勇者「なっ!?」
魔王「もう体が崩れ始めてきたか……まあいい、これで本望だ……」
戦士「貴様!それでも王を名乗る者か!なぜ正々堂々勝負しない!?」
魔王「連戦であの四天王を倒してきた貴様らに我ごときが勝てると思うか?過大評価してくれるな……」
魔王「どうせ死ぬなら貴様も道連れだ、勇者よ」
僧侶「だ、大丈夫ですよ!いくら魔王の呪いと言えど、総大司教様なら……」
魔王「無駄だ……いくら歴代最弱と言えど魔王の命を糧とする呪いであるぞ?人間ごときにはとけまい……」
魔王「いいか?よく聞け…我が同胞を全滅させた強き者よ……貴様の体はこれから毎日、日没と同時に十の年月分朽ちていく…」
魔王「…神の加護を受けし人間と言っても十日も生きられまい……せいぜい死の恐怖に震えるがよい…」
魔王「貴様を殺すのは我ではなく世界だ、時だ、理だ……貴様が守ろうとした世界に殺されるんだ……」
魔王「…………さて、我の体もこれ以上もちそうにない…それではさらばだ、我が宿敵よ……」サァァ
勇者「……」
盗賊「ど、どうせハッタリですぜ!旦那!追いつめられた三流の負け惜しみに過ぎませんぜ!」
戦士「そ、そうだな……何はともあれ魔王は死んだんだ、これで世界は救われるぞ!」
勇者「……よしっ!それじゃあ早く国に帰ろう!僕、久しぶりに母さんのシチューを飲みたくなったなぁ」
戦士「ハハハッ!マザコン勇者がホームシックで泣き出す前にさっさと帰るか!」
勇者「モテない脳筋君には言われたくないなぁ」
戦士「何だと!?」
盗賊「ははははは!」
僧侶「……」
1日目 夕方 魔王城周辺の荒野
盗賊「魔王は死んだってのに魔物の数は全然減ってませんね」
勇者「てっきり魔王が倒れたら魔物は消滅するものだと思ってたんだけどなぁ」
戦士「そう都合よくはいかねぇだろ、物語じゃあるまいし……まっ、そっちのほうが俺は仕事が増えるからいいんだけどさ」
盗賊「悪人面してますねぇ戦士さん」
勇者「はははは…ぐっ!」
戦士「? どうかしたか?」
勇者「いや…急に頭が…ぐっ!ぐあああぁぁぁぁぁぁ!!!」
僧侶「勇者さん!?」
盗賊「まさか…!?」
戦士「僧侶!早く回復を!」
僧侶「もうやってます!でも……」
勇者「うあああああああああぁぁぁっっっ!!!!」
勇者「ぐっ……」バタンッ
戦士「おい勇者!?勇者!?」
僧侶「大丈夫……とは言えませんが痛みで気絶しただけみたいです」
盗賊「み、見てください……!旦那の体が…!」
戦士「どんどん成長しているのか?何だこの速度は!?」
・
・
・
勇者「ぐっ……!」ムクッ
僧侶「大丈夫ですか?痛むところはありませんか?」
勇者「あ、ああ……僕、どうしちゃったの?」
僧侶「……勇者さん、落ち着いて聞いてください」
僧侶「どうやら魔王の言っていたことは本当のようです……」
勇者「……」
僧侶「今、貴方の体は成人男性の体ほどになっています……今はまだいいですが、このままいくと…」
勇者「はぁ……分かってはいたんだ…魔王は嘘なんて吐いてないって」
勇者「全く…やっと世界を救えたと思ったのになぁ、今度は自分の命が危ないなんて……」
勇者「どうにもなりそうにないけど……どうにかしなくちゃなぁ」
僧侶「…とりあえず祖国に帰りますか?」
勇者「うぅん……会いたい人は何人もいるんだけど、ここから国まで四日はかかるからなぁ……国に帰ったら呪いはとけなくなるんだろうなぁ」
僧侶「……呪いをとく当ては?」
勇者「いくつかあるけど……どれも実行するとなると難しいなぁ」
勇者「まず一つ目の案は僕がアンデット系のモンスターになることだ」
僧侶「えっ!?」
勇者「ははは…、そりゃ驚くよね、神の加護を受けた勇者が動く屍になるって言うんだもん」
勇者「…でもこれが一番てっとり早くて確実な方法なんだ、正直僕もやりたくないけど」
勇者「だけどこの方法を使うんだったら早めにしないとなぁ、ヨボヨボのアンデットは勘弁したいしなぁ」
僧侶「本気ですか?」
勇者「本気だよ、生きる為って言うとおかしいかもしれないけど、死なない為なら肩書きだって要らないし腐りもするよ、死んじゃったらそこで終わりだからね」
勇者「そういえば戦士と盗賊は?」
僧侶「戦士さんには水を汲みに行ってもらっています、盗賊さんはなんでも確認したいことがあるらしく魔王城に向かいました」
勇者「そう……やっと旅が終わったってのにみんなにまた迷惑かけちゃうね」
僧侶「私達がやりたくてやってることだから気にしないでください」ニコッ
戦士「おお、目ぇ覚めたのか」
僧侶「おかえりなさい、水汲みお疲れさまです」
戦士「なぁに軽い軽い、でこれからどうするか決まったのか?」
勇者「どうするか決めかねてる状況だね、なにぶん時間に余裕がないから決めるなら早めにしなきゃいけないんだけど……」
戦士「だよなぁ…ギリギリで呪いがとけても老人の姿のままの可能性もあるもんな…」
僧侶「それならやはり若返りの方法を探すのが良いのでしょうか?」
勇者「若返りかぁ……旅の途中、村や遺跡で伝承を聞いたことはあるけど実在するのかなぁ?」
戦士「まぁ……簡単に言うようだけど探すしかないだろ」
盗賊「おーい!いい情報が手に入りましたよ!」
盗賊「魔王城の宝物庫に不死の薬に関する文献がありました!」
戦士「お前よくそんなもん見つけられたな」
盗賊「なんたって盗賊ですから、魔王の宝物庫なんて一度見たら一生忘れられませんぜ」
僧侶「少し拝見させてもらっていいでしょうか?」
・
・
・
僧侶「……ふむ」
戦士「どうだ?作れそうか?」
僧侶「不可能……ではありません…しかし…」
僧侶「不死鳥の伝説は知っていますか?」
勇者「死ぬ間際になると自分の体を燃やして生まれ変わるって言うやつ?」
僧侶「はい、この薬には不死鳥の飾り羽が必要らしいんですが…」
戦士「不死鳥なんて存在するのか?」
僧侶「この本には不死鳥の生息地も記されていました、しかしその生息地はこの魔王城より更に北の山脈の奥だそうです」
盗賊「あの雪山ですか?まあ確かにそこそこ険しそうですが大した過酷さじゃ…」
戦士「俺たちはともかくどんどん老いていく勇者の体がもつと思うか?」
僧侶「そこが問題なんです、不死鳥が見つかるかどうか分からないのに勇者さんを山に連れて行くのは危険すぎる」
戦士「かと言って麓においていくとなると誰か一人を護衛としておいていかなくてはならない、更に往復して間に合うかという問題が発生するわけか」
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