ゲジ子「例え不快と言われても…」 (241)
男「じいちゃんの跡を継いでこの家に住み始めたたわけだが」
男「住み始めて一週間…」
男「なんか色々いることが分かった」
男「例えばこの廊下にはアシダカ先生が陣取っている」
男「こっちのトイレにはカマドウマが引きこもっている」
男「その先の庭にはヤスデがこそこそしている」
男「で、極め付けがこれだ…」
ゲジ「…」シャカシャカ
男「何故か家のどこへ行ってもついてきている?ゲジだ」
男「虫は昔から大好きなんだが…」
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男「お前は何がしたいんだ?」
ゲジ「…」シャカシャカ
男「いや、別に問題はないんだがなー」
男「ほれ」スッ
ゲジ「♪」ヒョイヒョイ
男「うぇ…感触は最悪だが、迷いなく手に乗ってくるのは可愛いと言えなくもない…」
男「これだけ懐いてるんだから名前をつけよう」
男「ゲジ子だな」
男「これで話し相手にでもなってくれたらなぁ…なんてな」
ゲジ子「♪」ヒョコヒョコ
男「そういえば、じいちゃんの部屋そのままにしてたな」トコトコ
男「入ってみるか」ギィ
男「机しかない…?」
男「誰も入ってないからじいちゃんが故意にやってたのかな」
男「引き出しに何かないのかな?」キィ
男「ノートがあったぞ、どれどれ」ペラッ
グニョ~ン
男「………あれ?俺何してたっけ?」
男「まぁいっか、飯食おうっと」トコトコ
ゲジ子「…」シャカシャカ ピカァァァ…
男「うーん…朝かぁ…」
男「今日も一日頑張るぞ……で、あんた誰?」
ゲジ子「…」
ゲジ子「ゲジ子?」
男「いや、それは昨日ゲジに付けた名前だが…」
ゲジ子「付けてもらった」ギュ
男「冷たい手だ…じゃなくて!!」
テジ子「いつも一緒にいた」
ゲジ子「この手に乗せてもらった」ニギニギ
男「ホントにゲジ子なのか…つーか仮の名前のつもりだったのに…」
男「ホントのホントに間違いなく?」
ゲジ子「…」コクリ
男「じゃあ俺の愛読書は?いつもついてきてるなら分かるはず」
ゲジ子「『シャツだけ少女(18禁)』」
男「秘蔵の中の秘蔵のあの本の名前まで知っているって事は間違いないのか…?」
男「でも何故突然人間に?」
ゲジ子「…」
ゲジ子「分からない」
男「そうか…元に戻れるのか?」
ゲジ子「…」ポンッ シャカシャカ
男「うへ…これであのゲジ子確定だなぁ」
ゲジ子「…」ボゥン
ゲジ子「話せる」
男「どういう原理なのかは分からんが話し相手ができて嬉しいよ」
ゲジ子「ホント?」
男「ホントホント」
ゲジ子「…♪」ピト
男「元の姿を考えなければ妹みたいだな」ナデナデ
ゲジ子「?」
男「気にしなくていいよ」
男「お前一人だけなのか?変わったのは」
ゲジ子「…」
ゲジ子「さぁ?」
男「なんなら友達を紹介してくれないか?」
男(俺と関わりを持てば擬人化するのかも…と、ちょっと期待してみる)
ゲジ子「分かった」
男「ちょっと冗談のつもりだったが本当にいるのか」
ゲジ子「こっち」シャカシャカ
男「悪いけど人間になってるんだから二本足で移動しような…?」
男「人の姿で滑るようにシャカシャカ這われるととってもシュールだ…」
男「ここか?」
ゲジ子「…」コクリ
男「トイレなんだがなぁ…」ガチャ
カマドウマ「…」プイッ
男「あぁ、いつものカマドウマさんですか」
ゲジ子「いつもムスッとしてる」
ゲジ子「でも悪い子じゃない」
男「ツンデレなのか…?じゃあコイツにも名前付けるか」
男「カマ代(よ)だな」
カマ代「…」チラッ
男「他はいるか?」
ゲジ子「外に」
男「外って庭?」
ゲジ子「うん」
男「よーし、じゃあ行こう」
ゲジ子「…」トコトコ ピタ
男「ん?どうして立ち止まってんの?」
ゲジ子「怖いヒトいる」
男「怖いヒトって…壁にはりついたアシダカ先生か」
男「その姿なら大丈夫だからこっち来なさい」
男「着いたけどどこにいるか分かるか?」
ゲジ子「探す」ポンッ シャカシャカ
男「自在に変身できると何かと便利そうだなぁ」
男「待ってる間、庭の掃除すっか」
男「ホウキホウキっと」グイ
ヤスデ「!?」ボトリ
男「ホウキにヤスデが隠れていたか」
ヤスデ「///」コソコソ
男「おーおー逃げてる逃げてる」
男「うおっ!?すごい早さでゲジ子らしきゲジがヤスデ追いかけてった…」
男「うーん、掃除終わったけど戻ってこないぞ」
男「ゲジ子ー?どこだー?」
ゲジ子「…」シャカシャカ
男「おぉ、呼んだらちゃんと出てきた」
ゲジ子「見つけた」ボゥン
ヤスデ「///」モジモジ
男「さっきのヤスデか…?」
ゲジ子「恥ずかしがり屋」
男「じゃあさっき追いかけていたのはやっぱりお前だったのか」
ゲジ子「…」コクリ
男「必死にどこかへ隠れようとしているようだが…」
男「ゲジ子の手にいて逃げ場がなくて慌てふためいてるように見える」
ゲジ子「合ってる」
男「あ、やっぱり?」
男「そんじゃ名前な?うーん…ヤス菜(な)なんてどうだ?」
ゲジ子「ヤス菜だって」
ヤスデ「///」モジモジ
男「どういう反応なんだこれは」
ゲジ子「名前をくれて嬉しい」
男「そ、そうか…それなら付けてあげてよかったわ」
男「これで全部?」
ゲジ子「…」コクリ
ゲジ子「あとは悪いヤツ」
男「…それは紹介する意味あんの?」
ゲジ子「…」ジー
男「もしかして…襲われてたら助けろ的な?」
ゲジ子「!!」コクコク
男「まぁいいけど…そこに徘徊しているムカデとかそうじゃね?」
ゲジ子「…」ガタガタガタ
男「分かりやすいなぁ…しかし、どんな時も無表情だなこの子…」プシュー
男「結構時間かかったなぁ」
ゲジ子「…」
男「そんじゃ昼になったし飯食うか」
男「ところでお前さんは普通の飯食うの?」
ゲジ子「?」
男「いや、米とか野菜とか汁とか加工物とか」
ゲジ子「…」フルフル
男「そうか…じゃあ何を…」
カサカサカサ
ゲジ子「!!」キラーン
男「この家でゴキ見るの珍しいな…あれ、そういえばゲジって…」
ゲジ子「…」ポンッ シャカシャカ
男「ゲジ子…まさかお前…」
ゴキ「!?」カサカサ!!
ゲジ子「…」シャカシャカ
男「俺の分の飯作ってくるわ…」
ゲジ子「…」ガシッ
ゴキ「」チーン
ゲジ子「…」ジュルリ
―お食事中 しばらくお待ちください―
男「ごちそうさまっと」
ゲジ子「けぷ」
男「おーう、戻ったか」
男「お前さんの分の食事はいらなそうだな…あと口元にナニカの足がついてるぞ…」
ゲジ子「?」ゴシゴシ
男「いや、なんでもないさ…うん…」
男(食事してる光景はなるべく想像しないようにしよう…)
ゲジ子「手伝う」
男「へ?後片付けをか?別にかまわないけど急にどうした?」
ゲジ子「役に立ちたい」
男「あれから夜のこの時間までずっと色々手伝ってくれたわけだが」
ゲジ子「…」
男「そこまでして手伝ってくれなくていいぞ」
ゲジ子「どうして?」
男「お前もやりたい事とかあるだろう?」
ゲジ子「役に立ちたい」
男「それでいいのか…」
男「そういえば虫なんだからやりたい事もないのかねぇ」
ゲジ子「ある」
ゲジ子「傍にいたい」
男「え?」
ゲジ子「男の傍に」モジモジ
男「どうして俺なんだ?」
ゲジ子「虫の時から」
男「うん」
ゲジ子「ずっと優しかった」
男「まぁ無駄な殺生はしたくなかったしな」
男「それに虫は昔から種類問わず好きだったし…無害なの限定だが」
ゲジ子「…」
男「ずっとついてきてたのはそれでだったのか」
ゲジ子「…」コクリ
男「そうか」
ゲジ子「嫌だったら」
男「別に嫌じゃないさ」
男「傍にいてもいいよ」ナデナデ
ゲジ子「!!」
ゲジ子「…」ギュッ
男「ホント、一日にして家族ができたみたいだわ」ナデナデ
男「これからいつまでか分からないけどよろしくな」
ゲジ子「うん」
男「うぅ~ん、朝だ」
男「今日も外は暑そうだが頑張るぞ!!」
男「っと、まずゲジ子はっと…」
男「ゲジ子ー?」
ゲジ子「?」シャカ
男「朝っぱらから虫モードか…おはようさん」
ゲジ子「おはよ」ボゥン
男「朝食食った?」
ゲジ子「今日は蛾だった」ペロリ
男「ソ、ソウデスカ…」
男「とりあえずトイレしてこよっと」
ゲジ子「…」トコトコ
男「あ、さすがにトイレにはついて来ないでくれよ…」
ゲジ子「?分かった」
男「やれやれ」ガチャ
?「…」
男「あ、これは失礼…」バタン
ゲジ子「?」
男「あれー?俺の気のせいかなぁ…」ゴシゴシ
男「女の子が便座に座り込んでるのが見えたんだが…」
男「もう一回だ」ガチャ
男「…」
?「なによ?じっと見て」
男「こんな所で何してらっしゃるので…?」
?「はぁ?自分の住処にいておかしいとでも?」
男「いや…」
?「用事がないなら早くどこか行ってくれない?」
男「いやいやいや…」
男「誰なんだ君は!?」
?「いつもここにいたし、名前付けてたじゃない」
男「もしかして…カマ代なのか?」
カマ代「そうだって言ったでしょう?あと馴れ馴れしく呼ばないでよ」
男「えっとごめん…カマ代…さん?」
カマ代「そんじゃさっさとどっか行ってよ」
男「人間になってんだからトイレに篭ってなくてもいいんじゃ?」
カマ代「ここにいるほうが落ち着くのよ、放っておいて」
男「そうすか…それでは失礼」バタン
ゲジ子「カマ代?」
男「あぁ、お前さんと同じ人間になってた…」
ゲジ子「そうなんだ」
男「冗談で言ったつもりがホントに人間になっているとはな…」
男「一体何があって彼女らは擬人化したんだ?」
ゲジ子「カマ代と話してきた」
男「何か言ってた?」
ゲジ子「何も」
男「そすか」
ゲジ子「あ、これからもよろしくとだけ」
男「そこはちゃんと挨拶してくれるんだ」
男「ちょっと待てよ…と、いう事は他にも!?」ダッ
ゲジ子「?」テクテク
男「…」
??「あら、男じゃない」
男「お姉さんはどちら様で…?」
??「アシダカグモ」
男「何となく予想はしてたけどやっぱりそうすか…」
先生「面白いことになったわね」
男「あなたはちゃんと理解した上で話してくれるんですね」
先生「一応この家の主であるあんたを無視するわけにもいかないでしょ」
先生「私達を自由にしてくれてるし」
先生「感謝してるのよ」
先生「それより他の子確認しようとしてたんじゃないの?」
男「さっきの話聞いていた?」
先生「そりゃ廊下にいたら聞こえてくるわよ」
男「先生はなんだか人になっても予想通りって感じ」
先生「まぁ言いたい事は分かるけど」
男「そうそう、別に今までいた所にいなくても自由にしてくれていいですよ」
先生「そお?じゃあそうさせてもらうわ」
ゲジ子「…」ソー
先生「あんたも別にとって食べたりしないから出てきなさいよ」
男「何せ相手が先生だからゲジ子も怖がるんだな」
男「ここに例の恥ずかしがり屋さんがいるんだっけか」
ゲジ子「…」コクリ
