男「ハロウィンアパート」女「少女の悪戯」(81)


魔女娘 (……どの家にしよう)テクテク

魔女娘 (あんまり子供がいなさそうな家がいいなぁ)キョロキョロ


魔女娘 「…アパート」ピタッ

魔女娘 (玄関が…いち・に・さん…で二階建て、部屋ちっちゃそう…)

魔女娘 (どうみても一人暮らし用のワンルームってやつだよね)

魔女娘 (うん…いいかも)


タタタッ…


ピーンポーン、ピーンポーーン…

…ガチャッ


DQN 「うぇ?」

魔女娘 「Trick or Treat!」ニパッ


DQN 「…あー、ヘロイン?」

魔女娘 「ハロウィン…」

DQN 「チッ…めんどくせーな…なんでこんな安アパートに来たんだよ」ハァ…

魔女娘 「うっ」


DQN 「えーっと、どうすんだっけ?」

魔女娘 「えと…悪戯されるか、お菓子をくれるか…です」モジモジ

DQN 「お菓子ねぇ…」


魔女娘 「あ、あの…無かったらいいです」

DQN 「ちょっと待ってろ」クルッ

魔女娘 「あぃ」


ゴソゴソ、ゴソゴソ…ナニカアッタカナー


魔女娘 「…あの、無理には」


ガラガラ…ガチャーンッ!


魔女娘 「ひぅ」


チッキショ…コレ、イツノダ…?


魔女娘 (あ…あんまり古いの持ってこられても困るなぁ…)


DQN 「うぇい、待たせたな」ポイッ

魔女娘 「ひゃっ…あ、ありがとう」アタフタ


DQN 「アイスでもお菓子だろ?」

魔女娘 「でもこのピノの箱、開いて…」

DQN 「あぁ? カノジョが残してったんだよ。今日の昼のだ、古かねぇぞ」チッ

魔女娘 (あうぅ…確かにみっつ残ってる。でもピックは人が使ったお古なんじゃ…)

DQN 「カノジョはフォーク使ってたから、気にすんなよ」


魔女娘 「そ、そうですか…ありがとうございました」ペコッ

DQN 「あ?」


魔女娘 「さような──」

DQN 「──待てよ」


DQN 「お前、お菓子貰っといてお辞儀ひとつか? あぁ?」

魔女娘 「え…でも、ハロウィンってそういう…」キョトン

DQN 「まあ玄関で悪いが、座って落ち着いて食えよ。その間俺の愚痴でも聞け」

魔女娘 「えっ…えっ…?」アセアセ


DQN 「す・わ・れ・よ?」ニコッ

魔女娘 「ぁぃ…」


魔女娘 (あうぅ…参ったなぁ…)ビクビク

魔女娘 (…でも、アイスくれたし…愚痴を聞けって言われただけだし…)

魔女娘 (怖いけど…悪いヒトじゃなさそう…?)チラッ…


DQN 「…お前、いくつだ?」カチッカチッ…ボッ

魔女娘 「8歳…です」パクッ

DQN 「………」ジジジ、スゥッ…フウゥゥ…

魔女娘 (たばこ…煙い…臭い…)

DQN 「おお…悪りぃ、煙がそっち行ってんな。外に向かって扇風機回すわ」スッ、パチン…ブオオォォォ…

魔女娘 (もう明日は十一月だよ…ピノ食べてるし寒いよ…)モグモグ


DQN 「まあ…よ…お前みたいな子供に話しても仕方ねえんだけどな」

魔女娘 「…はい?」

DQN 「それこそ、カノジョがその大好物のピノ食いかけで部屋出ていった…その話だ」


DQN 「あいつと付き合い始めて、もうすぐ一年になるよ」スゥ…

魔女娘 「はぁ」パクッ

DQN 「けど、付き合い始める前は…俺、遊んでたオンナいたんだ」フゥーーッ

魔女娘 (本当に小学生に聞かせる話じゃないなぁ)モグモグ…


DQN 「知らなかった…気づかなかったんだよ、そのオンナも割と遊んでるやつだったからさ」

魔女娘 「なにをです?」

DQN 「俺の事が本気で好きだったんだってさ……カノジョが出来たって教えてから言いやがった」スゥ…

魔女娘 (返事に困る…)ズーン…


DQN 「でも、俺もこんなだけどよ…できたカノジョは大事にしたいわけよ」フゥーッ…

魔女娘 (そうは見えないって自覚はあるんだ)


DQN 「なんだけどなぁ…たまーに、その遊んでたオンナから連絡がある」

魔女娘 「一年経っても…?」

DQN 「ああ、ちゃんと言ったんだぜ? カノジョができた以上、もうお前とは遊べない、会わないって」

魔女娘 「ハッキリ言っててもだめなんですか…」


DQN 「今日だって、夜にはヘロインパーティーしようと思ってたんだよ、カノジョと」

魔女娘 「ハロウィンですってば」

DQN 「ケーキも買ってたってのに……最悪のタイミングで電話してきやがった。無駄になったぜ…ったく」チッ…

魔女娘 (アテのないケーキあるのに、出てくるのは食べかけのピノだったのかぁ…)パクッ


DQN 「まぁな…俺が悪いのは解ってんだよ」スゥ…

魔女娘 (…うぅ、寒いなぁ)モグモグ

DQN 「ハッキリ言ったのは最初の一度だけ…その後は『電話してくんな』って言って切るだけだもんな」ハァー…


DQN 「全部食ったか」

魔女娘 「は、はい…ごちそうさま」

DQN 「…悪かったな、聞いても仕方ないような話してよ。まあそのアイスのお代だと思えや」

魔女娘 (ハロウィンはお代を求められるものじゃないんだけどなぁ…)


