バルツァー「近衛鉄虎兵大隊?」【軍靴のバルツァー×皇国の守護者】 (143)



軍靴のバルツァーと皇国の守護者では若干の技術格差がある為、バルツァー側の進んでいるところを修正しています。
以下の点に注意してください。

・電信は未出現
・武器の主役は前装式の滑腔銃
・《皇国》では最新型のライフリングは、軍国においては一般的

以降、問題があり次第適宜修正していきたいと思います。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408641935



以下は、《大協約》世界における史上最大の騒乱を記すものである。

その前提として、我々はその時代を知っておかなければならない。
この時代の勢力を大きく分けるとするのならば

・ヴァイセン(通称「軍国」)
・ホルベック=ラトフ連合帝国(通称「帝国」)
・エルツライヒ
・南冥
・アスローン

の五大国であろう。
しかしこれは、信じられないことに小国の兵隊風情によって、世界の騒乱が思わぬ形に収束する物語である。

はるか東の名もない島国《皇国》。
この国が《大協約》世界においてどのような位置付けであるかは、今日であれば誰もが明確に答えられる。しかし。
この騒乱が起きたときは、いまだ雌伏する虎の如く――――。


 ◇

皇紀568年1月のことである。
五大国の一つ、ホルベック・ラトフ連合帝国は東方蛮族が収める小さな島国《皇国》を襲った。
経済摩擦から引き起こされた、至極簡単な征服戦争だと目されていたそれは、初戦こそ天狼会戦(最後の会戦と呼ばれる)で帝国が快勝したが、その後の展開は誰も予想し得るものではなかった。

傷ついた大隊による遅滞防御作戦。そしてそれの成功。
帝国の東方辺境鎮定軍は圧倒的戦力を誇りながら、その大隊に捕まって《皇国》の主力を逃してしまった。

北領という大きな島を占領した東方辺境領姫「ユーリア・ド・ヴェルナ・ツァリツィナ・ロッシナ」は、《皇国》の本土へ乗り込もうとする。
この《アルバトロス》作戦の発動が間近になったとき、事態は急変した。

第一次ノルデントラーデ戦役の勃発である。

アスローンとの緊張。軍国ヴァイセンとの戦争。
さらには、エルツライヒやフレイユ共和国による賢しい政略。南冥も黙ってはいまい。

帝国は今や、このような東の果てに戦力を投入できる余裕はなかった。
ゲオルギィ三世による勅旨で、《皇国》と東方辺境領軍は停戦条約を結んだ。
《皇国》には願ってもない、有利な条件である。その内容は

1.双方の組織的戦闘の即時停止
2.《皇国》の龍州における海軍力集結の制限
3.北領に残存する帝国軍戦闘力は二個師団に留める(ただし治安維持においては例外を認める)
4.北領住民は希望者に限り、《皇国》に引き渡す

といったものであった。
これで《皇国》は軍艦や砲を揃える時間を稼ぎ、龍州の要塞化さえ許されたのだ。
例え帝国と再戦しても、恐らくはその侵攻を阻めるほどの防御力を持つことは可能である。
帝国が条約を破り北領に軍を動かせば、即応し総戦力によって敵が揃わぬうちにこれを奪還する、という作戦まで建てられたというのだから、驚きだ。


ユーリアは悔しがったが、叔父の皇帝陛下だけには逆らえない。
大人しく引き下がり、砲弾や兵糧を本国に輸送し始めることになる。
もし再び帝国が万全の状態を持って《皇国》を攻めるのならば、10年の歳月は必要になるだろう。
その程度に、東方での事態は(北領の陥落はあったとしても)落ち着いた。


時は過ぎ、第一次ノルデントラーデ戦役はヴァイセンの勝利に終わった。
ヴァイセン陸軍のベルント・バルツァーは友邦バーゼルラントに軍事顧問として送り込まれる。
そして時をほぼ同じくして、《皇国》からも人が招かれていた――――。


 ◇

ディーター「顧問」

ディーターはバーゼルラントの陸軍士官学校、その砲兵科二年生だ。
親は工場経営者であり、育ちの良さは顔に現れている。およそ軍人には向かない優しい面持ちだった。
顧問と呼ばれた男は他でもない、軍国陸軍少佐、ベルント・バルツァーである。
今はこの学校の招かれ教官、そしてバーゼルラントの軍事顧問を兼ねた若き梟雄であった。

バルツァー「なんだ、どうした?」

ディーター「今日、異国からとんでもなく恐ろしい軍人が来るって聞いたんですけど……」

バルツァー「(俺も最初はそんな扱いだったんだが……)その通りだ。恐ろしいかはともかく」

ディーター「どんな人なんですか?」

バルツァー「俺も詳しくは知らないが……いま、ヴァイセンに急速に接近する国があるのを知っているか?」

ディーター「確か、コウコク?」

バルツァー「そうだ」

バルツァー「今までは誰も知らないような小国だったんだが……そこはどうにか、《帝国》と引き分けるほどには戦上手の国らしい」

バルツァー「軍国もコウコクも、帝国を敵とする国だ。近づかないわけがないよな」

ディーター「でも、ならなんでその軍人はバーゼルラントに? 軍国に行くんじゃ?」

バルツァー「いい質問だ」

バルツァー「確かに軍国とコウコクはその立場を同じくし、国交を強く勧めている」

バルツァー「その噂をお聞きになったお偉方が、是非そのコウコクの特殊な部隊を見たいと仰ってな」

お偉方とはもちろん、バーゼルラント第二王子「ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト」に他ならない。
未だ旧来の国家に縛られたバーゼルラントにおいて、軍の近代化を進めようとしている男だ。