男「ちょっと庭を回ってみよう」
ゲジ子「いた」
男「早いなおい!?」
男「で、どこにいるんだ?」
ゲジ子「そこ」
男「指を差す先は…倉庫の影か」
???「///」コソコソ
男「今までの子と大分違うタイプの子だなぁ」
男「えっと君は・・・」
???「わたっ…わたしは…」
男「ゆっくりでいいから」
???「は、はい///」
ゲジ子「頑張れ」
ヤス菜「わたしは…ヤスデのヤス菜…」
男「うん、君がそうか」
ヤス菜「よろしくお願いします///」サッ
ゲジ子「恥ずかしいらしい」ポンポン
男「いや、言わなくても見たら分かるから…」
男「とりあえず集まってもらったわけだが…」
カマ代「何の用で集めたのよ?」
男「一応、挨拶と言う事で」
カマ代「さっきゲジ子に代返頼んでたでしょ?それでいいじゃない」
ゲジ子「…」
ヤス菜「で、でも…男さんが言っているし…」
カマ代「知らないわよ、めんどくさい」
先生「あまりワガママ言うと『狩る』わよ?」ギラリ
カマ代「…」
男「さすが先生、一喝だな」
男「虫の時にはさすがに話なんてできなかったし」
男「ちょっと話をしたかっただけだよ」
男「もちろん、いつも通り自由に生活してくれてかまわない」
先生「でも人間になれたんだから私は色々やりたい事やらせてもらうわ」
男「どうぞどうぞ」
ヤス菜「わ、わたしも…やってみたい事があります…」
ゲジ子「一緒にしよう」
ヤス菜「うん…」
男「君は?」
カマ代「べ、別に…自分の好きなように暮らすだけよ」プイッ
男「ふぅ」
男「一気に家が賑やかになった気がする」
男「食費も何もかからず、俺としてはまぁ嬉しい事なんだが…」
先生「話し相手できたから?」シュボッ
男「あ、まだ寝てなかったんだ」
先生「虫だしねぇ、寝る必要あまりないのよ」プカー
男「…どこからタバコを持ってきたんですか?」
男(つーか、火は平気なのか…)
先生「タンスの裏に挟まってたお金とやらで初めての買い物してきたわ」
男(じいちゃんが隠していたへそくりだろうか?本人いないし別にいいんだが…)
男「あなただけ人と変わらない気がする」
男「いろいろ知ってるし」
先生「これでも5年は生き続けてるし、大体の事は見て覚えたからかしらね」
男「5年もか…すげぇな…」
先生「それにしてもあんた、変わってるわねー」
先生「私達をあっさり受け入れるし」
男「これでもかなり混乱してますよ」
男「ずっとあなたたちが人間になったのは何故か未だ考え中だし」
先生「そう、いつか分かるんじゃないかしらねー?」スゥ-プカー
男「そんな適当な…」
先生「不思議な事が目の前で起きたんだからこの状況を楽しめばいいと思うわよ」
男「楽しむ・・・かぁ」
先生「ところで、コレ落とす物ない?」ユラユラ
男「だー!灰が落ちる!?ちょっと待ってて!!」ガタッ
先生「あ」ポト
男「…すいません」
先生「片付けとくから持ってきてよ」
男「あ、はい」トコトコ
先生「あの様子じゃ本当の原因に気付いてないようだね」
先生「まぁその内気付くでしょ」プカー
男「…朝なのに暑い」
男「夏も本格的になってきたか」ムクリ
男「それと同時に住民も増えてしまったわけだが…」
男「少し話をしてみようかな」
男「一番話しやすいの誰だろうな…」
先生「あの大人しい子はどう?」
男「ヤス菜ですか…確かに話しやすそうですけど」
男「…でも、貴方が一番だと思いますが」
先生「あらそう?それは光栄だわ」
男「こうやって独り言にナチュラルに入ってこれるところとかもう…」
先生「それよりあの子探してみたら?」
男「そうですね、どこかで見ましたか?」
先生「今日は見てないけど、こことか?」コンコン
男「何で押入れ…」
先生「恥ずかしがり屋なら人目のない所行くんじゃない」
男「でもこんな所にいますかねぇ?」シャー
モゾモゾモゾ
男「何故仕舞ってある布団が動いているんだ…」
男「誰かいるのか?」ポフポフ
布団「おはっ、おはようございます…」
先生「布団がしゃべったわ」
男「そんな笑顔で言わないでください…」
男「ヤス菜?」
ヤス菜「はははい…」モゾモゾ
男「えっと、話したい事があるから出て来てくれないか?」
ヤス菜「はう…分かりました」ゴソゴソ
男「色々ツッコみたいけどどうしてそんな所に?」
ヤス菜「こういう暗くて狭い所が落ち着くので…」
先生「ほら、やっぱり私の言うとおりじゃん」
男「人目のない所としか言ってないじゃないですか…」
ヤス菜「そ、それで…お話したいと言うのは…」
男「うん、せっかく人間になったわけだからやりたい事もあるでしょ」
男「協力できることがあるなら手伝おうと思ってね」
ヤス菜「ただでさえここに住まわせてもらっているのにそこまでは…」
先生「遠慮はいらないわよ、力になってもらいなさい」
ヤス菜「で、でも…」
先生「でもでもだってじゃ話進まないし、しゃんとしなさいよ」
ヤス菜「ご、ごめんなさい…手伝ってくれますか…?」
先生「いい子ね、それじゃ後よろしく」クルッ
男「えっと…なんで俺抜きで話進んでるの…?」
男「それじゃやりたい事を聞かせてもらえるかな?」
ヤス菜「えと…わたし…色々して遊びたいんです」
男「具体的にどういう事?」
ヤス菜「人間の子みたいに…何かをしてみんなと楽しく…」
男「なるほど、言いたい事は分かるよ」
男「それなら早速遊びに行く?」
ヤス菜「えぇぇ…そ、そんなすぐできるものですか…?」
男「ここが都会ならちょっと簡単ではなかったけど ここは田舎だからね」
ヤス菜「…?」
男「とにかく外へ出よう」
男「おっと、ゲジ子」
ゲジ子「どこか行くの?」
男「そうだ、お前も一緒に来なよ」
ゲジ子「?」
ヤス菜「こ、これから遊びに行くの…」
ゲジ子「だったら行く」
ゲジ子「一緒にしたい事するって約束したから」
ヤス菜「うん、そうだね」ニコ
男(こう見ると親友って感じだなコイツらは)
男(引きこもりのカマ代もこんな風に仲がいいのだろうか?)
男「はい、到着っと」
ヤス菜「ここは川…でしたよね」
ゲジ子「…」
男「ちょっと待っててな…ふんふん~♪」ゴソゴソ
ゲジ子「なにこれ」
男「ん、釣り道具」
男「遊びその1は魚釣りだ」
ヤス菜「さ、魚ってそこに見える…川にいる生き物ですか?」
男「そうそう」
男「釣れると結構楽しいんだよ」
ゲジ子「食べられない?」
男「今、お前達は虫じゃないんだから…」
男「魚を食べるのはできないだろうけど釣るだけってのもおもしろいもんさ」
男「と、いうわけで…はい釣竿」スッ
ヤス菜「こ、これでどうすれば…」
男「こうやって川へ投げるんだ…よっと!」ヒュン チャポン
ゲジ子「こう?」ヒュン ポト
男「何故、前向いて投げたのに横へ飛ばせた…」
ヤス菜「こう…かな」ヒュン チャポン
ゲジ子「!?」ガーン
男「あとは糸が引っ張られてる感触がしたら引き上げるだけ」
男「でもあまり慌てると魚逃げちゃうので慎重に」
ヤス菜「はい…」
ゲジ子「…」
男「あと、結構釣れるまで時間かかったりするから飽きたら報告するようにね」
男「他の遊び提供するから」
ゲジ子「ん」シュタ
男「おい…まさかもう飽きたとかじゃないだろうな?」
ゲジ子「お腹すいた」
男「そ、その辺の虫でも探していただいてくれば…?」
男「そういえばヤス菜って何食べるんだっけ?」
ヤス菜「わ、わたしは…枯葉とか…」
男「そういえばヤスデって分解者って言われるぐらいだからそういうの食べるのか」
ヤス菜「へ、変です…か?」
男「いやいや、そうじゃないけど」
男(彼女らは生態がまんま性格に反映してる気がする)
ヤス菜「あ…ひ、引っ張られてる…かも」ピクッピクッ
ゲジ子「引き上げろって言ってた」
男「そうだ、慎重に引いてこちらへ近づけるんだ」
ヤス菜「は…はい…」クイ
バシャバシャ
男「おっけー、もう引かなくていいよ」
ヤス菜「つ…釣れたのですか?」
男「うん、ほら」ピチピチ
ゲジ子「やったね」
ヤス菜「ここ、これ本当にわたしが…」
ヤス菜「わぁぁぁ…!!」
男「やべぇ、反応が可愛すぎる」
ゲジ子「ヤス菜は可愛い」
男「友人にも認められた可愛さなのか」
男「…と、そんな感じで今日はずっと釣りしてました」
先生「へー、私も行ったらよかったかしら」
男「また別の機会と言う事で…」
先生「あら残念」
先生「今度は引きこもりの子も連れて行ってあげなさいな」
男「カマ代ですか?来るかな…」
先生「きっとあんなでも寂しがりやなのよ」
男「そうですかね」
男「明日はカマ代もどこかに誘ってみるか」
先生「そうしなさいな」ニッ
男「来たはいいが、どう声をかけるべきか…」
男「またトイレに来たふりして開けるか?」
男「それとも出てきて話をしようと声をかけるべきか?」
男「うーん…」
カマ代「…」ガチャ
男「うお!?」
カマ代「さっきから独り言がうるさいわよ」
男「うげ、全部口に出してた?」
カマ代「それより何の用よ?」
カマ代「仕方なく出てきてあげたんだから早く言いなさいよ」
男「えっと、どこか行きたい場所あるかい?」
男「または何かほしい物とか」
カマ代「何?あんたが連れて行ってくれるの?」
男「うん、行ける範囲でなら」
カマ代「なら…んっ」バッ
男「本?」
カマ代「もっと他のないの?」
男「篭って何してるかと思ったら本読んでたのか」
男「しかもいつの間にか別の部屋にあったの持ってきてるし…」
カマ代「そ、そんなのどうでもいいからあるなら早く案内しなさいよ!」
男「はい、ここが多くの本がある所…図書館だよ」
カマ代「ふぅん…思ったよりあるのね…」キョロキョロ
男「ここなら借りる事できるし、その場で読むこともできるんだよ」
男「ゆっくり探すといいよ」
カマ代「はいはい…」キョロキョロ
男「聞いてるのか聞いてないのか…」
男(今思ったが、彼女は文字読めるのか)
男(そういやゲジ子も愛読書のタイトル読めてたしな)
カマ代「ねぇ、れ…恋愛モノのやつってどこにあるの?」
男「そういうジャンル好きなのか…そういえば家で読んでたのもそういうのだったけか」
男「あー外は暑かったな…」
カマ代「それじゃ元の場所に戻るわ」
男(何で普通に部屋にいようとしないんだろう…)
カマ代「男」
男「ん?」
カマ代「あ、案内してくれて…ありがと」ボソボソ
男「あ、うん」
カマ代「それだけ!」バタンッ
男(ちょっと態度でかいけど悪い子ではないんだよな)
男「他の子達の様子も見てくるか」
男「あれ?また川にいると思ったがいないぞ…」
男「道具はそのままあるから遠くには行ってないだろうけど」
男「ん?上流の方で声がする…」
「あ、そっち行ったよ」 「もう少し回り込む」
「…元の姿に戻ったらダメ?」 「た、食べられちゃうよ…」
男「先の森の方にいるようだが何してるんだ?」
男「どわ!?なんだ、狸か…」ガサガサガサ…ヒュン!!
