桐生つかさ「アンタ、秘書になる?」 (21)


P「いや、いきなりはちょっと」

つかさ「とか言って実は喜んでる系? 見た目拒否るけど裏ではガッツポなカンジ?」

P「でも俺プロデューサーだし」

つかさ「これでもアイドル兼社長よ? コネは必要じゃね?」

P「うちには巫女とか魔王とかサンタとかいるんで……」

つかさ「……前々から思ってたけど、アンタ何もんよ?」

P「プロデューサーですけど」

つかさ「へー、しらばっくれる気? そうやって隠すワケ、アイドルにね。あぁそう」

P「拗ねるなよ、つかさ」

つかさ「拗ねてないし!」


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つかさ「あーもー、契約取れないのとか社長の名折れだし!」

P「わかったよ。代わりの秘書、紹介するから」

つかさ「ふーん。役に立たないと承知しないよ?」

P「多分いけるだろ。何人か候補出すから」

つかさ「へー。お手並み拝見じゃん?」

P「じゃあ一人目な」


P「おしとやかで純情派、だけど行動力は一人前でリボンがトレードマークのキュート系」

つかさ「お、いいね」

P「佐久間まゆちゃんです。どうぞ」

まゆ「よろしくお願いします……」

つかさ「ん。アタシ、桐生つかさね。秘書になれるかどうか、試させてもらうよ」

P「つかさは現役の社長でな。秘書が欲しいそうだ」

まゆ「へぇ……あの、私が不合格だったらどうなるんですか?」

つかさ「まあ、コイツが秘書な」

P「ならないから」

まゆ「……ふぅん」


まゆ「秘書ってアレですよね。社長さんのお世話とかするんですよねぇ?」

つかさ「そうそう、肩揉みとかしてもらうわけ」

P「それ秘書の仕事じゃないんじゃ」

つかさ「いいのいいの、秘書の全ては社長のものでしょうが」

まゆ「!!? それ、ほんとうですか!?」

P「違う違う。ほらまゆは純粋なんだから、信じちゃうだろ」

つかさ「あながち間違ってないっしょ? 上に立つ者が導くのは義務、つか使命ね」

まゆ「でもアイドルはPさんのものなのに、まだおてて繋ぐだけしかしてもらってないのにこんな……」

P「待て、まゆ」

まゆ「ねえつかささん、まゆも社長になればPさんを思い通りに出来るんですか?」

つかさ「まあ、多分いけるっしょ」

まゆ「Pさん私起業しようと思うんです、けどこれは決して別れとかじゃなくて、むしろ新しい私達の関係の始まりなんですよぉ」

つかさ「自分の足で歩くほうがカッコいいとは言ったけど、仁王立ちは予想外だわー」

P「落ち着こうまゆ、俺は秘書にはならんから」


P「で、話を戻すけど。まゆは読モやってたから、流行やファッションには強いぞ」

つかさ「ほうほう」

P「まゆをそばに置けば、業務が捗ると思う」

まゆ「リボンの結び方には自信があるんですけど。試してもいいですかぁ?」

つかさ「なんか目が据わってる系なんだけど」

まゆ「大丈夫ですよぉ。簡単には解けませんし解かせませんから」

つかさ「あれ、自由に見放されるとかちょっと今時じゃなくない?」

P「どうどうまゆ、まだ質疑応答あるから」


つかさ「じゃあ質問に答えてもらうとして……んーと、座右の銘ある?」

まゆ「やるもやらないもなく、やったことは全て善……です」

つかさ「行動力……丸。プロデューサーに叱られた、どうする?」

まゆ「え? 愛のご褒美じゃないんですか?」

つかさ「我慢強さ……丸。鳴かぬなら……どうする?」

まゆ「鳴かぬなら 死ぬまで隣に ホトトギス?」

つかさ「一途さ……丸。よし、とりあえず合格!」

まゆ「ありがとうございます……うふふ」

つかさ「ひとまずまゆは合格ね。でも他の子も見てみたいわ」

まゆ「わかりましたぁ」

P「じゃあ、二人目な」


P「悠久に揺蕩いし神の落とし子……堕天せし偉大なる魔王!」

つかさ「……は?」

P「神崎蘭子ちゃん!」

蘭子「ファーハッハッハ! 時は満ちた! (お待たせしました!)」

つかさ「お、おう……」

P「蘭子は闇の魔王でな、ポテンシャルは凄いと思う」

つかさ「思うだけか?」

P「思うだけだ」

蘭子「禁忌なる囁き…… (何こそこそ話してるんですか?)」

つかさ「あ、ああ。何でもないわ、うん」

蘭子「我が魔力の前に、恐れるものなどない! (秘書でもなんでも、お仕事頑張ります!)」

つかさ「魔力は凄いな、確かに」

P「わかるか?」

つかさ「なんかわかる」


つかさ「しかし……意思疎通が難しそうだな」

P「グローバル化に対応できると考えよう」

つかさ「いや、世界レベルで考えてもキツくね? これは」

蘭子「空蝉よ…… (世界レベルの話ですか?)」

つかさ「いや、蘭子にはあくまで秘書業してもらうから。心配いらないから」

蘭子「そうか……留まりし希望の光 (海外にいけるかと思ったのに……ちょっぴり残念です……)」

つかさ「悪いね。旅行とかには行くからさぁ」

蘭子「神の啓示よ! (ほんとですか!? やったー!)」

P「通じてね?」


P「これだけ話せるなら、質疑応答もできるだろ」

つかさ「あー、やってみるか。座右の銘はある?」

