恭介「………」理樹「どうしたの?」 (18)
朝
恭介「おはよう、新しい朝の始まりだっ!」
恭介(俺の前にはいつもと変わらないメンバーが並んでいる…理樹、真人、謙吾、そして鈴だ)
理樹「朝からテンション高いね…」
真人「そりゃ、アレだ今日は何と言っても俺達が2年、奴が3年で初めての授業だからな」
謙吾「といっても半日授業で最初の内は自己紹介やらで時間は過ぎるだろうがな」
理樹「というか謙吾2年になっても練習着のままなんだね…」
謙吾「当たり前だ、前にも言ったがあっち系に見られるのは困るからな」
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恭介(こいつらは実は俺がそうなるように仕向けたのは勿論知らない)
真人「へっ、俺達が居ないほうが鈴の人見知りも直るってもんだぜ」
鈴「人見知りなんかしてないわ!」
謙吾「じゃあお前は俺達以外に友達と呼べる奴がいるのか?」
鈴「………五十六(イソロク)さんだ」
真人「猫じゃねーかっ!」
恭介「そろそろ時間だな、放課後にまた会おう」
理樹「そうだね…それじゃ行こうか」
中庭
トコトコ
恭介「おっ?」
恭介(教室へ向かう途中で妙な人影をあり得ない所から見つけた)
ガサッ
恭介「……」ソロォ
「誰かな?」
恭介「うひっ!……驚かすなよ」
「はっはっはっ。いやすまない、だが勝手に私のテラスハウスに入る人間を放っておけなくてね」
恭介「いや待て、ここはお前の領地じゃないだろ?それに授業はどうした…」
「一つ目の質問は私がそう決めたからだ、二つ目は出なくていいんだよ」
恭介「出なくていいだと?そりゃまた自由人だな」
恭介(全国テストで一桁を取った生徒がいたと聞いたがまさかな…)
「私はあのコンクリートの塊の中でノートを取るのが堪らなく窮屈に感じていてね、わざわざ意味の無い事でストレスを感じたくないんだよ」
恭介「辛抱が足りないな。まあお前みたいな奴が言うとぐうの音も出ないが…それにしても普通年上には敬意を払うもんだぜ」
「おっと、これは失礼した。しかし私は店の客じゃないんだ、名前も名乗らぬ人間に払う物はないよ」
恭介「詭弁だな。まあいい俺の名は棗だ」
「うむ、改めてよろしく恭介氏」
恭介「なんだよ知ってるじゃねえか!」
「君らは自分が有名人だということを自覚した方がいいと思うよ」
キーンコーン
恭介(予鈴が鳴った)
恭介「っと。じゃあ俺はそろそろ行くぜ」
「うむ。また会おう」
休み時間
裏庭
恭介(ここはあまり来たことは無いがよく見るといい所だな、こんな木陰の下で読書でもしたら……って先客が居たようだな)
恭介「おいおい、こんな日に一人でここに居ていいのかい?クラスメイトと仲良くする機会が無くなっちまうぜ」
恭介(俺が話しかけると緑色の目をした後輩がゆっくり頭を俺の方へ向けた)
「それは……貴方にも同じことが言えるんじゃないでしょうか?」
恭介「俺はもうクラスメイトとは充分仲良くなったぜ」
「人と打ち解けるのがお早いんですね…羨ましいです」
恭介「言うほど羨ましがられてる様には見えないけどな」
恭介(友達が要らないのか?変わった奴だな)
恭介「……ん?」
「………?」
恭介「持ってるそれは若山…なんといったか……」
「若山牧水です、ご存知なんですか?」
恭介「ま、今日配られた教科書の中に出てきたんで何と無く覚えただけだ。そういう本が好きなのか?」
「ええ、ですがミステリーも好きですよ」
恭介「ほう…それはポアロとかそんな類の奴だな、俺もたまに読んでるがやっぱコミックの方がいいな………子供くさいか?」
「いいえ、子供くさいかどうかは読んでる物ではなくあくまで中身の問題です。読んでいる物で人を判断するのは間違ってますよ」
恭介「なるほど…素晴らしい考えをお持ちだ」
「受け売りです」
恭介「そろそろ休憩時間も終わりだな、また会おう!」
「はい。それでは……」
恭介「まだゆっくり歩いても間に合いそ……ありゃ理樹か?」
