末原「あのサイン、ちょっと酷過ぎやしないか」 (101)
マイナーカプの咲SSです。
マイナーカップルなんで、苦手な方はご注意ください。
また、口調が違ったりなどキャラ崩壊があるかもしれません。
それでは、始めます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1411656081
絹恵「末原先輩、何かあったんですか?」
末原「いや、試合終わった直後やったから気にしとらんかったんやけど、ほら宮守の大将にサイン渡したやん」
絹恵「あー、あの大きな人ですよね」
末原「今思うと、あのサイン酷かったな、思うて」
絹恵「そうでした?」
末原「手が震えとったから、なんか蛇みたいになっとった気がする」
絹恵(というか、末原としか書いてないサインってどうなんやろ)
末原「気になると仕方ないわ、ちょっと書き直しに行ってくる」
絹恵「行っちゃったけど、大丈夫かな」
洋榎「今はええことかもしれへん。清澄のプラスマイナスゼロ、結構精神的にくるものがあるはずや」
―会場廊下―
末原「宮守の控室はこっちか。それにしても、なんか気を紛らわせるために利用してるみたいで、ちょっと気乗りせえへん」
末原「それに、サイン上げた時笑顔やったから、また書き直すのもある意味失礼なんかな?」
姉帯「……グスッ」
末原「って、おったわ。あれだけ大きいとすぐわかるわ。なんか、泣いてるみたいやけどどうしたんや?」
姉帯「……グスッ」
末原(私の書いたサイン見て泣いとる)
姉帯「……こんな、こんなはずじゃ……グスッ」
末原(あの時は気付かんかったけど、これほんまサイン酷過ぎるわ……。もしかしてサインの汚さに泣いてるってことか!?)
姉帯「…どうしよう……グスッ」
末原「今描き直したるからな」
姉帯「ふぇ、え、末原さん?」
末原「すまんかったな。そんな汚いサイン渡して」
姉帯「え、な、なんのこと?」
末原「え、だって。私のサインが汚いから泣いてたんやろ?」
姉帯「そ、そんなことないよー。もらえただけでもちょーうれしいよー」
末原「そ、そうなんか、じゃあなんで……」
末原(って、よくよく考えたら今涙流す理由なんて、一つしか無いやん。敗退、それも大将は事実最後に戦う役割やからその責任とか、色々背負わなアカン。今それを背負い込んでるのに、なに見当違いなことしとんねん)
末原「すまん、姉帯!」
姉帯「な、なんであやまるのかな」
末原「ちょっと、無神経すぎた。試合の後なのに、こんな勘違いして」
姉帯「気にしないでいいよ―」
末原「私が気にするんよ」
姉帯「私が力不足だっただけなの。だから末原さんがきにすることじゃないのよー」
末原「そうは言っても」
姉帯「えへへ……グスッ」
末原(こんな姿見て、気にするなっちゅうのが無理な話やないかい!)
末原「姉帯、ちょっと時間あるか? 何かの縁やし、何か奢るで」
姉帯「え、大丈夫だよー、悪いよ」
末原「私が奢りたいんや。それにやっぱりサイン書き直したいし、ちょっと付き合ってくれへんか」
姉帯「……サインもう一枚くれるの?」
末原「飲み物のおまけつきやで」
姉帯「ホントにいいの?」
末原「むしろ、受けてくれると嬉しいわ」
姉帯「わかったよー」
―会場内部カフェ『ポポポ』―
末原「へぇ、元々は宮守とは違う場所におったんか」
姉帯「うん、熊倉先生にスカウトされて岩手から宮守に来たんだー」
末原「そうなんかー」
末原(岩手やな)
姉帯「でも、末原さんは不思議だよ」
末原「何が不思議なん?」
姉帯「だって、先制リーチが危険なのに四回もやってきたから。びっくりしたよー」
末原「あー、あれはなはっきりさせとこう思って。はっきりせんと気が済まん性質なんや。だから、ここの奢りもそういう性質の所為やと思ってや」
姉帯「えへへ、こうやって誰かと二人きりでカフェは初めてなのー」
末原「そうなんか?」
姉帯「うん、この頃は皆と一緒だったし、引っ越してくる前は行こうなんて思った事もないし、末原さんがはじめてよー」
末原「そう言われると、なんか照れるわ。それより、なんであんな場所に一人でいたんや」
姉帯「控室に戻る前に、涙流しちゃおうって思ったの。皆の前で泣くのいけないことだって思ったから。私の所為で敗退しちゃったんだもん。皆になんて言えばいいのか、全然思いつかないの」
末原「……」
姉帯「ホントはね、まだまだ終わるつもりなんてなかったの。皆と一緒にお祭りを続けたかった。でも、それを私が終わらせちゃったから……」
末原「ちゃうで」
姉帯「え?」
末原「姉帯の所為なんて、あんたの友達が思ってるわけないやろ」
姉帯「だ、だって」
末原「あの場を見てみ、姉帯の振り込みは一回だけや、それに対して一番振り込んどるんは私なんやで。ツモ上がりされるんだけはどうしようもない事や、それを責めることができる奴なんてこの世にはおらん。自信持ってええ、姉帯は全力で麻雀やったんや」
姉帯「そうなのかな……」
末原「そうや、それにその事で誰か姉帯を責めるようやったら、私がビンタしたるわ」
姉帯「そ、そこまでしてもらわなくてもだいじょうぶだよー」
末原「ここまで話聞いてほっとけるかいな。はっきりさせな気が済まない性質って言うたやろ」
姉帯「あ、ありがとー///」
末原「なんで、帽子で顔隠すん?」
姉帯「気にしないでいいよ―」
末原「そか、姉帯結構かわええから、勿体ないで」
姉帯「へ?」
末原「せや、遅くなっても悪いし控室前で送るわ。みんな待っとるやろ」
姉帯「ひ、一人で戻れるよ―」
末原「いやいや、ここまで付き合わせといて置いてくとかできへんからさ」
姉帯「じゃ、じゃあ。おねがいするねー」
末原「お安い御用や」
―宮守控室前―
末原「結構時間経ってしもうたな。呼び止めて悪かったわ」
