あやめ「やはり珠美殿も普段から筋トレを？」

珠美「ええ、強い剣士になるためには鍛練は欠かせませんから！」ｺﾓﾘｯ

あやめ「おぉ……！」






あやめ「ところで何を読んでいるのですか？」

珠美「るろうに剣心です」

あやめ「るろうに剣心」

珠美「剣士ですから」

ｶﾞﾁｬ

輿水幸子「今日もカワイイボクが……おっとっと」ｺｹｯ

珠美「カワイイのはいいですけどちゃんと足元に気を付けないと……」


幸子「倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪」ﾋﾞﾖｰﾝ


珠美「えっ」

あやめ「えっ」

幸子「腹筋バキバキなボクもカワイイ！」ﾑｷﾑｷﾊﾞｯｷﾝ






あやめ「根気次第とは」

珠美「いやどう考えてもおかしいでしょう！？」

幸子「さあ、二人もワンダーコアで腹筋バキバキになりましょう！」ｶﾞｼｯ

珠美「あっ幸子さん、そんな勢いよく掴んだら……うわあっ！」ｺｹｯ

あやめ「た、珠美殿！」






珠美「倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪」ﾋﾞﾖｰﾝ

あやめ「珠美殿ぉぉぉぉぉ！」ｳﾜｧｧｧ

幸子「さあ、あやめさんもワンダーコアで腹筋を鍛えましょう……」ﾕﾗｧ

あやめ「ひっ……！」ﾀﾞｯ

幸子「ワンダーコアからは逃げられませんよ！」ﾑｷﾌﾌｰﾝ!

あやめ（P殿……P殿ならなんとかしてくれるはず……）

ｶﾞﾁｬ

あやめ「P殿、大変です！」






千川ちひろ「今なら最大半額！」

P「やったぁ！」

あやめ「手遅れだった！」ｳﾜｧｧｧ

ﾀｯﾀｯﾀｯ

あやめ（ほ、他に頼れる人は……そうだ！）ﾋﾟｰﾝ

あやめ（更衣室になら誰かが居るはず！）

ｶﾞﾁｬ

あやめ「大変です！」






木場真奈美「ん？」ﾑｷｰﾝ

大和亜季「ん？」ﾑｷｰﾝ

中野有香「はい？」ﾑｷｰﾝ

あやめ「一足遅かった！」ｳﾜｧｧｧ

あやめ「はぁ、はぁ……」

あやめ「事務所が、みんなが……これからどうすれば……」


「自走ワンダーコアの群れだぁ！」

「うわぁぁぁぁ！」

「倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪」

「優ぅぅぅぅぅ！」


あやめ「な、なんという……もうこの町、いや日本中に拡がっているのでは……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

「こっちにも来たぞぉ！」

あやめ「なっ……あれは！」


橘ありす「倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪」ﾑｷﾑｷﾊﾞｯｷﾝﾌﾞﾛﾛﾛﾛ...

市原仁奈「倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪」ﾑｷﾑｷﾊﾞｯｷﾝﾌﾞﾛﾛﾛﾛ...

遊佐こずえ「わんだー……こあぁ……」ﾑｷﾑｷﾊﾞｯｷﾝﾌﾞﾛﾛﾛﾛ...


あやめ「自走ワンダーコアの上に年少組が！」

あやめ「しかも揃いも揃って腹筋がバキバキに……」

あやめ「ここは逃げて、なんとしても解決策を見付けなければ……まきびし！」ﾎﾟﾎﾟﾎﾟﾎﾟﾎﾟｲ


ﾁｭﾄﾞｫｫｫｫｫﾝ!


