【ごちうさ】シャロ「幼馴染最後の日」 (23)

ココア「あれ、シャロちゃんだ。今日はケーキ屋さんでバイトなの?」

千夜「シャロちゃん、こんなところでもバイトしてたのね」

シャロ「げぇ……なんであんたたち、こんなところまで来るのよ」

シャロ「……まあ、せっかく来たんだし、何か食べていくといいわ。うちは店内で食べられるから」

ココア「じゃあ、苺のショートケーキ食べようかな。千夜ちゃんは?」

千夜「私はモンブランね。あと二人分、ダージリンティーくださいな」

シャロ「はいはい。じゃ、ちょっと席に着いて待っててね」

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千夜「シャロちゃんは昔、ケーキ屋さんになりたがっていてね~」

シャロ「お待たせしまし――何話してんのよ」

千夜「それも、ケーキ屋さんになればケーキがいくらでも食べられるからだって言って」

シャロ「小さい頃はみんなそんなもんでしょ!!」

千夜「あら、シャロちゃんいたの? 気づかなかったわ」

シャロ「絶対わざとよね……?」

ココア「シャロちゃん、お店のケーキは食べちゃダメだよ?」

シャロ「食べないわよ! そんなに食い意地張ってないわ!」

千夜「うふふふ」

シャロ「むぅ……」

シャロ「今日も疲れた……くたくたよ」

シャロ「千夜が変な話するから、生暖かい目で見られたし」

シャロ「いっそ、千夜のいないところで、バイトもせずにのんびり暮らせたらいいのに、なんて」

シャロ「……あれ、携帯に着信があるわね。誰かしら」

シャロ「……えっ」


千夜(シャロちゃん……そんな、私……)



千夜「……シャロちゃ~ん、お風呂沸いたわよ。ついでに晩御飯も家で食べてく?」

シャロ「あぁ……うん。そうするわ……」フラー

千夜「シャロちゃん? どうしたの、なんだかぼんやりしてるみたいだけど」

シャロ「ん……なんでも、ないわよ。気にしすぎ」

千夜「そう? ……なら、良いのだけど」

バシャバシャ

シャロ「…………」

シャロ「……外国、かぁ」

千夜「シャロちゃん、私も入って良いかしら?」

シャロ「え、えぇ。良いわよ」

千夜「じゃあ、お邪魔しまーす」


シャロ「……」バシャバシャ

千夜「……ねえ、シャロちゃん。やっぱり何か隠してるわよね?」

シャロ「別に……」

千夜「私の目は誤魔化せないわよ。シャロちゃん、さっきからなんとなく落ち着いてないし、ぼーっとしてるもの」

シャロ「…………」

シャロ「……両親が、来月から海外で働いて、余裕もできるだろうから、一緒に住まないかって」

千夜「……それって」

シャロ「ここを引っ越して、向こうに住むってことね。少なくとも何年かは帰って来れなくなるみたい」

シャロ「来週までに、引っ越すか、ここに残るか決めて欲しいって」

千夜「そう……」

千夜「……良かったじゃない」

シャロ「へ?」

千夜「もう、バイト漬けにならなくて済むんでしょう? 外国での暮らしも、きっと楽しいし、貴重な経験になるわ」

シャロ「……そう、かな」

千夜「向こうで暮らし始めたら、時々お手紙頂戴ね」

シャロ「ん……」

シャロ家

シャロ「……海外に住むなんて、想像したこともない」

シャロ「確かに、もうバイトとかしないで済むし、貴重な経験になるんだろうなぁ」

シャロ「もう千夜に弄られることもないし、最高じゃない」

シャロ「でも、みんなもいるし、私は……」

シャロ「…………」

シャロ「……千夜は、私がいなくなっても寂しくないのかな……?」ギュッ



千夜「…………」

千夜「シャロちゃんにとって、きっとそっちのほうが幸せなはずよね……?」

チュンチュン

シャロ「……ん、考え事しながら寝ちゃってたわ……」

千夜「シャロちゃーん、起きてー。遅刻しちゃうわよー」

シャロ「起きてるわよー、もう」ガチャッ

千夜「朝ごはんもうちで食べてく?」

シャロ「うん……ねえ千夜」

千夜「?」

シャロ「千夜は、私がいなくなっても、寂しくない?」

千夜「……ええ、私なら大丈夫よ。シャロちゃんのしたいようにして欲しいわ」

シャロ「そう……着替えてきちゃうから、ちょっと待ってて」

千夜「わかったわ」


シャロ(……幼馴染って言っても、私たち、そんなもんなのかな……)


千夜「……」ギュッ

放課後・ラビットハウス


リゼ「それで、シャロ。話ってなんだ」

ココア「シャロちゃん、なんかちょっと辛そうだよ。私で良ければ力になるよ」

シャロ「うん、ありがと。……実はね――」


(カクカクシカジカ)


