【安価】 能力者同士がバトルを始めたようです 【コンマ】 (137)

ここはとある無人島

森や湖もあれば、高層ビルが立ち並ぶ都会も存在する


今、そこに「最強」と噂される能力者達が、時間や空間を超えて様々な理由によって集められた



「勝てば望みを何でも叶えよう。未来は力で奪い取れ!」



誰にも語られる事のない、歴史上、最も稀有な闘いが……

今、始まる!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1412821611

勝手がわからんから、とりあえずチュートリアルとしてキャラ三名だけで進行

五人募集して、そっから独断と偏見で三人選びます

戦闘の勝敗とかはコンマで決めるつもりだから、負けても泣かない、諦めて

【キャラ作成シート】
詳しく書いても再現出来ないんで、簡単にわかりやすく
名前は下の名前だけで。長いのもご遠慮
吸血鬼とか機械とかの人外でもOK
武器と最後の項目は空白でも可


↓をコピペして使って下さい


名前:
性別:
年齢:
容姿:
武器:
性格(特徴):
能力:
参加理由:
願い:
必殺技名 or 決めセリフ or 口癖:

書き始めるのは多分明日から
今日は募集(五名)だけ
じゃーの

名前:ドラク
性別:男(吸血鬼)
年齢:約250歳
容姿:30歳くらいのダンディーなオジ様
武器:自傷用のナイフと血
性格(特徴):大人の余裕を持つが快楽主義者の狂人で、上手い血を何より好む
能力:基本的な吸血鬼の力に加え、己の血や体外に出た相手の血を操る
参加理由:様々な血を吸いたい
願い:無し(適当に酒などを頼むつもり)
必殺技名 or 決めセリフ or 口癖:お前はどんな味がする?

名前:向端 良夏
性別:女
年齢:27
容姿:身長体重ともに人間の平均より大きめ、性的な部分のみ発育不良
武器:なし。能力頼り
性格(特徴):感情の上下が激しい。嫉妬心も強いが障碍者には優しい
能力:基本相互作用の操作
参加理由:今まで色恋沙汰とかかわりなく生きてきたが、真面に女として生きてみたくなった
願い:不妊治療
必殺技名 or 決めセリフ or 口癖:私は悪くない

名前: 相沢 絽閔(あいざわ ろびん)
性別: 男
年齢: 34
容姿: いわゆるダンディなおっさん、背が高く、脱ぐと凄い(鍛え抜かれた肉体的な意味で)
執事服を着ている。
武器: 己の拳と脚、身体中に隠し持ったナイフ
性格(特徴): 真摯でとても親しみやすい、礼儀正しいが戦闘になるとやけにハイテンションに。
能力: モノの時間を巻き戻したり早めたり止めたりする能力。多少の負担はあるが相手に能力を掛けることと怪我の治癒にも使える。
参加理由: 願いを叶えるためもあるが、自分の実力も試したいというのが密かな思いもある
願い: 主人を絶対的に守れる力が欲しい
必殺技名 or 決めセリフ or 口癖:口癖「あくまで執事ですから…」

名前: 天原 鷹(あまはら たか)

性別: 男(吸血鬼)

年齢: 見た目は20歳(どんな人物にも変身できる)

容姿: 黒髪のクセ毛で中性的な顔立ち,メガネをかける,細マッチョ,服装は白シャツ腕まくりでネクタイ、下はスーツ

武器: 肉弾戦,血液

性格(特徴): 基本冷静だが、周りの人に気を使う事が多く遠慮がち,血を飲まない(飲めるが人を襲わないため)

能力: 吸血鬼の身体能力(他の生物には変身出来ないが、高い自然治癒力),血液を分子レベルに分散し、纏わせた水や砂、炎や風を操る,魔眼による幻覚操作

参加理由: ↓の願いをかなえるため,人間を襲う吸血鬼達を止めるため

願い: 人間と吸血鬼との共存

必殺技名 or 決めセリフ or 口癖:一人称は俺,敬語を使う

そんなことより>>1が5人までって言ってるのにも関わらず案を出してる奴の方が気になる

>>19
てっきり複数集まったキャラの中から5名を>>1が選ぶのだと・・・

最終調整終了。何回かシミュレーションしてみたけど、結局、あと一人追加で

順番からいくと>>9だけど、基本相互作用うんぬんは能力がよくわからんかったから、すまんがパス。ググったけど余計にわからんくなった。諦めて
代わりに>>10を追加

それと、全員分のプロローグ投下

『プロローグ』




F680編

【未来】

『フランス、首都パリ、豪邸内』



主人「」ゴホッ、ゲホゲホ

F680「…………」


主人「」フーッ……

F680「…………」


主人「どうやら私の死も近いようだな……」

F680「…………」

作成乙です
うーんじゃあ重力だけでもよかったんだけど

主人「発明家として名を馳せてより三十年以上……。思い返せば上出来な人生だった……」

F680「…………」


主人「悔いがない、と言えばやはり嘘にはなるが……。しかし、どれだけ科学が進んだところで人は死から逃れる事は出来ない。病からもな……」ゴホッ

F680「…………」


主人「私の体を蝕んでいるのは新種の病気だそうだ。ふふっ……医学者どもは内心ではさぞ喜んでいるだろうな……。未知のものに触れる喜びは私にもわかるさ……」ゲホゲホ

F680「御主人様、アマリ喋ラナイデ下サイ。体ニ差シ障リマス」


主人「そうか……」フーッ……

F680「…………」

主人「そういえば……連合政府から電子メールが来ていたよ……」

F680「…………」


主人「世界七大ロボット……その一つにお前が選ばれたそうだ。しかも筆頭としてな。ふふっ……光栄な事だ」

F680「…………」


主人「もう二十年以上も前に造ったお前が、未だに世界のナンバーワンだ……。私の誇りだよ、お前は……」

F680「…………」


主人「いや、生きた証しなのかもしれんな……。完全なる自律型人工知能。その雛形であり、完成形……。お前を生み出したというそれだけで、私の人生は良いものだった……」

F680「マダアナタノ人生ハ終了シテイマセン」


主人「直に終わる……。そんなに遠くもあるまい……。だから、意識のある内に言わせてくれ……」

F680「…………」





素晴らしい人生をありがとう




パタン……

F680「…………………」


主人の部屋から出たF680……。

何をするでもなく、彼はそこに立ち尽くしていた。

自分の中に生まれた「ハジメテ」の感情。これは一体何なのかを必死で理解しようとしていた。


F680「…………」

ピピッ


ふと、遠方に時空震を感知するF680。

F680「……イカナクテハ」

ドンッ!!