あやめ「！？」

「まきびしを踏んだワンダーコアが爆発したぞ！」

あやめ「そ、そんな……」ﾜﾅﾜﾅ

「でも乗ってた子は無事だ！」

「腹筋に守られたのね……」

あやめ「よかった……」ﾀﾞｯ

あやめ「細い路地……さすがにここにワンダーコアは入ってこれないでしょう……」

？？？「その発想は正しいよ」

あやめ「っ！」

双葉杏「構えなくてもいいって。杏は敵じゃないから」ﾀﾞﾗｰ

あやめ「そうでしたか」ﾎｯ

杏「そうだ、いいこと教えたげる。ワンダーコアに取り込まれない方法があるんだ」

あやめ「それは！？」

杏「最初っから寝転んでればワンダーコアは出てこないんだ」

杏「常にゴロゴロしてる杏だから見付けられた裏技だよ」

あやめ「なるほど……そんな抜け穴が……」

ｺﾞｩﾝｺﾞｩﾝｺﾞｩﾝｺﾞｩﾝ

あやめ「む、この音は一体……？」

杏「うわぁっ、なんだこれ！？」

あやめ「あ、あぁ……杏殿の寝転んでいる地面からワンダーコアがせり上がって……！」

杏「くそおおおお」ｺﾞｩﾝｺﾞｩﾝｸﾞﾃｰ

あやめ「杏殿ぉぉぉぉぉ……はっ！」ｶﾞｻｺﾞｿ

杏「倒れるだけで腹筋「スモークボム！　ホアァァァァァ！」ﾎﾞﾑﾝ

ﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯ

杏「ん、誰の背中だこれ……」ﾕｯｻﾕｯｻﾕｯｻﾕｯｻ

あやめ「気が付かれましたか、杏殿」ﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯ

杏「あやめ……あぁ、杏はワンダーコアに……」ﾕｯｻﾕｯｻﾕｯｻﾕｯｻ

あやめ「ええ、危ないところでした」ﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯ

杏「……ありがと」ﾕｯｻﾕｯｻﾕｯｻﾕｯｻ

あやめ「礼には及びませんよ。仲間を助けるのは当然の事ですから」ﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯ

杏「そうはいかないよ。杏にだって恩を感じる心はあるんだからさ。だから……」ﾕｯｻﾕｯｻﾕｯｻﾕｯｻ

あやめ「……杏殿？」ﾋﾟﾀｯ






杏「あやめのワンダーコアデビュー、つきあったげる」ｸﾞｲｨｨｨｨｨ

あやめ「そんな、杏ど、のぉ……！？」ｸﾞﾗｯ

あやめ（もう、バランスが……倒れ……）ﾌﾗｧ...

ﾊﾞｼｲｯ!

杏「うぐっ……！」

ﾁｭﾄﾞｫｫｫｫｫﾝ!

ｶﾞｼｯ

？？？「安心してください。杏さんの背中に張り付いていたワンダーコアだけを狙いましたので……大丈夫ですか、あやめ殿？」

あやめ「あ、あなたは……」






あやめ「珠美殿！」

珠美「友の危機に、遅れ馳せながら」ﾆｺｯ

あやめ「珠美殿ぉ……」ｳﾙｳﾙ

珠美「ほら、泣いている場合ではありませんよ」

あやめ「あれ、でも珠美殿はワンダーコアに取り込まれたはずでは……」

珠美「いえ、それがどうも普段から入念な筋トレをしている者は取り込まれにくいようで……」






あやめ「……さ、さすが珠美殿！」

珠美「剣士ですから」ｴﾍﾍ

珠美「さ、あやめ殿はこれを」

あやめ「これは……虎の子の忍具袋！」

珠美「あやめ殿なら必ず逃げ延びていると信じ、持ってきました」

あやめ「珠美殿……！」






珠美「さあ、反撃開始です！」

あやめ「はい！」

安部菜々「倒れるだけで腹筋うぐっ！」ﾊﾞｼｲｯ!

ﾁｭﾄﾞｫｫｫｫｫﾝ!

ｼｭｯ

諸星きらり「倒れるだけで腹筋ワンダーにょわーっ！」ﾄｽｯ

ﾁｭﾄﾞｫｫｫｫｫﾝ!

島村卯月「倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪」ﾑｷﾑｷﾊﾞｯｷﾝﾌﾞﾛﾛﾛﾛ...

渋谷凛「倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪」ﾑｷﾑｷﾊﾞｯｷﾝﾌﾞﾛﾛﾛﾛ...

本田未央「倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪」ﾑｷﾑｷﾊﾞｯｷﾝﾌﾞﾛﾛﾛﾛ...

神谷奈緒「倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪」ﾑｷﾑｷﾊﾞｯｷﾝﾌﾞﾛﾛﾛﾛ...

北条加蓮「倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪」ﾑｷﾑｷﾊﾞｯｷﾝﾌﾞﾛﾛﾛﾛ...

