ち着けー、無事退部するためにも何か、何か言わねば!)パクパク

愛美「・・・」ワクワク

直樹(やめてー、やめてあげてー)パクパク

直樹(なにも・・・思いつかんッ)パク、カチャ

志乃「・・・食べ終わったわね」

直樹「・・・・・」アセアセ

愛美「・・・」ドキドキ

直樹「・・・えーと、えーと」アワアワ

志乃「・・・」ジー





直樹「・・・・・・・・・・・・だ、ダイナミックな塩胡椒デスネー」ボソッ

その後、何故か愛美ちゃんには歓喜とともに抱きつかれ、大将は目にうっすら涙を浮かべパチパチと拍手をしていた。

―――笑えよ。

そこらへんは、是非おおらかな気持ちでお願いします。

レス無しはともかく、叩かれ続けるようなら考えます。

#03『企画』

直樹「今日はですね、なんか話題を考えてきました」

志乃「へぇ・・・あなたにしては関心ね。良い心がけよ」

愛美「わー、楽しみですぅ。あっ今日は紅茶とクッキー焼いて来たんですよぅ」スッ

直樹(ええ子や、ほんまええ子や)

志乃「それで、あなたの会心の話題とやらは?」

直樹「いやいや、そんなハードルあげないでください」

志乃「4の5の言わず、早くそのクリティカルトークとやらをだしなさい」

直樹(いけん、これは査する目だ。査定眼だ)

直樹「あの、ホラ。テレビとかでよく企画モノとかあるじゃないですか?」パクッ

志乃「・・・」フンフン

直樹「それで、俺は思ったんですよ。合コン企画でカリスマホストと有名キャバ嬢がガチで合コンやればウケるんじゃないかなーって。・・・笑いではないですケド」

志乃「・・・確かに面白そうな企画ではあるわね、笑いではないけれども」

愛美「合コン・・・煌びやかな響きですぅ」

直樹(よしッ、スベッてはない)ズズー

志乃「そうすると、4対4ぐらいで行われるわけよね」

直樹「そうです。舞台は・・・あえて、居酒屋で。お互いが己の技術で場を盛り上げ・・」

志乃「判定・・・若しくは相手をオトせばその場でko。チームワークも重要になってくるわね」

直樹「仲間同士の役割、ポジション、連携全てが勝利の鍵を握るのです」

志乃「成程・・・危険であれば、盛り上がっている会話に割り込んでの防御も必要と」

直樹「防御しつつも盛り下げてはいけない。激しい攻防ですよ」

志乃「・・・いいでしょう。やりましょう、はいスタート」

直樹「い、今からッ!?」

志乃「初めまして、私はクラブ『すないぱぁ』の志乃です。今日はすごくたのしみです」

直樹(棒読み・・・せめてキャラつくりなよ)

