バナナ「俺って甘いよな?うまいよな?」みかん「ん?ああ」(48)

バナナ「なんで売れ残ってるんだ?」

みかん「バナナ食べたい客が来なかったんだろ。残念」

バナナ「なんでゴーヤは売り切れたんだ?あいつ甘くないだろ不味いだろ」

みかん「甘い=うまいじゃないんだよ別に。ゴーヤにはゴーヤの良さがあるんだよ」

バナナ「解せぬ。現にお前売れ残ってるじゃん」

みかん「今日は酸っぱい果物に対する需要が無かったのさ」

バナナ「キウイ売り切れたぜ?」

みかん「うるせえ」

みかん「キウイは洋物の、ケーキとかポンチとかで需要があるからさ」

バナナ「お前も洋物で需要あるよな?言い訳じゃね?」

みかん「うるせえな、お前もそうだろうが」

バナナ「普通ポンチには入れねぇわ。パフェだよパフェ」

みかん「あんまり変わらんだろ。入れる家庭もあるかもよ」

バナナ「もったいねえな。うまみが溶けるだろ」

みかん「そもそもそういうのは缶詰めに加工された連中の仕事だ」

バナナ「キウイも缶詰めなかったか?」

みかん「…」

バナナ「やーいやーい」

みかん「お前も似たようなもんだけどな」

バナナ「あ?剥いて塩酸漬けにすんぞコラ」

みかん「何キレてんだよ」

りんご「やーやー、お二方」

バナナ「おっ、どうしたりんご」

りんご「いやぁ、しょうもないことで喧嘩になりそうだったんでね」

みかん「気が利くな」

バナナ「余計なお世話だ」

りんご「まま、売れ残り同士仲良くしましょうや」

客「あった、りんごりんご」ヒョイ

バナナ「あ」

りんご「ハハッ、しがない田舎スーパーの哀れな売れ残り共よ、さらば!」キリッ

みかん「うわぁ」

バナナ「うぜぇ」

客「やっぱりこっちにするか」スッ

りんご「あっ」トン

隣りんご「ヤッター」ヒョイ


りんご「あ…」

みかん「…」

バナナ「プフフ」

みかん「まぁ、ドンマイ」

りんご「ど畜生が!あの糞客!」コロン コロン

バナナ「転がると傷んで余計に売れなくなるぞ」プフフ

りんご「なんだよこのスーパー」

みかん「お前の言ってた通り、しがない田舎スーパーだよ」

バナナ「うーむ、それなら尚更ゴーヤが売り切れて俺が売れ残るのはおかしい」

りんご「ここ沖縄?」

みかん「本州のどこかだよ。出荷された後、トラックしか乗ってないから」

バナナ「俺は船に乗ったぞ」

りんご「フィリピン産だから当たり前だろバーカ」

バナナ「お前会ってからさっきまで敬語だったのに」

りんご「演技って結構疲れるのさ」

みかん「そんなんだから色悪くなるんだよ」

バナナ「ちなみに俺は傷むと更に甘くなり、うまくなる」

みかん「真っ黒なバナナは売れなくて廃棄ってのが定番よ」

バナナ「うるせえな。日本の安全基準とか厳しすぎんだよ」

りんご「フィリピンはどう?」

バナナ「…あれだ、ほら」

みかん「こいつフィリピンの市場に並んだこと無いんだよ」

バナナ「うるせえ、お前も日本意外知らないだろ」

りんご「あー、在日フィリピン人の子供的な?」

みかん「それは違うかな」

みかん「おい、あいつ見ろよ」

ぶどう「」

りんご「うわぁ、実がほとんど落ちてる」

バナナ「つか死んでね?」

みかん「かわいそうに。きっと客に乱暴に扱われたんだよ」

りんご「それで戻すって最低だな。一回手に取ったらちゃんと買えよ」

バナナ「それでもさっきのはお前が悪い」プフフ

りんご「あーもー」コロン コロン

みかん「やめなさい」

いちご「うるさいなぁもう」

バナナ「おっ」

りんご「お前も哀れな売れ残りか」

いちご「ちょっと色が緑だからってさ」

バナナ「こいつの肩は赤く塗らねぇのか?」

りんご「貴様、塗りたいのか?」

バナナ「へっ、冗談だよ」

みかん「何の話だ」

みかん「よくもまぁそんな状態で出荷できたな」

いちご「どうも杜撰なんだよね、地元農家直送っての」

りんご「店長がずぼらなんじゃない?」

みかん「担当が怠け者かもな」

バナナ「無能、怯懦、虚偽、杜撰」

みかん「はいはい」

バナナ「ん?待て」