理由もなく彼は飛び立った。

短くも鋭い音と共に下部に取り付けられていたジェット噴射が起動し、あっという間に弾道飛行に移行する。

それは人間で言えば無意識的な行動だった。予感、直感、運命とも言えたかもしれない。無論、機械である彼に、そのようなバグにも似たプログラムなど存在するはずはないのだが。


F680「…………」

夕暮れ時の大空を風を切るように飛行しながら、彼は確信する。

私ハソコニ行ク理由ガアル。スベキ事ガアル。

まるで自分はその為に生まれてきたのだと言わんばかりに。


彼に組み込まれたロボット三原則。それは決して外れるはずがないものだったが、時空震の中に飛び込んだ時からそれはいつのまにかプログラムから消え去っていた……。

『プロローグ』



ドラク編

【中世】


『バルト海、エーランド島、外れの屋敷』


コンコン

ドラク「……?」


ドラク「誰だ?」

コンコン


ドラク「…………」

ドラク「……名乗らぬ客人か。しかも嵐の夜にとはな。遥か昔から嵐の夜の招かれざる客人は不吉しか連れてこないと言われている。私でなくともいい予感を持つ者はいないだろうが、それもまた一興というものか」フッ

ドラク「構わんよ、勝手に入りたまえ。出来れば扉を壊さずにな。鍵はかかっていないし、なにより私はその扉が気に入っているのだ。わざわざイギリスから取り寄せた匠の一品なのだからな」


ギギィ……


ドラク「そう、それでいい。意外な事にもずいぶんと物分かりがいい子じゃないか。おや? ……くく。どうやら本当にそうみたいだな」

幼女「…………」

ドラク「さて、どうする? お前は酒が飲めるクチか? だとしたら地下倉庫に良質のワインが何本でも置いてあるから一本ぐらいは開けるがね。もしも、私を殺しに来たというなら、そこの剣でも槍でも好きなのを使うといい。それはお前の自由だ」

幼女「…………」

幼女「剣はいらないわ。私はおつかいに来ただけだから」

ドラク「ほう……。おつかいにね。こんな嵐の晩に傘もささずにか。なかなか興味深いな」

幼女「そう。私はそれだけの為にここに来たし、それ以外の事をするつもりはないの」

ドラク「ますますおもしろいな……。それに、お前、人ではなかろう? 私の感覚がそう言っている。お前の血はひどくまずそうだとな」

幼女「そう? でも、貴方がそう思うならそれでいいわ。血を吸われるってなんだかぞっとしないもの」

ドラク「ふっ……。それで何を私に伝えにきた?」

幼女「…………」

ドラク「?」

幼女「……でも、その話をする前に」

ドラク「する前に?」

幼女「貴方がお酒の代わりにホットミルクを私に勧めたら、多分私は断らないと思うの。もしも、ハチミツたっぷりのパンケーキまでついていたら飛びはねるぐらい喜ぶかもしれないわ。ついでに、このドブネズミみたいに濡れた体を温めるためのお風呂と、ふかふかで可愛らしい着替えも用意してくれたら、感激して涙を流すかもね」

ドラク「寒いのか……。全く……ちょっと待ってろ」ガタッ

幼女「違う。寒くなんかないもん」ヘクチョン

幼女「はふー///」ポカポカ

ドラク「いい身分だな。まるで本当の客人のようだ。……それで、用件はなんだ? まさか私の屋敷に居候に来た訳じゃなかろう?」

幼女「こんな田舎町はいやよ。私は都会っ子だもん」

ドラク「住めば都だ。何よりここは静かなのがいい」

幼女「……確かにそうね。ここはちょっと不気味なくらいに静か」

ドラク「日常が静かであればあるほど、休日の楽しみもまた増える。これは私の哲学だな」

幼女「お楽しみはやっぱり血なの?」

ドラク「それが最大だな。あとのはオマケだ。酒にしかり、セックスにしかり、音楽にしかり、ギャンブルにしかり、恋愛にしかり。血より興奮を覚えるものなどありはしない」

幼女「そうなんだ。悪いけど、私には全く理解出来ないわ。私は恋愛より上のものはないと思っているから」

ドラク「150年以上生きてからものを言うんだな、お嬢ちゃん。お前はまだ若すぎる」

幼女「かもしれない。でも、だとしたら私はずっと子供のままでいたいと思うけど」

ドラク「至上の快楽を知ればそれもまた変わるものだ。お前が何の人外かは知らないが、お前がその本能に秘めている欲望と欲求は、麻薬より甘く真実の愛よりも強い。他のものなど、道端に吐かれている他人の唾ぐらいにどうでもよくなるほどにな」

幼女「…………」

幼女「……貴方、やっぱり噂通りの人みたいね。話を聞いてるとますますそう感じちゃう」

ドラク「他人の噂に踊らされる事ほどこの世で下らないものはないと私は思っているがね」

幼女「この世界じゃ最強だってお母さんも言ってたわ」

ドラク「身内の話を鵜呑みにする事ほど危険なものもないな」

幼女「だから、招待するんだって」

ドラク「ほう。どこへ? お前の家にか? 恋人や許嫁を探すような年齢には到底見えないがな」

幼女「冗談だと思ってるでしょ?」

ドラク「冗談じゃなければ、逆に興味深いがね。だが、極上の酒と血がある場所でなければ、私は行く気はしないぞ」

幼女「望みはそれ?」

ドラク「そうだな。持参金としてはそれで十分だろう。人の世の欲望など大方やり尽くしてしまっている。他に望むものもさしてある訳ではないしな」

幼女「じゃあ、それにしちゃうね。構わない?」

ドラク「ああ。ついでに浮気の自由と口うるさい姑がいなければ完璧だな」

幼女「そんなのいないわ。いるのは能力者だけよ。じゃあ、行ってらっしゃい」

ドラク「……?」

どういう事だ?

そう尋ねる暇もなかった。

不意に暗闇の深淵に放り込まれたかと思えば、無機質な声が頭の中で響き渡った。


『勝てば望みを叶えよう。未来は力で奪い取れ』


…………おもしろい。

理由もなくドラクは笑った。

あの娘が何者かは知らないが、しかし退屈な日々には飽いていたところだ。

極上の血が手に入るというなら、それも良かろう。向こうが何を望んでいるかは謎だが、あえてその掌の中で踊らされてやろうではないか。


さて、今宵はどんな血が飲めるのやら。


ふと、子供の頃、初めて血を飲んだ時の事をドラクは思い出し、彼は愉しげな笑みを浮かべた……。

『プロローグ』



雨崎群青編

【現代(能力存在世界)】

『日本、東京、ホテルのロビー』


テクテク……

若者「」ペコリ

若者「どうも。お待たせいたしました」ニコッ

群青「いや、そんなに待っちゃいないよ。……で、よく知らないけど君なのかい? この案内人ってやつはさ」

若者「はい。お初にお目にかかります。失礼ですが、雨崎群青様で間違いありませんか?」

群青「ああ。そうだね、確かに雨崎群青で合ってる。なんなら身分証明書でも見せようか? パスポートで良ければ」

若者「いえ、結構です。お顔は存じていますし。単なる確認ですので」ニッコリ

群青「そうかい。やれやれ……。確認、ねえ……」

群青「何だか気に入らないんだよね、その言い方」

若者「何がですか?」

群青「いやさ。こっちはおたくの事を何にも知らないのに、あんたは俺の事を何でも知ってそうなツラしてるじゃないの? それはちょいとばかし、不公平じゃないかと思ってね」

若者「元々、この世は公平ではありませんし、公平を求める事自体滑稽ですよ」ニコッ

群青「ああ、そうだね。確かにそうだよ。生まれた時から人間ってのは公平に出来てない。けど、だからと言ってホイホイ納得するほど俺は利口でも馬鹿でもないからね。とりあえず、おたくの雇い主が誰かってのだけは、はっきりさせておきたいんだけどさ」

若者「それは御容赦を……。私の口からは言えないものですから」ニコッ

群青「やれやれ……。君は全く如才のない笑みをするねえ。そういう笑顔を見せる人間ほど怖いと俺の経験が告げてるけど……。まあいいさ、とりあえず話だけは聞くよ。俺に用があってこの手紙を出したんだろ?」スッ