志乃「それでは、さっそく。直樹くんのちょっといいとこ見てみたい。のーんでのんでー」パンパン

愛美「いーっき、いっきーですぅ♪」パンパン

直樹(紅茶でッ !?)ガブガブ

直樹(キャラ設定、母性本能をくすぐる年下ッ!)ヨロヨロフラフラ

志乃「あらあら、酔っちゃったのね。開放してあげるわ。ポイントゲットね」ヨシヨシ

直樹「・・・スイマセン。本当はお酒弱くて、でもあなたに喜んでもらいたくて」

志乃「・・・」

直樹(ここで必殺!上目遣い)ジー

直樹「・・・あなたみたいな人にあえて本当によかった」ニコッ

何故かビンタされました。
愛美ちゃんも頬っぺた膨らましてるし・・・

―――今日も笑い無し。

#4『敢えて笑いを取らぬ理由(わけ)』

「芦谷 葵(あしたに あおい)デス!今日はナオくんの援軍で連れてこられましたッ!」ペコリ

志乃「ほぅ・・・これはまた、元気なのを連れてわね。関心、関心」

直樹「葵は、幼馴染なんですよ」

志乃「私は笑い屋の大将、麻木 志乃よ、はじめまして。私のことは大将と呼んで頂戴」

葵「先輩・・・じゃないッ、大将のことは知ってますよー!2年の“くーるびゅーてぃー”って有名ですよー・・・」

葵「・・・って、大将、大将!パイですよ、ちょーおいしそーなパイがありますよッ!」

愛美「アプリコットパイですぅ、葵さんも食べてくださいねー」

葵「愛美ちゃん!アリガトーッ!らぶー」

直樹「ありゃ、二人は知り合いだったのか?」

葵「同じクラスだもんねーッ」

愛美「ですねー」

志乃「それで、援軍というからには笑いを取るための貴方の武器というわけね?神海くん」

直樹「そりゃあ、この自由な世の中で、何故か不自由且つ理不尽な境遇に置かれているという看過し得ない事態を打開すべく・・・」

葵「ナオくんはたいして笑い取れないし、ねッ?。まず、その言い回しが馬鹿ッぽくてまっこと冷えるッ!」ビシッ

直樹「おまっ、ちょっ・・・」クワッ

志乃「まぁ、それなりに面白い人だとは思うけれども・・・ね?」チラッ

愛美「直樹さん、大丈夫ですよぅ。ちょっと他の方と笑いの波長がわずかずれてるだけですよ、ね?」チラッ

直樹「いやそれ、フォローになってないから・・・」ボソッ

直樹(いかん、このままじゃつまらない上にスベる テンパる イジられるのダサキャラが定着してしまう!)アタフタ

直樹「ちがッ、違うんですよ?えと、あの、その、笑いが取れないんじゃなくて・・・」オロオロ

志乃「なら、敢えて笑いを取らない理由があるというわけね?」

葵「よしッ!ナオくん、その理由とやらをぜひぜひ聞こうぢゃないかッ!?」

直樹(ハードルあげんなッ!・・・なにこのアウェー)

直樹「いや、その・・ね?・・・そう!、ほら、例えば葵に彼氏が居るとするじゃん?」

葵「いないよ」

志乃「私もいないわ」

愛美「わたしもいないですぅ」

直樹「いや、だから!例えばだって!」

葵「結構大事なことだよ?」

志乃「重要なことだわ」

愛美「簡単に例えちゃダメですぅ」

直樹(メンドクセー!これじゃ、援軍じゃなく面倒くさいのが増えただけじゃん!)

直樹「だから、仮にです!もう、仮に居るとします!もうしちゃったから!」

葵 プイッ   志乃 チッ   愛美 ポケー

直樹「二人はお互い相思相愛、慎ましくも愛し合う間柄」

直樹「そんななか、ひょんなことで知り合った俺がもし、お前に大爆笑とかさせてしまったら、どうなる!」

葵「どうなるッ!?」ビシッ

志乃「いいわ、続けなさい」フムフム

直樹「お前はその後大好きな彼氏と会った時こう感じてしまうわけだ」

葵「それはッ!?」



直樹「『私はあなたの笑いじゃもう満足できないわ・・・・・』となるわけさ!」ズビシッ

直樹「笑いは人を不幸にするのですかッ!?・・・否ッ!それは違う!笑いは人を幸せに義務がある!」

直樹「笑う門にはッ!そこには、常に福が在るべきなのですッ!」ドヤッ

葵 志乃 愛美「・・・」ジー

直樹(え?あかんの?)アセアセ

葵「・・・いや、わたし別に笑いで彼氏選ばないし」

直樹「・・・デスヨネー」

志乃「私は笑いで彼氏選ぶわ」

直樹「ですよね・・・って、なんでやねん!」

志乃「自分で豪語しといて、なにを突っ込んででいるのかしら?」

直樹(超やりづらい・・・)ハァー

愛美「なるほどー、じゃあ、直樹さんはどういう場面なら本領発揮するんですかぁ?」キタイッ

葵「愛美ちゃん、それだッ!」エライネッ

志乃「神海くん、言いなさい」

直樹(この空気でッ!?完全に無理ゲーだしッ)

直樹「そこは、ホラ・・・そう、例えば余命幾拍もない少女がいたとする。・・・いたとするんですッ!」

葵「そこは別にいてもいいから」

志乃「特に重要じゃないわね」

愛美「・・・それで、どうなるんですかぁ?」ワクワク

直樹(めんどい・・・)