みかん「どした?」

バナナ「なんでいちごが一粒で並んでるんだ?」

りんご「ん?」

いちご「あ」

みかん「そういえばそうだな」

バナナ「お前ひょっとして高級ないちごだったりするんじゃないのか?」

りんご「確かに高級なら値段が高くて買いにくいから売れ残った、ということになる」

いちご「おお…そうか、そうだったのか…」

みかん「『ワケありいちご、一粒10円』ってPOPには書いてある」

いちご「くそっ」

バナナ「ドワオ」

りんご「なんだよ安物か」

バナナ「しかも規格外とか」

いちご「廃棄じゃなかっただけでもマシか…」

みかん「俺たちの末路は必ず廃棄か食われるかだけどな」

バナナ「奇跡が起きて木になれるかもしれんぞ?」

りんご「種無しは引っ込んでろ」

バナナ「oh」

りんご「早く売れないかなぁ。バナナといると腐っちまう」

バナナ「俺と一緒にいるのは売れると熟れるをかけた一種のまじないかと思ってたんだが」

りんご「棚から落とすぞコラ」コロン

バナナ「キャーヤメテー」ズズッ

りんご「それそれ」コロン コロン

りんご「あっ」ポロッ

バナナ「えっ?」

みかん「あ」

いちご「あ」

ポテン

りんご「…」コロコロ…

バナナ「どどどどうすんだよあいつ」

いちご「あわわわますます売れなくなる」

みかん「おい、無事か!?」

りんご「ああ…時が見える…」

みかん「無事だな。店員か客が来るまで大人しくしてろよ」

バナナ「馬鹿野郎、店員が来たら廃棄確定だぞあいつ。ジャップは安全基準厳しすぎるし」

いちご「…ああ!?店員が…!」

店員「あらら、りんごが」ヒョイ

ポフポフ

りんご「…」ストン

バナナ「…あれ?」

いちご「…あ、その、お帰り」

みかん「…店員が適当で良かったな」

りんご「まだ僕には帰れる所があるんだ…こんなに嬉しいことはない…」

いちご「いやー、良かった良かった」

バナナ「仕方ない。もう一度落ちて、今度こそ埃まみれになって廃棄にしてもらわないとな」

りんご「やめ」

みかん「バナナ、お前黒い斑点増えてるぞ」

いちご「そういえばそんな気が」

バナナ「マジか」

みかん「そこの金属板で見てみろよ」

バナナ「アザが濃くなっている…」

りんご「良かったな。お望み通り甘くてうまくなってきたんだからな」

バナナ「でも売れなくなるし」

いちご「贅沢言うなよ」

バナナ「お前はさっさと熟れろ青ガキ」

柿「あ?」

バナナ「いえ、柿親分のことじゃありません。申し訳ありません。ごめんなさい許してください」

みかん「何こいつ」

いちご「誰だよあれ」ヒソヒソ

みかん「この果物売り場の最古参で、長の柿親分」ヒソヒソ

柿「そこのいちご、新入りか」

いちご「ええ」

柿「ま、仲良くな」

バナナ「おお、勿体なき御言葉…」

りんご「ありがたやありがたや」

柿「うむ。ははは」

いちご「最古参って、果物としては価値最低じゃん。何威張ってんだよ」ヒソヒソ

みかん「言ってやるな。本人だって干し柿寸前という事実から逃げたいんだよ」ヒソヒソ

バナナ「おう、いちご。この果物売り場で長生きしたいならお前も柿親分に媚び売っとけや」ヒソヒソ

いちご「えー」

りんご「へへっ、今日もいい感じに粉噴いてますね」

柿「はは、そうか?俺はちょっと量が多いかと思うんだが」

りんご「いやいや、今の方が男前ですわ。よっ、大統領」スリスリ

柿「ははは、こやつめ」

いちご「すぐばれるような媚び方だな」ヒソヒソ

みかん「ばれてるよ。その上で敢えて乗せられてるのさ」ヒソヒソ

柿「よし、俺は寝る。静かにな」コロン

バナナ「ハッ!」

りんご「…ふーっ」

みかん「お疲れさん」

りんご「あの糞じじい、社会不適合者のクセに偉そうによぉ」

バナナ「お前あんだけスリスリしてたら、いつかスりりんごになるぞ」

りんご「その方が売れるかもな」

いちご「確実に熟れるね」

りんご「うるせえスるぞ」

みかん「客が減ってきたな…」

バナナ「具体的な数は?」

