灰原「お兄ちゃんは、だぁれ?」コナン「えっ......?」 (448)

コナン(その出来事は、いつもの様な普通の放課後から始まった......)


元太「よーし、いくぞ光彦!パース!」ポーン

光彦「はいっ!行きますよー!」

コナン「甘いぜっ!」サッ

光彦「あぁっ!」

元太「何やってんだ光彦ぉ!」

歩美「ちょ、ちょっと待ってぇ!コナン君のシュートなんて......」

コナン「いや、俺じゃねぇ......。灰原っ!」ポーン

灰原「よーし、行くわよっ!」ポーン

歩美「えっ、あ、あぁっ!!」

ポスッ

コナン「ゴール!これで俺達の勝ちだな!」

灰原「ええ、上手くシュート出来たわ」

コナン「おう!ナイスだったぜ!」

歩美「もう、ズルいよコナン君!サッカーになったら手加減してくれないんだもん!」

光彦「こっちが3人でも、コナン君相手じゃ勝てませんよ!次からは4対1でやるべきですよ!」
コナン「おいおい、そりゃいくら何でも......」

元太「はぁ、はぁ、そ、そうだぞコナン。お前ズリーよ」

コナン(ハハ、元太を見ると確かにハンデが必要かもな......)

灰原「まあ、少しは手加減してあげたら?大人気ないわよ?」クスッ

コナン「今ゴールしたのはオメーだろ......」

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灰原「まあ、とにかく。少し休みましょう?小嶋君、倒れるわよ?」

コナン「そうだな。みんな!少し休もうぜ!」

歩美「さんせーい!」

光彦「僕もクタクタです......」

元太「俺、腹減った......」

コナン「それは帰るまで我慢しろよ......」

灰原「小嶋君らしくて良いじゃない?」

コナン「まあな。しかし、オメーさ、サッカー上手くなったな。昔はサッカーのサの字も分からないって感じの奴だったのに」

灰原「あら、人間は日々成長するものよ?ま、あなたの場合、全く成長しない部分もあるけど」

コナン「はぁ?どこだよ?」

灰原「自分で考えなさい?さ、続きを始めましょう」

コナン「何でぇ、アイツ......」

灰原(ホントに成長しないのね、人の気持ちを察するのは)

コナン「ま、いいや。みんな!やろーぜ!」

元・光・歩「オー!」



元太「よっしゃ!今度こそ勝つぞー!とりゃー!」ポーン

光彦「げ、元太君!飛ばしすぎですよ!」

元太「いっけね!」

コナン「あっちゃー、道路の方に」

灰原「良いわ、私取ってくるから」

光彦「あ、僕が!」

灰原「大丈夫よ、待ってて」

コナン「ワリーな、頼む」

灰原「ええ」

ドクンッ

コナン「えっ......?」

歩美「どうしたの?コナン君?」

コナン「あ、いや......」

コナン(何だ、今の胸騒ぎ......)

灰原「ボール、ボール......。あったわ」ヒョイッ

プップップーッ!

灰原「えっ......?」

灰原(しまった、車......!)


コナン「......くそっ!」サッ

光彦「あ!コナン君!何処に?」

コナン「オメーらは待ってろ!」

元太「何だ?アイツ?」

歩美「コナン君......?」

コナン(やな予感がする、灰原......!)

コナン(あ、あれは......!)


キ、キ、キーッ......

灰原(......ダメ、動けない!)

コナン「灰原ぁーっ!!」

灰原(工藤、君っ?)

コナン(くそっ!間に合うか......?)

コナン「うわあああぁーっ!!」

灰原(......!)

ドーン......


歩美「何の音?」

光彦「さっきコナン君が走って行った方です!」

元太「おい、行ってみよーぜ!」

歩美「う、うん!もしかしたら、コナン君達に何かあったのかも!」

光彦「ええ、行きましょう!」

タタタタ......

光彦「はぁ、はぁ、あ!あれは!」

元太「あっ!」

歩美「い、いやっ!哀ちゃん!コナン君っ!」


コナン「......は、いばらっ」ピクピク

灰原「......」

コナン「ちき、しょうっ......」ガクッ

歩美「コナン君!哀ちゃん!しっかりして!」

光彦「僕、救急車を!」

元太「お、俺、博士に電話する!」

歩美「ヤダ、ヤダよ、コナン君......。哀ちゃんっ!!」

ピーポーピーポー......

コナン「......んっ、ここは?」

コナン「......そうだ、俺確か灰原が車に轢かれそうになって、それを助けに」

コナン「って、灰原っ!!」ガバッ

コナン「ぐっ!痛ってぇ......」ズキッ

ガラッ......

蘭「あ、コナン君!!起きたの?大丈夫?」

コナン「ら、蘭姉ちゃん......?」

蘭「良かった、目が覚めて......」

コナン「ぼ、僕......」

蘭「コナン君はね、哀ちゃんと一緒に車に跳ねられたの。覚えてる?」

コナン「うん、覚えてるよ」

蘭「それで、少年探偵団の子達が救急車を呼んでくれたんだって。目が覚めなくて心配したけど、良かった。元気そうで」

コナン「ありがとう、蘭姉ちゃん。あ、あのさ、灰原は......」

蘭「哀ちゃんもコナン君も、大事には至って無いって。でも、まだ哀ちゃんは意識が戻らなくて......」

コナン「そ、そっか......。あれからどれ位経ったの?」

蘭「2人とも一晩中起きなかったの。今は、コナン君達がサッカーをした日の、次の日よ」

コナン「そっか、そんなに......」

小五郎「お、起きたかボウズ!」

コナン「おじさん、来てくれたの?」

小五郎「しゃーねーだろ?同居人なんだからな」

コナン「ありがとう、おじさん......」

中断します。
午前中には再開します。

遅くなりました、再開します。

小五郎「フン!本当は車の前に飛び出したってんで、説教の1つもしてやりたいところだが……」ジロッ

コナン「う、ごめんなさい……」

小五郎「ま、女の子を助けようとしたって話だから、今回は勘弁してやる」ポンッ

コナン「おじさん……」

小五郎「ったく、心配掛けやがって。もう無茶すんじゃねーぞ」

コナン「うん、ありがとう」

コナン(おっちゃん……。ありがとな)

蘭「でも、私も本当に心配したんだから!お父さんの言う通りにして、ちゃんとおとなしくするのよ?」

コナン「ごめんね、蘭姉ちゃん」

蘭「うん、じゃあ私達今日は帰るから。また来るね」

小五郎「騒ぐんじゃねーぞ」

コナン「うん、2人ともありがとう」

蘭「じゃあ、またね」

コナン(2人にも心配掛けちまったな、それも悔しいが、灰原がまだ目を覚まさないのか……)


蘭「……」ニコッ

小五郎「何だよ、その気持ち悪い笑顔は?」

蘭「ううん、普段邪険にしてても、やっぱりコナン君の事可愛いんだね!」

小五郎「バ、バーロー!んなこたぁねーよ!」

小五郎「……ただ、普段3人の家が2人になると落ち着かねぇってだけだ」

蘭(強がっちゃって……)ニコッ

コナン「……クソッ、静かになっちまうと却って頭が悶々とするぜ」

タッタッタッ……

歩美「……あ、コナン君!起きたんだ!」

コナン「歩美ちゃん?」

元太「おう、コナン!起きたのか?」

光彦「心配しましたよー!ずっと目が覚めないって言ってたから」

コナン「元太、光彦……。オメーらも来てくれたのか」

阿笠「おお、しんい……。ゴホン。コナン君。起きたかの」

コナン「博士まで、みんな来てくれたのか」

歩美「うん。本当に良かった……。心配、したんだもん」グスッ

コナン「あ、歩美ちゃん、泣かないでくれよ」

阿笠「全く、感謝するんじゃぞ?この子達が救急車を呼んで、病院まで来てくれたんじゃからな?」

コナン「そうだったのか……。みんな、本当にありがとうな。もう大丈夫だ」ペコッ

光彦「よしてくださいよ、僕達は友達じゃないですか」

元太「そうだぞコナン!水くせーぞ!」

コナン「ワリー。でも、本当にありがとう。歩美ちゃんも、ありがとな。だから、もう泣かないでくれ」

歩美「……うん!良かった!」

阿笠「持つべき物は友達じゃな。毛利君と蘭君が来るまで、ずっとこの子達は居てくれたんじゃ。お礼をせんといかんぞ?」

コナン「ああ、分かってる。元気になったら、何かしなくっちゃな」

コナン「ところで、灰原の意識が戻らねーって聞いたが……。ここに来る前に、灰原には?」

歩美「うん、見に行ったんだけど……」

光彦「まだ意識が戻らないそうです」

元太「体は何ともねーって、先生が言ってたぞ」

コナン「そうか……。ちきしょう、あの時俺がもう少し早く行っていれば……」

歩美「コナン君のせいじゃないよ!」

光彦「そうですよ!先生言ってましたもん!コナン君がかばったから、軽傷で済んだんだって!」

元太「あんまり落ち込むと、博士みたいにハゲちまうぞ!」

阿笠「これ、それはどういう意味じゃ!」

歩美「もう、元太君ったら!」

コナン「ったく、オメーらと来たら……。分かった。クヨクヨすんのはやめるよ。信じて灰原をみんなで待とう」

歩美「うん!」

コナン(コイツらの明るさ……。救われるぜ、本当に。ありがとな……)

プルルルルル……

阿笠「おや、電話じゃ」

コナン「おいおい博士。病院で電話は切っとけよな」

光彦「マナー違反ですよ!」

阿笠「ス、スマンの。ん?これは、この病院の電話じゃな……?」ピッ

阿笠「もしもし、阿笠ですが……。はい、はい。……ええっ!?わ、分かりました。すぐ行きますわい」ピッ

コナン「どうしたんだ?博士?」

阿笠「ああ、この病院から電話でな。ワシがここにいるのを知らんで掛けて来たみたいじゃが……。そんな事より、哀君が目を覚ましたらしい!」

歩美「本当?博士!」

コナン「どこだ?どこにいるんだ?」

阿笠「上の階じゃ。ワシ、保護者じゃから来て欲しいと」

光彦「じゃあ、みんなで行きましょう!」

元太「そうだ、行こうぜ!」

コナン「俺も行くぜ……」ズキッ

コナン「くっ……」

歩美「コナン君、無理しない方が」

コナン「いや、行きたいんだ。頼む」

阿笠「分かった。車椅子を借りて来るわい。骨などに異常は無くても、身体が痛むじゃろうからな」

コナン「ありがとな、博士」

コナン(良かった……。だけど、状態をしっかり見てーしな。それに、謝らねーと。守れなくて、ゴメンって)

阿笠「では、行くぞい。病院じゃから、騒いではいかんぞ」

歩美「はーい!」

コナン「ワリーな、元太。車椅子押してもらってよ」

元太「へへ、今度ジュースおごれよな」

コナン「ああ、そん位お安い御用だ」

光彦「……あ、あの部屋ですよ!」

コナン(灰原……)

コンコン

看護師「どうぞ」

ガラッ

阿笠「失礼します、灰原哀の保護者の阿笠と申しますが……」

看護師「ああ、お待ちしてました。先生!」

医師「どうも、主治医のものですが……」

阿笠「ああ、この度はどうもお手数をお掛けしまして……」

医師「いえ、それよりも現状の説明をさせて頂きたいのですが」

阿笠「ええ、お願いします」

歩美「ねぇ、歩美達も入っていい?」

医師「あ、ああ。大丈夫だよ。あそこにいるよ。ただ……」

元太「よーし、行くぜー!」

光彦「灰原さーん!」

阿笠「こ、これ!騒いではいかんと言ったじゃろうに!」

灰原「……」

歩美「あ、いたよ!哀ちゃーん!」

灰原「……」

光彦「灰原さん!良かった、目が覚めて!」

灰原「……」

元太「ずっと起きなかったから、心配したんだぞ!」

灰原「……」

コナン(……?様子が変だな?)

コナン「おい、灰原。何ボーっとしてんだよ?具合、まだワリーのか?」

灰原「……はい、ばら?」

コナン「何言ってんだよ、まだ寝ぼけて……」

灰原「……ねぇ」

コナン「ん?」

灰原「お兄ちゃんは、だぁれ?」ニコッ

コナン「えっ……?」

灰原「お兄ちゃんは、だぁれ?わたしのお兄ちゃん?」

コナン「何言ってんだよ、灰原……?」

光彦「は、灰原さん……?」

歩美「哀ちゃん、大丈夫?」

灰原「はいばら……?あいちゃん……?それが、わたしのなまえなの?」

コナン「……!ま、まさか」

灰原「ごめんね、わたし……。なんにもわからないの」

コナン「やっぱり、灰原……」

阿笠「コナン君、どうやらその様じゃ……」

歩美「博士!哀ちゃんどうしちゃったの?」

医師「私が、お話ししよう」

光彦「先生、どうなってるんですか?」

医師「うん、灰原哀ちゃんはね。身体には何も問題は無かったんだ。でもね、強いショックを受けた事で、記憶が混乱しているんだ」

元太「こんらん?」

医師「うん、記憶喪失って聞いたことあるかな?」

コナン「やっぱり……。じゃあ、灰原は」

医師「うん。起きてちょっとしか経ってないから、詳しい事はまだ分からないけど……。話をしてみた限り、自分の事も、他の人の事も分からないみたいなんだ。会話自体は出来るけど……。大部分の記憶は、失くしている様に見えるんだ」

歩美「そんなぁ!じゃあ、歩美達の事忘れちゃったの?治らないの?」

医師「うん……。頭の検査もしたんだけど、異常は無かったんだ。強いショックを受けた時に記憶を失くす事は、珍しい事じゃ無いし、そういう場合は記憶も戻るのは早いと言われてるんだ。ただ……」

光彦「ただ?」

医師「あくまで、個人差があるんだ。すぐ治る人もいれば、治らない人もいる。こればかりは、その人次第としか言えないんだ」

元太「じゃあ、ずっと俺達の事、忘れるかも知れねーのか?」

医師「……」

阿笠「無い、とは言えんじゃろうな」

歩美「そんな……」

医師「こういう記憶喪失は、周りの協力も大事なんだ。だから、みんなで協力してあげれば、きっと良くなると私は思うよ」

歩美「本当?」

医師「うん、だから、みんなで哀ちゃんを助けてあげてほしい」

光彦「分かりました……」

阿笠「先生、ありがとうございます」

医師「いえ、お大事に……」

コナン(記憶喪失……。確かに、一時的に記憶を失うってのは良くある話だ。だが、灰原の場合……。精神年齢まで子供に戻っている。それを不自然に思うのは、俺と博士位だろうが……)

光彦「と、言っても……。どうすれば?」

コナン「取りあえず、今の灰原は不安定な状態だ。だから、しばらくはそっとしておいて……。話す時も、普段以上にゆっくり、優しく話し掛けてあげるんだ。気持ちを落ち着かせてあげて、徐々に昔の事に触れさせていくんだ」

歩美「うん、分かったよ。コナン君」

コナン「良し。じゃあまず……」

コナン「ごめんね、さっきはいきなり話かけて。少しお話しても良いかな?」

灰原「うん。いいよ!ねぇ、お兄ちゃんはだれなの?」ニコッ

コナン(な、何だか調子狂うな)

コナン「俺……。あ、いや。僕の名前は江戸川コナン。君の、友達だよ」

灰原「ほんとう?わたしの、おともだち?」ニコッ

コナン「うん、そうだよ」

灰原「よかった。わたし、なんでここにいるかもわからなくて。ひとりでさみしかったの。おともだちがいてよかった!」ニコッ

コナン(……やっぱり、完全に子供になっている)

灰原「でもぉ……」

コナン「ん?」



灰原「コナンって、へんななまえ!」クスクス

コナン「(うっ……)そうだね、よく言われるよ」

阿笠(新一が戸惑っておる……。無理も無い、ワシも戸惑っておる)

コナン「それから、ここにいる女の子が歩美ちゃん。で、隣が光彦……。あ、いや。光彦君。それに、元太……。じゃなくて、元太君。みんな、君の友達だよ」

灰原「ほんと?みんな、わたしのおともだち?」

歩美「うん、そうだよ。哀ちゃん」

光彦「いっつも、皆で遊んでるんですよ」

元太「少年探偵団の仲間だからな!」

灰原「しょうねん、たんていだん?」

コナン「うん、後で話すね。それから、こっちのおじさんが阿笠博士。君と一緒に暮らしてるんだ」

阿笠「よろしくのう、哀君」

灰原「おじさんが、わたしのおとうさん?」

阿笠「い、いやいや!お父さんでは無くて……」

コナン「博士、今はそう言っとけ。混乱しちまう」ボソッ

阿笠「し、しかし……。ワシみたいな者が哀君の父親など、どうにも」ボソッ

コナン「とにかく、今はそうしとけよ」ボソッ

灰原「そっかぁ。わたし、こんなにたっくさんおともだちがいるんだ……」グスンッ

歩美「どうしたの?哀ちゃん?」

灰原「ごめんね、おともだちなのに……。みんなのこと、わからなくて」グスンッ

灰原「ご、めん……ねぇ……」グスンッ

光彦「灰原さん……」

コナン「……大丈夫だよ、はいば……。じゃなくて、哀ちゃん」

灰原「だって、だってぇ……」グスンッ

コナン「何があっても、僕達は哀ちゃんの味方だから。みんな、哀ちゃんのそばにいるから」

灰原「ほんとぉ?そばに、いてくれるの?」グスンッ

コナン「うん、本当さ」

灰原「ありがとう!!お兄ちゃん!!」ギュッ

コナン「え?!ちょ、ちょっと!?」

灰原「ありがとう、お兄ちゃん!」

コナン(お兄ちゃんって……。俺、オメーより年下なんだけど……。ハハハ……)

中断します。
後で再開します。

歩美「哀ちゃん、私達の事覚えて無いのはさみしいけど、でも元気そう。良かった」ニコッ

光彦(それは良かったですが、コナン君羨ましいです……)

元太「あー、何か俺腹減っちまったぞ」

阿笠「む、確かにのう。今日はとりあえず哀君の様子も見れたし、お暇するとしようかの」

コナン「え?帰るのか?」

阿笠「また来るわい、哀君を頼むぞい」

コナン「わ、分かった。哀ちゃん、ちょ、ちょっと良いかな?博士達が帰るから、エレベーターまで見送りたいんだ」

灰原「えー、お兄ちゃん、いっちゃうの?」ウルウル

コナン「す、すぐ戻るよ!ホントにすぐ来るから!」

灰原「……うん、わかった。すぐもどってきてね」

コナン「うん、待っててね」

歩美「じゃあ、哀ちゃん。またね」

光彦「お大事にしてください」

元太「次はお見舞いに旨い物持ってくるからな!」

コナン(オメーの場合は、一緒に食べるのが狙いだろうが……)




コナン「ふぅ、何だか疲れるぜ。調子狂うな」

阿笠「仕方あるまい。記憶が無い以上、あれが今の哀君なんじゃ」

コナン「分かってるけどさ……」

元太「それよりコナン、車椅子押さなくていーのか?」

コナン「ああ、もう大丈夫だ。どうせオメーらが帰ったら、1人で動かさなきゃならねーからな」

光彦「あ、エレベーターが来ましたよ!」

阿笠「お、本当じゃ。ではコナン君。哀君を頼むぞい」

光彦「ではまた!コナン君!」

元太「ちゃんとメシ食えよ、2人とも!」

歩美「コナン君、またね。哀ちゃんをよろしくね!」

コナン「ああ、ありがとな。また」

コナン「ふう、さて……。戻るとするか。「哀ちゃん」の所に」



光彦「灰原さんは心配ですけど、2人とも元気そうで良かったですね」

元太「そーだな、早く退院しねーかな」

歩美「……」

阿笠「まあ、お医者さんの話じゃ、身体は何ともないからあと2、3日で退院できるそうじゃ」

光彦「そうですか、早く治ると良いですね!あれ?歩美ちゃん?どうしたんですか?」

歩美「え?ううん、何でも無いよ?」

元太「歩美も腹減ったのか?」

歩美「う、うん。そうだね」

歩美(歩美、いけない子だよね……。哀ちゃんが心配なのに、哀ちゃんがコナン君に飛びついた時……。ちょっぴり羨ましかったもん……)



コナン「さ、大人しくしてるかな……」

コナン「あ、あれ?ベッドにいないじゃねーか!?どこに……」

灰原「ばぁっ!!」

コナン「おわっ?!」

灰原「びっくりした?お兄ちゃん!」ニコニコ

コナン「あ、哀ちゃん。ダメじゃないか。寝てなきゃ」

灰原「だってぇ、お兄ちゃんおそいんだもん」

コナン「ゴ、ゴメンよ。ねえ哀ちゃん?僕、哀ちゃんと同じ歳だから(ホントは年下だが)、お兄ちゃんはちょっと」

灰原「やーだ!お兄ちゃんはお兄ちゃん!」

コナン「何で?」

灰原「わかんない。でも、お兄ちゃんってかんじがするんだもん!」

コナン「で、でもね?」

灰原「やなのぉ?」

コナン「え!?」

灰原「お兄ちゃん、わたしにお兄ちゃんってよばれるの、やなのぉ?」ウルウル

コナン「ち、違うよ!お兄ちゃんで大丈夫だよ、うん」

灰原「よかったぁ!お兄ちゃんっ!」

コナン(こっちの頭がパニックになりそうだぜ……)

灰原「ねぇお兄ちゃん。わたし、おなかすいちゃった」

コナン「あ、そう言えば昨日から何も食べて無いのか……」

コナン(考えたら、俺も何も食べてねーし)

コナン「じゃあ、待ってて。看護師さんにご飯は何時か聞いて来るから」

灰原「えー、やだよぉ!またお兄ちゃんいっちゃうの?」

コナン「すぐ戻るから……」

灰原「やだやだやだやだ!!お兄ちゃんといっしょがいい!!」ガシッ

コナン「あ、哀ちゃん……」

灰原「ひとりにしないでぇ、お兄ちゃん……」グスッ

コナン「……分かった!じゃあ、一緒に売店にでも行こうか!」

灰原「ほんとぉ?」ニコッ

コナン「うん、行こう」

灰原「やったぁ!!じゃあ、わたしお兄ちゃんをおしてあげる!」グイッ

コナン「ちょっと、は、早いよ!ゆっくりね!」

灰原「はーい!」

コナン(凄く寂しがりになってる。いや、元々そうだったのか……?普段の枷が無いから、こんなに寂しがりなのか?)

灰原「よいしょ、よいしょ......」

コナン「哀ちゃん、無理に押さなくて良いよ?自分で漕ぐから」

灰原「いいのっ!お兄ちゃんはやすんでて!」

コナン(強情っぱりは、変わらねーな、ハハ......)

入院患者1「おやお嬢ちゃん。車椅子なんて押して、大変だね」

灰原「ううん!わたし、これからお兄ちゃんとおかいものにいくの!だからいいの!」ニコッ

入院患者1「そうかいそうかい。それは良かったねぇ。お兄ちゃんも、良い妹さん持って幸せだねぇ」

コナン「は、はぁ、ありがとうございます」

コナン(妹じゃ、ねぇっつーの!)

灰原「よかったね、お兄ちゃん。ほめてくれたよ!」

コナン「う、うん。良かったね」

コナン(こうなりゃもう、どうにでもなれってんだ)

中断します。
また後程。

コナン(そんなこんなで売店に行ったは良いが、やはり疲れてしまったようで。部屋に戻ると)

灰原「お兄ちゃん、わたし、つかれたぁ」

コナン「無理するからだよ。少し寝よう」

灰原「うん。おやすみぃ......。ねぇ、お兄ちゃん」

コナン「ん?」

灰原「ねるから、てをにぎってて?」スッ

コナン「わ、分かったよ」ギュッ

灰原「あったかい。お兄ちゃんのて」ニコッ

コナン「そっか、良かった」

灰原「ねぇ、お兄ちゃん」

コナン「ん?何だい?」

灰原「どこにも、いかないでね」

コナン「うん。行かないよ」

灰原「ありがとう、お兄ちゃん」ニコッ

コナン「うん、お休み」

灰原「おやすみ、お兄ちゃん」

コナン(ふぅ、一息つけるか。しかし、本当に見た目相応の精神年齢になったな。小さい時は、こんな子供だったのかね......)

コナン「......哀ちゃん?」

灰原「スー、スー......」

コナン「寝たみたいだな。無防備な寝顔しちゃって。カメラに撮って見せてやりたいぜ」

コナン「......ん、ヤバイ。トイレ行きたくなって来た。ゴメンな、ちょっと行ってくるからな」スッ

灰原「スー、スー......」

コナン「よし......」

灰原「お兄、ちゃん......」

コナン「えっ?!」

灰原「スー、スー......」

コナン「ね、寝言か。ビックリした......」

コナン(こうして、トイレに行った訳だが、俺も疲れていた様で、急に眠くなってしまった)

コナン「どうすっかな。ちょっとだけ部屋で寝るか。多分あの様子じゃ、まだ起きないだろ」

コナン(でも、これが失敗だった)



コナン「zzz......」

コナン「ん......?あ、いけね。すっかり寝入ってたな」チラッ

コナン「あちゃ、3時間も寝てたか。灰原大丈夫かな」

タッタッタッ......

看護師「えーと......。江戸川コナンさん、いますか?」ハァ、ハァ

コナン「あ、僕だよ」

看護師「あ、ゴメンね。ちょっと来てくれるかな?灰原哀ちゃんって、お友達?」

コナン「うん。どうしたの?」

看護師「今、凄い泣いてるの。お兄ちゃんがいないって」

コナン「えっ!?」



コナン「哀ちゃん!!」

看護師「あ、君がコナン君?あそこよ。見てあげて」

コナン「うんっ!」

コナン(しまった、ちょっと目を離したばかりにっ)

灰原「うあああぁぁぁん!!」ポロポロ

コナン「哀ちゃん!」

灰原「お、にいちゃん......?」グスッ

コナン「ゴメンよ、大丈夫かい?」

灰原「おにいちゃん......。お兄ちゃぁん!!」ギュッ

コナン「哀ちゃん......」

灰原「うあああぁぁぁん!こわかったよう!さみしかったよぅ!どこいってたの、お兄ちゃん!」グスッ

コナン「ゴメンよ、本当にゴメンよ」

灰原「うっ、うぅ......っ。やだよぉ、ひとりぼっち、やだよぉ......」グスッ

灰原「お兄ちゃんといっしょじゃなきゃ、やだよぉ......。ひとりにしないで......」グスッ

コナン(灰原......)

コナン「ゴメンよ、もうどこにも行かないよ」ナデナデ

灰原「ほんとぅ?どこにもいかない?」グスッ

コナン「うん、行かないよ。哀ちゃんの側にいる。約束だゆ」

灰原「うん、うん......」ギュッ

>>33訂正です。

コナン「約束だゆ」→「約束だよ」

コナン(不安にさせちまったな。済まねぇ、灰原)ナデナデ

看護師「良かった、落ち着いたみたいね。ずっと泣いてたのよ?お兄ちゃんがいない、お兄ちゃんに会いたい、お兄ちゃんはどこ?って」

コナン「ゴメンね、ありがとう。ねぇ、僕の部屋、哀ちゃんと一緒に出来る?」

看護師「ええ。先生に話しておくわ」

コナン「ありがとう」

看護師「ええ。大事にしてあげて?とってもお兄ちゃんの事、好きみたいだから」

コナン「そ、そんな事」

看護師「とにかく、側にいてあげてね」ニコッ

コナン「うん、ありがとう」

灰原「......」ギュッ

コナン「哀ちゃん、部屋も同じになったし、もう大丈夫だよ。もう掴まなくても、どこにも行かないよ」

灰原「ほんとぅ?」

コナン「うん、本当」

灰原「よかったぁ」ニコッ

灰原「お兄ちゃんがそばにいると、とってもきもちがいいの。なんでかわからないけど、お兄ちゃんといると、むねがポカポカするの」

コナン「......!」

灰原「だから、お兄ちゃんといっしょがいいの」ニコッ

コナン「......そっか」

中断します。
また後程。

皆さん、ありがとうございます。
再開します。

明日はちょっと書けるか分かりませんが、なるべく早く更新したいと思います。

コナン「じゃあ、哀ちゃんを僕がしっかり守ってあげなくちゃね」

灰原「うん、ありがとう!お兄ちゃん!」ギュッ

コナン(そうだ、守ってやんなくちゃ。俺が......。記憶が戻るまで、なんとしても)

コナン(こうして、灰原と同じ部屋になってから、俺の大変な日々はスタートしたのだった......)



看護師「はーい、ご飯の時間ですよ!」

灰原「やったぁ!わたし、おなかペコペコ!」

コナン「良かったね、哀ちゃん」

コナン(良かった、実際俺も腹減ったからな)

看護師「じゃあここに置くから、食べ終わったら呼んでね」

灰原「はーい!」

コナン「よし、じゃあ食べようか」

灰原「うん!いただきまーす!」

コナン(食事中は、一息つけそうだな)

灰原「ん......っ。あっつい!お兄ちゃん、おかゆがあついよぅ」

コナン「大丈夫?ヤケドしなかった?」

灰原「うん、でもあっついよぅ」

コナン「ちょっと待ってね」フーッ、フーッ

コナン「はい、どうかな?」

灰原「あーん......。うん、おいしい!」ニコッ

コナン「良かった、じゃ......」

灰原「ねぇ、お兄ちゃん」

コナン「ん?」

灰原「もっと、たべさせてっ」ニコッ

コナン「いっ!?」

灰原「だめ?」

コナン「あ、いや、分かったよ。はい、あーん」

灰原「あーん......。おいしっ」ニコッ

コナン(何てこった、こりゃ......)

灰原「お兄ちゃんにも、たべさせてあげる!」

コナン「えっ?!いや、良いよ!」

灰原「だーめ!たべてっ!」

コナン「う、うん......」

灰原「はい、あーん」

コナン「あ、あーん......」

灰原「おいしい?」

コナン「お、おいしいよ。ありがとう」

灰原「よかったぁ!」ニコッ

コナン(しばらくはメシもまともに食えねーな、こりゃ......)


コナン(そんなこんなで病院の1日は早く、消灯時間になり......)

コナン「さあ、哀ちゃん。そろそろ寝る時間だよ」

灰原「うん、わかった!」

コナン「じゃ、お休み」

灰原「えー?お兄ちゃん、どこいくの?」

コナン「え?僕のベッドは隣だから、そこに」

灰原「いっしょにねよ、お兄ちゃん!」

コナン「へっ!?」

灰原「いっしょにねようよ、ね!ね!」

コナン「え、いや、その」

灰原「だめ、なのぉ?わたし、お兄ちゃんとねたいよぅ......」グスッ

コナン(いやいやいやいや、幾らなんでもそれは......。いや、しかしここは灰原の為だ。そう、灰原の為っ!)

コナン「わ、分かった。一緒に寝よう!哀ちゃん!」

灰原「やったぁ!ありがとう!」ニコッ

中断します。
明日は書けても短めになると思います。

皆さん、ありがとうございます。
ちょこっと投稿。

コナン「じゃ、じゃあ......」モゾモゾ

灰原「もっとこっち!」

コナン「え、あの......。じゃ、じゃあ」モゾモゾ

灰原「もっとぉ!」

コナン「い?!こ、この位?」モゾモゾ

灰原「もっと、くっついて!」

コナン(この状態でくっつく?!う、腕枕すりゃいいのか?ええい、もうこうなったら!)

コナン「これで良いかい?」サッ

灰原「うん!ありがとう!お兄ちゃん!」

コナン(タハハ、心臓にワリィ......)

灰原「お兄ちゃん、あったかい」ギュッ

コナン「そ、そうかな?」

コナン(俺は違う意味で熱い......)

灰原「ごめんね、お兄ちゃん」

コナン「え?」

灰原「わがままばかりいって。おこってる?」

コナン「そんな、ワガママなんて思って無いさ」

灰原「ほんとぅ?」

コナン「ああ、本当さ」

コナン(そう、ワガママなんて思って無いさ。ただ、ちょっと戸惑っちまうだけさ)

灰原「よかったぁ......。ねぇ、お兄ちゃん?」

コナン「ん?」

灰原「お兄ちゃん、わたしのこと、すき?」

コナン「へっ!?」ドキッ

灰原「わたしは、お兄ちゃんのこと、だーいすき!お兄ちゃんは、わたしのこと、すき?」

コナン(お、落ち着け工藤新一。子供が聞いていると思え!落ち着け落ち着け落ち着け!)

コナン「勿論、大好きさ」

灰原「......」

コナン「哀ちゃん?」

灰原「やったぁ!!うれしいっ!!」ニコッ

コナン「ちょ、哀ちゃん?静かにね、みんな寝てるから」

灰原「だって、うれしいんだもんっ!お兄ちゃん、だーいすき!」ニコッ

コナン(その無邪気な笑顔やめてくれ、胸がドキドキしておかしくなりそうだ!いや、嫌じゃない、嫌じゃないけど......あー、もう!)

灰原「ありがとう、お兄ちゃん......。ねむたくなってきちゃった......」

コナン「そ、そっか。もう寝ようか、ハハ......」

灰原「ねぇ、お兄ちゃん。おねがい」

コナン「ん?」

灰原「おやすみの、チューして?」

コナン「!!??!!?」

灰原「ね?」

コナン(いや、ちょっと待て待て待て待て!それはマズイだろ!いや、しかしやらなきゃまた泣き出すかも......。そうだ、この子は灰原じゃない、そう、哀ちゃんだ。哀ちゃんにするんだ、そうだ、落ち着け、俺!)

コナン「え、えっと、ほっぺたでいい?」

灰原「うんっ!」

コナン「じゃ、じゃあ......」ドキドキ

チュッ

灰原「えへっ、ありがとう!お兄ちゃん!」

コナン「ど、どういたしまして......」

灰原「お兄ちゃん......」

コナン「ん?」

灰原「ぎゅっと、しててね」ギュッ

コナン「わ、分かったよ、哀ちゃん」ギュッ

灰原「ありがと、おやすみぃ。お兄ちゃん......」

コナン(も、持たねぇ。身体が持たねぇ......。こんなにドキドキしたのは、初めてかも知れねぇ......)

コナン(結局、俺はその日......。明け方近くまで寝れなかった。ドキドキし過ぎて)

中断します。
今日もう1回位更新します。

コナン(そして、翌朝......)


コナン「ん、朝か......。ふぁーあ。あんまり寝れなかったぜ......」

灰原「スー、スー......」

コナン「良く寝てるな。そっとしといてやるか」

コナン「はぁ、しかし昨日は疲れたな......」

コナン「何でこんなに疲れるんだ?」

「お兄ちゃん、だーいすき!」

コナン「......落ち着け、アレはホラ、アレだ。小さい子が言う好きだ、うん。深く考えるな」

灰原「ん......」ゴシゴシ

コナン「あ、哀ちゃん。起きたのか」

灰原「うん、おはよぅ。お兄ちゃん......」

コナン「眠たそうだね」

灰原「うん......。ふぁーあ......」

コナン(アクビ娘なのも変わらないな。夜は寝てるのに)

灰原「お兄ちゃん、どこにもいかなかった?」

コナン「うん、ずーっと居たよ」

灰原「そっか、よかったぁ」ギュッ

コナン「ちょ、ちょっと哀ちゃん」

灰原「お兄ちゃん、そばにいてよかったぁ。あさになってお兄ちゃんいなかったらどうしようかとおもったの」ギュッ

コナン「!!」

コナン「......約束したじゃないか。どこにも行かないって」ナデナデ

灰原「うん。ごめんね」

コナン(やっぱり、明るく見えても不安で一杯なんだな)ナデナデ

灰原「きもちいい......」

コナン「え?」

灰原「お兄ちゃんにあたまなでなでされるの、きもちいい」ニコッ

コナン(はっ!つい無意識に!)