姉帯「ううん、気持ち楽になったのよー」
末原「こっちも気持ち少し楽になったわ。ありがと」
姉帯「どういうこと?」
末原「悩み事があるんや。でも思ったわ。私は幸せもんなんやって、まだ考える事が出来るっていうことが」
姉帯「考える事―?」
末原「そうや、くよくよしとる暇があったら、頭回転させて解決すればええだけやからな。姉帯と話できて良かったわ、そのことすっかり忘れとった」
姉帯「そう言われると、嬉しいよー」
末原「ありがとうな。それじゃ、私は――」
姉帯「あ、あの……末原さん」
末原「ん、どうしたん?」
姉帯「あ、明日、暇だったりするかな―とかとか」
末原「明日?」
姉帯「あ、無理なら大丈夫だよ」
末原「明日やろ。そうやな…ちょっと待っててや、電話で聞いてみる」
洋榎『おー、きょうこ、どないしたん?』
末原「主将、代行はそちらにいますか」
洋榎『おるでー』
赤阪『は~い、すえはらちゃ~ん、どないしたん?』
末原「明日の予定なんですけど、強化練習は午後からでしたよね」
赤阪『そうやで~』
末原「午前中は特にこれと言って、用事とか用意はあるんですか」
赤阪『せやな~。準備はこっちでやっとるから気にしないでええよ。むしろ午後はみ~っちり麻雀漬やから、午前中しか自由時間無いと思った方がええかな~』
末原「わかりました、それじゃ用意の方をよろしくお願いしますね」
赤阪『まかせといて~』
洋榎『そうや、そろそろホテルに戻るから、きょうこも戻ってきい』
末原「はい、もう少ししたら戻ります。それでは」
末原「午前中なら大丈夫ですよ」
姉帯「やったー。明日、朝九時くらいに会場前集合でお願いするのよ―」
末原「わかったで。どこか行きたいところあるんか?」
姉帯「そ、その、そうなのー」
姉帯(末原さんともっと話がしたいからとか、そんなこと言えないよー)」
末原「そか、それじゃ楽しみにしとるで」
姉帯「うん、また明日―」
姉帯(勢いのまま、約束しちゃったよー。こんなこと、初めてなんですけど)
―宮守控室―
白望「海いいな……」
エイスリン「ウミスキ」
姉帯「みんな、どうしたのー。うわっ!か、神代さんだー!」
神代「はじめまして、あの、色紙を届けに来たのですが、これでよろしかったでしょうか?」
姉帯「わーっ!すごい!すごい!!」
塞「それにしてもトヨネ少し遅かったけど、大丈夫?」
姉帯「うん、みんなごめん。頑張ったんだけど、駄目だった」
白望「いい、がんばったんだし……」
塞「そうよ、まだ個人戦もあるし」
胡桃「落ち込むの終わり!」
姉帯「みんな…ありがとう。ところで海とか、何の話してたのー?」
霞「はい、個人戦まで時間があるので、海に遊びに行こうかと思いまして、よかったらご一緒にどうですかと」
姉帯「海、海とかー!」
白望「水着買わなくちゃ……めんどい」
塞「とか言いながら、ホントは楽しみなんでしょ」
白望「……めんどい」
エイスリン「ミズギハイレグ?」
胡桃「私たちの中にハイレグ似合うのいませんね」
霞「?」
神代「?」
塞「いや、いるにはいるね」
胡桃「世の中不公平です!」
エイスリン「バインバイン」
白望「……バレーボールかな」
神代「あの、胸が何か?」
霞「皆さんも水着の準備があるでしょうから、海は明後日以降からということにして、明日は水着を買いに行って来てはどうでしょうか?」
塞「そうさせてもらいます」
姉帯(明日、末原さんに会う約束してる……水着選びのお出かけになっちゃうのかな)
白望「トヨネ、どうかしたか。顔真っ赤だぞ」
塞「ホントだ。すっごい真っ赤、風邪?」
エイスリン「インフル?」
姉帯「え、えっと、何でもないのー」
姉帯(いやいや、末原さんだっていきなり水着選びに付き合わされても困るよね。でもでも、末原さんに水着選んでもらえたらうれしいなー、とかとか)
一同(怪しい)
姉帯「そ、それと水着午後からでいいかな―。午前中にちょっと用事があるの」
姉帯(午前中に水着の下見に行けばいいんだよ。そうだよ、さいこうだよ)
一同(ふんふむ)
姉帯「えっと、その、そういうわけだから、午後からにしよーそうしよー」
一同(顔真っ赤で可愛いけど、これは尾行確定ね)
神代「これはあれでしょうか?」
霞「あれでしょうねぇ。そうだ、いいお店知ってますからそこで選んでみてはどうです。姉帯さんに場所の地図を渡しておきますので」
―翌日―
末原「すまんすまん、遅れてもうたかな?」
姉帯「ううん、すこし前に来たところだから大丈夫よー」
末原「そうか、良かったわ。本当なら一日の方がええんやけど、午後からは先約入っとるからすまへんな」
姉帯「仕方ないよー。午前中だけでも付き合ってもらえて、ちょーうれしいよ」
末原「そう言ってもらえると嬉しいわ。もう行く場所は決まっとるん?」
姉帯「うん、地図もあるから迷わないよー」
末原「時間もまだまだあるしのんびりで大丈夫やろ。今日はよろしく」
姉帯「こちらこそ、よろしくねっ」
白望「気になって追いかけて見れば、あれは姫松大将の末原恭子だね…」
塞「これ、どう見ても……」
エイスリン「デートデス!」
胡桃「明日準決勝なのに余裕過ぎ!」
末原「そういえば、昨日みたいな黒い服じゃないんやな。ちょっとびっくりしたわ」
姉帯「へ、変かな。この白いワンピース」
末原「いや、とっても似合っとるで、背高くて背中まっすぐやから綺麗で可愛いわ。その白い帽子もええ、なんか清楚って感じでええよ」
姉帯「そ、そう言ってもらえるとちょーうれしいよ―」
白望「あ、これは破壊力やばい…」
塞「トヨネのあんな表情初めて見るわ」
エイスリン「キュンシシソウ」
胡桃「あの人サラッといますね」
姉帯「昨日の今日なのに、付き合ってくれてありがとう」
末原「気にしない気にしない、それより午後から練習漬けになってまうから、姉帯と話せてうれしいよ」