若者「ええ。一応確認しますが、中身はもう御覧に?」ニッコリ

群青「見てなければここには来ないよ」

若者「ごもっともですね」ニコッ

群青「全く……。異能力者でバトルをしようってんだ。一体どこの誰がこんな酔狂な事を考えたかは知らないが、余程の馬鹿か物好きだね。しかも唸るほど金を持ってそうだし、権力に至ってはそれ以上にありそうだ」

若者「理解が早くて助かります。もっとも前半部分は間違っておりますけど」ニコッ

群青「間違っちゃあいないさ。どんな聖人君子だろうと見方を180度変えれば異常者みたいに見えるもんだ。少なくとも、間違っていると断定されるのは不愉快だね。まあ……俺も人の事は言えないけど、さ」

若者「そうですね。第五次連合戦争で一躍あなたは時の人となりましたから。この世にたった一人しかいないSSランクの能力者に認定されましたし、大半の国の子供はあなたをヒーローか英雄かと慕っています」

群青「……そうみたいだね。どうやら」

若者「ですが、その一方で、敗戦国の子供たちはあなたの写真をナイフで切り裂き串刺しにしています。世の中というのはそんなものなのかもしれませんね」ニコッ

群青「…………」

若者「では……無駄話はここまでにして……。一応、もう一度確認しますが、あなたはバトルに参加されるんですよね?」ニコッ

群青「……ああ。ただし、約束は守ってもらうけどね」

若者「勝てば望みを何でも叶えるという、あれですか。それはもちろん」ニコッ

群青「…………」

若者「それで一体何をお望みで?」

群青「妻の死の真相。それを俺は知りたいんだ」

若者「かしこまりました。そう伝えておきましょう、必ず」ニコッ

群青「…………」

実際、こんな胡散臭い話はないと思ったね。

勝てば望みが叶うなんて保証は何一つないし。

ただ、それでも俺は真実に近付きたかったんだよ。溺れる者はなんとやらだ。

もしくは死をもって、妻の元に近付きたかったのかもしれないけどさ……。

やれやれ……。

俺は相当な馬鹿だってその時思ったよ、やはり馬鹿は死ななきゃ治らないみたいだ。

まあバカだろうが気が狂ってようが何でもいいさ。折角だから、たった一筋だけ垂らされた蜘蛛の糸にぶら下がってみようじゃないか。


若者「ところで群青様。もしも、武器を御所望なら御用意しますけど」ニコッ


日本刀を、と俺は告げたよ。剣道なんて高校時代にやったきりだが、しがらみを絶つという意味じゃそれがピッタリな気がしたからさ。


若者「ではどうぞ。御武運を」ニコッ


最後までにこやかに笑いながら、その若者は言ったね。どこから取り出したのか、いつのまにやら俺に日本刀を差し出して。

そして、その柄を握った瞬間……。


フッ……

若者「あなたに良き未来があらん事を。それでは」ニコッ

『プロローグ』



ハナ編

【中世(剣と魔法の世界)】

『とある王国、辺境都市、黒魔術の館』


ガチャリ、ギギィ……

ハナ「邪魔するわよ」テクテク


魔女「おやおや……珍しいね。人間のお客さんなんて数百年ぶりだよ」

ハナ「そう。だとしたらあなたは何歳なのかしらね。下らないハッタリはいいわ。そこのカラスの餌にもなりはしないんだから」

カー、カー

魔女「ひひっ。面白い事を言う小娘だね。まあいいさ、変な言い方だけど嘘なのは本当だからね。それで何の用だい?」

ハナ「人を探してるの」

魔女「人探しで来る人間も珍しいね。ひひっ、あんたの想い人かい? 恋人や旦那にでも逃げられたのなら、まあ、諦めるこったね。復讐にしろ復縁にしろ、ふくのつく願いにはろくな事がないよ」

ハナ「そんなんじゃあないわ。大体どうでもいいでしょ。それともなに? ここでは理由を言わなきゃ、してくれないっていうの?」

魔女「強気な女だね。ひひっ。そりゃ逃げられもするよ。自業自得さ」

ハナ「」スッ、ググッ

ハナ「あんまりその汚い口を開かないでもらえる。次に余計なお喋りをしたら、空気よりも先にこの矢が口の中に飛び込む事になるわよ」

魔女「……!!」

ハナ「わかった? わかったならさっさと用意を始める事ね。私はあまり気長な方じゃないから」

魔女「…………」コクコク


ハナ「…………」

魔女「」ガチャッ、バタバタ


ハナ「…………」

魔女「」チョイチョイ、ガチャガチャ

――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――



『ねえ、お母さん』

『何?』


『どうして私は他の子たちと遊んじゃいけないの?』

『…………』


『私はケガラワシイって他の子たちが言ってたわ。ケガラワシイってなに?』

『…………』


『お母さんの事は、モノズキって言ってたの。私をヒキトッタとかジョウガウツッタンダロウとかそんな事。ねえ、それってどういう意味?』

『……ごめんね』


『お母さん……?』

『…………』


『お母さん、どうして泣いているの? ねえ、どうして? 泣き止んで』

『ごめんねごめんね……ごめんね』

―――――――――――――――――――
―――――――――――――――
―――――――――――



ハナ「……準備は終わった?」

魔女「」コクコク


ハナ「そう。なら口を開いていい事を許可するわ。さっさと始めて」

魔女「」フゥ……


魔女「…………そこの大釜の中を覗くんだね。そして、自分の髪の毛を一本入れて、探している人間の事を思い浮かべな。しばらくしたら、見えてくるよ」


ハナ「そう……」

プチッ、ハラリ……


ハナ「」ジッ……

覗き始めてしばらくした後、確かにそこには何かが写り始めた。

人? まさか、父親?

いいえ、違うわ。これは女だもの。私の父親じゃない。


じゃあ、一体、誰……? 本当の母親の方?


そんな事を思って、よく見ようと更に釜に近付いたら、不意に頭の中で声が響き渡った。


『勝てば望みを何でも叶えよう。未来は力で掴み取れ』


それと同時に、私の体はまるでそれが当たり前の事のように、釜の中へと落ちた。


何が起きたんだろう、とか、このままじゃ溺れる、とか、そんな事は何故か全く思わなかった。

どうしてかわからないけど、これが私に与えられた試練のような、そんな気がした。

父親と会うための試練。不思議とそう思った。


いいわ。やってあげるわよ。

何をさせたいかは知らないけど、私の邪魔をするやつは全部消してけばいいのよね?


その通りだ。そんな返事がきたと思う。


上等ね。容赦はしないわ。誰が相手だろうとね。


それが合図のように、私の体はゆっくりと溶け込むようにして、妙な空間の中へと吸い込まれていった……。

『プロローグ』



相沢絽閔編

【現代】

『日本、千葉、豪邸内』


お嬢様「はい。これで四手先にはチェックメイトよ」ポンッ

絽閔「……なるほど。流石はお嬢様。お見事な一手です。感服しました」ニコリ

お嬢様「……全く。あなたはいつもそうね。感服する前にまず本気を出してほしいわ。悔しがらない相手と打ってもつまらないだけよ」

絽閔「私はあくまで執事ですから。お嬢様の成長を喜びこそすれ、悔しがる事なんてありませんよ」

お嬢様「そうは言っても、勝ってるばかりじゃ成長しないわ。人は負けたり失敗する事で成長するものでしょう?」

絽閔「そうですね。御立派な見識です。ですが、勝つ事で得るものもありますよ。それにたった一度の失敗で、全てを失う事も。何事も時と場合によりますから」

お嬢様「それなら、チェスで128連勝する事もあなたの言う、その時と場合なのかしら? それも全部接戦の上、ギリギリの逆転勝ちばかりよ。おかげで私は勝つ度にあなたを遠く感じてしまうようになったわ。一体、どれだけ上にいるのかってね。先が見えないもの」