ヤス菜「あ、あっち行ったよ!あ、男さん…」
ゲジ子「いなくなっちゃった」
男「?」
男「何してるの?」
ゲジ子「動物?追いかけてた」
ヤス菜「可愛かったので触ってみたくて…」
男「あぁ、さっきいた狸か」
ヤス菜「そ、そんな名前だったんだ…でも逃げられちゃった…」
ゲジ子「しょぼん」
男「お前達でも可愛いものは愛でたくなるんだな」
ゲジ子「…」コクリ
男「またその内出てくるって、ここではしょっちゅう見かけるし」
ヤス菜「こ、今度こそ触りたい…」
先生「誰も戻ってこないし暇ねぇ…」プカァ
先生「私も出かけりゃよかったわー!!」
先生「ん?」ピクッ
小ゴキA「!?」
小ゴキB「?」
先生「…大方排除したと思っていたんだけどねぇ」
小ゴキA「…」カサ…カサ…
先生「もう一匹をかばうように動いてるみたいだけど…」
先生「その努力に免じて見逃してあげるわ、早くどこかへ行きなさい」シッシッ
小ゴキB「…」カサカサ
男「ただいまー、おわっ!?」
男「ゴキ二匹同時に見たの初めてだわ…」
男「何か外に出たがってそうだな…ほら開けるよ」カラカラ
カサカサカサ
男「両方小さかったから兄弟だったのか?」
先生「多分そうじゃないの」
男「あ、先生いたんですか」
先生「みんなに置いてけぼりにされて退屈だったわー、よよよ」
男「すっごい棒読みですね…って、どこへ連れて行くんですか!?」ズリズリ…
先生「散歩に付き合ってよ」
先生「あんたって損する性格よね」
男「いきなりなんですか」
先生「私達にかまってないで友達と遊べばいいのに」
先生「時間を無駄にしてると思わない?」
男「俺は自分のやりたい事やってるつもりです」
男「例えそれが損する事だとしても」
先生「自分の信念を曲げないってわけね」
男「いけませんか?」
先生「いいえ?少なくともあの子達にとってはそのおかげでしたい事出来てるわ」
男「俺は友人と遊ぶより、今起こっている不思議な生活のほうが楽しいんですよ」
先生「んー」スゥ フゥー
男「ずっと思っていたんですけどそうしているの見ると普通の人にしか見えませんね」
先生「蜘蛛がタバコ吸っているという非現実的な光景でしょ」
男「そりゃ今は人間になってるから…」
先生「なら戻ったほうが良いのかい?」ポンッ ゾロゾロ
男「それでもタバコは離さないのか…」
先生「あのままじゃ吸えないけどもったいないじゃない」ポンッ
先生「これは望んだ結果なのよ」
男「え?」
先生「ほら、そろそろ帰るわよ」
男「ん…眠れないな」
男「あの時、先生が言ってたのはどういう意味だったんだろう?」
『これは望んだ結果なのよ』
男「わっかんねぇな」ゴロゴロ
ゲジ子「…」モゾモゾ
男「おわぁ!?いつの間に隣で寝ていたんだ!!」
ゲジ子「ほんのちょっと前」
ゲジ子「一緒に寝たかった」
男「ま、いいけどね…ちょっと飲み物飲んでくる」
ゲジ子「…」コクリ
ゴソゴソ ボソボソ
男「ん?台所に誰かいる?」
?「ほら、早くしないと見つかっちゃうよ」
?「もっと!もっとおいしいものー!!」
男「えー…」
?「あ…」
?「どうしたのおねーちゃん?」
男「また擬人化したのか…今度はどこの虫だ…」
?「こ、この子だけは…」プルプル
?「あー、いつもいるおっきいおにーちゃんだー」
男「いや、何もしないから話を聞かせてくれ」
?「こんなつもりじゃなかったんです…ごめんなさい!!」グイ ダッ
?「わわ、おねーちゃんどこいくのー」ズルズル
男「なんだありゃ」
男「今回は全然身に覚えがないな…」
カマ代「…」ジー テクテク
男「そこ、何事もなかったかのようにスルーしないでくれ…」
カマ代「じゃあどうしてほしかったわけ?」
男「『さっきの誰?』とかそういう言葉をだな…」
カマ代「面倒事は嫌いなのよ」
カマ代「で、全然知らない相手だったと?」
男「まったく」
カマ代「そこらへん飛んでる蚊とかじゃないの」
男「まさかぁ」
カマ代「じゃあ気のせい」
男「気のせいじゃないよ?!カマ代だってさっき見ただろ!!」
カマ代「見た気がするけど気のせい」
男「くっ…あの子達は何者だったんだろう…」
カマ代「その内分かるでしょ、じゃあ私は忙しいから」テクテク
男「いつ出てきてるかと思ったら夜中に徘徊していたのかあの子…」
自分も虫は好きじゃないけどなー
このスレ立てたのは、家でゲジ見て不覚にもかわいいと思ったからだけど
男「朝、目が覚めたわけだが…」
男「寝てる子増えてね!?」
ゲジ子「?」
ヤス菜「Zzz」
男「昨日は押入れの布団…で、次は俺の所に潜り込んでくるとは…」
ゲジ子「ヤス菜は狭い所が好き」
男「それは知ってるが何故俺の所なんだと」
ゲジ子「男の近くは安心できるから」
男「そうなのか…」
男「信頼を得たのは嬉しいが色々とこれはヤバイだろ…」
先生「じゃ、そういうことだから」
男「あまり目立ったりはしないでくださいよ…」
先生「私がいるから大丈夫よ」
カマ代「そうね」
ヤス菜「わ、わたしもちゃんと見てますから…」
ゲジ子「…」
男「分かったよ、お使い頼むね」
先生「それじゃ発進!!」ガラガラ ピシャン
男「発進て…」
男「本当に任せて大丈夫だろうか…いや、先生がついているんだし信じようか」
男「ふぅ、掃除と洗濯完了」
男「でも俺の分しかないから量少なくて楽だわー」
男「彼女達の服がどういう原理で変わったりしてるかは聞かないほうが良さそうだが…」
男「たまにはのんびりするかな」
ゴソゴソ ドサドサドサ
男「何の音だ?台所からのようだが…」ソロー
?「こら、あまり音出しちゃダメ」
?「でもー」
?「ただでさえ危ない所なんだから…」
男「えっと…またキミ達か」
?「!?」
?「いつものおっきいおにーちゃんだー」
男「何をして…って明らかに食べ散らかした後が…」
?「ごめんなさい!!私はどうなってもいいので妹だけは?!」
男「いや、何もしないから話聞いてくれないか?」
?「?」
男「キミ達は何者だ?」
?「最近、この辺りにやってきたゴキブリです…」
男「えーと、もしかして昨日玄関から出て行ったあの…?」
?「はい…あれが私達です」
ゴキ姉「どういうわけか人間になってしまいまして」
ゴキ姉「ついここを食事場として利用させていただいてました…」
ゴキ姉「ごめんなさい!!」
男「オーケーオーケー、状況は把握した」
男「しかし、ゴキって普通に冷蔵庫とか開けて食べるものなの?」
ゴキ姉「今は人間の姿だし、人間と同じように食べようかと…」
男「それ、余計に目立つだろ」
ゴキ姉「ごめんなさい!ごめんなさい!」
ゴキ妹「おねーちゃんどうしたの?」
男「人間ならまだしもゴキだと怒るに怒れないな…」
男「元の姿に戻れる?」
ゴキ姉「はい…妹も」ポン
ゴキ妹「はーいもどるよー」ポン
カサカサカサ
男「確かにゴキなのは間違いないな」
男「でも、ここには他にも同じ境遇の子いるしコソコソしなくてもいいんじゃ?」
ゴキ姉「天敵がいますし…昨日だって危ないところでした…」ボゥン
男「そういえば先生いるしな…ゲジ子も食うんだっけか」
男「じゃあこうしよう、キミ達の食事は用意してあげるよ」
男「安全確保はちょっと難しいな…俺じゃ虫視点分かんねーもんなぁ」
ゴキ姉「そこは自分達で何とかしますので」
ゴキ姉「これ以上迷惑かけたくないですから…」
ゴキ妹「じゃあこれからはご飯食べ放題!?」
男「ははは、お腹いっぱいになるぐらい用意しておくよ」
ゴキ姉「あ、ありがとうございます」ペコペコ
男「あと、家への出入りは自由だけど『彼女達』には気をつけてな」
ゴキ姉「はい、それではこれで」ポン
ゴキ妹「もう帰るの?おにーちゃんまたねー」ポン
男「ふぅ、なんというか…」
男「たくましい姉妹だな…一応みんなに教えておくか」
ゲジ子「見つからない」
先生「多分、もう少し先に目的地あるはずよ」
カマ代「さっさといるもの買って帰りましょうよ」
先生「そうね、えっと紙には何て?」
ヤス菜「は、はい…ニンジン、ジャガイモ、タマネギ…」
ゲジ子「スーパーっていうのあった」
先生「ご苦労さん、それじゃあ行きますか」
先生「ん?」
先生「あら、よくない事してるねぇ」トコトコ
ヤス菜「せ、先生…?」
DQN「おら、大人しく出すもん出せよ?」
少年「…」ガタガタ
DQN「黙ってねーで早く出せ…よっ!!」バキッ
カマ代「何よあれ?」
先生「あれは人のものを強引に奪おうとする行為だよ」
ヤス菜「それは良くない事では…」
先生「そうよ悪い事だよ…ちょっと先に買い物しててよ」
ゲジ子「どうするの?」
先生「私達の言葉で言うとだね…」
先生「『狩る』のさ」トコトコ
先生「あんた、もうやめておきな」グイ
DQN「誰だあんた?邪魔しねーでくれる?」
先生「無理、邪魔しに来たから」
DQN「女だからって俺が手出さないとでも思ってんのか!」シュッ
先生「あんたの世界では男女だと差があるみたいだけどね…」ガシッ
先生「私達の世界ではそんなの関係なしに弱肉強食なんだ…よっ!」ブゥン
DQN「ぐはぁ!?」ビタァン
DQN(え…俺、今片手で宙に投げ飛ばされた…?)
先生「さぁどちらが狩られるか生存競争ってやつをしようじゃないの」ジロリ
DQN(この女が巨大な捕食生物に見えるのは何故だ…勝てる気がしねぇ…)ビクッ
ゲジ子「多分、これがニンジン」ヒョイ
ヤス菜「ほ、本当にこれ…?」
カマ代「間違いないわ、それがニンジンよ」
ヤス菜「分かるの?」
カマ代「いや、普通にここに書いてるし…それに物は一通り覚えてるのよ」
ヤス菜「へぇ、さすがカマ代さんは物知りだね」
カマ代「ほ、本ばかり読んでて覚えたのよ!」プイッ
先生「ちゃんと買い物できてるかい?」
ヤス菜「あ、もう終わったのですか?」
先生「流石に人間だし捕食はできなかったけど、虫の息にはさせてきたわ」
ゲジ子「これはキャベツ」
ヤス菜「そ、それはメモに書いてないよ…」
カマ代「あぁ、それ以外とおいしいのよね」
先生「あら?案外何でも食べてるのね」
カマ代「す、好き嫌いはしないのよ!悪い?!」
先生「悪くはないわよ…っと、これがタマネギね」ポイッ
ゲジ子「あとは牛肉っていうの」
ゲジ子「¥¥¥¥のお肉はないのかな」
ヤス菜「こここここは人間の世界なんだからあるはずないよ…」
先生「これ、男がいたらもっと騒ぎが大きくなってたでしょうね」
男「ふぅ、使ってない部屋まで掃除するとさすがに疲れたな」
シャカシャカ
男「ゲジ子か、もう帰ったのか?」
ゲジ子「バレた」ボゥン
ヤス菜「だから男さんにはすぐ分かるって言ったのに…」
カマ代「他のゲジ連れてきて識別させてみたいわね」
男「それは流石に俺でも難しいって…」
先生「ほーら、狩ってきたわよ」ドサドサ
男「字が違うし…何を『狩って』きたのですか…」
ゲジ子「悪い人」
男「よーし、みんな集まったな」
カマ代「いきなり何するつもりよ?」
男「えっと…夜限定だけどみんなでできる遊び…花火でもしようと思って」
ゲジ子「花火?」
先生「あぁ、あの棒とか筒から火が綺麗に吹き出すやつね」
男「そうそう、みんな火って平気?」
ヤス菜「最初は怖かったけど今は大丈夫です」
ゲジ子「これ見て慣れた」
先生「これかい?」スゥー プカー
男「このヒトだけは怖いものなんてなさそうだよなぁ…」
ヤス菜「わぁ…綺麗…」パチパチ
ゲジ子「これもいい」シュワァァァ
先生「それぃ!」ポーイ シュルシュルシュル
カマ代「ぎゃんjけwじgfじぇいkg」ドタドタ
パァン!!