ディーター「特殊な、部隊……?」

バルツァー「ああ。率いるのは、たった一個大隊で高名な東方辺境領姫の軍と戦った男だ」

ディーター「じゃあ、随分と強い人なんですね」

バルツァー「確かに、異常なまでの戦功だ。だが特殊な部隊ってのは別のところにある」

ディーター「え?」

バルツァー「その男は、猛獣を操るらしい」


 ◇

新城「ここがバーゼルラントか……最先任曹長」

猪口「はい、大隊長殿」

新城「兵を馬車から下ろし休ませろ。しかし乱れぬ程度に」

猪口「了解しました。初めての異国で舞い上がる奴もおるでしょうな」

冴香「少佐殿」

新城「なんだ、個人副官」

冴香「バーゼルラントの使者が参りました」

新城「わかった、黒茶を淹れておけ。藤森参謀長」

藤森「は」

新城「一時的に君に大隊を任せる。バーゼルラント軍の指示の下、大隊を兵舎に連れて行け」

藤森「了解しました」

必要最低限の会話で全てを済ませ、大隊指揮官は空を仰ぐ。
新城直衛は懐から細巻きを取り出し火を点ける。煙を吐き出しながら、未だ自らの境遇を受け止められずにいた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

事は半年前。北領から帰還し夏季総反攻を取りやめさせ、《皇国》と《帝国》が休戦した頃だった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


新城「殿様。失礼ですが、得心がいきません」

その場には、直衛と《皇国》を統べる五将家の一角・駒城(くしろ)の長老がいた。いやそれだけではない。

駒城の御曹司――――直衛の義兄――――陸軍中将・駒城保胤(やすたね)。
《皇国》に君臨する皇族の一人にして近衛衆兵第五旅団長・実仁(さねひと)准将。

軍の次代を担う二人の男である。
《皇国》の古豪、二人の若将軍、そして北領の英雄。彼らはいま、陸軍士官の親睦施設である桜契社(おうきっしゃ)で集まっていた。

保胤「済まん直衛、耐えてくれ」

新城「耐えるもなにも、浅学な僕では理解が及ばないのです義兄上」

新城「僕がバーゼルラントという小さな異国に、なぜ行かねばならないのですか」

篤胤(あつたね)「駒城の力だけでは、お前を守ってやれぬのだ」

新城「殿様、それはつまり……」

篤胤「みなまで言わせるな」


実仁「まぁ待て老公。新城には俺の旅団を救ってもらったんだ。俺から説明しよう」

篤胤「お任せしました、殿下」

実仁「新城、貴様国際情勢について学は深いか?」

新城「《軍国》産の酒が値下がった程度は知っております」

実仁「よろしい。いま御国は、軍国と急速に接近している。そしてその軍国と関わり深いのがバーゼルラントだ」

実仁「バーゼルラント王室が、北領で奮戦した剣牙虎の部隊を見たいと言い出した」

実仁「陸軍は《帝国》との再戦に備え、剣牙虎部隊など貸出はせんだろう。しかし御国としては、軍国と接近する機会だ」

実仁「そこで、弱兵でありながら猫を持つ我々近衛に白羽の矢がたったわけだな」

新城「たとえ失われても全体を見て戦力の低下は微々たるもの、と思われても仕方がありませんね」

実仁「ヴァイセンとの蜜月のためにも、バーゼルラントに剣虎兵を送らねばならないのが、一つ。
   二つは、陸軍は無理なのだから近衛から出さねばならぬという必要。
   そして三つ目の理由は、貴様を守原の手から守ることだ」

守原は駒城と同じく五将家の一つであり、その当主・英康は北領の司令官であった。
彼はユーリアに惨敗し敗走、内地に戻ると夏季総反攻などという妄想を口にしだした。
その妄想を皇主陛下の前で打ち砕いたのが、他ならぬ新城直衛なのである。