灰原「もっと、なでなでして?お兄ちゃん」ニコッ

コナン「う、うん」ナデナデ

灰原「......」ニコニコ

コナン(くっ、人には見せらんねーな。こんな所は)

本日はここまで、明日更新します。

遅くなりました、再開します。

コナン(ま、良いか。今日は平日。誰も午前からは来ないだろ)

コンコンッ

コナン「はいっ?!」

コナン(ヤベ、返事しちまった!)

ガラッ

園子「オッス、ガキンチョ!元気?」

蘭「おはよう、コナン君」

コナン「ら、蘭姉ちゃんに園子姉ちゃん?な、何で?学校は?」

蘭「今日は時間調整で、午後からなの。午前中はお休みよ」

園子「そう言う事、ホラ!お見舞い持ってきてあげたわよん?ありがたく思いなさい」

コナン「あ、ありがとう......」

園子「ん?しっかしガキンチョ。随分ラブラブな格好ね?」ニヤリ

コナン「え、いや、あの......その」

蘭「ホント!お部屋、哀ちゃんと一緒になったって聞いたけど、膝枕なんかしちゃって!仲良しだね!」ニコッ

コナン(あー、最悪だ......)

灰原「んっ......?お兄ちゃん、どうしたの?」

園子「お、お兄ちゃん?」

コナン「あ、哀ちゃん。お、お客さんが来てるんだよ」

蘭「哀ちゃん?コナン君がそんな呼び方、珍しいね?」

灰原「おきゃくさん?」チラッ

蘭「こんにちは、哀ちゃん!」

灰原「......」サッ

コナン「ちょ、ちょっと、哀ちゃん?」

灰原「お兄ちゃん、このひとたち、だあれ?」ギュッ

コナン「あ、えっとね?僕のし、親戚のお姉ちゃんと、お友達だよ」

園子「はぁ?何じゃそりゃ?」

コナン「あの、2人とも」チョイチョイ

園子「何よ。あの子、様子おかしいけど何なの?どうしたのよ?」

コナン「実は今、事故のショックで記憶喪失なんだよ」ヒソヒソ

蘭「ええっ?!」

コナン「しーっ!だから、ここは僕のペースに合わせて、お願い!」

園子「わ、分かったわよ」

蘭「そう言う事なら、あいさつだけして帰ろっか。無理させたら悪いもの」

園子「そうね、そうしよっか」

コナン「ゴメンね、2人とも」

蘭「ううん、良いの。あ、哀ちゃん。私は、毛利蘭って言うの。宜しくね」ニコッ

灰原「......」

園子「私は鈴木園子。園子お姉さまとお呼びなさい」

灰原「......」

コナン「あ、哀ちゃん?」

蘭「良いの、コナン君!きっと緊張してるんだよ」

コナン「うん、ゴメンね」

園子「良いから良いから。アンタは可愛い彼女についててあげなよ」ニヤリ

コナン「か、彼女じゃあ無いよ!」ドキッ

蘭「まあまあ。それじゃあまたね、コナン君」

コナン「うん、ありがとう」

蘭「哀ちゃんも、またね!」

灰原「......」スーッ

灰原「あっかん、べーだ!」

コナン「ちょっと、哀ちゃん?!」

蘭「コナン君、良いから。ね?」ニコッ

コナン「う、うん......」

園子「きっと私達の美しさに嫉妬してんのよ」ニヤリ

コナン(オメーのその能天気さには呆れるけどな......)

中断します。
後程再開します。

蘭「じゃあ、またね」

コナン「うん、バイバイ」

コナン(やれやれ、一体何で灰原はあんな......)



園子「やれやれ、記憶無くなって子供っぽくなったと言うか、まああの方が子供らしいけどさ」

蘭「......」

園子「どうしたのよ?」

蘭「あ、うん。初めて哀ちゃんにあった時も何だか避けられてたし、私、何か子供を怖がらせてしまう何かあるのかなって......」

園子「考えすぎだよ、蘭!」

蘭「そうかなぁ......」


コナン「さて......」チラッ

灰原「......」ビクッ

コナン「ダメじゃないか、哀ちゃん。あんな事したら」

灰原「だってぇ......」

コナン「せっかくお見舞いに来てくれたのに......」

灰原「だって、やなんだもん!」

コナン「?」

灰原「お兄ちゃんが、しらないおんなのひととはなすの、やなんだもん!」プイッ

コナン「へっ?!」

灰原「......」

コナン「それで、あんな事したの?」

灰原「......うん」コクッ

コナン(ったく、ホントに......)クスッ

コナン「分かった!お兄ちゃんが悪かった!」ナデナデ

灰原「お兄ちゃん......」

コナン「でも、もうあんな事しちゃダメだよ?哀ちゃんだって、あんな事されたらイヤだろう?」

灰原「......うん。わかった。もうしない。ごめんね、お兄ちゃん」

コナン「うん。お姉ちゃん達にも、謝るんだよ?」

灰原「うん、わかった」

コナン「良し、いい子だ」ナデナデ

灰原「......えへっ」ニコッ

コナン(何なんだ?この感覚は......?気恥ずかしいが、心地良い感覚は......。妹を持つ兄貴ってのは、こんな気持ちなのかな......?)

コナン(その後、色んな人から電話やらお見舞いが来た)

コナン(服部からは見舞いに行くと電話が来た。どうやら、蘭から和葉ルートを通じて聞いたらしい)

コナン(が、大した事無いからと断った。正直、この局面でアイツが来ると却ってややこしいから)

コナン(小林先生も来てくれた。あの事故の日からずーっと来てくれていたらしいが、タイミング悪く俺達の意識が戻らなかったり、他の生徒も急病だったりで会えずにいて、申し訳無いと謝られた。こちらの方が申し訳無い気分だ)

コナン(灰原が記憶喪失と知ってショックを受けていたが、それでも明るく担任として最大限協力すると言ってくれた。ありがたい話だ。灰原は丁度検査中で会う事は出来なかったが、宜しく伝えて欲しいと言われた)

コナン(こうして、たくさんの人の善意を受けてその有り難みを感じていたが、図らずもその善意が、灰原の心の傷を浮き彫りにしてしまうとは考えもしなかった)

コナン(それは、午後......。灰原の検査が終わって帰って来た後に起きた)

コナン(灰原は検査の疲れで寝てしまい、俺も灰原の側を離れたくない......。もとい、離れられないので、暇をもて余していた時だった)



コナン「はぁ、退屈だな......」チラッ

灰原「スー、スー......」

コナン「......やはり、頭部を含めて異常は無し。脳内出血、血腫も無し。典型的な記憶喪失、か」

コナン「いつ治るかは、本人次第か」

コナン「......焦っても仕方無いよな。その時を待つしか無ぇし」

コナン「とにかく、それまで灰原の気持ちを落ち着けてやらなきゃな」

コンコンッ

コナン「(誰だろ?)どうぞー」

ガラッ

高木「失礼します」

佐藤「こんにちは、コナン君」

コナン「あ、高木刑事、佐藤刑事!来てくれたの?」

佐藤「ええ、元気そうで何よりね」

高木「ビックリしたよ、君達が事故にあったって聞いて」

コナン「ありがとう、わざわざ。でも、誰に聞いたの?」

佐藤「ああ、昨日目暮警部から聞いたのよ。毛利さんにたまたま用事で電話した時に聞いたらしいわ」

高木「で、僕達にそれを教えてくれたのさ」

佐藤「丁度今日、私達仕事が休みで、この近くで同僚の結婚式があったから寄ってみたの。目暮警部も、来れないけどお大事にと伝えて欲しいって」

コナン「そうなんだ、ありがとう。そっか、それで服装がいつもと違うんだね」

高木「そうなんだよ。着なれない服装だから、肩が凝っちゃってね」

コナン「そっかあ。ねぇ、2人はいつ結婚式するの?」ニヤリ

高木「なっ、何を言うんだいコナン君!」

佐藤「お、大人をからかわないの!」

コナン「ごめんなさーい」

高木「あ、そう言えば」

佐藤「あの子は?同じ部屋って聞いたけど」

コナン「あ、そこにいるよ。今寝ちゃって......」

灰原「ん、んんっ......」

コナン「って、起きたかな?」

灰原「ん、ふぁーあ。お兄ちゃん、おはよう......」

コナン「おはよう、哀ちゃん」

高木「?」

佐藤「?」

灰原「ん、またおきゃくさん?」

コナン「うん、知り合いの刑事さんだよ」

灰原「ふぅん......」ビクッ

灰原「......」ガタガタ

高木「えっ?」

佐藤「様子が変よ?」

コナン「どうしたの?哀ちゃん?」

灰原「いや、こないで......」

灰原「こないでぇぇぇえ!!」ブルブル

高木「ど、どうしたんだ?」

コナン「哀ちゃん!どうしたんだ!」

灰原「いや、やめてぇ!こわい、こわい、やだぁ!!」ブンッ

高木「わっ?!」

コナン「くっ!」ギュッ

灰原「こわい、こわい、こわいよう!こわいよぉぉお!!」ブルブル

コナン(何だ、一体どうしたんだ!?高木刑事を見たら急に......!?そ、そうか!!)

コナン「ゴメン!2人とも!今、灰原は事故のショックで記憶が無いんだ!」

佐藤「えっ?!」

高木「記憶喪失?」

コナン「だから今、精神的に不安定なんだ!だから......」

佐藤「ええ、分かったわ。今私達がいると、不安を助長してしまうわね」

コナン「ゴメンね、2人とも!」

佐藤「良いのよ、気にしないで!高木君!行くわよ!」

高木「は、はいっ!2人とも、お大事にね!」

コナン「ゴメンね!!」

コナン(済まねぇ、2人とも!多分灰原は高木刑事の服に反応したんだ!結婚式用の礼服、つまり、黒1色の服に!)

コナン(黒1色の服を見て、無意識に刻まれたトラウマが噴き出したんだ。黒ずくめの連中に対するっ!!)

コナン「哀ちゃん、しっかりしろ!」ギュッ

灰原「あ、ああ、あああぁぁあ!!」ブルブル

コナン「哀ちゃん!僕だ!兄ちゃんだ!!」ギュッ

灰原「はぁ、はぁ、お、おにいちゃん......?」ブルブル

コナン「そうだよ、しっかりして!」

灰原「おにいちゃん、おにいちゃん......」ギュッ

コナン「もう、大丈夫だ。大丈夫だ......」ギュッ

灰原「こわ、かった......。こわかったよ......」ギュッ

コナン「分かってる......」ギュッ

灰原「くろいひとが、みえたら、おっかなくなって......。わたし、わたし......」ギュッ

コナン「分かってる、大丈夫。兄ちゃんがついてる......!」ナデナデ

灰原「おにいちゃん、おにいちゃん......」グスッ

灰原「うわぁぁぁああん......」グスッ

コナン(記憶を失って、人格を失って尚......。黒の組織は灰原を苦しめるのか......!!こんな無垢な子供になっちまった灰原までも......!)

コナン(許さねぇ、絶対に許さねぇ!アイツらだけは、絶対に許さねぇ!!)


コナン(こうして、灰原の黒の組織に対する苦しみの深さを実感すると共に、もう怖い思いをさせないと約束しながら、また灰原に涙を流させてしまった情けなさを、俺は強く恥じた)

中断します。
後程再開します。

コナン(そして俺は、1つの決心をした。その数日後......)

コナン「さ、哀ちゃん。準備は良いかい?」

灰原「うん、お兄ちゃん!ねぇ、ほんとにおそとにでれるの?」

コナン「ああ、お家に帰るんだ」

灰原「ほんとに?やったぁ!ねぇ、おうちって、どんなところ?」

コナン「そりゃ、帰ってからのお楽しみさ」

灰原「ねぇねぇ、はやくかえろ!」ニコッ

コナン「まあまあ、もうすぐ博士......。じゃなかった、お父さんが迎えに来るから」

灰原「うん!」

コナン(結局、入院中に記憶を取り戻す事は無く......。精神の安定の為、先生と相談して面会を謝絶してもらい、とにかく静かに過ごす事を優先したが、効果は無かった。が、身体には異常は無い以上、ベッドを占拠してもいられないので、俺達は退院する事になった)

灰原「たのしみだなあ、わたし、おそとにでるのはじめて!」ニコッ

コナン「そっか、じゃあお兄ちゃんが色々見せてあげるからね」

灰原「うん!」

コナン(そっか、記憶を失ってからは外に出てないからな......。楽しみで仕方ねーんだな)

阿笠「おお、スマン!待たせたの、2人とも」

コナン「お、やっと来たか。哀ちゃん、帰るよ!」

灰原「はーい!」


阿笠「それでは、お世話になりました」

医師「いえ、お役に立てず申し訳ありません」

コナン「ううん、先生。ありがとうございました」

灰原「ございましたっ!」ニコッ

看護師「ふふ、2人とも仲良くね?」

灰原「うん!」

阿笠「それでは、失礼します」

医師「何かあれば、すぐご連絡下さい」

阿笠「ええ、ありがとうございます」

コナン「じゃ、行こうか。哀ちゃん」

灰原「うん!」ギュッ


看護師「記憶、戻ると良いですね。哀ちゃん」

医師「うん、でも......」

看護師「え?」

医師「いや、何でも」

医師(あの子、精神科医の所見では......。少し問題がある。本人達には伝えられなかったが......)

コナン(この医師の懸念は、後々響いて来る事になる)



灰原「ねぇ、これからどこにいくの?」

阿笠「まずは、ワシの車のある駐車場まで行こう。で、そこから車でどこかご飯を食べに行って、それからお家に帰ろうかの」

灰原「ふーん、くるまって、どんなの?」

コナン「見てのお楽しみさ」

灰原「わかった!ねぇ、あれはなに?」

コナン「ん?ああ、あれはお花屋さんさ。お花を売ってるんだ」

灰原「ふーん、きれいだね!あ、あれは?」

コナン「あれはペットショップ。犬とか猫がいるよ」

灰原「ええ!みたい!お兄ちゃん!みたい!」

コナン「え?」

灰原「ねぇねぇ、みたいよぅ!」

コナン「んん、良いよね?博士?」

阿笠「ああ、構わんが」

灰原「わーい!」タタタッ

コナン「あ、走っちゃダメだよ!」

阿笠「完全に小さな女の子じゃな」

コナン「ああ、どっから見ても小学生の女の子さ」

阿笠「ふむ。所で新一。本当に良いのかの?」

コナン「何が?」

阿笠「ワシの家でしばらく暮らす話じゃよ」

コナン「ああ、その話か。もう決めたんだ」

中断します。
後程再開します。

阿笠「しかし、お前も疲れておるじゃろう?退院したとは言え、新一のダメージの方が哀君より大きいはずじゃ」

コナン「んなもんは平気だよ」

阿笠「しかし......。確かに哀君に付いていてくれるのはありがたいが、その為に新一の時間を犠牲にせんでも」

コナン「犠牲なんかじゃねーさ。俺は約束したんだ。もう怖い思いをさせないと。側にいると。そんだけだ」

阿笠「うむ......。蘭君達には?」

コナン「連絡したよ。頑張ってってさ。アイツも灰原の事、気に掛けてたしな。おっちゃんは、静かになって良いって言ってたがな」

阿笠「ふむ。分かったわい。宜しく頼むぞ、新一」

コナン「ああ。こっちこそな」

コナン(そう、守ってやんなくちゃ。何回も泣かせてなんかいられっかよ!)

灰原「お兄ちゃん!みてみて!かわいいよ!」

コナン「うん。今行くよ」

阿笠(新一、無理をするでないぞ)

灰原「ほら、みてみて!ねこさん、かわいいよ!」ニコッ

コナン「うん、可愛いね」

灰原「ほら、あっちも!わんちゃん!かわいいなぁ!!」ニコニコ

コナン(本当に無邪気だな。でも、動物に触れたら意外と素直になるとこもあったっけな)

灰原「みーんなかわいいなぁ。ね、お兄ちゃん!」

コナン「ああ、本当にね」ニコッ

阿笠「さ、そろそろ行くとするかの」

灰原「えー?もうちょっとぉ!」

コナン「でも、お腹空いたろう?」

灰原「んっ......。うん、おなかすいた」グーッ

コナン「じゃあ、行こう。ね?」

灰原「うん!わかった!」

コナン「ちゃんと手を握っててね」

灰原「うん!」ギュッ

阿笠(新一、お前は今どういう心境で哀君に接しとる?場合に寄っては、お前さんが辛い目に遭う。ワシは、それが心配なんじゃよ......)

中断します。
明日再開予定です。

コナン「博士、何してんの?」

阿笠「お、おおスマンスマン」

灰原「ねぇお兄ちゃん?ごはんってなにたべるの?」

コナン「何が食べたい?」

灰原「んー、わかんない……。お兄ちゃんは?」

コナン「んー、そうだな。行ってから決めようか」

灰原「うん!」

コナン(その時、俺はまだ気付いて無かった。自分自身の変化を)


阿笠「さ、着いたぞい。これがワシの車じゃ」

灰原「これが、おとうさんのくるま?かわいいね!」ニコッ

阿笠(呼ばれなれんのう……)

コナン「僕は後ろで哀ちゃんと乗るから。博士、宜しく」

阿笠「あ、ああ」

コナン「じゃ、ちゃんとシートベルトして」カチャッ

灰原「うん。おうちかえるの、たのしみだね!」ニコッ

コナン「うん、そうだね」ナデナデ

阿笠(何じゃ?新一のあの様子は?もはや完全に……)

コナン「さ、行こう博士」

阿笠「う、うむ」


コナン(その後、俺達はファミレスで食事にした。灰原はメニューを見て目を丸くして喜んでいた。最早こうしてみると、本当にただの可愛い子供にしか見えないだろう)

灰原「はい、お兄ちゃん。あーん」

コナン「あーん。うん、美味しいね」ニコッ

灰原「うん!」

コナン「じゃ、お返しに。あーん」

灰原「あーん……。おいしい」ニコッ

阿笠「……んんっ。コナン君?」

コナン「何?博士?」

阿笠「その、別に君が食べさせてもらう必要は無いんじゃないかの?」

コナン「え?あ……。そ、そうだね」

コナン(そういや俺、さっきから手を繋いだり、頭撫でたりすんのも何の抵抗も無く……?)

コナン(考えてみりゃ、メシ食わせてもらうのも抵抗無かった。病院じゃあれだけ恥ずかしかったのに……)

コナン(……ま、良いか。とにかく今は灰原の事が優先だからな)



コナン(そう、これこそが俺に起きた変化。この変化が後で色々面倒事を引き起こす羽目になる)


コナン(食事を終えた俺達は、そのまま博士の家に向かった。灰原もはしゃいで疲れの色が見えたので、起きてる内に家を案内してやりたかった)

阿笠「さ、着いたぞい!」

灰原「うわぁ、ここがわたしのおうち?おっきぃね!」

コナン「そうだよ。今日からここで暮らすんだ」

灰原「お兄ちゃんといっしょに?」

コナン「うん、そうだよ」

灰原「やったぁ!ねぇねぇ、あのおうちは?」

コナン「あ、あそこはね……。博士の知り合いのお家だよ」

灰原「ふぅん……」

コナン「気になるの?」

灰原「ううん。おっきぃおうちだなぁって」

コナン「そっか。あそこは、また今度ね」

灰原「うん!」

コナン「じゃあ、中に入ろうか」

灰原「はーい!」

阿笠「ふう。一瞬、新一の家を見て何か感じたと思ったがの」

コナン「ああ。俺もそう思ったが、違ったみたいだな」

阿笠「やはり、そう簡単にはいかんようじゃな」

コナン「最初から覚悟は出来てるさ。所で、今後の予定だけどさ」

阿笠「うむ。学校に行くかも含めて考えんとの」

コナン「今日は金曜だが、もう今日は学校に行かなくていいから、取りあえず今日はゆっくりさせてあげよう。で、土日で様子見だな。土日に歩美ちゃん達に来てもらって、人に対する反応を見よう」

阿笠「そうじゃな。面会謝絶になって彼等も気になっておったろうしの。退院祝いも兼ねて、彼等と何かパーティーでもするかの」

コナン「太っ腹だな。博士」

阿笠「そりゃ君達が退院したのは嬉しい事じゃからの。ま、とにかく探偵団の子達に接してどういう反応が出るか。学校に行くのはその後次第じゃな」

コナン「ああ。なるべく負担を掛けないようにしなくちゃ」

灰原「ねぇねぇ!はやくおうちあけてよう!」

コナン「あ、ゴメンね!今行くよ!」

コナン「じゃあ、そういう方向で」

阿笠「うむ」

阿笠(ホントに哀君優先じゃのう……)

中断します。
夜更新します。

阿笠「ホレ、どうぞ」ガチャッ

コナン「さ、哀ちゃん。どうぞ」

灰原「うわぁ、ひろいね!」

コナン「あんまりはしゃいでケガしないでね」

灰原「はーい!」

コナン「なあ博士。灰原が触って危ない発明品とか、ねーよな?」

阿笠「大丈夫じゃ。その辺は抜かり無いわい」

コナン「そっか、サンキュー」

阿笠「まあ、取り敢えず家の中を案内してあげたらどうじゃ?」

コナン「ああ、そうするよ」

阿笠「後、君と哀君の部屋を用意せんとな」

コナン「ああ、部屋なら1部屋でいいぜ?俺、アイツと寝るから」

阿笠「へっ?」

コナン「病院でもそうだったしな。布団も1組で良いぜ」

阿笠「し、新一。まさか、何か哀君にアヤシイ事をしとるんじゃ......」

コナン「バ、バーロー!そんなんじゃねーよ!とにかく、頼むぜ!」

阿笠「......」

灰原「......」

コナン「どうしたの?哀ちゃん?」

灰原「わたし、ここにいたの?」

コナン「え?」

灰原「なにもわからなくなるまえは、ここにいたの?」

コナン「そうだよ。何か感じたかい?」

灰原「ううん......」

コナン「そっか。無理しないで。とにかく今日はゆっくりしよう」

灰原「うん。わかった」

コナン「じゃ、家の中を案内するから、一緒に行こう」

灰原「うん!」

コナン(こうして、俺は博士の家の中を案内した。が、灰原の部屋には今日は行かなかった。あそこは暗いし、まだ気持ちの落ち着かない時に行っても、逆効果だと思ったからだ)

中断します。
また後程。

コナン(結局この日は、灰原に記憶が戻る兆候も無いまま、1日が終わろうとしていた)


灰原「えいっ!」

コナン「あちゃ、また負けた!」

灰原「お兄ちゃん、よわーい!」

コナン「アハハ、そうだね」

コナン(記憶を失う前よりゲーム強い気が......)

阿笠「2人とも、そろそろ寝る準備をしなさい」

灰原「えー、もうー?」

コナン「また明日も遊べるからさ、哀ちゃん」

灰原「うん......」

阿笠「おお、そうじゃ。寝る前にお風呂に入りなさい」

灰原「おふろ?」

コナン「そうだよ。身体をきれいにしないと」

灰原「うん、じゃあはいろ!お兄ちゃん!」

コナン「はっ?!」

灰原「おふろ、はいろ?いっしょに」ニコッ

コナン「え、えっと......。そ、それは」

灰原「はいろうよぉ、お兄ちゃん!」ニコッ

コナン(それはいくらなんでもマズいだろ!ふ、風呂って......。いくらガキでも灰原だぞ?もし記憶が戻ったら......)

コナン(こ、殺されかねない......)

灰原「はいろうよぉ、お兄ちゃん!」

コナン(くっ、病院じゃ看護師さんがやってくれたのに......。こ、ここは何とか断らねば!)

コナン「あ、あのね?哀ちゃん?」

灰原「やなのぉ?」ウルッ

コナン「いっ?!」ドキッ

灰原「わたし、お兄ちゃんといっしょがいいよぉ」ウルウル

コナン(コイツ、記憶があって俺をからかってんじゃねーだろーな?)

灰原「ねぇ、お兄ちゃん!いこ?」ニコッ

コナン「......わ、わかった」

灰原「やったぁ!」

コナン(くっ、あの目で見られたら断れねぇ!どう考えてもヤバいのに!風呂って、は、裸だぞ?灰原の......)ドキドキ

コナン(だが、結局......)


灰原「お兄ちゃん?おふろ、はいらないの?」

コナン「は、入るよ?ふ、服を脱ぐからちょっと後ろ向いてて?」

灰原「なんで?」

コナン「いや、その......」

灰原「はやくはいろ!」ヌギッ

コナン「わーっ!ちょっと待って!」

灰原「なあに?」

コナン(くっ、もうままよ!)ヌギッ

灰原「お兄ちゃん、かおがまっかだよ?」

コナン「な、何でもないよ!早く入ろう!」

コナン(そうだ、さっさと入ってさっさと出よう!なるべく見ない、見ない様に!)

申し訳ありません、寝落ちしてしまいました。
明日再開します。

遅くなりました。
再開します。

コナン「じゃ、じゃあ......入ろうか?」

灰原「わーい!」

コナン「いや、前は隠してくれ!」

灰原「えー?なんでぇ?」

コナン(くっ、何でこんなドキドキすんだ?身体は俺と同じガキそのものなのに......。たまに事件の時に不可抗力で見た事はあるが、何も感じなかったのに......)ドキドキ

灰原「お兄ちゃん、さむいよぅ」

コナン「あ、ゴメン!か、体を洗おう」

灰原「うん!わたし、お兄ちゃんあらってあげる!」ニコッ

コナン「え?いや、自分でやるから」

灰原「いーの!わたしがやる!」

コナン「待って!分かった!背中!背中だけ!ね?」

灰原「んー、わかったぁ」ニコッ

コナン(心臓が破裂しそうだぜ。やっぱり、あの灰原と一緒に風呂ってのが、興奮する理由なのかな......?でもな、何なんだ?この、嬉恥ずかしい感じは?)

灰原「じゃあ、いっくよー!」ゴシゴシ

コナン「うん、ありがとう」

コナン(ふぅ、このスキに自分の前側洗わなきゃな)

灰原「はい、おわり!」

コナン「えっ?!」

灰原「お兄ちゃん、こうたい!」ニコッ

コナン「え、あ、あの......」

コナン(クソッ、何で......。何も出っ張ってない幼児体型の灰原にここまでドキドキする!?俺はロリコンだったのか!?)ドキドキ

灰原「お兄ちゃん?」

コナン「あ、わ、分かったよ。じゃあ、後ろ向いて?」

灰原「はーい!」

コナン(とにかく、背中洗ったら後は自分でやってもらおう......)

コナン「じゃ、行くよ?」

灰原「うんっ!」

コナン「痛くない?」ゴシゴシ

灰原「うん!ありがとう!お兄ちゃん」

コナン「う、うん」ゴシゴシ

灰原「ねぇ、お兄ちゃん?」

コナン「ん?」

灰原「あたまも、あらってぇ?」

コナン「へ?」

灰原「あたまもあらってほしいの!」

コナン「わ、分かった......」

コナン(ま、面と向かって無いしな。それ位はな)

コナン「じゃ、目を瞑って?」

灰原「うんっ」

コナン「じゃ、行くよ?」ジャバッ

灰原「うっ!」ビクッ

コナン「だ、大丈夫?」

灰原「うん。ちょっとびっくりした。だいじょうぶ!」

コナン「良かった。じゃ、頭洗うよ」ゴシゴシ

コナン(こうして見ると、髪の毛綺麗だな。灰原って)

ドキッ

コナン(えっ?!な、何だ今の胸鳴りは?!)

コナン(......そ、そうか。分かった)

コナン(何故、こんなに興奮するのか)

コナン(蘭と入った事もあるのに、何故今興奮すんのか。洗ってあげてるからだ)

コナン(蘭と入ってる時は、身長差があるから洗って貰っても、洗ってあげる事なんかほぼ無ぇ)

コナン(でも、今はこうして洗いっこしてる。それが何故か興奮をさせるんだ......)ドキドキ

コナン(それだけじゃないかも知れないが、それが一因なのは間違いねぇ)

灰原「お兄ちゃん、まだぁ?」

コナン「あ、ゴメン!」ゴシゴシ

コナン(......下らねー事考えてないで、早く終わらせよう)ゴシゴシ

中断します。
今日は休みなので、昼前位から出来る限り書ければと思います。

遅くなりました。
再開します。

コナン「よし、お湯かけるよ」ジャバッ

灰原「んっ......」

コナン「はい、手拭い。大丈夫?」

灰原「うんっ!ありがとう、お兄ちゃん!」ニコッ

コナン「じゃ、じゃあお湯に浸かるかな」

灰原「えー?からだあらってないよ?あらって!」ニコッ

コナン「え?」

灰原「あ・ら・っ・て?」ニコッ

コナン(その無邪気な笑顔は反則だ......)

コナン「よ、良し。じゃあ......」ゴシゴシ

コナン「い、痛くない?」ゴシゴシ

灰原「うん」

コナン(く、取り敢えず上から......。む、胸の方に)ゴシゴシ

コナン(ガキだからやっぱり真っ平らだよな......。ってバカか俺は!)ゴシゴシ

灰原「んっ」ビクッ

コナン「えっ?!」

灰原「なんか、ぶるぶるする。おっぱいさわると」

コナン「」

灰原「でも、だいじょうぶ」ニコッ

コナン「そ、そっか。お、お尻とかは自分で洗ってね」

灰原「うんっ!」

コナン(も、死にそう......)

コナン(で、やっと終わって湯船に......)

ザバーッ

コナン「ふう、気持ち良いな」

灰原「んっ......。あついよぅ」

コナン「ゆっくり入れば大丈夫さ。ゆっくりね」

灰原「うん......」チャポッ

コナン「どう?」

灰原「うん。だいじょうぶ」ニコッ

コナン「そっか。良かった」

コナン(ふう、やっと落ち着けそうだな)

灰原「ねぇ、お兄ちゃん?」ギュッ

コナン「ふぇっ?!」ビクッ

灰原「ありがとう。お兄ちゃん。からだあらってくれて」ニコッ

コナン「あ、それは良いけど、ちょっと離れて......」

灰原「なんで?」

コナン「あ、いや......」

コナン(裸同士でくっつくのは、マ、マズいだろ......)ドキドキ

灰原「でも、お兄ちゃんとこうしてたら、きもちいいよ」ニコッ

コナン「!!!」ビクッ

灰原「あったかくて、きもちいい」ニコッ

コナン「......」

灰原「お兄ちゃん?」

コナン「......」フラッ

バシャーン......

灰原「お兄ちゃんっ?!」



阿笠「......で、見事にのぼせたと」

コナン「......ああ」

灰原「お兄ちゃん、だいじょうぶ?」グスッ

コナン「だ、大丈夫大丈夫。ちょっと熱くなり過ぎただけだから。冷やせば治るよ」

灰原「ほんとぅ?」グスッ

コナン「ああ、本当さ」

灰原「よかった......」

コナン「さ、歯磨きしといで。僕もすぐ行くから」

灰原「うん」ニコッ



阿笠「......全く。風呂にまで一緒に入るとはの」

コナン「......ほっといてくれ」

中断します。
また後程。

遅くなりました。
再開します。

阿笠「まさか、何か邪な気持ちがあるんじゃ」

コナン「バーロー、んなんじゃねーよ......」

阿笠「まあ、あまり無理はし過ぎない事じゃな」

コナン「ああ。わーったよ。それより、灰原が寝たら今後の事をもう1度話しておこう」

阿笠「分かったわい。じゃが、身体は?」

コナン「心配ねーよ。こんくらいは」

灰原「お兄ちゃん、だいじょうぶ?まだきもちわるいの?」

コナン「あ、哀ちゃん。大丈夫だよ。今行くから」

灰原「うん!」

コナン「じゃ、頼むわ。博士」

阿笠「う、うむ」

阿笠(付きっきりは良いが、身体を壊さんと良いが......)


コナン「よし、じゃあ寝ようか」

灰原「うんっ」

コナン「今日は疲れたろ?色々見て、歩いて」

灰原「うん。だいじょうぶ。ねぇ、お兄ちゃん。ごめんね」

コナン「?」

灰原「わたし、なんにもわからなかった。なんにも、おもいだせなかった」

コナン「気にしないで。ゆっくりやれば良いさ」

灰原「うん。お兄ちゃん......」ギュッ

コナン「ん?」

灰原「わたし、おっかないの。わからないこともこわいけど、わかるのもこわい」

コナン「哀ちゃん......」

灰原「ごめんなさい。わがままばっかり」

コナン「大丈夫。お兄ちゃんが側にいるから。哀ちゃんは何も心配しなくて良いさ」

灰原「ありがとう、お兄ちゃん」チュッ

コナン「っ!」ビクッ

灰原「お兄ちゃん、だいすき」ニコッ

コナン「......うん。さ、寝ようか」

灰原「......」プクッ

コナン「え?」

灰原「お兄ちゃんは?」

コナン「えっ?」

灰原「お兄ちゃん、わたしのことは?」

コナン(これ、毎度言わなきゃいけないのか?)ドキドキ

コナン「だ、大好きだよ」

灰原「ほんとにぃ?どのくらい?」

コナン「と、とっても......」

灰原「とっても?」

コナン「......1番!」

灰原「?」

コナン「い、1番好きだよ!世界で、1番!」

灰原「ほんとぅ?」ニコッ

コナン「ああ、本当さ!」

灰原「うれしいっ」ニコッ

コナン(あー、もう何言ってんだよ俺は......)

灰原「ずっと、すきでいてね。お兄ちゃん。わたしも、お兄ちゃんだいすきだから」ニコッ

コナン「うん......。分かった」

コナン(穴があったら入りたいってのは、この事だな、全く......)



コナン(その後、灰原が寝た後、博士と話をした。取り敢えず、日曜日に探偵団の仲間を呼んで退院祝いをする、と言うのを確定にし、灰原を人に慣れさせようと言う事になった)

コナン(その上で、今後のプランを建てようと言う事でその晩は終わった)

コナン(お互い、疲れもあったし、身近な人間が記憶を失っていると言う重たい話をしている為、結局話は弾まなかった)

コナン(博士と俺では、灰原への対応に少し差がある様だが、上手くお互いそれを伝えられず、この日にその差を噛み合わせる事は出来なかった)

コナン(そうしたモヤモヤを抱えながらも、灰原を少しでも元気づけようと準備をし、そして日曜日を迎えた)

光彦「いやあ、楽しみですね!コナン君と灰原さんに会うのが!」

元太「しばらく会えなかったからな!メシも腹一杯食うぞ!」

光彦「灰原さん、記憶が少しでも戻ってたら良いですね!」

歩美「......」

元太「どうしたんだよ、歩美?」

歩美「え?」

光彦「元気無いですよ?」

元太「具合わりーのか?」

歩美「う、ううん!大丈夫だよ!」

光彦「本当ですか?暗い顔でしたが」

元太「コナン達に会いたくねーのか?」

歩美「ち、違うよ!とっても会いたいよ!」ニコッ

歩美(哀ちゃん、私達の事思い出してくれたかな。思い出してないなら......)

歩美(コナン君に抱きついた、あの時のままなのかな......)

歩美(私、ひどいなあ。お友達が大変なのに、こんな事ばっかり......考えちゃう)

歩美(私、どうしたら良いんだろ......)