姉帯「私と話せてうれしい?」
末原「そうやで、楽しいし嬉しいわ」
白望「おい、……おい!」
塞「あれを無自覚で、タラシか!」
エイスリン「タワシ?」
胡桃「これは危険です!」
―サマーバケーションショップ「ホットリミット」―
末原「ここが姉帯の来たかった場所なんか」
姉帯「うん、海に行くことになったんだー」
姉帯(霞さんに教えてもらったお店、水着いっぱいって聞いてたけど、こんなに種類あるなんて予想外だよー」
末原「海、ええな~。やっぱり夏と言えば定番やもんな」
姉帯「えへへ、それでその水着の下見に色々見てもらいたいなーって思って」
末原「なんか、カップルみたいやなー」
姉帯「そ、そんなこと///」
白望「昨日の話から予想できてはいたけど……」
塞「いきなり水着選びに連れていくとか、レベル高いわね」
エイスリン「キワドイタイプ?」
胡桃「悩殺できる奴!」
すいませんが今日はここまでということで、明日同じくらいの時間に再開します。
自身のあまりの勘違いにリアルカタカタしてました。
か、神代(じんだい)……
というわけで、再開していこうと思います。
末原「へー色々あるんやな」
姉帯「私、始めて見るのもあるよー。ん?これ……水着なのかな?」
末原「どれどれ……水着とは思えないほどに布がないんやけど…」
姉帯「これって紐にしか見えないよー。これ着てる姿とか想像できないよー」
末原「……露出狂やないんかこれ」
白望「それ、ビキニってやつだよね…」
塞「そうだよ」
白望「なんで笑顔で渡してくるのか…」
エイスリン「ヒラヒラカワイイノデキマリデス」
胡桃「え、子供じゃないし、高校生ですから!」
姉帯「あー、これも、あーこれもいいかも!」
末原「……」
姉帯「ん、末原さん?」
末原「いや、その様子だと、昨日は大丈夫だったんやなって思って、安心してたんや」
姉帯「うん、みんな励ましてくれてね、末原さんの言った通りだったよー。みんな心配してくれた」
末原「そうや、それが友達ってもんや。みんな姉帯の事心配してくれる良い人たちやな」
姉帯「うん、私幸せよー」
白望「いい人だね…」
塞「なんか、恥ずかしくなってきた」
エイスリン「ハズカシイ」
胡桃「洗脳か何かだ!私は騙されないよ!」
姉帯「でも、こんなに多いと迷っちゃうよー」
末原「姉帯に似合いそうな水着かー、大抵似合うと思うけど…」
姉帯「こういうのどうかな?」
末原「キャラ物プリント……、ちょっと合わないかも」
末原(ちょっとネコ型ロボットの妹はねぇ)
姉帯「じゃ、じゃあ、こ、これとかかな」
末原「黒か、たしかに姉帯には似合う思うけど、そうやな、これとかどうやろ。同じタイプの白い奴なんやけど」
姉帯「白? でも私に似合うかな」
末原「そのワンピースもそうやけど、清楚な路線も結構いけると思うねん。といっても私にそれほどセンスがあるとは思わへんけど。ぶっちゃけ、清楚路線は私の趣味や」
姉帯「末原さんの趣味……ちょ、ちょっと試着してくるよー」
白望「多分、豊音が選んだら黒になるよね…」
塞「さりげなく、私の趣味宣言してるし」
エイスリン「ニアッテマス!」
胡桃「子供向けはもう嫌!」
姉帯「ど、どうかな」
末原「うん、似合っとるで。やっぱり、モデル体形やからやな。胸のラインとか綺麗やし、雑誌とかの人みたいや」
姉帯「そ、そうかな///」
末原「そうやで、まぁ私にはそんな水着似合わんから、正直羨ましいってのもあるけど」
姉帯「羨ましいって……」
末原「…む、胸あまり無いんや。察してや」
姉帯「あっ……」
末原(下向いて少し拗ねてる末原さんかわいいよー)
胡桃「やっぱりいい人です!」
エイスリン「ケド、ソコソコアルヨ」
塞「シロ、これいいんじゃない」
白望「ずっとビキニしか渡してこないけど、なんで?」
末原「どうする? 水着買ってくんか?」
姉帯「今は下見に来ただけだから、午後にみんなと回る予定なんだよー」
末原「そか、みんなと見て回るのも楽しいもんやからな」
姉帯「うん!」
末原「しかし、海かぁ。インハイ終わったら久々に行ってみようかな。なんだか楽しそうに準備する姉帯見とったら羨ましくなってきたわ」
姉帯「なら、その水着を今選んじゃおうよ。私、末原さんに選んでもらったから、恩返しするよー」
末原「いやいや、予定やから実際ほんとに行くかもわからへんし」
姉帯「末原さん、これどうかな。私、とっても似合うと思うよー」
末原「可愛い柄やけど、私にはそんなん似合わへんよ。宝の持ち腐れになってまうわ」
姉帯「髪降ろしたら似合うと思うよー。末原さん、今でもとっても可愛いもん」
末原「か、からかうのはやめてや///」
姉帯「とりあえず試着してみてよー」
末原「うわわ、分かったから、分かったから、押さんといてや」
末原「ど、どや?」
姉帯「……」
末原「ちょ、無言はやめて―な」
姉帯「……いい」
末原「え、えっと」
姉帯「ちょーかわいいよー」
末原「そ、そか? 面と向かって言われるとなんだか照れてまうわ」
姉帯「これで海に行く予定ができても安心だね! でも、なんで髪は下さないのかな」
末原「い、今はええやろ、ほらほら、着替えるんやから向こう行っとき」
姉帯「髪下した末原さん見たかったよー」
白望「今さっきまで面と向かって言ってた側のはずなのにね…」
塞「自分で言うのと言われるのじゃ違うんでしょ」
末原「しかし、そうやなぁ。水着買うなんてここ数年しとらんかったし、これ買うわ」
姉帯「えっ、買うの?」
末原「久々にや。それに姉帯が可愛いって太鼓判くれたんちょっと嬉しかったから///」
姉帯「……」
末原「そういうわけやから、買ってきますわ。ちょっと待ってて」
姉帯「……うん、わかったよー」
姉帯「……」
姉帯「……////」
姉帯「……うー////」
