兄「暴れるなって。諦めろよ」(26)


「か……は、あ……あぁ……」

体内に固く熱い棒が力任せに入り込んでくる。
逃げようにも腰を掴まれていて、強引に引き戻される。

「や、だ……なん、で……にいちゃ、ん……」

「うるさい」


「いあっ?! い、ぎ……う、あぐぅ」

抵抗をやすやすとくぐり抜けて熱い塊を押し込まれる。
割って入ってきた熱欲は、痛みを伴って腹の奥深くまで一気に犯した。

(おかしい。こんなの絶対におかしい。
だって、だって兄ちゃんなのに、なんで……なんで……)

「いいか。絶対にお父さんやお母さんに言うんじゃないぞ」


「ひぁ……ひゃ、ひゃい。ん、あ……あー……」

擦られる挿入部に異常な程の摩擦熱を感じて、
刺激に脳まで浸食されてしまい、まともな返事が出来なかった。

お父さんやお母さんに告げ口なんてできっこない。
なら、お姉ちゃんに相談は……それも無理だ。

膨れ上がって硬質化した熱が体内を乱暴にかき乱す。
体内の分泌液が兄の硬直に絡まって湿らせ、
水気を多分に含んだ恥ずかしい音が鳴りはじめた。


「そうだよな。言えないよな。気持ちよくなってるんだもんな!」

「んあっ……は、あっ、ち、が……んんっ、ひ、いっ」

発したい言葉がノドからのぼってきても、
舌の上で型崩れを起こし跡形もなくなる。

なにひとつ満足に抵抗できない。好きで受け入れている。
そう思われるのが嫌で、必死になって首を振った。


腰を掴む手に力がこもる。
まだ穏やかだった挿入が、途端に激しいものになった。

「いひぃっ!? に、にいちゃっ、あっ、これ、だ、め、んううっ!」

火傷してしまいそうになる熱量がお兄ちゃんとの接合部分に滞留する。
その熱が温度を保ったまま背中を這いあがり、思考を焼けただれさせる。

「もう呻くだけじゃねえか。く、ふ、もっと奥まで」

「あ、んっ、だ、だめ……やめ、て、よ……」


幾度も強い快楽の波が打ち寄せる。
まだ拒絶したい心が残っているのに、がっちりと
捕えられた腰は無意識に持ち上がってしまう。

からからに乾いた砂漠に水が染み込むように、
脳を快悦という毒がじんわりと濁していく。

最初は痛みをこらえるために我慢をしていたのに、いつの間にか
それは、肉欲に飲み込まれないためのものなってしまっていた。

「突かれるだけじゃ足りないってか。もっと気持ちよくなりたいんだな」


「も、もう、やめ、て、よお……ひっ!?」

後ろから腰を掴んでいた片腕が離れると、
腹の下をくぐって股間をまさぐった。
ごつごつとした手が陰部を舐めるようにさする。

「んああっ! にいちゃ、そこっ! やだ!」

充血して勃起をした陰部の頂点を指先でこねる。

「んふっ、ん、んん!」


感じた事のない強い電流が全身をつらぬいた。
理性の留め金を抑えるように、咄嗟に口を覆って声を隠した。

それが気に食わなかったらしい。
恥部を撫でまわしているのとは反対の腕が、
声を抑えた両腕を捕まえて背中側に回して押さえつけた。

無理矢理にねじられた肩とひじが軋んで痛みを発した。
その喘ぎを気にも留めず、捕縛した腕を強く引っ張り上げた。
うな垂れていた上半身が、背中を反るほど持ち上げられてしまった。

「いあっ! に、にいちゃ、痛い! 痛いよ!」


「気持ちいいんだろ! じゃなきゃ、なんだよ、その声は!」

内壁を削り取ってしまうのではないか、
と不安になる激しさで肉茎が出し入れされる。
こすられすぎて挿入部分の感覚は、すでに無くなっていた。

「いいよな。中に出すぞ。お前の中に精子、ぜんぶ入れるぞ」

「ひっ?! そ、それだけは、やめ、あっ、だめ、だよ!」


「お前だってイキそうじゃん。いいだろ。孕むわけじゃあるまいし」

「こ、こどもが、できるとかじゃ、じゃなくて、んんっ! うあ、ああっ!」

臀部に腰が強く叩き付けられる。
逃げる意識を削がれてしまい、
背中が胸に触れるほど体が反り返る。

いけないことだと分かっていても、
もはや理性の歯止めは機能していなかった。


「出すぞ! 出すからな!」

股間を揉みしだく手にも力が入る。
兄の全身が発射の瞬間に備えて強張っているのが分かった。

(射精されちゃう。兄ちゃんに射精されちゃうんだ)

兄の肉銛が膨張をするのを体内で感じ取る。
肉頭をしごく速度が速まり、思考もだんだんと白濁していく。


「にいちゃん、だめ、だよ……だ、射精しちゃ、だめ……だめ、だから……」

兄の肩に頭をあずけて、熱にうなされた声で言葉を搾りだした。
行為の最後が近付いてもなお、まだ堕ちていないと伝えたかった。
そう言えば間違いなく、兄は終わりの時まで心を欲しがる気がした。

「にいちゃっ! あっ! ダメっ! ほんと、に、なかで、イッちゃ!」

「んぐ! 出る!! う、ぐっ!」

雄の咆哮とともに、大量の熱が体内に流れ込む。
最奥を目指して精子がほとばしり、内部で濁流が荒れ狂う。


「あっ、い、うあ、ああっ! ふう、んんっ!!」

兄のすべてを注がれた全身がびくんと震える。

「あ、は、はあはあ……んあ、あ……」

放出を終えた肉根が体外に引きずり出される瞬間まで、
弟は止め処なく打ち寄せる悦楽の波に身を震わせて悶えた。


*-*-*-*-*-*


「にいちゃん。手を止めてよ」

「なんでだよ。お前はまだ射精してないだろ」

「僕はいいんだよ。待って、ほんとに出ちゃう」

細い弟の体を背後から抱きしめて陰茎をしごく。
刺激される肉棒は喜びに身を固くし、根元から固く膨らんだ。

「ほら、出せよ。俺ばっかりじゃ不公平だろ」

「うあ、あ……んんっ!」


鈴口から精を吐き出すと同時に、弟の体躯が強く痙攣した。

「も、もういいよ! 出た! 出たから!」

「こんなんで収まるわけないだろ。ほら、空っぽになるまで射精しちまえ」

射精中も手を休めずにしごき続けると、
肉茎は打ち震えながら精子を排出を続けた。

完全に打ち止めとなるまではおよそ二分間を費やした。
遊び尽くされた弟は徒労感に横になると、兄に非難めいた眼差しを向けた。


法律にはないけれども、世間は近親相姦を認めていない。
それ以前に同性同士での接合なんて狂っている。

普通の道を歩んで生きるつもりだったのに、
どうしてこの兄は弟に手を出すのだろうか。

誰もが歩く普通の道だけを進みたかったのに……。


「気持ちよかっただろ?」

心を見透したような言葉に、弟は慌てて脱ぎ散らかした服で顔を覆う。

「うるさい。バカ」

兄のごつごつした手が弟の頭を優しく撫でる。
射精後に気分が落ち込まないということは、
つまりはもうそういうことなんだろうな、と弟は思った。


おわり

暴れるなって
諦めろよ

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