理樹「~~」
恭介(誰かと話してる様だな。早速盗み聞きしよう)
理樹「それで、いつも追いかけられてるの?」
「うん、まあ、そんな感じかな?いやぁ奴らもしつこいよねー」
理樹「君が追いかけられる様な事をいつもしてるからじゃないの!?」
「やはは…こりゃ、一本取られちゃいましたナ」
理樹「別に嬉しくないよ……」
恭介(見た所どちらも初対面らしいな)
「実はね、2年になって男子と話したのは君が初めてなんだ」
理樹「ええっ?誰とも話してないの!」
「失礼な!そこまで驚かなくてもいいじゃんっ」
理樹「普通驚くよ…」
「なんだか私男子がこう苦手というか異性と話すのが苦手でさー」
理樹「じゃあなんで僕は?」
「そういや何でだろ?…いや、分かった!君は女の子っぽいからだっ!女装したら見分けがつかないぞ~このベビーフェイスは」
理樹「一応気にしてるんだから言わないでよ…」
恭介(一応明るい性格に見えるが本質は鈴に近いようだな…それにしても理樹に女装か……良いことを聞いた)
理樹「ってもうこんな時間だ!走らないと間に合わないよっ!」
恭介(やっべ、俺も忘れてた)
「おおっ!それじゃあさらばだー!」
理樹「待たね。あっ、そういえば君の名前は?」
「まだ名乗ってなかったっけ?私の名前は…」
恭介(くそっ、聞いてる暇がねえ!また今度理樹にでも聞いておくか)
ダダッ
次の休憩時間
トコトコ
恭介「消える飛行機雲~♪お?」
「~~♪」
恭介(こんな所に2年が?よし、つけてみよう)
クルッ
恭介(階段の所から消えた…?下には行ってない様だがまさか上か!?)
屋上
「ふんふふ~ん♪」
恭介(窓をネジで固定してある屋上からまさかドライバーを使って行くとはなかなかスパイの素質があるみてーだな。手慣れてるのかもしれない)
ゴソゴソ
パクッ
「……おいし」ニコッ
恭介(あと数年後に生まれてたならどストラ…いや何言ってんだ俺!?)
5分後
「……」ピリッ
恭介(こいつ何個食う気だ…)
恭介「そろそろ戻らねえと先生に見つかるんじゃないか?」
「ひゃっ!?」ガバッ
ゴンッ
「はらほれひらへ~」バタン
恭介(ありのまま起こった事を話すぜ、俺を教師と勘違いしたのか勢いよく頭を上げると貯水槽にぶつけてアルマジロが丸見え状態で倒れた…)
恭介「………帰ろう」
放課後
理樹部屋
恭介「日没にはまだまだ時間があるな」
理樹「そうだね」
真人「筋トレくれーしかやる事ねーよな?」
鈴「それはお前だけだ」
謙吾「今日は部活も休みだが貰った所でやる事など見つからんな」
恭介「じゃあどっか出かけるか?」
真人「おっ、そりゃいいな!丁度駅前に新しいカツ屋があるんだ」
理樹「確か朝も食べたよね!?真人が食べたいなら別にいいけどさ…」
謙吾「この四人で出かけるのも久しぶりだな」
鈴「私もそろそろモンペチのストックが切れてた所だ」
真人「また荷物持ちにさせる気だろ!」
恭介「じゃっ、善は急げだ」
商店街
真人「げふっ…」
理樹「食費でお小遣い全部使った人初めて見たよ」
鈴「やはりバカだな」
恭介「ちょっと家具屋に寄っていいか?」
謙吾「別に構わないが…」
家具屋
真人「どうしてこんな所に来たんだ?」
恭介「この春を機に枕とかその他諸々を新調しようと思ってな。真人、売り物のベッドに寝るなよ?」
真人「流石に中学で卒業したっつーの!」
鈴「じゅーぶん遅いわボケっ!」
ゲシッ
真人「あ痛たっ…」
恭介「取り敢えず色々見て回るから決まるまで適当に遊んでてくれ」
トコトコ
「んーっ」
恭介(棚の上の方にある物を必死にとりにかかる奴がいた)
恭介「よっと…欲しかったのはこれかい?」
「わふー!ありがとうございましたっ!」
恭介「その髪…もしかしてニューハーフか?」
「はいっ!細かく言うとクウォーターですが」
恭介「へえ、その制服は俺達と同じ高校だな」
「これを着ないと高校生には見えませんですよね…」