篤胤「殿下は、お前の身を案じてくださっているのだ」

保胤「《帝国》とはしばらく戦争はない。お前はその間、守原の手の届かない所に逃げていて欲しい」

新城「僕程度に面目を潰されて、まったく可哀想な御仁です」

篤胤「だからこそ、だ。その程度の男だからこそ、逆襲は限度を知らないだろう」

篤胤「駒城は絶対に身内を見放さない。しかし、守りきれぬこともあろう。最悪奴は、軍を動かす」

保胤「駒城は守原との政争に何としてでも勝つ。それまで辛抱してくれ」

新城「全く、僕は北領でも内地でも撤退を強いられるわけだ」

実仁「しかし今度は俺が殿だ。貴様は誰よりも早く撤退できるぞ」

新城「守原閣下と同じですか。そいつは素敵です」

篤胤「海軍に船を出させる。アスローンを経由して南冥に渡り、そこからバーゼルラントへ向かえ」

新城「補給は?」

篤胤「敵の敵は味方、だ。使節団という名目で協力してくれる」

新城「大隊で?」

実仁「お前の編成した大隊通りには無理だ」

新城「具体的には」

実仁「剣虎兵は全て持って行け。騎兵と砲兵は無理だ。それ以外は認める」

新城「でしたら騎兵砲中隊の代わりに導術小隊をもう二つ。一つの時は銃兵中隊もください」

実仁「相変わらず無茶を言う。揃えさせよう」

保胤「直衛、行ってくれるか」

新城「義兄上と大殿、殿下にまで勧められたのです。美味いアスローン・モルトでも買って参りますよ」


新城という男は、駒城の家――――いや篤胤と保胤には絶対の忠誠を誓っている。
彼がどんなに嫌がろうと、この二人がいる限り答えは最初から決まっていたのだ。

ただ一つ。
最愛の義姉から遥か遠く海を渡るというのが、悲しくもあり安堵もする。
奇妙な感情が再び直衛に渦巻いた。



……今日は千早にいい肉を食わせてやろう。初姫様の遊びに付き合って疲れているだろうから。

大丈夫だよ。
きっと海の向こうでも、戦争はできるさ。きっと、きっとだ。
戦争、戦争、戦争だ。どこもかしこも。


人物紹介

【新城直衛】
独立捜索剣虎兵第十一大隊、第二中隊副長。階級は中尉。北領鎮台敗走後は、その撤退を助ける。
野戦昇進し大尉として大隊を率いる。焦土作戦や野戦陣地構築によって帝国軍を足止めし、地帯防御戦闘を続けた。
敵の捕虜になるも皇国に戻る。軍功者として皇主陛下に軍情報告をする栄を授かり、その場で夏季総反攻を批判。
陸軍追われる形になるが、近衛総軍(実仁准将)に拾われ、近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊の大隊長に就任する。

《皇国》を支配する五将家のひとつ、駒城の育預(はぐぐみ)として育つ。
内乱の際に親を失い孤児となるが、駒城の御曹司・保胤に拾われた。一緒に拾われた少女蓮乃は義姉となり、そのまま保胤に嫁いだ。
蓮乃と一緒に彷徨っていたとき、彼らを守っていたのが剣牙虎である。(鋭い牙を持った、巨大な虎。猛獣)
剣牙虎を恐れることのなかった直衛は、その虎の娘である剣牙虎を千早と名付け、子飼いにした。

先天的異常者であり、戦争を何より好む。
しかし自ら小担であることは認めており、戦争では身が竦むほど怯えることも少なくない。
人によっては兵隊思いの情のある軍人だが、極端に冷酷になることもあり、その二面性を大いに発揮した結果、敵も味方も増えた。

※更新につき一人ずつ書きたいと思います


  ◇

バルツァー「さて」

彼は、異国の軍人を待っていた。
バーゼルラント軍事顧問、そして士官学校の教官として新城の案内を任されたのだ。

ヘルムート「なんで私まで……」

彼の横には、眉目秀麗な細面の生徒が立っている。
名前をヘルムート・マルクス・フォン・バッベル。騎兵科三年生にして、騎兵主席の優等生。
教頭をして「騎士の風格」と言わしめる、まったく美しい人物だった。

バルツァー「そりゃ箔ってもんだ。とにかくお前は絵にはなる」

ヘルムート「箔?」

バルツァー「威嚇って言ってもいいかもな。どこの軍隊も、形から入るもんだ。少なくともお前はその点で合格ってことさ」

たとえ帝国の美姫を退けたといえ、《皇国》はいまだ軍事後進国。
当時はバルツァーでさえそう考えていた。
そのような旧態依然とした軍人ならば、ヘルムートのような騎兵を十分に評価するだろう。
彼の頭の中には、そのような計算があったのだ。

時刻は予定より半刻早い。
しかし。

バルツァー「あれか……」

遠方に人影が見える。士官学校に向け歩いてくるということは、十中八九それは新城直衛だろう。
五……いや六人?

バルツァー(随分と引き連れてきたな……まぁ用心できる軍人はいい軍人だ)


ヘルムート「な、なんだあれは!?」

バルツァー「何が……!?」

影はもはや影でなく、しっかりと個人を見分けられるほどの距離に近づいた。
バルツァーの読みは外れ、人は四人しかいない。小柄な男、軍装の麗人、怪しげな軍人、バーゼルラントの案内人の四人だ。
それ以外にいたのは、二人分の人影に見えていたのは――――