DQN 「お前、もうこのアパートの部屋ぜんぶ回ったのか?」

魔女娘 「ううん、ここが最初です」

DQN 「……そうか」


魔女娘 「?」

DQN 「いや…なんでもねぇ。暗いから変な奴に気をつけてな」

魔女娘 (怖そうな人にはもう会っちゃったけど…)クスッ

DQN 「ん?」

魔女娘 (…でも、いい人だった)


………



魔女娘 (じゃあ次…お隣、いってみよ)テクテク

魔女娘 (玄関まわり、なんにもないなぁ…空き部屋みたい)

魔女娘 (でも薄っすら灯りは点いてるような)

魔女娘 (…呼び鈴、押してみよっと)


ピーンポーン、ピーンポーーン…

…ガチャッ


男「…はい?」

魔女娘「Trick or Treat!」ニパッ

男「うわぁ、びっくりした」

魔女娘(全然びっくりした感じじゃなかったけどなぁ…)


男「そっか、今日はハロウィンだね。いらっしゃい」ニコッ

魔女娘(よかった、いい人っぽいおにーさんだ)ホッ…


男「お菓子だね、ちょっと待ってて」

魔女娘「あの、なにも無かったら──」

男「ううん、あると思うよ」

魔女娘「──そう…ですか」


男「お待たせ、あるとは言っても安いお菓子ばっかだけど。はい、どうぞ」ゴソッ

魔女娘「あ、ありがとう」

男「持ちきれる?」

魔女娘(けっこういっぱい…袋とかないのかな)


男「持ち切れないようだったら、ちょっと食べていきなよ。お茶でも淹れるよ」

魔女娘「えっ…あの、袋…」

男「玄関のミニチェア、靴履く時に掛けるやつだけど座ってたらいいよ」

魔女娘「…はい」チョコン


魔女娘(まだまだ帰らなきゃいけない時間よりは早いし、まあいっか…)

魔女娘(お菓子…うまい棒とブラックサンダー、キャベツ太郎とよっちゃんイカ…マルカワのフーセンガム)

魔女娘(100円を超えるお菓子ないなぁ…いいけど、ブラックサンダー好きだけど)


男「はい、ミルクティーにしてるからね」

魔女娘「頂きます」


魔女娘(小さいのはポケットに入れて持って帰ろう…まずは一番かさ張るキャベツ太郎食べようかな)ガサガサ

男「キャベツ太郎美味しいよね」

魔女娘「うん」パクッ

男「コーンポタージュスナックも美味しいけどね、昼に食べちゃった」

魔女娘(あー、そっちの方が好きだったな…)サクサク…


男「魔女の仮装だよね、手作り?」

魔女娘「うっ…」ギクッ


男「ん? どうかした?」

魔女娘「…手作り…しかも、布はほとんど使ってないから」

男「うん、紙袋とかに色塗ったり工夫してるんだね」


魔女娘「安っぽいでしょ…?」シュン…

男「え? ハロウィンの仮装って、そんなにお金かけるもの?」

魔女娘「んー…お金はかけないかもしれないけど、クラスの友達はお母さんが縫ってくれたり…」

男「ああ、そういうのも嬉しいよね」

魔女娘「…うん」


男「でも工作をがんばった子供らしい仮装、可愛いと思うよ」

魔女娘「ほんと?」パァッ


男「うん、新聞丸めた魔女の杖もかっこいいね。ナイロンひも割いたフリフリの飾りも女の子っぽいし」

魔女娘「これ…ホウキ…」ズーン…

男「ごめん…」アセアセ


男「なんにもない週末の晩だと思ってたけど、思わぬイベントがあって嬉しいよ」

魔女娘(…さっきのピノくれたお兄さんは、本当はハロウィンパーティー予定してたんだっけ)サクサク

男「今年のハロウィンはちょうど金曜日だったんだね、ぜんぜん意識してなかった」


魔女娘「なにも予定無かったんですか」

男「…痛いとこ訊くねぇ」アハハハ

魔女娘「ご、ごめんなさい…」


男「まあね、ハロウィンだって気づいてれば、勇気出して食事くらい声を掛けてみても良かったのかも」

魔女娘「彼女さん?」パクッ

男「…に、なって欲しいヒトかな」


魔女娘「まだ七時にもなってないです、電話してみたら…」サクサク

男「そうだね、電話する距離じゃあないけど」


男「もうこのアパートの部屋、全部回ったの?」

魔女娘「ううん、ここが二軒目です」


男「じゃあここの前には…」

魔女娘「こっちの部屋に、先に寄りました」

男「ああ、DQNさんの。…見た目怖そうだけど、いい人だったでしょ」

魔女娘「はい」


男「じゃあ次はこっち隣か…えっと、うん…悪い人じゃないよ」

魔女娘「?」

男「でも万一なにかあったら、大きい声出しなね?」

魔女娘(えっ)