カマ代「ひぅっ!?」ビクッ
男「先生…ネズミ花火でカマ代いじめるのはやめてあげて…」
カマ代「」ポンッ ピクピク
ゲジ子「カマ代が元の姿でピクピクしてる」チョンチョン
男「虫なのにトラウマ持っちゃったらどうするんだよ…」
男「寝る前にひとつお知らせがあるんだ」
ゲジ子「?」
男「いらないかもしれないけど、みんなの部屋を用意したんだ」
男「各自自由に使ってくれてかまわないよ」
ヤス菜「えっと…どういう時に使えば…」
男「寝る時とか一人になりたい時とか何かに没頭したい時とかに使えばいいよ」
ゲジ子「寝る場所は決まってる」
カマ代「静かに本読める場所なら使わせてもらうわ」
先生「あら、珍しくツンツンしてないわね」
カマ代「いつもこんな感じよ!ツンツンとか言わないで!」
男「…部屋用意してもここで寝てたわけだが」
ヤス菜「んぅ…」Zzz
ゲジ子「…」Zzz
男「流石に動じなくなった俺はそろそろやばいかな?」
カマ代「やばいんじゃない?」
男「あ、やっぱり?」
カマ代「まったく、狭くて寝心地最悪だったわ」ゴソゴソ
男「…」
男「また増えてる!?」
ゲジ子「今日のゴキは大物だ…Zzz」
男「今日行きたいところある?」
ヤス菜「えとえと…」
ゲジ子「山」
カマ代「暗くてジメジメした所」
先生「カマ代、それあんただけよ」
カマ代「何ですって!?いいじゃない!落ち着くのよ?!」ガタッ
先生「やる気かい?」キラーン
カマ代「…」
男「まともな案がゲジ子の『山』だけってどうなんだ…」
ヤス菜「い、いいんじゃないかな…山で」
男「結局、山に来ちゃったわけだが」
先生「しかも全員でね」
ヤス菜「ま、また狸さんに会えないかな…触りたいなぁ」
ゲジ子「頑張る」
男「あまり荒らしまわると出なくなるから気をつけろよー」
ゲジ子「いい方法ない?」
男「捕まえる方法か?難しいと思うけどなぁ」
先生「狸って…あれ?」
カマ代「木の上に何かいるわね」
男「確かに狸だが…子供のようだし降りれなくなったのか?」
ヤス菜「お、落ちたら死んじゃう…」
男「助けてやりたいがいい手は…」
ゲジ子「!!」ダダダッ タンッ
先生「ゲジ子が飛んだね」
カマ代「届かないわね、あの子の跳躍じゃ」ダンッ
ゲジ子「さすがカマ代」
カマ代「押さえててあげるからそのままあんたが捕まえなさい」グイ
男「すげぇ…ゲジ子もすごいが、カマ代凄まじいジャンプ力だな」
ヤス菜「虫の身体能力って人間よりすごいんですよ」
ヤス菜「わたしだけ何も優れた特徴ないんですけどね…」グスン
ゲジ子「狸かわいい」ナデナデ
ヤス菜「本当、かわいいなぁ」ナデナデナデナデナデナデナデ
カマ代「撫ですぎ、その子怯えてるじゃない」
男「えっと、満足したら帰してやるんだよ?」
ゲジ子「一緒に住めないの?」
男「野生の子だし、親がいるはずだからね」
ヤス菜「ご両親いるなら仕方ないね…ほら、お帰り」スッ
子狸「…」ヒョコヒョコ
ゲジ子「バイ…バイ…」
男「君達、そんな悲しそうな顔しないでくれるか?俺が悪いみたいじゃないか…」
先生「次はどうするの?」
男「そうだなぁ…」
ゲジ子「他に動物いないの?」
ヤス菜「わ、わたしも動物ともっと…」
男「お前らどんだけ動物気に入ってんだよ」
先生「今まで触れ合えなかったからじゃないの?」
男「あ、そういうことか」
カマ代「何で気づかなかったのよその程度」
男「う、うるさいなぁ」
男「仕方ないな…野ウサギあたり探してみるか」
男「この辺の小さい穴とかにいるんだよね」ゴソゴソ
ヤス菜「お、男さん…」
ゲジ子「大きい」
男「へ?どうし…」
熊「グルルゥ…」
男「熊d@tskて!?」
カマ代「なにこれ?」
男「に、逃げろ…動物でもヤバイヤツだ…」
先生「戦ってみようか?」シュッシュッ
男「いくら先生でもコイツは無理だろ!?怖いものなさすぎ!!」
カマ代「先生倒しちゃってよ」
男「おいいい!?だからコレはやばいっての!!」
熊「ガァ」ドスドス
ヤス菜「こここっち来ちゃいましたよ…」ビクビク
ゲジ子「!?」
男「ヤス菜…!?」
ヤス菜「うぅぅぅぅぅっ!!」プシュップシュッ!
男「ん……くせぇ!!なんだこの臭い!?」
熊「グフッ…ゲェ…フゴッ…」ドスドスドス…
ゲジ子「逃げてった」
男「やっと臭いが薄れたか…何だったんださっきの」
先生「この子の体質じゃない?」
男「え?」
ヤス菜「えっとですね…危険な時、不快な臭いを出せるんです」
ヤス菜「ああいう動物とかにしか効きませんけど…」
カマ代「私達虫にはあまり効果ないのよね」
男「それでも十分すごいと思うけどね」
先生「確実にあんたもダメージ受けてたわよねー」
男「初めてだったしあまりに強烈だったんだよ…」
ヤス菜「こんな体質じゃなくて皆さんみたいなのがいいよ…うぅ…」
ゴキ妹「今、平気?」
ゴキ姉「多分大丈夫だと思う…おいで」
ゴキ妹「わーい」カサカサ ポン
ゴキ姉「あ、ちゃんと食事用意してくれてる」ポン
ゴキ妹「食べていいの?ね?ね?」
ゴキ姉「うん、ちゃんと見張ってるからいっぱいお食べ」
カマ代「…」
ゴキ姉「!?」
カマ代「あぁ、あんたらが男の言ってた姉妹ね」
カマ代「私は別にあんたら殺しも食べもしないからお好きになさい」トコトコ
ゴキ姉「び、びっくりした…」
ゴキ姉「こっちに興味のないヒトでよかった…」
ゴキ妹「おねーちゃーん、食べないのー?」
ゴキ姉「妹が食べ終わってからでいいよ」
ゲジ子「…いい匂いがする」トコトコ
ゴキ姉「ひゃはぁぁぁぁぁ!?」ビクゥ
ゲジ子「誰?いい匂いがするんだけど」クンクン
ゴキ姉「あわばばばばっばば…」ガクガクガク
ゲジ子「ゴキみたいな匂いする」
ゴキ妹「んぅ?このおねーちゃん誰?」
先生「こら、男にここで食事するなって言われてるでしょうが」グイ
ゲジ子「そうでした」プラーン
ゲジ子「でも匂いするだけでいない」
先生「だったら天井とかに隠れてるんじゃない?」
ゴキ姉「あ、あの…」
先生「邪魔したね、終わったらなるべく離れたほうがいいわ」
先生「この子みたいに欲求を自制できない子いるから危険よ、じゃ」トコトコ
ゴキ姉「周りのヒト達から『軍曹』とか『先生』って呼ばれてる人が助けてくれた…」
ゴキ妹「もうおなかいっぱ~い」フラフラ
ゴキ姉「じゃあすぐ食べ終わるから端っこのほうにいてね」
男「え?例のゴキ姉妹見た?」
先生「食事に来てたわよ」
男「まさかとは思いますが何もしてないですよね…?」
先生「するどころか危ない所を助けたぐらいよ私は」
男「さすが先生は人が…虫ができてるな」
先生「それよりゲジ子はなるべく会わせない方がよさそうよ」
先生「その内正体に気づいて襲うかもね」
男「そんな光景見たくねぇ…その辺は気をつけておきますわ」
ゲジ子「けぷ」
男「そこ!蝿の羽を口にくっつけたままうろつかない!」
男「たまにするゲームは悪くない」カチカチ
ゲジ子「面白い?」
男「首傾いてるぞ…やってみるか?」
ゲジ子「…」スッ トコトコ
男「あれ?やりたくなかったのか」
男「まぁしょうがないか、続きを…」
男「…」カチカチ
ヤス菜「あ、あの…」
男「おわぉ!?いつそこに!?」
ヤス菜「ゲジ子ちゃんに呼ばれて来たんですけど…」
ゲジ子「遊ぶなら一緒に」
男「なるほど、ヤス菜呼ぶから出て行ってたのか」
男「ならカマ代も呼んでみたらどうだ?」
ヤス菜「カマ代さんならさっき先生と出かけていかれましたが」
男「そっか、なら三人でやろうかー」
ゲジ子「わくわく」
男「今やってるレースをやるけど操作方法教えないといけないな」
ヤス菜「よ、よろしくお願いします」
ゲジ子「こうしてこうで動いてた」カチカチ
男「見ていただけで覚えた…だと…」
先生「悪いわね、散歩に付き合ってもらって」
カマ代「別にかまわないわよ」
先生「カマ代なだけにカマわないって?」プークスクス
カマ代「そんな馬鹿な事狙って言ってないわ!」
先生「あんたでもツッコミぐらいはするのね」ニヤニヤ
カマ代「くっ…当たり前でしょ!?」
先生「そんなならもっとあの子達と一緒にいれば面白いのに」
カマ代「…こんな性格だから嫌われそうで怖いのよ」
カマ代「知らずに傷付けてそうで…」
先生「アホね」
先生「あんたの性格ぐらいあの子達は知ってるわよ」
先生「引きこもりすぎて友達も信じられなくなったかい?」
カマ代「…」
先生「どうしても気になるならもう少し素直になったら?今みたいに」
カマ代「そうね…」
カマ代「やれる範囲で頑張ってみるわ」
先生「ん」ニッ
先生「で、なんで私には素直に話が出来るのかな?」
カマ代「どうせ脅してでも聞き出してくるでしょ、あなたなら」
先生「あら、よく分かったわね?」ニヤニヤ
カマ代「いつも思ってたけどあんたなんであの家いるのに私達狙わなかったの?」
先生「私はただの臆病な一匹の蜘蛛よ」
先生「男に優しく扱われているモノ同士を襲えますかっての」
カマ代「さすが私達の姉的存在ね」
先生「同じ所で住んでる時点で家族みたいなものよ」
カマ代「家族…か」
先生「よっし!何か食べに行かない?」
カマ代「久しぶりに甘いものでも飲みたいわ」
先生「じゃあ木の樹液でもすすりにいくかー!」
カマ代「確かあなた…肉食よね…?」
ヤス菜「え?虫の時の話…ですか?」
男「うん、どういう暮らししていたか知りたいんだ」
先生「基本、ウロウロしたり食事したりだけよね」
ヤス菜「それは…えっと…」
カマ代「あんただけだって言ってやればいいのよ」
男「じゃあカマ代は何してたんだい?」
カマ代「そうね…暇あればこの子達とおしゃべりしてたわ」
男「どういう話してた?」
ゲジ子「どの虫がおいしいかとか」
カマ代「それこそあんたばかり話してた気もしたけど…」
ヤス菜「どこ散歩したらよかったかとか…」
カマ代「絶好の餌場はどこだとか」
ゲジ子「あの虫は友達になれそうだとか」
男「そう聞いてみると野良犬とかと変わりないかもしれないな」
先生「犬とか猫は私達にとったら絶望の象徴よ」
カマ代「見つかれば絶対にさよならできるからね」
先生「そうそう、この家にはいないけど猫がたまーに通っていくのよね」
男「…虫って大変だなとしか言えないな」
ヤス菜「人間ですら怖い時ありますからね」
ゲジ子「いつでもサバイバル」
男「…まさかとは思った」
先生「そのまさかじゃなくて良かったわね」
男「だからと言って何であなたも俺の部屋にいますかね…」
先生「この子達の寝顔見に来ただけよ」
三匹「Zzz」
男「我ながらこの数週間でえらい好かれたものですよ」
先生「嫌じゃないならいいじゃない」
男「いきなり家族ができた時はどうしようかと思いましたけどね」
先生「あら、家族なんて思ってくれてたの」
男「そりゃ…ここまで一緒にいたら友達より家族ですよ」
先生「あとでちょっと付き合ってもらえるかい?」
男「どこか行くんですか?」
先生「この家だよ」
男「いいですけど…何かありましたか?」
先生「そろそろ教えてあげようと思ってね」
男「え?」
先生「気づくまで放っておいてもよかったけど」
先生「いずれ知るなら早いほうがいいでしょ」
男「もしかしてそれって…」
先生「私達が人間になった理由だよ」
先生「ここよ」
男「ここはじいちゃんの部屋だ…最近全然入ってなかったな」ガチャ
男「相変わらず何もないな」
先生「あんた、人間の私達と会う前にここで何かしたでしょ?」
男「え?いや、中に入ったりはしたけど別に何も…」
先生「本当に?」
男「………確か、引き出しを開けた」
先生「なら同じように開けてみなさい」
男「…」キィ
男「これは……折り重ねた紙?」
男「そうだ…俺は確かにこのノートを見つけて開いたんだ」
男「でもそこから何も覚えてない」
男「気がつけばここで立っていて、ノートなんて持っていなかった…」
先生「そこまで思い出せたなら原因分かるわよね?」
男「この引き出しにあったノート…ですか?」
先生「中見てみなさいよ」
男「……」カサカサ
男「『生きているモノの心』…?」
男「『私はどんな生き物にも心というものが存在すると信じている』」
男「『心があるという事は人間と同じと言える』」
男「『心を大切にする者はいずれその生き物がその者と関わりを持つだろう』」
男「…この先はあるのか分からないけど途切れているな」
先生「おそらくそれが答えよ」
先生「心を大切…つまり私達を殺生することなく生かしたあんたがその書いている通り」
先生「私達と関わりを持ったのよ」
男「それで擬人化したの…か?」
先生「それしかないと思うけど?」
男「先生はこれを先に読んでいたのですか?」
先生「いいえ?こうなった理由があると思っただけ」
先生(本当は全部見た上、仕掛けておいたんだけどね…残りは見せないけど)
先生「まぁ結局あんたの虫好きのおかげって所かな」
男「そっか」
男「でも確か望んだ結果とか言ってませんでしたっけ?」
先生「そうよ、でもそれはあんたには関係ない話」
男「教えてくれないのですか?」
先生「知らなくてもいいからねー」
?「先輩やっと見つけた!!」バァン!!