シャロ「というわけで、返事次第で私、引っ越すのよ」

ココア「」ブワッ

リゼ「うわぁ!」

チノ「ココアさん!?」

ココア「シャロちゃん行っちゃやだぁー!」ムギュッ

シャロ「ちょっ、ココア!」

チノ「ココアさん、子供じゃ無いんですから、そこはシャロさんの判断に任せましょう」ズルズル

ココア「うぅ……」シクシク

リゼ「そうだぞ。まあ……いなくなったら寂しいと思うのは、みんな一緒だとは思うけどな」

シャロ「どうしようか、ちょっと悩んでるんです」

シャロ「バイトは確かに大変だけど、やりがいもあるし。ここにはみんなもいるし」

シャロ「両親と暮らしたいなって少しは思いますけど、海外っていうことへの不安も大きくて」

シャロ「このまま暮らせるなら、このままで良いかなあとも思ってます」

リゼ「そういえば、千夜は何て言ってるんだ? 隣だし、もう話したんだろ?」

シャロ「……」

シャロ「……いいって」

チコリ隊「?」

シャロ「別に、好きにすればいいって。そう、言われました……」

チノ「シャロさん、なんだか悲しそうです」

シャロ「べ、別に悲しくなんてないわ。……あいつのために、私がそんな風に思うわけないじゃない」

リゼ「シャロ。本当は、海外に行くか留まるか、もう自分の中で決まってるんじゃないか?」

リゼ「……今、一番悩んでるのは、千夜のことじゃないのか?」

シャロ「う……」

シャロ「……私のしたいようにすれば良いって、千夜に言われたんです。それは良いんですけど……」

シャロ「昨日話したとき、千夜、向こうに行ったほうが良いって言ってて」

シャロ「ひょっとして千夜は、私に引っ越して欲しいのかなって」グスッ

シャロ「私、千夜にとって邪魔なのかな? 千夜に嫌われてるのかな……なんて、考えたら、悲しくて」ポロポロ

ココア「嫌われてるなんて、そんなわけないよ! あの千夜ちゃんだよ!」

リゼ「ああ、千夜だしな。それはありえない」

チノ「千夜さんですからね。ありえません」

シャロ「なんでそんなこと言い切れるのよ!」

リゼ「だって千夜はシャロのこと大好きだろ」

ココア「だって千夜ちゃんはシャロちゃんのこと大好きだもん」

チノ「千夜さんはシャロさんのこと大好きですから」

シャロ「……えっ」

リゼ「よくラビットハウスに来て、シャロの話を嬉しそうにしているしな」

ココア「学校でよく、シャロちゃんを弄りすぎて無いかって不安そうにしてるよ」

チノ「シャロさんがバイトも勉強も頑張りすぎていやしないかと心配しているのをよく見ます」

シャロ「ほ、本当に?」

ココア「うん。だから、千夜ちゃんがシャロちゃんを嫌ってるなんて万に一つも無いよ」

チノ「むしろ、あれはもう愛です」

リゼ「ああ。シャロのこと愛してると言われたら信じるな……。シャロは、そんな風に感じたこと無いのか?」

シャロ「う……そ、そんなこと言われても……ずっと一緒にいた幼馴染だから、よくわからないわ」

シャロ「それに、そんなに私のこと気にしてるなら、なんで向こうに行ったほうがいいなんて……」

ココア「シャロちゃんにとって、そっちのほうが良いと思ったんじゃないかな」

シャロ「へ?」

ココア「シャロちゃんがバイトと勉強に追われているのは誰より知ってるはずだし、自分といるより両親といたほうが幸せだと思ったのかもしれないよ」

リゼ「ああ、ありそうだな。マイナス思考なことが多いし」

チノ「シャロさんは一度、千夜さんとよく話し合ってみたほうが良いと思います」

シャロ「そっか……うん、そうね。そうしてみるわ」

シャロ「ところで…………ほんとに、千夜がそんな話してたの?」

チコリ「」コクッ

シャロ「そっか……」///

ココア「あ、シャロちゃん顔赤くなってるよ♪」

シャロ「う、うるさいわね! 今日はもう帰るわ! みんな、ありがとう!」

千夜「シャロちゃん、お店終わったわ。なに、話って?」

シャロ「まあ、とりあえずそこに座って、紅茶でも飲んで」

千夜「ええ……」

千夜(シャロちゃん、すごく真剣な顔してるわ)