姉帯(あの笑顔であの台詞は反則だよー)
エイスリン「コイデスネ!」
姉帯「わわわっ、エイスリンさん!どうしてここに」
塞「私もいるよ」
白望「よ……」
胡桃「いるよ」
姉帯「わわわわ、い、いつから!?」
エイスリン「……」(ホテルを大きな人影が出ていく絵を見せる)
塞「その大きな背を丸めて挙動不審にホテルを出ていったあたりからかな」
姉帯「それ、最初からだよ!」
白望「まぁ、昨日の時点で少し予想はついてたよ…」
胡桃「さすがに相手が姫松大将とは予想できなかったけどね」
姉帯「はわ、はわわわわ。これはね、違うよー。みんなと午後から見て回る予定だったし、霞さんに地図受け取ったから先に下見を――」
塞「下手な誤魔化ししないでいいよ。むしろ、あのトヨネが会って間もない人と出かけるってことに成長を感じたわ」
エイスリン「スゴイセイチョーデス」
白望「水着だけど、私たちも色々と見た…トヨネはあの水着でしょ…たぶん」
姉帯「え、えっと、その、末原さんに勧められたし、白もいいかなー、とかとか」
塞「なら、さっさと並んで買ってきなよ。私たちのために色々と我慢しなくてもいいんだからさ」
エイスリン「ガマンヨクナイ」
胡桃「そうだよ!」
姉帯「みんな、ありがとー」
塞「それで、これ私からの提案なんだけど……」
―街中―
末原「水着、買ってよかったんか、午後にみんなと回る予定やったんやろ」
姉帯「え、えーっとね。みんな午後から用事が出来ちゃったみたいで。ちょっと時間がバラバラだから、各自で買ってホテルで見せ合いしよってことになったんだー」
末原「そうか、私がなんか決めちゃったみたいでちょっと悪いことしたかな」
姉帯「ううん、私末原さんが選んでくれた水着、気に入ったから買ったんだよー」
末原「そか、そう言ってもらえると嬉しいわ。でも、そうなると、今日の午後、姉帯は暇になってもうた感じか」
姉帯「あっ……」
姉帯(すっかり忘れてた。末原さん、午後から用事あったんだった。そのことみんなに話忘れてたよー)
姉帯「仕方ないよー」
末原「うーん、そや、ちょっと待っててや」
姉帯「電話?」
洋榎『おー、きょうこ、どないしたん?』
末原「主将、代行います?」
洋榎『おー、ちょい待ち~』
赤阪『きょうこちゃん、どないしたの~?』
末原「すいません、いきなりなんですけど一人強化練習に連れて行ってもいいですか?」
赤阪『ん~、どちらさん?』
末原「宮守の大将の、姉帯豊音です。ちょっと色々ありまして、良かったら練習の場所に連れて行きたいんですけど」
赤阪『お~、一体どんなつながりがあるのかわからないけど~、不確定要素が増えると末原ちゃんのレベルアップも見込めるから、全然ええよ~』
末原「ありがとうございます」
赤阪『気にしないでえ~よ、それより遅れんように気を付けて~な。それじゃ、待っとるから~』
末原「というわけで、私の麻雀練習に付き合ってくれへんか?」
姉帯「唐突だ!」
末原「や、やっぱ休日なのに麻雀とか、嫌やったか?」
姉帯「ううん、麻雀に平日も休日も関係ないくらい好きだよー」
末原「そう言ってくれると嬉しいわ」
姉帯「うん、だからそのお誘い受けるよー」
末原「そか、ありがと! いろいろプロの人呼んでるらしいから、姉帯も退屈しないと思うで」
姉帯「プロがいるとか、ちょっとまってほしいよー」
末原「?」
姉帯「どこかで色紙買っていってもいいかな?」
末原「サイン、もらうの好きなんやな姉帯は」
姉帯「うん!」
―ホテル・麻雀ルーム―
姉帯「うわーすごいすごい!!プロって言うより凄い人がいっぱいよー!」
末原「ほんと、こんなに人集めてもらってありがとうございます」
赤阪「末原ちゃんの為や。ささ、はじめるよ~。姉帯豊音さんもいらっしゃ~い」
姉帯「おじゃまするよー」
末原「姉帯は、どないする?」
姉帯「私、後ろで見てるよー」
赤阪「いやいや、姉帯さんにも手伝ってもらうよ~。三試合目に、末原ちゃんの相手してほしいわ」
姉帯「え、こんなにいっぱい凄い人がいる中に入っていいんですか!」
赤阪「ええ、ええ。それに色々と楽しみがあるんやで」
姉帯「楽しみ?」
赤阪「そや、姉帯さんなら気にいるはずの楽しやよ~」
末原「アカン、振り込んでもうた。しかも倍満の直撃とか、読み甘すぎるやろ私…」
赤阪「あ~、倍満に振り込んじゃったのね~」
末原「はい」
姉帯「末原さん、次があるよー」
赤阪「そうや、そうや、次があるで。さてと、それじゃ……」
末原「?」
赤阪「ふふふ~ん、あったあった~」
末原「それなんです?」
赤阪「リボンだよ?」
末原「なんで後ろに回るんですか」
赤阪「は~い、リボンプレゼント~」
末原「ちょ、代行! なに付けてるんですか、やめて下さいよ!」
姉帯(リボン付けた末原さん、かわいいよー)
赤阪「あ、言い忘れとったけど。跳満以上の振り込みするたびに、いろいろ着てもらうつもりやから~。末原ちゃんファッションショーにならんように気いつけてな」
末原「な、なんですかそのふざけてるルール! 集まってくれたみなさんに失礼じゃ……」
凄い人たち「どうぞどうぞ」
赤阪「大丈夫や、呼んだ人たちそういうこと気にせん人たちやから」
末原「」
姉帯「赤阪さん、ちょっといいですか!」
末原「姉帯……」
末原(私のこと思って、何か言ってくれるんやな。代行が私の言うこと聞いてくれるはずなんてないから、姉帯が救世主に見えるで)
姉帯「末原さんに色々と服を着せたりとか、リボン付けたりとかそういうのすごくいいと思う!」
末原「へ?」
姉帯「この先どんなふうに変わってくのか、すごく興味あるよー!」
末原「えっと、姉帯さん?」
姉帯「つまり私、いっぱいがんばるよー!」
赤坂「やっぱり~、姉帯さんはわかってる人やったわぁ~」
末原「」
末原(あねたいいいいいいいぃぃぃぃ!)