男「…誰?」
先生「さぁ?」
?「ひどい!いつもついて回ってたじゃないですか!」
?「あたしですよあーたーしー!」
男「すごく嫌な予感がするのですけど…」
先生「その予感は合ってそうよ」
?「話聞いてくださいよー!」
男「ど、どちら様で?」
?「せんぱーい!これであたしも仲間入りですよね?!」
男「そっちこそ話を聞けよ…」
先生「あんた、元のままでもちっこかったのに人間ですらそのサイズなのね」
?「小さくても機動力はいいんで問題ないですよーだ!」
男「また新たな虫っ子来ちゃった空気だな…」
先生「私より家主に挨拶しな」
?「おっと!これは失礼しました!」
?「あたしはハエトリグモってつまらない生き物です!」
男「確かにウチで時々見かけた気がするけど…」
?「先輩に色々教わったりしに来てました!」
男「でも俺は一度もこの子に関わった事がない気がするんだが…」
先生「別にそうでなくても家の中にいたらカウントされるんじゃない?」
男「でも擬人化してない虫だっていますし」
?「不思議ですねー!」
?「でも人間好きですよー、色々できるもん!!」
先生「とりあえず名前付けてあげたら?」
男「うーん……じゃあトリ美で」
トリ美「いい名前!…な気がするよ!ありがとう!」
男「うん…まぁよろしく」
トリ美「たま~にしか来ないけどよろしく!」
ゲジ子「…」キョロキョロ
男「お、どうしたゲジ子?」
ゲジ子「いい匂いがした」
トリ美「じゃじゃじゃああたしはこれで!!」ダッ
先生「そういえばこの子には狙われるんだっけ」
ミーンミンミンミーン
先生「あーうるさいわねぇ」
男「セミにうるさい言ってもねぇ」
先生「あいつら周りに遠慮なくベラベラベラベラしゃべりまくってんのよね」
男「あれしゃべってたのですか…」
先生「ぶち殺してやりたいけどヤツらすぐ飛ぶし手が出せないのよね…」
カマ代「落ちて死にかけてるヤツにトドメさせば?」
先生「そんな弱いモノいじめる趣味ないわよ」
ヤス菜「先生って思ってる以上に優しいですよね」
男「まぁうるさいのが仕事みたいだし気にする事ないと思いますよ」
「たのもー!」
男「なんだ?人が来る自体まずありえないんだがな…」テクテク
男「はいはい、どちらさまで?」ガラガラ
?「どうもー何だか自分の話をされていたので来てみたのですがー」ペラペラ
?「いやぁ、いつの間にか有名になってるとは思わずビックリですよーなんちて♪」ペラペラ
?「でもあれですねーまさかこんな姿で知らない人と会話ができるとは思いませんでしたよー」ペラペラ
男「ちょちょちょちょっと待って!!」
?「いいえ、自分は会話を楽しむためにやってきたので待ったりはしませんよー」
男「お前は誰だ!?」
?「おやおや、初対面の相手にお前とは口が悪い人ですねー」
?「いいですか?短い命をこういう事に使ってでも自分は来たわけ」ペラペラ
?「自分は危険を冒してまでこうやっておしゃべりにきているのです」ペラペラ
?「中に入れろとまでは言いません、せめてお話に付き合うぐらいはしていいと思うんですよね」ペラペラ
男「だっ、誰か!ちょっと来てくれ!?コイツの正体を教えてくれ!!」
ヤス菜「は、はい…?」テクテク
?「あれま、これはまた可愛らしいお嬢さんじゃないですかー」
ヤス菜「あの…」コソコソ クイ
男「え、どうしたのヤス菜?」
ヤス菜「このヒト、虫だと思います…」
ヤス菜「しかも外部の方ですね」
?「はっはっはー、よく分かりましたねぇ」
?「そうです、私が変な虫さんです…なんちって♪」
男「あんた何の虫だ…?」
?「とうとう正体を知る時がきましたかー自分はですねー」
?「その辺でよく色んな方とおしゃべりしているツクツクホウシってもんですわぁ」
男「なるほど、正体は分かったが迷惑なので…」
男「ヤス菜、悪いんだけどゲジ子か先生呼んできてくれ」
ヤス菜「え、でも…」
セミ「おーっと!まさか自分は食料になっちまう空気ですかい!こりゃこうしてられない!!」ダッ
ヤス菜「あ、逃げちゃった」
先生「あっはっは、そんな事があったのかい」
男「笑い事じゃないですよもぉ…」
先生「意外と地獄耳だったんだね、あのセミ」
男「しかもマシンガントークでこっちが話す隙も与えてくれませんでしたよ…」
カマ代「でもさすがに捕食者には弱かったみたいね」
ゲジ子「いい匂いした?」
男「そこまで知るかい…」
ヤス菜「結局、どっちにしてもうるさくてかなわなかったわけですね」
先生「次来たら息の根止めるから大丈夫よ」
男「どうせ短い命だから放っておいても死にますけどね…」
男「うーむ、最近みんな出かけていなくなることが多くなったな」
男「俺はどうしよう…」
ゲジ子「…」クイ
男「お?ゲジ子は出かけてなかったのか?」
ゲジ子「一緒にどこか行く」
男「お前と二人って最近なかったな」
男「よし、どこ行こうか?」
ゲジ子「男にまかせる」
男「うーん、それじゃ街中散歩でもするか!」
ゲジ子「…」コクコク
男「特に変わったものはないけど散歩だけってのもいいもんだな」
ゲジ子「♪」ピョコピョコ
男「おーおー飛び跳ねちゃってかわいいな」
ゲジ子「わたしかわいい?」
男「うん、かわいいぞ」
ゲジ子「♪」クルクルクル
男「今度は回りだした…」
男「夏休みももう後半きちまったなぁ」
男「学校始まったらどうしよう…一度実家に帰らないと…」
ゲジ子「?」
友「やぁ、男くんじゃないか」
男「げ、イヤな奴に会った」
友「いきなりひどい言いようだなぁ」
友「最近連絡もなかったから寂しかったよ~」
男「おかげで充実した生活が送れていたよ」
友「なんだとぉ!…その子誰?」
ゲジ子「誰?」
男「……知り合いだ」
友「ふーん、男くんの癖に女の子の知り合いいたんだ?」
男「いたら悪いのか、コンニャロ」
友「私は男くんの彼女だよー」
ゲジ子「?」
友「首かしげられたんだけどぉ?」
男「そりゃ理解できないだろ」
ゲジ子「友達?」
友「そうそう、クラスメートで彼女」
男「いい加減にしろ変態」
友「変態とは失礼な人だね」
男「男の癖に見た目が完全に女なのを変態と言わずどう言えと言うんだ?」
友「心も見た目も女の子だよ!!」
男「ゲジ子、行こう…」
ゲジ子「もういいの?」
友「もっとお話しよーよー?ゲジ子ちゃんだっけ?君も一緒にー」
友「あっ!帽子がぁ!?」ビョォォォ
男「何やってんだ…」
友「あーお気に入りだったのにあんな所に…」
男「あんな絶壁に近い所に落ちちゃもう取れないだろ」
ゲジ子「…」タタッ
男「ゲジ子何処行くんだ!?そっちは危ないって!」
ゲジ子「取ってくる」
男「そんな所から落ちたらただじゃすまないぞ!」
ゲジ子「大丈夫」ズルズル
男「気をつけてくれよ…さすがに虫とはいえ……あ」
友「虫?」
男「なんでもない…」
ゲジ子「もうちょっと……!?」ズルッ
男「ゲジ子!?」
ゲジ子「!!」ズブ…ブチィ!!
友「いやぁぁぁぁ!!」
男「ゲジ子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
男「はぁはぁはぁ…た、確かこの辺だったよな…」
友「あの子は…」
男「見間違いじゃなければアイツ、腕が…」
友「いたよ!ゲジ子ちゃん!!」
ゲジ子「帽子とれた」スッ
男「お前…大丈夫だったのか…?」
ゲジ子「途中で元に戻ったから平気」
男「でもお前腕がちぎれ…」
ゲジ子「これ?」ワキワキワキ
男「分離してるのに動いてる!?いやいや、どう見ても大丈夫じゃないだろそれ!?」
ゲジ子「すぐ千切れるし元に戻る」
男「え…?あ、そうかゲジって自分で切って逃げたりするんだっけ」
友「えっと…何がどうなってるか理解できないんだけど…」
男「げ!?普通にゲジ子の事言っちまった…」
ゲジ子「帽子」スッ
友「あ、ありがとうね」
友「んー…男くんの話しからして…この子っていわゆるゲジゲジ?」
男「…そうだよ、今家に住み着いてる」
友「ふーん、でも帽子とってくれたし悪い子じゃないのは分かるわ」
男(初めて他の人にバレてしまった…)
男「あのな…」
友「他にもこういう子いるの?」
男「え?いや、いるけど…」
友「会わせてよー」
男「ダメだ!ただでさえ関わり持たないようにしていたのに…」
友「ふぅん…じゃあこの事みんなに言っちゃおうかなぁ」
男「ぐっ…」
友「ねね、お友達紹介してくれる?」
ゲジ子「?」
男「ま、待て!?分かった!案内するから!?」
男「この先だ…」
友「そっか、それじゃここまででいいわ」
男「へ?見ていかないのか?」
友「人の隠してるものを無理に見たりする私じゃないですよー」
男「じゃあさっきの脅しは何だったのか…」
友「お茶目なジョークじゃなーい」
ゲジ子「家、行かないの?」
友「君の事は誰にも言わないから大丈夫だよ」
友「今度話ぐらい聞かせてよ、それでいいから~」テクテク
男(色々変なヤツだが友人だけはあるな…)
ヤス菜「カ、カマ代さん、人来たよ」
カマ代「こんな所で珍しいわね」
友「こんにちはぁ」
ヤス菜「ここ、こんにちは…」
カマ代「…」プイッ
友「この辺の人です?」
ヤス菜「は、はい…そうですけど…」
友「かわいい子ばかりじゃない…羨ましいなぁ」ブツブツ
ヤス菜「え?」
友「何でも~それでは~」テクテク
カマ代「と、それだけしか話してないけどあれ、あんたの友人でしょ?」
ヤス菜「話したの私だけだったけど…」
男「あぁごめん、間違いなくアイツだわ」
男「見た目以外人畜無害なヤツだから何も問題起こさないと思うよ」
カマ代「私達の事話したの?」
男「ちょっと事故があって話しちゃったんだ」
カマ代「別にいいけどね」
ヤス菜「良くはないと思うよ…」
先生「もしもん時ゃ狩るから大丈夫よ」ペキペキ
男「余計に騒ぎがでかくなるのでやめてください…」
カマ代「そういえばさ」
ヤス菜「どうしたのカマ代さん?」
カマ代「あの姉妹って普通に目の前には出てこないわよね?」
先生「そりゃこの家は危険でいっぱいだもの」
カマ代「あんたもそれに含まれてるんだけど?」
先生「あらひどい、一度危機を回避させてあげたんだけどなぁ」
ヤス菜「わたし、まだその子達見た事ないかも…」
ゲジ子「探してみる?」
カマ代「あんたはやめな…絶対食べるでしょ…」
ゲジ子「我慢する」ダラァ
カマ代「で、結局探す事になったわけだけど…」ピョンピョン
ヤス菜「元の姿でみんな一緒に動き回るのは久しぶりだね」シュルシュル
ゲジ子「姉妹どこ?」シャカシャカ
ヤス菜「うーん、床下に来てみたけどこの辺にはいないね」
カマ代「元々外部から来てたとか聞いた気がしたけど?」
ヤス菜「それじゃあいるかどうかははっきり分からないかな…」
先生「そこでゲジ子のおいしい匂いで判断してもらえば?」
カマ代「だから食べられるでしょ??!」
ゲジ子「男の知り合いを食べたら嫌われるから食べない」
カマ代「ホントかしら…」
ゲジ子「いない」
先生「もしかして私達がこうして集まってるからかしらね?」
ヤス菜「それならこの家自体近付かないと思うのですが…あ、何か来た」
カマ代「…目的じゃないやっばいもんが集まったようだけど…?」
ゲジ子「!!」
???「異種同士がこんな所で何やっているんだ?」
???「オレ様の餌になりに来たのならかまわないが」ズリズリ
先生「あんたは確か…『ムカデ』か」
ムカデ「この家で大きな顔してるようだがオレ様に敵うのか?」
先生「さぁ?やってみなきゃ何とも言えないわね」ゾロ…ゾロ…
ヤス菜「先生…!!」
先生「あんたらは隠れてな…すぐ終わらせるから…ねっ!!」ガッ
