自殺未遂の女の子を監禁した話(75)
「なあ、その首についてるリストンバンドみたいのって、何?」
「これ? 痕があるんだ、痕が。見せたくないから」
「……首つり?」
「うん、首つり」
「何で死ねなかったの?」
「紐が千切れちゃった」
「だから声もちょっと枯れ気味なの?」
「そうだよ、変?」
「別に、俺は好きな声」
「そう、よかった」
「ていうか、それ首輪みたいだね」
「女の子にそういう事いうんだ? ごしゅじんさまー、とかがいいの?」
「いや、単純にそう思っただけ」
「大体、監禁してるのに、今更首輪とかってどうなの? 抜けてるよね 君」
「そこまで縛るつもりないし、どうせここから出ないだろ?」
「出ないけど、死んじゃうかもよ? 兎みたいに」
「寂しいから自殺すんのかお前」
「冗談だって、冗談」
「知ってる」
「でも、私が何してたかはしってるでしょ? 縛っておかないと、勝手に死んじゃうかもね」
「練炭は手の届かない場所にある」
「舌噛むかもよ?」
「衰弱死したがる奴が舌噛んで死ねるかよ」
「……むぅ」
「じゃあ、ご飯食べないで衰弱死! 無理矢理食べさせないと」
「オムライスとハンバーグ、どっちがいい?」
「ハンバーグ!」
「……それで? 今日はハンバーグ食って、明日死ぬの?」
「うぐっ……きょ、今日のごはんがまずかったら、人生詰まんないから死んでやる!」
「はいはい、明日もよろしくお願いします」
眠いから寝ます
書いて欲しいお題とかあったら多分書く
そんなに長くない おやすみ
「それで、ハンバーグのお味はどうでした?」
「…………」
「不味かったら死んじゃうんだったかなー、怖いなー、大丈夫かなー」
「……明日は」
「ん?」
「明日はオムライス! オムライスが不味かったら死んでやるからな!」
「はいはい」
いつも通りのつまらない日々。
毎日毎日、代わり映えのしない光景。
何の為に生まれてきたのだろう。何のために生きているのだろう。
それが頭の中に浮かんだ時に、何も残せないのだとわかってしまった。
「……こんな軽い気持ちで、死んでみようとか、考える奴もいるのかな」
自分の心境を表す何かが欲しかった。
何気なく、自殺サイトなんてものを開いたりしたのだ。
「ただいま」
「……何、お帰りって言ってほしいの?」
「言ってくれよ、家にいるんだろ」
「他人なんだけど」
「俺はその他人に、ただいまって言っちゃったんだけど」
「……寂しい?」
「うん」
「……そっか」
「――――おかえり」
「思ったんだけどさ」
「なに?」
「返ってくるの早くない?」
「学生だよ、今日は2限」
「へー、大学行ってるんだ」
「ここから近くの」
「まず、ここがわかんないんだけど」
「そこのカーテン開ければ景色は見えるけど」
「……開けた所で、ここわかんないよ」
「じゃあ聞けば教えるけど」
「監禁でしょ? 場所も分からない方が雰囲気ってでるんじゃないの?」
「既に雰囲気もあったもんじゃねーだろこの状況」
「監禁した人と仲良くお話できるなんて、神経太いよなお前」
「死のうとしてたんだもん、今更怖くないよ」
「そういわれちゃそうだけど」
「それに、布団は柔らかいし、ご飯美味しいし、漫画とか本もいっぱい置いてあるし」
「そうだな、そこ俺の部屋だし」
「……ん? あれ?」
「……用意できなかったの」
「真っ黒で、コンクリートな部屋の事?」
「そうだよ、できなかったんだよ」
「……まあ、見た感じマンションだもんね、ここ」
「それなりにいい場所なんだよ! 3LDKのマンションなの!」
「あ、それは凄いかも! じゃあ結構裕福なんだね」
「そういう事じゃねえんだけど……」
「じゃあ、部屋が暗い感じなのは?」
「電球が常に寝る前の明るさだから」