絽閔「指す度に、お嬢様が強くなられていくのが感じられて、私は毎回嬉しく思っておりますよ」ニコリ

お嬢様「そう……。もういいわ。チェスはこれでおしまい。全く完璧な執事というのも考えものね。ミスがないから叱る事も出来ないし」

絽閔「機会があればまたお呼び下さい」ニコリ

お嬢様「ええ、またその内。私の気が向いたらね。下がるついでに、なにか温かいものをお願い」

絽閔「かしこまりました。すぐにお持ちいたします」ペコリ

お嬢様「ああ、それと。来週トルコの方がこの家にお見えになるみたいだから通訳の手配も頼むわ。流石のあなたもトルコ語は無理でしょ?」

絽閔「問題ありませんよ、お嬢様。通訳、承りました」ニコリ

お嬢様「ああ……そう」

絽閔「ええ。では紅茶を持って参りますのでこれで」クルッ、テクテク……




お嬢様「…………」

お嬢様「」ハァ……

お嬢様「ホントにもう……。隙がなさすぎて困るわ。おかげで知れば知るほど遠くに感じちゃうじゃないのよ……。もう」ハァ……

それは何の変哲もない日常だった。

朝起きて、夜寝る。それと同じぐらいに。

前触れなんて一切ない。予兆なんかあるはずもない。

いつも通りお嬢様の相手をし、いつも通り完璧な紅茶を運ぶ。

何も変わらない。変わるはずのない日常。


そんな中で、彼はこの日、ふと幻を見た。

それは、廊下に立つ、白いワンピースを着た女の姿だった。


女「ねえ、君。本当にそれでいいの?」


一度だけ瞬きしてもう一度見返す。

もちろん、幻。本当にはいない。そこにもいない。


いないはずだった。

「君さあ、今の現状に不満を抱いてるよね?」


女の姿はそこにはない。ただ声だけが聞こえる。


「あの子を絶対的に守る力が欲しいんだよね? その為に体とかも鍛えてるんでしょ?」


絽閔「……どちら様ですか?」


声に出してみると意外な事にも返事があった。それを返事と呼んでいいのならの話だが。


「誰だっていいし、どうだっていいわよ。未来から来た君の娘かもしれないし、単なる幽霊かもしれないわ。それがわかったからってどう? 些細な問題でしょ? そんな事よりも、君には気にかけなきゃいけない問題があるんじゃないの?」


絽閔「……何について?」


「お嬢様の事について」


絽閔「…………」

「君は素晴らしく完璧だよね。そして、恐ろしいぐらいにまで完璧主義者だよ」


絽閔「…………」


「だけど、一つだけ完璧じゃないものがある。それは力。そうでしょ?」


絽閔「…………」


「もちろん能力者ってだけで、こっちの世界じゃ、君はほぼ完璧だよ。そんな力を隠し持ってる人間、この世界には君以外にいないからさ」


絽閔「…………」


「だけど、それじゃ満足していないのが、君が君らしいところだよね。君は『ほぼ完璧』じゃなく『完璧』が欲しいから。そして同時にうずいてもいるんだよ。この力がどこまで使えるのか試してみたいってさ」


絽閔「…………」


「だから、もし君が望むなら私が願いを叶えてあげるよ。もちろん二つともね」


絽閔「…………」ピクッ


「どうする? 私を無視する? それとも願いを」


絽閔「いいでしょう。お願いします」


「…………。ふふふふふっ。話が早いね。いいよ、君。かなりいい。わかった、叶えてあげる。頑張りなよ」


そこで相沢絽閔の意識と記憶は途切れた。

女は最後にこう言っていた。


「君は選ばれるかな? それとも淘汰されるかな? 全ては君次第だよ。ふふふっ」

以下、しばらくコンマ決定

相沢絽閔の戦闘に関わるコンマ
↓1

全員分の最初の行動コンマ
F680↓2
ドラク↓3
雨崎群青↓4
ハナ↓5
相沢絽閔↓6

簡単なシステム説明(すっ飛ばし可)

移動場所

行動コンマで決定

1、6→砂漠
2、7→海岸
3、8→森
4、9→湖
5、0→都会

誰かに出会うとバトル開始


2014/10/09(木) 11:44:28.『34』←ココ

2014/10/09(木) 11:44:28.3 4←移動場所


つまり、海岸に移動


ゾロ目が出たら、今いる場所にトラップを仕掛ける事が出来る。設置後、その場に移動した相手(複数名の場合もあり)に一回だけ発動。一度発動したらそのトラップは消える。ダメージは一律で5ダメージ

誰かが敗北すると、敗北した場所の地形が消滅する
同時に二人以上敗北した場合は、その場所から下に一つずつずれた地形がその数だけ消滅

消滅した地形への移動コンマが出た場合、移動場所はその地形から一つ下にずれた場所になる

戦闘時の攻撃力と防御力。戦闘がない時の回復値



バトルコンマで決定

2014/10/09(木) 11:44:28.『34』←ココ

2014/10/09(木) 11:44:28. 攻撃力→3 4←防御力と回復力


つまり、相手に与えるダメージは3。そして、相手からのダメージを4防ぐ
誰もいない場所に移動すると、HPが回復力の分だけ回復する

0は10扱い。キャラのHPは全員が30。バトルが発生すると回復しない。30以上は回復しない

基本的なシステムはこれだけ

ただし、キャラにはそれぞれ相性や有利不利地形がコンマによって既に決定されていますし、一定条件やゾロ目などによっても出たコンマ値に補正が入ります

コンマ値に補正が入るパターンは全部で6通りあります

そちらは戦闘の行方や勝敗を先に知られたくないので、開示なし。基本、高コンマが有利で低コンマが不利なのには変わりありません

『細かい注意事項』(激しくすっ飛ばし可)


コンマ値に補正が何も入らない場合、終わりまでかなり長引きます。逆に、補正がまとめて重なると一回の攻撃であっさりオーバーキルします

特に初ターンは複数名バトルになるケースが多いので、ここが一番危険です
開始後、即負けが出る事も多々あります

ゾロ目のコンマは特に強力に設定してあります。これがバトルで出たら、相手側はまず死を覚悟して下さい。大体の場合、他の補正も絡むので、七割方、撃破されます。ほぼ一撃必殺技です

コンマは現ターン、バトル、次ターンも含めてまとめて取ります。そして、まとめて投下します。投下までかなり時間はかかるので、ご了承ください

以上で説明終了

バトルコンマ決定
F680↓1
ドラク↓2
雨崎群青↓3

次ターンの行動コンマ決定
F680↓4
ドラク↓5
雨崎群青↓6
ハナ↓7
相沢絽閔↓8


多いですけど、ぼちぼちと
多分、戦闘パート書き終えるまでに時間かなりかかりますし。書き上がったらまた来ます

>>31
このチュートリアルが無事に終わったら、「重力を操作できる能力」に変えて次回のメンバーに入れときます

>>75でゾロ目出たので、新しくコンマもう一回
↓1

第一ターン(開始から一時間経過まで)

『開始0分』

【F680】

『砂漠』


F680「」ヒューン……

ズシャッ!! モクモク……


F680「」キュイン

F680「着地、正常。座標・時刻ヲ識別」ピピッ


error!!