灰原「ねぇ、お兄ちゃん!これは?」

コナン「あ、そっちに置いて」

灰原「はーい!」

コナン「嬉しそうだね、哀ちゃん」

灰原「だって、おともだちがくるんでしょ?わたし、おはなししたかったの!」ニコッ

コナン「そっかそっか。もう少しで来るから、お迎えしなきゃね」

灰原「うん!」

コナン(昨日、アイツらが来るって聞いたら楽しみにしちまって、まあ......。アイツらと遊んで、少しでも良い刺激になりゃあな)

阿笠「新一、これも運んでくれ」

コナン「お、分かった」

阿笠「あの子達も電話で楽しみにしとったし、少しでも良い方に向かって欲しいのう」

コナン「ああ、本当にな」

中断します。
また後程。

阿笠「しかし、大丈夫かのぅ?」

コナン「どの道、記憶を取り戻す為には辛い目に会う日も来るかも知れねぇ。最初のステップで止まるわけにゃ行かねーさ」

阿笠「それもそうじゃな。今は皆に楽しんでもらう事だけを考えるとしよう」

コナン「そうだな。さ、仕度仕度っと」

コナン(とは言え、何も起きないに越した事は無いけどな......)チラッ

灰原「♪」

コナン(あんだけ笑顔でいるんだ。それを曇らせたくはねーな......)



光彦「さ、着きました!」

元太「何か、緊張すんな!」

光彦「元太君の口から緊張と言う言葉が出るとは......」

元太「どー言う意味だよ」

光彦「いえ、別に......」

歩美「......」

歩美(結局、頭の中が真っ白なまま来ちゃった。どうしよう)

光彦「じゃあ、チャイム押しますよ!」

ピンポーン



阿笠「お、どうやら来たみたいじゃな」

コナン「良し、迎えに行こう。哀ちゃん」

灰原「う、うん......」

コナン「ん?」

灰原「だいじょうぶかな、お兄ちゃん......」

コナン「ひょっとして、緊張しちゃった?」

灰原「うん.........。わたし、みんなとうまくおはなしできるかな?」モジモジ

コナン「大丈夫だよ。みんな優しいし。僕もいるから。さあ」ギュッ

灰原「う、うん!」

コナン(さて、アイツらもフツーにしてくれりゃ良いんだがな......)



光彦「な、何だかドキドキしますね!」

元太「俺はそれより腹減ったぜ」

光彦「早すぎますよ!」

歩美(ど、どうしよう......。ドキドキして来ちゃうよ)ドキドキ

ガチャッ

コナン「や、みんな。わざわざありがとう。来てくれて」

元太「おー!コナン!来たぞー!」

光彦「お元気そうで何よりです!」

歩美「......」

コナン「ん?歩美ちゃん?どうしたの?」

歩美「あ、ご、ごめんなさい!こんにちは、コナン君!元気そうで良かった!」

コナン「うん、ありがとう」ニコッ

歩美(良かった、コナン君、元気そうで)

光彦「あれ?灰原さんは?」

コナン「あ、後ろにいるよ。哀ちゃん?」

灰原「......」モジモジ

光彦「は、灰原さん?」

元太「どうしたんだ?」

歩美「哀ちゃん......?」

灰原「う、う......」

コナン「さ、哀ちゃん。アイサツして」

灰原「......こ、こんにちは」ペコッ

光彦「あ、やっぱりまだ......」

コナン「まあ、そうなんだ。だから、緊張してるのさ」

灰原「......」ギュッ

コナン「とにかく、入って。博士も待ってる」

光彦「わ、分かりました。お邪魔します」

元太「腹減ったぜー!」

歩美「......」

灰原「......?」

コナン「どうしたの?歩美ちゃん?」

歩美「う、ううん!何でもないよ!お邪魔しまーす!」

コナン「何だろ?」

灰原「......?」

歩美(手、握ってる。良いなあ、哀ちゃん......)

中断します。
明日更新予定です。

遅くなって申し訳ありません、昼までには再開します。

阿笠「お、来た様じゃな」

光彦「こんにちは、博士」

元太「メシ食いに来たぜ!」

光彦「元太君、お祝いに来たんですよ?コナン君と灰原さんの!」

元太「おう!だからメシ食うんだろ?」

阿笠「ホホッ、元太君らしいのう」

歩美「こんにちは、博士」

阿笠「お、歩美君も来ておったか。ん?顔色が優れん様じゃが?」

歩美「う、ううん!大丈夫だよ!」ニコッ

コナン(何か歩美、調子が悪いのかな?)

続き楽しみです。

コナン(歩美の調子がおかしいのは気になったが、とにかく俺達は配膳を済ませ、お祝いを始める事にした)



阿笠「えー、では。今日は哀君とコナン君が退院したお祝いと言う事で、ささやかながらお祝いをする事にしたので、どうか存分に楽しんでもらいたい。思えば大変な......」

コナン「博士、堅苦しいのは抜きにしようよ」

元太「そーだぜ博士!腹減ったぜ!」

阿笠「む、むう。分かったわい。では、乾杯の音頭をコナン君。頼むぞい」

コナン「分かった。みんな、今日はありがとう。この通り元気になったのも、みんなのお陰だよ。本当に感謝してる」ペコッ

コナン「哀ちゃんはまだ、色々思い出せて無い事があるけど、どうかみんなにも協力して欲しい」

光彦「もちろんです!」

元太「それより腹減ったぜ!早くしろよコナン!」

歩美「......」

コナン「ハハ、ゴメンゴメン。哀ちゃんからも、何かあるかい?」

灰原「ん、あの、あの......」

灰原「わ、わたし、まだなにもわからないけど......。みんなのことも、わからないけど......」

灰原「わたしとなかよくしてほしい、な」ニコッ

歩美(!)

光彦「灰原さん......(可愛いです!)」

元太「おー!任せとけ!」

歩美「......」スタスタ

コナン「歩美ちゃん?」

灰原「......?」

歩美「哀ちゃん。私の事、覚えてないもんね。病院でも会ったけど、私は吉田歩美。歩美って呼んでね」ニコッ

灰原「あゆみ、ちゃん......?」

歩美「うん。仲良くしてね!」ギュッ

灰原「う、うん!」ニコッ

歩美(バカだ、私。私達の事、覚えてなくても哀ちゃんは私達と仲良くしたいって言ってくれるのに。自分の事ばっかり......)

歩美(今がどうだって、哀ちゃんは大事な......お友達だもん!)

元太「それなら、俺は小嶋元太。元太で良いぞ!」

光彦「僕は円谷光彦です!み、光彦で良いです!」

灰原「げんた、くん。みつひこ、くん......。ありがとう、よろしくね」ニコッ

元太「おう!」

光彦「こちらこそ!」

コナン(メシ食いながら、徐々に打ち解けさせようと思ってたが、いらない心配だったか。子供に戻ってんなら、子供同士。ストレートにこうやって最初からやらせるべきだったな)

コナン(色んな意味でコイツらを見くびってたな。反省しなきゃな)フッ

コナン「よし!挨拶も終わったし、食べよう!」

一同「おー!」

コナン「じゃ、かんぱーい!」

一同「かんぱーい!」

コナン(さて、料理は灰原の好物をなるべく選んだが......。どうかな)

元太「よーし、食うぞー!」

歩美「哀ちゃん、一緒に食べよ?」

灰原「うん!お兄ちゃんもこっちきて!」グイッ

コナン「えっ?」

灰原「はい、ここ!」ニコッ

コナン(あ、歩美と灰原の間?)

コナン「いや、2人が隣同士の方が」

歩美「私は良いよ!」ニコッ

コナン「な、いや、それは......」

光彦「コ、コナン君ズルいですよ!」

元太「そうだぞ!席変われよ!」

コナン「い、いや、だから......」

阿笠「これこれ、やめなさい……」

元太「どけよ、コナン!」

コナン「痛っ!ちょ、やめ……」

歩美「元太君、やめてよ!」

灰原「ちょっと、やめてよぅ!お兄ちゃんをいじめないで!」グイッ

光彦「は、灰原さん……」

灰原「もう!お兄ちゃんをいじめたらゆるさないから!」ジロッ

元太「う……」

歩美(哀ちゃん、強いなあ……)

コナン(やっぱ記憶を失くしても、強えーな。灰原……。てか、褒めた矢先にこれかよ、ハハハ……)



コナン(と、まあトラブルはあったが、その後は再び食事をしながら和やかムードになった。灰原も歩美ちゃんとすっかり打ち解けたようだった)

歩美「今日のお料理、みんな美味しいね!」

灰原「うん!」

歩美「あ、このサンドイッチ……」

灰原「?」

コナン(お、それに気付いてくれたか……。灰原が好きだって博士が言ってたから用意したが……)

歩美「哀ちゃん、覚えてる?このサンドイッチ。前に、哀ちゃんが好きだって言ってたピーナッツバターとブルーベリージャムのサンドイッチ」ニコッ

灰原「……ごめんね、わかんない」

歩美「そっか。ごめんね。前にね、私と一緒に、サンドイッチ作るのにジャム買いに行ったんだよ?」

灰原「そうなの?」

歩美「うん。行く時にね、2人でお化粧したんだよ。哀ちゃん、とってもお化粧上手だったの」ニコッ

灰原「おけしょう?わたしが……?」

歩美「うん、そうだよ。哀ちゃん、とってもキレイだった!」

灰原「そう、なんだぁ……。なんか、うれしい」ニコッ

歩美「え?」

灰原「わたし、あゆみちゃんと、なかよくしてたんだね」ニコッ

歩美「うん!哀ちゃんは、歩美の、1番のお友達!」ニコッ

灰原「ありがとう、あゆみちゃん」ニコッ

コナン(いい感じだな。ありがたいぜ。上手く灰原の心を明るくしてくれたな。だが、思い出の味でも特に効果は無し、か)

光彦(うー、女の子同士話していると、入り込めません……)

元太「博士、おかわり!」

阿笠「よ、良く食べるのう……」

光彦「元太君、食べるだけじゃなくて周りに目を向けて下さいよ……」

コナン(ったく、コイツらと来たら……)

中断します。
また後程。

再開します。
>>124
ありがとうございます。

コナン(と、ガールズトークが弾み入り込めなくなった俺達は男連中でゲームをする事にした)

光彦「灰原さん達、良いんですか?」

コナン「ま、今は盛り上がってるし。そっとしてやろうぜ」

コナン(女の子同士じゃなきゃ、出来ねー話もあるもんな)

元太「それより早くやろうぜ!」

光彦(僕は灰原さん達の話が気になります......)チラッ

コナン(バレバレ過ぎだぜ、光彦......)

コナン(その、光彦も気になる会話はこんなんだったらしい)



歩美(あれ、コナン君達、あっち行っちゃった?でも、哀ちゃんとまだお話したいし)

灰原「ねぇ、あゆみちゃん?」

歩美「何?哀ちゃん?」

灰原「わたしって、どんなかんじだったの?」

歩美「え?」

灰原「わすれちゃうまえ、わたしはみんなとどうしてたのかなって」

歩美「うーん、仲良しだったよ!皆で遊んだり、キャンプしたり、色んな所行ったり」

灰原「そうなんだぁ......。みんなといろんなとこ、いったんだね。おもいだせないけど......」

歩美「ううん。気にしないで!」

灰原「うん。せいかくも、いまとおんなじだったのかなぁ......」

歩美「うーん、ちょっと違ったよ?何て言うか、大人っぽいって言うか、大人しいって言うか」

灰原「おとなっぽい?」

歩美「うん!何でも知ってるし、頼りになるし、カッコ良かったよ!」

灰原「そうなんだぁ、カッコよかったんだぁ」

歩美「うん!ちょっと大人っぽ過ぎて、時々遠くに感じちゃう事もあったけど......」

灰原「そっか......。ねぇ、あゆみちゃんはいまのわたしとまえのわたし、どっちがいい?」

歩美「え?それは......」

灰原「いまのわたし、なんにもわからないし。ほんとうはみんな、まえのわたしのほうがいいのかなって」

歩美「そんな事無いよ!」

灰原「!」

歩美「私、前の哀ちゃんも、今の哀ちゃんも好きだもん!どっちだって、私の大事なお友達だもん!」

灰原「あゆみちゃん......。ありがとう」ニコッ

歩美「うん!」ニコッ

灰原「ねぇ、あゆみちゃん?」

歩美「ん?なあに?」

灰原「お兄ちゃんは、まえのわたしとなかよしだった?」

歩美「!!」

灰原「お兄ちゃん、まえのわたしのことは、すきだったのかなあ」

歩美「あ、哀ちゃん......」

灰原「ねぇ、おしえて?」

歩美(ど、どうしよう。何て言えば良いんだろ)

灰原「あゆみちゃん?」

歩美「あ、えーっとね......。仲良しだったよ?何て言うか......。2人で私の知らない内緒の話とか、してたし」

灰原「そう、なの?」

歩美「うん。ちょっと、うらやましかったな」ボソッ

灰原「あゆみちゃんも、すきなの?」

歩美「え?」

灰原「あゆみちゃんも、お兄ちゃんの事、すきなの?」

歩美「え、あ、あの......」

灰原「わたし......。お兄ちゃんのこと、だいすきだから......。でも、まえのわたしとお兄ちゃんがなかよくなかったら、やだし......」

灰原「でも、いまのわたしよりすきなら、それもやだなって......。まえのわたしが、お兄ちゃんをすきだったのかも、わからないし」

歩美(哀ちゃん、それって......)

灰原「あゆみちゃんは?どうなの?」

歩美「わ、私は......」

歩美(隠してちゃ、ダメだよね)

歩美「私も、コナン君の事、大好き......だよ?」

灰原「......そっか、いっしょだね!」ニコッ

歩美「え?」

灰原「あゆみちゃんもお兄ちゃんの事すきなら、いっしょだね!」ニコッ

歩美(一緒......なのかな?)

灰原「ねぇ、お兄ちゃんのどこがすき?」

歩美「えっ?ど、どこって」

灰原「どこが、すき?」

歩美「え、えっと......」

灰原「わたしは、やさしいところがすき!あたまをなでてくれるのも、ギュッとしてくれるとこも」ニコッ

歩美「そんな事、してくれるの?」

灰原「うん!」

中断します。
また後程。

歩美(私、そんな事してもらった事無いよ......。と、言うか今の哀ちゃんみたいに出来ないよ。コナン君に飛び付いたりとか)



光彦(向こうが気になって仕方ありません!聞きたいです!)

コナン「何してんだよ、光彦?」

光彦「え?」

元太「次、光彦だぞ!早くしろよ!」

光彦「あ、す、すみません」

光彦(ゲームよりも話が......)

コナン(さっきから光彦の奴、灰原達をチラチラ見過ぎだぜ。しかし、俺もきにならなくもないが......)



灰原「あゆみちゃん?」

歩美「あ、ゴメンね。ちょっと考え事しちゃって」

灰原「うん、いいよ」ニコッ

歩美「ねぇ、哀ちゃん。1つ聞いても良い?」

灰原「なあに?」

歩美「あの、哀ちゃん、哀ちゃんは......」

阿笠「みんな、喉が渇いたじゃろう?ジュースでもどうかね?」

元太「やったぜ!」

光彦「戴きます!」

灰原「あゆみちゃん、ジュースだって」ニコッ

歩美「あ、うん......」

歩美(聞けなかったなあ、哀ちゃんに)

コナン(その後、時間も遅くなり、探偵団の連中を博士が送って行く事になった)

コナン「じゃあ、みんな。ありがとう、来てくれて楽しかったよ」

灰原「またあそんでね!」ニコッ

歩美「うん......(結局、あの後お話出来なかったなあ)」

光彦(あまり灰原さんとお話出来ませんでした......)

元太「あー、腹減ったぜ」

阿笠「君はそればっかりじゃのぉ......」

コナン「じゃ、博士。みんなをよろしく」

阿笠「うむ」

歩美「じゃあ、また明日ね。哀ちゃん」

灰原「あした?」

歩美「え?」

コナン「あ、ゴメン歩美ちゃん。まだ学校に行くかは分からないんだ」

歩美「あ、そうなんだ」

灰原「がっこう......」

コナン「後で話そう、哀ちゃん」

灰原「うん」

歩美「あ、哀ちゃん」

灰原「なあに?」

歩美「さっき2人でお話したのは、コナン君には内緒にしてね!」ボソッ

灰原「うん、わかった」ニコッ

阿笠「じゃ、行ってくるわい」

灰原「またねー!」ニコッ

光彦(ああ、笑顔が素敵です!灰原さん!)

元太「じゃあ、またなー!」

光彦「お休みなさい!」

歩美「またね、コナン君、哀ちゃん」

コナン「ああ、お休み」

灰原「おやすみなさい」



コナン「さて、行っちまったな。中に入るか」

灰原「うんっ」

コナン(しかし、歩美の様子が何かおかしかったな。何だろ?)

灰原「ねぇ、お兄ちゃん」

コナン「ん?」

灰原「がっこう、ってなあに?」

コナン「ああ、学校はね、みんなでお勉強する所さ」

灰原「そうなんだ。がっこうにいけば、あゆみちゃんたちにあえる?」

コナン「ああ、会えるよ」

灰原「そっか。ねぇ、お兄ちゃん。わたしも、がっこうにいっていい?」

コナン「うーん、学校に行くのは、まだ早いと思うけど......」

灰原「おねがい、お兄ちゃん」

コナン「よし。分かった。明日から一緒に行こう」

灰原「ありがとう、お兄ちゃん」ニコッ

コナン(まだ早いと思うが、今日の様子なら大丈夫だろう。前向きになってるみたいだしな。記憶が戻る様子は、相変わらず無かったけどな)



光彦「でも、記憶は戻って無かったけど、灰原さんもコナン君も元気そうで良かったですね!」

元太「おう!明日アイツらが来たら、少年探偵団復活だな!」

阿笠「まあ、2人は病み上がりじゃし、お手柔らかに頼むぞい」

歩美「......」

光彦「歩美ちゃん?」

歩美「え?」

元太「お前、今日おかしいぞ?」

歩美「な、何でもないよ!」

歩美(哀ちゃんに聞けなかったもんなあ。コナン君の事、どういう風に好きなのか)

歩美(お兄ちゃんとして好きなのか、男の子として好きなのか)

歩美(もし、男の子として好きなら、それはどっちなのかなあ?)

歩美(何も覚えてない、今の哀ちゃんだから好きになったのかな。前から哀ちゃんがコナン君を好きで、その気持ちが残ってるのかな)

歩美(昔は、コナン君の事、何とも思って無いって言ってたけど、本当はどうなのかなあ)

歩美(どっちにしても、哀ちゃんに私、勝てるのかなあ......。でも、哀ちゃんはお友達だし)

歩美(どうしたら、良いのかなあ......)

中断します。
また後程。

コナン(そんな歩美の葛藤を知るのは、少し後になるが、兎も角、灰原本人の希望もあり、明日から学校に行く事になった)

コナン(今の灰原にとって、未知の場所である学校は、行った事の無い、楽しみな場所になっていた)

灰原「ねぇ、お兄ちゃん。がっこうって、たのしい?」

コナン「ん?もちろん、楽しいよ。でも、面倒臭いことや、大変な事もある。そう言う所さ」

灰原「そうなの?なんで?」

コナン「なんでって......。勉強したりとか、掃除当番になったり、給食当番したりとか。色々あるのさ」

灰原「きゅうしょく?」

コナン「昼御飯の事さ。自分達で盛り付けて、自分達で配って、みんなで食べるのさ」

灰原「へぇー!おもしろーい!はやくいきたいな!」ニコッ

コナン「明日になるまでの辛抱さ」

灰原「うんっ!」

コナン(やれやれ。この期待通り、今の灰原にとって、学校が楽しい物になりゃ良いんだがな)

コナン(そして、翌日......)

灰原「ね、お兄ちゃん!はやくいこ!」ニコッ

コナン「ちょっと待って、早すぎるよ」

灰原「だってぇ、はやくいきたいもん!」ニコッ

阿笠「やれやれ、元気じゃの」

コナン「全くだ」

阿笠「しかし、大丈夫かのう?」

コナン「ダメなら早退するさ。連絡する」

阿笠「うむ。頼んだぞい」

コナン「ああ。じゃ、行ってくる」

灰原「いってきまーす!」

阿笠(本当に何も無いと良いがの......。大丈夫じゃとは思うが)

コナン「ねぇ、哀ちゃん?」

灰原「なあに?」

コナン「その、手を繋いで学校行くの?」

灰原「うん!なんで?」

コナン「あ、いや......」

コナン(流石に学校の連中の前は恥ずかしいぜ......)

コナン(と、まあ恥ずかしながらも歩いていたのだが)

光彦「あ、あれ!コナン君達ですよ!」

元太「お、ホントだ!」

歩美「あ、コナン君!哀ちゃーん!」

コナン「あ、みんな!おはよう!」

灰原「おはよー!」ニコッ

光彦「おはようございます......って、コナン君?!」

歩美「あっ......」

コナン「は?」

光彦「な、何で手を繋いでるんですか?」

コナン「え?いや、それは......」

灰原「いっつもだよ?ね、お兄ちゃん」ニコッ

コナン「ま、まあね」

光彦「」

歩美(良いなあ......)

光彦「ズ、ズ、ズルいですよ!灰原さんと手を繋ぐなんて......」

コナン「ちょい、光彦」チョイチョイ

光彦「何ですか?」

コナン「今は記憶がねーんだから、灰原のしたい様にさせてやれよ。な?」

光彦「わ、分かりました......。すみません」

コナン「ま、とにかく行こう」

元太「おう!遅刻しちまう!」

コナン「さ、行こう。哀ちゃん」

灰原「うん!」ギュッ

歩美(コナン君も、嫌そうじゃないなあ。良いなあ......)

コナン(と、出会い頭に話し込んでしまったのでちょっとギリギリではあったが、何とか遅刻せず俺達は学校に到着した)

コナン「ふぅ、間に合ったな」

灰原「ねぇ、お兄ちゃん。これが、がっこう?」

コナン「そうだよ。ここが僕達の通う帝丹小学校さ。哀ちゃんも、通ってたんだよ」

灰原「そっか。ねぇ、お兄ちゃん。すごいね!おおきいね!」

コナン「そうだね。後で中を見て回ろう」

光彦「コナン君、早く行かないとチャイム鳴りますよ!」

コナン「おっと。みんなは先に教室へ。僕達は小林先生の所に行くから」

元太「分かった!」

コナン「さ、行こう」ニコッ

灰原「うん!」ニコッ

歩美(コナン君、凄く優しそう。あんな顔、見た事無いよ)

コナン(連絡は昨日しておいたが、やはり記憶を無くした灰原と先生を先に挨拶させておこうと、俺達は職員室へ向かった)



コナン「良し、着いた」

灰原「お兄ちゃん、ここは?」

コナン「ここは職員室。先生が居る所さ」

灰原「せんせい?」

コナン「そ、僕らの勉強を教えたり、面倒を見てくれる人だよ」

灰原「ふぅん」

ガラッ

小林先生「あら、コナン君!来たのね!」

コナン「先生、おはよう。どうしたの?」

小林先生「昨日連絡をもらって、そろそろあなた達が来ると思って。外で待とうと思ったの」

コナン「そっか」

小林先生「本当に無事に退院出来て良かったわ。何も出来なくてごめんなさい」

コナン「そんな、こっちこそ心配かけてゴメンね」

小林先生「ううん。私は先生だもの。あなた達の心配をするのは当然よ」ニコッ

コナン「ありがとう、先生」

小林先生「ところで、灰原さんは?」

コナン「え?」

灰原「......」ギュッ

コナン(あ、ヤベッ。緊張しちまってるな)

コナン「先生、ゴメンね。話した通り、今の哀ちゃんには記憶が無いから......」

小林先生「良いの、大丈夫よ」ニコッ

灰原「......」

小林先生「こんにちは、灰原さん。私の事は、今は分からないわよね」

灰原「......う、うん」

小林先生「私は、あなたの先生よ。小林先生って呼んでね」

灰原「こばやし、せんせい?」

小林先生「そうよ。仲良くしてね。あなたが来るのを、ずっと待ってたの。会えて本当に嬉しいわ」ニコッ

灰原「ほんとう?」

小林先生「ええ、本当よ。あなたは私の大事な生徒ですもの」ニコッ

灰原「せいと?」

小林先生「私の大事な、子供達って事よ」

灰原「......ありがとう、せんせい」ニコッ

コナン(気を許したみたいだな。こんな事なら、昨日先生も呼んであげれば良かった。心配し過ぎたか......)

小林先生「さ、教室へ行きましょうか。お友達がたくさんあなたを待ってるわ」ニコッ

灰原「ほんとう?」

小林先生「ええ、本当よ。コナン君?今の灰原さんは、みんなの事を忘れているなら、1度自己紹介をした方が良いと思うの。今の灰原さんには、みんな初めて会うのと変わらないから」

コナン「うん、そうだね」

灰原「だいじょうぶ、かな」

小林先生「え?」

灰原「ちょっと、おっかない......」

コナン「......大丈夫だよ。お兄ちゃんがついてるから。それに、みんな友達だもの。元気に挨拶してあげなよ」

灰原「うん......。わかった!」

小林先生「本当にみんな忘れてしまったのね。こう言っては失礼だけど、本当に別人の様ね」

コナン「僕もそう思う」

小林先生「それに......」

コナン「え?」

小林先生「あなたもね、コナン君」

コナン「僕が?」

小林先生「ええ、まるで本当のお兄さんみたいよ。愛情に満ちた目で灰原さんわ、見てるわ」ニコッ

コナン「え?いや、あの......」

小林先生「ふふ、さ!行きましょうか」

コナン「う、うん」

中断します。
また後程。

>>150修正です。


小林先生の部分
灰原さんわ→灰原さんを

コナン(正直、胸はザワついてた。先生にあんな事を言われたのもあるし......)

コナン(灰原が大勢の前で緊張して、体調を崩さないかが心配だった)



元太「先生、おせーな」

光彦「その内来ますよ!コナン君と灰原さんと!」

歩美(大丈夫かな、哀ちゃん......)

ガラッ

小林先生「はーい、皆さん。おはようございます!」

「おはよーございます!」

小林先生「はい、いいお返事ですね!今日は皆さんに嬉しいお知らせがあります!」

「なんだろ?」

「なにかな?」

小林先生「この間交通事故に遭って入院していたコナン君と灰原さんが、今日から学校に来れる様になりました!」

「おー!」

「良かったね!」

小林先生「それで、2人から皆さんにご挨拶したいそうです!拍手で迎えてあげてね!」

「はーい!」

コナン「何か、オーバーな事になったな」

灰原「お兄ちゃん、わたし、ぷるぷるしてきた」プルプル

コナン「大丈夫、一緒に行こう」ギュッ

灰原「うん、わかった」ニコッ

コナン(良し、行こう)

「あ、来たよ!」

「あれ?手をつないでるよ?」

元太「来たな!」

光彦(うらやましい登場です)

歩美(コナン君、顔真っ赤だね)クスッ

小林先生「はい、皆さん拍手ー!」

パチパチパチパチ

コナン「えっと、みんな。心配かけてごめんなさい。今日からまたよろしくね」ニコッ

「コナン君ってあんな感じだっけ?」

「でも、良いね!」

パチパチパチパチ

コナン「哀ちゃん、大丈夫?」

灰原「う、うん。てを、にぎっててね」ギュッ

コナン「うん、大丈夫」

灰原「......」スーッ

歩美(哀ちゃん、大丈夫かな)

光彦(灰原さん、今日もお綺麗です!)

灰原「み、みなさん。こんにちは!」

「えっ?」

灰原「えっと、わたしのなまえは、はいばらあいです!」

「灰原さん、どうしたの?」

「いつもと違うよ?」

灰原「う、えっと、えっと......」

小林先生「灰原さんは交通事故に遭った時に、事故のせいで記憶を失ってしまったの」

「えーっ?」

小林先生「だから、皆さんの事も、自分の事も覚えていないの」

「かわいそう......」

小林先生「でも、皆さんともう1度お友達になりたいと言う気持ちで、挨拶しているの。皆さん、聞いてあげてね」

「はーい!」

歩美(哀ちゃん、頑張って)

灰原「えっと、えっと......」

コナン「大丈夫。ゆっくり話して」

灰原「う、うん」

灰原「えっと、わたしは、みんなのことも、じぶんのこともおぼえてないけど......」

灰原「みんなと、おともだちになって、なかよくしたい......です。よろしくおねがい、します!」ペコッ

「......」

コナン(ダメか?ギャップに付いて来れないか?)

「かわいー!」

「いつもよりかわいい!」

「よろしくね、灰原さん!」

パチパチパチパチ

灰原「あ......」

コナン「良かったね、哀ちゃん」

灰原「うんっ!」ニコッ

本日はここまでです。
明日予定です。

歩美(良かった。でも、何だろ。やっぱり変だな、私......)

小林先生「はい、みんなありがとう。じゃあ、2人は席に座ってね。授業始めるわよ!」

コナン「はーい。じゃ、座ろう。席は僕の隣だから」

灰原「うん。お兄ちゃんのとなりでよかった」ニコッ

コナン(とりあえず出だしは良いな。後は授業だな。落ち着いて受けられるかどうか)



コナン(何て心配をよそに、灰原は大人しく授業を聞いていた。学校の授業と言うものが珍しく楽しいと言う感じだった)

コナン(それは良い事なのだが、裏を返せば学校で授業を受けた記憶は戻って来ていない、ただ授業を受けても記憶を取り戻す手立てにはならない事を意味していた)

小林先生「はい、では次の問題です。ここにリンゴが5個あります。このリンゴを3個食べたら、残りはいくつでしょう?」

灰原「えっと、リンゴが5つあって、3こたべたら......」

小林先生「はい、分かる人は?いるかな?」

灰原「ねぇ、お兄ちゃん?2つ?」

コナン「哀ちゃんがそう思ったなら、手を挙げてごらん?」

灰原「おしえてよぅ......」

コナン「間違ってもいいから、挙げてごらん?」

灰原「うん。せんせい、はーい!」

小林先生「はい、灰原さん。分かった?」

灰原「えっと、2つ?」

小林先生「はい!良く出来ました!」

灰原「えへっ、あたったよ!お兄ちゃん!」

コナン「うん。良かったね」ニコッ

灰原「ごほうび、なでなでして!」ニコッ

コナン「いっ?!」

コナン「じゅ、授業が終わったらね」

灰原「はーい!」ニコッ

コナン(くっ、断れなかったぜ......)

コナン(こうして授業を受けて分かったが、飲み込みは早いものの、灰原の学力・知識レベルは小学校1年レベル位である事が再確認された)

コナン(ここまで何もかも失っていると、果たしてこれは単なる記憶喪失で片付けて良いのだろうか?何か別の要因があるのでは?と考えてしまう)

ちょっと遅くなってしまいました。
申し訳ありません。

夜に本格的に投下します。

コナン(しかし、前と比べ子供らしくなり明るくなった事でクラスメイトからの評判は良く、本人も満足みたいだった)

女子1「灰原さん、お話しよ」

灰原「うん!あいでいいよ!」

女子2「ホント?」

灰原「うん!」

女子1「嬉しいな。前は何か、お話しにくかったから」

灰原「そうなの?」

女子2「うん。ちょっとおっかなかった。あ、でも、イヤじゃないよ!ちょっとおっかなかったの」

灰原「そうなんだぁ。ごめんね!」

女子1「ううん!これから仲良くしてね、哀......ちゃん!」

灰原「うん!」ニコニコ

コナン(楽しそうだな。アイツを見て誰が中身は本当は18なんて思うかな。こうして見ると今の方がアイツには幸せなのかも......)

コナン(いや、バカ野郎。何考えてんだ......。あくまで仮初めの人格じゃねーか。記憶を取り戻す方が、アイツの為に決まって......)

灰原「お兄ちゃん!」

コナン「ん?どした?」

灰原「えへへ、おともだちたくさんできたの!」ニコッ

コナン「そ、そっか。良かったね」

灰原「うん!よかった!」ニコッ

コナン(でも、記憶を取り戻しても......。灰原はこんな無邪気な笑顔を見せる事はあるのかな)

灰原「どうしたの?」

コナン「ん?何でもないさ」ナデナデ

灰原「そっか」ニコッ

コナン(ま、今は哀ちゃんとしての生活を守ってやらなくちゃな)

光彦「何だか、コナン君も灰原さんも、別人みたいです」

元太「そりゃ、覚えてないんだからそうじゃねーのか?」

光彦「灰原さんは分かりますけど、コナン君も変わり過ぎですよ。あんなコナン君、見た事ありません」

元太「そうかあ?」

光彦「そうですよ。いつも一緒ですし。他の子達とも話してるから僕らとあんまり関われてないじゃないですか」

元太「光彦は面倒な事考えすぎじゃねーのか?」

光彦「もう良いですよ......」

歩美(コナン君と哀ちゃん、何だか遠くに行っちゃうみたい。2人が学校に来てくれて嬉しかったのに、何だか寂しいな......)

コナン(この探偵団の面々が感じる違和感は、後々ちょっとしたトラブルを起こす事になる。が、この日はとりあえず無事に終わった)

コナン(......流石に、給食まで食べさせてと言われた時はどうしようかと思ったが)



小林先生「はい、では皆さん。いただきまーす!」

「いただきまーす!」

灰原「はい、お兄ちゃん。あーん!」

コナン「い、いや!良いよ!自分で食べるから!」

灰原「どうしてぇ?」

「コナン君達、あーんしてだって」クスクス

「結婚してるみたいだね」クスクス

コナン(クソ、周りから笑いが......)

灰原「はい、あーん!」

コナン「だ、だから......」

灰原「はい、たべて!」

コナン「あ、あーん......」

灰原「おいしい?」ニコッ

コナン「う、うん......」

灰原「よかった!」ニコッ

小林先生(本当に灰原さんとは思えないわね......。でも何だか微笑ましいわ)クスッ

コナン「あ、哀ちゃん。後は自分で食べるから......」

灰原「えぇー、なんで?」

コナン「給食は、みんな自分で食べるんだよ。みんな自分で食べてるでしょ?」

灰原「うん.....」

コナン「家では、良いから。ね?」

灰原「うんっ、わかった」コクッ

光彦(なんて羨ましい......。コナン君)

歩美(哀ちゃん、あんな事も......)


コナン(ありゃ、参った。流石に恥ずかしかったぜ......)

コナン(そして、放課後)

元太「コナン!久しぶりに遊ぼうぜ!」

光彦「そうですね、久しぶりに!」

歩美「......」

コナン「ああ......。ん?」

灰原「......」

コナン「哀ちゃん?」

灰原「お兄、ちゃん。わたし、つかれちゃった......」フラッ

コナン「あ、哀ちゃん!」ガシッ

光彦「灰原さん?!」

元太「大丈夫か?」

歩美「哀ちゃん!?」

コナン「大丈夫か?しっかり!」

灰原「うん、だいじょうぶ......」ニコッ

コナン(そっか、やはり今の灰原には学校は未知の空間。楽しそうに見えても、精神的には相当疲弊してたのか......)

コナン「ゴメン、今日は無理だ。哀ちゃんを家に連れてかなきゃ」

元太「お、おう」

光彦「仕方ありませんよ、具合が悪いんですから」

コナン「ゴメンな」

灰原「お兄ちゃん、ごめんね。みんな、ごめんね......」

コナン「気にしないで、立てる?」

灰原「うん......」

元太「無理すんなよ!」

光彦「博士に迎えに来てもらった方が良いんじゃないですか?」

コナン「そうするよ。ゴメン」

光彦「いえ、お大事に」

歩美「......」

元太「何だよ、歩美?灰原が心配じゃねーのか?」

歩美「え?ううん!違うよ!き、気をつけてね、コナン君、哀ちゃん」

コナン「うん、また明日ね」

灰原「またね......」

歩美「う、うん」

コナン「さ、肩を貸して」

灰原「うん......」

コナン「じゃ、またね」



光彦「大丈夫ですかね、灰原さん」

元太「わかんねーよ。でも、遊べなかったな」

光彦「具合が悪いんですから、無理ですよ」

歩美「......」

歩美(私、どっちなんだろ。哀ちゃんの心配してるのかな。コナン君が行っちゃって、寂しいのかな......)