男「いやいや…心配ないか、人を見かけで判断しちゃダメだよね」

魔女娘「あの、なにか気になるようなヒトなんですか…?」

男「ううん、大丈夫…だと思うよ」

魔女娘(思う…としか言えないような人なのかなぁ)


男「あと二階の三部屋は女の人が住んでるから、心配ないよ」

魔女娘「わかりました。…紅茶、ごちそうさま」

男「いいえ、来てくれてありがとう」ニコッ

魔女娘「お邪魔しました──」


………



魔女娘(…いい人でよかった)

魔女娘(次の部屋がちょっと不安だけど…)


魔女娘(二階はみんな女の人かぁ)

魔女娘(…でも、だからって一階のひと部屋だけ訪問しないなんておかしい)

魔女娘(もし入居してる人同士で話した時『ウチだけ来てない』なんて…嫌だったりするかも)


魔女娘(うん、もし留守なら仕方ないけど…呼び鈴押してみよ!)


ピーンポーン、ピーンポーーン…


魔女娘(………)

魔女娘(留守みたい! うん、それなら仕方な──)クルッ


…コトンッ

魔女娘「ひぅ」ビクッ


魔女娘(ゆゆ…郵便受けが少し開いて…誰か覗いた…?)ドキドキ


ガチャッ……キィ…ッ…

魔女娘(ちょっとだけドアが開いたけど…)


キモオタ「……誰でござる」

魔女娘「ご…ござる?」


キモオタ「お、女の子……ハァハァ、魔女? だ、騙されないでござる! 騙されないでござるよ!?」

魔女娘(なんでチェーンロック掛けたままなんだろう…)

キモオタ「拙者好みのコスプレロリ娘を家賃取り立てに仕向けるとは…大家さんめ、なかなかやりおる…」

魔女娘「はい?」


キモオタ「デュフフ…しかし、なけなしの金なら好物の生チョコにつぎ込んだばかり。払うのは無理でござる! 残念無念フォカヌポゥ!」

魔女娘「家賃…私、別にお金とか…」アタフタ

キモオタ「それなら何の用でござるか!? ど、ど、どうせ言えないに違いないでござるよ!」


魔女娘「と…」ドキドキ…

キモオタ「と?」


魔女娘「Trick or Treat!」


キモオタ「………フヒッ」ピクッ

魔女娘「…あの?」


キモオタ「その魔法詠唱…そして今日の日付」

魔女娘(魔法…?)

キモオタ「まさか、ハロウィンの夜にコスプレ美少女が拙者の部屋を訪ねてきたというのか…」ワナワナ

魔女娘(び…美少女とか)テレテレ


キモオタ「感動…感涙でござるっ!」ブワッ

魔女娘「ふぇっ…」ビクッ


キモオタ「それで金の無い拙者はこの奇跡への対価としてなにを支払えば良いでござろうか?」キリッ

魔女娘「ええと…お菓子をくれるか、悪戯されるか──」

キモオタ「なりませぬ! Yes、ロリータ! No、タッチ! デュフフ、拙者マジ紳士コポォ」

魔女娘「あのっ、悪戯はそっちがするんじゃなくて…!」


キモオタ「拙者がされる側…だと?」ピクッ


キモオタ「それならば話は別でござるっ!」

魔女娘「えっ」


キモオタ「さあ、その新聞紙の杖をドアの隙間から差し入れるでござるよ…ウェヒヒ」

魔女娘「うぅ…ホウキなんだけど…」スッ

キモオタ「そう、もうちょっと奥まで…その辺その辺…デュフッ」


魔女娘「これが悪戯になるんですか?」キョトン

キモオタ「オゥフ…ナイロン紐のフサフサが実に小悪魔的な悪戯でござるぅ…」ゴソゴソ

魔女娘「ふぇっ? なんか動かしてる…」


キモオタ「…ロリ娘が丸めた新聞紙が拙者の拙者にジャストフィット、オゥ…イェァ…シーッ、ハーッ」ハアハア

魔女娘(…暗くてぜんぜん見えない)


キモオタ「おおおおお! 昂ぶってきたでござるぅぅぅ!」コスコスコスコス

魔女娘「あ、あの…」

キモオタ「……フォックス2…ッ! …オゥ…ィェス…ッ…ブルズアーィ…」ビクンビクン


魔女娘「えっ? だ、大丈夫ですか…!?」

賢者「…お嬢さん」

魔女娘「へ?」


賢者「とっておきのお菓子を持ってこよう。代わりにこの杖は貰ってもいいかい?」

魔女娘「あの…人が変わりました?」

賢者「とんでもない、元から君の前には紳士一人しかいないさ…少し待っていてくれ、ズボンが冷たくてね」

魔女娘(持っていかれちゃった…ホウキって言ったのになぁ…)


………



魔女娘(…結局、ホウキは返してもらえなかった)

魔女娘(なにをしてたのかわかんないけど、まあ…悪いヒトじゃなかったのかな?)