末原(まさか、姉帯が敵に回るなんて思ってなかった。いや、そもそもこれは敵っていうんか?)
赤阪「そういうわけで、局続行~」
末原(ええんや、跳満以上の振り込みしなきゃええねん。考えて振り込まないようにすればええねん!)
凄い人A「ロン」
凄い人B「ロン」
戒能「Ron」
姉帯「ロンだよー」
末原「」
赤阪「メイド服まで着てもうたな末原ちゃ~ん」
末原(もういっそ殺してや……)
―ホテル・休憩室―
末原「……疲れた」
姉帯「お疲れだよ。着替えちゃったんだー」
末原「さすがに、あの恰好で過ごしたくないんや、察してや」
姉帯「ごめんよー。でもみんなすごかったねぇ」
末原「そうやな、やっぱり私はまだまだって思い知らされるわ」
姉帯「ううん、私なんかより末原さん上手だよ。私、最初だけ後追いで上がれたけど、そのあと全部阻止されたもん」
末原「姉帯だってうまくやってたやろ」
姉帯「うん、可愛い末原さん見たいから頑張ったよー」
末原「今言われてもうれしくないわー」
姉帯「でも、また末原さんと麻雀できてて楽しかったよー」
末原「私もや……」
末原「なぁ、姉帯」
姉帯「なにー?」
末原「もしもや、もしもプラスマイナスゼロなんていう点数調整するような麻雀を打たれたらどう思う?」
姉帯「……」
末原「私は全力で戦ってるのに、相手にはそれが全く伝わらない。私のやってきた麻雀を全部否定された気分になってまう。ここまでがんばってきたことを足蹴りにされてるみたいで、嫌な気分になるんや」
姉帯「……末原さんは、その人がプラスマイナスゼロをやったことが許せないんだよね」
末原「……仕方ないやろ」
姉帯「でももしかしたら、相手も打ちたくないのにそうなっちゃってるのかもしれないって考えてみたり、とか」
末原「……その発想はなかった。けど、そんなことありえるん?」
姉帯「あり得るかもしれないよー。緊張すると楽な打ち方になることってあるし、その人もそうなのかもしれない。昨日、末原さんに言われるまで、私みんなに嫌われちゃうかもしれないとか、そんなこと考えてた」
末原「そんなこと、あるわけないやろ」
姉帯「うん、そんなことなかった。でも、形は違うけど末原さんも思いこみって言う意味で考えたらまったく同じだよー」
ー
末原「あ……」
姉帯「私、末原さんに励ましてもらえたから、みんなの元にちゃんと戻れた。末原さんが話しかけてくれなかったら、私無理してみんなの前に戻っててたはずよー」
末原「…」
姉帯「だから、末原さんも違う視点で見てみたらどうかなーとか、思ったり……」
末原「なんや、昨日と全く間逆になってるわ、まだまだ頭が働いてないってことやったんやな」
末原(そうやな、一方的に見続けて、それで道が開けるわけないねん。違う視点で考えるのも一つの手やのに、プラスマイナスゼロで色々と視点が凝り固まってたんか)
末原「姉帯、ありがと。気が楽になったわ」
姉帯「力になれただけでうれしいよー」
末原「うーん、そう考えてみたらちょっと眠くなってきたわ」
姉帯「眠い?」
末原「ちょっと寝不足なんよ。昨日の夜も少し考え事してたから、その所為やと思うんやけど」
姉帯「休憩、あと30分くらいあるみたいよー」
末原「そか……なら、……そやな、少しだけ……」
姉帯「肩なら貸してあげるよー、なーんて……」
末原「スマンが借りるで……」
姉帯「……えっ」
末原「……スースー」
姉帯「……寝ちゃってるよー」
今日はここまでということで、おやすみなさい
少し再開します。
姉帯「今日一日、末原さん動きっぱなしだから仕方ないよー」
姉帯「末原さんは、すごいよー。昨日の今日でこんなに麻雀できて、いっぱい考えて、その合間で私との予定もこなしちゃう。私だったら絶対できないよー」
姉帯「昨日の試合、私が末原さんの立場であんな流れになったら、途中であきらめちゃうかもしれない」
姉帯「末原さんは私のこと強いって言ってくれるたけど、そうは思えないよー」
姉帯「私なんかより、末原さんはもっともっと強い人だよ」
姉帯「私、こうやってあったばかりの人と一緒に出かけるとか、そんなことしたの初めてで、末原さんのと一緒にいたいって思って昨日誘ったんだ」
姉帯「水着を選ぶのは昨日決まったことで、本当はね、ただただ話がしたいなーって思っただけなんだ」
姉帯「話をしてね。末原さんと一緒に過ごしてみたいって、それでね。あのね……」
姉帯「私のこと色々知ってもらいたいって思ったよー」
姉帯「えへへ、恥ずかしいよー。末原さん寝てるのに、こんなこと言うの」
末原「大丈夫や……」
姉帯「へっ!?」
末原「……スースー」
姉帯「寝言? えへへ、寝ている時は気にしてくれるてうれしいよー」
姉帯「さっき質問してくれてうれしかったよー。ずっと、私のことで色々してくれたから、頼ってもらえて凄く安心できた」
姉帯「私、みんなに心配ばっかり掛けてるから、誰かに頼りにされることなんてあまりなかったよー。生まれた場所もね、若い子がいないから、みんなから腫物を扱うように心配されたりしててね、誰かに何かを頼まれるとか、全然なかった」
姉帯「だから、こうして末原さんにアドバイスできて、とってもうれしかったよー」
姉帯「だから、なにか悩みがあったらいつでも頼ってほしいよー」
姉帯「遠慮なんていらないよー。私ができるいっぱいいっぱいで末原さんのこと支えるよー」
姉帯「だって……」
姉帯「……末原さんの力になりたいから」
―ホテル・麻雀ルーム―
末原「ツモ」
末原「ロン」
姉帯「すごいすごーい!!」
赤阪「前半と見違えるくらいになったわ~」
末原「そうですか?」
