天海春香のクローバー (9)
サンタクロースをいつまで信じていたかーなんてものは、他愛のない世間話にすぎないのだが、それでも俺がいつまで信じていたかというと、実は最初から信じてなどいなかった
「千早ちゃん、今日は同じ布団の中で寝ようよ」
私が提案すると、千早ちゃんは頷いてくれた
同じ布団の中で寝るのは久しぶり
「じゃあ、私はお風呂に入ってくるわね」
「うん…」
千早ちゃんは着替えを持って、お風呂場へと歩いていく
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今日は朝から晩まで千早ちゃんと一緒にいたわけだが、夜は一緒ではなく、別々に寝ることになっている
でも、最近冷え込んできたんもんで夜になると1人じゃ寒い
そこでそれを理由に千早ちゃんに「一緒に寝よう」と提案したわけだが、それに千早ちゃんは頷いてくれた
…ほんとはただ一緒に寝たいだけなんだが
そんなこんなで、俺は1人わくわくしながら布団に潜っていたわけだが、しばらくして、千早ちゃんは俺の待つ布団にやってきた
「お待たせ」
千早ちゃんはさらっさらな長い髪を手で触りながら言う
おいおい…おまたせ、なんて何かこう…勘違いしちまうじゃねぇか
「うん…」
私は少し布団をめくって、おいで…のポーズをとる
「布団の中、あったかいよ」
「ええ…それじゃ、失礼するわね」
千早ちゃんが布団に入ると私と千早ちゃんは、密着してぎゅうぎゅう詰めになる
「ちょっとせまかったかな? 」
「いえ…全然平気よ」
それならいいんだけど…って、こうやって千早ちゃんがすぐ近くに居るのを考えると…急にドキドキしてきちゃった…!
千早ちゃんもドキドキしてたり……
うぅ…完全にお休みモードに入ってる
俺は、俺に背中を向けて寝る美少女の長い髪を見ながら、仕方なく眠りに就くことにした
………
こうやって同じ布団の中で眠っても何もないなんて、少し寂しいもんだな
もっとこう…何でもいいから何かあってもいいんじゃないか!?
…俺はそう心の中で呟いて、寝ることに集中する
ま、このシャンプーのいい香りが俺に安らかな睡眠を与えてくれるだけ良しとしよう
そう思いなおしたのだ
………
屋根の下で美少女と一夜を過ごすなんて経験をまともにしたことがない俺は、中々眠れずにいた
……居心地がわるい!
いやー1度でいいから美少女の隣で寝るなんて経験をしてみたいなどと思ったが、実際に叶ってみるとそれはそれで呆気ないもので、経験をしてみて得られたのは緊張感だけだ
そうして徐々に寝ることを諦めた俺は、今置かれている状況に対して真面目に考えることにした
…どうせまたあいつの仕業か何かの影響でこうなってるんだろうが、さすがに考えないといけないな
………
俺は、誰なんだ…?
その時、俺の頭を痛みが襲った
……くぅ、なんだ…これは!
激しい痛みと共に、俺に何かが呼びかける
「………?」
俺の頭に入ってきた言葉は…
「我輩は猫である」
………なんだって?
頭痛いから…!まずはこれをどうにかしてくれ…!
俺が頭の中で訴えると、痛みは治まった
いったい何なんだよちくしょうめ
俺の今置かれてる状況を説明してくれ…!
なぜ俺は美少女と一緒に寝ている
おまけに、俺を維持している物体は何処に行った
何で俺までもがどこの誰かも分からない美少女になっちまってんだ?
意識が移ってるだけで体は動かせんが…
………ふぅ
とりあえずお前の名前を聞こうか
「名前はまだない」
話にならん
とりあえず姿を見せろ
俺にだけ見えるようにだ
そのくらいなら、できるんだろう?
どうやらお前の声が聞こえてるのは俺だけみたいだからな
俺の考えが届いたのか、俺に呼びかけていた主が、俺の前に姿を現した
……一応、猫なんだな
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