新城「出迎えありがとうございます。《皇国》近衛少佐、新城直衛です――――ああ」


新城「これは私の飼い猫です。千早。全く大人しい猫ですよ。戦場でなければ」


バルツァー「……《軍国》陸軍少佐、バーゼルラント軍事顧問のベルント・バルツァーです」

かくして第一印象で相手を圧倒するという戦いは、《皇国》の勝利に終わった。


バルツァー「シンジョウ少佐。お噂はかねがね」

新城「自分は帝国軍から逃げ回っていただけですよ。その賞賛は兵と猫に向けられるべきです」

バルツァー「猫……ケンキコ、ですか。話は聞いていましたが、ここまで……」

新城「恐ろしい? 大丈夫です、平時の剣牙虎ほど優しい動物はいません」

ヘルムート「……」


新城「バルツァー少佐。貴官が狼狽えるとそちらのお嬢さんが益々怖がってしまいます」

ヘルムート「お、お嬢さん!?」

新城「ん? ああこれは失敬。そう見えたもので。まぁ女子供には優しい猫ですから安心してください」

バルツァー「この子は士官学校の生徒です。私と一緒にシンジョウ少佐のお出迎えを」

ヘルムート「……ヘルムート・マルクス・バッベルです」

新城「ヘルムート殿、失礼しました。自分のような男と同じ軍属とは思えない美丈夫だったもので」

ヘルムート「気にしておりません」

ヘルムート(ならば後ろのお付はなんだっていうんだ……あんなに美しい人物を、私は見たことがない――――)

新城「これは私の個人副官で天霧冴香です」

冴香「よろしくお願いします」

バルツァー「なんとお美しい! 《軍国》にもアマギリ殿ほどの女性はおりません」

冴香「……」


ククッ、と直衛は喉の奥で笑う。わざわざ訂正はしないが、冴香は両性具有者であった。

佐和野「大隊長、藤森参謀からです」

額に銀盤を埋め込んだ男が、直衛に話しかける。

新城「どうした」

佐和野「大隊はバーゼルラント軍の兵舎に無事到着。別命あるまで待機するとのことです」

新城「分かった。大隊は兵舎の中でのみ活動しろと伝えろ」

佐和野「了解」

バルツァー「今のが……ドウジュツ、背天ノ技ですか」

新城「はい。拝石教《パルカス》の教義では認められないでしょうが、ご容赦ください」

バルツァー「ヴァイセンもバーゼルラントも、《帝国》ほどパルカスが支配的ではありません。ご安心ください」

導術は、術者が思念波によって意思を伝達する一種の超能力である。
《皇国》では商売にも用いられる一般的なものだが、バルツァーには馴染みがなかった。
《帝国》のみならずツァルラント大陸西北部で普及している拝石教《パルカス》が、その存在を認めていないからだ。
とはいっても、軍国ではそこまで排他的な動きはない。あくまで、遠いどこかの絵空事のようなものだった。

バルツァー(情報の即時伝達……あれなら下級将校や下士官を熟練させなくても、散兵戦闘や夜間戦闘が十分可能だ)


この時代、未だ戦列というものが有用に機能していた。
もし各々独立して行動すると、これを司令部が管理出来なくなるからだ。
また夜間戦闘はその戦列の維持が難しくなるので、これも《大協約》世界における戦争の、夜の静寂を約束するものであった。
それぞれの部隊指揮官が有能であれば、独立した指揮系統も夜間強襲も不可能ではないだろう。
しかしそこまでの士官教育を行え、かつ成功しているのは帝国と軍国のみである。

バルツァー(ケンキコにドウジュツ……これか。これのおかげで東方の弱小国が帝国と渡り合ったのか)

ヘルムート「顧問?」

バルツァー「ん? ああそうだった。――――とは言ってもまだ半刻あるんだよな……」

バルツァー「シンジョウ少佐。約束の刻限までは校長も他の業務があるので、それまでは学校内をご案内しましょう。立ち話もなんですので」

新城「御厚意感謝します。ああ、ただ――――」

バルツァー「なんでしょう?」

新城「厩舎はご遠慮願いたい。馬を怯えさせては可哀想なので」


  ◇

校内を巡りながら、バルツァーと直衛はよく話した。
他の者共は黙っていたし、そもそも口をはさめるような話題ではない。直衛もバルツァーも、かなり高い次元で物を考えていたからだ。

