進研ゼミの闇 (5)






「明日から高校生かぁ」

ベットに寝ころびながらアタシはそう呟いた。
そう、明日は入学式なのだ。中山高校。そこが私の母校となる。

グレーのブレザーに臙脂色のスカートとネクタイを着て、明日から高校生活の第一歩を踏み出す。
アタシと同じく明日から新一年生になる子は今、どんな気持ちなのだろう? 輝かしい高校生活を想像しているのか、それとも新しい環境に不安を抱いているのか……

どんな部活にはいろうか、友達はできるのか、クラスになじめるのか、そんなことを考えているのかもしれない。

羨ましいなって思う。だってそんなことを思っているような人たちは多分、自分が通いたくてこの高校に受験したのだから。そして合格した。
アタシは違う。

アタシには何もなかった。期待も希望も不安も何もない。ひとつ有るとすれば、むなしさ、だ。

勉強も部活も恋も全部、必死に頑張った。手に入れようとがむしゃらに、わき目も振らず努力した。
塾も休まず行ったし、予習、復習も欠かさなかった。部活にだって時間を見つけては、空き教室で練習した。
恋だって彼にふりむいてもらおうと、服装や髪形に気を使って、積極的に話しかけに行った。
でも全部だめだった。全部、中途半端で何も得ることがないまま、ここまで来てしまった。

ふと、アタシはあの子のことを思い出す。
部活を引退してから、お互いに教室で会うことはあっても遊んだりすることや連絡を取ることはしなくなった。受験期だったからという理由もあるけど、
私にはそんな精神的余裕もなかったから。

でも受験も終わり、中学も卒業した今でも、一度もあってない。学校が終わって直ぐの頃は、遊びのメールは度々、彼女から来たけれど、
適当な理由をつけて全部断った。そのうち、来ることもなくなった。

アタシとは正反対に全てを手に入れた人。勉強も恋も部活も全てがうまくいった人。

どうしてこんな差が開いてしまったのだろう。四月や五月の段階ではそんな差はなかったのに……
いや、むしろアタシのほうが優れていたと思う。

けどいつの間にか溝ができてしまっていた。もうどうすることもできない深い溝が。

「……っ…うっ……」

涙が零れた。どうして同じ人間なのにこんなにも違うんだろう。あの子とアタシの何が違うのか。
同じクラスで、同じ塾で、同じ部活で、同じ人が好きで……何が、違うんだ。何がダメだったんだ。

何度目なんだろう。何回、同じことをおもったんだろう。そして涙を流すのは何度目だろう。

明日から入学式だ。また三年間、同じような生活が始まる。
もう、こんな思いはしたくない。








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とりあえずプロローグです
進研ゼミのバッドエンドが元ネタです。
週一ぐらいで投下してきます

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