魔女娘(私がしたいのは、あんな意味のわかんない悪戯じゃなくて)ハァ…


魔女娘(だけどなんかちょっと高そうなチョコレートもらっちゃった)

魔女娘(『なけなしのお金で買った』って言ってたけど…)

魔女娘(あーる…おー…ロイズ? 紙袋にも入ってるし…うまい棒とか一緒に入れちゃお)ガサガサ


魔女娘(あとは二階の三部屋…女の人って言ってたなぁ)

魔女娘(いい人ばかりでありますように)


魔女娘(…なんのお菓子も無いって人がいればいいな──)


ピーンポーン、ピーンポーーン…


《はーい》ガチャ

魔女娘(う、やっぱり女の人はインターホンで出るんだ)アセアセ

《…あら? どなたー?》

魔女娘「あ…と、Trick or Treat!」

《えっ…? あぁ…もしかして、近所の子なのかな。ハロウィンで来てくれたんだ?》

魔女娘「はい」


《嬉しいなぁ、ちょっと待っててね! お菓子持って出るから!》ガチャッ

魔女娘「あの…無理には…っ」

魔女娘(…切れちゃった、待ってよう)


…カチャッ


女「ようこそ、ハッピー・ハロウィン!」ニコッ

魔女娘(おぉ…ちゃんとハロウィンらしく返された)ジーン…


女「かっわいい! いいね、手作りの魔女衣装!」

魔女娘「ありがとう…」テレテレ


女「はい…これ、お菓子。入れる袋とか…あるね、よかった」

魔女娘「頂きます」ゴソゴソ

女「あと、これ! 持って帰るには適さないから、食べてかない?」

魔女娘「わぁ、かぼちゃパイ…手作りなんですか?」

女「うん、焼きたてだよー」


魔女娘(…パイはあったかい内に食べたいなぁ)ゴクリ

女「ふふーん、目が『食べたい』って言ったね? どうぞ、上がって──」


………



女「飲み物、熱々のパイには冷たい牛乳がいいと思うんだけど、飲める?」

魔女娘「はい、牛乳好きです」

女「じゃあ座っててね」


魔女娘(わぁ、アパートはそんなに新しくないのに綺麗な部屋)キョロキョロ

魔女娘(やっぱり女の人だなぁ…)

魔女娘(…あれ?)

女「はーい、お待たせ……あら、見つかっちゃった」クスッ


魔女娘「あそこに掛けてあるのって、魔女の衣装…?」

女「うん、今日のために縫ったんだよー」


魔女娘「すごい…私の衣装とはぜんぜん違う…」

女「そんなことないよ、充分可愛いと思うな」

魔女娘「そうかなぁ」


女「あとは…そうね、杖かホウキでもあればもっと良かったかな? なーんて、さ…食べよ?」

魔女娘「う…」

女「…ん?」

魔女娘「実は──」


女「──そっか、取り込まれちゃったのか」モグモグ

魔女娘「はい…なんでかはわかんないんですけど」モグモグ

女「…まだこれからも他のお家を回るのかな?」

魔女娘「うーん…せめてこのアパートの部屋は全部」


女「……よしっ」スクッ

魔女娘「?」


女「紙粘土で作ったからちょっと重いんだけど、いいよね」

魔女娘「…杖? それも作ったんですか? すごい、ちゃんと先に宝石みたいなのもついてる…」

女「ギュッと絞った新聞紙を芯にして、先のはちょっと特別製なんだ。はい、どうぞ…きっと魔法が使えるよ?」

魔女娘「えっ? こ、これ…」

女「あげる、うん…よく似合ってる!」


魔女娘「でも、それじゃおねーさんのが…!」

女「いいの、貴重な情報をもらったしね」

魔女娘(情報…?)キョトン

女「それにこのパイをトレイに載せて持っていくとしたら、杖を一緒には持ち難いなぁ…って思ってたんだ」


魔女娘「…仮装した人がお菓子を持っていくんですか?」

女「ふふっ…そうだね、ちょっとおかしいけど。でも、そうするつもり」

魔女娘「あはは…それじゃTrick or Treatって言われても、相手が困っちゃいそう」

女「じゃあ、お菓子あげる代わりに悪戯しちゃおうかな?」クスクス

魔女娘「おもしろい」クスッ


女「……いっそ、悪戯してくれたらいいんだけどね」ボソッ

魔女娘「え?」

女「『好き』って言ったら、悪戯してくれるかな…? なんてね、あはは」


………



魔女娘「──ごちそうさまでした」ペコリ

女「どういたしまして」

魔女娘「杖、本当にいいんですか?」

女「うん、いいよ。可愛い魔女さんに持ってもらえて嬉しい」ニコッ


魔女娘「じゃあ、ありがとう。おねーさんも良いハロウィンを」

女「こちらこそ、来てくれてありがとう。…それと、確認なんだけど」

魔女娘「?」


女「一階…全部の部屋の人、居たんだよね? みんな一人で」ボソボソ

魔女娘「はい、さっきは確かに」

女「よしっ…がんばってみるかっ!」

魔女娘「…? が、がんばって…」


………



魔女娘(なにをがんばるんだろ)テクテク

魔女娘(…まあいいや、すごくいいヒトだったなぁ)

魔女娘(杖、かっこいい…)ニヘラ


魔女娘(あと…ふた部屋、順番に真ん中の部屋から行ってみようかな)

魔女娘(…なんか今までになく生活感溢れる感じの玄関だなぁ)

魔女娘(肥料のボトル挿した植木鉢とか、モップや竹ぼうきが並んだ傘たて)

魔女娘(…割と年配の人の部屋かな?)