新城「論文――――『騎兵不要論』。私も読みましたよ」

バルツァー「自分のを? よく手に入りましたね。ヴァイセンでは《コウコク》の本など滅多に」

新城「知り合いに本の虫がおりまして。節操なく集めるんです」

バルツァー「全くお恥ずかしい限りです」

新城「確かに、先の戦で帝国騎兵に蹂躙された身としてはあの脅威を忘れられません」

新城「しかし長い目で見れば、砲の進化は留まらない。銃も後装銃が主役になれば連射性があがります」

新城「その時になれば、戦列や騎兵突撃は動く血袋に成り下がるでしょう」

バルツァー「ヴァイセンでも後装銃の量産は至上命題です。今はまだ、最新兵器としての扱いですが」

新城「《皇国》では未だ試験兵器の域を出ていませんよ」


バルツァー「それよりも。後装銃はいつか一般化しますが、ドウジュツは違います。あれは脅威だ」

新城「導術の効果的運用は未だ模索のところが多いですが……そうですね、僕もそう思います」

バルツァー「でしょうね。情報の伝達速度はそのまま戦闘速度の変化ですから。あるとなしでは、全く戦闘力が違います」

新城「さすが、ノルデントラーデ戦役で司令部付き聯隊参謀だった方は違います。僕の国ではこうはいかない」

バルツァー「お上の頭が固いのはどこも同じですね。というか、自分の戦歴まで?」

新城「お気に触ったのなら謝ります。とにかく根が小心なもので、出来うるだけ情報を集めておきたいのです」

バルツァー「自分の軍功など、シンジョウ少佐に比べたら小さなものです。調べる価値もないですよ」

新城「自分はこの千早に助けられたようなものです。軍功など何一つ」

バルツァー「勇名を馳せる東方辺境領姫の足を止めたのです。たった一個大隊で。これは勲章が足りなくなりますよ」

新城「軍国は気前が良さそうですね。残念ながら《皇国》陸軍はその点慎重でして」

バルツァー「それはいけない。お望みなら、ヴァイセン陸軍に来られては?」

新城「魅力的なお誘いですが、僕はただの軍人です。身に余りますよ」


互いに笑みを浮かべながら談笑。傍から見れば、二人は深いところで意気投合しているように見える。
しかしその実、両者は何一つとして信用してはいない。

腹の探り合い。どの程度情報を漏らすか。どの程度の戦略眼なのか。
後装銃にしても、二人が真実を話したのはそれが機密でも何でもないからだ。
いわゆる撒き餌。罠。相手が知り得ているだろう情報の程度を見極めるための定規。

新城はノルデントラーデ戦役で揺さぶりをかける。
バルツァーは一個大隊という細かい内容で返す。


ここでの勝敗は着かなかった。



――――校長室――――


フランク「ようこそ、シンジョウ少佐。私は学校長のフランク・フォン・バウマンです」

新城「《皇国》近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊、新城直衛です」

フランク「この度は、長旅本当にご苦労様でした。シンジョウ少佐は《コウコク》とバーゼルラントの友好の架け橋です」

新城「申し訳ありませんが、フランク校長。自分は『バーゼルラントに行き、要求があった場合可能な限りこれに答えよ』と命令されました。
それ以外は明確な指示を受けておりません。自分と大隊は、はるばるバーゼルラントで休暇というわけではないでしょう」

???「それについては、私から答えよう」

怜悧な声が響く。
その声を発した男は凛々しく、そして力強さを感じさせる風貌をしていた。
身なりや所作から、随分と高い階級――――《皇国》におけるその層と普段から接していたことも助かって――――と分かる。

新城「……失礼ですが、あなた様は?」

アウグスト「ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト。この学校の訓練長をしている」

フランク「ア、アウグスト殿下はこのバーゼルラント王国の第二王子であらせられます……」

新城「!!」

新城(王子……このような所にいるのなら、実仁殿下と似たような性質なのか?)


アウグスト「シンジョウ少佐。貴殿にはこの学校で臨時教官をしてもらいたい」

新城「教官でありますか、殿下」

アウグスト「帝国軍との戦闘は私も聞き及んでいる」

バルツァー(おいおい……バーゼルラントはヴァイセンだけに生きるにあらず、ってか?)

新城「出来うる限りは」

アウグスト「貴殿にはケンコヘイ……サーベルタイガースについて、ご指導願う」

新城「剣虎兵、ですか? しかし剣牙虎は《皇国》にのみ生息する生物ですので」

アウグスト「私は先の東方紛争の話を聞いて、サーベルタイガースの有用性を思い知った」

アウグスト「そして、なんとかこのバーゼルラントで繁殖させたいとも思った」

新城「残念ながら、殿下。今回私が連れてきたのは大隊を構成する剣牙虎です。繁殖用ではありません」

アウグスト「承知している。しかしその扱いについて知っておくことは悪いことではあるまい?」

新城「仰る通りです。でしたら殿下にも剣牙虎を御預けしましょう。恐れながら御自ら学ばれても良いかと」

アウグスト「その剣牙虎か?」

新城「千早は私の猫ですので、大隊にいる古強者を呼びましょう。王護という名も、御身に相応しいかと」

アウグスト「ロイヤル・ガード……オウゴか。了解した」

新城「剣牙虎はこの通り体は大きいですが、よく人に懐きます。侍らせていれば虚仮威しにも」

バルツァー(十分驚かされたよ、全く)


アウグスト「校長。今日のところはシンジョウ少佐に休んでもらう。教官用の宿舎に空きはあるか?」

フランク「は、はい。ございます」

バルツァー「それならば、私がご案内します。帰り道ですし」

アウグスト「むっ……」

バルツァー(ヴァイセン抜きにしてバーゼルラントとコウコクに接近してもらっちゃ困る)

フランク「おお。お願いしますバルツァー少佐。お部屋の準備が出来次第、お呼びします」

バルツァー「了解しました」

新城(大隊と離されたか……導術は必須だな)