蘭子「満ちたりし安らぎの魂よ! (よく食べてよく寝ることです!)」

つかさ「健康度……丸。地球最後の日にどうする?」

蘭子「ククク。我が友と我の前に、不可能などないわ! (プロデューサーさんと一緒なら何があっても大丈夫です!)」

つかさ「ヒロイン力……丸。最後に、鳴かぬなら……どうする?」

蘭子「応えねば 闇に飲まれよ 不如帰 (鳴かないの? お疲れモードだ ホトトギス!)」

つかさ「気配り……丸。よし、合格かな」

蘭子「成し遂げたり! (わーい!)」

P「よかったな、蘭子」

蘭子「ふはは! 我が友の力添えあってこそよ! (プロデューサーさんのおかげです♪)」

つかさ「でももう一人くらい見せてもらうけど、構わないわよね?」

蘭子「よかろう! (いいよー♪)」

P「なら三人目だぞ」


P「常に夢見る乙女、運命の王子様を信じて自らの道を往く」

つかさ「ほほう」

P「……喜多日菜子ちゃんです」

日菜子「むふふ……おねがいします~」

つかさ「へえ、まともそうじゃん。アタシ、桐生つかさ。よろしくやってよ」

日菜子「日菜子です~。つかさちゃんですねぇ。社長さんだって聞いてます~」

つかさ「まあね。アイドル兼社長ってことになんの。マジ多忙って話」

日菜子「社長と秘書……つまり……むふふふ♪」

つかさ「……なんか妄想し始めたぞ。お前どうにかしろよ」

P「こうなると止められん。少し待ってくれ」

つかさ「おう……」


日菜子「むふむふぅ……♪ Pさんが日菜子を攫って……ああっ♪」

つかさ「なんか壮大なストーリーが展開してね?」

P「いつものことだから心配するな」

つかさ「……何で秘書に推してきたし」

P「これを除けば可愛いからな」

つかさ「まあ、そうだけど……それだけじゃなぁ」

日菜子「可愛いだなんて……むふふふ♪」

P「夢があるだろ?」

つかさ「夢しかないんじゃ……」

P「アメリカンドリームってヤツだ」

つかさ「ダメ予感ドリームの間違いだろ……」


日菜子「むふふ……はっ。日菜子、また妄想してました~?」

つかさ「……ああ。楽しそうだったけどさ。質問していい?」

日菜子「はい。もちろんいいですよ~」

つかさ「まずは、座右の銘を教えてよ」

日菜子「しない妄想よりする妄想~?」

つかさ「将来性……丸。愛と友情どっち取る?」

日菜子「愛する王子様と、同じ人を愛してしまった親友……ああ、日菜子はどっちの味方……むふふ♪」

つかさ「妄想力……丸。じゃあ、鳴かぬなら?」

日菜子「鳴かぬなら? むふむふむふふ♪ ホトトギス♪」

つかさ「むふふ力……丸。合格でいいや、もう」

P「そんな投げやりな……」

つかさ「妄想はともかくさ、可愛いのは事実なんだわ」

日菜子「むふふ。日菜子を褒めても妄想しか出来ませんよ?」

つかさ「むしろどんな妄想してるのか聞きたくなってくるんだけど。なんかバズい香りする」

P「いかん、つかさが半分足突っ込んだ……」


P「で、どうだった? 秘書にしたい子はいたか?」

つかさ「なんだかんだ言ったけどさ」

P「ああ」

つかさ「やっぱお前が一番いいわ」

P「それはまた、何でだ?」

つかさ「いや、普通に考えて、プロデューサーのお前がアタシの面倒見るべきじゃねぇ?」

P「そんな身も蓋もない……」

つかさ「大体どいつもこいつもキャラ濃過ぎんだよ、この事務所。チーズカツカレーかよ」

P「チーズカツカレー美味しいじゃん……カツの風味とカレーの辛さに、ふわふわのチーズがさ……」

つかさ「やめろよ、お腹空いてきた……」

P「これからでも食べに行くか?」

つかさ「それはいいけどさ」

P「ん?」


つかさ「お前の仕事はプロデュースじゃん?」

P「ああ」

つかさ「まずさ、24時間アタシのコト考えてる?」

P「いいや」

つかさ「あ、そう……」

P「24時間なんて短すぎるからな。これから先、1年だろうと何年だろうと、つかさのコト考えてるだろうな」

つかさ「あっ……そ、そう……?」

P「そうだ」

つかさ「……いやー、ちっとナメてたかも。うん」

P「照れるなよ」

つかさ「テレてねぇけどさ、コレはさぁ……」

P「デカイ口たたいちゃったかな」

つかさ「いいんだよ、秘書ならそれぐらい普通だし」

P「もう決定事項なのか」

つかさ「まぁね」


P「他の子じゃなくてもいいのか?」

つかさ「やっぱ大事なのはさ。誰とやるかだよ。アタシ選んだお前まず、正解」

P「そりゃよかった」

つかさ「にしても、こんな毎日過ごさなきゃならんわけかー」

P「社長かアイドル辞めるか?」

つかさ「辞めねぇけど、アタシでもまだ戸惑いがあんの。あー、自分まだまだだな」

P「まあ、初めての体験だし。戸惑って当然だと思うぞ」

つかさ「やっぱ、いきなりアイドルはちっとキツかったかな。でも人間死ぬ気になれば不可能とかないんで」

P「それは分かる気がする」

つかさ「お前も死ぬ気でプロデュースして。OK?」

P「死ぬ気でプロデュースだな。よろしくな、社長兼アイドルさん」

つかさ「ん。よろしく、秘書兼プロデューサーさん」

おしまい

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