ムカデ「あんた、かなり大型だがオレ様の体を傷つけることはできねぇよ!!」ガチィン
先生「ちぃ!?」サッ
ムカデ「外したか…だがすぐその細い足食いちぎってやるよ!!」ズリズリ
カマ代「あの先生の攻撃が殆ど効いてないみたいね」
ヤス菜「ど、どうしよう…」
ゲジ子「一緒に戦う」シャカシャカ
カマ代「ばか!?あんたじゃ無理よ!!」
ゲジ子「やってみないと分からない」シャッ
ムカデ「あ?なんだこのチビ」
ゲジ子「がぶ」ブチッ
ムカデ「いっでぇぇぇぇぇ!?足食いちぎりやがったなぁ?!」
先生「ちょ…隠れてろって言ったでしょ!?」
ゲジ子「先生危なかった」
先生「だからってあんた…」
カマ代「まったく…しょうがないわねぇ!!」スターン ガシッ
ムカデ「む…前が見えねぇ?!」
ヤス菜「え、えぇい!!」グルグルグル
ムカデ「う、動けん…!?」ギシ
ゲジ子「がぶ」ブチッ
ムカデ「ぐあ!?てめぇらぁぁぁぁぁ!!」ウゾウゾウゾ
ヤス菜「は…離しません!!」ギュウウウ
ヤス菜「先生!何かこのヒト倒せる方法ないですか!?」
先生「倒す方法たって……」
カマ代「虫で無理なら…」
カマ代「ちょっと待ってなさい!」ピョーン
カマ代「あと先生も手伝って!」
先生「分かった、行き先は家の中かい?」
カマ代「えぇ、何かあの体を傷付けられる『道具』を探すわ!」
先生「こういう時に限って男がいないなんてね…」
カマ代「どうせ床下なんて入れないでしょ」キョロキョロ
先生「人間の物使うのは分かったけどこの体で使えそうなのあるかい?」
カマ代「小さくて鋭いものだったらいいんだけど」
カマ代「それにあの子達じゃアイツ止めてられないから早くしないと…」
先生「あの爪楊枝ってやつは?」
カマ代「長すぎて使いにくいわ」
先生「…」ジー
カマ代「何を見てるのよ?」
先生「そういえば男がすごく『切れるもの』の欠片捨ててたの思い出したわ」
ヤス菜「んんんっ…!!」ギュウウウ
ムカデ「くっ…離せぇぇぇぇ!!」グリングリン
ヤス菜「あっ!?」シュル
ゲジ子「がぶ」ブチッ
ムカデ「いてぇんだよさっきから!!」ガシィ
ゲジ子「あ…」
ムカデ「まずはテメェから食いちぎってやるよ」ガチンガチン
ヤス菜「や、やめてぇぇぇぇ!?」
ゲジ子「…」
ムカデ「大人しくなりやがったか…じゃあ頭からいかせてもらうぜぇ!!」ガバッ
先生「ふっ!!」ガッ
ムカデ「ぐ…オレ様の食事の邪魔するんじゃねぇぇぇぇ!!」
ゲジ子「やっぱり来てくれた」シャカシャカ
カマ代「あんたせめて抵抗ぐらいしなさいよね…」
ムカデ「オレ様にダメージすら与えれないテメェらに勝ち目なんて…」
先生「私さ、人間になれるようになってすごく器用になったんだわ」キラッ
ムカデ「なんだその光るものは!?」
先生「覚えておきな、これは『カッターの刃』ってヤツよ!!」シュッ
ムカデ「な――」パックリ ベシャ
先生「誰も傷付かず終わってよかったわぁ」ポイッ
ヤス菜「大丈夫、ゲジ子ちゃん?」
ゲジ子「うん、掴まれただけ」
カマ代「あんたはもうちょっと周りを見て行動しなさいよね」
ゲジ子「ごめん」
先生「まぁまぁ助かったからいいじゃないか」
ヤス菜「結局、最後まで見つからなかったね」
カマ代「よく考えたらいつも食事する所で待ってたらよかったんじゃないの?」
ヤス菜「あ…」
先生「はっはっは、ちょっとしたドキドキな体験ができただけ十分じゃないかな」
ゲジ子「中に戻ろう」
ゴキ姉「ちょっと遅くなっちゃったね」
ゴキ妹「おなかすいたよー」キュルル
ゴキ姉「ごめんね、早くおいしいの食べようね」
ゴキ妹「あ、誰か寝てるよ?」
ゴキ姉「え?…ひぃっ!?」
ゴキ姉「確かこのヒトってすごく危ないヒトだったはずだけど…」
ゴキ妹「どうして頭がパックリしちゃってるの?」
ゴキ姉「誰かが倒しちゃったのかな…」
ゴキ妹「それよりごはーん!!」
ゴキ姉「はいはい(誰かが食べた痕でもないしここで何があったんだろう…)」
ハサミ虫とかも敵なんかな
男「ふぁ~…朝か?」
トリ美「そうだよ!おはよう!」
男「…まだ夢の中か」パタリ
トリ美「夢じゃないよー、みんなおねむしてるでしょ?」
男「それ以前にいつからここに?」ムク
トリ美「ちょっと前!みんなの寝顔見て和んでた!」
男「食われても知らんぞ…」
トリ美「ほっほっほ、瞬発力と目には自信があるの…さぁ!?」グイッ
ゲジ子「捕まえたぞ…おいしいやつ…むにゃ」グイグイ
男「ゲジ子の食い意地には瞬発力は関係ないらしいな…」
>>161 あれは結構サイズ小さいしこのメンバー捕食するほど力がない気がする
個人的には結構好きな部類に入るけどね
田舎のムカデはそんなにデカいのか?
>>164 トビズムカデってのが60~200㍉ほどあって結構でかくて見ただけで泣きそうになるよ
男「遊びに来たのか」
トリ美「うん!いつ来れなくなるか分からないって先輩言ってたし!」
男「確かにな…いつこの現象が終わるか分からないもんな」
トリ美「だから楽しい思い出ほしいのです!」
トリ美「ここのみんなと遊びたい!」
男「ポジティブなのは結構だがそのままだとゲジ子に食われると思うんだが…」
トリ美「おっと!どうしまひょ…」
男「香水でも撒いてみるか?少しは誤魔化せると思うが」
トリ美「何それおいしいの!?」
男「食いもんじゃねーよ…やべぇこの子話してたら疲れるタイプだ…」
ゲジ子「…」
トリ美「やぁ、ごごごごご機嫌いかが?!」
ゲジ子「お腹すいた」
トリ美「そそそれはよかった!あひゃはは!!」
男「一応効果はあるみたいでよかった」
男「今日はクソ暑いことだし水遊びでもするか!」
カマ代「水でどう遊ぶっていうのよ?」
男「まぁ川まで行こう、そこで説明するよ」
ヤス菜「お魚釣りしてもいいですか…?」
男「暇あればしょっちゅう行ってるみたいだけどそんなに気に入ったのか」
トリ美「このびーちぼーるとやらでどう遊ぶの?!」
男「それを誰かに上にポンって飛ばしてみんなで落とさないようにするんだ」
トリ美「じゃあヤス菜っち!とりゃ!!」ポーン
ヤス菜「わわっ…ゲジ子ちゃん!」ポーン
ゲジ子「…カマ代」ポーン
カマ代「ほら」ポーン
男「それを相手のゴールに…シュゥゥゥゥゥゥッ!!」バシィ!!
トリ美「うわ!?あんなの取れないよー」
男「ははは、次から落とした子は罰ゲームするからなー」
男「ふぅ、ちょっと休憩」
先生「おつかれさん」
先生「水で遊ぶって川に足つけてるだけじゃん」
男「この遊びって結構ハードでその内転ぶ子出ると思うんですよ」
先生「つまり最終的には水浴びになるわけかい」
男「そういうことですね」♪~
男「電話か…げ、おふくろだ」
男「ちょっと離れるのであの子達見ててください」ピッ
先生「はいはい」
男「何、おふくろ?え?ちゃんとやってるよ…ぅん…」
トリ美「カマよん強すぎ~、うは!?」バシャーン
カマ代「あんたは素早いだけで一撃が軽いのよ」
トリ美「にゃにおー!!」
ゲジ子「小さくて可愛い」ガシッ
トリ美「うひょぉあぁぁぁぁ!?」ジタバタ
ヤス菜「な、何でそんな絶叫を…」
先生(そりゃ捕食者に捕獲されたら叫びたくもなるさ)
男「……!?………!!」
先生(男がえらい怒鳴っているみたいだけど何があったのかねぇ?)
先生(しかし遠距離で会話できる機械って便利で良さそうだ)
ゲジ子「…」
ヤス菜「ゲジ子ちゃんどうしたの?」
ゲジ子「男が出てこない」ショボン
ヤス菜「帰ってきてからずっと部屋にいるね、どうしたんだろう?」
ゲジ子「悪い事した?」
ヤス菜「少なくともわたし達は何もしてないと思うけど…」
ゲジ子「じゃあどうして?」
ゲジ子「聞いてみる」
ヤス菜「わわ、ダメだって…」
ヤス菜「聞きたい気持ちは分かるけどもう少し待とう?」
男「くそ…こんな事になるなんて…」
男「みんなにどう言えばいいんだ…」
男「この生活がもっと続くと思っていたのに…」
男「ここがなくなっちまうなんて言える筈ないだろ…」
男「ちくしょう!」バンッ
男「っと、やば…誰かに気づかれちまう」
男「ずっと篭ってても怪しまれるだけだし出るか」スッ
男「早いうちに話しておかないとな…」ガチャ バタン
ゴキ姉「…」カサ
ゴキ妹「おねーちゃん?」カサカサ
カマ代「…」ペラッ
コンコン
カマ代「誰よ?入るなら入ってくれば?」
ゴキ姉「突然でごめんなさい…」ガチャ
カマ代「あんたよく二匹で食事に来てたゴキの片割れじゃない」
ゴキ姉「少しお話したい事がありまして…」
カマ代「何の話か知らないけど何で私なのよ?」
ゴキ姉「他の方は怖くて…」
カマ代「ヤス菜辺りなら無害のはずだけど…まぁ見つけにくいか」
カマ代「仕方なく聞いてあげるわ、それで何を話したいのよ?」
男「結局、また逃げてきてしまったな」
男「一人になったって解決策なんて見つからないってのに…」
男「…いずれこうなる事は分かってたのに」
カマ代「あんたも大概暇ね」
男「カマ代か…どうしたんだこんな所で」
カマ代「ちょっとある事を耳にしてね」
男「ある事?」
カマ代「いつも食事に来てたゴキに話聞いたわ」
カマ代「今住んでる家なくなるんですって?」
男「!?」
男「は、はは…そんな事あるはずないだろう」
男「俺が適当言ってたの聞かれたかな」
カマ代「適当言ってる人が苦い顔したり、壁殴ったりするわけ?」
男「!!」
カマ代「あんた、誤魔化すの下手すぎ」
男「…ごめん」
カマ代「とりあえず事実なんだ?」
男「本当だよ…なるべく早めに話すつもりだった…」
カマ代「じゃあそこのみんなの前で話してみなさいよ」
男「いつの間に…」
先生「カマ代が呼ぶから何事かと思えばそういうことかい」
ヤス菜「それで一人悩んでいたんですね…」
ゲジ子「嫌いになったかと思った」
男「なるわけないだろ」
男「みんな、ごめん…全部話すよ」
男「昨日、俺の親から連絡があってな」
男「あの家は取り壊す事になった」
先生「理由は?」
男「あの家は元々じいちゃんの家だったんだが死んじゃったんだよね」
男「それを俺が取り壊すまで自由に使わせてもらう予定だったんだ」
カマ代「で、その予定が早々やってきたと?」
男「うん…」
ヤス菜「そんな…じゃあすぐ出ないといけないのですか?」
男「今月の末…あと七日ほどかな」
男「それまでにみんな出ておかないといけないんだ」
先生「つまりそれまでに次の住処を見つけておけという事ね」
男「はい、それで俺達はお別れになりますね」
男「俺の本来の家は街中なのでみんな連れて行けないし」
ゲジ子「いやだ」
男「え、ゲジ子…?」
ゲジ子「わたしは絶対男といる」ダッ
男「おい!?」
先生「追いかけて何か言える言葉はある?」
男「…」
先生「しばらくそっとしておいてあげなさい」
男「そうですね…」
ヤス菜「こうなってしまったのは仕方ないと思います」
ヤス菜「わたし達もどうするか考えないと…」
カマ代「ヤス菜、一緒に来て」
先生「あら、みんな離れて行ったね」
先生「残り時間があってもなるべく早く出たほうがいいんでしょ?」
男「そうですね、長くいるだけ辛くなってくるだろうし」
男「でも、俺は最後の日まであの家にいるつもりです」
男「みんな以外にじいちゃんとの思い出もありますしね」
先生「そ」
先生「んじゃ今から言っておこうかね」
先生「短い間だったけど楽しかったよ、ありがとう」
男「先生…」
先生「ほら!しけた顔してないで帰るよ!!」バンバン
男「いっ!?ちょ…叩くか押すかどっちかにしてくださいよ…」
男「結局、ゲジ子は部屋に篭ったまま出てこないか…」
ヤス菜「わたし達の返事にも答えてくれませんでした…」
カマ代「あの子は特にあんたについて回ってたからね」