みかん「具体的な数はわからんが、10人以下じゃないかな」

バナナ「閉店までの時間は?」

りんご「あと二時間弱です」

バナナ「この時刻の出勤の店員の数は?」

いちご「ここの売り場は一人ですね」

バナナ「状況は芳しくないわね…」

バナナ「各果物へ通達、特別非常事態宣言レベル3を発令、以降の果物売り場の指揮はここでとります」

りんご・いちご「了解」

みかん「お前ら何がしたいんだ」

店員「どっこいしょ」

ドスン

ゴロゴロ

店員「あ、シール忘れた」スタタ…

もも「やー、どうも…」

メロン「できれば会いたくなかったさ…」

パイナップル「…はぁ」

バナナ「…ついに来たな」

りんご「15年ぶりだな」

バナナ「ああ、間違いない。見切りセールだ」

みかん「1日ぶりな」

いちご「ひえー」

バナナ「おそらく棚に並べる時にハエを押し潰してしまったであろう、薄汚れたももはわかる」

もも「うわーん」

バナナ「しかしメロンとパイナップルはなんだ?特に異常がないようだが」

パイナップル「俺は切ったりするのがめんどくさいからな。お手軽な缶詰めを買う客が多いんだろ」

みかん「なるほど」

バナナ「メロンは?」

メロン「ふっ、それはこの俺が『高級な果物』だからさ」

りんご「うわうぜえ」

いちご「青虫に食われて穴だらけになれ」

パイナップル「彼は?」

ぶどう「」

りんご「見りゃわかんだろ」

いちご「南無阿弥陀仏」

もも「ナムアミー」

メロン「雑魚か」

バナナ「お前いつか地獄に落ちそうだな」

みかん「お前が言うか」

店員「よいしょ、このPOPつけて、と」

『果物見切りセール』

いちご「おお、神よ…」

みかん「見切りになった果物は、黒い斑点バナナ、季節外れみかん、色悪りんご埃つき、ワケあり未熟いちご、ハエ潰しのもも、自称高級メロン、食べにくいまるごとパイナップル…」

りんご「それぞれが違う理由で見切られ、同じ場所に集められることで見切り果物売り場を形作っている…。この現象、あなただったら何と名付けます?」

バナナ「STAND ALONE COMPLEX」

りんご「yes、STAND ALONE COMPLEX」

もも「かっけー」

メロン「ほぅ、なかなかやるな」

みかん「突っ込み要員が足りない」

パイナップル「俺は突っ込まんぞ」

店員「よし」ゴトン

シールプリンター「」ギギ

りんご「うわぁ出やがった」

メロン「これが噂に聞く冥府の審判者か」

シールプリンター「Огибаявиражи,обгоняя смерть и жизнь」ギギ

パイナップル「!?」

もも「ひえー」

バナナ「ロシア製か貴様!?」

みかん「大丈夫か?このプリンター」

店員「ほれ」ピッ ピッ

シールプリンター「Командирыонлайн」カタカタ

バナナ「うわぁ出たぞ」

みかん「半額シール…この値段は…」

店員「ひとつっ」ベシッ

パイナップル「あうっ」ペタッ

りんご「おお…半額…」

パイナップル「やったね、これで売れる」

バナナ「果物としてのプライドは無いのか」

パイナップル「この際仕方ない」

シールプリンター「Я былаподтвержденавражеские танки」カタカタ

りんご「三割引でこの値段…これは」

メロン「ふふ…私だ」ペタッ

バナナ「糞が」

もも「わくわく」

シールプリンター「Мысчитаем, что оченьжаль」カタカタ

ぶどう「」ペタッ

いちご「あ…八割引」

みかん「そっとしておいてやれ」

シールプリンター「Кто следующий заказ Вы?」

りんご「ヘルプミー」

シールプリンター「I refuse.」カタカタ

りんご「おぅふっ」ペタッ

バナナ「Боже, пожалуйста, помоги мне.」

シールプリンター「うるせえ不良品」カタカタ

バナナ「oh」ペタッ

みかん「なんなんだお前ら」

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