珠美「くっ、さすがにこの数は……」

あやめ「……貴様らにそんな玩具は必要ない！」ｼｭｼｭｼｭｼｭｼｭｯ

ﾄｽﾄｽﾄｽﾄｽﾄｽｯ

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｫﾝ

珠美「あやめ殿！」

あやめ「大丈夫ですか珠美殿！」






珠美「さっきの決め台詞は」

あやめ「いやぁ、一度言ってみたくて」ｴﾍﾍ

あやめ「はぁ、はぁ……これでこの辺りのワンダーコアはあらかた……」

珠美「はぁ、はぁ……ええ、倒したはずです……」


ﾑｷﾑｷﾊﾞｯｷﾝﾌﾞﾛﾛﾛﾛ...


あやめ「！」

珠美「そんな……道を埋め尽くすほどのワンダーコアが……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

あやめ「に、逃げましょう！　今は退いて、勝機を……」


ﾌﾞｩｩｩｩﾝ...ｷｷｰｯ!

珠美「ジープが退路を！？」

あやめ「そんなぁ……」

ｶﾞﾁｬ


真奈美「……」

亜季「……」

有香「……」


珠美「みなさん……あやめ殿！　天はまだ珠美たちを見捨てては……あやめ殿？」

あやめ「あ、あぁ……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

珠美「あやめ殿……？」

あやめ「駄目です珠美殿……あの三人はもう……」

珠美「え、あの三人が？」

あやめ「ええ！　だからこちらの路地へ！　逃げるんです！」ﾀﾞｯ

珠美「いえ、そんなはずは……」ﾀﾞｯ


真奈美「……」ｽｯ

亜季「FIRE！」ﾊﾞﾗﾗﾗﾗﾗﾗﾗ


あやめ「撃ってきた！？」

珠美「……」

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｫﾝ...


有香「二人とも！　こちらがいいと言うまで絶対にその路地から出ないでください！」


あやめ「……へ？」

珠美「……やはりあの三人は敵ではありません」

あやめ「え……」

珠美「あやめ殿、先ほど珠美の言った言葉を覚えていますか？　普段から入念な筋トレをしている者は……」

あやめ「……取り込まれにくい！」


真奈美「その通りだ。誤解を解く手間が省けて何よりだよ」

亜季「その通り！　我々アイドルビルドファイターズはヤワな鍛え方をしておりませんので！」

有香「えっ」






有香「アイドルビルドファイターズ」

真奈美「私も初耳だ」

亜季「えっ」

亜季「そんな」

真奈美「……とにかく、今はワンダーコアを止めるのが先だ」

珠美「やはり一つ一つ倒していくしかないのでしょうか……」

有香「いえ、その必要はありません」

亜季「我々は独自の情報網でワンダーコアを操るコア、通称マスターコアの存在を掴んでいるであります」

あやめ「独自の情報網……」

真奈美「ビルド情報網だ」

亜季「真奈美殿」

あやめ「つまり、そのマスターコアを叩けばワンダーコアは止まるのですね？」

有香「その通りです」

珠美「そして、そのマスターコアはどこに？」

真奈美「……あそこだ」ｽｯ

あやめ「上？　……なっ！」

珠美「たくさんのワンダーコアが空に……！？」

有香「あの中心にマスターコアが陣取っています」

珠美「しかし、空に浮かぶものをどうやって破壊すれば……」

あやめ「……珠美殿、私の背に」

珠美「え？　は、はい」ｷﾞｭ

真奈美「……何をするつもりなんだい？」

あやめ「空を翔び、珠美殿の剣をマスターコアへ届かせます」

珠美「えっ」

真奈美「えっ」

亜季「えっ」

有香「えっ」






あやめ「えっ」

珠美「無理ですってあやめ殿！」ｳﾜｧｧｧ

あやめ「大丈夫です！　昔の忍者もこのような風呂敷を使って空を翔んだと聞きます」ﾊﾞｻｧ!