男「…」
ヤス菜「あの…わたしとカマ代さんはおそらくゲジ子ちゃんより先に出て行きます」
ヤス菜「なのであの子がもし最後の日までいるのならそれまでよろしくお願いします…」
男「もちろんだよ、それは約束するよ」
カマ代「どうなったとしても見捨てるなんて許さないから」
男「分かってるよ、やっぱりカマ代もゲジ子の大切な友達なんだな」
カマ代「あ、当たり前でしょ!あの子がいたからゴニョゴニョ…」
ゴキ姉「あの、お久しぶりです」
男「君達か、元気でやってるみたいだね」
ゴキ妹「いつもげんきだよー」
ゴキ姉「ごめんなさい…家の事聞いて皆さんに話したの私なんです」
男「たまたま通り道で聞かれちゃってたかぁ…」
男「それで何でわざわざ食事時間以外でここへ?」
ゴキ姉「あのですね…」
ゴキ妹「お別れ言いにきたの」
男「…」
ゴキ姉「食事を提供していただいていたので挨拶は必要かと思いまして」
男「あまり関われなかったけど君達も家族みたいなものだし気にしないで」
男「それでこれからどうするんだい?」
ゴキ姉「私達は山へ出てみようかと思います」
ゴキ妹「同じお友達とかたくさんいるんだって」
男「いいんじゃないかな、食べるものも困らなさそうだし仲間がいるなら危険もそこまではないかな」
ゴキ妹「でもここで食べたものはすごくおいしかったよ!」
ゴキ姉「短い間でしたがすごく助かりました、ありがとうございました」
男「うん、これからも元気でね」
ゴキ姉「それでは行きますね、さようなら」
ゴキ妹「おにいちゃん、ばいば~い!」
先生「ゲジ子、何も言わないでいいから聞きなさい」
ゲジ子「…」
先生「そのまま篭ったままでいいの?」
先生「もし離れなくてもあんたの方が先にいなくなるのは知ってるわよね?」
先生「一緒にいたいなら隠れてないで最後まで傍にいればいいじゃない」
先生「それがあんたが『望んだ事』でしょ?」
先生「私は今日ここを離れるからもう何も言ってあげられない」
先生「あんたはあんたらしく最後まで過ごしなさいよ」
先生「それだけ、じゃあね」テクテクテク…
ゲジ子「…」
男「あれ?おでかけですか?」
先生「いいや、出て行くのさ」
男「もうですか…早いんですね」
先生「別れって分かった途端、しょぼくれた顔してんじゃないよ」
先生「いずれこうなるって分かってたでしょうに」
男「ですが…」
先生「まったく、あんたはこれからが心配になって仕方ないわね」
先生「私達がいなくなったらちゃんと自分の生活に戻るんだよ」
先生「いつまでもそんな調子だったら許さないからね!」
男「先生…」
トリ美「先輩!迎えに来ましたよ!」
先生「私達はまた『戦場』にでも行ってくるよ」
男「たまには弱い子を助けてあげてくださいよ?」
先生「そだね」ニッ
トリ美「短かったけど思い出をありがとね!」
男「あぁ、こっちだって楽しい思い出できてよかったよ」
先生「そんじゃあとはよろしくね?もういらないからこれあげるわ」ポン
男「タバコなんていらねぇ…今まで色々ありがとう」
先生「はいはい、それじゃ頑張りなさいよ~」フリフリ
トリ美「さらばなのだ!」ブンブン
――私はもっと好かれたかった――
「この家に住んでいて邪魔なモノや食べ物となるモノを容赦なく狩るため嫌われる存在だった」
「まぁ、じゃれていたのもあると認めよう…うん」
「でも、そうしてる内に一人の人間を目で追うようになった」
「私達のような虫と呼ばれる存在を生かし続けていた」
「私にとっては不思議な感覚だった」
「あちらにとって利点も何もない虫達を生かすこの人間は変わっている」
「私もこんな感じになれたら嫌われたりしないだろうか?」
「そういえば最近よく見る子が何匹かいるな」
「もし、狩ることなく出会えるのならその子達と仲良くなりたいかな――」
ヤス菜「先生出て行っちゃったんだね…」
カマ代「以外にあっさりしてたわね」
男「あのヒトには色々助けられたんだよね」
カマ代「今なら言えるけど私も話聞いてもらって感謝してるわ」
男「へぇ、どんな事?」
カマ代「あ、あんたなんかに教えるわけないでしょ!」
男「何でそこで教えてくれないんだよ…」
ヤス菜「ま、まぁまぁ…誰にでも知られたくない事があるんですよ…」
カマ代「やっとこれで邪魔者がいなくなったわけ…よね…」ポロリ
男(強がり言ってるけど先生の事随分と気に入ってたんだな)
男「カマ代?入るよ」キィ
カマ代「えぇ、適当に座りなさいよ」
男「それで呼んだのはどういう用件で?」
カマ代「あんたのおじいさんってどういう人だったの?」
男「へ?」
カマ代「本探してたらこんなのが出てきたのよ」ペラ
男「あ、俺とじいちゃんが写ってる写真だ」
男「でもなんでじいちゃんの事を?」
カマ代「先生から聞いたんだけど、不思議な事起きだしたのその人の私物見てからなんでしょ?」
男「そうだけど…」
男「俺が言うのもなんだけど変な人だったよ」
男「普通の人が考える事とまったく違ったんだよね」
カマ代「例のノートもそういうのだったの?」
男「分からない…でも、あの人の考えは決して間違ってはいなかったんだ」
男「大分発想が変だっただけどね」
カマ代「そのおかげで私達がこうしていられるなら感謝したいところよ」
男「そうだね」
カマ代「も、もちろんあんたにも感謝してるわ…」
カマ代「それが言いたかったのよ、もう話す事もなさそうだから」
カマ代「明日、ここを去るわ」
男「カマ代もついに出て行くのか」
カマ代「…寂しい?」
男「当たり前だよ」
男「いつものツンツンした口調が聞けなくなると寂しくなる」
カマ代「…てよ」
男「え?」
カマ代「そこは寂しくないって言ってよ!」
カマ代「そうじゃないと…まだここにいたいって思っちゃうじゃない…」
カマ代「本当は…名前くれたのも…図書館連れて行ってくれたのも…すごく嬉しかったんだ…」グスグス
男「うん、分かってたよ」ポンポン
ヤス菜「本当に今日出て行くの?」
カマ代「えぇ、たまには遊びに来なさいよ」
ヤス菜「う、うん…」
カマ代「…それにあんたもね」
ゲジ子「!!」コソーリ
ヤス菜「男さんには何も言わないでいいの…?」
カマ代「昨日散々言ったからそれでいいのよ」
カマ代「それじゃまた」テクテク
ゲジ子「またね」フリフリ
男(最後ぐらいこっそり見ててもいいだろ?元気でな、カマ代)
――もっと自分の相手をしてほしかった――
「いつも同じ場所でぼんやりとしている毎日」
「時々、あの子達が遊びに来てくれたけど自分で何かしようとは思わなかった」
「もっているのは無駄に覚えた知識だけ」
「この知識で誰かの役に立てないかとも思った」
「でも自分は嫌なやつなのできっと誰も相手してくれない」
「そんな自分に一言だけど話してくる人間がいた」
「『元気か』とか『暇なのか』とかそれだけだけど少し興味がわいた」
「もしこちらが話せるのなら話し相手になってほしい」
「あの子達とも一緒に楽しく――」
ヤス菜「何だか…この家が広くなった気がします…」
男「そうだなぁ…」
男「ゲジ子はどう?」
ヤス菜「カマ代さんが出ていく時は少し顔を出していましたよ」
男「さすが親友だなぁ、ちゃんと挨拶はするんだな」
ヤス菜「きつい話し方ですけど賢くて頼りになる大親友ですから」
男「そっか、最初引きこもっててこの子大丈夫かって思ってたんだがな」
ヤス菜「ふふ、いたら怒鳴られてますよ」
男「ははは、違いない」
ゲジ子「…」
男「お?やっと出てきたか」
ヤス菜「一緒にお話しよ?」
ゲジ子「隠れててごめん」
男「ん、仕方ないさ」
ヤス菜「昔から隠れるの上手だったよね、すごく足速いし」
ゲジ子「カマ代にも見つからなかった」
男「胴体細いから見つけにくいんだよなー」
ゲジ子「でもジャンプは負ける」
男「そりゃ足の造りが違うし」
ヤス菜「わたしなんか体が柔らかいぐらいしかいいところない…ぐすん」
男「で、何で寝るというのに俺は鋏まれているんだ?」
ゲジ子「いつも寝る時はこうしてた」
ヤス菜「わ、わたしはゲジ子ちゃんが安心するって言ってたから…」
男「まぁ確かに俺がいるから外敵は寄って来ないわな…」
ヤス菜「そそそう言う意味じゃないと思いますけど…」
男「あれ?そう?うわ恥ずかし…」モゾモゾ
ゲジ子「顔出して」モゾモゾ
男「お、おい!密着するなって…」
ヤス菜「わ、わたしも…」モゾモゾ
男「ちょ!?ヤス菜まで絡み付いてこないでくれよぉ…」
男「ふぅ…少し片付いてきたか…」
男「必要なもの以外リサイクルショップとかで売るしかないかな」
ヤス菜「男さん?」
男「うん?どうしたの?」
ヤス菜「あの…わたしも……」
男「出て行くのか」
ヤス菜「はい…」
男「ゲジ子にはちゃんと挨拶したかい?」
ヤス菜「はい、でもまたすぐ会うと思いますけどね」
ヤス菜「山で一緒に暮らす約束しましたから」
男「俺さ…君達のために何かできたかな?」
ヤス菜「…もう十分なくらい」
ヤス菜「皆さん、何も言わなくても男さんにはすごく感謝していますよ」
ヤス菜「も、もちろんわたしだって…ぐす…」
男「そうか…色々やって遊んだけど楽しかった?」
ヤス菜「はいぃ…絶対忘れる事…ない…です…」
男「そう言ってもらえたら頑張って盛り上げたかいがあったよ」
ヤス菜「今まで…本当に…あ…ありがとう…」グッ
男「皆と仲良く暮らすんだよ?」グッ
ヤス菜「はい…そちらこそ…お元気で…」トコトコ
――わたしは目いっぱい遊びたかった――
「気が弱くていつも影からそれを眺めているだけだった」
「人間の子供かな?楽しそうに遊んでいるのをこうして見ていた」
「わたしは人間じゃないから一緒に遊べない」
「お友達はいるけどおしゃべりするぐらいしかできない」
「もし、人間になる事ができるとしたら…」
「陽光の下でやった事のない遊びをしながら楽しく遊んでみたい」
「もちろんお友達と一緒にね」
「この家に住んでいる人はどんな遊びを知っているのかな?」
「話せるなら教えてほしいなぁ――」
男「とうとうお前と二人だけになっちまったな」
ゲジ子「うん」
男「何かやりたい事あるか?」
ゲジ子「…」
ゲジ子「一緒にいたい」ピト
男「そういえば最初もそう言ってたっけ?」
ゲジ子「言った」
ゲジ子「カマ代に聞いた」
男「何を?」
ゲジ子「わたし達が不快害虫って呼ばれている事」
男「確かにそうだが不快害虫ってのは基本人には無害なんだよな」
ゲジ子「でも嫌われてる」
男「そりゃ否定できんが…」
ゲジ子「例え不快と言われても…」
ゲジ子「わたしは男の傍にいたい」
男「…」
ゲジ子「…」ギュ
男「…これは告白なのか?」
ゲジ子「?」
男「そこで首傾げんなよ!?めっちゃ空気ぶち壊しなんだけど!!」
男「そういう感情は持ち合わせてないのかな」
男「いや、そういうものかもしれないな…」
ゲジ子「?」
男「ごめんな、変なこと言った」
男「傍にいたい、それだけで十分だよな」ナデナデ
ゲジ子「♪」
男「また散歩するか?」
ゲジ子「するする」ピョン
男「常に無表情だがすごく喜んでるの丸分かりだなぁ」
ゲジ子「早くいこ」クイクイ
男「川だな」
ゲジ子「ここで色々した」
男「釣り、動物探し、水遊びとかな」
ゲジ子「楽しかった」
男「トリ美なんか後ろから掴まれて泣きそうだったぞ」
ゲジ子「怖がらせちゃった」
男「今なら言えるけど食われると思ってたからだと思うぞ」
ゲジ子「先生のお友達は食べない」
男「お前でもその辺はちゃんと区別してたのか」
ゲジ子「おいしそうな匂いはしてたけど我慢した」タラー
男「商店街まで来たか」
ゲジ子「買い物した」
男「最初の頃はどうなる事かと思ってたがちゃんとしてくれてたな」