コナン(灰原は、家に帰って熱などを測ってみたが、特に異常は無く、やはり疲れが出た様だった)

コナン「大丈夫かい?」

灰原「うん、ごめんね。お兄ちゃん」

コナン「良いんだ。今日はゆっくり休みなよ。明日も無理に学校には」

灰原「やだ、いきたいよ」

コナン「でも、また倒れるかも」

灰原「だいじょうぶ、いきたいの」

コナン「でも......」

灰原「おともだちとも、あいたいし、お兄ちゃんとはなれたくないの」

コナン「!」

灰原「お兄ちゃんだけ、がっこういったらわたし、ひとりになっちゃう」

コナン「阿笠はか......。いや、お父さんがいるじゃないか」

灰原「わかってるよ。でも、お兄ちゃんといっしょがいい」

コナン「哀ちゃん......」

灰原「お兄ちゃんといっしょにいたい。おねがい。がっこう、いかせて?」

コナン「......分かった」

コナン「でも、無理はしちゃダメだよ」

灰原「うん。わかった」ギュッ

コナン「......」ギュッ

灰原「お兄ちゃん、ごめんね」

コナン「何で謝るの?さ、とりあえず休みなよ。僕もすぐ行くから」

灰原「うん、ありがとう。お兄ちゃん」

コナン「......ふぅ」

阿笠「お疲れの様じゃな」

コナン「ん、別に......」

阿笠「無理も無い、お前さんの心労も大きいじゃろ。1度帰って休んだらどうじゃ?」

コナン「いや、それは出来ねーよ」

阿笠「しかし......」

コナン「今のアイツには、支えが必要なんだ。だから、側にいてやらなきゃ」

阿笠「しかし、その為にお前さんが身体を壊しては......」

コナン「心配いらねーよ。それに、今は俺自身他の人間に接したくねーんだ。アイツを怖がらせる要因を増やしたくない」

阿笠「?」

コナン「灰原は、敏感なヤツだからな。もし、俺が他の人間と接して、その空気を持ち込んでしまったら、って思うとな」

阿笠「空気を......。なるほど、君が行っとるのはFBIの面々じゃな?」

コナン「ああ。もし記憶が戻らなきゃ、引き合わせなきゃ行けないだろうけど、今はあんまりショックを与えたくねーからな。特に、赤井さんと安室さんは、こちら側の人間とは言え組織にスパイとしていた人間だ。だから......」

阿笠「なるほど、彼女の言う組織のニオイじゃな? 」

コナン「ああ。黒い服を来た高木刑事を見ただけであんだけ怯えちまうんだ。そんなアイツが、組織のニオイを感じたら、どうなるか......」

阿笠「......」

コナン「蘭やおっちゃんには、悪いと思ってるよ。あんだけ心配してくれたのに顔も出さず博士の家に来て、会いに来るなって言ってんだから。でも、俺が今帰ったらどうしても安室さんと接触するかも知れない。それは避けたい」

阿笠「......何故、そこまで。事故の原因は君のせいでは無い、言ってはなんじゃが、哀君の不注意じゃ。君が責任を感じる事は」

コナン「約束、したからよ。守るって」

阿笠「!」

コナン「約束、破りたくねーんだ。これだけはさ。それに、記憶を無くしてまで俺を頼るアイツを、尚更ほっとけねーよ」

阿笠「......」

コナン「博士の気持ちは分かるし、嬉しいよ。でも、しばらくはやりたいようにやらせてくれ。頼む」

阿笠「分かった。なら、もう君に任せよう。じゃが1つだけ言っておく」

コナン「?」

阿笠「今の君は少し哀君に優しすぎる。いつかは自分の記憶と向き合わねばならん以上、厳しい手段も取らねばならん覚悟は必要じゃ」

コナン「......分かった。肝に命じとくよ。じゃ、アイツを寝かせなきゃ。お休み」

阿笠「ああ、お休み」

阿笠(不器用な子じゃな、君達は。無理だけは、せんでくれよ。新一)


コナン「......覚悟、か」

灰原「スー、スー......」

コナン「もう寝たか。疲れてたんだな、余程」

コナン「......」ナデナデ

コナン「......はっ!また無意識に!」

灰原「ん......」

コナン「あ、ゴメン。起こしちゃった?」

灰原「ううん。だいじょうぶ」ニコッ

コナン「そっか、良かった」

灰原「あたま、なでてくれたの?」

コナン「え?あ、いや......。約束、したから。学校、終わったらって」

灰原「うん、うれしい」ニコッ

コナン「そっか」

灰原「お兄ちゃんのて、あったかいよ」ギュッ

コナン「あ、暑いからかな」

灰原「ううん。さわると、わたしのぜんぶがあったかくなる」

コナン「......」ドキッ

灰原「いっしょにねよ、お兄ちゃん」

コナン「うん、分かった」

コナン(やっぱ、1人にゃさせらんねーよ。ここまで純粋な、妹をさ......)

中断します。
また後程。

コナン(しっかし、咄嗟に約束したからなんて言っちまったけど、頭を撫でるのはマズイよな......。いや、こうして一緒に寝るのがもうマズイ......)

灰原「スー、スー......」

コナン「......ま、いっか。ちょっと位」

コナン(と、学校に行った最初の日を終えた俺達は、より体調に気を遣いながら生活する事にした)

コナン(ゆっくりと、環境に馴染ませる事に力を傾けた)

コナン(その甲斐あって、記憶こそ戻らないものの、疲れも見せなくなり、言葉遣いも少し変わり、前よりは大人びた様子を見せた。まだまだ子供のままではあるが)

コナン(しかし、その為に探偵団の連中となかなか交流出来ず、俺の知らない所で溝が出来つつあった)

コナン(そして、学校に通い始めて1週間も過ぎた頃......)



コナン「スー、スー......」

灰原「お兄ちゃん、朝だよ。おきてっ!」

コナン「ん......。おはよう」

灰原「おはよ、早くおきてよ!学校、おくれるよ!」

コナン「ん、分かった......」

灰原「早く早く!」

コナン(1週間経ったら、前より活発になりやがった。参ったな)

灰原「はーやーくーっ!」

コナン「はいはい......」



灰原「行ってきまーす!」

阿笠「おお、気を付けての」

阿笠「すっかり元気になったのぅ」

コナン「記憶は相変わらずだけどな。環境に対する変化と精神年齢の向上は早えーな」

阿笠「そういう無意識の部分で、元に戻りつつあるのかも知れんの」

コナン「かもな。ま、俺も行ってくらあ」

阿笠「気を付けての」

コナン(元に戻りつつある、か。嬉しいハズなんだが、何なんだよこのモヤモヤは?)

灰原「♪」

コナン「哀ちゃん、あんまり急ぐと危ないよ」

灰原「ん、やめてよ。お兄ちゃん!」

コナン「ふぇ?」

灰原「ちゃんをつけるの、やめてよ。子供みたいでヤダ」

コナン(実際、子供だろ。十分)

コナン「じゃあ、何て?」

灰原「あい、ってよんで!」

コナン「呼び捨て?でも、クラスメイトからは哀ちゃんって呼ばれてるじゃないか」

灰原「お兄ちゃんには、やなの!」

コナン「は?」

灰原「お、お兄ちゃんには子供あつかいしてほしくないのっ!」

コナン「何で?」

灰原「もういいっ!お兄ちゃんのバカ!」

コナン「な、何なんだよ......」

コナン(ったく。可愛くねー所は前に戻ってきたかもな)

灰原「もう、お兄ちゃんのバカっ」ボソッ

コナン「はぁ。ん?あれ、歩美達だな」

灰原「ホントだ!歩美ちゃーん!」

歩美「あ、哀ちゃん。おはよう」

灰原「おはよっ!」

コナン「みんな、おはよう」

光彦「お、お早うございます」

元太「お、おう」

コナン「ん?どうした?」

光彦「な、何でもありませんよ」

元太「お、おう。別に」

コナン「?」

灰原「歩美ちゃん、髪切ったんだね!にあってるよっ」ニコッ

歩美「あ、ありがとう」

灰原「どうかした?」

歩美「ううん!別に」

灰原「?」

コナン(何だ?なんかおかしいな?)

中断します。
また後程。

灰原「お兄ちゃん、おくれちゃうよ!」

コナン「あ、うん。そうだね」

灰原「ホラ、いこっ!」ギュッ

コナン「ちょ、ちょっと引っ張らないで」

歩美(また、哀ちゃんとばっかり......)

光彦(灰原さんを一人占め、ですか。コナン君)

元太(光彦も歩美も暗いな、なんか気まずいぜ)



コナン(今思うと、もっとアイツらの事も気にしてやればと反省してるが、あの時はああなるとは思っても見なかった。あれは、学校に着いてからの事だった)

コナン「ったく。また遅刻ギリか」

灰原「お兄ちゃんがおそいからだよ?」

コナン「もう分かったよ。悪かったから......」

灰原「うん。おりこうさんだね」ニコッ

コナン(前とは違う意味で可愛くねー。可愛いけど可愛くねー!)

歩美(うう、2人の中に入っていけないよ)

光彦(2人の世界ですね......)

元太「なー、コナン!今日は放課後遊べんのか?」

光彦(空気を読まずに話しかけましたね)

コナン「ん?大丈夫かな。どした?」

元太「どした?じゃねーよ。ずっと遊んでねーから、探偵団何もしてねーんだぞ」

コナン「確かになあ......」

灰原「?」

コナン「あ、そういや探偵団の事説明すんのすっかり忘れてたな。良し、放課後遊ぶか!」

元太「へへ、そう来なくちゃな」

コナン「2人も、大丈夫だろ?」

歩美「え、あの......」

光彦「その......」

コナン「ん?都合悪いの?」

歩美「う、ううん。あの、あのね?コナン君......」

小林先生「はーい、皆さん!朝のHRを始めますよ!」

コナン「あ、先生来ちゃったよ。また後で。哀ちゃん、座ろう」

灰原「もう、ちゃんはやめてよぅ!」

コナン「わ、分かったよ。あ、哀」

灰原「うんっ」ニコッ

歩美(名前、ちゃんつけてない......。凄く仲良くなってる気がする)

光彦(灰原さんに付きっきりのコナン君に、歩美ちゃんも夢中です......。面白くありません!)



コナン(と、まあアイツらにはこんな不満があったらしい。そして、その後も)


キーンコーンカーンコーン......

小林先生「はい、じゃあこの授業はここまで。当番の人、アイサツしてね」

「きりーつ、れーい、ちゃくせーき」

小林先生「はい、じゃあ休み時間に入ってね」

歩美(あんまり授業、頭に入らなかったなあ)チラッ

コナン「ふぁーあ、眠たい......」

歩美(私、このままじゃダメだよね。普通に哀ちゃんとコナン君とお話して、元に戻らなきゃ)

光彦(今日こそ灰原さんとお話したいです!)

元太「腹へったー」

歩美「コ、コナン君、あの」

光彦「は、灰原さん......」

灰原「ねぇ、お兄ちゃん。おトイレいきたいの」

コナン「ひ、1人で行こうよ」

灰原「中までこなくていいから、いっしょにいこっ!」

コナン「......しょーがないな」

歩美「あ......」

光彦「え......」

歩美(コナン君、あんなお願いまで聞いちゃうの......?)

光彦(何故いつもコナン君ばかり......)

コナン(そして、決定的な事件が遂に)


小林先生「はい、じゃあ今日は似顔絵を書きましょう。2人1組でペアになって、お互いの似顔絵を書いてね!」

「はーい!」

歩美(2人1組で、お話するチャンスかも)

光彦(どうせ灰原さんはコナン君と、なら歩美ちゃんと!)

元太「今日は俺、先生書いてやるよ!」

小林先生「あら、ありがとう」ニコッ

コナン「あんま好きじゃねーんだよな、これ」

歩美「ねぇ、コナン君」

コナン「ん?」

歩美「良かったら、私と一緒に......」

灰原「お兄ちゃん、いっしょにやろっ!」ギュッ

歩美「あ......」

光彦「!」

コナン「ちょ、今歩美ちゃんが」

灰原「ね、いっしょにやろっ!」

コナン「分かったよ、仕方無い」

歩美「......」

光彦「ちょっとコナン君!ひどいじゃないですか!」

コナン「え?」

光彦「今歩美ちゃんが話しかけてたのに!」

コナン「あ、いや。ゴメン。でも、哀をほっとくわけには行かないだろ?」

光彦「良いじゃないですか、灰原さんは他の人と組めば!先に話しかけてたのに歩美ちゃんを無視するなんて酷いですよ!」

灰原「ご、ごめんなさい......」

歩美「......」

光彦「あ、いえ。灰原さんを責めた訳では......。とにかく、コナン君が酷いんですよ!」

灰原「お兄ちゃんのせいじゃないよ、だって」

コナン「いや、良いんだ。悪かった、歩美ちゃん。でも、今の哀の状況は......」

歩美「......やだもん」

コナン「あ、歩美ちゃん。子供みたいな事言わないで......」

歩美「子供だもん!」

「え?」

「何?何?」

小林先生「ど、どうしたの?」

コナン「あ、歩美ちゃん......」

歩美「私、子供だから我満ばっかりできないもん!哀ちゃんもコナン君も大変だって分かってるけど、でも我満できないもん!」

光彦「あ、歩美ちゃん」

元太「どうしたんだよ?」

歩美「ズルいもん。コナン君、哀ちゃんとばっかり。私の事なんて全然かまってくれない!」

コナン「歩美ちゃん、悪かった。でも......」

歩美「でも哀ちゃんが大事なんでしょ!!他の人なんてどうでもいいんでしょ!コナン君のバカッ!!」

コナン「!」

元太「歩美、あんまり怒るなよ。怒るとバカになるって母ちゃん言ってたぞ」

歩美「元太君は黙ってて!」

光彦「お、落ち着いて下さい。みんなビックリしてます」

小林先生「みんな、とにかく落ち着いて」

灰原「あ、あの。歩美ちゃん、ごめんね......」

歩美「......ウソつき」

灰原「え?」

歩美「哀ちゃん、私の気持ち知ってるのに。コナン君に甘えてばっかり」

灰原「ご、ごめんね、でもわたし」

歩美「あの時だって、何とも無いって言ったのに!」

灰原「あの、時......?」

歩美「コナン君の事、何とも思って無いって言ったのに!哀ちゃんのウソつき!!」

灰原「......あっ」ピキーン


「......きなの?コナ......事」

「だったら......する?」

「えー、困る......」

「安心......、私、彼の事......から」


灰原「わたし、私、は......彼の、事......?」

コナン「っ?!ど、どうした!?」

歩美「哀ちゃん......?」

灰原「......」バタッ

コナン「お、おい!しっかりしろ!灰原、灰原ぁ!!」

光彦「灰原さん!?」

コナン「先生、保健の先生を!」

小林先生「え、ええ!」

コナン「いや、元太!力貸してくれ!直接保健室へ!」

元太「お、おう!」

歩美「い、やだ......。哀ちゃん、哀ちゃん!!」

コナン「クソッ、しっかりしろ!灰原!灰原!!」

灰原「......」

コナン「クソッ、目ぇ覚ませよ!灰原......。哀!」

コナン「哀っ!!」



保健師「......うん。熱も無いし、特に問題無さそうね」

コナン「ホント?先生」

保健師「ええ。大丈夫そうよ」

コナン「良かった......」

歩美「哀ちゃん、哀ちゃん......」グスン

光彦「灰原さん......」

コナン「元太、サンキューな」

元太「おう!」

小林先生「無事で良かった......。でも、原因は何なんでしょうか?」

保健師「ええ。聞いた話だと、灰原さんは記憶喪失だとか?」

コナン「うん、そうだよ」

保健師「ひょっとしたら、記憶に何らかの出来事が起きて、そのショックで気を失ったのかも」

コナン「そう言えば、あの時」


「彼の、事......?」


コナン(確かに、彼の事、と呟いた。記憶が、全部か一部かは不明だけど、戻ったのか?)

超面白い

>>184
ありがとうございます。

今晩書く予定ですが、書けなかったら明日書きます。

いつまでも待つよ!乙!

>>186
ありがとうございます。
続き始めます。



歩美ちゃん(と光彦)の方が大人びてるの新鮮だ

灰原「ん......」

歩美「あ、哀ちゃん!」

光彦「灰原さん!」

元太「起きたか?」

コナン(どっちだ?どっちなんだ?オメーは......。灰原?それとも、哀ちゃん、か?)

小林先生「灰原さん、大丈夫?」

灰原「......」

コナン「ぼ、僕が誰か、分かる?」

灰原「お、にい......ちゃん」

コナン「そ、そうだよ。良かった、目が覚めて」

コナン(とりあえず、記憶は戻ってないのか?)

灰原「私、どうして......」

コナン「!?」

灰原「どうしたの?お兄ちゃん」

コナン「あ、いや。何でもないよ」

コナン(この感じ、あどけなさは間違いなく演技じゃねぇ。だが......)

歩美「あ、哀ちゃん、しゃべり方が」

光彦「前に戻ってます!」

灰原「前に......?ごめんなさい、分からないわ......」

コナン(記憶は無いが、精神年齢が元に近づいたのか?)

灰原「ねぇ、お兄ちゃん。私、どうして......」

コナン「あ、うん。教室で気を失って、保健室に運んだんだよ」

灰原「そう、なんだぁ......。ごめんね、みんな」

コナン(戻った、と言うよりも前と今のしゃべり方が混在しているのか......)

歩美「哀ちゃん、ごめんね、私、私」

灰原「......そうだ、思い出した」

コナン「思い出した?何を?」

灰原「私、歩美ちゃんに声をかけられた時、見えたの......」

歩美「何を......?」

灰原「お城、みたいな所。そこで、歩美ちゃんと私......。ううん、私だけど私じゃない人がお話してたの」

コナン(城?もしかして、俺や博士が襲われて一時的に行方不明になったあの時か?)

歩美「何を、話してたの?」

灰原「分からない......。でも、きっと大事なお話......」

歩美「哀ちゃん......」

光彦「灰原さん......」

灰原「うっ......」

コナン「哀!大丈夫か!」

元太「灰原!」

保健師「みんな、お話したいのは分かるけど、灰原さんを休ませてあげて。健康状態も調べないと」

灰原「せん、せい......。お願いがあるの」

保健師「お願い?」

灰原「歩美ちゃんと、2人にしてほしいの。お願い」

歩美「!」

小林先生「でも、身体が」

灰原「大丈夫、何かあったら言うから......。お願い」

コナン「......先生、お願い聞いてあげてよ。僕らも部屋の前で待機してるから」

保健師「分かったわ。でも、無理しちゃだめよ?」

灰原「うん、ありがとう」

光彦「灰原さん......」

コナン「さあ、行こう。2人にしてあげよう」

元太「お、おう」

コナン「歩美ちゃん。僕らは部屋の側にいるから。何かあったら、呼んで」

歩美「う、うん」

コナン「宜しくね。無理しちゃダメだよ、哀」

灰原「うん。お兄ちゃん」



コナン「とりあえず、俺達はここで待とう」

光彦「ええ......」

小林先生「コナン君、申し訳無いんだけどちょっとここをお願い出来るかしら。保護者の方への連絡や病状説明で保健師さんと打ち合わせとかしなきゃいけないから」

コナン「うん、大丈夫だよ。博士に連絡、お願い」

小林先生「ありがとう、宜しくね」

コナン「うんっ」

小林先生「では、先生」

保健師「ええ」

コナン「......ふぅ」

光彦「......申し訳ありませんでした、コナン君」

コナン「ん?何だよ急に」

光彦「僕があの時騒いだから、灰原さんは」

コナン「バーロ。オメーのせいじゃねーよ、気にすんなよ」

光彦「いえ、僕のせいです。僕が下らない事でコナン君に突っかかったから」

コナン「光彦......?」

光彦「僕は、記憶を失った灰原さんや看病に必死になるコナン君の変化を見て、ちょっと距離を感じてました」

光彦「今までの2人と違いすぎて......」

コナン「光彦......」

光彦「何だかそんな2人を見て、僕は自分が除け者にされた様に感じたんです」

光彦「コナン君が灰原さんを一人占めしてる様な。逆に、灰原さんが変わってしまった事で、友達としてのコナン君がいなくなってしまう様な気持ちになったんです」

コナン「......」

光彦「バカですよね、僕は。コナン君はただ、必死に灰原さんを支えようとしただけなのに」

光彦「誰よりも友達想いなコナン君だから、一生懸命だっただけなのに」

光彦「下らないひがみをして、コナン君に当たり散らして」

光彦「灰原さんまで、あんな事になって」

光彦「歩美ちゃんや元太君にも嫌な気持ちにさせて」

光彦「全部僕のせいです。僕の。最低です、僕は」グスン

コナン「違う。オメーは悪くない」

光彦「え?」

コナン「オメーは何も悪くない。俺だ。俺のせいだ。オメーらが俺達を心配してくれてるのに、俺は自分の事で精一杯で......。オメーらの気持ちに気付いてやれなくて」

光彦「コナン君......」

コナン「歩美ちゃんが怒ったのも、オメーが怒ったのも、全部俺のせいだ。俺がオメーらを傷つけたんだ」

コナン「探偵が聞いて呆れるぜ、チキショウ......。俺は人の気持ちなんて全く分かってなかったんだ」

光彦「違います!コナン君は悪くなんて!」

コナン「いや、違わないさ。記憶を失う前に灰原に言われたよ」

光彦「え?」

コナン(俺が成長も進化も出来てないのは、周りの人の気持ちを察してあげる事。そうなんだろ?灰原......)

コナン「ゴメンな、みんな。俺、俺、オメーらを......傷つけ、ちまった......」キラッ

光彦「コナン君、泣いてるんですか......?」

コナン「ハハ、あんまり自分が情けなくてよ......。俺はオメーらを傷つけて、守ろうとした灰原も辛い目に遭わせた。泣きたくねーのに、情けなくて......。涙が止まらねぇよ......」

光彦「やめて下さい!コナン君!ごめんなさい、ごめんなさい!僕が、僕が......」グスン

元太「よー、もういいか?」

コナン「え?」

光彦「元太、君?」

元太「もー2人とも謝ったんだろ?よくわかんねーけど、もうやめようぜ」

コナン「元太......」

元太「母ちゃん言ってたぞ!仲良いからこそケンカになる時もあるって」

光彦「元太君......」

元太「それに、父ちゃん言ってたぞ!ケンカは男につきものだけど、謝ったら恨みは忘れて仲良くしろって!」

コナン「......」

光彦「......」

元太「だから、仲直りしろよ。な?」

コナン「......ぷっ」

光彦「......ふふふ」

コ・光「あーっはっはっは!!」

元太「な、何だよ!何がおかしいんだよ?」

コナン「だって、なあ?」

光彦「え、ええ!元太君に1本取られるなんて」

元太「何だよ、バカにすんなよ!」

コナン「ちげーよ。感謝してんだよ」

光彦「ありがとうございます、元太君」

元太「......お、おう!」

コナン「さて、後は中の2人の話を待とうぜ。そして、みんなで仲直りしようぜ」

光彦「は、はい!もちろんです!」

コナン(俺は、大事な物を見落としてたんだな......。ちゃんと2人にも謝りてぇ。待ってるぜ、歩美ちゃん、灰原......)

中断します。
明日更新します。


>>188
ありがとうございます。

元太にも見せ場があってよかった

ちゃんとみんなキャラが立ってていいな

>>195
>>196
ありがとうございます。

遅くなりました、続き始めます。

コナン(俺達がそんなやり取りをしてた頃、部屋の中では)



灰原「ごめんなさい、歩美ちゃん。こんな事になって」

歩美「ううん......」

灰原「私の事、怒ったんでしょ。嫌いに、なったでしょ。歩美ちゃんの気持ちを知ってるのに、私......」

歩美「ううん、違うよ。嫌いになんかならないもん.....」

灰原「いえ、嫌われても仕方無いわ......」

歩美「哀ちゃん......」

灰原「私ね。あの病院で目が覚めた時、本当に怖かったの。ここはどこなのか、分からない。なんでここにいるのかも分からない。周りにいるのが、誰なのかも分からない。ううん、まず自分が誰なのかも分からない。本当に怖かった」

歩美「うん......」

灰原「怖くって、ひとりぼっちで。さみしくて。どうしたら良いのか、分からなかった」

歩美「うん......」

灰原「でもね、そんな私にお兄ちゃんは笑って話かけてくれた。頭をなでてくれた。温かい手て私の手を握ってくれた。ギュッとしてくれた。そばにいてくれるって、言ってくれた」

歩美「うん......」

灰原「そんな優しいお兄ちゃんが、どうしようも無く大好きになっちゃったの。自分でも、びっくりするくらい。本当に本当に、大好きになっちゃったの」

歩美「うん......」

灰原「だから、あんまりお兄ちゃんに甘えちゃいけないって分かってたのに、つい甘えちゃった。歩美ちゃんがどう思うかも分かってたのに。我慢出来なかったの」

歩美「うん......」

灰原「ごめんね、歩美ちゃん。ひどいよね。私」

歩美「そんな事、無いもん」

灰原「歩美ちゃん......」

歩美「あの時、哀ちゃんが無事で本当に嬉しかった。私達の事、覚えてなくても。本当に嬉しかった」

歩美「でも、博士の家で哀ちゃんがコナン君を好きって言った時、ドキッとしたの」

歩美「哀ちゃんがコナン君を好きなのは、どういう好きなのかなって」

歩美「色々考えちゃった。考えても、仕方無いのに」

灰原「......」

歩美「そうやって色々考えてる時に、コナン君と一緒にいる哀ちゃんを見たら、段々羨ましくなっちゃったの。コナン君に頭をなでてもらったりなんて、ほとんどしてもらった事無いから」

灰原「歩美ちゃん......」

歩美「羨ましくって、でも言えなくて。哀ちゃんが大変なの分かってたのに、そんな事考えちゃう自分がイヤで。ますますコナン君と哀ちゃんに話かけにくくなっちゃった」

歩美「その内、哀ちゃんズルい、羨ましいって事しか考えられなくなっちゃった。哀ちゃんはなんにも悪くないのに」

灰原「そんな......。歩美ちゃんは悪くない。私が......」

歩美「ううん。私、最低だよ。1番のお友達って言ったのに。哀ちゃんにひどい事言っちゃった。ごめんね」グスン

歩美「ごめんね、哀ちゃん。私の事、嫌いになったよね」グスン

歩美「ごめんね......」グスン

灰原「......嫌いになんて、ならない」

歩美「哀ちゃん......」

灰原「私がお兄ちゃんをどういう風に好きかは、私も分からない。でも、歩美ちゃんと私は同じ時に、同じ人を好きになった。かけがえの無いお友達」

歩美「!」

灰原「これ以上、仲良くなれる人なんていないもの......。私には」

歩美「......哀ちゃん。私の事、まだお友達って呼んでくれるの?」

灰原「もちろん。だって、私達は1番のお友達だもの。これからもずっと」

歩美「哀ちゃん、哀ちゃんっ」ギュッ

灰原「ごめんね、歩美ちゃん」ギュッ

歩美「ううん、ごめんね。哀ちゃん」

歩美「......私、決めたもん」

灰原「?」

歩美「哀ちゃんがコナン君を好きなら、私、もーっと好きになるもん。哀ちゃんには負けないもん!」

灰原「歩美ちゃん......」

歩美「だから、コナン君の事も、私の事も、好きでいてね。哀ちゃん。私は、哀ちゃんをずっと大好きだから」

灰原「うん。分かったわ。お兄ちゃんの事も、歩美ちゃんの事も、ずっと大好きよ。だから歩美ちゃんも、私を好きでいてね」

歩美「うん、約束!」ギュッ

灰原「約束よ」ギュッ

中断します。
また後程。

コナン(と、まあ中ではこんなやり取りをしてた訳で。その後......)



コナン「......」

元太「どうだ?コナン?」

コナン「なんか笑い声はすっけど、良く聞こえねーよ」

光彦「本当に聞こえないんですか?」

コナン「本当だっつーの」

元太「もう中入ろうぜ!」

光彦「ダメですよ、2人で話したいって言ってるんですから」

コナン「だったら盗み聞きなんかすんなよ......」

元太「自分でやってるじゃねーか」

コナン「お、俺は終わったかどうか確認しただけだよ!」

光彦「あ、そうやって自分だけ責任を逃れる気ですね?」

コナン「バッ、バーロー!そんなんじゃねーよ!」



歩美「何だか、さわがしいね?」

灰原「うん、お兄ちゃん達何してるんだろ?」

歩美「私、見てくるね」

灰原「お願いね」



コナン「と、とにかくここは廊下だし静かに」

ガチャッ

コナン「へ?」

歩美「何してるの?みんな?」

光彦「え?あ、何でもないんです!」

元太「終わったのか?」

歩美「うん、入って良いよ」

コナン「わ、分かった。行こう」

光彦「はいっ」




灰原「あ、お兄ちゃん。廊下で何してたの?」

コナン「な、何でも無いよ。ハハ......」

光彦「灰原さん、大丈夫ですか?具合は」

灰原「大丈夫。ありがとう」

歩美「みんな、ごめんね。私のせいで」

コナン「いや、歩美ちゃんが謝る事は無いよ。俺の方こそ、本当にごめん」

光彦「僕も、本当に申し訳ありませんでした」

歩美「コナン君、光彦君......」

コナン「哀も、ごめん。僕の配慮が足りないばかりに」

灰原「ううん。私こそ、お兄ちゃんに迷惑かけてごめんなさい」

元太「よーし。みんな謝ったし、仲直りだな!少年探偵団復活だな!」

光彦「そうですね!やっと1つになりました!」

灰原「ねぇ、お兄ちゃん?少年探偵団って?私、ずっと説明されてないんだけど?」

コナン「あ、ごめん......。何せ色々トラブったもんで」

歩美「私達で、探偵団を作って色々な事件を解決するの!」

光彦「これまで色々な事件を解決したんですよ!」

コナン(解決してんのは、大半俺だけどな......)

元太「あと、博士とキャンプ行ったりよ。色々遊びにも行くぞ!」

灰原「面白そう!ねぇ、お兄ちゃん。今日からやろうよ!せっかく仲直りしたんだし」

コナン「え?ダメだよ。今日は休まなきゃ」

灰原「おねがいっ!ね?」

コナン「ダメだってば。今日は休まなきゃ」

灰原「お兄ちゃんのケチ!いじわる!」

コナン「ダメったらダメ。何かあったら困るでしょ?」

元太「いーじゃんかよ、コナン!」

光彦「そうですよ、本人が大丈夫って言ってるのに」

歩美「コナン君、お願い!」

コナン「ダ・メ!」

灰原「もう、いじわるなんだから。あ、そうだ。ね、歩美ちゃん?」

歩美「なあに?」

灰原「2人で、やっちゃおっか?」

歩美「えっ?」

灰原「ねっ?」ニコッ

歩美「う......。うんっ!」

コナン「??」

灰原「じゃ、せーの!」

ギュッ

コナン「はっ??」ドキッ

光彦「」

元太「」

歩美「お願い、コナン君っ!」

灰原「許してくれなきゃ、離れないから」ニコッ

コナン「え、え、あの......」カーッ

光彦「な、何やってるんですかコナン君!」

元太「ズリーぞ、離れろよ!」

コナン「い、いや、でも......」

灰原「離れないもんねっ!」

歩美「うんっ!」

コナン(ど、どうしろってんだよ......)


小林先生「みんな、お待たせ......。あら?」

保健師「まあまあ」


元太「離れろよ、歩美!」

歩美「イヤっ!」ギュッ

光彦「灰原さんも......」

灰原「お兄ちゃんが良いって言うまで離れないっ」ギュッ

コナン「み、みんな落ち着いて......」


保健師「なんだか、大丈夫みたいですね?」

小林先生「ええ。そうみたいですね」

小林先生(最近、みんな何処か暗かったから心配したけど。大丈夫みたいね)ニコッ


コナン(とりあえず、こんな感じでひとまずこの問題は終結した。が......)

コナン(ホントに懲りねーな、オメーら。ハハハ......)

コナン(こうして、まだ子供故の心の揺れを察してやれなかったばかりにぶつかってしまった俺達だが、この件で打ち解ける事が出来た)

コナン(灰原も探偵団に復帰し、新しいスタートを切った)

コナン(生憎、こう言う時に事件がなかなか起きない物だが、それはそれで平和で良いし、みんなで遊ぶと言う事が灰原は楽しくて仕方無いみたいだった)

コナン(精神状態も安定し、口調も元に戻りつつあり、記憶を取り戻すのもそう遠くないと思われた。しかし......)

コナン(トラブルは......。心の問題は得てしてこう言う時に起きる物である事を。落ち着きを取り戻し、物事が上手く行きつつある時に起きる事を、俺達は思い知る......)

コナン(その始まりは、とある日の夕食。俺達が探偵団の連中と揉めて1週間程経った頃の事だった)

阿笠「さて、では頂くとしようかの」

コナン「うん、じゃあ」

灰原「いただきますっ!」

コナン(料理もこなせる様になったな。話し方とか、精神年齢も大分前に近付いた気がするよ)

阿笠「今日は哀君が作ってくれたんじゃったの。どれどれ。おや?」

コナン「どうしたの?博士?」

阿笠「いや、何だかワシのご飯が2人と比べてちょっとヘルシーな様な」

灰原「お父さんは、特別っ」

阿笠「な、何故?」

灰原「お父さん、ちょっと太りすぎだもの。ダイエットしなきゃ」

コナン(ハハ、記憶無くてもカロリーコントロールされる博士って。何だかな。てか灰原、まんま前と同じじゃねーか。博士への態度が)

阿笠「ちょ、ちょっと位良いじゃろう。哀君」

灰原「ダーメ。これ以上メタボになったら大変よ。あ、お兄ちゃんはたくさん食べてね?」ニコッ

コナン「あ、ありがとう」

阿笠「ズルいぞい、新一」ボソッ

コナン「んな事言われても」ボソッ

灰原「......そう言えば、1つ聞いて良い?」

阿笠「な、何かね?」

灰原「どうしてお父さんは、私を哀君って呼ぶの?」

阿笠「え......」

コナン「!」

灰原「今まであまり気にならなかったけど、なんで?」

阿笠「あ、いや、その」

コナン(しまった、あんまりその呼び方に慣れすぎて気にしてなかった!)

灰原「それにね、私のお母さんは......。どこにいるの?」

阿笠「!」

灰原「兄弟は、いないの?」

コナン「あ、その、えっと......」

コナン(そっか、精神が安定して他の事を気にする余裕が出来てきたんだ。ど、どうする?何て言えば良いんだ?)