新城「殿下、お願いがございます。この者共にも部屋をいただけると助かるのですが」

アウグスト「三部屋くらいは空いているだろう。構わん」

新城「ありがとうございます」

アウグスト「チハヤも特別に部屋を用意させよう」

新城「重ね重ねの御厚意、感謝のしようもございません。それと、フランク校長」

フランク「なんでしょう?」

新城「一度大隊に戻り、身支度を整えたいと思います。良いでしょうか?」

フランク「構いませんよ。お戻りになったら衛兵にバルツァー顧問に取り次ぐよう言っておきます」

新城「ありがとうございます。それでは」


  ◇

大隊に帰隊した新城は、とりあえず細巻きをふかす。
言ってもいないのに出てきた黒茶は、冴香が淹れたものだ。

猪口「士官学校はどうでありましたか?」

新城「最悪だ」

猪口「率直ですな」

新城「王族に支配されている。なのに近隣住民への配慮が厚い。砲も撃てなければ、大規模な演習もできない」

猪口曹長は眉をしかめた。そして馬鹿にしたように微笑む。

藤森「それはまた。ままごとですな」

新城「教官どももさほど優秀とは思えない。一人喰えない奴がいたが……あとは馬鹿だ」

藤森「しかし士官学校ではあります。卒業後は軍の要職に就く者もいるでしょう」

新城「分かっている。政治に巻き込まれるのは好きじゃないが」

藤森「同感です」


新城「猫はどうしている」

猪口「もともとの数を半分にして良かったです。なんとか厩舎に収まりました」

新城「兵は」

藤森「長旅で鬱憤の溜まっているものもいます」

新城「最低限の現地言語を書いた紙を用意しろ。各中隊から分隊ごとに街へ出せるよう取り付ける」

藤森「了解です。準備させます」

新城「個人副官。君はバーゼルラントの言葉を使えるか?」

冴香「一通り、読み書きできます」

新城「よろしい。最先任曹長、護衛を二人見繕ってくれ」

猪口「猫もつけましょうか」

悪戯を思いついたように、猪口はいかつい顔を綻ばせる。
直衛も釣られて口角を上げるが、実に笑顔の似合わない顔であった。

新城「馬鹿を言うな。鋭兵中隊から用意しろ」

猪口「了解であります」


新城「個人副官。酒場と売春宿に行き話をつけろ。金は言い分だけ渡していい」

冴香「はい」

新城「藤森参謀。こちらの指定した店以外での歓楽は固く禁じる。いいな?」

藤森「酒は?」

新城「許す。しかし羽目を外さない程度だ」

藤森「キツく言っておきます」

新城「三日後訓練を再開させろ。僕はこちらに顔出せそうにないから、君に任せる。それと、猪口は借りていくぞ」

猪口「自分もでありますか?」

新城「僕に軍紀を叩き込んだのは誰だ。彼こそ新兵教育に適任だと思うんだが」

猪口「とりあえず走り込みからですな」



  ◇

大隊での雑務をこなし、新城は士官学校へと戻ってきた。
今度は剣牙虎一頭と剣虎兵一人が増えていた。

新城「バルツァー少佐?」

バルツァー「暇でしたので。ご迷惑かもしれませんが、立たせていただきました。そちらは?」

新城「殿下付きの剣牙虎、王護です。その剣虎兵の秋本大尉も」

秋本「剣虎兵第二中隊長の秋本です」

バルツァー「ベルント・バルツァーです。あちらの衛兵に案内させます」

秋本「ありがとうございます」

衛兵の叫び声が聞こえてきた。
今度はバルツァーも直衛と一緒になって、可笑しそうに笑う。

バルツァー「自分はどうにか叫びませんでしたよ」

千早「?」


 ~~~~~~~~

バルツァー「こちらが、シンジョウ少佐のお部屋です」

新城「わざわざありがとうございました」

バルツァー「それでは」

新城「ああ。一ついいですか?」

バルツァー「お答えできる範囲なら」

新城「この士官学校での教練全て、バルツァー少佐はどの程度納得していらっしゃるでしょう」

バルツァー「……自分がどう思おうと、変えられません。ここはアウグスト殿下の所有物のようなものですから」

新城「納得は出来ていないようですね」

バルツァー「シンジョウ少佐は、ご不満がおありのようですね」

新城「不満? まぁ有り体に言えば。お粗末ですよ。砲兵科など目も当てられない」

バルツァー「自分も似たようなモンです。でも口に出しちゃいけないですよ」

新城「殿下に拷問でもされますか」

バルツァー「ある意味。自分はコロッセオの剣闘士のようなことをさせられました」

新城「それは見てみたい気もします。自分がその立場ならごめん被りますが」

バルツァー「とにかく、ここでは封建国家の悪癖が横行しているので、シンジョウ少佐もお気をつけて」

新城「ご心配をおかけします」


 ◇

新城と別れ、廊下を歩くバルツァーは一人考えていた。

バルツァー(この国の軍隊を使い物にできないようじゃ、俺は軍国から見捨てられる……)

バルツァー(奴は使えるかもしれない)

バルツァー(俺からは強く言えない。軍国に悪い印象を持たれても駄目だからな。しかしシンジョウなら)

そしてその足は、校長室へ――――まだそこにいるだろう王子殿下へ――――向けられた。