恭介(どうやら体にコンプレックスを持ってる様だな、どれ、俺が励ましてやろう)
恭介「ははっ!そう落ち込む事はないぜ、充分に育ってなくてもそれはそれで魅力的だ、そう…例えばプチトマトの様にな」
恭介(決まった……)
真人「お前ってやっぱそういう趣味だったんだな…」
謙吾「人の好みにあまりケチを付けたくないが…見損なったぞ恭介」
理樹「ごめん…流石にフォロー出来ないや」
鈴「死ねばーか」
恭介「うおぉぉお!どっか行ってろって言っただろうがっ!」
真人「それにしても2人が知り合いだったとはな」
恭介(どうやら同じクラスメイトようだな、最悪だ)
「さっき話したばかりです、この方は私の手が届かない商品を取って下さりました!」
謙吾「ほう…ナンパしていた訳では無かったのか」
恭介「お前ら俺に対する偏見を捨てろっ!」
恭介(その後俺はこの少女に別れを告げて商店街を満喫した。名前を聞くのを忘れたがまた会えるだろう)
7月○○日
バス内
葉留佳「……」ポリポリ
真人「ふぁ~」
謙吾「……」
理樹「……」ウトウト
鈴「ふにゅ…」
ブロロロロロ
バス、荷物収納スペース
恭介(ふっ…上手くばれずにバスに乗り込んでやったぜ。目的地に着いたらこのボードゲーム達で遊び尽くそう、いつもと変わらん気がするがそれが俺達だ、4人揃わない日常など無い。いつまでもこんな日々を続けてみせよう!)
ガリッギュルルル
理樹「!?」
バコンッ
「レールから抜けた!」
「がっ、崖から落ちるぞーーっ!!」
「キャーッ!」
真人「謙吾ぉぉ!!」
理樹「うわっ!?」ダキッ
謙吾「分かってる!鈴は任せろっ!」ガシッ
鈴「なぁぁ!?」
恭介(上で何が起こってる!?いや…上も下も無い、まずい!『転落』しているっ!!)
ガシャンッ
恭介「うぐっ……」
恭介(砂にまみれた手を払って目をこすると地獄絵図が見えた…どうやら吹っ飛ばされたらしい。)
恭介「……ッ」
恭介(足も含めて骨が何本か折れちまってるな…どうやらバスの外へ吹っ飛ばされて意識があるのは俺だけらしい……理樹達は無事だろうか)
ドクドク…
恭介「ありゃ……やべぇな」
恭介(転落した所為でバスのガソリンが溢れ出ている…ちょっとでも火花が点いたらたちまち安否関係なくここにいる全員が爆発して死ぬだろう……)
恭介「………ふっ…くっ」ズルッ
恭介(俺は匍匐(ほふく)前進でなんとか数メートル進んだ。どうやら理樹と鈴は謙吾と真人が抱きしめて守ったお陰で傷は浅いらしいな、これなら時期に目を覚ますだろう)
恭介(しかし問題はその後だ、このまま、目覚めても理樹と鈴は俺達を助けようとするだろう。しかし理樹には例の『病気』もある、途中で眠ったりでもしたら結局そのうち巻き込まれて死ぬ)
恭介(たとえ覚悟を決めて2人で逃げた所であいつらだけでその後生き残れる訳がない…いつも俺が見守ってきたから分かる。鈴は深く心を閉じて理樹の声さえ届かないだろう)
恭介「ならもう…2人を強くするしかない」
恭介(聞いてるか真人…謙吾…!俺達で世界を作ろう、理樹と鈴のためだけの世界だ。……だが強くするには他にも協力者がいるだろう………そうだ、あいつらがいい………一度一人ずつ会ってみたがどれも心に未練を持ってる様だ)
恭介(それを理樹と鈴に叶えさせよう、そしたらきっと2人も充分乗り越える力を手にしているはずだ。聞こえてるんだろお前ら?さあ覚悟を決めろ…っ!)
ピチョンッ
夜
森林
恭介「……帰ってきたぜ、この町に」
レノン「……」
恭介「レノン、お前は俺だ。ちゃんと2人を導いてくれよ」
恭介「……」サラサラ
"この世界には秘密がある。それを知りたいなら、これからだす課題を全てクリアしろ"
キュッキュッ
恭介「さて行くか…何度失敗してもそのたびに戻してやるぞ2人とも、限界が来るまでな」
「恭介が帰ってきたぞーっ!!」
終わり
勘弁してくれ…
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