阿笠「あ、哀君、その、君のお母さんは......」

コナン「海外!」

阿笠「え?」

灰原「海外?」

コナン「そう!仕事で海外にいるんだ。後、哀は一人っ子だよ!」

灰原「ホント?」

コナン「うん。本当」

灰原「そっか。お兄ちゃんが言うなら間違いないよね」ニコッ

コナン「も、もちろん」

灰原「じゃあ、哀君って呼ぶのはなんで?」

コナン「あ、あー。博士、テレビの見すぎでさ。何かなんとか君って付けるキャラにハマってからこうなんだよ。ハハハ......」

阿笠「お、おい新一......」ボソッ

コナン「小言は後にしてくれ」ボソッ

灰原「ふうん。あんまりテレビにハマり過ぎると、バカになっちゃうよ?お父さん」

阿笠「ハ、ハハ。気を付けるわい......」

コナン「その、お母さんがいなくて寂しいかい?」

灰原「ううん?全然。だってお兄ちゃんがいるし」

コナン「!」

灰原「ただ、何故か気になっちゃっただけ」

コナン「......そっか」

灰原「でもね、覚えてても覚えて無くても......。上手く言えないけど......」

コナン「?」

灰原「なんか、お母さんがいるって言う感覚無いの」

コナン「!」

灰原「だから、ひょっとしたらいないのかなあって、思って」

コナン「そ、そっか」

灰原「ごめんね、食べよ!」

コナン「う、うん」

コナン(元々、灰原は両親と接した時間は少ないと聞くからな。記憶があっても無くても、親がいると言う実感が無いのは無理も無いか......)チラッ

阿笠「......」

コナン(お父さんと言う存在に疑問を持たないのは、それだけ記憶を無くす前から博士を信頼してたって事かもな)

阿笠「新一、後で話がある」ボソッ

コナン「わーってるよ」ボソッ

コナン(やれやれ、また面倒な事に)



コナン「ごちそうさまでした」

灰原「おいしかった?お兄ちゃん」

コナン「うん。もちろん」

灰原「良かった!ね、お兄ちゃん。お風呂入ろうよ!」

コナン「え!?あ、あの」チラッ

阿笠「......」

コナン「ちょ、ちょっと博士と話があるから......」

灰原「えー......」

コナン「明日!明日は絶対!」

灰原「分かったぁ......。約束ね」

コナン「うん、必ず」

灰原「あーあ、つまんなーい」

コナン(ホントは最近、前の灰原の話し方に近付いたせいで気恥ずかしさが復活しちまったんだよな......。明日大丈夫かな)

阿笠「ゴホン。良いかの?」

コナン「あ、ああ」

阿笠「さっきは何故あんな事を?」

コナン「あ?ああ、博士をテレビ狂いのバカみたいに言っちまったのは悪かったけどさ」

阿笠「そこじゃない。と言うかその言い方の方が傷付くわい。哀君の家族についてじゃよ。何故あんな事を?」

コナン「ホントの事言えってのか?やっと精神が落ち着いて、これから少しずつ過去に触れさせようって時に?」

阿笠「それはそうじゃが、あんな嘘は」

コナン「じゃあどうしろってんだよ?言える訳ねーだろ?あなたの家族はみんな死んでいます。しかも、今もあなたの命を狙っている殺し屋組織に殺されました。なんて言えるか?」

阿笠「確かに、そうじゃが......」

コナン「いずれは記憶が戻らなきゃ言わなきゃならねーけどさ。今焦っても仕方ねーだろ?まず小さい所からやらなきゃ」

阿笠「う、うむ......。それもそうじゃな。分かった。済まんの」

コナン「い、いや。良いんだ。こっちこそ気苦労かけてワリーな、博士」

阿笠「そんな事は気にせんで構わんわい。ただ」

コナン「?」

阿笠「哀君への話し方、もう元に戻して良いんじゃないかのう?大分前の精神年齢に近付いたし、何だか聞いててこそばゆいんじゃよ」

コナン「あー、それな。いや、俺も考えたんだけどダメなんだよ。つい勝手になっちまうんだ。その内直すよ」

阿笠「うむ......」

コナン「あ、それとさ。アイツの記憶が戻るまでは、コナンで通してくれよ。下手に聞かれても説明が面倒だ」

阿笠「わ、分かったわい」

コナン「じゃ、とりあえずそう言う事で」

阿笠「どこへ?」

コナン「布団の準備だよ。灰原が出たらすぐ寝れる様にな」

阿笠「......すっかりシスコンじゃの」

中断します。
また後程。

ラストを少し悩み中です......。

コナン「な、何言ってんだよ?」

阿笠「どう見ても妹に甘ーいシスコンにしか見えんわい」

コナン「ん、んな事ねーよ!」

阿笠「全く。蘭君が見たら何て言うかのう」

コナン「蘭......?」

阿笠「ん?どうしたんじゃ?」

コナン「あ、何でもねーさ。ハハ......」

コナン(俺、今博士に言われるまで蘭の事忘れてた......?)

コナン(忘れてたって言うか、気に留めてなかった?)

コナン(そんなバカな。灰原にかかりっきりだからと言って蘭を気にしないなんて事は)

prrrr......

コナン「ん?電話?コナン側の?」

コナン「あ、蘭からだ」ピッ

コナン「もしもし、蘭姉ちゃん?」

蘭「あ、コナン君?良かった!しばらく連絡来ないから大丈夫かなって!」

コナン「う、うん。ごめんね。色々あって」

蘭「良いのよ、気にしないで。哀ちゃん、どう?様子は?良くなった?」

コナン「う、うん。まだ思い出してはいないけど、落ち着いて来たよ」

蘭「そ、良かった!哀ちゃんの事、守ってあげてね」

コナン「うん、ありがとう」

蘭「たまには、帰れなくても事務所に電話してあげてね?お父さん、ああ見えて寂しがりだから。最近、事件も無くて暇してるし」

コナン「う、うん。分かったよ。ありがとう」

蘭「うん。じゃあお休み!」

コナン「お休み、蘭姉ちゃん」ピッ

コナン「......」

コナン「お、俺......。どうしちまったんだ?」

コナン「蘭と話す時の高揚感が無い」

コナン「何も感じない......?」

コナン「そう言や、最近新一として蘭に連絡してねぇ......。なのに、何も感じなかった?」

コナン「そんな、そんな訳は......」

灰原「どうしたの?お兄ちゃん?」

コナン「え?あ、哀。お風呂出たの?」

灰原「お兄ちゃんがいないからシャワーで終わらせたの!あーつまんなーい!」

コナン「わ、悪かったよ。ゴメン!」

灰原「良いよぉ。そんなに謝らなくて」ニコッ

コナン「う、うん」

灰原「ねぇ、まだ寝ないでしょ?お兄ちゃん。テレビ見よ?」

コナン「うん、分かった」

灰原「じゃ、先に行くねっ」

コナン「うん」

コナン(.....ま、とにかく。これからは気を付けよう。あくまで今の俺は毛利探偵事務所に住まわせてもらってんだし。連絡位はしなきゃな)

コナン(俺が蘭を気にしない......。本来、それは最も異常な事)

コナン(だが、俺はそれに目を伏せた。それは後々、俺達を苦しめる事になる)

コナン(それは後の話として、その夜。俺達が寝る頃......)



コナン「さ、寝ようか。もう遅いし」

灰原「うん。ふぁーあ......」

コナン(欠伸の仕方は、前と変わんねーな)フッ

灰原「なぁに?私があくびしたのがそんなにおかしい?」

コナン「いや、ゴメンゴメン。何でも無いんだ」

灰原「変なお兄ちゃん」

コナン「ハハ、そうかもね」

灰原「じゃあ、行こうよ」

コナン「うん......。ねぇ、哀」

灰原「なあに?」

コナン「1つ聞いて良いかい?」

灰原「うん、なあに?」

コナン「さっき、お母さんの事とか聞いたろう?きっと、色々な事が気になる余裕が出来たんだろうけどさ」

灰原「うん」

コナン「僕の事は気にならないの?何故家族でも無いのに、一緒にいてくれるのか、とか。一体、何者なのかとかさ」

灰原「......」

コナン「あ、いや。言わなくても良いんだ。ただちょっと気になって......」

灰原「バカね、お兄ちゃん」クスッ

コナン「え?」ドキッ

灰原「そんな事気にしないわよ。だって、前がどうでも、今は私の大好きなお兄ちゃんだもん。それじゃいけないかしら?」

コナン「いや......。あ、ありがとう」

灰原「逆に聞いて良い?」

コナン「え?」

灰原「前の私と今の私。お兄ちゃんは、どっちが好き?」

コナン「!」

灰原「どっちが、好き?」

コナン「そ、それは......」

灰原「......なーんてね」ニコッ

コナン「え?」

灰原「冗談よ、冗談。気にしないでっ」

コナン「あ、うん......」

灰原「でも......」

コナン「ん?」

灰原「いつか、答えて欲しいな」ニコッ

コナン「......うん、分かった」

中断します。
また夜に書きます。

灰原「さ、寝よっ」ニコッ

コナン「うん」

灰原「あー、でも......」

コナン「ん?」

灰原「歩美ちゃんにまた怒られちゃうかなあ」

コナン「......これ位は、良いんじゃない?」

灰原「ホント?」

コナン「うん」

灰原「やった♪じゃ、行こっ!」

コナン「うん」

コナン(さっきの答え方、もう記憶が戻ったと思える位だったぜ。「バカね」ってよ)

コナン(もう哀として接する時間は少ないのかも知れねーな。なら、少しでも一緒に......)

コナン(今考えると、俺の心はあの時既に......)

コナン(既に決まっていたのかも知れない)

コナン(ともかく、灰原の状態が変わってきたのを見て、俺達は次の段階に行こうとしていた。それは、翌日の放課後......)



歩美「今までの事件の現場を?」

コナン「ああ、アイツも状態が安定して来たし、そろそろ記憶を取り戻す為に動くべきだと思うんだ」

光彦「それで、今まで僕達が行った事件の現場に?」

コナン「ああ。少しでも刺激になればと思ってな。アイツにはただの探検って事で」

元太「どうしてだよ?」

コナン「なまじっか予備知識があるより、ダイレクトに感じる物の方が良いんじゃねーかと思ってな」

歩美「うん。分かった!哀ちゃんの為だもんね!」

光彦「喜んで協力しますよ!」

コナン「ありがとな、みんな」

元太「あんまり遠く行くなら、おやつ持たねーとな!」

コナン(ったく、コイツは......)

灰原「みんな、遅くなってごめんなさい」

光彦「あ、灰原さん!」

灰原「ちょっと長引いちゃって」

コナン「トイレが?」

灰原「違うわよっ!」ビシッ

コナン「いってぇ!」

灰原「先生とお話してたの!調子はどうかとか!お兄ちゃんデリカシー無さすぎ!」

歩美「コナン君、女の子の気持ちはあんまり分からないから」

コナン(ハハ、最近こればっかだな......)

灰原「で、何を話してたの?」

歩美「あ、あのね」

光彦「これからちょっと探険に行こうって話を」

灰原「探険?」

コナン「ホ、ホラ。少年探偵団としては事件の起きそうな所をチェックするのも悪くないかなと」

灰原「ふぅん。面白そう!」

元太「で、どこから行くんだよ?コナン?」

コナン「そうだね。まずは......。大渡間に行ってみるかな」

歩美「大渡間?」

光彦「僕達が初めて一緒に事件に行った、ニセ札の時ですよ」ヒソヒソ

歩美「あ、そっか」

灰原「どこ?そこ?何で米花町じゃないの?」

コナン「ま、まあとにかく行こうよ。ね?みんな?」

元太「お、おう。行こーぜ!」

歩・光「オー!」

灰原「何か、怪しいなあ......」ジロッ

コナン「な、何も無いさ。ハハハ......」

コナン(こうして、灰原を連れた思い出巡りは始まった)



コナン「ふう、着いたな」

光彦「久しぶりですね!」

灰原「久しぶり?来た事あるの?」

光彦「あ、いえ!その......」

歩美「ね、哀ちゃん!あっち行ってみよ!」グイッ

光彦「す、すみません。コナン君」

コナン「気にすんな。いつかバレるしな。とりあえず、ここに来ただけじゃ変化は見られないな」

光彦「ええ。あの現場に?」

コナン「まあ中までは行かねーけどな。とにかく行こうか」

光彦「ええ。こうしてる内に、灰原さんが元に戻ると良いんですけど」

コナン「ああ、そうだな」

元太「なあコナン?俺腹減っちまったぜ」

コ・光(ホントにもう......)

灰原「え?あの、ちょっと?」

>>218
訂正です。

一番下の灰原の台詞は、歩美のあっち行ってみよ、と言う台詞の下に入ります。

申し訳ありません。

コナン「っと、探偵バッヂで歩美ちゃんに」カチャッ

歩美(あ、バッヂが)カチャッ

歩美「コナン君、どうしたの?」

コナン「歩美ちゃん、例のビル覚えてる?」

歩美「うん。分かるよ」

コナン「そこまで灰原を誘導してくれ」

歩美「分かったよ!」

灰原「さっきからみんな何してるの?私に内緒の話?」

歩美「え?ううん!ね、哀ちゃん!あっち行ってみよ!」

灰原「ちょっと、待って......」



コナン「良し、俺達も行こう」

光彦「ええ」

元太「歩くのダリーなあ」

コナン「我慢しろ、行くぜ」

元太「分かったよ......」

歩美(えっと......。あ、あそこだ)

灰原「ちょ、ちょっと歩美ちゃん。待ってよ!どこまで行くの?」

歩美「あ、あの......。ホラ!あのビルがコナン君怪しいって!」

灰原「え?これ?」

歩美「う、うん。そう」

灰原「怪しいって、これ交番の横よ?どこが怪しいの?」

歩美「え、あの、その」

コナン「おーい!」

歩美「あ、コナン君!」

コナン「ワリー、どうだった?」ヒソヒソ

歩美「う、うん。変わり無いみたい」ヒソヒソ

灰原「ねぇ、お兄ちゃん?ここの何が怪しいの?」

コナン「え、あの、ホラ!一見フツーの所こそ事件の匂いが」

灰原「そんなのどこにでもあるじゃない?何でわざわざこんな遠くのこんなビルに?」

コナン「い、いや。それは」

光彦「おーい!待って下さいよコナン君!」

元太「灰原思い出したか?」

灰原「思い出した?」

コナン「バッ、元太!」

灰原「......はっはーん?読めたわ。ここ、私の記憶に関係ある場所なのね?」

一同「ギクッ」

灰原「私に気を遣ったのか何か知らないけど、とりあえず想い出の場所を巡って記憶を取り戻させようって考えね?どうせお兄ちゃんが考えたんでしょうけど」

コナン「い、いや。その。ゴメン。最初から記憶を取り戻そうと身構えるより、リラックスした気分の方が良いと思ってさ」

灰原「バカね。そんな気を遣われると、却って変に感じちゃうわよ?」

歩美「ごめんね、哀ちゃん」

灰原「ううん。良いの。みんな私を心配してくれてるんだもの。それで......?ここは私達に取ってどういう場所なの?」

光彦「ここは、灰原さんが転校して来てから初めて僕達と一緒に事件に行った所です!」

灰原「え?」

光彦「え?」

コナン「!」

灰原「転校......?私は最初からあそこに住んでいたんじゃないの......?」

光彦「え?あ、あの......」

コナン「ア、アハハ......。光彦君。何か勘違いしてるんじゃないか?転校して来たのは僕でしょ?」

光彦「え?あ、あー。そうでした!」

灰原「え?お兄ちゃんって転校生だったの?」

コナン「う、うん。そうだよ」

元太「え?でも灰原も」

コナン「ちょっと静かに」ボソッ

灰原「......ま、いっか。ふぅん。ここが初めて私が来た事件現場かあ」

歩美「何か、思い出しそう?」

灰原「ぜーんぜん?懐かしさも感じなかったし。多分、大した事しなかったのね。私」

コナン(拳銃をぶっ放したけどな)

灰原「まあとにかく。こういう事情なら次は正直に言って欲しいな」

歩美「うん。ごめんね」

灰原「良いの。ここはとりあえず、記憶の手掛かりにはならないみたいだし、時間があるなら次に行きましょ?」

歩美「う、うん!」

コナン「......ふぅ。光彦、サンキュー。合わせてくれて」

光彦「ええ。でもどうして?」

コナン「ん?ちょっとな」

コナン(その背景まで突っ込まれると、アイツの正体説明しなきゃならなくなるからな。まだ早い......)

灰原「あ、そうそうお兄ちゃん?」

コナン「はい?」

灰原「私を騙したんだから、後でお返ししてよね?」

コナン「い?」

灰原「出なきゃ、許さないわよ」クスッ

コナン「か、勘弁してよ......」

中断します。
また後程。

コナン(こうして、その後時間の許す限り俺達は色々な場所を巡った)

コナン(ゴメラを見てる最中に殺人の起きた映画館、凧揚げ大会の会場など。黒の組織との接点が薄い場所を狙って回ったが、結局効果は無かった)



元太「あー、疲れたぞー」

灰原「ごめんね、みんな。私の為に」

光彦「良いんですよ!でも、記憶が戻らなくて残念です」

灰原「ごめんなさい。でも、私焦ってないから」

歩美「うん!また一緒に見て回ろうよ!」

灰原「ありがとう、歩美ちゃん」

コナン「ホント、ありがとう。みんなお疲れさま」

元太「おう!あ、そろそろ帰らねーと母ちゃんにしかられちまう!」

光彦「あ、僕も......。すみません、また明日!」

灰原「ええ。ありがとう。また明日」

歩美「またね!コナン君!哀ちゃん!」

コナン「うん、また明日!」

灰原「......」

コナン「さて、僕らも帰ろっか」

灰原「......うん」

コナン「ん?どうかした?」

灰原「お兄ちゃん。私が怒ってるの、分かる?」

コナン「えっ?」

灰原「やっぱり、分からないんだ」

コナン「え、あの、どうして?」

灰原「もう良い。帰ろ」

コナン「ちょっと待って!どうしてなんだよ?」

灰原「......何で、内緒にするの」

コナン「え?」

灰原「こういう事をするって、何で私に内緒にするの?」

コナン「え......」

灰原「お兄ちゃんの気持ちは嬉しいけど、私頼んでないよ。こんな事したいなんて」

コナン「ゴ、ゴメン。でも......」

灰原「私が元に戻るには仕方無い?そう言う事?」

コナン「そ、そうだよ」

灰原「......嘘よ」

コナン「嘘?」

灰原「ホントはお兄ちゃん、私の事が面倒なんだ。だから早く記憶を元に戻したいんだ」

コナン「そんな訳無いだろ?僕は......」

灰原「じゃあ何で先に説明してくれないの?!こういう事をするからって!?私に気を遣ったんじゃないでしょ?!私の気持ちを考えないで、カッコつけてるだけじゃない!」

コナン「ち、違う。僕はただ」

灰原「違わない!お兄ちゃんは前の私の方が好きなんだ!!だから記憶を取り戻したいんだ!!」

コナン「そうじゃない!そんな訳......」

灰原「違わないわよ!バカ!お兄ちゃんのバカ!お兄ちゃんなんて、お兄ちゃんなんて......」

灰原「大っ嫌い!!!」

コナン「!!」

灰原「......!!」ダッ

コナン「ま、待って!哀!!」

コナン(クソッ、まさかこんな事になるなんて......!俺はなんて事を!)




コナン「ちきしょう、見失っちまった......」

コナン「どこ行っちまったんだ、哀......」

コナン「クソッ!俺は、俺はまたアイツの気持ちを考えないで......」

コナン「とにかく黙っちゃいられない。考えろ、考えるんだ!!」

コナン「アイツの行きそうな所、アイツの......」


「お兄ちゃんなんて、大っ嫌い!!!」


コナン「......」

コナン「嫌いか、ハハ。ホントサイテーだな。俺」

コナン「今のアイツの気持ちも考えねーでよ。ホントに......」

コナン「ん......?今の、アイツ?」

コナン「......まさか」



灰原「......」

灰原「バカ、バカ。お兄ちゃんのバカ......」

コナン「やっぱり、ここに居たのか」

灰原「!!」

コナン「きっと、この病院の近くにいると思ってさ。何せここは、哀が今の哀になって初めて僕と会った場所だからね」

灰原「......何しに来たの」

コナン「迎えに来たんだよ。帰ろう。一緒に」

灰原「放っといてよ。私の事なんて」

コナン「出来る訳無いだろ?さ、帰ろう」

灰原「放っといてってば!私の事なんて嫌いなんでしょ!!」

コナン「嫌いな訳無いだろう!!!」

灰原「!!」

コナン「毎日、哀の事が心配で......。こうしていなくなってどれだけ心配か......」

灰原「お、兄ちゃん......」

コナン「哀に嫌いだって言われて、どれ程悲しかったか......」

灰原「お兄ちゃん、わ、私、私......」

コナン「嫌いなんて、言わないでくれよ」ギュッ

灰原「......!」

コナン「何処にも、行かないでくれよ......」グスッ

灰原「お、兄ちゃん......。私の事、心配なの?好き、なの?」

コナン「当たり前だろ。大好きに、決まってるだろ......」

灰原「ご、めんな......さい。ごめん、なさい......わ、私、私っ」

コナン「良いんだ、何も言わないで」

灰原「ごめんなさい、私、私っ!!」ギュッ

コナン「哀......」

灰原「ごめんね、お兄ちゃん!嘘だから!!嘘だからぁ!!嫌いなんかじゃ無いからっ!!」

コナン「分かっ......てるさ......」

灰原「ご、めんっ、ねっ。わ、わたしっ、お兄ちゃんに、きいたときっ」グスッ

コナン「ん?」

灰原「まえのっ、わたしと、いまの、わたしっ、どっちがすきか、きいたときっ」グスッ

コナン「......」

灰原「い、まのっ、わたしって、いってほしかったっ......。その、こたえも、きかないまま、おにいちゃんが、あんなこと、したからっ」グスッ

コナン「......!」

灰原「わたし、まえのっ、わたしのほうが、おにいちゃんが、すきなんだとおもってっ......。きらわれてるんだとおもってっ......」グスッ

コナン「......ごめんよ、哀」

灰原「ううん、ごめん、なさいっ!ごめんなさぁぁいっ!!」グスッ

灰原「わたし、だいすきだからっ、おにいちゃんが、だいすきだからっ、だから、わたし、わたし......」グスッ

コナン「分かってる。分かってるさ......。だから、もう泣かないでくれ」ギュッ

灰原「おにいちゃん......」グスッ

コナン「僕は、今の哀も、前の哀も大事なんだよ。だからああした。でも、きちんと哀の気持ちも考えて説明すべきだった。ごめんよ」

灰原「うん......」ギュッ

コナン「もう、焦ってあんな事はしない。だから、もう泣かないで。何処にも行かないでくれよ......」

灰原「ごめんね、ごめんね......。お兄ちゃん」

灰原「私、全部分かってるから。ホントは」

コナン「哀......」

灰原「お兄ちゃんの気持ち......。ちゃんと分かってるから」

コナン「うん......」

灰原「私も、頑張るから......。だから、だから」

灰原「お兄ちゃんも、何処にも行かないで......」

コナン「当たり前だ。何があっても側にいる。絶対に側にいるさ」

灰原「ありがとう、お兄ちゃん......」チュッ

コナン「!!!」

灰原「......エヘヘ、しちゃった」

コナン「いっ、いや、あの、その......っ」ドキドキ

灰原「ごめんね、でも......。これ位は、今日は良いよね」

コナン「う、うん......」ドキドキ

灰原「さ、帰ろっ。お父さん心配しちゃう」

コナン「う、うん。そうだね」

コナン(ま、まだ感触が残ってる......。マズイ、マズイぞこれは......)

灰原「ね、お兄ちゃん?」

コナン「ん?」

灰原「もう1回、言わせて?」

コナン「何を......?」

灰原「お兄ちゃん、だーいすき」ニコッ

コナン「っ!!」ドキッ

灰原「お兄ちゃんは?」

コナン「ぼ、僕は......」

コナン「もちろん、大好きさ」

灰原「ありがとっ」ニコッ

コナン(......もう良いや。今日は。この笑顔見たら、どうでも)


コナン(そう、やはり俺の心はこの時もう......)

コナン(決まっていたんだ。そう言う風に)

中断します。
また後程。

お疲れ様です

遅くなりました、再開します。


>>231
ありがとうございます。

コナン(その後日、俺達は時間を見つけて色んな所を見て歩いた)

コナン(何日もかけ、俺達が遭遇した事件現場を見て行った)

コナン(時にはキャンプ場や海にも出向いたが、結局灰原の記憶が戻る兆候の無いまま......。気がつけば既に1月余りが過ぎていた)

コナン(博士と相談した俺は、灰原を病院に連れていく事にした。基本的に自然治癒を選んだ俺達だが、時間がかかる様なら来て欲しいと医師に言われていたからだ)

コナン(思えば、それが転機だったのかも知れない。結末に向けての......)

医師「お待たせしました。検査結果が出ましたのでご報告致します」

阿笠「ええ。で、哀君の状態は」

医師「ええ、ちょっとそれについて保護者様と一対一でお話したいのですが」

阿笠「え?何か重大な事に?」

医師「いえ、そうでは無いのですが。出来れば」

阿笠「わ、分かりました。ちょっと本人達に伝えて来ますわい。彼女はもう帰らせても?」

医師「ええ、構いません」

阿笠「分かりました」



灰原「......はぁ、病院って嫌い」

コナン「何で?この間病院で、あんな事になったのに」

灰原「あれは病院の外側でしょ?病院の中って、気が滅入るから嫌い。わざわざ学校休んでまで来なくても」

コナン「まあ、検査も終わったしもう帰れるさ」

灰原「だと良いけど」

阿笠「おお、スマンの。遅くなって」

コナン「あ、博士。結果は?」

阿笠「う、うむ。その事じゃが、ちょっと2人とも先に帰っててくれるかの?」

コナン「え?」

灰原「何かあった?」

阿笠「いや、そうでは無いんじゃが。ちょっと今後の話などをな」

コナン「ふぅん。ま、分かったよ。じゃ、先に帰ろう。哀」

灰原「うん。お父さんも気をつけて」

阿笠「う、うむ、後での」

コナン(何だってんだ?一体?)



コナン「さて、どうするかなあ。バスで帰ろうか?」

灰原「ううん。歩きましょ?」

コナン「え?結構遠いよ?」

灰原「良いの。歩こ」ギュッ

コナン「う、うん」

灰原「ねぇ、お兄ちゃん?」

コナン「ん?」

灰原「私がいつまでも何も思い出さないの、どう思う?」

コナン「どうって。そりゃあ仕方無いさ。好きで忘れてるんじゃないし」

灰原「そうね。そうよね......」

コナン「暗いな。どうしたのさ?」

灰原「ううん。別に。でもいっそ、時間が止まれば良いのに」

コナン「時間?」

灰原「そ。前も先も気にしない、今この時のまま時間が止まれば良いのに。そしたら、お兄ちゃんとずっと一緒にいれるのに」

コナン「そんな心配しなくても、何処にも行かないって」

灰原「ううん。そうじゃないの」

コナン「?」

灰原「とにかく、先を考えるのがちょっと嫌になる時もあるの」

コナン「なるほど......。そうだ」

灰原「?」

コナン「今週末、動物園に行かないか?」

灰原「動物園?」

コナン「そ、動物園。まあ動物園じゃなくても良いんだけどさ。その、ふ、2人でさ」

灰原「それってお兄ちゃん、デートの誘い?」クスッ

コナン「いや、その。た、楽しい事をすれば気分も紛れるかなって」

灰原「......うん。行きたい。2人で」ニコッ

コナン「そ、そっか。じゃ、週末ね」

灰原「うん。楽しみ」ニコッ

遅くなりました、再開します。

コナン(思えばこの時まで、俺はこの空気に酔っていたのかも知れない)

コナン(だが、俺は突き付けられる事になる。逃れようの無い、現実と言うヤツを)



阿笠「さて、どうしたものかのう」

阿笠「......伝えん訳にはいかんじゃろうな」



コナン(そして、その夜)



コナン「さて、そろそろ寝ますかね」

灰原「うん」

阿笠「あー、コナン君。ちょっと良いかの?」

コナン「え?」

阿笠「少し話したい事があるんじゃ。スマンが哀君。2人にしてくれるかの?」

灰原「......分かったわ。お兄ちゃん、私先に寝てるから」

コナン「分かった」

灰原「じゃあ、お休み」

阿笠「うむ、お休み」

コナン「......それで?わざわざ2人にしたんだ。何か深刻な話か?」

阿笠「うむ......。今日病院で先生と話した事なんじゃが」

コナン「ああ、何だったんだ?」

阿笠「実はの、入院中のカウンセリングの時点から兆候はあったらしいんじゃが......」

コナン「何だよ?わざわざ2人にしたんだから。今更勿体振らなくても」

阿笠「う、うむ。実は......。哀君の身体にはやはり問題は無い。じゃが彼女の深層心理は、元に戻る事を拒んでおる」

コナン「え?」

阿笠「無意識に記憶を取り戻す事を拒否しておる、と言う事じゃ」

コナン「な、何で?どういう事なんだ?」

阿笠「当初は一種の自己防衛的な物かとも思ったそうじゃ。過去と言う未知を知る事への恐怖かと。じゃが......。今は違う様じゃ」

コナン「......?」

阿笠「今彼女の意識が記憶を取り戻すのを拒む理由、それは恐らく......。君じゃ」

コナン「な、に?」

阿笠「君の存在が、彼女の意識を今に留まらせておる。そう言ったんじゃ」

コナン「意味が分からねーよ。説明してくれよ」

阿笠「今の哀君に取って、それだけ君は大切な存在と言う事じゃ。色々検査で質問をしたが、君の事を話す時ほど精神が安定した時も、楽しそうな時も無かったそうじゃ」

阿笠「そんな君と離れがたい今の精神状態が、無意識に恐れとるんじゃ。記憶を取り戻す事による変化を。君との別離を。それを恐れとるんじゃ」

コナン「そんなバカな......。要するに俺と一緒に居たい為に、アイツは記憶を取り戻す事から逃げてるってのか?」

阿笠「あくまで無意識下の話じゃが、単純に言えばそう言う事じゃ」

コナン「......」

阿笠「そしてそれは、君もじゃないかの?」

コナン「え?」

阿笠「この際言わせて貰おう。君もまた、彼女は記憶が戻るのを恐れとる。違うかね?」

コナン「な、何言ってんだよ?そんな訳」

阿笠「いや、違わない筈じゃ。君は一見彼女の記憶を取り戻す為に尽力しとる様に見えるが、その実は逆じゃ」

コナン「逆?」

阿笠「例えば、彼女と今までの事件現場を巡る時もじゃ。色々見ている様に見えて、組織と関わった所は避けておる」

コナン「!」

阿笠「彼女に取って、辛そうな思い出のある所は避けておる」

コナン「そ、それは......」

阿笠「それに、君は他の手段を全く試そうとしていない」

コナン「他の?」

阿笠「やり方はある筈じゃ。彼女や君の素性を話す。彼女の親御さんの遺した音声を聞かせる。組織に近しいFBIの人間と接触させる。色々ある筈じゃ。じゃが君はやろうとしない」

コナン「それは、アイツの体調を」

阿笠「もう時間は充分経っとる。1度にやらなくとも、少しずつ試す事は出来る。それをやらんのは、君自信が恐いからじゃろ?彼女が元に戻るのが」

コナン「違う!そんな、そんな事は!」

阿笠「いや、そうじゃろう。何故なら君は彼女を......。愛しておるから」

コナン「!!!」

阿笠「君の愛情が、兄弟愛なのか男女の愛なのかは定かでは無い。じゃが、彼女に対する君の態度を見ればそれは明らかじゃ」

コナン「お、俺は......。俺はたた、アイツを守りたくて......」

阿笠「最初はそうじゃろう。じゃが、今は違う筈じゃ。君が彼女を見る眼は、それ程慈愛に満ちておる。じゃから、恐いんじゃろ?彼女が記憶を取り戻した時、起きるかも知れない事を」

コナン「やめろ。言うな」

阿笠「いや。君は分かっておる筈じゃ。記憶喪失者が記憶を取り戻した時......」

コナン「やめろっつってんだろ......」

阿笠「記憶を取り戻した時、その間の記憶を失う可能性が......」

コナン「やめろ!!!」

阿笠「......じゃが、可能性として充分あり得る事じゃ」

コナン「......」



灰原「......!」

灰原「記憶を、取り戻した時......。それまでの記憶を......」

灰原「......」サッ



コナン「......」

阿笠「君が辛いのは分かる。ワシとて、お父さんと呼んでくれる今の哀君を失いたくない気持ちはある。じゃが今の哀君の状態は、所詮仮初めじゃ。今の哀君は、本当の哀君じゃあない」

コナン「本当じゃない、だと......?」

阿笠「!」

コナン「ふざけんなよ。今のアイツの何処が本当じゃないってんだ!!例え記憶が無くても、アイツは今この瞬間ここに存在してるんだ!!今のアイツとして、アイツの気持ちで俺達と一緒にいるんじゃねーか!!それがニセモノだってのか!!」

阿笠「じゃがな、新一......」

コナン「うるせえ!!俺は嫌だぞ、アイツが消えちまうなんて俺は嫌だ!!博士は何でそんな冷静なんだよ?!何で......」

阿笠「冷静な訳が無いじゃろう!!!」

コナン「!!」

阿笠「ワシとて、身を切られる様に辛い......。じゃが、このままでおる訳にはいかんじゃろう?彼女をこのまま放置して、君は責任を取れるのか?」

コナン「責任......?」

阿笠「彼女がこのまま記憶を失ったままなら、解毒剤は作れないままじゃ。君達は元に戻る事も出来ん」

阿笠「よしんば、何らかの手段で元に戻れても今の哀君の状態では社会復帰は難しかろう。その哀君の面倒を一生見る覚悟は君にあるかの?」

コナン「覚悟......」

阿笠「そもそも、今はたまたま組織の動きが鈍いものの......。君達が組織と戦う運命にある事は避けられん。記憶を失い、組織と戦う意思を欠いた彼女を君は守り通せるか?」

コナン「......」

阿笠「そもそも、蘭君はどうするんじゃ?いや、第1に君は哀君をどう思っとるんじゃ?どうしたいんじゃ?その答えも出さないまま、現状にすがり続けるのか?」

阿笠「それに、今の哀君のままを望んでおるのか?今まで君と共に闘ってきた哀君は消えたままで良いのか?彼女のお姉さんの想いは?スペースから眼を逸らし続けるのかの?」

コナン「......かんねーよ」

阿笠「......?」

コナン「わっかんねーよ!!!」

阿笠「!!」

>>247

訂正です。

スペース→全て

ああ、シリアスが台無しだ......。

コナン「俺だって、分かんねーよ......」

阿笠「新一......」

コナン「アイツに元に戻って欲しい。それは嘘じゃねーさ。でも、でもよ......」

コナン「今のアイツが......。俺をお兄ちゃんと呼ぶアイツが、今は愛おしくて仕方無い......」

コナン「いや、違う。違うんだ。今のアイツだけじゃない。前も今も......。全てを振り返った時、アイツの存在がいかに俺に取って大きいか分かったんだよ......」

阿笠「......」

コナン「アイツに対する愛情が、どういう物なのか......。自分でも分からない......。でも、でもよ......。一声で言うなら」

コナン「本当にアイツが......。愛おしい。としか言えない......」

阿笠「新一......」

コナン「......」サッ

阿笠「こ、これ!新一!何処へ?」

コナン「......ちょっと頭冷やしてくるわ」

阿笠「新一......」

コナン「ゴメンな、博士。迷惑かけちまって。博士の言う通りだよ。ただ、今の状態をすんなり受け入れられる程、俺は大人じゃ無いみたいだ」

阿笠「......」

コナン「きちんと頭冷やして、ちゃんと考えるよ。ただ......。アイツと週末2人で出掛ける約束したんだ。それまでは、好きにさせてくれねーかな?」

阿笠「分かったわい。すまん、新一。ワシもまた、自分で現状を解決出来んのを君に当たり散らしてしまった。許してくれ」

コナン「いや、良いんだ。俺が......。ガキ過ぎるのさ、きっとな」

阿笠「......一言だけ、言わせて貰って良いかの?新一」

コナン「ん?」

阿笠「真実はいつも1つ。それが......君の信念じゃろ?」

コナン「......ハッ!そうだったかな。じゃあな。遅くはならねーよ」

阿笠「......新一」

ID変わったかもしれませんが>>253です
>>257さんへ
僕はss速報のルールを知っていませんでしたごめんなさい
みなさんオススメのコナンSSを教えてくださいどうかお願いします
僕からもみなさまに希望があればコナンSS紹介します

皆さんありがとうございます。
遅くなりました、再開します。

>>258
ありがとうございます。
今パソコン使えないのでリンク貼れませんが、
阿笠「未来を見たくないかね?」コナン「はあ?」と言うのは書いてました。
参考までに。

阿笠「ワシは......。ダメな大人じゃな」

阿笠「結局何もしてやれなんだ」

阿笠「例え君がどういう選択をしようと構わん。ただ......」

阿笠「捨て鉢にだけはならんでくれよ、新一......」



コナン「......クソッ、俺って奴は」

コナン「結局博士にもキツい思いさせちまったな。ったく」

コナン「自分の未熟さが嫌になるぜ......」

「夜道に子供が1人では危ないな」

コナン「!!」

「後ろから刺されんとも限らんぞ?」

コナン「その声、赤......」

「おっと。言わなくて良い。今日は直接会いに来た訳じゃあない。ちょっと聞きたい事があってな」

コナン「顔も見せない人に話は出来ないよ。誰かがフリをしてるとも限らないでしょ?」

「やれやれ、仕方無い......」

赤井「これで良いか?」

コナン「......まだだよ」

赤井「やれやれ。これで良いか?」ムギュッ

コナン「うん。オッケー」

赤井「人目に付きたくないからああしたが、まあ仕方無いか」

コナン「で、何の様?」

赤井「君と一緒にいる少女についてだ」

コナン「......」

あのスレの作者さんでしたか、あっちもみてます、面白いです笑

赤井「簡単な質問だ。俺の質問に首振りで答えてくれれば良い。出来るな?」

コナン「......」コクッ

赤井「良し。手短に聞こう。彼女の記憶は戻っているか?」

コナン「......」ブンブン

赤井「成る程。ではそれについてどう思う?記憶が戻るのを望むか?」

コナン「......」

赤井「では、戻らない事を?」

コナン「......」

赤井「つまり、自分でも分からない。と」

コナン「......」コクッ

赤井「成る程......」

コナン「結局、何が聞きたいの?」

赤井「俺達は君達から連絡を受けた後、陰ながら君達を護衛していた。彼女が記憶を失ってから。だが、もう1ヶ月余り。側に君がいるのにも関わらず、どうした事かと思ってな」

コナン「それで......。僕を責める?」

赤井「いや。組織の連中も、今は大人しいからな。だが、その内動き出すだろう。だから、それまでに君達は決めなければならない」

コナン「それは博士にも言われたよ。組織と闘うのに、記憶無しではってね。そう言いたいんでしょ?」

赤井「いや、違う」

コナン「え?」

>>262
訂正です。

何の様?→何の用?