真奈美「それは翔んだのではなく滑空していたのではないのかい？」

あやめ「ええ、しかし常に下から風を受けていればその高度は増していくはずです」

有香「常に風を……」

あやめ「亜季殿、ジープにはもちろんロケットランチャーの類は積んでいますよね？」

珠美「いや、さすがにそんな物騒なものは積んでいないのでは……」






亜季「もちろんであります！」

珠美「なぜに！」

あやめ「亜季殿は私があの角を駆け抜けるタイミングで私の足元をロケットランチャーで爆破してください。後は自前のスモークボムで高度を稼ぎます」

亜季「サー、イエッサー！」

珠美「ほ、本当に翔ぶんですかあやめ殿……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

あやめ「心配しないでください。珠美殿とならば私は、空の一つや二つ、簡単に翔んでみせますから」

珠美「あやめ殿……」

真奈美「……やれやれ、そこまで言うのなら止めはしないさ」






あやめ「友よ、今が駆け抜けるとき！」

珠美「承知！」

あやめ「では後は手筈通りに！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

有香「地上は私たちアイドルビル、えっと……」

亜季「！」ｿﾜｿﾜ

有香「アイドルビルダーズに任せてください！」

亜季（惜しいっ！）

真奈美「正しくはアイドルビルドファイターズだよ、有香」

亜季「真奈美殿……」ｳﾙｳﾙ

有香「アイドルビルドファイターズに任せてくださーい！」

亜季「有香殿ぉ……」ﾀﾞﾊﾞﾀﾞﾊﾞ

真奈美「泣いている暇はないぞ。彼女たちを空に送り届けるという重要な仕事が残っている」ﾌｯ...

ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

珠美「路地から自走ワンダーコアが！」

あやめ「承知の上！」ｼｭｼｭｼｭｯ

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞｫﾝ

あやめ「飛行時の負担を減らすために必要最低限の武器以外は使いきっておきます！」ｼｭｼｭｼｭｼｭｼｭｯ

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｫﾝ

ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

あやめ「せいっ！」ｶﾞｷﾝｯ

ﾁｭﾄﾞｫｫｫｫｫﾝ!

あやめ「よし……今だ！」ﾊﾞｯ


真奈美「今だ！」

亜季「FIRE！」ﾎﾟｳｯ

ﾄﾞｫｫｫｫｫｫｫﾝ...

有香「後は頼みますよ、二人とも……」

ﾌﾖｫｫｫｫｫｫｫｫｯ

珠美「ひゃあああああ！？　翔んでる！　翔んでる！？」

あやめ「ええ、翔んでおりますとも！」

ﾌﾖﾌﾖﾌﾖﾖｫ...

珠美「ひ、飛行ワンダーコアがあんなに……！」

あやめ「それすらも計算の内です……スモークボム！」ﾎﾞﾑﾝ

ﾌﾖｫｫｫｫｫｫｫｫｯ

珠美「なるほど……下に回ってきたワンダーコアにスモークボムをぶつけて爆風を！」

あやめ「もうすぐでマスターコアに……ふんっ！」ｶﾞｷﾝｯ

ﾁｭﾄﾞｫｫｫｫｫﾝ!

ﾌﾖｫｫｫｫｫｫｫｫｯ

珠美「あ、あまり忍者刀を大きく振らないでください！」ｸﾞﾗｸﾞﾗｱﾜﾜ

あやめ「すみません……しかし、スモークボムは数に限りがあるので使いどころを考えないと……」

珠美「なるほど……えいっ！」ﾊﾞｼｲｯ!

ﾁｭﾄﾞｫｫｫｫｫﾝ!

ﾌﾖｫｫｫｫｫｫｫｫｯ

珠美「あやめ殿……とうとうマスターコアまで目と鼻の先です！」

あやめ「……」

珠美「……あやめ殿？」

あやめ「……御免！」ｸﾞﾙﾝｯ

珠美「ひゃあっ！？」

ﾏｷﾏｷ...ｷﾞｭｯ!

珠美「これは空を翔ぶための風呂敷……珠美に付けてしまっては！」

あやめ「聞いてください珠美殿。二人でマスターコアの所へ向かうには今あるスモークボムでは数が少なすぎます」

珠美「そんな、しかし、でも……」

あやめ「今から全てのスモークボムを炸裂させ、珠美殿をマスターコアの元まで翔ばします」

珠美「そんなことをすればあやめ殿が！」

あやめ「ご安心を。忍は死にません。御庭番衆の翁だって生きていたではありませんか」

珠美「こんなときに漫画の話など……！」

あやめ「ええ、漫画です。しかしその漫画の見様見真似でここまで翔んでくることができました」

珠美「！」

あやめ「私は死にませんよ、珠美殿」

あやめ「なぜなら私、浜口あやめは……」ｽｯ






あやめ「忍ですから」ﾆｺｯ

ﾄﾞｫｫｫｫｫｫｫﾝ

あやめ「お願いします珠美殿！　人々を、そしてワンダーコアを！」


珠美「うわあああああああああああああ」

珠美「ああああああああああああああ」

珠美「あああああああああああ……」

ﾌﾖﾌﾖﾌﾖﾖｫ

珠美「ワンダーコアの壁が……」

珠美「……」ｷｯ

珠美「この勢いで……！」

ｶﾞﾝ!