赤阪「うんうん、やっと横から見るようになったみたいな、そんな感じになっとるよ~。前半のままじゃ、ずっとファッションショーのままやったから」
末原「横から見るですか?」
赤阪「そうや、プラスマイナスゼロの件、どうにかできたんやろ~?」
末原「……たしかにそうですね。間違いないです」
姉帯「!!!」
姉帯(末原さんがこっち見てるよー)
末原「姉帯のおかげや、ありがとう」
姉帯「うう、ありがとー///」
末原「ささ、どんどんやりましょう。もう時間あまりないですから!」
赤阪「そうやな、それじゃ次の局始めるよ~」
末原(姉帯のアドバイスためになったわ。ほんまいろいろと凝り固まり過ぎとったんやろな、こんなに透き通って色々考えられるんのは楽しいわ」
末原(でも、姉帯に頼ってばっかりはよくないわ。姉帯にも迷惑になってまうやろうし)
末原(姉帯にだっていろいろある。それに敗退したばかりなのに、これ以上頼るのは間違っとる)
末原(姉帯は優しい人や、絶対いいよって首を縦に振るはずや。姉帯のやさしさに漬け込んで、頼り続けることなんて私にはできない)
末原「ロン」
末原(だから明日の準決勝、必ず勝たなあかん。姉帯のアドバイスを無駄になんてできへんから)
姉帯「また上がったよー!」
末原「まだまだ、これからや!」
―宮守宿泊先前―
末原「今日はありがとう。色々助かったわ」
姉帯「ううん、楽しかったよー。それに末原さんの可愛い姿もいっぱい見れたし、かっこいい姿もいっぱい見れてバンバンザイだよー」
末原「その可愛い姿は忘れてくれへんかな、泣きたくなってまうわ」
姉帯「忘れないよー。じゃじゃーん」
末原「携帯……」
姉帯「見て見て、待ち受けメイド末原さんにしたんだー」
末原「やめーや!」
姉帯「可愛いからやめないよー」
末原「海はいつ行くんや?」
姉帯「うん、予定だと明日飛行機に乗るんだー」
末原「飛行機? 近くやないんか?」
姉帯「うん、そうなんだー」
末原「そっか、なんだかえらい遠い場所に行くんやな」
姉帯「……という予定なんだけどー」
末原「?」
姉帯「私、東京に残ろうかなー、とかとか」
末原「え、なんでや? 水着買ったのに、どうしたんや」
姉帯「あ、あのね。私末原ちゃんの試合見たい。会場でね、大きなスクリーンの下で見たいんだ」
末原「他のみんなはどうするんや?」
姉帯「みんなは海に行くよー。私はお留守番、大丈夫よー。一人で会場にも行けるしホテルにだって戻れるよー」
末原「あかん、それはあかんで姉帯」
姉帯「……な、なんでよー?」
末原「姉帯には姉帯のしたいことあるんやろ。今日水着選んだのだって海に行くためやろ?」
姉帯「あ、あのね、水着選びは……」
末原「私、姉帯に水着選んでもらえてうれしかったわ。嬉しいけど、私のために姉帯が無理に残る必要なんてないんや」
姉帯「む、無理になんてそんな……」
末原「大丈夫や、私は大丈夫。姉帯に色々教えてもらったんや、だからもう大丈夫や。今日、色々アドバイスしてくれてありがとな」
姉帯「……うん」
姉帯「末原さんの力になれて、私うれしかったよー」
すいませんが、今日はここまでおねがいします。
それじゃ、再開します。
姉帯(そうだよね……、私が末原さんに頼りにされ続けるなんてことあるわけないよね。昨日話をしたばかりなのに、こんなにたくさん過ごせたから、勘違いしちゃったよ)
姉帯「明日、準決勝なんだから、早く寝ないといけないよー」
姉帯(ほんと、私馬鹿だよ。本当、本当に……)
姉帯「私も明日の準備あるから、もう戻るよー」
末原「あ、姉帯?」
姉帯「それじゃ!」
末原「あっ……」
末原「なんで、泣きそうな顔してるんや……」
翌日―会場・姫松控え室―
末原「……」
赤阪「おかしいわ~」
洋榎「どないしたん?」
赤阪「昨日の強化練習で、末原ちゃんレベルアップできたはずや~って思ってたのに、なんかそんな感じがせえへんのや」
末原「代行、どうかしましたか?」
赤阪「末原ちゃん、大丈夫~って思ったんや。昨日に比べてなんか元気なさそうやから」
末原「そんなことないですよ。まぁ、少し寝不足ではありますけど」
洋榎「それは大丈夫言わんて、しゃーない、ちょっとリポDとか買ってくるわ」
末原「別に大丈夫、ってもういないわ」
赤阪「……」
末原「……」
赤阪「姉帯さんと何かあったんか~?」
末原「な、なんでそう思うんですか?」
赤阪「ん~、別にそう思っただけよ。昨日の練習の後半から、調子良かったんも多分姉帯さんのおかげなんやろ?」
末原「……もう時間ですから、私はもう行きますね。大丈夫です、まだ二着ですから、決勝までのバトン繋いでみせます」
赤阪「末原ちゃん、あんな……」
末原「ほな、行ってきますわ…」
『さて、後半戦南三局、終盤戦の様相を呈してきましたね』
『接戦…!!!』
『現在の点数ですが、有珠山の連続ツモ及び各種直撃により、ほぼ並んだ数字となっています。現在トップの清澄に対し、二着以下は5000点とわずかばかりの差、全ての高校に決勝進出、敗退の可能性がひしめいています」
『姫松危うい…』
末原(清澄のエース、今回の討ち方は全然ちゃうな)
末原(姉帯の言葉信じたら、まったく違って見える)
末原(姉帯、なんで、あんなに悲しい顔するんや。私はあんたのことを思って言っただけなんや。あんな顔されて私どうすればいいんや)
咲「……! ロンです!」
末原「えっ……」
『姫松、清澄への振り込みです。ここまで堅実な攻めと守備で二着を抑えてきましたが、ここで一気に四着へと転落します』
『気の緩み…!』
『次局、オーラスで全てが決まります』
末原(な、何しとるんや私。ここで集中しないでどうするんや、姉帯のアドバイス受けておいて、こんなざま許されないやろ!)