魔女娘(まあ二階はみんな女の人って言ってたし、よしっ…呼び鈴押してみよう)


ピーンポーン、ピーンポーーン…

…ガチャッ


魔女娘「ふぇっ」

大家「はいはい、どなた?」

魔女娘(お…女の人でもいきなりドア開けるんだ…)ドキドキ


大家「あら、可愛いお嬢ちゃんねぇ」

魔女娘「あっ…えっと、Trick or Treat!」

大家「おやまぁ! ハロウィンで来てくれたのかい、嬉しいねぇ!」ニコニコ


大家「じゃあお菓子を持ってこなきゃねぇ」

魔女娘「あの、無かったらいいです!」

大家「やだよこの子ったら、こんなオバサンの家に茶菓子が無いわけないじゃないの」

魔女娘「そう…ですか」


大家「…あんた、もしかして三丁目の孤児院の子じゃないかい?」

魔女娘「はい」

大家「ああ、やっぱり。回覧板来てたのよ、子供達が訪ねてくるかもしれないって。でもあなた、一人で来たのねぇ?」

魔女娘「………」

大家「いいんだよ、みんなの分まで持って帰ってあげなさいな。いつも以上に買い置きしてたんだから」

魔女娘「はい」

大家「あはは、オバサンの肥やしにならなくて良かったわ。ちょっと待ってて頂戴ねぇ」パタパタパタ…


魔女娘(みんないい人だなぁ、お菓子いっぱいになっちゃう)

魔女娘(でも、本当は)

魔女娘(私は…)


大家「はいはい、お待ちどうさま。好きなだけ持っていきなさい」ドチャッ

魔女娘「うわ…たくさん」

大家「あなたみたいな子供が好むお菓子があるといいけどねぇ」ニコニコ

魔女娘「あ、ハッピーターン大好きです。ポンスケも、ピッカラも好き」

大家「良かったわぁ、大きい袋出してあげましょうね」

魔女娘「ありがとうございます」


大家「でもその小さな袋、ちょっと高そうなお菓子ねぇ。お隣の女さんからでも貰ったのかしら?」

魔女娘「ううん、一階の…こっちの端っこの部屋の人です」


大家「えっ…キモオタさんかい!?」

魔女娘「たぶん…」


大家「あの人、部屋にいるのね……そう…」ホッ…

魔女娘「…?」

大家「どうだった? 元気そうだったかい?」

魔女娘「いえ…ドアの隙間からお菓子をもらっただけで…」


大家「…あなたに言っても仕方ないんだけどねぇ…あの人、アルバイトしてたお店が潰れちゃったとかで」

魔女娘「ああ…そういえば、私を家賃の取りたてだと勘違いしてました」

大家「!! …それで、なんて!?」ガシッ

魔女娘「へっ?」ビクッ


大家「あの人、他になにか言ってなかったかい!?」

魔女娘「え、ええと…お金は無いから払えない…って」


大家「…………馬鹿だねぇ…」ボソッ


魔女娘「…はい?」

大家「なんでもないわ、教えてくれてありがとうね──」


………



魔女娘(すっごく優しいおばさんだったけど…最後どうしたんだろ)

魔女娘(キモオタさん? …のこと、話しちゃったのマズかったかなぁ…)


魔女娘(大きな紙袋も貰ったし、持って帰るのも安心)

魔女娘(お菓子、もう充分あるけど…でも残りのひと部屋も呼び鈴押してみよう)

魔女娘(このアパート、みんないい人だし)

魔女娘(きっとこの部屋の人も──)


──ガチャッ…パタン

魔女娘「…あ」


魔女娘(杖くれたおねーさん、魔女の衣装で出てった。…何の事かわかんないけど、がんばってね)

魔女娘(…よしっ、私も最後のひと部屋がんばろっ)フンス


ピーンポーン、ピーンポーーン…

…シーン…


魔女娘(…あれ? お留守かな)


ドタッ!


魔女娘「ん?」


バタバタバタバタ…ッ!

…ガチャッ!


スイーツ「DQN!?」バッ

魔女娘「ひゃっ!?」


スイーツ「……ちがぅ…?」ハァ…ハァ…

魔女娘「あ、あの…?」ビクビク

スイーツ「DQNがゎざゎざ謝りにきてくれたのかと思ったょ…」シュン…

魔女娘「なんかごめんなさい…」


スイーツ「そんなワケなぃょね…ァィッゎゥチのコトなんかどぅでもぃぃ…」

魔女娘(どうしよう…なんか変な空気…)モジモジ

スイーツ「…で、アンタゎ?」

魔女娘(うっ…)


スイーツ「ぃたずらなら今ゎゃめてょ……ウチ、そんな気分じゃなぃ…」

魔女娘(…悪戯)ピクッ

スイーツ「…はぁ…もぉマヂ無理…ピノたべょ」

魔女娘(違う…私がしたいのは──)

…ギュッ

魔女娘(──こんな悪戯じゃないっ!)


