男「俺が…勇者だと?」(15)
天使「はい、貴方はより優秀な勇者を作る為のクジに当たったので貴方は勇者として、活動して頂きます」
男「いや…でも…俺は何もしてないし…」
天使「構いません。」
男「でも…どうやって…」
天使「貴方にはこれから浮世(パラレルワールド)に行ってもらい、浮世にいる魔王を倒してもらいます。」
男「浮世…って…この世から俺はいなくなるのか!?そんなの嫌だ!好きな事が出来ない人生なんてまっぴらだ!」
天使「神の裁きからは逃れる事が出来ません」
男「でも、この世界に戻ってくることは出来るのかよ!」
天使「はい、但し条件があります。」
男「なんだよ…その条件って…」
天使「浮世には10つの世界があります。その一つ一つの世界にはとても凶悪なボスがいます。そのボスを倒す事ができたなら、貴方は現世に5分だけ戻ってくることができます」
男「っ!?5分だけだと!ふざけるんじゃないぞ!」
天使「先程も言いましたが、神の裁きからは逃れる事は出来ません。」
男「さっきから、神、神、神ってなんだよ!もし、その裁きから逃れようとしたらどうなるんだ?」
天使「逃れる事は出来ませんが…もし、逃れようとしたならば現世の貴方の存在が消滅します。」
男「なっ…」
天使「自分が大切ならば勇者になって頂けますか?」
男「くっ…わかったよ!なりゃいいんだろ!なりゃ!」
天使「ありがとうございます。では私はこれで…」
男「くそっ!なんだってんだ!」
world 1 ー旅立ちー
俺はふと、時計をみた。
時間は正午を少し過ぎた位だった。
男「はぁ…もう昼か…腹減ったな…」
男「それにしてもあの天使は何だったんだろう」
頭には輪がついていて、小さな翼、服は純白といったいかにも『天使』の格好をしていたのですぐに天使だと分かった。
男「初めはゲームのやり過ぎかと思ったわ…」
俺は高校に入ったものの、中退、家にずっといて、所謂、ニート生活をしている。
男「はぁ…、これが夢だったらなぁ…」
自分の頬を抓ってみる。
男「っ…」
痛い。確かに現実だ。
男「はぁ…」
コンコンッ
不意に部屋の音が鳴る。 母だ。
男「ちっ…なんだよ!」
母「お、男…君?お昼ご飯…作った…から、食べよう?」
男「んだよ!んなもんいらねぇよ!」
母「あぅぅ…ごめんね…鬱陶しいよね… あの…ご飯…部屋の前に置いておくね?」
男「分かったから早く行けよ!」
母「う、うん…」
男「はぁ…行ったか…」
俺は母と二人で暮らしている。
父とは離婚して、兄は父側についた。
男「昼飯食べるか…」
俺は自室の扉を開け、前に置かれた白い皿を取る。
男「今日は炒飯か…」
母は料理が得意で男の好きな物を良く作ってくれる。
炒飯もその中の一つだ。
男「旨いな…」
ガチャーン
下の階から大きな物音がした。
男「んだようるせぇな…」
気になって下に行く。
下の階に降りるのは何年振りだろうか。
綺麗に整頓されている。
男「か、母さん!?」
母が倒れていた。
状況を見ると洗い物をしている最中に倒れたらしい。
母「あぅぅ…ごめんね…男君…」
男「自分の体調管理位しろよな!」
母「そうだね…ごめんなさい…」
仕方なく、居間に布団を敷き、母を寝かせる。
母はものの数分で眠りについた。相当疲れていたらしい。
男「はぁ…何だか不幸続きだな…」
男「昼飯も食いそびれちまったし…俺ももう寝よう…」
俺は自室に行き。
ベッドの中に入った。
部屋は草緑の色に塗らていて、カーテンは空色、今は使っていないが木製の勉強机が置かれている。
このいろんな色の部屋は俺の好きな色で母は有無を言わずにやってくれた。
男「………」
いろんな思い出に浸っていると、眠気が襲ってきた。
やっと眠れる。これで嫌な思いもしなくなる。 俺は眠りについた。
俺は何故か異臭がするので跳ね起きた。
男「っ!?なんだこの匂いは!」
ガスの匂いがする。
それも尋常じゃない程の匂いだ。
男「くっ…一体どこから…」
俺は自室を飛び出した。
匂いのする方へと向かった。
男「下…」
下の方から異常な程の匂いがする。
急いで、俺は下に向かった。
下についた俺は言葉がでなくなった。
綺麗に整頓されていた筈の部屋は滅茶苦茶に荒らされていて。
皿やグラスなどが割れて散らかっている。
棚なども倒れていて、まるで嵐が通ったかのように思った。
男「っ………」
頭がクラクラする。
コンロの方を見ると、ガス栓が開けられていて、その近くで母が倒れていた。
男「母さんっ!」
男「くっ…頭が…」
頭痛を我慢して、ガス栓を閉める。そして換気扇を回す。
男「…これで大丈夫か…」
男「母さんっ!おいっ!母さんっ!」
返事がない。だが、息はしている。どうやら気を失っているようだ。
男「救急車…呼ばないと…」
男「ん?」
母が何かを持っている。
手にはマッチが握られていた。
男「………」
携帯を手に119番を押す。
救急車を呼び。母が連れて行かれる。その間も俺は言葉が出なかった。
俺は無意識の内に兄の部屋に入っていった。
男「兄さん…助けてくれよ…」
俺は非力だ。一人じゃ何も出来ない。母は人一倍働いていたのだ。母は30歳にも及ばない年齢だ。
幾ら若いから と言ってもやはり疲れはでる。
男「俺が素直になれないから…」
自分の事を卑見する。
男「俺は最低の人間だ…」
ふと、気がつく。
今は夜である。部屋の電気もつけていない。 なのに部屋がとても明るいのだ。
男「…」
意識が飛んだ。
ここは…どこだろうか…
全てが白くて…何も無い…
男「…ここは…どこだよ…」
?「ここは神の國だ」
男「!誰だ!」
?「今のお前に知る必要はない」
男「ちっ…気取りやがって…」
?「威勢だけは一流だな」
男「…」
?「言うことなしか…まぁいい…良い事を教えてやる。 お前の家から15km程離れた所にもう使われていない一軒家がある。その中に入って左の一番奥の部屋に入れ」
男「何言ってんだ?」
?「そのままだ。急いだ方が良いぞ」
男「おっおいっ!」
バタッ
男「………」
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