F680「共ニ測定不可……」

F680「」キュイ、キュイ、ピピッ

F680「北北西ト南西ニ人ト思ワレル熱源ヲ感知」


カチャリ


F680「標的ト識別。全テノ武装ノ安全装置ヲ解除」

F680「コレヨリ殲滅行動ニ移項」ピピッ


F680「攻撃行動、開始」ドウンッ!!

【ドラク】

『砂漠』


フインッ……

ドラク「」スタスタ……


ドラク「ふむ……ここか」

ドラク「見渡す限りの砂漠、という訳ではないようだな。向こうに木々も見えるし、巨大な建物も見える」

ドラク「とりあえず、まずは街の方へと向かってみるか。ここには人自体がいそうにないからな」クルッ


ドラク「」スタス……ピタッ

ドラク「……違うな。いるか。この匂いは男だ。ここからそれなりに近い場所にいるな」

ドラク「しかも、私が初めてかぐような匂いだ。男という時点であまり味に期待は出来ないが、しかし、なかなか興味深い」

ドラク「向こうもこちらへと向かっているな。さて、私に気付いて向かっているのか、あるいは何も気付いていないのか……」

ドラク「」フッ

ドラク「いいだろう。今日初めての食事は貴様とするか。オードブルとしては少し華やかさにかけるが、食前酒としてはそれなりに期待出来そうだからな」

ドラク「」クルッ、タンッ


体をひねり宙を蹴った瞬間、ドラクの体はまるで凧揚げのように一気に浮かび上がった。
しばしば吸血鬼はチスイコウモリに例えられるが、彼の洗練された俊敏な動きは、コウモリと言うよりは鷹にかなり近いものがあった。


ドラク「さて、お前の血はどんな味か。願わくば私を愉しませるようなものであって欲しいがな」フフッ

【雨崎群青】

『砂漠』


フインッ……

群青「…………」ズサッ


群青「ここは……砂漠?」

群青「みたいだね。やれやれ……。どうやらあの男は空間移動能力者か何かだったのかね。にしたってこんなへんぴな所に飛ばさなくてもいいと思うんだが」

群青「まあ、いいさ。ここなら敵の存在がはっきりわかって気楽と言えば気楽だ。流石に足元の砂の中を移動してこられたらどうにもならないが、そんな気配もある訳でもないからな」

群青「とはいえ、逆の言い方をすれば、敵の方からもこっちの存在はバレバレか」

群青「バトルロワイヤルに限った話じゃあないが、こういうのは極力敵に見つからず派手な事をしないのが一番だからな」

群青「野ウサギのように姿を消して、勝手に潰しあっていくのを見物しているのがベストだね。そういう意味じゃここはやっぱり不利な場所って訳だ。どこかに移動して姿を隠すとす」


キュイーン


群青「やれやれ……。もう見つかったのかい。おまけになんだよ、あれは。遠目から見てもまるっきり1970年代の映画に出てきそうなロボットじゃあないか。ありゃ能力者って呼べないだろ。反則もいいとこだ」

群青「とりあえず、適当に相手しつつ逃げるか。まともに相手するとアレは面倒くさそうだ。問題は逃げ切れるかどうかって事だが」タタタッ


ヒュイン……


群青「と、思ったら今度は向こうからは空を飛んでくる男かい……。不幸は友達を連れてくるっていうが、これもその一つかねえ。まあ、友達同士には見えないんだが……」


群青「しかし、やれやれ。この分だと戦闘はどうにも避けられそうにないな……」チャキッ


そっと刀の鍔に手をかける群青……。
言葉とは裏腹に、その姿からは自信と余裕が漂っているように見えた。

【ハナ】

『湖』


フインッ……

ハナ「」スタッ


ハナ「」キョロ、キョロ……

ハナ「ふうん……ここね」

ハナ「ここが試練の場って訳なの。それにしては似つかわしくないぐらい綺麗な場所だけど」


ハナ「……とりあえず、人の気配はないわね。それにしても本当に綺麗。昔、よく行っていた外れの湖を思い出すわね」

ハナ「よくびしょびしょになって帰ってきてお母さんに怒られたっけ……。でも、他に行く場所なんかなかったしね……」

ハナ「……綺麗な水。魚も一杯いるし」

ハナ「…………」

ハナ「」フゥ……


ハナ「こんなところで感傷に浸っている場合じゃないわね……。私の敵を見つけださないと」

ハナ「風はどっちから吹いてるかしら?」スッ


ハナ「……向こうね。どんな敵がいるか知らないけど、とりあえず細心の注意を払いながら風下に移動していきましょうか」

ハナ「ここの地理も知っておきたいところだし」


ハナ「」キョロキョロ、スタタッ

【相沢絽閔】

『都会』


フインッ……

絽閔「」スタッ


絽閔「…………」

絽閔「なるほど……。どうやらどこかに飛ばされたみたいですね」


絽閔「しかし……」


絽閔「奇妙な事に、ここには人の気配がまるでない。これだけの高層ビルが立ち並んでいるというのに全く。まるでゴーストタウンのようです」

絽閔「どうなんでしょうか……。突飛な考えですが、異世界、と捉えた方が良いのでしょうかね。童話に出てくる鏡の中の世界のように……」


絽閔「例えば、そこのコンビニ」

絽閔「商品が整然と並べられているのに、店員の姿は見あたらない。まるで突然消えてしまったかのようです」


絽閔「少し入ってみますか……」スタスタ

ウイン

絽閔「なるほど……自動ドアが開くという事は電気が通っている証拠です」

絽閔「そして、ここにある商品……」スッ

絽閔「どれも賞味期限の表示がない。時間という概念すらここにはないという事でしょうか……」

絽閔「よくわかりませんが……しかし、不思議と害はなさそうな感じがしますね。とはいえ、この世界で私の能力は使えるのでしょうか?」

絽閔「モノの時間を操作する能力……。時間という概念そのものがなければ、理論上は発動すらしないはずですが……」スッ

絽閔「このアイスで試してみますか」


キュイーン……


ドロッ……


絽閔「溶けましたね……。どうやら発動はするみたいです。では、元に戻してと……」

カチンッ

絽閔「ふむ……」

絽閔「何にしろ、能力に支障はないみたいですね。とはいえ、ここには人そのものがいそうにないですし……」

絽閔「少し移動してみますか……。この世界の事も色々と確認しておきたいですから……」スタスタ

『開始07分』

【F680】


キュイーン

F680「」ピピッ

F680「標的二体ヲ捕捉。最適ナ攻撃距離マデ5、4、3、2、1……」


F680「射撃」ドンッ!! ドンッ!!