直樹「もう、薬も効かず、痛みでずっと苦しみつづけているんですよ」

直樹「そして、もういつお迎えがきてもおかしくないというとき、彼女が悲しそうな顔で呟くんです」

志乃「・・・なんと?」

直樹「『最後くらいは笑顔でみんなとお別れしたいなぁ・・・』ってね」

直樹「いいでしょう、やりましょう!」

直樹「それはもう、ドッカンドッカン笑わせますよ!もう、彼女もヒーヒー言って呼吸困難による窒息死に死因が変わっちゃうくらいに!」

直樹「もう、両親も笑いが止まらないッ、最後亡くなった時間を告げる先生も腕時計見るふりして必死で笑い堪えてんのっ!」ドーヤッ

志乃「・・・」

直樹(・・・ワカッテマスヨ)タジタジ

志乃「・・・神海くん」ジー

直樹(あれ?何故、手を握る?しかも両手で?)

志乃「・・・貴方がこんなに深い想いがあったなんて・・・」

志乃「貴方が副部長になってくれたことを私はとても幸せだわ」

志乃「・・・・本当に、ほんとうにありがとうございました」ペコリ

・ ・・パチパチ・・・パチパチパチパチ
残りの二人も拍手してるし、愛美ちゃんに至っては涙を浮かべてしきりに頷いている。

―――だから、笑えや

おまけ 帰り道にて

直樹「・・・チキチョウ。お前役に立ってねえよ」

葵「まあまあ!いいじゃん、いいじゃんッ!」バシバシッ

葵「それよりも、ナオくん大将笑かして部活辞めたいんだよねッ?」チラッ

直樹「だからッ!そういってるじゃねえか!」

葵「いやー、さ?大将のことホントはどう思ってるのかな?ってさ・・・まぁいいや!帰ろ帰ろーッ」ダッシュ

―――何言ってんだコイツ?

スイマセン、掲示板超初心者であまり知識がないんです。

チキショウはこんちくしょうのことです。(昔は結構言ってたと思います)

ワナビというはなにかの用語でしょうか?

一番叩かれなさそうなので、ここで書かせて頂いております。

検索したら、理解しましたw

違いますw1年くらい前に違うところで一作完結してこれが2作目です。

#5『仕込み』

直樹「あれ、今日は愛美ちゃんいないんですね」

志乃「ええ、歯医者に行くと言ってコレ置いて出ていったわ」

直樹「茶巾絞りとはまた古風な」ウマウマ

志乃「あの、元気な子はこないのかしら?」

直樹「ああ、葵ですか?楽しかったって言ってましたからまた顔をだしますよきっと」

直樹「それはそうと、前から疑問だったんですが、『笑い屋』ってなんで『屋』なんですか?部なのに・・・」

志乃「お客様をもてなす気持ちで笑いを取りなさいと言う意味よ・・・もちらん神海くんがね。・・・遊びじゃないのよ。貴方には真剣さがたりないわ」マッタクモウ

直樹(何故、俺だけ・・・、でも今日は大将と2人きり。仕込みのネタをつかうか!)