  ~~~~~~~~~~


アウグスト「なんだ、バルツァー顧問」

バルツァー「意見具申ですよ殿下」

校長室には、フランク、アウグストの他に秋本と王護がいた。

バルツァー「シンジョウ少佐に、剣虎兵の座学だけでなく砲兵科や歩兵科の座学・実習もお願いしてはいかがでしょう?」

バルツァー「シンジョウ少佐は、剣虎兵のみならず砲兵と歩兵の扱いも巧みです。それを埋もれさせるのはどうかと思いまして」

バルツァー「アキモト大尉。シンジョウ少佐は練兵においてもかなり実績がお有りですよね」

秋本「我が五〇一大隊を作り上げたのは、少佐と藤森大尉だと聞いております」

アウグスト「しかしそれは本来、貴様の仕事ではないか?」

バルツァー「もちろんです。しかし、私はあくまで軍国式の戦術しか知りませんので。多角的な視点はより優秀な兵士を産みます」

アウグスト「……分かった。打診しよう」

バルツァー「これで教練の質は確実にあがりますよ、殿下」


 ◇

アウグストの使者によってそのことが直衛に伝えられたのは、小半刻もしない内だった。
そして直衛は(表面上)それを快諾した。


バルツァーめ、やってくれたな。くそ、面倒事を押し付ける気か。
これは大きな貸しだ畜生。ああくそ、これだから政治は好きじゃない、好きじゃないんだ。
あの怖くて怖くて堪らない、王道楽土の戦場の方がマシだ。
しかし『バーゼルラントの要望には可能な限り応えろ』だ。どいつもこいつも政治か。

《皇国》はバーゼルラントに恩を売って、ヴァイセンに近づきたい。
ヴァイセンはバーゼルラントを併合するために、御機嫌伺い。
バーゼルラントは《皇国》を利用して、自立を望む。

くそ。やってやる、やってやるぞ。僕はもう決めた。決めてしまった。
あの澄ました顔のバルツァーの思惑に乗ってやる。乗ってやるが、ただでは済まさない。
ヴァイセンなど知るものか。戦争になればそれはそれでいい。
戦争は好きだ。



新城「面目を潰すのには慣れているんだ、僕は」


人物紹介

【猪口】
《皇国》陸軍曹長。幼年学校で助教として直衛を鍛えた人物。
北領紛争からずっと、直衛の下で兵をまとめる熟練の下士官。

【天霧冴香】
直衛の個人副官で、《皇国》において中尉相当官。誰もが目を奪われる美貌の持ち主だが、純粋な女性ではない。
個人副官はみな、両性具有者である。しかしその美貌から副官を愛人にする将官は後を絶たない。
剣術の達人でもあり、直衛の護衛をしている。

【藤森】
《皇国》大尉。直衛が近衛大隊編成のために集めたクセのある将校の一人。
大隊では参謀を務める。実務もこなすが、走るのが苦手。
匪賊狩りで部下を誰一人失ったことがない凄腕の軍人でもある。


皇国の守護者、軍靴のバルツァー共に設定が多いので、質問疑問等あったら可能な範囲でお答えしたいと思います。
それと、近衛大隊の時に猪口は「特務曹長」でした、申し訳ありません。
書いてしまった手前、これからも「最先任曹長」とします。
また>>35で冴香が「読み書きできる」と言っていますが、口話も可能です。重ねて申し訳ありません。

あと人物紹介の他に用語解説とか必要ですか?
皇国漫画版では出てこないワードとかもありますが、どうでしょう。意見してくださったら助かります。

大陸では龍ってどういう扱いなの?導術と同じような感じ?

塩野大尉はいるのかな?
騎兵不要論との絡み期待


ちょっと更新遅れます、ゴメンなさい。

>>46
龍は水龍、飛龍などが存在しますが、その両方ともバーゼルラントやヴァイセンにはいません。
情報として知ってはいます。
しかし、これは完全な妄想ですがヴァイセンには大きなトカゲのような陸龍というものがいるので、感覚としては導術より遠いものではありません。
ちなみに陸龍は、群れると脅威となるが知能が低く人に懐かないため、軍事利用はできません。

>>48
います


猪口「大隊長殿。本当にやってやるんですか?」

新城「無能は勝手に死んでくれて構わない。しかしそれに連れられて、兵までもが冥府に行進するのは我慢できない」

猪口「しかしまぁ、王族ですか……厄介なことにならなければいいんですが」

新城「もし奴が実仁殿下と同じような頭をしていれば、多少の無茶は大丈夫だろう」

猪口「そうでなければ?」

新城「藤森参謀に退路を確保しろ、と言ってある」

猪口「ここから《皇国》なで機関車無しで戻るとなると、ぞっとしませんな」

新城「うん、機関車。あれはいいな。すぐに欲しい」


今日は千早と直衛、そして1人の導術兵のみが陸軍士官学校へ向かう。
直衛は要望を受けた次の日から、すぐに教壇に立つことになった。
わざわざアウグストの同席を求めて、直衛はバルツァーの真意を汲む。
そして真意を汲んだ上で、その顔を真っ青にしてやろうと考えていた。