旋回しながら、F680は一発の爆撃弾と二発のミサイルを発射した。

この時、F680が選択したのは、対地上用の広範囲型爆撃弾と対空用のトマホークミサイルだった。

相手は地上にいる人間と、空を飛行する不可思議な人間。
彼にインプットされた情報からして、この攻撃は確実かつ堅実なものであり、二発放たれたトマホークミサイルは不確定要素を考慮して追加された一種の保険でしかない。

つまり、この攻撃は完璧に理にかなったものであり、効率と確実性を備えたベストな選択だった。

彼に搭載された重火器には限りがあり、魔法の泉のように無限に出てくるものではない。残弾数を考慮し、効率性を重視するのは当然の事だ。

それらを考えるとやはりこの攻撃は最良と言わざるをえないし、『現時点でのF680の持つ情報』においては、最適の選択だったと言える。


ただし、相手は普通の人間ではなかった。それだけの事だ。

【ドラク】


ドラク「なんだ、あれは?」

ドラク「奇怪な……。空を飛ぶ鉄の塊か? 250年近く生きているが、あんなものは初めて見たな」

ドラク「そして、そこから飛ばされた物が私の方に急激な勢いで向かってくるか。大きさと速度からして弾き飛ばせるようなものではなさそうだが……」

ドラク「まあ、どうでもいいのだがね。所詮は物理的なものだ」フッ


トマホークミサイルには自動追尾システムというものが搭載されている。

熱量、磁気、その他もろもろのデータを予めインプットしておく事で、ターゲットを燃料つきるまで永遠に追いかけるというものだ。

この時も無論それは発動していた。二発のトマホークミサイルはそれぞれ違う方向からドラクを狙い、自動修正しながら彼目掛けて突撃する。


突撃の瞬間、ドラクは自分の体を霧へと変えた。


二発のトマホークミサイルは派手な音を立てて互いにぶつかり合い玉砕した。

吸血鬼の持つ特殊能力の一つ。霧への変化。

ドラクは体を元に戻し、内ポケットから葉巻を取り出して火をつける。


ドラク「私に物理攻撃など効かんよ。そしてお前の血は飲むにも値しない」


甘い匂いと風の両方を切り裂き、猛然と彼はF680へと迫った。

【雨崎群青】


遥かな空から発射された爆撃弾を見て、雨崎群青はいつも通りの一言を呟いた。


群青「やれやれ……」


そしてゆっくりと構え、居合い抜きの姿勢をとる。


ヒューン……!!


群青「全く、爆撃弾とは大がかりな事をするねえ。おかげで初っぱなから奥の手を出さなきゃなんない。ついてないよ、本当に」


彼の持つ能力は『裂空』。物質の硬度や弾力に関わらず全てを斬る事が出来る。

それは『空間』も同じ。

その力の凶悪さから、普段は滅多に空間斬りの能力は使わないが、この時の状況はそれ以外に選択肢がなかったと言える。



群青「」スイッ……


音はしなかった。

だが、彼の上空、20平方メートルの空間は全て切り取られた。

爆撃弾も。空気も。何もかも。

跡形も。形跡も。余韻すらもなく。

全てが無くなった。空間そのものをまるごと斬ったから。


群青「伊達に能力者のSSランクにいる訳じゃあないよ。俺には核弾頭ミサイルだって効かないからね」


斬られた空間は虚空へと消え、代わりの空間がそれを補填するように現れる。

元の空間はどこへと消えたのか? 答えを知る者は誰もいない。

『開始09分』

【F680】


F680「」ピピッ

F680「標的ニ関スル新タナ情報ヲ確認。標的ノ戦闘能力ヲ大幅ニ修正」

F680「算出完了。第二波攻撃ニ移項」ピピッ



F680は元々、軍事用として造られた。

核戦争から無人の機械戦争へと移項する際、一人の天才の力によって生み出された超兵器であり、単機で戦場の局面を一変させる程の高性能を誇っている。

演算を終えたF680は認識する。


アノ二人ノ人間ハ普通デハナイ。

持テル力ヲ総動員サセナイトコチラガ不利トナル。



F680「」ガショッ、ズバババッ


背中側に仕込まれた、同じく丸型の攻撃兵器『Fシリーズ』
遠隔操作型であり、なおかつビーム砲とジェットエンジンを装備している超小型のロボット達。その総数、実に250体。


F680はそれを全て外へと開放した。


この兵器こそが、F680を『最強』と言わさしめている最大の理由であり、そして彼の持つプログラムには「標的に対する容赦」などという言葉は組み込まれていなかった。


F680「コノ場ノ全テヲ破壊シマス」


無機質な機械音声と怪しげな光が、二人に対し殺戮の時間を宣告した。

【ドラク】


チュイン!! ドシュッ!!

ドラク「ぐっ!?」


無数のFシリーズが中空を舞う。

それはさながら大挙して押し寄せる蜂の群れのようでもあり、整然と侵攻する艦隊の陣形のようでもあった。


ビーム兵器は物理攻撃ではない。

故に体を霧に変えてもドラクはダメージを受けてしまう。


頬からは血が流れ、右足には鋭い火傷痕が出来た。

幾筋もの光線によって貫通された腹部を押さえながら、ドラクは自嘲気味に笑う。


ドラク「ふっ、ふふふふっ……。世の中は広いな。まさか私が傷を負うとは」

ドラク「が、それもまた愉しみの一つか。復讐の快感もまた格別だからな」

ドラク「この自傷用のナイフも今や必要なくなった。私がただの吸血鬼ではないという事をお見せしようではないか!」

半分ほどちぎれた腕から、ぼたぼたと水道のように流れ落ちる血液。

その血がまるで生き物のように蠢いたかと思うと、彼の周りに強力な盾となって現れた。


それはビーム砲さえも遮断する。

そして、いくらでもその形状を変えていく。

まるでゴムで出来たイージスの盾のようだった。Fシリーズが雨のようにビーム砲を放っても、それに吸収されるかのように阻まれるのだから。


ドラク「操作とは、ただの操り人形のようにその物質を操るだけが全てではない」

ドラク「その物質の弾力や耐性、形状さえも変えれてこその一流だ。操るとはそういう事なのだよ、鉄の化物君」


Fシリーズ「」ピピッ、ピピッ!!


ドラク「理解はしたかね? ならばそろそろこちらからも攻撃に移らせてもらおうか。この流れた血の代償、その体で払ってもらうぞ」ヒュイン!!


ボンッ!!!!


血が瞬く間にサーベルと代わり、Fシリーズの一つを真っ二つに切り裂いた。

しかし、一つを消したところで、その総数はまだまだ膨大。

こうして戦いは長期戦の様相を見せかけたが、それは見せかけでしかなかった。

【雨崎群青】


群青「やれやれだ……。この技は封印してたんだけどね」


でも、背に腹は代えられないよな。


そんな小さな呟きが聞こえた、その次の瞬間。










群青「聖書に出てくるモーゼの海割りって知ってるかい?」

モーゼの海割り。

エジプトを脱出する際、モーゼが見せた奇跡である。彼が杖を振りかざすと紅海が二つに割れたという。


群青の場合、海だけでは収まらなかった。

空が、地上が、目に写る景色全部が真っ二つに割れた。


割れた二つの空間は、まるでルービックキューブを回すかのようにゆっくりと別の空間に切り替わっていてく。


完全に回りきってしまえば、その空間はもう見えなくなるだろう。つまり、この世界から消えるのだ。




群青「悪いね、恨みは全くないんだが」

群青「俺はここで死ぬ訳にはいかないってだけだよ」

群青「さよならだ。お互い名前も知らないままにね」


チャキン……


群青はそっと刀を鞘に収めた。

【F680】


ビーッ!!!! ビーッ!!!!


緊急事態を告げる甲高い電子音が鳴り響く。

それと共に揺らいでいく空間。


危険、危険、危険、危険、危険、危険、危険、危険、危険、危険、危険、危険、危険……。


F680のメイン回路は時空の歪みを感知した時からその単語しか羅列していない。

それ以外に今の状況を表す単語がなかったのだ。



F680「緊急非常事態発生! リミッターヲ解除シマス!」


彼はその「危険」から逃れる為だけに、持てる全ての力を投入する事となった。

それしか選択肢がなかったと言える。

活動領域限界。それを越える為のリミッター外し。


F680「出力200%オーバー。最大戦速!」ドゴオッ!!!!