シャロ「ねえ、千夜。千夜は私に、引っ越して欲しい?」

千夜「……シャロちゃんはきっと、ご両親と一緒に暮らしたほうが、シャロちゃんにとって良いと」

シャロ「千夜が私にどうして欲しいか聞いてるの。どっちのほうが良い判断かじゃないわ」

千夜「私は…………引っ越して、欲しい」

シャロ「…………」

千夜「シャロちゃんがいなくなったほうが、私も、やることが減って楽だもの」

千夜「シャロちゃんだって、バイトもしなくて済むし、私と離れられて良いでしょう」

シャロ「……千夜。手、震えてるわよ」ギュッ

千夜「!」

シャロ「あのね、千夜。私、千夜がどう言おうと、ここを出て行くつもりなんて無かったの」

シャロ「ここには、紅茶の美味しいお店がたくさんある。困ったときには助けてくれる友達がたくさんいる」

シャロ「でも、何より私は、千夜と離れたくないわ。私の大好きな千夜と、ずっと一緒にいたい」

シャロ「ねえ千夜。どうして、私が千夜と離れたほうが幸せだなんて思うの?」

千夜「私……だって私は、シャロちゃんのこと、いつもからかってばかりだし。学校も変わって、友達も増えて、私ができることも少なくなったわ」

千夜「もう、私はいなくてもいいんだって。そう考え始めたら、私ってただシャロちゃんの迷惑なんじゃないかって」グスッ

千夜「シャロちゃん、バイトも大変そうだし。そんな風に思っていたら、昨日……私なんていないほうがいいって、シャロちゃんが」

シャロ「へ? ……ああ、疲れて私、そんなこと」

シャロ「……千夜、ごめん」スッ

千夜「し、シャロちゃん! 顔上げて……」

シャロ「昔から一緒にいたから麻痺してるかもしれないけど、私は千夜にいろんなところで助けられてるわ。昔も、今も」

シャロ「からかってばかりなのも、天然かわざとか知らないけど昔からだし。もう慣れた。……むしろ、今はそれが無いと寂しいわよ」

千夜「シャロちゃん……」

シャロ「やっぱり引っ越したくはないわ。他のみんなもいるし……何より」

シャロ「千夜。私ね……千夜のこと好きよ。本当に大好き」

シャロ「私には千夜がいなきゃダメなの。いつまでも千夜に、一緒にいて欲しい」

千夜「……まるでプロポーズね」

シャロ「……そ、そうよ。ダメだったかしら?」

千夜「…………」ポロッ

千夜「……これからも、ずっとずっと、よろしくお願いします」ポロポロ

シャロ「ほら、泣かないの。これからも、末永く、よろしくね。千夜」ギュッ

千夜「シャロちゃん……大好き!」ギュッ

バァン

ココア「仲直りしたんだね、おめでとー!」

千夜「えっ」

シャロ「こ、こここ、ココア!!? あんたひょっとして」

リゼ「ココアが、二人が心配だってついて行ってな……」

チノ「リゼさんもノリノリだったじゃないですか。私もですが」

チノ「ちなみに会話は外から聞こえませんでした。そこだけは安心してください」

シャロ「そ、そうなの……良かったわ」

ココア「二人なら絶対、仲直りできるってわかってたからねー」

チノ「……千夜さん、泣いてるんですか?」

千夜「ん、大丈夫よ。シャロちゃんと仲直りできたから、嬉しくて……」

チノ「そうですか。それなら続けて大丈夫ですね」

ココア「さぁ、今日はパーティーだよ!」

シャロ「パーティーって、何もそこまでやる必要は」

ココア「何言ってるの! 今日は千夜ちゃんの誕生日だもん、当然だよ!」

シャロ「えっ……あぁ、そういえば」

千夜「すっかり忘れてたわね……」

ココア「二人ともうっかりさんだよー」

リゼ「今日は私とチノが腕によりをかけて料理を作るぞ。千夜、すまんが台所貸してくれ」

チノ「任せてください」

ココア「私もあっちでケーキを焼いてくるよ! 楽しみにしててね!」


千夜「……怒涛の勢い、って感じね」

シャロ「やっぱり遠くになんて行けないわ。みんながいるもの」

千夜「そうね。ごめんなさい、勝手なこと言って」

シャロ「ううん。元はこっちが悪いんだし。それに……誕生日、すっかり忘れてたから、何も用意してないわ。ごめん」

千夜「あら、プレゼントならもう貰ったじゃない」

シャロ「?」

千夜「……シャロちゃんの隣」

チュッ


おしまい

【蛇足】


ココア「……」ゴクッ

チノ「……」ドキドキドキ


シャロ「千夜……みんな戻ってきたらどうするのよ」ハァハァ

千夜「大丈夫よ、もうちょっとだけ……」チュッ

千夜「シャロちゃん、だーい好き……」ペロッ

シャロ「千夜ぁ……んっ」チュッ


ココア「……お、大人の世界だよ」

チノ「ココアさん……あの」

ココア「なに、チノちゃん」

チノ「……な、なんでもないです///」

ココア「……そ、そう?///」

チノ(いつか、ココアさんとあんな風に……///)

ココア(チノちゃんにしてみたいって言われたらどうしようかと……///)


リゼ「あの二人、遅いな……」

幼馴染最後の日。二人は幼馴染から恋人になりました。

実際は幼馴染って事実は変わるはずないんですが。千夜ちゃん誕生日おめでとう。

SS書いててイラスト全然できてないねん。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年10月06日 (火) 21:57:39   ID: GuebzAX1

最期の日で鬱かと思ったら違って安心した

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