>>263
いえ、とんだお目汚しを......

赤井「彼女が記憶を失った今こそ、真に選択をすべきだと思ってな。君も含めて」

コナン「選択......?」

赤井「己が本当に何をしたいか、だ」

コナン「何を......したいか?」

赤井「人間ってのは、自分から逃げる事はできない。逃げる先にも自分は必ず存在している。だから、自分の後悔しない選択をしなくてはならない」

赤井「それは、己の立場や責任とは関係の無い真に望むもので無くてはならない」

コナン「真に......」

赤井「今、彼女は記憶を無くしてしがらみから解放された。過去にも、自分の立場にも縛られてはいない。素の彼女として、自分の選択が出来る」

赤井「だから、今の彼女が闘いから降りる事を望むなら、俺達はそれを尊重する。決して責めなどしない」

赤井「そして、君もな」

コナン「僕も......?」

赤井「これを気に君が闘いから降りるなら、俺達は同じくそれを尊重する。証人保護プログラムに則り、君達の安全は確保する。それを伝えに来た」

コナン「何故、そんな事を?」

赤井「何、元々奴等とのケンカは俺達大人の仕事だ。これ以上君達を巻き込む事も無い」

コナン「......」

赤井「それに、俺には出来なかったんでな。守る事が......」

コナン「......!!」

赤井「時間は無いが、ゆっくり考えてみてくれ。自分自身の、本当の望みをな」

コナン「赤井さん、もしかして......。アイツを......」

赤井「......さあな。気紛れさ。シニカルを気取りすぎた、バカな男のな」

コナン「......」

コナン「俺自身の望み......。灰原自身の望み......」

コナン「闘いから降りる事......。灰原と共に生きる事......」

コナン「それが、俺の望みなのか......?アイツの望みは......?」

コナン「余計に分からなくなっちまったよ、ったく......」

コナン(赤井さんはどこまで本気だったのか......。灰原の全てを知った上での話だったのか、それは分からないが、悶々としたまま俺は帰ってきた)



コナン「ただいま......」

阿笠「おお、お帰り。遅かったの」

コナン「うん。ワリー、寝るわ」

阿笠「お、おお。お休み」

コナン「......」

阿笠(何じゃ?何があったんじゃ?)



コナン「......ふぅ」チラッ

灰原「......」

コナン「寝たかな」

灰原「......遅いわよ、お兄ちゃん」

コナン「お、起きてたの」

灰原「起きてたわ。ずっと待ってたんだから」

コナン「そ、そっか。ゴメン」

灰原「ん」ポンポン

コナン「は?」

灰原「早く。一緒に寝てよ」

コナン 「あ、ああ。分かった」

中断します。
また後程。

皆様、ありがとうございます。
遅くなりました、もう少しで再開します。

灰原「......ん」

コナン「へ?」

灰原「ん!」

コナン「な、何?」

灰原「抱っこして、のポーズでしょ。して」

コナン「う、うん」ギュッ

灰原「もっと強く」

コナン「え?こ、こう?」ギュッ

灰原「もっと強くっ」

コナン「いや、痛いでしょ?」

灰原「良いの、もっと強く。強くして」

コナン「う、うん」ギュッ

灰原「もっと!」

コナン「これ以上は無理だよ、何で......」

灰原「良いの、痛くても!痛い方がきっと」

灰原「きっと、忘れない......」ギュッ

コナン「!!」

コナン「それ、どういう......」

灰原「別に何も無いわ。ただ、大事にしたいだけ。お兄ちゃんといる時間を。1分でも、1秒でも」ギュッ

コナン「もしかして、哀......」

灰原「何?」

コナン「いや、何でもない」

コナン(聞いてたのか?さっきの話)

灰原「......がする」

コナン「え?」

灰原「心臓の音がする。お兄ちゃんの。大きな音。命の音」

灰原「身体から温かさが伝わってくる」

灰原「私を見る眼差しを感じる」

灰原「お兄ちゃんの声が、息が聞こえる」

灰原「それだけで、私は幸せ」

コナン「哀......」

灰原「お兄ちゃん、約束して」

コナン「約束?」

灰原「この時間を、忘れないで。私もずっと忘れないから」

コナン「分かった。忘れないよ。一生......」

灰原「うん。ねぇ、お兄ちゃん」

コナン「ん?」

灰原「お願いがあるの」

コナン「何?」

灰原「キスして」

コナン「え!?」ドキッ

灰原「私からの不意打ちじゃなくて、お兄ちゃんから。して?」

コナン「え、あ、あ、あの......」ドキドキ

灰原「お願い......」ギュッ

コナン「っ!!わ、分かった。い、行くよ」

灰原「ん......」

コナン(心臓が破裂しそうだ......っ!良いのかよ、俺っ!でも、でもっ......。止まれねぇ、止まりたく、ねぇ......っ!)ドキドキ

チュッ

灰原「......んっ」

コナン「......」

灰原「......ありがとう、お兄ちゃん」

コナン「......」

灰原「お兄ちゃん?」

コナン「......あ、大丈夫大丈夫。何でもない」

灰原「本当?」

コナン「本当だよ、本当」

コナン(頭が真っ白だ。雷に打たれたみたいってこう言う事か......?)

灰原「ごめんなさい。ワガママ言って」

コナン「良いさ。ワガママなんかじゃ」

灰原「......ふぅ」パタッ

コナン「ど、どうした?」

灰原「今になって力が抜けちゃった。あんまり気持ち良かったから......」ニコッ

コナン「!!!」

灰原「頭が真っ白になって、身体が浮いてるみたい。不思議な感じ」

コナン「そ、そっか」

灰原「お兄ちゃん......」

コナン「ん?」

灰原「......大好きよ。ずっとずっと」

コナン「俺も哀を大好き......。いや」

灰原「?」

コナン「あ、あ、あ......」ドキドキ

灰原「あ?」

コナン「あ、愛......してる」ドキドキ

灰原「!!!」

コナン「ずっと、ね」ドキドキ

灰原「......」グスッ

コナン「何で、泣く?」

灰原「不意打ちするからよ、バカ......」グスッ

コナン「不意打ちって......」

灰原「ホント、バカ......」ギュッ

灰原「嬉しい。今までで一番。幸せ......」

コナン「哀......」


コナン(俺がその時、愛してると口にしたのは言葉通りの意味だったのか。それとも、敢えて愛と言う大きな言葉を使う事で本質を曖昧にしたのか。博士や赤井さんに言われた現状から眼を逸らそうとしたのか)

コナン(その時点では、はっきりと自信を持てなかった。ただ......)


灰原「何?お兄ちゃん?」

コナン「ん?」

灰原「ニヤニヤしながら私を見て」

コナン「何でも......。無いさ」

灰原「変なの」クスッ


コナン(今、彼女が俺の腕の中にいる事に幸せを感じるのは、紛れもない事実だ)

灰原「......ねぇ、お兄ちゃん?」

コナン「ん?」

灰原「部屋に来る前に、何かした?」

コナン「何故?」

灰原「ちょっとだけ......。怖い感じがしたから」

コナン「え?」

灰原「気持ち良かったから、殆ど感じなかったけど」

コナン(赤井さんと接触したからか?短時間で、距離もそんなに近く無かったのに。やはり、気配を察する力は消えていないのか......)

灰原「お兄ちゃん?」

コナン「あ、いや。何もしてないさ。博士と話してただけで」

灰原「そっか。そうよね。ごめんね」

コナン「いや、良いんだ。さ、寝ようか」

灰原「うん......。あまり寝たくないけど」

コナン「何故?」

灰原「起きて一緒にいたいもの」

コナン「それは分かるけど......」

灰原「あんまり本気にし過ぎないでってば」クスッ

コナン「......ん。寝よ」

灰原「うん......」ギュッ

コナン(俺といて安心してるってのは嬉しいが、まだ消えない灰原の力を喜ぶべきなのか、憂うべきなのか......)



コナン(とにかく、その晩は悩みながらも幸せな気分で眠りに着いた)

コナン(が、いつまでもそれに浸ってはいられない。短い期間で様々な事に答えを出す必要に迫られたからだ。次の日学校行っても)



コナン「......」

歩美「コナン君、どうしたの?」

コナン「え?」

光彦「さっきから、ボーッとして」

元太「休み時間終わっちまうぞ!」

コナン「あ、いや。何でもないんだ」

歩美「本当?今日1日ずっとボーッとしてるよ?」

コナン「いや、本当に大丈夫さ。ハハハ......」

灰原「......」

コナン(クソッ、考え過ぎて他の事が何も手につかねえ)

コナン(下手な考え休むに似たり、とは言うが正にこう言う事か)

コナン(あんまり考え込んでるとみんな心配するしな......)

灰原「......お兄ちゃん?」

コナン「は?」

灰原「授業、始まってるわよ」

コナン「いっ!?」

小林先生「コラコラ、ボーッとしちゃダメよ?」

コナン「ご、ごめんなさい......」

コナン(あっちゃー。やっちまった......。こりゃみんなに怪しまれるな......)

中断します。
深夜に更新になると思います。

遅くなりました、午前ちょっと投稿して残りは夜投稿します。

コナン(クソッ、このままじゃダメな事は分かってるのに)

コナン(自分がどうしたら良いか答えが出ない)

コナン(そもそも、灰原になんて説明したら良い?)

コナン(一緒に逃げよう、なんて言える訳無いし)

コナン(背景を色々説明しなきゃいけねーよなあ)

コナン(でも、そしたら記憶戻るかも知れねーし。いや、戻った方が良い。でも......)

コナン(そもそも何俺は灰原と一緒に逃げる事を前提に考えてるんだ、俺は灰原をどうしたいんだ?)

コナン(大体、俺はここで降りたいのか?俺の目の前で死んでいった人達の気持ちをここで放棄するのか?)

コナン(あー!訳分からねーよ!人生でこんなに悩んだのは初めてだ!)

コナン(解答が出ないのがこんなに辛いなんて思わなかったよ......)

コナン(そういや、おっちゃんの同級生が殺人を犯した時の後、酔っぱらって寝言で言ってたな)

コナン(殺人者の気持ちなんて分からないし分かりたくもないって)

コナン(それは最もだと思うけど、死ぬ程悩んでも解答が出ない悩みがあって、悩んで悩んで悩んた挙げ句感情が爆発した結果が犯罪だと言うのなら)

コナン(今はちょっぴりその気持ちが分かる様な気もするよ......)

コナン(なんてバカな事を言ってる場合じゃねーよ、クソッ!)

「蘭君はどうするんじゃ?」

コナン(......そうだよ、俺は結局蘭をどうしたいんだ?)

コナン(新一側の携帯、そういやチェックすらしてねーや。最低だな。俺)

コナン(......まずそこから始めよう。自分の気持ちを確かめるためにも、家に帰ったら新一側の携帯を確かめよう)

コナン(1つずつ、解答を出すんだ。痛みを伴っても)

コナン(なんて、言える立場じゃねーんだけどな。全く......)

灰原「......お兄ちゃん」チョンチョン

コナン「は?」

灰原「......あっち」

コナン「へ?」

小林先生「コナン君?何回も呼んでるのに。どうしたの?」

コナン「い?!」

小林先生「具合悪いの?」

コナン「ごめんなさい!何でも無いです!」

小林先生「本当?コナン君がこんなにボーッとするなんて、滅多に無いから」

コナン「ごめんなさい......」

歩美(コナン君、どうしたんだろう?)

光彦(変ですね、何回もボーッとするなんて)

元太(コナンのやつ、腹減ってんのか?)

灰原「......」

ダイジェスト版まだ?

コナン(ま、当然こんな事繰り返すとみんな訝しがる訳で)



歩美「コナン君、ホントにどうしたの?」

光彦「あまりにもおかしいですよ?」

元太「朝飯食べてねーのか?」

コナン(飯は食ったよ......)

コナン「いや、本当に何でも」

灰原「本当?」

コナン「うっ......」

灰原「みんなバカじゃないんだから、お兄ちゃんが変な事は分かってるわよ?何があったか話してよ?話せないの?私達を信用出来ないの?」

コナン(そっか、ここで抱えちまったら前と同じ......。でも)

コナン「ゴメン、みんな」ペコッ

歩美「コナン君?」

コナン「確かに今、僕は悩みを抱えてる。でもこれは、自分で答えを出さなきゃいけないんだ。だから、それまでそっとしておいてくれないかな?答えが出たら、必ず話すから。頼むよ」

歩美「......しょーがないなあ」

光彦「ええ、コナン君が僕達にお願いなんて滅多に無い事ですから!」

元太「いっつも命令ばっかだからな!」

コナン(指示と言えよな、バーロ......)

灰原「ま、みんなが納得するなら私は構わないけど。一緒に暮らす身としてはいつまでも悩んで欲しく無いんだけど?」

コナン「ゴメン、なるべく早く片を着けるから......」

灰原「無理しなくて良いけど、困ったら言ってよね。心配になるから」

コナン「分かった。必ず」

コナン(と、その場はそれで済んだが。その帰り道)



歩美「じゃあ、またね!」

光彦「また明日!」

元太「またな!」

コナン「うん、また明日!」

灰原「またね」

コナン「さて、帰るか」

灰原「ええ。ねぇ、お兄ちゃん?」

コナン「ん?」

灰原「結局、何を悩んでるの?」

コナン「え」

灰原「みんなは納得しても、私はまーだ納得いかないの」

コナン「あ、いや、その......」

灰原「ひょっとして、私に関わる話?」

コナン「!」

灰原「やっぱり。顔に出やすいんだから」

コナン「あ、いや......」

灰原「ま、良いわ。答えが出たら、ちゃんと教えてよね」

コナン「う、うん」

灰原「時間が無いんだから、あまり苦しい顔見たくないのに」ボソッ

コナン「え?何?」

灰原「......何でもないわ」

コナン「?」

コナン(その時のつぶやきの意味は、すぐ分かる事になるのだが、とにかく俺は家に帰るとすぐさま新一側の携帯をチェックする事にした。とかく自分の気持ちをハッキリさせたかった)




コナン「っと、携帯携帯......。あったあった。最近触ってすらいなかったからな。電源入るかな」

コナン「ずっと......。ほったらかしだったからな」

コナン(コナンとしてはたまに電話していたが、事務所にも帰ってはいないし、蘭に遊びに来る許可も出していなかったので、本当にしばらく蘭達とは関わっていなかった)

コナン「......良く良く考えたら、文字通り夢中だったんだなあ。灰原の件で」

コナン「電源つけるのが怖くなってきたぜ。自分で招いた事なのにな......」

灰原「お兄ちゃーん?」

コナン「はうっ?!」

灰原「何変な驚き方してるの?」

コナン「な、何でもないっ!な、何か用?」

灰原「お父さんが買い物行くって。行こ?」

コナン「あ、ゴメン。ちょっと体調が......」

灰原「ホント?大丈夫なの?」

コナン「あー、大した事無いよ!でも、夕飯まで休ませてくれる?」

灰原「分かったわ。ゆっくりしてて。本当に大丈夫?私、心配だから一緒にいたい」

コナン「大丈夫!何かあったら連絡するから!ね?買い物も大した時間かからないでしょ?」

灰原「......分かったわ。すぐ戻るわ」

コナン「うん。気を付けて」

コナン「......ふぅ、危ねー」




阿笠「お、哀君。コナン君は?」

灰原「具合が悪いって」

阿笠「具合?大丈夫かの?」

灰原「きっと大丈夫よ。身体はね」

阿笠「?」

灰原「また、内緒にして......」ボソッ

中断します。
明日更新予定です。

>>286
ダイジェストと言うか、ちょっとした別バージョンを予定してます。

まずは本編後少し、頑張ります。

本編もそうですが別バージョンも楽しみにしております。

灰原かわいい

遅くなりました、再開します。

>>291>>292
ありがとうございます。

灰原「......やっぱり、気になるわね」




コナン「ふぅ、さて。電源を入れてチェックするか......」

コナン(と、言いつつ手はなかなか進まなかった。開いた時にどんなメッセージが残されているのか。きっと大量に残されているだろう。それに何と答えれば良いのか)

コナン(そうして少し戸惑ったが、意を決して電源を入れた。そして画面を見た時に映し出されたのは、俺の予想とは異なる物だった)

コナン「......どういう事だ?」

コナン(蘭からのメッセージが、無い)

コナン(いや、無いと言うのは間違いだ。確かに、俺が連絡を断った頃には大量にメールや着信履歴がある)

コナン(しかし、その数は急激に減っていき遂には途絶えて大分経っていた)

コナン「......蘭」

コナン(最後に残されていたメールには、こう綴られていた)

新一へ

今もまだ忙しいかな。
お互い言葉を交わせなくなって大分経つね。
きっと大変な事件に巻き込まれちゃったんだね。

こうして距離をとって、新一が事件が忙しいって言うのを聞くたびに、私はそんな事件を追う新一が好きだって思ってた。

事件を追ってる新一が、一番輝いてるんだって。

でも、最近こう思ってしまったの。

私は、事件より上になれないって。
新一の中で、事件より上になれないって。

新一を責めてる訳じゃないの。
ただ、私はやっぱり事件を追ってキラキラしてる新一が好きだから。
その重荷になりたくないなって思ったの。

新一には、私の事を気にせずに頑張って欲しい。
キラキラ輝いて欲しいって。
そう考えるようになったの。

私は私で頑張るから。
新一も、どうか頑張ってね。

お互い頑張って、いつか会いたいね。
でも、もう私の事は気にしなくていい。
このメールに返事もしなくていい。

いつまでも応援してるからね。
ずっと大好きだったよ。
でも、今はさよなら。

身体に気を付けてね。
どうか元気で。

私の大好きな新一へ。

毛利蘭

コナン「......」

コナン(言葉を失った。蘭がそんな風に考えるなんて、思いもしなかった)

コナン(いや、言葉の節々を見れば別れの言葉にも、返事をして欲しいと言うメッセージにも見える。だが......)

コナン(俺がショックを受けたのは、このメッセージそのものじゃなかった)

コナン(このメッセージを受けても、【ショックを受けなかった自分】にショックを受けたんだ)

コナン(この文を見ても、ほったらかしにして済まなかった、と言う罪悪感や申し訳無さは感じる。だが......)

コナン(好きな人に......。好きだと思っていた人に別れを告げられたのに、悲しくない。無いわけじゃないけど、あまり悲しくない)

コナン(その理由が、灰原にあるのなら......。俺の気持ちが灰原を愛する様になり、蘭から別れを告げられても何も感じなくなったのなら)

コナン(......俺は、なんて最低な人間なのだろうか)

コナン(これじゃあまるっきり、俺は好きな人を乗り換えたただの浮気者じゃあないか)

コナン(それも、ずっと待たせて......。きちんとしていない関係のままの女を、こんなに追い込んで)

コナン(ただの......。クズじゃないか)

コナン(そして、もう1つ自分に腹が立つ事がある)

コナン(きっと俺は心の何処かで、これだけ蘭をほったらかしにしても、きっと蘭は俺を好きでいてくれるだろう。そうタカを括っていたに違いないんだ)

コナン(出なきゃ、蘭をここまで放置などするわきゃねーんだ)

コナン(最低だ。最低以外に自分を形容出来ねーよ。本当に)

コナン(自分を殴りたいと思ったのは......。少なくとも、ここまで自分に腹が立ったのは初めてかも知れない)

コナン(そして、それ以上に......)

コナン(これ程自分に打ちのめされ、失望しても......)

コナン(今頭に浮かぶのは、灰原の事ばかりと言う事だ)

コナン(俺は......。俺はここまで......。深くアイツを......)

コナン(アイツを愛してしまったのか......?)

コナン(だが......。こんな俺がアイツの側にいる資格などあるのか......?)

コナン(こんな......。自分を好いてくれた女に後ろ足で砂をかけるようなヤツが、好きだのなんだの言う資格などあるはずが無い)

コナン(アイツを守る資格なんて無い)

コナン(でも、この気持ちは消えそうに無い......)

コナン「......笑おうにも笑えねーよ。俺は自分がどういう人間かも解っちゃいなかった」

コナン「本当に無様で情けねーなあ。なあ?工藤新一さんよぉ?」

「工藤、新一......?」

コナン「えっ?!」

灰原「......」

コナン「あ、哀?!どうして?!」

灰原「お、お兄ちゃんが心配で......。それより、工藤新一って......?」

コナン「え、いや、それはっ」

灰原「......!」ピキーン!




「......君」

「......藤君」

「工藤君......」



灰原「工藤、君......?」

コナン「!!」

灰原「......!!イ、イヤ......っ!や、めて......!出て、来ないで......!!」

コナン「な!?」

灰原「出て......来ないで......っ!!私っ!!お願いっ!!私を消さないでぇ!!」

コナン「な......!」

灰原「うううっ!!」

コナン「哀っ!落ち着け!」

灰原「いや、お兄ちゃん......!?工藤......君?!いや!!やめて、分からなくなる!!」

灰原「やめてぇぇえ!!」プツンッ

コナン「ヤバイッ!!」ガシッ

コナン「おい!しっかりしろ!哀!!」

灰原「......」

コナン「クソッ!前にもこんな......!だが、前よりも苦しみ方が......!!」

コナン「おい!目ぇ開けろよ!!しっかりしろ!!哀!!哀っ!!」

コナン「頼むよ、起きてくれ!!灰原?哀?どっちでも良い!起きてくれぇぇえ!!」




コナン(その後、博士が帰って来る頃になっても、灰原は目を覚まさなかった)

コナン(布団に寝かせた灰原を、俺はただ見守るしか無かった)



コナン「......」

阿笠「そう落ち込むでない、新一」

コナン「......」

阿笠「恐らく、工藤新一と言うワードは彼女にとって相当重要なワードじゃったんじゃ。それを君本人から聞いた事で、堰を切った様に記憶が戻って来たのかも知れんの」

コナン「......」

阿笠「いずれにせよ、哀君がどうなっているかは目を覚まさない事には分からん。君も休むと良い」

コナン「......ここにいるよ」

阿笠「しかし」

コナン「ここにいたいんだ」

阿笠「......分かった。食事は運ぶから、きちんと食べるんじゃぞ」

コナン「......」

阿笠「とりあえず、ヤケを起こさん様にな。また後での」

コナン「......」

中断します。
また後程。

おお、良かった。復旧してる!
お待たせして申し訳ありません、夜に更新します。

面白いなあ
作者さん他にも何か書いてないのかなあ
教えてほしい

>>305
この文章構成力からして経験多そうだろ
1つだけのはずがない

遅くなりました、再開します。
皆さんありがとうございます。

>>304>>307

SS投稿はあまり無いんですが、プライベートでサラリーマンやりながら小説応募したりしてるので文章を書くのは経験あります。

コナン「......なあ、哀」

灰原「......」

コナン「起きてくれよ......」

灰原「......」

コナン「......俺の、せいで」

コナン「俺が現実から逃げてばかりいたからこんな事に......」

コナン「もし、さっきのショックで精神に異状を来していたら......」

コナン「......何考えてんだ俺はっ!俺はっ!」ガンッガンッ

コナン「クソッ、クソッ!!俺はっ!俺はっ!」ガンッガンッ

コナン「俺は何も......。誰も守れねぇっ!!」ガンッガンッ

コナン「何が高校生探偵だ......。何が、何がっ!!」ガンッガンッ

コナン「誰も守れねぇ俺が......。そんなモン名乗るなんて......。バカバカしすぎるぜ......」

コナン「......痛ぇなあ。床殴ったのも痛ぇけど」

コナン「こんなに痛ぇのは、初めてだよ」グスッ

コナン「ゴメンな、哀......」グスッ

コナン「俺の、俺のせいで......」グスッ

コナン「う、うう......っ」グスッ

灰原「......の?」

コナン「えっ......」

灰原「何を、泣いて......いるの......?お兄ちゃん......」

コナン「哀!起きたのか!」

コナン(お兄ちゃん、と言ったな?記憶はまだ......?)

灰原「お兄ちゃんが......。泣いてる声がして......。そしたら、目が覚めたわ......」

コナン「良かった、良かった......」グスッ

灰原「何故、泣くの......?」

コナン「だって、もし目が覚めなかったら......」グスッ

灰原「大袈裟よ......。心配のし過ぎよ......」クスッ

コナン「だって、前に意識を失った時よりも」

灰原「確かに前より......。ショックは大きかったかもね......。それより、お兄ちゃん......?」

コナン「ん?」

灰原「お兄ちゃんは......。何を苦しんでいたの?」

コナン「え?」

灰原「あの時......。お兄ちゃん、とても悲しそうな顔してたわ。私は、そっちの方が心配」

コナン「......」

灰原「話せないの......?」

コナン「......大雑把に言うと、気付いちゃったんだよ」

灰原「何を?」

コナン「自分が、最低の人間だって事を」

灰原「お兄ちゃんが......?何故?」

コナン「まあ、色々あったんだけどさ。結論から言うと、僕は人の気持ちが解らない。解らない上に周りの人を傷付ける人間だって、気付いちゃったんだよ」

灰原「......」

コナン「こんな人間が哀を守る資格なんて無い、きっと僕が側にいたら哀を不幸にする、傷付ける。そう考えたら悲しくなってさ......。哀を傷付ける位なら、僕なんかいなくなった方が良い。そう思って......」

灰原「何故?」

コナン「え?」

灰原「お兄ちゃんがそういう人間だとして、何故私を守る資格が無いの?」

コナン「何でって......。それは......。哀を傷付けたくないから......」

灰原「そんなの、誰といても同じじゃない......?必ず上手く行く人生なんてないもの。仲良くいれる時もあれば、ケンカする時もあるでしょ?」

コナン「で、でも......。俺は......」

灰原「そんな下らない事で悩むなら、どうやったら私を幸せに出来るか考えてよ!バカなんじゃないの!!!」

コナン「!!」

灰原「何があったか知らないけど、ウジウジ悩む暇があるからもっと私の側に来てよ!私と一緒に遊んでよ!笑ってよ!」

コナン「あ、哀......」

灰原「守る資格?最低?そんな事どうでも良い!お兄ちゃんがどうだろうと、どんな人だろうと、私はお兄ちゃんと一緒にいたいの!お兄ちゃんと離れたくないの!!私のそういう気持ち考えた事ある??!」

コナン「......」

灰原「私の気持ちも考えないで、勝手にそんな事で悩まないでよ!!」

コナン「......」

灰原「例え傷付いても良いわよ......。どうなっても構わないわよ!お兄ちゃんがどうだろうと、私が......。私がお兄ちゃんを好きなんだから!!」

コナン「......!!」

灰原「バカみたい、全く......。ホント、バカみたい......」グスッ

コナン「な、泣かないでよ......」

灰原「泣きたくもなるわよ......。こんな私をほったらかしにして、勝手にいなくなろうとする人なんて......。サイテーよ」

コナン「ゴ、ゴメン......。僕は、僕は......」

灰原「......なーんてね。ゴメンね、お兄ちゃん。私も......。謝らなきゃ。色々」

コナン「え?」

灰原「ホントはね、こんなに怒るつもりは無かったの。でも、時間が無いかも知れないのにお兄ちゃんがそんな事言うから......」

コナン「時間が無い?」

灰原「私はもうすぐ......。消えてしまうかも知れないでしょう?」

コナン「......!やっぱり、さっきの言葉は」

灰原「うん。聞いちゃったの。あの時」

コナン「全部聞いてたのか......?」

灰原「ううん。こっそり聞くつもりだったけど、殆ど聞こえなかったし、途中で逃げちゃった。でも、あの部分だけは聞こえちゃったわ」

コナン「......」

灰原「記憶喪失者が記憶を取り戻した時、それまでの」

コナン「それ以上は言わなくて良い」

灰原「......私ね、薄々気付いてた。勘で」

灰原「きっと、昔の事思い出したら今のままの私ではいられなくなるんだろうなって」

灰原「だから、あまり昔の事思い出したくなかった。ホントは。お兄ちゃんと、今のままでいたかったから。でもね、黙ってても分かっちゃうんだ」

コナン「何を?」

灰原「私もお兄ちゃんも、きっと普通の子供じゃ無いんだなって」

コナン「!」

灰原「だって、周りの子達とあまりに違うんだもの。話し方も、考え方も」

灰原「私のしゃべり方も、どんどん大人びているでしょう?それに、お兄ちゃんはどう考えても頭が良すぎるもの」

コナン「......」

灰原「そんな事を周りに気付かされる毎日だったけど、怖くて向き合いたくなかった。昔の私と」

コナン「やはり、そうだったのか......」

灰原「それで、さっきたまたまお兄ちゃんが心配になって見に行った時......。お兄ちゃんの発した名前......」

コナン「工藤、新一......」

灰原「そう。その名前を聞いた瞬間、もの凄いショックが来て......。見えたの」

コナン「見えた?」

灰原「私が誰かを......。工藤君って呼んでる所が」

コナン「でも、思い出さなかった?」

灰原「うん。と言うより......。無理矢理押さえつけたの。きっと。思い出したら、私が消えてしまいそうで。それが怖くて」

コナン「......」

灰原「さっきお兄ちゃんに怒ってしまったけど、謝るのは私の方。私が自分から逃げちゃったから、昔の私から逃げちゃったから。お兄ちゃんを悩ませちゃったんだよね」

コナン「違うんだ、そんな事は」

灰原「ううん。違わない。私がもっと早く昔の事を思い出してたら、お兄ちゃんは色々悩まずに済んだんだもの」

コナン「違うよ、それは違う。逃げちゃったのは、僕だ」

灰原「お兄ちゃん......」

コナン「僕は、今に浸っていたくて......。哀が僕をお兄ちゃんと慕ってくれるこの日々が楽しいあまり、哀を現実から遠ざけた。だからこうなったんだ」

灰原「......」

コナン「もっと早く......。2人で深く話し合うべきだった。哀の気持ちをもっと深く理解するべきだった。でも、僕は逃げた」

灰原「私も一緒よ。お兄ちゃん。だから、どっちが最低なんて言えないわ。みんなこうやって失敗するのよ、きっと」

コナン「......」

中断します。
また後程。

灰原「ねぇお兄ちゃん」

コナン「ん?」

灰原「こっち来て」

コナン「う、うん」

灰原「抱きしめて」

コナン「......うん」ギュッ

灰原「私を感じる?」

コナン「うん、感じるよ。温かい」

灰原「私がここにいるのが、分かる?」

コナン「分かるよ。ここに哀がいるって」

灰原「お兄ちゃんがそう感じるなら、それはお兄ちゃんのお陰よ」

灰原「お兄ちゃんがいてくれたから、私は私として存在出来た」

コナン「哀......」

灰原「もうすぐ、私は全てを思い出して消えてしまうかも知れない。でも......。そうなるならその運命を受け入れるわ」

灰原「もう、記憶を取り戻す事を拒まない」

灰原「だから、せめてその時までは一緒にいて......。お兄ちゃん」

コナン「良いの?こんな僕が側にいても。また哀の気持ちが分からなくて怒らせるかも知れないよ?」

灰原「その時は、それ以上に可愛がってもらうから良いの」クスッ

コナン「......そっか」ニカッ

灰原「それに、動物園......。連れてってくれるんでしょ?」

コナン「うん。約束だから」

灰原「ならせめてその時までは......。今までと同じ様に。いえ、今以上に私の側にいて。私を守って。私を......。好きでいて」

コナン「分かった。約束する」

灰原「じゃ、約束の印」

コナン「うん......」チュッ

灰原「......んっ」

コナン「......」

灰原「......」ギュッ

コナン「......」ギュッ

コナン「......ふぅっ、長いよ!息が続かない」

灰原「その位してくれたって、バチは当たらないわ」クスッ

コナン「......」ポリポリ

灰原「赤くなっちゃったわね、顔」クスッ

コナン「い、良いだろ、別に......」

コナン「......僕も、伝えなきゃ」

灰原「?」

コナン「僕も、伝えなきゃ行けない事がある。でも、今は言わない。週末のデ、デートが終わったら......。話すよ」

灰原「......分かったわ。とりあえず」

コナン「?」

灰原「一緒に寝ましょう?小難しい事は、後で良いわ。デートの、ね」

コナン「分かった」

灰原「所でお兄ちゃん、デートの意味分かってる?」

コナン「え?」

灰原「好きな人と一緒に出掛ける事よ?私の事、そんなに好き?」クスッ

コナン「え?!あ、いや、その......」

コナン「......好きだ」

灰原「!!」

コナン「大好きだ。本当に本当に......。大好きだ」

灰原「......」カーッ

コナン「哀?」

灰原「じょ、冗談に本気で返さないでっ///」カーッ

コナン「顔が真っ赤だよ」

灰原「放っといてよ、もう!」

コナン「......そっか。ならもっと顔真っ赤にしてやるかな」ニカッ

灰原「バカッ!!調子に乗らないでよ、お兄ちゃんのバカッ!!」

コナン「......とにかく、寝ようか」

灰原「......うん」

寝落ちして飛び飛びで申し訳ありません、夜に更新します。

もうすぐラスト、頑張ります。

皆さんありがとうございます。
遅くなりました、再開します。

灰原「あんな真顔で言われたら、ドキドキしちゃうじゃない」ボソッ

コナン「何か言った?」

灰原「......何でもないっ!」

コナン(ったく、素直じゃねー所は前に戻って来たなあ)

コナン(まあ、それは俺も同じか......)