末原(準決勝、負けられへん。みんなの期待が掛ってるんや、善野監督も見とる。なにより、姉帯が役に立ててるって証明するためにも負けられないんや)
末原(……でも、なんかしんどいって、思うのは何でなんや……)
―鹿児島・ホテル―
姉帯「……」
塞「ねぇ、トヨネ。ここまで来てなんだけど、本当によかったの?」
姉帯「……」
白望「……」
塞「う、うん。トヨネ先に夕食行ってるわね」
姉帯「……うん」
姉帯「……準決勝、どうだったのかな」
末原【嬉しいけど、私のために姉帯が無理に残る必要なんてないんや】
姉帯「無理に残るわけないよ。私、私は末原さんの力になりたいって思ったから残りたかっただけ、それだけだよ」
姉帯「……『トップは清澄、大将の宮永咲選手、後半戦の南三局で姫松の末原恭子選手からアガリを取り、そのまま逃げ切り。決勝への切符を得た』。末原さん……」
姉帯「どうか、どうか、二着に……」
姉帯「…『点数が横並びとなった大将戦、オーラス終了時に二着の座にいたのは臨海女子、大将であるネリー・ヴィルサラーゼの高得点が活きた形となった模様』」
姉帯「……負けちゃったの? 私が、私が変なアドバイスしたせいなの?」
エイスリン「トヨネ!ソレチガウヨ!」
姉帯「え、エイスリンさん」
エイスリン「チガウ、アンシンスル!」
姉帯「だ、だって、私が私がアドバイスしたから、それで末原さんが変な打ち方しちゃっただけに決まってるよ。私、何の力にもなれてなか――」
エイスリン「ツヅキ!」
姉帯「ふぇ?」
エイスリン「ツヅキヨム!ハナシハソレカラ!」
姉帯「……『ただ二着が一つとは限らないとはこのことで、同点二着に姫松がその名を連ねました。末原恭子選手の冷っとする清澄への振り込みがありましたが、南四局において有珠山への直撃を成し遂げ二着へと浮上しました』」
エイスリン「サキモヨム」
姉帯「……『前代未聞のこの状況により、特殊ルールとして同着同士の一騎打ち、二人麻雀が行われ、結果末原恭子選手がネリー・ヴィルサラーゼ選手から直取り、決勝への切符を掴んだ』」
エイスリン「ネ?」
姉帯「……よかったぁ、よかったよぉ…グスッ」
―会場・姫松控え室―
赤阪「0点や。流石にこれは点数付けるんことできへんよ」
洋榎「代行、それは言いすぎちゃいます?」
絹恵「そうですよ」
赤阪「黙っといて!」
二人「は、はい」
末原「代行……」
赤阪「運が良かっただけ、たまたま末原ちゃんに風があっただけ、風がなかったらもう終わっとった」
末原「……はい」
赤阪「明日は決勝、今日は帰って休み」
末原「はい、わかりました……」
末原「……」
末原(助けられただけや、本当にその通りや。この勝ちも、宮永のプラスマイナスゼロへの見方の切り替えも、全部姉帯に教えられて助けられただけや)
末原(私は自分ひとりじゃ進むことすらできへん。弱い人間や……)
末原(誰かに支えてもらわな、進める気がせえへん)
末原「姉帯、ホントは支えてほしいんよ……でも、私は面と向って言えないわ。そういうの苦手なんや…」
赤阪「……末原ちゃんは、ホント仕方ないね~」
―鹿児島・浜辺―
姉帯「……末原さん、大丈夫かな」
姉帯「海に来たけど、入る気にもならないし」
姉帯「末原さんの力になりたいって思ったのに、こんな場所で私何してるのかわからないよ」
姉帯(でも、末原さんはもう大丈夫って言ってた。その言葉を信じてあげることが、末原さんのためだよね)
白望「トヨネ、泳がないの…」
姉帯「シロ、ごめんよー」
白望「そう……、トヨネはどうしたいの…」
姉帯「どうしたいって」
白望「トヨネはさ、このまま砂浜に腰をおろしたままでいいの?」
姉帯「だって、今から戻っても決勝になんて間に合わないよ。末原さんは大丈夫って言ってたから、それを信じないと末原さんに悪いよ」
白望「はぁ、……だるぃなぁ」
白望「トヨネはもっと欲張りになるべきだよ…」
姉帯「シロ?」
白望「トヨネ、みんなトヨネのことで心配してる。トヨネ、泣き虫だから…」
姉帯「な、泣き虫じゃないもん!」
白望「そう、昨日ボロボロ泣いてたって聞いたけど…」
姉帯「それは、その」
白望「まぁ、声に出して独り言してる時点で、お察しだけど…」
姉帯「あっ///」
白望「私からはこれくらいしか言えないから、あとはトヨネ次第ってことで…」
姉帯「あの、シロ!」
白望「ん?」
姉帯「あ、ありがとー!」
白望「……」
姉帯(少し、欲張ってもいいよね……ならまずは電話するよー)
姉帯「……?」
姉帯「……!」
姉帯「……末原さんの連絡先聞いてなかったよ」
姉帯(困ったよー)
姉帯「わっ! 携帯鳴ってるよー。……見たことない番号だよー」
姉帯(誰だろ。とりあえず出てみるよー)
姉帯「もしもし、豊音だよ」
―会場・廊下―
末原(アカン、気持ちが弱い方ばっかに流れおる。前半戦で四着に一気に落ちるなんて、みんなに顔向けできへん)
末原「他はみんな控室に帰っとるのに、私だけ一人廊下待機とか、かっこ悪いわ」
末原(はぁ、はっきりさせとかな気が済まへんはずなのに、そういうことに手が回らへん。振込んでまう度に心が折れそうになってまう。こんな麻雀、姉帯に見せられへんよ)
末原(ごめんな姉帯、アドバイスをこれ以上活かせそうにないわ。もう少ししたら心折れてまうかもしれへん)
赤阪「そうやって、一人で傷ついた戦士さんゴッコは止めてほし~んやけど」