オーバーヒートもいとわないフル稼働で、F680は今いるこの空間から逃れる為に全力でジェット噴射した。


F680「標的ヲ地上ノ人間ヘト変更! 一斉射撃!!」


それと同時に、残っていたFシリーズ全機を群青に差し向けた。


Fシリーズ「」ピピピピッ

ドシュッ!! ドシュッ!! ドシュッ!! ドシュッ!!



まるでゲリラ豪雨の様なビーム砲が群青を襲う。

【ドラク】


ドラク「……っ!!」


それは言葉にならなかった。

なんだ、これは! そんな言葉すら紡げない程に、彼は驚愕していた。


そして、吸血鬼として生まれてより250年、その長い人生の中で初めて恐怖を覚えた。


空間自体が切り替わっていく。その事態の異様さを前にして、ドラクの感覚は最大限に研ぎ澄まされ、そして理由もなくそれを悟ってしまった。


この攻撃は、喰らうと死ぬ……?


だが、この攻撃からは……逃れられない……?


馬鹿な!?

馬鹿な!! この私が!!?

最強の吸血鬼であるこの私が死ぬだと!!!?

しかし、彼の持つ全ての能力を総動員しても、この崩れゆく巨大な空間から逃げ出す事は到底不可能だった。

ドラクの持つ能力は血の操作であり、彼には高速で移動する手段がないのだ。

せめて群青が傷を負っていれば、その血を操作してどうにか出来たかもしれないが、彼は全くの無傷。完全に為す術がなかった。


それを悟ったドラクは、悔しさを噛み締める代わりに叫んだ。


「私の名はドラク! 世界最強の吸血鬼だっ!! 私に勝てた事を一生の誇りとし、後世に語り継ぐがよいっ!!!」


フッ……


その言葉を最期に、彼は消えた。

空間が完全に切り替わったのだ。

誰も知らない場所へと彼は消えてしまった。

絶対に戻ってこれない場所へと。


人はそれを、地獄、あるいは天国と表現する。

He was gone……。彼は逝ってしまったのだと……。

【雨崎群青】


群青「…………」

彼は黙って壊れゆく空を眺めていた。

こちらへと流星群のように降り注ぐ無数のビーム砲を眺めていた。


ほんの少しだけ群青は躊躇いの素振りを見せたが、それも一瞬の事。再び、刀の鍔に手を置く。


群青「…………」


シャキンッ……


彼は刀をそっと優しく一閃した。

それだけで十分だった。

【F680】


F680「…………」ギュイーン!!!!

F680「」スパッ

F680「…………」

グラッ……

バラバラ……


空中で真横に分断されるF680。

弧を描きながら落下して行く中で、彼は自分を残して高速で飛び立っていく自らの下半分を確かにレーダーで捉えた。


F680「…………」


メイン回路も分断されていた。

すぐに予備回路に切り替えが行われたが、しかし予備回路は斬られた時に空中で分散してバラバラになったのか、信号を受信しなかった。

サーモグラフィとレーダーは二つともに雨崎群青の無事を伝えている。


ビーム砲モ……含メテ……全テ……切断サレタ……………事ヲ……………確認…………………………。


F680の最後の記録はそれとなった。

彼が最期に考えた事は、病床で伏せる主人の事だったのだろうか。

だが、それは少なくとも記録には残されてはいない……。

【雨崎群青】


群青「」フゥー……


戦闘を終え、長い息を吐く群青。


そこに残されたものは、何一つなかった。

砂の一粒さえも。

斬った。空間ごと。何もかも。

この島の地図上から砂漠そのものが消えた。

辛うじてあると呼べるのは、何も存在しない黒くて真四角な空間だけだ。


そこに、F680とドラクの姿はない。

彼らは消えた。たった一回の巨大な斬撃と、二撃目の追い討ちによって。



ぽっかりと斬り取られたその風景を一瞥もせず、雨崎群青は向きを変えて歩き出した。

今更懺悔したところで、どうなるものでもない。

せめてもの弔いにと、彼はタバコに火をつけ、それを一吸いもせず後ろに放り投げた。


群青「戦いの結果だ。化けて出てこないでくれよ」


最強と呼ばれる異世界の能力者二人。その二人を完全に無傷で葬り去った男は、しかしまるで自分が敗者であるかのように、逃げるようにしてその場を後にした……。

第一ターン終了。


F680→群青により両断破壊され行動停止。

ドラク→群青の空間斬りによって消失。



群青→無傷。移動中。

ハナ→移動中。

絽閔→移動中。



第二ターンへと続く……。

コンマ決定

バトルコンマ
群青↓1
ハナ↓2
絽閔↓3

行動コンマ
群青↓4
ハナ↓5
絽閔↓6

平日の昼だし、あんま人来ないの前提でコンマやった方が良くない?

コンマ了解
切りのいいとこまで書きあがったら、また適当に投下していきやす。気長にお待ちを

>>120
先の先までコンマまとめてとってもらってるんで問題ないです。ゆるゆるコンマとってもらえればそれでいいんでー

第二ターン(開始より二時間経過まで)

『開始、1時間12分』

【雨崎群青】

『森』


群青「ふう……」

群青「ここまでくればいいか……。あれだけ派手な事をしたっていうのに、どうやら敵にも見つからず来れたようだし、運はそれほど悪くない」

群青「ここでしばらく身を隠して、事の成り行きを見守ってみようかね」

【ハナ】

『森』


ハナ(ふっ……おめでたい男)

ハナ(あれだけの事をしたっていうのに、誰にも気付かれてないなんてある訳ないのにね)

ハナ(あなたはとっくの昔に私の能力にかかってるのよ。無意識的に人の心を操作する能力『心は私のもの(ハート イズ マイン)』によってね)

ハナ(そのままそこにいなさい。あなたにはもう一人と潰しあってもらうから)フッ

【相沢絽閔】

『森』


ガサッ

群青「!」

群青「人の気配……? おいおい……」


絽閔「」テクテク……

絽閔「」フフッ

絽閔「ようやく見つけましたね。まさか人を探すだけでこんなに大変とは思いもしませんでしたよ」ニコリ


群青「一難去ってまた一難とはね……やれやれ。今日は本当についてないみたいだ」フゥ

群青「一応確認しておくが、あんたは敵でいいのかい? そうだと言うなら俺は君を倒さなきゃならなくなっちまう。それが嫌ならさっさとこの場から立ち去ってほしいもんだがね」

絽閔「なるほど。ずいぶん自信家なようですね。ならば、私はこう答えましょう。ええ、あなたの敵で合っていますよ、と」

群青「自信家なのはおたくの方じゃないのかい? まあ、それはいいよ。重要なのは、だったら戦うしか選択肢がなくなっちまうって事だ。あんたもそのつもりみたいだしさ」

絽閔「そうですね。お話が早くて助かります。ですがその前に一つだけ。私、相沢絽閔と申します。あなたのお名前は?」

群青「見かけ通り礼儀正しいねえ。それは執事服かい? 全く、こういう相手は厄介そうで嫌になっちまうよ。一応答えはするがね。俺の名前は雨崎群青。覚えておくといいさ」

絽閔「雨崎群青様ですね。承りました。墓碑にはそう刻んでおきますから。どうか、心残りがないように」スッ……

群青「そりゃ、ありがたくて涙が出そうだね。やれやれ……参ったもんだ」チャキッ……

【ハナ】


ハナ(さあ、殺しあいな、二人とも。お互い相討ちになるよう心理操作してあげるから)

ハナ(うまくいかずにどちらかが生き残った場合は、私の弓で一撃。あまりに簡単過ぎて笑いしか出ないわね)


この時、ハナが隠れていた場所は、二人から十五メートル程離れた木立の中だった。

ハナは元々、狩りを得意としており、特に弓の腕前は一級品だ。狩猟の女神であるアルテミスに例えられた事もある。この距離で彼女が弓矢を外すという事はまずあり得ないだろう。


気配を完全に殺しながら、ハナは弓矢をつがえ、いつでも放てるように用意した。

向こうでは、群青が刀を構え、絽閔が攻撃態勢に入っていた。

【雨崎群青】


絽閔「それでは……」

群青「…………」

絽閔「参ります!」


絽閔はそう言うや否や、瞬時に行動へと移った。

絽閔「ふふはははっ!! さあ、試させてもらいますよ!! あなたの実力を!!」ダダッ!!!