直樹「・・・」ジー

志乃「・・・なによ?どこ見ているのよ、いやらしいわね」

直樹「いやいや・・・これは失礼。ぼかぁ、ただのちょっとしたおっぱい星人でして」

志乃「・・・変態ね」

直樹「褒め言葉頂きましたッ!・・・いやぁ、お乳様にはホント目が無くて、出会った女性には名前を付けるほどです」

直樹「ちなみに大将は、左がステファニーで右がよし子」

志乃「・・・」ポカーン

志乃「・・・本当に変態ね、開いた口が塞がらないわ」ジトー

直樹「まぁ、アレですよ。挨拶するときたまぁーに視線がおかしいかもしれませんが、気にしないで下さい。・・・ただのお2人への挨拶ですから」

志乃「・・・誰に挨拶してるのよ」

直樹「あとあと、久しぶりにあったりしたら、これまた視線がおかしくて『しばらく見ないうちに大きくなったねぇ~』とか言っちゃったりするかもですが・・・」

直樹「これまた、気にしないでください・・・ただのお世辞ですから」

志乃「お、お世辞ッ」カー

大将が顔を赤くして出ていってしまった。
結論。セクハラじゃ笑いはとれんね

次の日何故かステファニーとよし子が2割増し大きくなっていた。

―――仕込みだな、きっと。

#5『繋がり』

直樹「・・・いったい、これは何事ですか?」

志乃「いらっさい」

直樹「・・・寿司屋ですか?」

志乃「寿司屋よ」

志乃「そして、私は大将よ」

直樹「まさかの大将繋がりッ!?」

葵「ヘイ、ラッシャイッ!そしてわたしは看板娘ッ!」

直樹「お前もいたのかいッ!?」

葵「今朝教室に招集状が届いてやしてねぇー、ホラ」

直樹「それおしぼりだよッ!アツシボじゃんッ!?そして律儀に受け皿までッ」

葵「いやぁ、わたしが手にしたときはヌルシボになってやしたが・・・」

葵「間違って顔拭いちゃってインクが付いちゃいました!まいったネッ」アイター

直樹「アイターじゃねえよ!気づけよッ!」

愛美「わたしも今朝から仕込んでましたよぅ。へいおまちですぅ」

直樹「寿司あんのかよ!?

直樹「なかなか盛大なボケをかましてくれますね・・・」

志乃「そうよ・・・貴方がぼけーっとしている間にも、皆は並みならぬ努力でボケをしているのよ、肝に銘じなさい」

直樹(法被着てつったってるだけの人に言われたくない)パクパク

直樹「うまっ!そして新鮮ッ」

愛美「瞬間チルド製法ですぅ」ニコニコ

直樹「あのぅー、そのですね、ここまでボケて頂いて、誠に言いにくいことなのですが」

直樹「今日ちょっと用事といいますか、約束している事がありまして・・・」

志乃「・・・」

直樹「・・・その・・・帰らないとー」ソロソロ

志乃「・・・」ジー

直樹(帰りづらい・・・)

直樹「・・・・・ソレデハマタアシター」ガラガラ

志乃「・・・・・・・・・お客さん、御勘定」

直樹「金とんの!?」

志乃「・・・ここは寿司処『笑い屋』」

志乃「お金は要らないわ、笑いを置いていきなさい」

直樹「だから、ハードル高すぎですって!」

志乃「あなたは何もしてないうえに場を冷めさせてまで帰ろうとして、笑いすら取れないというの?」

志乃「驚きだわ、無銭飲食、もとい無笑飲食はなはだしいわ」

直樹(いやいや・・・言われすぎ)

志乃「・・・無一文、無慈悲、無責任・・・あなたは本当に無敵ね」

志乃「・・・・・・お客さん、御勘定を」

直樹「・・・・・」

直樹「・・・貴方がこんなにも素敵だから、僕はいつだって無敵でいられるんですよ」ニコッ

志乃「・・・」

葵「・・・」

愛美「・・・」イラッ

志乃 クイッ

葵 コクッ

葵「ドロップキーック!」

飛んだ、すごく飛んだ。扉の側から廊下まで飛んだ。

―――あの空気で何を言えと

帰り道

葵「ちょっと待ってよー」

直樹「なんだ、お前もかえるのか?」

葵「・・・だってあれでしょ?用事って楓ちゃんのことだよね?」

直樹「まぁ、最近ずっと妹にかまってやれなかったからな」

葵「少等部は終わるのはやいもんね。ずっとひとり?」

直樹「今はな・・・そのうち友達も出来るだろ」

―――きっと自分から笑ってくれる日がくるだろう

#07『きゅうてん』

直樹「ちわーす」ガラガラ

志乃「遅いわよ、神海くん・・・今日も一人かしら?」

直樹(ああ、葵は家で楓と・・・)

直樹「・・・って、たーきーこーみーごーはーんーッ」

愛美「出来たてですぅ、ホカホカですよぅ」ニコニコ

直樹「女将さん、いいセンスしてますねぇ」ウマウマ

志乃「・・・」ジー

直樹「はむはむ・・・?まは、むひゃぶりでふか?」

志乃「ちゃんと飲み込んでから喋りなさい。・・・貴方の陳腐なリアクションはもういいわ」

直樹(毎回、そっちからなにかしら振ってくるくせに・・・)パクパク

志乃「それよりも、元気ちゃんは来てくれないのかしら・・・」

直樹(妹のことを引き合いにだしたら、ややこしいことになりそうだしなぁ)ゴックン

直樹「まぁ・・・期末テストも近いことですからねぇ」

直樹「そう言えば2人はテスト勉強だいじょうぶなんですか?」

志乃「私を誰だと思っているのかしら?・・・では皆で前回の順位と点数を発表しましょう」

直樹(笑いではともかく勉強なら!)