スイーツ「ばぃばぃ」スッ…

魔女娘「…とっ…」

スイーツ「?」


魔女娘「Trick or Treat!」


魔女娘(怒られるかな、落ち込んでる時に…)ドキドキ

スイーツ「……それって」

魔女娘「うっ」ビクッ


スイーツ「知ってるょ…そっか、今日ゎヘロインだったょね…」

魔女娘「…ハロウィン」


スイーツ「杖、かっこぃぃじゃん…オーマイハニーみたぃ」

魔女娘(もしかしてハーマイオニーかな…)

スイーツ「来てくれてァリガト…ぉ菓子だょね? 待ってて」


魔女娘「あの…無かったらいいです!」

スイーツ「…ぇ?」

魔女娘「いえ…だから、お菓子なかったら…」


スイーツ「アンタ…ぃぃコだね」クスッ

魔女娘「…!」ピクッ


スイーツ「でもだぃじょうぶ…お菓子ぁるょ」

魔女娘「いい子じゃ…ない」

スイーツ「…?」

魔女娘「私、いい子じゃない…っ!」


魔女娘「お菓子が無いならいいって、遠慮して言ってるんじゃ…ないの…」ジワッ…

スイーツ「ぉ菓子なかったら、ィタズラされるんだょね?」

魔女娘「!!」ドキッ


スイーツ「アンタ、ィタズラがしたかったんでしょ…?」

魔女娘「……ん」コクン


スイーツ「ゴメンね…先に気づいてぁげられなかった。ゥチ、バカだから…」ナデナデ

魔女娘(──ずっと、いい子にしてた)ギュッ

スイーツ「してもぃぃょって言ゎれてするィタズラなんか、嬉しくなぃょね」

魔女娘(施設には悪戯っ子もいたけど、職員の人達を困らせる事…私はできなかった)ポタッ

スイーツ「…ちょっと待ってるんだょ?」スッ…

魔女娘(だから…今夜は悪戯がしたくて、他のみんなはお菓子目当てで集まってたから、わざとはぐれて)ポロポロ…


スイーツ「ぉ待たせ、アイスしかなぃから…ここで食べなきゃだケド」

魔女娘「ううん…ありがとうございます」ゴシゴシ

スイーツ「ゴメンね、ィタズラさせてぁげられなくて」

魔女娘「いいんです」クスン


スイーツ「はぃ、ウチこれ大好きなんだ」ニコッ

魔女娘(ピノ…?)ハッ…

スイーツ「…そぉぃぇば、ァィッの部屋に食べかけのャッぉぃてきちゃったなぁ」ボソッ


魔女娘「もしかして…おねーさんって、一階のこっちの端っこのおにーさんの…?」

スイーツ「アンタ、ァィッのトコにも行ったんだ…機嫌悪くなかった?」

魔女娘「大丈夫…でも、ちょっと話を聞いたの」

スイーツ「話…?」


魔女娘「うん、昼間に他のヒトから電話があったこと、それでおねーさんが怒っちゃったこと──」

スイーツ「ァィッ…こんな小さぃコに話しても仕方なぃのに」


魔女娘「──『悪いのは自分だ』って、おねーさんのこと『大事にしたい』…って」


スイーツ「ぇ…」

魔女娘「今夜は二人でハロウィンパーティーしようと思ってたって言ってた」

スイーツ「ァィッが…ウチのために…?」

魔女娘「ケーキも買ってたって」コクン


スイーツ「……やっぱ…ウチ、バカだ」グスッ

魔女娘「ま…まだまだ日が暮れたばっかりです、今からでも訪ねてみたら…!」

スイーツ「ぅん、そだね…ぁゃまんなぃとね」ゴシゴシ


魔女娘「きっとおにーさんは怒ってないです」

スイーツ「ぁは…マスカラがヘンになっちゃった…直してから行かなきゃ、玄関入ってピノ食べてて──」


魔女娘(……結局、悪戯はできなかったなぁ)モグモグ

魔女娘(でもお菓子、いっぱいもらった)プスッ

魔女娘(…満足しなきゃ)パクッ


魔女娘(うん、楽しかった)モグモグ

魔女娘(お菓子だけじゃない、かっこいい杖ももらったし──)


『──きっと魔法が使えるよ?』


魔女娘(…魔法…かぁ)


魔女娘(ピノ、食べ終わっちゃった…)

魔女娘(おねーさん、まだ奥に入ったままだなぁ)