コナン(......ホントは、もっと聞かなきゃ行けない事も話さなきゃ行けない事もあったかも知れない)

コナン(実際、記憶はどこまで戻ったのかとか。俺達の素性についてとか。山程言わなきゃ行けない事があったかも知れない)

コナン(でも、哀の気持ちを知った今はそれを尊重しよう。そう思った)

コナン(せめて、後僅かな間だけ......)

コナン(そして、この日々が終わる前に伝えなくちゃ。俺の答えを。俺の望みを)

コナン(そう、俺の望みは......)

コナン(俺の望みは、灰原を......)

灰原「......お兄ちゃん」

コナン「ん?」

灰原「......楽しみにしてるから。週末」

コナン「......うん」

コナン(......とにかく今は、瞬間瞬間を大切にしよう。いつその時が来ても良い様に)

コナン(後悔の涙を流す事の無い様に......)



コナン(それからの毎日、俺達は普通の毎日を普通に過ごした)

コナン(普通に学校に行き、普通に歩美達と遊び、普通に家で過ごした)

コナン(......前よりも、2人でいる時間が増えた事を除いて)

コナン(俺達は、少しの時間も惜しんで話をした。側に寄り添った)

コナン(1秒1秒を噛み締める様に。少しでも密度の濃い時間を過ごす為に)

コナン(そうしてカレンダーの日付が変わる度、楽しみにしている日々が近づく喜びと、不安、恐れ、悲しさ、寂しさが襲ってきた)

コナン(それでも俺達は、日々を精一杯楽しく過ごす事に努めた。2人でいた想い出を、少しでも多く残す為に)

コナン(願わくば、俺達のこの日々が灰原の中から消える事の無い様に......)

コナン(そうして......)

コナン(その日はやって来た)



灰原「じゃあ、行って来るわね。お父さん」

阿笠「おお。気を付けての」

コナン「博士。くれぐれもアイツらには」ボソッ

阿笠「分かっとる。心配するでない」

灰原「ねぇお兄ちゃん。早く行きましょ?」ニコッ

コナン「うん。今行くよ!」

阿笠「嬉しそうじゃの。哀君。本当に幸せそうじゃ」

阿笠「あの笑顔を見とると、ワシが君に言って来た小言は、全て間違っておったと感じるわい」

コナン「んな事ねーよ。博士がああ言ってくれて感謝してるぜ。本当に」

阿笠「うむ。そう言ってくれると救われるわい」

コナン「大袈裟なんだよ。なあ、博士?」

阿笠「ん?」

コナン「......いや、何でもねぇ」

灰原「はーやーくー!」

コナン「っと、じゃ行って来るわ」

阿笠「うむ。気を付けての」

灰原「遅いわよっ」

コナン「ゴメンゴメン。さ、行こう」

灰原「ええ!」



阿笠(新一の顔......。何かを決意した顔じゃったのぉ......)

阿笠(ひょっとしたら、もうお父さんと呼んでもらえる日も少ないかも知れんの......)

阿笠(2人がここを巣立つ日も近いのかも知れんの。寂しくなるのう......)

阿笠(いや。何事にも終わりは来るもんじゃ)

阿笠(願わくば、あの2人にせめて今日1日幸せな時を......)

コナン(と、心配する博士に見送られた俺達は予定通り週末を迎え、晴れてデートに向かう事になった)

灰原「♪」

コナン「ご機嫌だね」

灰原「当たり前じゃない。お兄ちゃんは嬉しくないの?」

コナン「嬉しいさ。当たり前だろ?」

灰原「ならちゃんと手を繋いでよ」

コナン「うん」ギュッ

灰原「ふふっ。ねぇ、今日は何処に行くの?」

コナン「ん?ちょっと離れた町まで行くよ。電車使ってね」

灰原「電車で行くの?結構遠いの?」

コナン「うん。そこそこにね」

コナン(ホントは移動に時間使いたくねーけど、アイツらに今日はいないって言っちまったからな......。鉢合わせ無い為にも、ちょっと遠くまで行かなきゃ)

灰原「ふぅん。まあ、お兄ちゃんに任せてるから良いんだけどね。電車でお兄ちゃんに寄り添ってるのも悪くないかも」

コナン「えっ」ドキッ

灰原「何で今更それ位で緊張するの?」

コナン「ひ、人前では恥ずかしいよ」

灰原「あら、そんな事気にしてたら何も出来ないわよ?」クスッ

コナン「お手柔らかに頼むよ......」

灰原「ダーメ。精一杯お兄ちゃんに甘えさせてもらうんだから」

灰原「......ダメ?」

コナン「も、もちろん良いさ」

灰原「じゃあ、人前でキスとか出来る?」クスッ

コナン「へっ?!」

灰原「冗談よ。あー面白い」

コナン(ニャロォ......)

灰原「でも、お兄ちゃんに今日1日甘えたいのは本当よ。よろしくね」

コナン「う、うん」

コナン(何か、手玉に取られて遊ばれてる気分だぜ......)

灰原「でも......」

コナン「ん?」

灰原「やっぱりみんなに悪かったかしら。せっかく今日遊ぼうって言ってくれたのに」

コナン「仕方無いさ。こっちが先約だし。みんな来ちゃったらデートにならないよ」

灰原「それもそうね」

灰原「ホントは、歩美ちゃんは......」ボソッ

コナン「ん?」

灰原「ううん。何でもない」



元太「ちぇっ!コナン達のヤツ。せっかく休みなのにいねーなんてよ!」

光彦「仕方ありませんよ。博士の親戚の結婚式に行くから、仕度とかもあるでしょうし」

元太「俺達も連れてってくれりゃいいじゃねーかよ!」

光彦「流石に見ず知らずの僕達がゾロゾロ行くのは失礼ですよ」

元太「いつもの事じゃねーか」

光彦「それはまあ、そうですが......。たまには自重しましょうよ」

元太「事情?」

光彦「自重です!遠慮しましょうよって事ですよ!」

歩美「......」

光彦「ん?歩美ちゃん?どうしたんですか?」

歩美「ううん。何でもないよ!」ニコッ

光彦「そ、そうですか」

歩美(歩美、本当は知ってるんだもんね。哀ちゃんとコナン君が本当は何してるか)

歩美(昨日、学校の帰りに......)

歩美(哀ちゃん、私に話してくれたから)



元太「おうコナン!明日みんなで遊ぼうぜ!」

コナン「あ、ゴメン。明日はちょっと」

光彦「何か用事が?」

コナン「博士の親戚の結婚式にね。ちょっと遠くまで行くんだ」

光彦「そうですか、なら仕方ありませんね」

元太「オメーらだけ留守番すりゃー良いだろ!」

コナン「無茶言うなよ......」

歩美「そっかー。でも残念!コナン君もいないなら、哀ちゃんもいないんだね」

灰原「ええ。ごめんなさい」

元太「ちぇっ!つまんねーの!」

光彦「まあまあ、元太君。明日は3人で遊びましょうよ」

歩美「そうだよ。コナン君達のせいじゃないんだから」

コナン(ゴメンな、みんな)

灰原「......ねぇ、歩美ちゃん?」

歩美「え?」

灰原「ちょっとお話があるの。良いかしら?」

歩美「う、うん」

灰原「お兄ちゃん達は、先に帰ってて」

コナン「え?何で?」

灰原「良いから。お願い」

また飛び飛びで申し訳ありません、後程再開します。

皆さん、ありがとうございます。
遅くなりました、再開します。

コナン「でも......」

灰原「い・い・か・ら」ジロッ

コナン「はい、帰ります......」

灰原「あなた達も」

光彦「僕達もですか?」

元太「何の話すんだよー?」

灰原「か・え・っ・て」ジロッ

光・元「はい、すみません......」

光彦「コナン君!ホントに灰原さん何も思い出して無いんですか?あの迫力は前よりも上ですよ?」ヒソヒソ

コナン「バーロ、俺が聞きたい位だよ」ヒソヒソ

灰原「......みんな、聞こえてる?」

コナン「はい!帰ります!」

光彦「じゃ、じゃあまた」

元太「じゃ、じゃーな」

コナン(ったく、俺にまで内緒の話かよ?)



歩美「哀ちゃん、ちょっとコワかった」

灰原「あら、そうかしら」

灰原「でも、大事な話をしたかったから」

歩美「大事なお話?」

灰原「ええ。歩美ちゃんにはどうしても話しておきたい話」

歩美「......」

灰原「そんなに固くならないで」

歩美「だって哀ちゃん、顔が凄く真剣なんだもん。聞くのが恐いよ」

灰原「ごめんなさい、表情にはあまり出して無いつもりだったんだけど。恐かったら、止めても良いわ」

歩美「ううん。大丈夫。わざわざ私に話してくれるんだもん。ちゃんと聞く」

灰原「ありがとう。どこから話したら良いか......。まず、私達が明日行くのは結婚式じゃないの」

歩美「え?」

灰原「お兄ちゃんと2人で......。出掛けるの」

歩美「!」

灰原「前から約束してた事だから、予定を変えたくなくて。ごめんなさい」

歩美「......そっか。哀ちゃんとコナン君、デートするんだ」

灰原「やっぱり、怒るかしら」

歩美「ううん。そんな事無いよ。でも、何でわざわざ歩美に話したの?言わなきゃ分からないのに?」

灰原「歩美ちゃんにはどうしても話しておきたかったの。歩美ちゃんに、許可を貰いたくて」

歩美「許可......?」

灰原「ええ。お兄ちゃんと2人で出掛ける許可。時間が無いから、どうしてもお兄ちゃんと2人で出掛けたくて」

歩美「何で私の許可がいるの?え?ちょっと待って......?時間が無いってどういう事?」

灰原「言葉通りよ。私は......。もしかしたら、もうすぐいなくなる。この世界から」

歩美「えっ?」

歩美「いなくなる......?哀ちゃんが?」

灰原「......ええ」

歩美「どういう、事?」

灰原「......」

歩美「ねぇ、どういう事っ!哀ちゃん!」ガシッ

灰原「......私は、徐々に前の事を思い出しつつあるわ」

歩美「!」

灰原「多分、ちょっとしたきっかけで全てを思い出すのも時間の問題」

歩美「本当なの?でも、それと哀ちゃんがいなくなるのとは何の関係があるの?」

灰原「......記憶喪失になった人が、前の事を思い出した時にね。その間の事を忘れてしまう事があるの」

歩美「......えっ」

灰原「つまり、記憶を取り戻した時に今の私では無くなってしまうかも知れないの。病院であなた達と会ってから、前の事を思い出すまでの想い出を全て......。無くしてしまうかも知れない」

歩美「そ、んな......。じゃあ、今こうして話している事も忘れちゃうの?!」

灰原「可能性はあるわ」

歩美「一緒に遊んだ事も、ケンカした事も、みんな忘れちゃうの?!」

灰原「......かも知れない」

歩美「そんなのイヤ!!哀ちゃんがいなくなるなんてイヤ!!」グスッ

灰原「いなくなる訳じゃないわ。正確には。私は、あくまでも仮の心よ。あなた達の知っている灰原哀こそが本当の灰原哀。私が消えても、元の私が帰って来るだけ。あなた達に、灰原哀を返す時が近付いたのよ」

歩美「そんなの知らない!前の哀ちゃんが帰って来ても、今の哀ちゃんがいなくなるなんてイヤ!!イヤ!!いなくならないで!!」グスッ

灰原「残念だけど、こればかりはなって見なければ分からないわ」

歩美「そんな......」

灰原「そんなに泣かないで。歩美ちゃんが泣くと、私も悲しい」

歩美「......どうしてそんなに落ち着いてるの?哀ちゃんは消えちゃっても良いの?!」

灰原「それは......」

歩美「私達の事、忘れちゃって良いの!?想い出を忘れちゃって良いの?!」

灰原「......」

歩美「コナン君の事......。コナン君の事好きって言う気持ちまで、忘れちゃって良いの!?」

灰原「イヤよ!!」

歩美「!!」

灰原「......消えたくない。忘れたくない。歩美ちゃんの事も、みんなの事も、忘れたくない!!」

灰原「忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない!!」

灰原「お兄ちゃんの事はもっともっと忘れたくない!!お兄ちゃんを好きな気持ちを忘れたくない!!」グスッ

灰原「忘れたくなんて、ない......」グスッ

歩美「哀ちゃん......」

灰原「でも、でもね。もうきっと避けられないの。それは......」

灰原「やっぱり、恐い。記憶を取り戻した時に何が起きるのか、恐い......」

灰原「本当は恐くて堪らないの......」ガタガタ

灰原「だから、少しでもお兄ちゃんと一緒にいたくて。でも、それを歩美ちゃんにはやっぱり隠して置きたくなくて」

灰原「ごめんなさい、私。ズルいわよね」

灰原「時間が無いから、お兄ちゃんを譲れなんて。最低......」

灰原「でも、私、私......」

ギュッ

灰原「え?」

歩美「......謝らなくて良いの。哀ちゃんの気持ち、分かるよ」

灰原「歩美ちゃん......」

歩美「きっと私が哀ちゃんとおんなじ事になったら、おんなじ様に考えるよ」

灰原「......」

歩美「ねぇ哀ちゃん?覚えてる?」

灰原「......?」

歩美「前に歩美が言った事。哀ちゃんは私の、一番のお友達だって」

灰原「......!!」

歩美「もし哀ちゃんがこの先どうなっても、私は哀ちゃんの友達。何があっても、絶対に絶対に変わらない」

灰原「あなたは......。もうすぐ消えてしまうかも知れない私をまだ、友達と呼んでくれるの?」

歩美「当たり前だよ!!どんな哀ちゃんでも、哀ちゃんは哀ちゃんだもん!!」

灰原「......!!」

歩美「......コナン君と哀ちゃんが仲良いのはやっぱり羨ましいけど、でも......。それも含めて、やっぱり私は哀ちゃんが大好きだから」

灰原「......しい」

歩美「え?」

灰原「こんなに......。嬉しい事は無いわ......」

灰原「ここまで、私を愛してくれる友達がいるなんて」グスッ

灰原「私は.....。灰原哀は......。世界一幸せな人間よ......」グスッ

歩美「哀ちゃん......」

灰原「あなたに会えて良かった。歩美ちゃん。あなたとお兄ちゃんが居てくれて、本当に良かった。例え明日私が消えたとしても......。私は満足よ」

歩美「......ねぇ哀ちゃん。1つ約束して?」

灰原「約束?」

歩美「私の事を......。今日私と話した事を絶対に忘れないって」

灰原「え......?でも」

歩美「約束して!だって、思い出したからって必ず忘れる訳じゃないんでしょ?」

灰原「......」

歩美「それに、約束して忘れちゃったら約束破った事になるでしょ?哀ちゃんは約束破れるの?友達との」

灰原「!!」

歩美「ね?だから約束して」

灰原「あなたには......。敵わないわね」クスッ

歩美「ふふっ」

灰原「分かったわ。約束する。私は絶対に忘れない。今日の事も、今までの事も......」

灰原「あなたと言う素晴らしい友達がいる事を、私は忘れない。今日の想い出を、私は絶対に遺してみせる。全てを思い出しても」

歩美「うん。約束!」ギュッ

灰原「ええ、約束」ギュッ

歩美「あ、それと」

灰原「?」

歩美「コナン君とデートするのは、明日だけね!後は歩美も譲らないからね!」ニコッ

灰原「本当に......。敵わないわね」クスッ

歩美「......恐く、無くなった?」

灰原「ええ。ありがとう。歩美ちゃんのお陰よ」

歩美「うん。良かった。哀ちゃん?明日は......。コナン君と楽しんできてね」

灰原「ええ」

歩美「ちゃんと気持ち、伝えて来てね!」

灰原「え?」

歩美「ただ好き、じゃなくて。哀ちゃんがどうしたいか、コナン君をどう思ってるか、ちゃんと伝えて来てね!」ニコッ

灰原「歩美ちゃん......」

歩美「私、待ってるから!哀ちゃんが報告に来てくれるの、待ってるから!」

灰原「......ええ」

歩美「だから、だから......。帰って来てね、哀ちゃんっ......」グスッ

灰原「当たり前よ。約束ですもの」

灰原「あなたに会いに、帰って来るわ。必ず......」

歩美「約束、だよっ」グスッ

灰原「ええ、約束......」

中断します。
また後程。

歩美(絶対に帰って来てね。哀ちゃん......)



歩美「......」

光彦「歩美ちゃん?」

歩美「え?」

元太「お前またボーッとする様になったのか?」

歩美「あ、ゴメンね!何でもないよ!」

歩美(哀ちゃん達、今頃どうしてるかなあ)

歩美(......楽しくやってると良いなあ)

歩美(全部上手く行くって信じてるからね。哀ちゃん)

元太「あーあ。アイツら早く帰ってこねーかな」

光彦「随分寂しがりますね」

元太「やっぱよ、少年探偵団は5人揃わねーとな!」

光彦「元太君、珍しくリーダーらしい事言いますね!」

元太「俺はいつでも良いこといってるぞ!」

光彦「大体、元太君が良いこと言う時は頭に「父ちゃんが言ってた」とか「母ちゃんが言ってた」ってくっついて来ますけどね」

元太「でも俺の口で言ったから俺が良いこと言ったのは間違ってねーぞ」

光彦「もう、元太君は......」

歩美「ふふっ」

光彦「あ、歩美ちゃん笑いましたね!」

歩美「うんっ!おっかしいの、元太君!」

元太「何だよ、歩美までバカにしやがってよ!」

光彦「まあまあ。それより、この機会に3人で事件を解決してコナン君達を驚かせちゃいましょうよ!」

元太「何処にあんだよ?事件」

光彦「これから探すんですよ!」

歩美「歩美、さんせーい!」

元太「よ、よし!じゃあ行くぞー!」

光・歩「オー!」

歩美(また5人で遊べるよね。コナン君、哀ちゃん......)

コナン(歩美達がそんなやり取りをしていた頃、俺達は電車に乗り目的地へ向かっていた)



灰原「......」ギュッ

コナン「あ、あの......。哀?」

灰原「何?」

コナン「ホントにずっとくっついてる気?」

灰原「あら、イヤなの?」

コナン「イヤじゃないよ。嬉しいけど」チラッ

「可愛いね」クスクス

「ちっちゃいカップルだね」クスクス

「あの子達可愛い」クスクス

コナン「み、みんな見てるし......」

灰原「だったら見せてあげれば良いじゃない」ギューッ

コナン「......」ドキドキ

灰原「どうしてもイヤなら離れるけど」

コナン「いや、ゴメン。そのままで良い」

灰原「良い?」

コナン「そのままでお願いします」

灰原「最初から素直になれば良いのに」クスッ

優作「インターポールにやつらの情報があるかもしれないぞ」
FBI「証人保護プログラム受けたら」
コナン「俺の事件だから」

さんざん自分や身の回りの人が危険な目にあってんのに無責任過ぎる

遅くなりました、再開します。

コナン(心臓が破裂しそうなんだよ、バーロー......)

灰原「ねぇ、後どれくらいかかるの?」

コナン「ん?あと30分ってとこかな?」

灰原「そう。短いのね。意外と」

コナン「そう?30分もかかるのに?」

灰原「短いじゃない。こうして......」ギュッ

灰原「くっついていられるの、後30分しか無いんでしょう?」

コナン「え、あの......。向こうでも、くっついてれば」

灰原「じゃあちゃんと密着してよ?絶対に離れないで」

コナン「分かったよ。離れないさ」

灰原「一時もよ?」

コナン「分かったよ。絶対に離れない」

灰原「絶対よ」ニコッ

コナン(......こんだけ言うのは、やっぱり不安なのかな)

コナン(自分がどうなるか分からねーんだから、無理もねーよな......)

コナン(俺も怖くなって来た......。俺の話す事を、俺の気持ちを......。受け入れて貰えるだろうか。それが不安だ)

コナン(......でも、言わなくちゃな。その結果どうなってもな)



コナン(本当は、電車に止まって欲しい位だった。時間ごと)

コナン(前に灰原が時間が止まれば良いと言っていたが、今ならそれも理解出来る気がする)

コナン(ずっとこのままでいられりゃ、どれだけ楽で幸せだろうか。電車にいる間、俺はずっとそんな事を考えていた)

コナン(しかし、時計の針は進む。どれだけ願っても)

コナン(目的の駅が近づいて来る度、苛立つ様な焦る様な......。いわゆる焦燥感ってヤツを感じた)

コナン(その度、俺は灰原の顔を覗き見た)

コナン(灰原がその視線に気づいて俺の顔を見る度、アイツはニコリと微笑んで俺の眼を見ていた)

コナン(言葉は発しなくても、言わんとする事は分かった)

コナン(【私も同じよ。でも、あなたがいるから大丈夫】と。そう言っている様に見えた)

コナン(楽しませてやりたくてデートの予定を立てたのに、逆に励まされた気がして情けない気持ちになった)

コナン(そうだ。焦ってる場合じゃない。灰原を精一杯楽しませてやんなくちゃ)

コナン(なんて事を考えていたら、とうとう......)

「次はー、○○、○○ー」

コナン「っと、ここだ。降りよう」

灰原「着いちゃったの?」

コナン「うん」

灰原「残念ね。もう少しこうしていたかったけど」

コナン「そうだね。本当に......」

灰原「なんて言ってても始まらないわね。行きましょう」

コナン「うん」サッ

灰原「?」

コナン「手を。握って......。決して離さないように」

灰原「......ええ」ギュッ

コナン「良し、行こう」

コナン(......1つ1つの動作を、これ程集中するのは初めてかもな)

コナン(いつ終わりが来るか分からないから......。自然と動作に力が入っちまう。もっとリラックスしねーとな)

コナン(ったく。肝心な時にダメだな。俺は......)



コナン(こうして、落ち着かない気持ちを無理矢理正して俺達は目的の動物園に向かった)

コナン(ネットで調べたら、大きな動物。象やらパンダやらもいる上に、犬や猫、ハムスターなどの小動物の展示にも力を入れてる所らしい)

コナン(以前の経験から動物に触れるのが嫌いでは無いのは分かっていたので、ピッタリの場所だと思った)

コナン(......まあ、動物と関わったばかりに酷い目にあった事もあったが。猫を追いかけたら冷凍車に閉じ込められた挙げ句、半裸になった上殺人事件に巻き込まれた事もあったし)

コナン(それはさておき、灰原に楽しんでもらうならここがベストだと思った訳だ。後は、俺がキチンとエスコートしてやらなきゃ)

中断します。
明日夜更新予定です。

皆さん、ありがとうございます。
遅くなりました、再開します。

コナン(なんて考えながら駅を後にして、歩いた。バスが出てたみたいだけど、そんなに遠くも無かったから)



灰原「あとどれくらいなの?」

コナン「ま、10分ってとこかな?」

灰原「そう。どんな所かしら」

コナン「ん?ネットで見なかったの?」

灰原「下調べしちゃったら、せっかくの感動が無駄になっちゃうでしょ。だから全部お兄ちゃんに任せるの」

コナン「そっか。まあ有名だし広いみたいだから楽しいとは思うけど」

灰原「ま、私はお兄ちゃんと一緒なら何処でも楽しいんだけどね」

コナン「あんまドキドキする様な事言わないでよ......」ドキドキ

灰原「あら、気付かなかった?電車から......。いえ、ずっと私の胸、ドキドキしてるのよ?」

コナン「え?」

灰原「まあ、正確には......。お兄ちゃんといるなら何時でもドキドキしてるけど」

コナン「......」カーッ

灰原「ホント、顔に出やすいのね」クスッ

コナン「か、からかわないでよ」

灰原「あら、本気よ?」

コナン「え」

灰原「その位の事は、気付いて欲しいわね」クスッ

コナン(バーロ、こっちだってオメーといると胸が高鳴って仕方ねーんだよ......)

灰原「あー、面白い。他愛ない会話がこんなに楽しいなんて」クスッ

灰原「普通なら、あり得ないわよね」

コナン「そうかなあ?」

灰原「お兄ちゃんは、私以外と話す時こんなに楽しくなるの?」

コナン「......ならない、かな」

灰原「なら、やっぱりそう言う事ね」

コナン「どういう事さ?」

灰原「さあ?」クスッ

コナン(くっ、さっきからおちょくられてるな。意地の悪さは完全復活してるな)

コナン「っと、何て話してたら見えて来たよ」

灰原「え?あ、あれ?」

コナン「そ、あれ」

灰原「うわぁ......」

コナン(遠くからでもハッキリ見える大きくて目立つ動物園の看板を見て、灰原は目を輝かせていた)

コナン(後は、中に入っても灰原が喜んでくれれば良いんだが......)

灰原「ねぇ、早く行きましょ?お兄ちゃん」

コナン「焦らなくても、結構早く来たからそんなに混んでないと思うよ?」

灰原「いいからっ!」グイッ

コナン「おわっ!ちょっと、引っ張らないで......」

コナン(と、俺の手を引っ張って目を輝かせる灰原の顔つきは、紛れもなくフツーの子供の顔になっていた。フツーの小学生の女の子そのものの顔に)

コナン(やはりまだ、俺の目の前にいるのはいつもの灰原ではなく、あの日から一緒にいた哀なんだなと感じる)

コナン(それを実感する度、俺は安心感ともどかしさを感じる)

コナン(この神様のイタズラは、何時まで続くのだろうか、と)

寝落ちして申し訳ありません。
仕事次第ですが、今日か明日で完結します。

コナン(出来る事なら、もう少し続いて欲しい。俺が想いを伝える時まで)

コナン(例え、灰原が記憶を取り戻して今の記憶を失くしたとしても、俺の気持ちは変わらないだろう)

コナン(だが、出来るなら今の内に伝えておきたい。俺が灰原とどうなりたいか……)

灰原「お兄ちゃん?ボーっとしないでよ?早く行きましょ!」

コナン「あ、ゴメン」

コナン(まあ、今はこのパワフルなお姫様から逸れない様にするのが先だな……)




コナン(こうして灰原に引きずられる様にして俺達は門の所まで辿り着いた)

灰原「ふう、着いたわね」

コナン「そ、そうだね」

コナン(思いっきり引っ張られて腕が痛ぇよ……)

灰原「これからどうするの?」

コナン「ああ、あそこで券を買うんだ」




コナン「すみませーん」

店員「はい、いらっしゃいませ!」

コナン「子供2人、お願いします」

店員「はーい。あら?ボウヤ達2人だけかしら?」

コナン「うん、そうだよ」

店員「そうなの。子供だけで来るなんて、偉いわね。そっちの女の子は妹さん?」

灰原「ううん。私、お兄ちゃんのお嫁さんよ!」

コナン「はっ?!!!」

店員「あら!可愛らしい新婚さんね!はい、これチケットね。楽しんできてね」

灰原「ありがとう」ニコッ

コナン(な、何て事言いやがるんだ……)




コナン「……ねえ、さっきの何さ?お、お嫁さんって」

灰原「あら、そんなに狼狽える事無いじゃない?子供らしい切り返しだと思ったけど」クスッ

コナン「最近そんな子供らしさを見た記憶が無いんだけど」

灰原「お兄ちゃんだって大人の前では良くやるじゃない。小林先生の前とか」

コナン(くっ……。最近灰原にも僕口調が染み付いちまってるからな。言い返せねぇ)

灰原「それより、時間無いんだから。早く行きましょ」ニコッ

コナン「……うん」

コナン(チッ、その笑顔で返されたら何も言えねーや……)

コナン(さて、ようやく中に入った訳だが……)

コナン(この動物園は、大まかに言うといくつかのゾーンに分かれている)

コナン(入口から鳥類ゾーン、先に進むと猛獣館や水生動物のエリア。その先がキリンや象などの大型動物ゾーン。最後の方になると、ハ虫類館などがあり、俺が見せてやりたい犬や猫がいるエリアはその近く。つまり、だいぶ後の方になる)

コナン(順路MAPを見るだけでも、なかなかボリュームのありそうな施設になっている)

コナン(中に入ると、園内が大体見渡せる様になっており、まず俺達はそこから全体を見てみる事にした)






灰原「……うわぁ!スッゴイ広いのね!」

コナン「うん。ここいらでも有数の広さらしいからね。この身体じゃ、一回りするだけでも一苦労しそうだ」

灰原「……この身体?」

コナン「(ヤッベ!)あ、いや。小学生にはキツイよねって話さ。ハハハ……」

灰原「確かに、坂道も多そうだし。結構大変そう」

コナン「巡回バスあるみたいだけど、乗る?」

灰原「イヤよ。せっかく2人でいるんだから。歩きましょ?」ギュッ

コナン「わ、わかったよ。じゃ、行こう」

コナン(こんだけ密着されると歩きにくい、とは言えねーよな。ハハ……)

コナン(こうして、初っ端から灰原に主導権を握られながら園内散策が始まった)

コナン(初っぱなの鳥類ゾーンは、可もなく不可もなく、と言った感じだった)

コナン(灰原は見る物全てがもの珍しいって感じで喜んでいた)

コナン(中でも、全然動かない事で有名なハシビロコウには食い付きを見せていた)



灰原「この鳥、全然動かないわね」

コナン「ああ、詳しくは知らないけど大体はじっとしてるらしいよ」

灰原「ふうん......」ジッ

灰原「......」

灰原「......」

コナン「そんなに気に入った?」

灰原「何だか気が合いそうな気がして」

コナン(まあ、確かに黙々とパソコンに向かってた前のオメーなら、気が合うかもな......)

コナン(まあ、出だしとしてはそこそこ灰原も喜んでくれた様だった。そして次は……)



灰原「猛獣館?ここには何がいるの?」

コナン「んー、ライオンとかトラとかかな。見て迫力のありそうな動物たちさ」

灰原「ふうん……」

コナン「どうかした?」

灰原「……なんでもなーい」ニコッ

コナン「?」




コナン「お、初っ端からライオンか。久々に目の前で見るとやっぱり迫力あるな」

ガオーッ……

コナン「お、吠えた。珍しいな」

ガシッ

コナン「え?」

灰原「こ、怖いわ。お兄ちゃん」

コナン「へ?」

ガオーッ……

灰原「キャッ、こわーい!!」

コナン(キャッ、だって……?そんな事言うヤツじゃ……)

灰原「お兄ちゃん、こわーい……」ギュッ

コナン「わ、分かった。そのまま掴まってなよ。次行くから」

灰原「……うん」ニコッ



コナン「今度はトラか……」

灰原「おっかないわ、お兄ちゃん……」ギュッ

コナン(随分怖がるな……?)



コナン「今度は熊……」

灰原「食べられちゃう!!」ギュッ

コナン「……ワザとおっかながってない?」

灰原「……バレちゃった?」クスッ

コナン「段々ワザとらしくなって来たから」

灰原「だって、堂々とお兄ちゃんにくっ付けるチャンスなんだもん」ニコッ

灰原「もしあのライオンやトラが襲ってきたら、お兄ちゃんは守ってくれる?」

コナン「そ、そりゃもちろん」

灰原「ありがと。じゃあ、今も怖いから守って」ギュッ

コナン(いつの間にこんな悪知恵を……)

しんいちって感じで書き込みとバーローになるんだけどなにこれ?

>>379

sagaを入れる事で解消されます。
saga sageで上げずにフィルタを解除出来ます。

中断します。
また後程。

コナン(その後も、俺は灰原に振り回されっぱなしだった......)



灰原「あ、ねぇあれ見てお兄ちゃん!ペンギン!」

コナン「あ、ホントだ」

灰原「カワイイー!!」

コナン「確かに。ペンギンってどうしてああ可愛らしいのかな」チラッ

灰原「うわぁ......」

コナン(ホント、眼をキラッキラさせちまって......。やっぱ女の子だな)

灰原「......」チラッ

コナン「!」

灰原「お兄ちゃん、ペンギンじゃなくて今私を見てたでしょ?」

コナン「あ、いや」

灰原「可愛いって思いながら、私を見てた?」ニコッ

コナン「あ、いや......。う、うん」

灰原「そう。ペンギンより可愛い?」ニコッ

コナン「あ、当たり前じゃないか」

灰原「じゃあ、どの位可愛い?」

コナン「えっ?」

灰原「私、どの位可愛い?」

コナン「そ、それはその......」

コナン「......い、1番」

灰原「ん?」

コナン「1番、可愛いよ。せ、世界で1番......」

灰原「......ありがと。お兄ちゃんも、世界で1番カッコいいわ」ニコッ

コナン(くっ、何故こう際どい事ばかり......っ)

コナン(他にも......)



灰原「あ、あれひょっとして象?」

コナン「うん。向こうにはキリンも見えるね。パンダもこの先にいるみたいだよ」

灰原「スッゴい......。やっぱり目の前で見ると大きいわね!」

コナン「ホント、迫力あるよなあ。凄い存在感だよ」

灰原「お兄ちゃんには敵わないけどね」

コナン「へ?」

灰原「お兄ちゃんの存在感の方が、私には大きいけど」ニコッ

コナン「い、いやぁ......」

灰原「あ、照れてるでしょ?」

コナン「そ、そんな事は」

灰原「ふふ、お兄ちゃん可愛い」クスッ

コナン(ったく。からかってんのか?さっきから......。ドキドキするような事ばかり......)

灰原「......私の存在感は、どの位かしら」

コナン「え?」

灰原「お兄ちゃんにとっては、今の私の存在感はどの位かしら」

灰原「......なーんてね。次行きましょ!」

コナン「あ、うん......」

コナン(こんな感じで灰原は今まで以上に自然な感情を俺にぶつけてきた)

コナン(今にして思えば、あの時間が2人で自然に楽しめた最後の時間だったかも知れない......)

コナン(灰原は、その時間の中で精一杯俺に刻み付けたかったのかも知れない。自分の存在を......)

コナン(その後、結構歩いた俺達は売店で休憩を取る事にした。まさかその後、あんな事になるとは考えも......。しなかったが)



コナン「はい、ジュースとホットドッグ」

灰原「ありがとう、わざわざ持って来てくれて」

コナン「いや、良いさ。しかし、結構歩いたね。いつの間にかこんな時間だよ」

灰原「ホントね、あっと言う間。時間って早いのね。楽しいとホント、あっと言う間......」

コナン「......疲れたかい?」

灰原「大丈夫よ。こんなに楽しいんだもの」

コナン「そっか。良かった。やっぱり動物園に来て良かったよ。動物みてる顔、キラキラしてるから」

灰原「そう?」

コナン「うん。ああいう顔してると、ホント、可愛い子供って感じの顔になるよね」

灰原「.....!!」ピキーン



「......う、そう言う......てろよ」

「そう......顔して......にしか見えねー......からよ」



灰原「......!!」

コナン「......?どうした?」

灰原「......何でもないわ」

コナン(何だ?顔色が曇ったな)

コナン(まさか、今の言葉で何か記憶が刺激されて......?)

灰原「......たいわ」

コナン「ん?」

灰原「今度、あれ乗りたいわ」

コナン「あれ?」

コナン(灰原の見る方向には、近くにある遊園地の観覧車が見えた)

灰原「こういう動物園もデートって感じで楽しいけど、遊園地も行ってみたいわ。お兄ちゃんと一緒に」

コナン「そう、だね......。あっちも迷ったんだけどね」

コナン(つい、遊園地ってのは身体が縮んだ場所だから避けちまうんだよな......)

灰原「......遊園地なら、もっと自然にお兄ちゃんにくっつけるし」

コナン「え?今の僕らの身長じゃ、ジェットコースターとかには乗れないよ?」

灰原「バカね。そんなの乗らなくても、コーヒーカップとか、メリーゴーランドとか、観覧車とか。色々あるじゃない」クスッ

コナン「あ、そっか......」

灰原「だから、いつか連れてってくれる?一緒に......。行ってくれる?」

コナン「......もちろんさ」

灰原「約束よ、お兄ちゃん」

コナン「うん、約束だ」

灰原「あ、でも歩美ちゃんに怒られるかしら......」ボソッ

コナン「え?」

灰原「ううん。何でもないわ」

コナン(しかし、先の約束か......。そんな事を口にするなんて、やっぱり不安なのかな......)