直樹「では俺から、500点満点中402点クラス5位ッ!」パー

志乃「492点、1位よ・・・学年で」

愛美「475点ですぅ。・・・私も学年で・・・」チョキ

直樹「・・・あなたたちは何故そんなに頭がよいのでしょうか」

志乃「逆に聞くけど、神海くんは何故勉強しているのかしら?」

直樹「しょれは・・・・なんとなく」

志乃「私達は何となく以外の理由で勉強しているから点数がいいのよ」

直樹「・・・」チラッ

愛美 ニコッ

直樹「愛美ちゃんもですか」

志乃「・・・と、いうことで本日は笑いのテストをします」

直樹「どういう事ッ!?しかも今から!?」

志乃「抜き打ちよ」

直樹「・・・えーと、勿論みんなでー、ですよね?」

志乃「何を言っているのかしら?だから貴方は点数が低いのよ。・・・いい?人にはそれぞれ役割というものがあるわ」

直樹(クラスで5位だし、十分だし)

志乃「貴方に料理をしろとは言わないわ。貴方の役割は場に笑いをもたらすこと。今回のテストも日頃の成果を試すものよ」

直樹「・・・なんて強引な」ボソッ

志乃「何か言ったかしら?」

直樹「いえ・・・それより、テストというのは?」

志乃「はい」スッ

直樹「・・・・・しゃもじ?」

志乃「そうよ、それを使ってモノボケをしなさい」

直樹「・・・冗談デスヨネ?」

志乃「・・・・・」カツカツ

直樹(指で机トントンし始めたー、苛立ってらっしゃる!)

直樹(やるしかない)

“視力検査”

直樹「・・・・・・・多分、右」

志乃「・・・多分ってなによ?10点」

直樹 ビクッ

志乃「・・・」

愛美「・・・」ニコッ

直樹「・・・・・・・・・・・およそ、左?」

直樹「スイマセン、次いきます」

“タバコ”

直樹「あれ?・・・どこだったかなぁ?」カラダペタペタ

直樹「おかしいなぁ~?」ペタペタ

直樹「・・・あった、あった」

直樹「・・・」シュ、ボー

直樹「・・・火がつかない」

直樹「・・・・・・あ、逆か」ナオシテ

直樹「・・・・・・・って、しゃもじかよ!」ナンダヨ

志乃「2点」

直樹 ビクッ

愛美「喫煙は二十歳になってからですよぅ」

直樹「はい、ごめんなさい」

“卓球”

直樹「ヨーシ、全国大会ガンバルゾー」カマエテ

志乃「・・・」

直樹「・・・」

愛美「大将さん、お茶どうぞですぅ」スッ

志乃「・・・」ズズッ

志乃「・・・次」カチャ

直樹 ビクッ

直樹「・・・・・・・・はぃ」

“ハミガキ”

直樹「あれ?・・・どこだったかなぁ?」カラダペタペタ

直樹「おかしいなぁ~?」ペタペタ

直樹「・・・あった、あった」

直樹「・・・・・シャカシャカ シャカシャカ・・・?」

直樹「・・・・・・・って、しゃもじかよ!」

志乃「・・・・・」バンッ

直樹 ビクッ

志乃「・・・オチが同じ。マイナス2点」

志乃「・・・しゃもじが唾液まみれ、更にマイナス1」

直樹「・・・すいません新しいの買って持ってきます」シュン

愛美「そのままで、いいですよぅ」ニコッ

直樹(やっぱりまなみちゃんは優しいなぁ)