愉しそうな笑みを浮かべ、猛然と地を蹴る絽閔。


絽閔「せいっっ!!」ブンッ!!!!


ほぼ一瞬で間合いを詰めると、彼は飛びっきりキレのある蹴りを振り抜いてきた。

それは群青の予想していた速さよりも、何倍も速かったが、しかし彼は動揺を見せず見事にそれに合わせた。


群青「裂空!」ズバッ!!!


群青の持つ特殊能力『裂空』は、この世の全てを斬り裂く。

そして、群青の抜いた刃は絽閔の蹴りを完璧に捉えた。


抜いた刃は絽閔の足を斬り裂き、その勢いのまま体ごと切断する。

そうなるはずだったが、実際には全く違う結果となった。



ガキンッ!!!!


響き渡る金属音。

信じられない光景が群青の目に映った。


斬れない。能力は間違いなく発動しているというのに。絽閔の足が斬れない。


群青「!!!?」


今、起こっている出来事が群青には信じられなかった。裂空はこの世の全てを斬る能力。そんな事が有り得る訳がない!!

絽閔「どうしたんですか? 隙だらけですよ! あはははははははっ!!」ドガッ!!!!

群青「ぐふっ!!!」ズサッ


一瞬の混乱が命取りだった。その隙に鳩尾を綺麗に後ろ回しで蹴られた。

内臓ごと抉りとるような、そんな恐ろしく鋭い蹴りが炸裂する。

彼の体は吹っ飛び、数メートル先の地面へと倒れ込んだ。息が出来ない。


群青「ぅっ……!!」ガハッ!!

絽閔「まだです! 終わりませんよ!!」ズガッ!!!!


その機を逃さず、絽閔は瞬時に詰め寄って、再び強烈な蹴りを加えた。


群青「っっ!!」ガキンッ!!!!


群青は痛む体を何とか動かし、どうにかその蹴りを日本刀で受け止めた。しかし、やはり能力が発動しているにもかかわらず、絽閔の足は切断されなかった。


群青「うぐっ!!」ズサッ……!!!!


衝撃によって群青はそのまままた吹き飛ばされた。彼の戦闘経験の中において、ここまで一方的にやられた事はこれが初めてだった。

理解出来ない目を相沢絽閔に向けると、彼は小さく笑った。話にならない、というそんな顔だった。

【ハナ】


ハナ(このままだと、あっさり決着しそうね)

ハナ(でも、それじゃ駄目なのよ。絽閔とかいう男にもダメージを受けてもらわないと)

ハナ(致命傷にならない程度に、ダメージを負わせるには……)

ハナ(油断と慢心が必要……。ついでに自分の能力についても喋ってもらうわ)


ハナはこの時、二人の思考を操作する事に集中しており、それ以外には注意を向けていなかった。

もしもこの時、彼女が能力を使わず、かつ、ハナがものすごく慎重で疑り深い性格であったなら、ひょっとしたら既にこの森に仕掛けられていた無数のトラップに気付いたかもしれない。

トラップとはなにか?

それは森全体の遥か上空に浮かんでいた大量のナイフだった。


絽閔は元から慎重な性格をしており、彼はこの森に入る前に保険としてナイフを何本も空中に投げ飛ばしていたからだ。そして、落下する手前で、その時間を全て停止させた。

時間が停まったナイフは落下する事なく、その場で停止する。これは絽閔が能力解除をするか、あるいは死ぬかするまで永久に動かない。


その為、ここら一帯には、能力解除一つで地上に向けて自由落下してくるナイフが何本も浮かんでおり、運が悪い事にもそれはハナの真上付近にもあった。


果たして彼女はそれが落ちてくる前に気付くのだろうか? 今、窮地に陥っているのは、ハナなのか、それとも群青なのか、あるいはこれから思考操作される絽閔なのか。


答えはすぐに出るだろうが、今はまだ確たる事は言えなかった。

依然、勝敗はなお、たゆったままである。

【相沢絽閔】


絽閔「これでは駄目ですね、お嬢様とのチェスの方が余程有意義な戦いです。あなたは弱すぎる」

群青「……っ」ヨロッ


絽閔「悔しい、という感情が顔にまで出ていてまるわかりですね。あなたはもっとポーカーフェイスを覚えた方がいいでしょう。これは私からのアドバイスですよ」

群青「……なんなんだい、あんたは……。俺の知ってる限りじゃ……能力を無効にする能力者なんているはずがないんだがねえ……」ゲホッ


絽閔「能力無効? そんな能力のどこに価値があると? ただの一般人と変わりがないではありませんか。それに、そもそも私の能力はそんなものではありませんよ」

群青「じゃあ何だってんだい……。俺の能力が通じないなんてあるはずがないんだが……」ハァ……ハァ……


絽閔「」フッ

絽閔「あなたの持つその刀で、私が斬れなかった事がそんなに不思議でも? 切断能力でもお持ちなのですか?」

群青「…………」


絽閔「だとしたら、あなたと私とでは相性が悪すぎますね。私の能力は物質の時間操作ですから。先程は靴の時間を停止して攻撃しただけです。それだけの事ですよ」

群青「……時間……?」ハァ……ハァ……

絽閔「ええ、そうです。時間が停止した物体は、『絶対に変化しません』から。これはごく当たり前の事ですよ。例えば、時間が停まった氷を熱湯の中に入れたら、それは溶けますか? 溶ける訳がありませんよね」

絽閔「つまり、そういう事ですよ。あなたが何でも斬れると言っても、時間が止まった物体だけは別物です。これは『絶対に斬れないし壊せない』。『一切、変化しません』。硬度や弾力などとは全く無関係にね」

群青「……なるほどね……時間がか……。ははっ……」ゲホッ


絽閔「御理解頂けたようで幸いです。では……とどめを差させてもらいますが、お覚悟は宜しいですか?」

群青「……あまり宜しくはないね。俺には絶対に知りたい真相ってのがあるからさ……。死ぬのは、その後だな……」チャキッ……


絽閔「……悪あがき、ですか。私はそれを見苦しいとは思いませんが……同情は出来ませんし、見逃しもしません。お覚悟を」スッ


ナイフを一本だけ取り出す絽閔。彼は相手を軽んじて体力温存を考え、結果、それは自分の能力を相手に教えた上での正面からの一騎討ちという最悪の形となった。

もちろんそれは普段の絽閔からしたら絶対に有り得ない事であり、そして、ろくでもないミスでもある。

それに気が付かないまま、気付く訳もないまま、絽閔と群青の二人は激突の瞬間を迎えようとしていた……。

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