真奈美「見ろ、マスターコアに向けて急速に加速したぞ！」

亜季「さすが……さすがであります！」

有香「待ってください！　何か落ちてきます！」

亜季「あれは……あやめ殿！？」

真奈美「いかん、ジープを出す！　受け止めろ！　絶対に落とすな！」

有香「はい！」

ｶﾞﾝ! ｶﾞﾝ! ｶﾞﾝ! ｶﾞﾝ! ｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞ...

珠美（視界がワンダーコアだらけで……前が見えない！）

珠美「しかし、みんなのためにも、あやめ殿のためにも……」

珠美「前が見えない程度で！」

ｶﾞﾝ!

珠美「抜けた！　……マスターコアは！？」

ｼﾞ､ｼﾞｼﾞ...

珠美「竹刀の先に何かが引っ掛かって……これが恐らくマスターコア！」

珠美「どうやって竹刀の一撃だけで破壊すれば……！」ﾊｯ

珠美「……」ﾁﾗ






あやめ「……………………」

あやめ「……………………」

あやめ「……………………」

あやめ「……………………」

あやめ殿おおぉぉぉおぉおおぉおぉぉお！！！

あやめ「！」ﾊｯ

珠美「そちらにマスターコアを叩き落としました！　斬ってください！」

あやめ「…………はい！」


あやめ「あれがマスターコア……人々を、ワンダーコアを操っていた全ての元凶……」

あやめ「覚悟！」


ｻﾞﾝｯ






珠美「我らに……」

あやめ「断てぬものなし！」ｷﾝｯ


ｶｯ

ﾌﾞｩｩｩｩﾝ...

真奈美「まったく、予想を跳び越えた無茶をするものだ」

有香「まあ、今回はそのお陰でみんな助かったんですしいいじゃないですか」

亜季「そうでありますよ、真奈美殿」

真奈美「……フッ、それもそうだな」


あやめ「Zzz……」

珠美「Zzz……」

ﾌﾞｩｩｩｩﾝ...

あれから数日後、何もかも元通りという訳にはいきませんが（主にみんなの腹筋）事務所はいつも通りの日常を取り戻し始めています。

筋肉痛が酷い人たちの対応のために、今日も清良さんや早苗さん、アイドルビルドファイターズの面々が忙しそうに走り回っています。

ちなみに、ワンダーコアはアイドルビルドファイターズの必死のキャンペーンによって回収・販売停止を免れました。

私たちもワンダーコアに付いてしまったネガティブなイメージを取り払うため、CM出演などで頑張っています。

杏「うぅ、痛い……腹筋付かなかったんだから筋肉痛も来なくていいよ……」

あやめ「杏殿……私が不甲斐ないばかりに……」

杏「だから今日の仕事はあやめに代わってもらおう」

ありす「気にしなくていいですよ。杏さん、真っ先に筋肉痛はないって言わあいたたたた！」

杏「余計なこと言わなくていいの」ｸﾞﾘｸﾞﾘ

あやめ「なんてことがありまして……」

珠美「ふふ、杏さんはこんなときでもぶれませんね」

『倒れるだけで腹筋ワンダーコア～♪』

珠美「そういえば今日から新しいCMでしたっけ」

あやめ「そのはずです。確か幸子殿が……」






幸子『腹筋バキバキなボクもカワイイ！』

珠美「……ぶれませんね」

あやめ「ですね」

あやめ「さ、そろそろレッスンに参りましょうか」ｽｯ

珠美「おや、もうそんな時間でしたか」ｽｯ

あやめ「立派な忍に、そしてアイドルになるその日まで……」

珠美「立派な剣士に、そしてアイドルになるその日まで……」






「「絶対に倒れない！」」