直樹「いやいや、これはちゃんと燃やして処分するよ」

愛美「・・・・・・・・・・・返して」

直樹「えっ?」

愛美「・・・だから」

愛美「だから、そのままでいいって言ってるじゃないですかッ!!」

直樹 ビクッ

愛美「・・・・・あ、・・・え?・・・あの」

愛美「・・・ゴメンナサイ」タッタッタッ

直樹「・・・・・え、なんで?」

志乃「・・・・・・・・・9点」

直樹「え?」

志乃「今回のテスト合計9点。このままじゃ赤点もいいところだわ」

直樹「あんた、こんな時に何を言って・・・」

志乃「私は言ったわよね?人にはそれぞれ役割があるって」

志乃「・・・追いかけなさい。結果によっては足りない点数、温情査定してあげるわ」


俺は走った。
何がなんだかわからなかったけど、とにかく追いかけるしかなかった。

―――俺はそれまで、何もみえてなかった。

#08「まなみ」

公園にて

直樹「・・・・・・はーはーはー・・・ふぅ」

直樹「・・・・・」

愛美「・・・・・・・ビックリしましたよね」キーコ キーコ

直樹「・・・」

愛美「ああ、もういいや」-キィ

愛美「驚いたでしょ?」

直樹「・・・」コクン

愛美「急に飛び出したこと?それともわたしが猫被ってたこと?」

直樹「まぁ、両方」

直樹「・・・でも、猫かぶってたのは何となくわかる。いままで口数少なかったし」

愛美「そりゃそうか、・・・ほら、あんま喋るとボロでちゃうしね」

愛美「・・・」

直樹「・・・何があったか、聞いていいか?」

愛美「―――」ン

愛美「・・・・・・・わたしがさ、産まれたとき」

愛美「お父さん、産まれたてののわたしをみて直ぐに“愛美”って名付けたんだって」

愛美「愛くるしい程美しかったって、皺くちゃの新生児になに思ったんだろうね?」

愛美「小さい頃はそりゃもう、可愛がってもらってたよ。今でも覚えてる」

愛美「・・・でもね、年が経つにつれて、お母さんと喧嘩するようになって」

愛美「わたしも結構怒鳴られたりした。」

愛美「小学校あがるくらいになったときには、毎日のように喧嘩して、暴れることも少なくなかった」

愛美「・・・・・気がつけばお父さん家にいなかった。出てっちゃった」


愛美「立ってないで、そっちすわりなよ」

直樹「・・・ああ」ストン

愛美「いつか、帰ってくるっておもってたんだー」

愛美「それで・・・あのさ、お母さんに『飯が不味い』とか何時も怒鳴ってたから」

愛美「―――だから、料理を練習した」

愛美「わたしが美味しい料理を作れるようになればお父さん帰ってくるって思ってたんだよ」

愛美「それでも、いつまでたっても帰ってこなかったから」

愛美「色々考えた・・・何がいけないんだろうって」

愛美「思いつくことは何でもした。馬鹿みたいにいっぱい勉強もしたし」

愛美「自分の心を無視して何時も笑顔でいるようにしてさ、・・・性格まで変えて“良い子”演じてた」

愛美「・・・・ほんと馬鹿だよね。帰ってくるわけないのに」

直樹「・・・どうしてだよ?」

愛美「死んでたんだって」

直樹「え?」

愛美「どんどん変わってっちゃうわたしを見て、心配になったんだろうね。お母さんが本当のこと教えてくれた」

愛美「飛び出した先で・・・・・半年後くらいに交通事故」

愛美「葬式とかもお父さんの実家でやって、私はなにも知らなかった。生活費の保険金だって、お父さんが仕送りしてくれてるお金だと信じてた」

直樹「・・・」

愛美「そんな顔しないでよ・・・今では、少しは心に折り合いが付いてるつもりだから」

愛美「でもね、一度心にでっかいトゲが刺さっちゃったらなかなか抜けないの」

愛美「心にトゲが刺さっちゃってるとねー、なかなか笑えないんだ」

愛美「心から笑えないっていうかね、愛想笑いになっちゃうの」

愛美「まぁ、他にも色々あって・・・猫かぶりは続けてた」


愛美「でもねー・・・あの大将さん引っ張ってこられた先にあんたがいて」

愛美「あんたを見てて、本当のわたしに戻りたいと思った」

直樹「・・・俺?」

愛美「だってさ、凄いよね?大将さんのどんな無茶振りにも真っ向に立ち向かってさ」

愛美「・・・すごく真っ直ぐで」

