タイトルは考えてない。(2)

「あ、そういえばさ」

嫌なにやけ方をした悪友が、一昨日買ったと自慢してたmy箸の先端を俺に向ける。

頭が良くて顔も良い、さらには怪我をするまではサッカー部では次期主将なんて噂もあったコイツが、こーゆー笑い方をする時は大抵変な事が起こる。

例えば、学校のプールがいきなり温水になったり、煩かったらしいptaのおばさま方が何故か沈静化したり。

それもこれも全て同じ人物の影響で起こるから凄い事だ。

「・・・またお嬢様ネタか?」

そう、俺や悪友の通う高校に何故か通っているお嬢様が原因なのだ。

それも箱入りの中の箱入り娘で、俺達一般人の常識なんてつゆ知らず、常に自分だけの常識街道を突っ走る学校の有名人。

「うん、その通り、またまたお嬢様ネタだよ」

で、今のこの状況。
長い付き合いから、コイツの話はどうなっても最後まで聞く事になるのは分かってる。

・・・分かってしまっているから面倒臭い。
噂話をするなら下ネタやらで馬鹿騒ぎする方が好きな人間だしな、俺。

「ははっ、そんなに嫌な顔しないで欲しいなぁ」

「うるせぇ」

嫌な笑顔だ、全く。
こっちは弁当の御菜のほうれん草が歯と歯の間に詰まってる事もあって、不快感は増す一方なのに。

「まぁ、今回は簡単に言うよ。勿体ぶらずにね」

「・・・ふーん」

友曰く無知な相手に手に入れたネタの話をする事は、自分がシュートを決めた時の悔しそうな相手ゴールキーパーの顔を見た時と似た爽快感があるらしい。

確かに、噂話や事件の話に関しては興味すら持たない俺は良い話し相手になるだろうな。

「ズバリね、フられたんだよ僕!」

・・・自分が失恋した話を楽しそうに話す奴を見たのは初めてだ。

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