ゲジ子「先生とカマ代が活躍した」
男「お前は何してたんだ?」
ゲジ子「いるもの取ってきてた」
男「自慢の足で素早くってか?」
ゲジ子「カート?っていうのでビューン」
男「完全に遊んでるじゃねーか…」
ゲジ子「面白かった」
男「そういえばあいつとも会ったっけか」
ゲジ子「男の友達?」
男「そうそう、男の癖に女になりきってんだよ」
ゲジ子「オスがメス?」
男「体はオス、心はメスって感じかな」
ゲジ子「変なの」
男「そう、あいつは変なヤツだ」
ゲジ子「でももうちょっとお話したかった」
男「俺以外で人間と関わったのあいつぐらいだったしなー」
ゲジ子「…」
男「帰宅しましたよっと…結構歩いたなぁ」
男「飯でも食うかな」
ゲジ子「手伝う」トコトコ
男「お、さんきゅ」
男「ホント、お前は働き者だなぁ」
ゲジ子「褒めてくれた?」
男「うんうん、えらいぞー」ナデナデ
ゲジ子「♪」
男「今日はゲジ子も一緒に食うか?口に合うか分からないけどな」
ゲジ子「食べる」
男「あ~いい風吹いてる~」カラカラ
ゲジ子「けぷ」
男「初めての人間食はどうだった?」
ゲジ子「おいしかった」
男「そりゃよかった、食おうと思えば食えたんだな」
男「もうちょっと早く気づくべきだったよ」
ゲジ子「みんなで食べたかった」
男「そうだな…食卓囲んでみんなでおかず取り合いしたりしてな」
ゲジ子「…」ポロ
男「ゲジ子、お前…」
ゲジ子「…」グシグシ
ゲジ子「水が…止まらない」ポロポロ
男「そりゃ涙ってんだよ」
男「悲しい時や寂しい時、嬉しい時に自然と出てくるもんだ」
ゲジ子「じゃあこれは…寂しい時?」
男「そうだな、今は好きなだけ流せばいいさ」
ゲジ子「…」ポロポロ
男「泣き止むまで俺が傍にいてやるから」ポン
ゲジ子「!」ギュー
男(ゲジ子といられるのはいつまでだろうな…)
―――
ゲジ子「男、どこ?」テコテコ
先生「男ならさっき慌てて買い物に行ったよ」
先生「なんでも夜に遊ぶためのもの買いに行くとか何とか」
ゲジ子「…」ショボーン
先生「あんたホント男が好きねぇ」
ゲジ子「好きって男は食べ物じゃないよ」
先生「ありゃ?知らないのか」
先生「そういうのも好きって言うけど相手の事に好意を持った場合にも言うんだよ」
ゲジ子「?」
先生「あんたの場合男の傍にいたいって思ってるでしょ?」
ゲジ子「うん」
先生「それこそが『好き』なのさ」
先生「つがいにはなれないけど好きになるのは自分の自由さ」
ゲジ子「好き…」
先生「いられる限り好きな人の傍にいるといいよ」
先生「その内自分で好きって言えればいいんだけどね」
ゲジ子「言えばいいの?」
先生「男が困っちゃうからなるべく言わない方がいいかもねー」
ゲジ子「どっち?」
―――
カマ代「あんたって男にベッタリよね?」
ゲジ子「傍にいたいから」
カマ代「まぁそりゃいいけど…」
カマ代「でもそうだと別れる時に辛くなるわよ」
ゲジ子「ずっと一緒」
カマ代「あのさ、もしいれたとしてもあんたが先にいなくなるのは知ってるわよね?」
ゲジ子「…」
カマ代「人間と違って虫の寿命は数年程度」
カマ代「目の前であんた死んだら男はどう思うわけ?」
ゲジ子「…」
カマ代「別にさ、傍にいるなって言ってるわけじゃないわ」
カマ代「ただあんたが選択肢は二つしかないのよ」
カマ代「幸せの中で消えるか、自然に帰って相手の幸せを祈るか」
カマ代「いつ別れが来るか分からないわけだしそれだけ考えておいて」
ゲジ子「分かった」グッ
カマ代「さて、私は先生と出かけないといけないから行くわ」
ゲジ子「一緒に遊ぼうと思ってたのに」
カマ代「男と遊びなさいよ、ゲームってのしてるみたいだから一緒にできるんじゃない?じゃあ」
ゲジ子「うん、いってらっしゃい――」
男「Zzz」
ゲジ子「…」ムクリ
ゲジ子「もう十分」
ゲジ子「ずっと男の傍にいたかった」
ゲジ子「でももうお別れ」
ゲジ子「先生が教えてくれた」
ゲジ子「ずっと傍にいたいって思う人は好きな人」
ゲジ子「ありがとう好きな人」ナデナデ
ゲジ子「寂しくても泣かないで」
ゲジ子「バイバイ…」トボトボ
ゲジ子「…」トボトボ
男「ゲジ子!!」ダッ
ゲジ子「…」ピタ
男「俺に気づかれず出ていこうなんて卑怯じゃないか…」
男「出て行くのは止める事はできないけど…」
男「俺は!お前の事!忘れないから!!」
ゲジ子「!」
男「俺なんかを好きでいてくれてありがとうな!!」
ゲジ子「!!」ポロポロポロ
男「俺もお前は好きだった!!」
男「無表情で、でも感情豊かで、いい子で…」
男「そんなお前の事…絶対忘れない!!」
男「この不思議な日常を忘れるものかぁっ!!」
男「これからも一生懸命生きるから!お前も元気で生きていけよぉ!!」
ゲジ子「うん…うん…」
男「絶対だぞ?!いつも願ってるからなぁっ!!」
ゲジ子「ばいばい…」フリフリ
パァァ……
男「ばいばい…ゲジ子…」
シャカシャカ
――あの人の傍にいたい――
「人間には嫌われていたわたし」
「表に出るのが苦手だった」
「いつも暗い場所で過ごしていた」
「今日は珍しく明るい所へ出てみた」
「そこには大きいナニカがいた」
「見上げるとそれは人間だった」
「人間はわたしを見ると少しビックリして」
「『どこから入ってきたんだお前は』と声をかけてきた」
「でも、その時のわたしには何を言っているか分からなかった」
「影へ逃げようとするわたしに笑顔を見せて」
「『これからここで暮らすんだ、よろしくな』と、一言言った」
「言葉は分からなかったけどこの人は安心できると思った」
「それからその人間の後を追うようになった」
「こっちの存在に気づいても決して追い出したりしない」
「いつの間にか追うだけでなく傍にいたいと思うようになった」
「どうか気づいてください」
「わたしはあなたの傍にいたいという事を…」
「そして知ってください」
「わたし達にもあなたと同じモノを持っているという事に――」
ごぶたまですか?
ガシャーン バキバキバキ
男「…」
友「この家なくなっちゃうんだね」
男「あぁ、もう必要がなくなっちゃったしな」
友「おじいさんが住んでいたんだっけ?」
男「そう、どんなものにも『心』があるって信じていた変わった人が…な」
友「ふぅん、君はどうなの?」
男「俺もあるって思うよ」
男「実際、虫に『心』があったわけだし」
友「その心のあるお友達はあれからどうなったの?」
>>223 違うっす
男「…と、いうわけでみんな自然に帰っていったんだよ」
友「そっかー…」
男「あれって本当に現実だったのかな…」
友「君の記憶にあるってことはきっと夢なんかじゃないよ」
友「確かにゲジ子ちゃん達はいた」
友「それでいいじゃない」
男「そうだな…」
友「でも残念だな、他の子たちも見たかったんだけどなぁ」
男「ゲジ子の他二匹は見たんじゃないのか?あいつらお前の事話してたぞ」
友「全部の子見たかったのー!」
友「ところでそのノート何?」
男「この家に残されていたものさ」
男「これにさっき言った『心』の事が書かれていたんだよ」
友「おじいさんが書いたの?」
男「本人もういないけど、多分ね」
男「心を大切にしたら関わりを持てるだろう…だってさ」
友「もしかしてそれが今回の?」
男「だと思う…真相は闇の中だけどね」
友「おじいさんは人間以外と話でもしたかったのかしら?」
男「そうとは限らないけど生き物には優しい人だったからね」
男「…」スッ シュボッ
友「君ってタバコなんて吸うんだったっけ?ふりょ~だぁ~」
男「あるヒトが吸っていたのをもらったんだ、ちょっと吸ってみたくなった」スゥー
男「げほっ!ぐほっ!きっついぞこれ…」
友「慣れない人はそんなものじゃない?」
男「先生も虫の癖によくこんなもん吸ってたもんだ…」スゥ…フゥ- ポロ…
男「あー煙が目にしみるし最悪だよ…」ポロポロ…
友「…」
男「ちくしょう…苦しいし…目が痛いし…」
男「どうしてこうなったんだよ、もぉ…」
男「今頃何してるかな、あいつら」グシグシ
友「山で楽しくおしゃべりでもしてるんじゃない?」
男「だといいけどな…」
友「ぎゃっ!?クモ!!」
男「クモぐらいで大げさな…」ヒョイ
友「はは早くどこかやってよぉ…」
男「はいはい…お前も災難だったな」スッ ヒョコヒョコ
男(これからも俺の虫好きは変わらないだろう)
男(大人になって結婚して、子供ができて大きくなった時ノートと『これ』を見せよう)
男(そして教えてあげるんだ、虫にも人間と同じ心があるんだよって――)
時は流れ――
少年「話に聞いた場所ってここだよね…?」
少年「草だらけで何もないや」
少年「えっと…これこれ」ゴソゴソ
少年「ここに昔あった事がこの日記に書かれてるって言ってたよね?」ペラペラ
少年「…」
少年「確かにこの場所で合ってるみたい」
少年「目印って言うのがここの木に刻まれてるしね」
少年「ホントにここで虫と生活してたんだ…」
少年「ボクも一緒に遊びたかったなぁ…」
少年「でもこれだけ自然いっぱいだったら昆虫パラダイスじゃん!」
少年「えへへ、いっぱい虫見つけてやるんだから!」
『お友達ならいっぱいいるよ』
少年「ん?誰かいる?」
サァァァァァ…
少年「わぁ…夏なのに風が気持ちいいなぁ」
少年「……誰もいないね、気のせいかな?」
少年「もっと奥行ってみようかな」
少年「虫さん虫さん出ておいで~♪」
ミーンミンミンミーン…
少年「こんな所に綺麗な川あったんだなぁ」
少年「よいしょっと」トサッ
シャカシャカ
少年「あ、ゲジだーおいでー」スッ ヒョイ
少年「あは、ホントに乗っかってきたかわいいな」
『優しい子大好き』
少年「うん?何か聞こえたような…」
少年「まいっかーそれじゃあお帰りー」スッ シャカシャカ
『もうちょっと一緒にいたかった、残念』
少年「んん?やっぱり何か聞こえた気がしたんだけどなぁ?」
少年「やっぱりここは虫天国でしたっ!!」
少年「カブト・クワガタもそうだけど珍しいのがいっぱいだ」
少年「このヤスデとか町じゃ絶対見かけないもんなぁ」
『ごめんね、恥ずかしくてこういう所にしかいないの』
少年「やっぱり聞こえる…誰なの?」
少年「…」
カサカサ
少年「うわぁ!?いきなりゴキ出てきてびっくりしたぁ…」
少年「こういうところで見たのははじめてかもなぁ」
少年「声は気になるけどもうちょっと奥行ってみようかな」トコトコ
少年「わ、小さな洞窟みーつけた♪」
少年「こういうジメジメした所にはよく何かがいるんだよね」
少年「あ、カマドウマ」
『人間ってこんな所まで来て暇よねぇ』
少年「まただ…」
少年「もしかしてこの子がしゃべってるのかな?」
少年「だって、虫見つけた時にばっかり聞こえるし…」
少年「怖くはないけど何だか不思議ー」
少年「もしかしてこれ持ってるせいかな?」ゴソゴソ スッ
少年「帰ってから聞いてみよっと」
少年「ふぅ、結構歩いたなぁ」
少年「やっぱり何も分からなかったや」
少年「もっと声が聞こえたら何か分かったかもしれないけど」
少年「でももう時間がないのが残念だなぁ…早く戻らなきゃ」
少年「あ、またゲジだ」
少年「人懐こい虫っているのかなぁ?」
少年「でもごめんね、もう行かないといけないんだ」
少年「また来るからね、ばいばーい」タタタ
シャカシャカ
『また会おうね』パァァ…
おしまい
これ見て少しでも不快害虫が好きになってくれるといいなと思って立てた。
最後まで見てくれた人に感謝を。
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