愛美「今日だって、あんなモノボケ普通やんないよ?」

愛美「馬鹿みたいに体張って、しゃもじ口に含んでまで・・・」


愛美「そっか、それでわたし飛び出してきたんだったね」

愛美「ほらさ、あんたがふいに、しゃもじ燃やすって言ったからさ・・・」

愛美「それが、家庭崩壊とイメージ丸被りしちゃって」

愛美「こんなのただの癇癪みたいなもんよね。・・・だから」

愛美「だからさ、そんなに心配しないでいいよ」

直樹「・・・」

愛美「・・・・・あー、スッキリした」ヨイショッ

直樹「・・・来いよ」

愛美「ん?」

直樹「・・・明日も、明後日も、ずっと部室に来いよ」

愛美「・・・」

直樹「こんなんでよかったら、いいんだったら、どんだけでもやってやるよ」

直樹「まだ、つまらないかもしれないけど。そのでっかいトゲは引っ張るくらいしか出来ないけど」

直樹「いつか、いつの日か、心の底から笑わせてやれるようになるまで」

直樹「部室・・・来いよな

愛美「・・・あんた人がいいのね」

愛美「・・・・・・・・ありがと」

テレッテッテッテー テレッテッテッテー  

愛美「電話だ」

直樹(ふっ・・・空気読めない着信音だな)

愛美「・・・・・・・こほん」ポチッ

愛美「あっ、もしもしぃ。おとーさん?・・・ぅん。今日はカレー作りますよぅ」


直樹「・・・え?」ポカーン

愛美「うん・・・わかりましたぁ・・・じゃあ、はやくかえりますねぇー・・・はーい」ポチ

直樹「・・・」ポカーン

愛美「・・・ってことで、帰ろっか?・・・って、おーい、どしたー」パタパタ

直樹「・・・」コウチョク

愛美「・・・あ、大将さんだ」ホラッ

直樹「えっ?」

愛美 チュッ

直樹「・・・は?」

愛美「じゃ、先帰るね」タッタッタッ

志乃「なに間抜けなの顔をしているのよ?」

直樹「・・・・」パクパク

志乃「ああ、これ?ケータイでムービーをとっています」

志乃「温情査定しようにも、評価をできるものがなければそれも叶わないじゃない」

直樹「・・・」ポケー

志乃「でも、その顔は最高よ。温情抜きでも楽々ボーダー越えだわ。バッテリーもつかしら」

直樹「・・・」スタスタ

志乃「ちょっと待ちなさい・・・あれまあ」

直樹 スタスタスタスタ

自宅にて

葵「おかえりー、もう楓ちゃん寝ちゃったよー・・・・・・ってナオくん!なにその超オモシロイ顔ッ!?」

直樹「・・・・・・・カクカクシカジカ」

……

…………

………………

葵「いいネっ!ナオくん実にいいよッ!・・・・・最高だッ!」

直樹「話したら、だんだん怒りが込み上げてきた・・・」メラメラ

葵「ようやく?」

直樹「あんな部活絶対辞めてやるッ!」ゴー

葵「どうどうどう、楓ちゃん起きちゃうよッ」

直樹「知らんッ!そんなの知らんッ!」

葵「落ち着けー、ヨシヨシー」

葵「まあまあ、最高なのはナオくんの奇跡的な勘違いの方だから」

直樹「はあっ!?なんだよそれ?」

葵「別にドッキリじゃないと思うよ」

葵「まあ・・・大将さんはちょっとしたお茶目だっただろうけど」

葵「・・・・・・・・・・愛美ちゃんのお父さんが亡くなったのはホントだよ」

直樹「・・・は、だって電話で」

葵「多分ソレ、再婚相手。新しいおとーさん」

葵「愛美さん言ってたもん、新しいお父さん凄く優しい人だって。だから急に喋り方変えたら変に心配させると思ったんだよ、きっと」

葵「でも、ナオくんは凄いよ。わたしは全然ダメだったし。色々知りすぎてたから、微妙な距離保ってた」

葵「ナオくんはそういうトコ全然見えてないからねーッ」

葵「―――――ホント全然見えてないから。大将さんの事も、楓ちゃんの事も、そして・・・」

葵「・・・って、また放心状態ッ!?」

直樹「・・・」ポカーン

葵「わたしも写メっとこッ!」イエーイ

葵「じゃ、わたしも帰るねッ」バイバイ


―――もう、どうでもいいや。寝よう。

劇の練習があるので少し時間が開きます。

スレたて逃げだけはないようになんとか完結させます。

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