「紐は?」
「切った」
「この黒いシャーってして窓ふさいでるのは?」
「買ってきた」
「……わー、くらいへやでかんきんされてるー、こわいー」
「やめろ、惨めになるからやめろ」
黒いシャーってのは本当に名前がわからない
でもそう言った方が可愛い感じしないですか
プロット見直したいからここまで またあとで
そもそも30分プロットに見直す所なんてなかった
「最低限の頑張りはわかりました」
「……なんだこの流れ、まあいいけど」
「つまり、本当に行き当たりばったりだったんだね」
「そうだよ、偶々睡眠薬飲んでるお前を見つけただけだよ」
「止めなくてもよかったのに、こっそりやってるんだし、迷惑じゃないでしょ」
「どうせ死ぬんなら付き合えよ、やってみたかったんだから」
「……それ、軽く犯罪……もう犯罪だったね、これ」
そこにあったのは、俺みたいな気楽な、能天気な考えなんかじゃなかった。
絶望した人達の苦悶の声、立ち直れそうもない人生のあらすじ。
共感を得る為に書いているのに、理解されても死ぬだけ。
かけられる言葉なんかないのが、余計悲しくなった。
そんな絶望の羅列の中に、一つ、短く、感情がひしひしと伝わる物があった。
俺は、なんとなく、それが自分と似ていると思った。
「それで、今日のオムライスはどうでしたか」
「……」
「これがまずかったら死なれるんだろうなー、舌でも噛まれて死ぬんだろうなー」
「……ねぇ」
「ん?」
「これ、いつまで続けるの?」
「これって?」
「監禁、いつまで私を此処に閉じ込めておくつもりなの?」
「飽きるまで」
「……食費とか、大変なんじゃないの?」
「少し裕福だから、俺」
「……今はどうなの?」
「楽しいよ、なんでかはわかんないけど。だから大丈夫じゃね」
「……そっか」
「じゃあさ」
「はい」
「私が監禁されてたのー、助けてーとか飽きた後にいうっていったら、どうする?」
「お前身寄りないんだろ」
「で、でも私可愛いじゃん? 可愛いは正義じゃん? だから警察とかも相手にするかもしれないじゃん?」
「自分で言うかよそれ」
「それはいいの! ……それで、どうするの?」
「言いたきゃ言えば? 相手されるかわかんねーけど」
「一周回って肝が据わってるよね、君」
「それに、死にたいんだろ? 追い出したらさっさと死ぬんじゃないの?」
「……そうだね、そう、すると思う」
誰にも必要とされなかったのが、私だった。
パパもママも、いない振り。暴力とか、そういう事をされた訳じゃなくて、ただいない扱い。
いつもお金だけ置いてあって、最初は忙しいのかなって思った。
構ってほしくて、家出した。怒られるかなとか、少し期待した。
見てくれるかなって、期待したのに。
二日ぶりに家に帰った。そこはいつもの空間だった。
テーブルの上には、いつものようにお金が開いてあるだけ。
私が二日受け取らなかったから、その分上乗せしてあったけど。
そこで気づいた。忙しいわけじゃなくて、私に無関心なんだって。
「……んぅ……」
夢を見た、嫌な夢だった。思い出したくない事だった。
部屋には私一人、寂しくなった。怖くなった。
「……」
彼に言われた言葉を思い出す。飽きるまで、どうせ逃げないし、死なないだろう。
何を根拠にそんな事を言うのだろう。大体、私の、もとい彼の部屋の中に、電話線がつながった電話が置いてあるじゃないか。
このまま外にだって逃げられる。彼は寝てるのだから。
何を根拠にいっているんだろう。
「……ばっかみたい」
誰に呟いたんだろう。もう一度、眠りにつくことにした
見ての通りながらです
疲れたからまた後で
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