灰原「......お兄ちゃん?」

コナン「ん?」

灰原「お兄ちゃんは、楽しい?今日私といて」

コナン「当たり前じゃないか。楽しいに決まってるだろ?」

灰原「そう。良かった。お兄ちゃん、無理して私に付き合ってるんじゃないかと心配で」

コナン「バカだな。そんな訳無いじゃないか。心から楽しいさ」

灰原「良かった。嬉しい」ニコッ

灰原「私も幸せ。こんなに楽しい時間があるなんて、考えた事も無かった。本当に幸せ......」

コナン「哀......」

灰原「心からハメを外して、思いっきり楽しめたしね」ニコッ

コナン「そっか。でも、あれはドキッとしたけどね。ここに入る時の、アレは」

灰原「アレ?」

コナン「お嫁さんってヤツだよ。冗談にしたってドキッと......」

灰原「本心よ」

コナン「えっ......」ドキッ

灰原「......歩美ちゃん。私、言うわ」ボソッ

コナン「哀......?」

灰原「......ホントは、今日のデートが終わったら言うつもりだったけど。タイミングが良さそうだから言うわ」

灰原「私、お兄ちゃんを最初に見た時から好きだった」

灰原「見た瞬間から、胸がドキドキしたわ」

灰原「何故だか解らないけど、この人を見てると安心する。胸が暖かくなる。この人は心から信頼出来る。そう思った」

コナン「哀......」

灰原「でも、私のこの好きがどういう好きかずっと考えてた。お兄ちゃんを、言葉通りお兄ちゃんとして好きなのか、それとも男の人として好きなのか」

灰原「この好きは、前の私からなのか。今の私だからお兄ちゃんを好きなのか、ずっと考えてた」

コナン(オメーも、似た様な事を考えてたのか......)

灰原「ずっと考えてた。でも......。日々が経つに連れて、色んな事があるに連れて解ったの」

灰原「例え前がどうでも、今この瞬間の気持ちを伝えたいって」

灰原「今の私が想う気持ちを伝えたいって」

灰原「だから......。言うわ。聞いてくれる?」

コナン「......うん」ドキドキ

灰原「私は......。今ここにいる灰原哀は」

灰原「お兄ちゃんを......。江戸川コナンを......。心から愛してるわ」

灰原「1人の人間として、そして、1人の男の人として......」

灰原「だから、だから私は......」

灰原「なりたい。この先もずっとお兄ちゃんと一緒にいて」

灰原「お兄ちゃんの......。お嫁さんになりたい」

コナン「......!!」

灰原「伝えられて......。良かった」

コナン「哀......」

灰原「この先......。私の記憶がどうなるかは分からない。今日の事を忘れてしまうかも知れない......」

灰原「......お兄ちゃんにフラれてしまうかも知れない」

灰原「でも......。私は今の気持ちをこうして伝えられて、良かったわ」

コナン(そこまで......。そこまでオメーは俺を深く愛してくれていたのか......)

灰原「私の気持ちは伝えたわ......。お兄ちゃんの気持ちを、聞かせて?」

コナン「俺の、気持ち......」

灰原「例えお兄ちゃんが、私をどう思っていても構わない。お兄ちゃんの本当の心を、私は知りたい」

コナン「俺の本当の......」

灰原「どんな気持ちでも良い。私に対する気持ちが同情とか、兄弟愛とかだったなら、それでも構わないわ。お兄ちゃんの気持ちを聞かせて。お願い」

コナン「......分かった」

コナン(俺も、このデートが終わったら伝えようと思ってた。灰原に対する想いを......)

コナン(......灰原が、精一杯の想いを伝えてくれたんだ。俺も伝えなくちゃ......!!)

コナン「んん!!あ、あのね。僕も最初は分からなかったんだ。哀をどう想ってるのか」

灰原「......ええ」

コナン「前から知ってた哀と全然違って、戸惑いもしたし、哀の言う様に同情や兄弟愛かもって想った事もあった」

灰原「うん......」

コナン「でも、でも......。そんなんじゃない」

灰原「......!!」

コナン「色々、言わなきゃいけない事はあるけど、これだけはハッキリしてる。僕の、僕の哀に対する気持ちは......」

灰原「気持ちは......?」

コナン「気持ちは......」

ドクン、ドクン、ドクン......

コナン(ちきしょう、APTX4869飲んだときより胸も身体も熱い......!!心臓が破裂しそうだ!!)

コナン(でも、言うんだ!!俺は、俺は......!!)

コナン「僕は、僕は哀が......」



「キャーッ!!」



コナン「......!!何だ?!」

>>390
訂正です。
コナンの台詞で「俺」がついてる所は
()でお願いします。
心の中の言葉です。

申し訳ありません。

灰原「な、何?!」



「逃げろ!!」

「通り魔だ!!」



コナン「何?!」



通り魔「ヒヒヒ......」



コナン(なっ......!何だってこんな時に!!今日まで事件も無くて平和だったのに!!何故こんな時にっ......!!)

灰原「こっちに来るわ、お兄ちゃん!」

コナン(っ!とにかくまず灰原を安全な所へ!)

コナン「こっちに!逃げるんだ!」

灰原「え、ええ!!」ギュッ

コナン(万が一にもコイツを傷付けさせやしねえ!!とにかく安全な所へ!!)



通り魔「ヒヒヒ、みんなぶっ殺してやる......!!」ダダダッ



コナン(チッ、こっちに来やがる!)

灰原「お兄ちゃん、怖いっ......!」

コナン「大丈夫だ!!絶対に哀は守る!!だから手を離すなよ!!」

灰原「う、うんっ!!」



「キャーッ!!」

「早く逃げろ!!」



コナン(クソッ、みんなこっちに逃げて来やがる!!人波で進めねえ......!!)



「逃げろーっ!!」

ドカッ!!

灰原「あっ!!」

コナン「哀っ!!」

コナン(クソッ、人が邪魔で戻れないっ!!)

灰原「痛っ、逃げなきゃ......」ズキッ

灰原「っ、あ、足捻って......」

ザッ

灰原「!!」

通り魔「へへ、ガキィ。お前からぶっ殺してやる......」

灰原「あ、あ......」



コナン「クソッ、どけ!どけぇぇえ!!」ダッ

コナン(2度も......。2度も俺の目の前で......。灰原を傷付けさせてたまるか!!)

コナン「哀......!哀ぃーっ!!」ダッ



通り魔「ヒヒ、1人目だぁ」

灰原(ダメ、動けない......。助けて......)

通り魔「死ねぇ!」

灰原「助けて、お兄ちゃんっ!!」

ドカッ......

通り魔「......あ?」



灰原「......え?」

コナン「......へへ、今度は間に合ったな」

灰原「お、お兄ちゃん......」

コナン「ケガは無いか?哀」

灰原「う、うん......」

通り魔「このガキィ!邪魔しやがって!!」ブンッ

コナン「っと!!」ガシッ

灰原「きゃっ!?」ゴロンッ

コナン「っ、危ねぇ!」

灰原「......!お、お兄ちゃん!腕が!!」

コナン「あ?大丈夫だ!服が切れただけだ!」

灰原「でも、でも......」グスッ

コナン「大丈夫だ、泣くな!」

灰原「どうして?どうして?そこまでして......。私を守ってくれても、お兄ちゃんが死んじゃったら私、私......」

コナン「......」



「バーロ、死なねーよ......」




灰原「えっ......」ドクンッ

コナン「俺は......。何があってもオメーを守るって決めたんだ。だから死なねーよ」ニカッ

灰原「......!!」

コナン「それにな。俺は前にオメーに言ったんだ。自分の運命から逃げるなって。だから、あんなヤツごときでオメーを置いて逃げらんねーさ」ニカッ

灰原「......!!!」ピキーン



「......んじゃねーぞ、灰原」

「自分の運命から......。逃げるんじゃねーぞ......」



灰原「......!!」

ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ......

灰原「わ、私は......。私は......っ!!」

通り魔「ゴチャゴチャうるせーぞ、クソガキィィ!!」

コナン「......うるさい?こっちの台詞だバーロー」

コナン「人様のデート台無しにした挙げ句、俺の大事なヤツまで襲いやがって......」

ポチッ......。プシューッ

コナン「地獄の果てまで......」チキチキ......キュイーン!

コナン「吹っ飛びやがれぇぇえ!!」ドシューン!!

通り魔「ぐぎゃああっ!!」ドカッ......ドザーッ

コナン「そこで伸びてろ!警察が来るまでな!」

コナン「っと。それより、哀っ!!」ダッ

灰原「......」

コナン「大丈夫か、哀?ケガは無いか?立てるか?」

灰原「......何?その呼び方は?」

コナン「えっ?」

灰原「いったい、何時から私とあなたは下の名前で呼び合う程深い仲になったのかしら?」

コナン「え、え......?」

灰原「まあ、あなたがそう呼びたいのなら構わないし、嫌では無いけれど。いきなりそう呼ばれるのは少々驚くわよ?工藤君?」

コナン「工藤、君だと......?ま、まさかオメー記憶が......」

灰原「記憶?何の事?」

コナン「おい、分かるか?」ガシッ

灰原「な、何?!」

コナン「何故ここにいるか、今がいつか、分かるか?!」

灰原「な、何故って......。あら?そう言えばここは何処......?何で私、こんな所に?」

コナン「......!な、なら......。最後に覚えている事は?」

灰原「え?」

コナン「オメーが最後に覚えていることは?!」

灰原「さ、最後にって......。え?ちょっと待って......。私、あなた達とサッカーをしてて......。そうだわ。私、ボールを取りに行ったんだわ」

灰原「そこで、車にぶつかりそうになって......。工藤君が走って来て......」

コナン「その後は?」

灰原「え?」

コナン「その後だよ!!」

灰原「......分からないわ。その後、私何してたの......?」

コナン「......!!」

灰原「ねぇ、工藤君?」

コナン「......そっかよ。夢が......。覚めちまったかよ」ボソッ

灰原「え?」

コナン「何でもねぇ。立てるか?」

灰原「......っ、ちょっと無理みたい」

コナン「......ホラ」サッ

灰原「え?」

コナン「乗れよ」

灰原「で、でも」

コナン「良いから」

灰原「え、ええ......」グッ

コナン「......良し、帰ろう」

灰原「ええ。と言うかここは何処なの?どういう状況なの?説明してよ」

コナン「帰ってからな。後で説明してやるよ」

灰原「わ、分かったわ。ねぇ。あの人放っといて良いの?何か伸びてるけど」

コナン「ほっとけよ。ホラ、警備員みたいなヒトも来たし。警察も来んだろ」

灰原「え、ええ......」

コナン「......じゃ、行くぞ」

灰原「ええ......」

コナン「ったく、まだ全部回りきってねぇのによ」

灰原「......ここ、動物園?何で私達ここにいるの?」

コナン「ホントに何も覚えてねーのかよ?」

灰原「ええ」

コナン「......そうかよ」

コナン(ったく。見せてやりたかった犬や猫の所へ行く前にいなくなっちまいやがって......)

コナン(俺の気持ち、聞く前にいなくなっちまいやがって......っ!!)

灰原「......工藤君?泣いているの?」

コナン「泣いてなんか......いねーよ、バーロー」

コナン「泣いて、なんか......」グスッ

灰原「......ごめんなさい」

コナン「......なあ、灰原」

灰原「何?」

コナン「......お帰り」

灰原「......ただいま」

コナン(帰り道を、俺は泣きながら歩いた)

コナン(灰原が戻ってきた安堵感と、アイツが消えてしまった悲しさで)

コナン(こんな、こんな形でいなくなっちまいやがって......)

コナン(あと2分、いや、1分あれば......。俺の気持ちを、伝えられたのに......)

コナン(......結局、あれは泡沫の夢だったのか)

コナン(ちきしょう、いつかこうなるのは覚悟してたけどよ......)

コナン(せめて、せめて聞いて欲しがったよ。答えたかったよ、哀......)


(お兄ちゃんっ)

(お兄ちゃん、大好き......)



コナン(もう、会えないのか......?ちきしょう、ちきしょう、せめて......いなくなるなら)

コナン(サヨナラくらい、言わせやがれよ。バーロー......)



コナン(こうして、俺の不可思議な日常は幕を閉じた。言い様の無い後悔と、伝えられない想いを残して......)

中断します。
エピローグは夜更新予定です。

>>394
訂正です。

コナン

だから、あんなヤツ→だから、そんな俺があんなヤツ


>>397

コナン

欲しがった→欲しかった

誤字脱字が多すぎる......。
本当に申し訳ありません。

皆さんありがとうございます。
遅くなりました、再開します。

コナン(あれから1週間......。俺達は)



阿笠「おーい、2人とも!そろそろ行かんと遅刻するぞい!」

灰原「ええ、今行くわ」

コナン「やれやれ、かったりーな」

灰原「そんな事言わないの。早く行きましょ」

コナン「わーったよ。じゃ、行ってくるぜ博士」

阿笠「うむ、気を付けての」

灰原「行ってきます」

阿笠「......」

阿笠「結局、これで良かったのかのう......」

阿笠「哀君の記憶が戻って......。めでたしめでたし、とは行かんじゃろうなあ」

阿笠「まあ、老人の心配は無用かの。後は新一と哀君次第じゃからな」



灰原「......にしても、慣れないわね」

コナン「何が?」

灰原「あなたと同じ家に住んで、同じ時間に学校に向かう事よ」

コナン「もう1週間経つんだから、少しは慣れろよな」

灰原「あら、随分上から目線じゃない?」

コナン「んなこたねーよ」

灰原「してるわよ。私が記憶が無かった時に迷惑をかけた負い目があるからって、あまり上から目線は困るわね」

コナン「ったく。ホント一言多いんだよ。可愛くねーな。余程前の方が......」

灰原「何?前の方が素直で可愛かったと?」

コナン「バッ、バーロ!そんなんじゃねーよ!」

灰原「そんなに狼狽える事無いじゃない、バカね」クスッ

コナン「ったく......」

コナン(あれから、帰って色々と聞いてみたり病院にも行った)

コナン(その結果、灰原の記憶は完全に元の状態を取り戻していた。但し......)

コナン(やはり記憶を失っていた1ヶ月余りの想い出は、灰原の中から抜け落ちてしまっていた)

コナン(当然、灰原からはこの1ヶ月の事を質問される事になったが、まだ記憶が戻ったばかりだから落ち着くまで待ってくれと強引に説得し、最低限の事しか話さなかった)

コナン(周りにも、なるべくこの1ヶ月の事は話さない様に口止めをした)

コナン(無論、灰原の体調を気遣っているのは真実だが、俺自身の身の安全を考えた事もある)

コナン(何せ......。一緒に風呂入ったり、抱き付いたり、頭撫でたり......。キスまでしたとバレたら、俺は殺されかねないからだ)

コナン(灰原は不満な様だったが、記憶を失っている時に俺達に世話になったからと言う負い目があるらしく、渋々我慢してる様だった)



灰原「で?いい加減話してくれても良いんじゃない?」

コナン「何を?」

灰原「この1ヶ月、何があったのか。それに、何故あなたが毛利探偵事務所を出て私達と暮らしているのかよ」

コナン「あー、その内話すよ」

灰原「何故?そんなに話したくないの?」

コナン「ちげーよ。とにかく、もう少しだけ待ってくれよ。頼むから」

灰原「......仕方無いわね。でも、余り待つのは嫌よ?私としては、まだ事態を飲み込めていないのだから」

コナン「わーった、わーったよ」

コナン(そう。あの後結局俺は......。事務所に帰らずそのまま事務所を出る事にした)

コナン(結局、灰原が元に戻ってしまっても俺の気持ちは......。俺のしたい事は変わらなかったからだ)

コナン(そんな気持ちで蘭やおっちゃんの所に留まる訳には行かない......。だから、俺は博士と話してそのまま博士の家に住む事にした)

コナン(蘭達には、俺が博士の家に住む事に慣れてしまったのを見て、博士が親と話して博士の家に住まわせたいと願い出て、親が承諾した、と言うちょっと苦しい言い訳をしてもらった)

コナン(蘭は、戸惑いながらも少し寂しそうに笑いながら「仕方無いね」と言っていた)

コナン(おっちゃんは勝手な親だの何だのと文句を言っていたが、酔っていたのに神妙な顔で「本当に行くのか?」と聞いて来た)

コナン(俺がうん、と答えると後ろを向いて「そうか。分かった」と言っていた)

コナン(そして、準備をして事務所を出る日......)

コナン「それじゃあ、蘭姉ちゃん。おじさん。今まで本当にありがとう」

蘭「うん。元気でね......」

小五郎「ったく。大袈裟なんだよ。同じ町なんだし、会おうと思えば会えるだろうが。ま、俺は厄介者がいなくなって助かるがな!」

コナン「ハハ、おじさんらしいね......」

阿笠「いやはや、急にこんな事になってしまって済まんのう」

蘭「いえ、仕方無いですから。コナン君?哀ちゃんと仲良くね?」

コナン「うん、分かったよ。それじゃあ、2人とも、本当にありがとう。またね」

蘭「うん、元気でね。コナン君」

小五郎「ふん!......おい、コナン!」

コナン「?」

小五郎「......たまには顔見せに来いよ」

コナン「......!うん、ありがとう」

阿笠「では、御二人とも。また」

コナン「バイバイ......」

蘭「うん、バイバイ......」ニコッ

コナン「......!」

阿笠「どうした?」

コナン「あ、何でもない。行こ」

阿笠「......?」



蘭「......さよなら、コナン君」

蘭「......さよなら、新一」

小五郎「あん?何か言ったか?」

蘭「ううん。何でもない。寂しくなるね」

小五郎「バーロ、静かでせいせいするぜ。まあ、部屋が空いちまうのは勿体無いけどな」

蘭「もう、素直じゃないなあ。あ、そうだ!だったらお母さん呼び戻そうよ?それなら部屋も埋まるし」

小五郎「な、何言ってんだ!」

蘭「うん、それが良いよ!さ、お父さん?頑張ってお母さん呼び戻してね?」

小五郎「じ、冗談じゃねーや!お、おいコナン!戻って来い!」

蘭「......お父さん?」

小五郎「ぐっ、ぜ、善処します......」



コナン「......」

阿笠「どうした?新一?」

コナン「あ、いや......」

皆さんありがとうございます。
終わらせるはずが寝落ちして申し訳ありません。
今日の夜更新予定です。

遅くなりました、再開します。

コナン(あの蘭の目......。あれはコナンじゃなくて新一を見る目だったな)

コナン(もしかしたら、俺は試されてたのかも)

コナン(蘭は何度も俺を新一だと疑ってた。今も完全に疑念が晴れた訳じゃないだろう)

コナン(そんな俺が灰原の元に行った途端、新一側の携帯から連絡が無くなった。疑われるのは無理も無いかも知れない)

コナン(だからこそ、敢えて俺に......。コナンに会いにも来なかった。俺が灰原の体調を気遣って来るな、とは言ってたけど何かにつけて理由を作って来れたはず。でも、来なかった)

コナン(そして、あのメールを出した。結果、俺は蘭に対するリアクションを起こさなかった。灰原を優先した)

コナン(その結果、本当に別れを受け入れたからこそ、あの別れ際の目になったとしたら......)

コナン(......確証の無い、あくまで想像の話だが何と無く当たっている気がする。蘭自身も恐らく半信半疑なんだろうけどな......)

コナン(いつか、謝らなくちゃな......。謝る資格も俺にはねーんだけどな......。そうだ)

コナン「......なあ博士」

阿笠「ん?」

コナン「悪かったな。あんな変な役回りさせてさ」

阿笠「何、構わんよ。君が決めた事じゃからな。協力はするわい。ただ」

コナン「ただ?」

阿笠「いつか組織とのケリが着いた日には、蘭君に本当の事を話してやってくれ。蘭君もまた、ワシには子供と同じじゃからな。真実を知らんのは不憫での」

コナン「......済まない、博士」

阿笠「謝る必要は無いわい。君達の選択を責めたりなどせん。ただ、いずれ真実を話す事がお互い良い未来を生きる事に繋がると思っての」

コナン「......そうだな。そうだよな。分かったよ。ありがとう博士」

阿笠「なあに。照れ臭いわい」

コナン「たまには良い事言うんだな」

阿笠「ワシはいつも良い事しか言わんじゃろ?」

コナン「ま、そう言う事にしとこうか」

阿笠「全く。口がいつまで経っても減らんわい」

コナン「性分なんだよ、そう言う」

コナン(......ありがとう、博士)

コナン(いつか、本当の事を話せる日を......。自分の手で掴まないとな。それが俺の義務、だよな......)

コナン(今は直接言えないけど、面と向かって言わなくちゃな)

コナン(蘭に......。さよならを......)



コナン(そして、俺は博士の家に戻ってきた。灰原に想いを伝える為に。だが......)

コナン(それは今も叶っていない......)



コナン「......」

灰原「......工藤君?どうしたの?」

コナン「......」

灰原「ねぇ、工藤君ったら」

コナン「......」

灰原「工藤君!!」

コナン「へっ?あ、俺?」

灰原「他に誰がいるのよ。大丈夫?」

コナン「あ、いや。ワリーワリー。ちょっとボーッとしちまって」

灰原「全く。いくら呼んでも反応が無いなんて。あ、ひょっとして」

コナン「?」

灰原「あなた、動物園で私が記憶を取り戻した時に私を哀って呼んでたでしょ?まさか、私に新一って呼ばせてたんじゃないでしょうね?」

コナン「バッ、バーロ!ちげーよ!!ぜんっぜんちげーよ!!」

灰原「本当かしら?」

コナン(......本当はお兄ちゃんって呼ばれなれちまって、工藤君って呼ばれても反応出来ない時があるんだよな、ハハ......)

灰原「まあ、そう呼んでも良いけど」ボソッ

コナン「ん?何か言ったか?」

灰原「何でもないわ」

コナン(ったく。ツンツンしちまってよ。前の映像があったら見せてやりてーや。いや、ダメだな。俺が死ぬ)

灰原「......でも不思議ね」

コナン「何が?」

灰原「普通、自分の記憶が1ヶ月も抜け落ちていたら不安になるじゃない?その間何があったのか」

コナン「まあ、そうかな」

灰原「でも私、興味はあるけど不安にはならないの。寧ろ、思い出せはしないけど......。思い出そうとすると、何だか暖かな気持ちになるの」

コナン「......!!」

灰原「きっと、あなたがいてくれたからなのね」

コナン「お、俺は別に何も」

灰原「ううん。きっとそう。ありがとう、工藤君」

灰原「それに、私が事故にあっても記憶を無くした事以外は軽傷で済んだのはあなたのお陰だもの。私、ちゃんとお礼も言ってなくて......」

コナン「気にすんなよ、んな事」

灰原「いいえ、心からお礼を言うわ。ありがとう、工藤君」

コナン「......バーロ、水くせー事言うな。んな事借りなんて思わなくて良いからよ。それよりアイツらに礼言ってやれよ。救急車呼んだり、俺もアイツらに助けられたんだから」

灰原「ええ、そうするわ」

コナン(......思ったより、恩に感じてたのか。んな事気にしなくて良いのによ)

コナン(寧ろ、無事ていてくれて良かった。お礼を言いたいのは俺の方なのに)

prrrr......

コナン「ん?電話?あ、ワリー。先行っててくれ。すぐ追い付くから」

灰原「分かったわ」

コナン(ん?知らねー番号だな?)ピッ

コナン「もしもし?」

「よう、久し振りだな」

コナン「......っ、その声」

「挨拶は良い。手短に話す。君は答えを出せたのか?」

コナン「......出せたけど、その前に舞台がおじゃんになっちゃったから」

「......そうか。ならどうする?」

コナン「取り敢えず今は......。闘うよ。こうなった以上、逃げても仕方無いし」

「......そうか」

コナン「......どっちが良かった?僕達が闘うのと、降りるの」

「......さあな。ではまた」ピッ

コナン「......」



赤井「......そうか。闘うか」

赤井「......」フッ

ジョディ「どうかしたの?シュウ?」

赤井「......何でもない。行くぞ」

赤井(......あの少女の運命は定まらないままか)

赤井(なら、あの少年が、彼女に与える事を祈ろう)

赤井(幸運と、勝利の栄光を......)

コナン「......あの人は、灰原を」

コナン「いけね、早く追い付かねーと!」

コナン(思わぬ電話に驚いたが、俺は灰原を追いかけた)

コナン(結局、あの人の望む答えはよく分からないままだったが......)

コナン(何と無く、俺と同じの様な気もする)

コナン(灰原の幸せを願う、と言う点では......)




コナン「あ、いたいた。おーい!」

歩美「あ、コナン君!」

光彦「おはようございます!」

元太「おせーぞ、コナン!」

コナン「何だ、みんなもいたか」

灰原「ええ、今ちょうどそこで」

中断します。
また後程。

コナン「そっか、じゃあ行こうぜ」

灰原「ええ。そう言えば電話、どうかしたの?」

コナン「ん?ああ。大した事じゃねぇよ」

灰原「そう。なら良いけど」

光彦「しかし、灰原さんが元に戻って良かったですね!」

元太「おう!ホントだぜ!」

歩美「みんな、哀ちゃんの話し方が変わる度にびっくりしてたもんね」

コナン(確かにな。まあ後半は大分今の話し方に近づいてたから、みんなあまり驚かなかったけどな)

灰原「私、そんなに話し方変わってたの?」

コナン「いや!大した事無い!大した事無いぞ!」

灰原「何その慌てようは」

コナン(オメーら、ダメだって!あの頃の話は内緒だ!)ヒソヒソ

歩美(でも、話してあげた方が良いんじゃないの?ヒソヒソ)

光彦(そうですよ。内緒はいけませんよ)ヒソヒソ

コナン(バーロ、俺の身が危ねーだろ)ヒソヒソ

灰原「何をヒソヒソ話してるの?」

コナン「いや、何でもない!何でもないよ?」

灰原「白々しい......」

歩美「でも、哀ちゃんが元に戻って本当に良かった!嬉しかったよ!」

灰原「ありがとう。改めてお礼を言うわ。みんなのお陰で本当に助かったわ」

光彦「何を言ってるんですか!灰原さんの為なら当たり前ですよ!」

元太「おう!俺達は少年探偵団だからな!」

灰原「ええ。ありがとう」

歩美「良かったよね、コナン君。哀ちゃん元に戻って」ニコッ

コナン「え?うん」

コナン(歩美の笑顔に、俺はちょっと違和感を覚えた。何故なら、元に戻った灰原とコイツらが初めて会った時......)

コナン(そう、あの時歩美は......)



歩美「コナン君?どうしたの?お話って」

光彦「わざわざ僕達を集めて」

元太「お土産くれんのか?」

コナン「んん。実はな。コイツがみんなに話があるって」

歩美「?」

コナン「おーい、良いぞ」

灰原「......」

歩美「あ、哀ちゃん!」

光彦「どうしたんですか?灰原さん?」

元太「何かあったのか?」

灰原「......何だか懐かしいわね。みんなから呼ばれるの」

歩美「え?」

灰原「......みんな元気そうね。良かったわ」

光彦「まさか、灰原さん......」

灰原「ええ。そうよ。思い出したの」

歩美「......!!」

コナン「そう言う事だ。灰原の記憶が戻ったんだ。元通りにな」

元太「本当か?良かったな!」

灰原「ええ。心配かけてごめんなさい。みんなに迷惑かけたわね」

光彦「いえ!迷惑なんて!」

歩美「......ねぇ、哀ちゃん」

灰原「何かしら?」

歩美「忘れちゃってた間の事は、覚えてるの?」

コナン「......いや、覚えてないんだ」

光彦「え?じゃあ」

コナン「ああ、この1ヶ月の事は覚えてはいない。そうだよな?」

灰原「ええ。残念ながら」

歩美「......!!」

コナン「で、オメーらちょっと」チョイチョイ

元太「何だよコナン?」

灰原「何?私に内緒話?」

コナン「いや、ちょっとな」

コナン「良いかオメーら。忘れちまった1ヶ月の事はなるべく伏せといてくれ」ヒソヒソ

元太「何でだよ?」ヒソヒソ

光彦「もしかして、最初と逆ですか?」ヒソヒソ

コナン「そう言う事だ。精神的なショックを避けるためにもな。良いかい?歩美ちゃん?」ヒソヒソ

歩美「......」

コナン「歩美ちゃん?」

歩美「......」スタスタ

灰原「ど、どうしたの?吉田さ......」

歩美「......」ギュッ

灰原「えっ?」

歩美「......えり」

灰原「え?」

歩美「おかえり、哀ちゃん」グスッ

灰原「......ありがとう」ギュッ

歩美「良かったねっ。良かった。良かったよ、哀ちゃん......」グスッ

歩美(おかえり、哀ちゃん。でも、でも......)

歩美(約束破るなんて、酷いよ哀ちゃん......。帰って聞かせて欲しかったのに)

歩美(ちゃんとコナン君と......コナン君と......)

コナン(そうやって、歩美は灰原を抱きしめながら泣き続けた。俺にはその涙が、喜びの涙だけには見えなかった。そう、まるであの涙はあの日想いを伝えられず泣いた俺の様に見えた......)

コナン(だからこそ、この笑顔が俺には気になった。何処か含みのあるこの笑顔が)



コナン「歩美ちゃん、ちょっと」

歩美「なあに?コナン君?」

コナン「あのさ、あの日の事なんだけど」

歩美「あの日?」

コナン「記憶が戻った灰原と、初めて会った日さ。あの時、歩美ちゃん泣いてたろ?」

歩美「......うん」

コナン「あの時の涙が、俺には嬉し泣きだけには見えなくてさ」

歩美「......」

コナン「あ、その。別にその、深い意味は無いんだけどさ。何でかなって」

歩美「......聞けなかったから」

コナン「え?」

歩美「哀ちゃんが、コナン君に気持ちを伝えられたかどうか」

コナン「......!」

コナン「歩美ちゃん、君はあの日俺達が何処にいたか知って......」

歩美「コナン君は?」

コナン「え?」

歩美「コナン君は伝えたの?哀ちゃんに?」

コナン「......いや。伝える前に記憶が戻ったから」

歩美「じゃあ、もう言わないの?」

コナン「えっ?」

歩美「今の哀ちゃんだから、もう言わないの?」

コナン「......いや。ただ、タイミングがな」

歩美「......ダメだよ、逃げちゃ」

コナン「!」

歩美「歩美、そんなコナン君嫌い」

コナン「歩美ちゃん......」

歩美「コナン君が本当に哀ちゃんが好きなら、ちゃんと伝えてあげて。今の哀ちゃんが前の事忘れてても」

コナン「......」

歩美「私、何があっても真っ直ぐなコナン君が好き。だから、自分の気持ちに素直になってね」

コナン「......済まない、歩美ちゃん」

歩美「ううん。ゴメンね、変な事言って。でも、でもね?」

歩美「歩美、ずっとコナン君が大好きだから。コナン君が哀ちゃんを好きでもずっと」

コナン「......!」

歩美「だから、だから......。教えてね。哀ちゃんに気持ちを伝えたら」ニコッ

コナン「......ああ。約束する」

歩美「ホントだよ?ホントにホントだよ?」

コナン「ああ。必ず」

歩美「......うん。ありがとう」ニコッ

元太「おい!2人とも何やってんだよ!早く行こうぜ!」

歩美「あ、待って!」タタタ......

コナン(......済まない、歩美ちゃん。ありがとう)

灰原「ねぇ、何の話をしてたの?」

コナン「別に。俺には度胸が無いって話さ」

灰原「は?」

コナン「いや、何でもない」

コナン(そうだ。せっかく決めたのに、タイミングのせいにして先伸ばしにしてちゃ逃げてるのと同じだ。例え記憶が無くても、俺は前も今も含めて灰原を......)

灰原「工藤君?どうしたの?」

コナン「なあ灰原。俺さ、オメーに言わなくちゃいけない事があるんだ」

灰原「何?」

コナン「今日、学校終わったら話すよ」

灰原「何?勿体ぶらないでよ?」

コナン「今ここで言える様な話じゃねーんだよ」

灰原「そんなに大事な話?」

コナン「ああ。あの日、伝えようとして伝えられたかった。俺の気持ちをな」

灰原「工藤君の気持ち......?あの日って?」

コナン「......俺がオメーを動物園から連れ帰った日さ。あの日、俺はオメーに言おうとして言えなかったんだ。オメーから聞かせてもらった気持ちへの、返事をな」

灰原「私から伝えた、気持ち.........?」ピキーン


「......ちゃん」

「お兄ちゃん......」

「お兄ちゃん、大好き......」


灰原「......!」

コナン「っても、何の事か分からねーよな。ちゃんと説明するから......。ん?灰原?どうした?」

灰原「......何でもないわ。ところで」

コナン「ん?」

灰原「一体、遊園地にはいつ連れてってくれるのかしら?お兄ちゃん?」ニコッ

コナン「えっ......?」ドクンッ

灰原「......」クスッ

コナン「え、え......?」

灰原「......早くしないと、私またどっかいっちゃうわよ?」スタスタ

コナン「......お、おい!ちょっと待って!」

コナン(頭の中がパニックになった。どういう事なんだ?記憶が戻ったのか?それとも俺をからかっただけ?お兄ちゃんって呼んでたのを誰かに聞いて?でも遊園地の件は俺とアイツの2人しか知らないはずだ。どうなってんだ?)

コナン(メチャクチャに混乱する頭の中と裏腹に、俺の顔はにやけていた)

コナン「ま、待てよ......。灰原!いや......」

コナン(もし、記憶が戻ったのなら......。あの日々が戻ってくるのなら......。そんな想いが頭を過った)

コナン(いや、例えどうであっても......。今度こそ、伝えよう!俺は......。俺は灰原哀を......)

コナン「待てよ......。哀!!」

コナン(そう、俺は誰よりも灰原哀を愛していると。これからもずっとお前の側にいると)

コナン(例えお前が、何者であろうとも......)

コナン「ハァ、ハァ......。待てったら。俺を置いていくなよ......。もう独りで行くなよ」ガシッ

灰原「......」

コナン(や、やっぱり違うのか?記憶が戻った訳じゃ......)

灰原「......遅いわよ」

コナン「え?」

灰原「今度は......。待たせないでちゃんと聞かせてよ......?もう離さないでね?」

灰原「私の大好きな......お兄ちゃんっ」ニコッ


これにて本編完結です。
長らくお付きあい頂きありがとうございました。

記憶喪失と言うありふれたネタではありましたが、終わって取り敢えずホッとしています。

尚、灰原が記憶を失ってからモノローグが殆ど無いのは、「灰原哀は記憶があったのではないか?」と言う遊びを持たせる為でした。

灰原が記憶を失っていたのか、そうで無いのかの答えは皆さんにお任せしたいと思います。

今後は、関連作を別スレにて投稿予定です。


ここまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。

長い間お疲れ様でした
次回作も期待してます
スレタイにコナンか灰原は入れてもらえると検索しやすいです
ハッピーエンドでしたね
記憶は2回とも消えてたと思う
それでも最後はコナンの言葉で思い出したって感じかな

>>436
ありがとうございます。
タイトルは今のタイトルの後ろに「裏」が付く予定です。

ペースが早かったので、少し間を置いて依頼出します。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月01日 (月) 00:08:50   ID: PF3ra9Uy

久々にまともそうなコナンss見られそう
期待

2 :  SS好きの774さん   2014年09月05日 (金) 18:44:35   ID: AMPf6KCh

おもしろい!期待してます!頑張ってください!

3 :  SS好きの774さん   2014年09月24日 (水) 16:39:54   ID: my7kyUjS

いいね。

4 :  SS好きの774さん   2014年09月29日 (月) 20:43:25   ID: Rfi-HNIO

すばらしい(T^T)
次回作に期待!

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