末原「……代行、私」
赤阪「それ以上言ったらあかんよ。ここまで戦ってきたみんなに失礼や~って普通わかるやろ」
末原「でも……」
赤阪「はいはい、もう末原ちゃんは一人でどうにかしようとしすぎるんのは悪い癖や~、その癖を直す秘密兵器、受け取って~な!」
末原「わ、わわわわ、電話? 代行これは……あれ?」
末原「通話中になってる? しゃーない、もしもし」
姉帯『あ、あの……末原さんだよね』
末原「あ、姉帯……」
姉帯『末原さん、試合は……』
末原「すまんな、姉帯」
姉帯『な、なんで謝るの?』
末原「私、姉帯にもらったアドバイス、活かせない麻雀しかできへんかった」
姉帯『……』
末原「アホよな。姉帯に大丈夫って言っておきながら、このザマやから、もう目も当てられへんよ」
姉帯『……』
末原「だから、ごめ――」
姉帯『私、末原さんの力になりたいって思ってる』
末原「え……」
姉帯『二日前の夜にね。私が言ったこと本当にやりたいことだったんだよー。末原さんが悩みを抱えてるなら聞いてあげたいし、それを支えてあげたい。私、末原さんの力になりたいよ』
末原「そう…なんか?」
姉帯『うん、私が末原さんの試合を間近で見たいって言ったのは本心から、みんなとの海より優先しようとしたのも本心だよ』
末原「……」
姉帯『だから、今悩んでることがあったり、気にしてることがあるなら言ってほしいよ。私、力になりたい』
末原「姉帯」
姉帯『なにかな?』
末原「姉帯はあの日、私から言われたことに傷ついたんか?」
姉帯『……傷ついたよ』
末原「姉帯のあの時の顔が頭過るんや。悲しませちゃったって、そう考えると頭がごちゃごちゃになるんや」
姉帯『うん』
末原「姉帯を悲しませたのに、姉帯のアドバイスを使ってる自分が嫌になるんや。良いとこだけ奪ってるだけに思えて、嫌いになりそうになる」
姉帯『うん』
末原「でも、でもな。こんなこと言ったらあかんかもしれへんけど、私な姉帯に支えてもらいたいって思っとるんや。今更なにを言ってるんやってわかっとるけど、もう辛いんや。今のままやと押し潰されそうなんや」
姉帯『いいよ、私、支えるよ末原さんのこと』
末原「……」
姉帯『最初に言ったよ。私末原さんの力になりたいって、支えになりたいって、だから寄りかかってくれていいんだよー。私、背は大きいから寄りかかっても全然大丈夫!』
末原「いいんか?」
姉帯『うん、末原さんがね。あの練習の時みたいに戦えるようになるのなら、支えになるくらいちょちょいのちょいだよー」
末原「姉帯……」
姉帯『なに、末原さん』
末原「私の重荷、全部吐き出してもうたから、持っておいてほしいんや」
姉帯『もう、今さっき渡されてるよー』
末原「ちゃんと取りに行くから、それまでちょっと支えといてや」
姉帯『うん、待ってるよー』
末原「ありがと……」
末原「はぁ、もう面と向かって言えへんからって電話でいうとか、私ヘタレやなー」
赤阪「っていうわけやけど、これでもまだ何かあるかな~って」
末原「いや、これ以上何か言うことなんてありませんよ。すいません手間を取らせて」
赤阪「ええよええよ、それより頑張れそう?」
末原「うん、がんばれる。終わりまで頭回す麻雀、かましたるわ!」
末原(ほんと、ありがと、姉帯」
―全国大会終了一週間後―
末原「よかったんか? 他のみんな呼ばんくて」
姉帯「今日は末原さんと二人っきりになりたかったんだ。それとも私と二人は……」
末原「そうなんで悲観的になるんや!」
姉帯「えへへ、冗談よー」
末原「まったく、しかし海に来るとは思ってなかったわ……」
姉帯「風が気持ち―」
末原「姉帯、ごめんな。優勝できへんかった」
姉帯「……」
末原「私にできる麻雀、全部やったんやけど届かへんかった」
姉帯「末原さんは、全力で麻雀したよー」
末原「で、でも」
姉帯「末原さん、最後はちゃんと全力で麻雀できたんよー。それはあの試合の映像見てれば誰にだってわかることだもん、もしもその事で末原さんのこと悪く言う人がいたら私が怒っちゃうよー」
末原「……ほんと、初めて話した時と全く間逆やな」
姉帯「そうだねー」
末原「姉帯にだけやで、こんなに弱気なこと言うんわ」
姉帯「末原さんのこと、支えないといけないからねー」
末原「そうやな、預けてた重荷返してもらわなあかんな」
姉帯「そうだったよ。はい、これだよー」
末原「ここにあるってことでええんやな?」
姉帯「うん、これで返したよー」
末原「確かに返してもらったわ」
姉帯「うん!」
末原「……」
姉帯「……」
末原「姉帯」
姉帯「なにー?」
末原「今更なんやけどさ……」
姉帯「うん」
末原「名前で呼んでええかな。嫌やったら別にええんやけど」
姉帯「うん、なら私も名前で呼んでいい、かな?」
末原「もちろんやで」
姉帯「うん、じゃあ、恭子ちゃん」
末原「豊音」
姉帯「なんか……」
末原「思ったより、恥ずかしくないもんやな」
姉帯「なんか、ちょっと違う感じするよー」
末原「ところで豊音、これなんやけど」
姉帯「なに恭子ちゃん」
末原「髪、下してみたんや……どうやろ?」
姉帯「ちょーかわいいよー!」
カン!
これにて終わります。
短い話にお付き合いいただきありがとうございました。
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