魔女娘「あのー、ごちそうさまでした…」

スイーツ「ぁ、食べぉわったんだ! ゴメンね、今ちょっと鏡の前から動けなぃょ!」

魔女娘「ありがとうございました。あの…みんなが心配したらいけないから、そろそろ帰ります」

スイーツ「ぅん、見送れなくてゴメンね…! 空き箱ゎ置ぃとぃてね!」


魔女娘「はい、おねーさん…あの…が、がんばって!」フンス

スイーツ「……泣かせなぃでょ、またメイクがヘンになっちゃぅ。もぅマヂ無理…すっぴんにしょ…」

魔女娘「あぅ、ごめんなさい──」


………



魔女娘(帰ろうっと……みんな、私がはぐれたの気づいてるかな)カツン、カツン

魔女娘(階段からだと周りよく見えるけど、姿は無いなぁ…)キョロキョロ

魔女娘(…施設、帰ってみればいっか)カツン、カツン


女「あっ」

魔女娘「あれ?」

女「うぅ、ぐずぐずしてたら見つかっちゃった、早く開けてよー」モジモジ

魔女娘(手にかぼちゃパイ…おねーさんが訪ねるつもりだったのって──)


…ガチャッ

男「──はい?」

女「と…Trick or Treat!」


男「えっ…! お、女さん…!?」

女「あの、ハロウィンだからっ、そのっ…!」

男「そっか…ハロウィン……魔女の衣装、似合ってるよ」テレテレ

女「ありがとう…」テレテレ


『──好きって言ったら、悪戯してくれるかな…? なんてね』

魔女娘(おねーさん…)


男「…でも、参ったな。もう、お菓子無いや」

女「あはは、逆に持ってきちゃった。ほら、これ…」

男「かぼちゃパイ…作ったの?」

女「うん、がんばりました」フンス


女「だから……」スッ…

男「うん?」


女「……てーいっ!」スポッ


男「うわ、なにを…!?」

女「えへへー、狼男風耳つきニット帽。これで男さんも仮装してるからお菓子もらってもいいでしょ?」ニコニコ

男「…参ったね、こんな可愛いの似合わないよ。照れくさい悪戯だなぁ」クスッ


魔女娘(…悪戯──)


…カツン、カツン、カツン

魔女娘(…あれ、真ん中の部屋のおばさん)


ピーンポーン……ドタタタタタッ


キモオタ「──ま、またロリ娘魔女が来てくれたでござるかっ!?」ガチャッ!

大家「はいはい、Trick or Treat。悪かったねぇ…魔女じゃなくて鬼婆で」ギロリ

キモオタ「ぎゃああああああぁあぁぁっ!? お菓子ならもう無いでござるよおぉおぉっ!!」

大家「何言ってんだい! 職も失った貧乏人からお菓子もらおうってほど落ちぶれちゃないよっ!」


キモオタ「でも家賃を払う金も無いでござる! どどどうかお慈悲を…!!」ガクブル

大家「アンタ、それで引き篭もってたのかい。あたしに会ったら二か月分の家賃を取り立てられると思って…」

キモオタ「堪忍でござるうううぅうぅぅ!!」


大家「ほんっとーに馬鹿だねぇ…今までだって家賃こそ払っても給料日前にはお金が無くて喘いでたじゃないか」ハァ…

キモオタ「オゥフ…め、面目ないっ…」

大家「しょっちゅう多めに作ったお鍋を持ってきてやったこと、忘れちゃないでしょう? ほら、これはさっき作った肉じゃが」グイッ

キモオタ「………」


大家「アンタの懐は解ってんだよ…ちゃんと外に出てお仕事を探して、家賃なんざその後でいいから」

キモオタ「…大家殿……」グズッ


大家「食事も差し入れてやるから、元気出しな? 全く…あたしゃ、中で孤独死でもしてんじゃないかと心配したよ」

キモオタ「大家殿おおおぉおぉぉ!!」ウワアァァァン

大家「やれやれ…会っていきなりあんだけ驚かれて、今度は大泣き。しっかり悪戯した気分だよ」クスクス


魔女娘(…悪戯──)


…カツン、カツン、カツン

魔女娘(今度はピノのおねーさんが…)


ピーンポーン……ガチャッ

DQN「うぇ?」


スイーツ「DQN…! とりっくぉぁとりぃとだょ!」

DQN「は?」

スイーツ「昼間ゎ信じてぁげられなくてゴメン…ウチ、ゃっぱりヘロインをアンタと過ごしたぃょ…」

魔女娘(ハロウィン…)


DQN「…なんでそんな下向いてんだよ、もういいって」

スイーツ「でも…ウチ…」シュン…

DQN「悪かったのは俺なんだって…入ろーぜ、ケーキあるべ」

スイーツ「………」グスッ


DQN「おい──」

スイーツ「──ばぁっ!」ニコッ


DQN「うぉっ!? えっ!? うぇっ? ス…スイーツ…!?」ビクゥッ!

スイーツ「ぇへへ…すっぴんだと、ゎかんなぃ?」

DQN「ビビッたぁ…お前、眉毛どっかいってんじゃん」クククッ…

スイーツ「ひどーぃ、もぅマヂ無理…」

DQN「普段の仮装をしてないのに一番ビビるとかウケる。もう悪戯したからケーキやんねぇ」ケラケラケラ


魔女娘(…悪戯──)


魔女娘(──人をびっくりさせて)

魔女娘(そのあと笑顔になってくれる)

魔女娘(私だって…そんな悪戯がしたかった)


…ギュッ!


魔女娘(杖…本当に魔法、使える?)

魔女娘(ここにいるみんなから、もうお菓子をもらっちゃったけど)

魔女娘(今から勇気を出して悪戯しても、笑顔になってくれる…そんな魔法──)スゥッ…


魔女娘「──お願いっ!」フワッ!


ピカッ…!!キラキラッ──

魔女娘「えっ…!?」


女「あ…」

男「おお、すごいね」

大家「あらまぁ、素敵じゃない」

キモオタ「オゥフ…魔法少女を見たでござる…」

DQN「カッケーじゃん」

スイーツ「マヂきれぃ…」


魔女娘(光った…杖の石が……魔法使えた…!)


魔女娘「…悪戯──」グッ…


…タタタッ!


魔女娘「──おねーさんっ」

女「ん?」

魔女娘「Trick or Treat!」ビシッ!


女「えっ…も、もうだめだよ! このパイは男さんに…!」アセッ

魔女娘「じゃあ、悪戯しちゃいますっ!」バッ…!

女「へっ…!?」


魔女娘「えいっ! スカートめくりっ!」ブァサッ!

女「きゃああぁっ!?」


男(…白、わりと勝負系)

キモオタ(くっ…ロリ趣味な拙者でも目はいくでござるっ!)

DQN「うぇーーーぃ」ニヤニヤ


女「もうっ! なんてコト──」キッ

魔女娘「──バラしちゃう、このおねーさんはねっ!」ビシッ


男「ん?」

魔女娘「おにーさんに悪戯して欲しいって言ってたよ!」

女「ちょっ…言っちゃだめええぇえぇぇっ!!」


男「女さん…」

女「違うっ! 違うよ!? いや違わないけどっ!」アタフタ


DQN「ほほーぉ?」ニヤニヤ

スイーツ「ぉしぁゎせにだょ」クスクス

大家「うるさくしたら承知しないよ」

キモオタ「もげろ」


女「あうぅ…もう死ぬ…」プシュー

男「女さん、怒っちゃだめだよ…ハロウィンだし」

女「…うん」

男「でも悪いけど、悪戯するまではもう少し時間かけさせてもらうね」クスッ

女「改めて言わなくていいからっ! ……でも、嬉しかったり」ニコッ


魔女娘(…よかった、笑ってくれた…魔法が効いたんだ)ウルッ


魔女娘「あ、あの…お菓子ありがとうっ! 楽しかったです、さよならっ!」ペコッ

クルッ…タタタッ──


大家「──待ちなさい」

魔女娘「……っ…」ビクッ



大家「…来年もおいでね、今度はお友達も一緒に」ニコッ

男「そうだね、今度は安い駄菓子じゃないもの用意しとくよ」ニコニコ

女「来年はかぼちゃプリンにしよっかな」クスッ

スイーツ「じゃぁ、ピノのパーティーパック買っとくょ!」フンス

キモオタ「に、人数増えるなら今度はナッティバーを取寄せておくでござる!」デュフフ…

DQN「暴君ハバネロ買っといてやらぁ」クックックッ


魔女娘「…はいっ──」ニパッ


………



魔女娘(楽しかった…嬉しかったなぁ)テクテク

魔女娘(あとは、はぐれちゃった事…みんなに怒られなきゃいいな──)


チビフランケン「──あっ! いた!」ハァ…ハァ…

魔女娘「うっ」ビクゥッ

チビフランケン「…お前、なんで勝手にどっかいくんだよー。めっちゃ走って探したぞ…」フゥ

魔女娘「ご…ごめん」


チビフランケン「施設長が最低でも2人以上で行動するようにって言ってたじゃんか、悪りーんでやんのー」ケケケッ

魔女娘「…大丈夫だもん、怒られないもん」フンス

チビフランケン「なんで?」


魔女娘「この杖があったら魔法が使えるからだよ……ほらっ!」フワッ!


ピカーッ!キラキラキラ…


チビフランケン「うわ、なにそれすげえ!」

魔女娘「いいでしょ」フフリ


チビフランケン「あー、なーんだ…先の石みたいのって、弾んだり叩いたらしばらく光る100均のスーパーボールじゃん」

魔女娘「ち…違うしっ! 魔法だし!」ムッ

チビフランケン「魔法なんかねぇよーだ」ケラケラ


チビフランケン「馬鹿言ってないで帰るぞ、もうみんな戻ってるって」

魔女娘「う、うん…」


…ギュッ


魔女娘「ふぇっ…!? 手…繋ぐの?」ドキッ

チビフランケン「うっせ、二人で回ってたことにしてやっから…こんくらい我慢しろっ」テレテレ

魔女娘「いいの…?」キョトン

チビフランケン「特別だかんなっ! 怒られたくないだろ?」プイッ

魔女娘(なーんだ──)


タタタタッ…


魔女娘(──ほらね、魔法…ちゃんと効いてるもん)クスッ


【おしまい】

過去作置場、よかったら覗いてやって下さい
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