バルツァー「おはようございますシンジョウ少佐」

新城「お出迎えご苦労様です、バルツァー少佐」

バルツァー「(ご苦労、ねぇ……見透かされたか)今日は英雄のお話が聞けるとあって、生徒も楽しみにしていますよ」

新城「(僕の性格を理解した上で利用するか……案外、肝が据わってる)英雄だなんて、とんでもありません」

バルツァー「さぁ、こちらです。まずは砲兵科の実習ですね」

新城(いきなりか……)


~~~士官学校・射撃場~~~


教官「行程を各動作に分けて教えております。これによって各動作が洗練され、かえって全体にかかる時間は短縮されます」

新城「それぐらい知っている」

教官「!?」

新城「しかしあれでは何の役にも立たないな、残念ながら」

教官「……少し口が過ぎますぞ、シンジョウ殿」

新城「教官。僕は王子殿下から教練の一切に口出すことを求められた。いわば王族特務教官だが。君はそれを無視する程度の権力があるのか」

教官「し、失礼しました……」

新城「謝罪は求めていない。あるのか、ないのか。こんな簡単なことも分からないのか。貴官に従う兵が哀れで仕方ない」

教官「……」

アウグスト「シンジョウ殿。なぜ役に立たないのだ?」

新城「砲弾を用いないからです、殿下。火薬の匂いのしない砲兵など、どこにもおりません」

教官「それは、ここは街からも近く……」

新城「君に言ってはいない。無能は口を挟むな」

教官「!!!」


バルツァー(おうおう……トばすねぇ。まぁ、お陰で少しはサマになりそうだ)


新城「味方の砲火に焼かれるのは我慢なりませんが、敵の砲火に焼かれるのは感情ではなく実際の問題です」

新城「感情を恐れることで実情を無視するのは、全く道理ではありません、殿下」

アウグスト「それは確かにな。しかし、なぜ空砲と実砲で教練の効果が異なる?」

新城「確かに、動作は同じでしょう。しかし、砲はただそこにある鉄ではないのです」

新城「衝撃もありましょう。熱も持ちましょう。冷たい鉄にしか触れずに、熱した鉄で同じ動作ができますでしょうか」

アウグスト「貴殿の論理は全く明白だ」

新城「むしろ気付かない方がどうかしておるのです、殿下」

アウグスト「しかし民はどうする? 反発が大きいぞ」

新城「それは私の知ることではありません。なんなら土地を買い取ってもっと大きな射撃場にすればよろしい」

バルツァー「建設はいい公共事業にもなりますしね、殿下」

新城「……とにかく、将来現場を背負う士官候補生がこのような訓練をしていては――――」




新城「バーゼルラント砲兵にもたらされるのは、名誉の戦死のみでしょう」


                                              .


アウグスト「……考えよう」



――――あのシンジョウという男、思ったよりも使える。
第二王子にあそこまで言ってのけるとは、予想以上だ。
これでバーゼルラント士官学校も少しはマシになる。そうなれば、胸を張って軍国に報告できるぜ。
俺がやったんじゃ、あの王子殿は怒っちまうからな……もう少し、あの少佐に食ってかかってもらうとしよう。

バルツァー「シンジョウ少佐。次は歩兵科の実習です」

新城「……わかりました」


~~~士官学校・射撃場~~~


そこでは、小隊規模で模擬戦闘を行う、基本的な軍事演習が行われていた。
しかし規模は小隊でも、扱いは中隊として訓練に当たっている。


アウグスト「バルツァー顧問に軍国式を『実証』してもらった結果、内容は見直してある」

新城「でしょうね。一定程度の散兵にも耐えうる指揮系統だと思います」

バルツァー「軍国では一般的なものですからね。殿下にご注進し、取り入れてもらいました」

新城「なるほど。しかも重い銃を持っても、いい動きだ。走り込みは十分ですな。しかし」

アウグスト「また、何かあるのか?」

新城「これはなんですか。全く筋道たった戦争。本当にあるのならばお目にかかりたい」

バルツァー「というと?」

新城「教官がただの案山子です。全く不確定要素を付け加えようとしない」

教官「我々がただ立っているだけだと仰るのか!?」

新城「よく分かってるじゃないか。撃破判定だけなら生徒にもできる。君たちはもっと状況を混乱させるべきだ」

アウグスト「兵はまず、均質的な動きができてこそ軍が成り立つ。その均質性を学ばせているのだ」

新城「殿下の仰ることは正しいです。しかしそれは、私の見る限り既に十分なのです。なのにあえてそれを繰り返すというのは――――」

新城「無能の証明ですね」

アウグスト「!!」


バルツァー(言ってやった! 王子を間接的に批判するとはな。ありがたいぜ全く)


アウグスト「ほう。無能か」

新城「ええ。きっと訓練長であらせられる殿下の意思が、上手く教官連中に伝わっておらぬのでしょう」

アウグスト「なら、貴様ならどうするシンジョウ」

新城「そうですね。例えば敵砲兵によって中隊本部が壊滅。中隊長死亡。このように状況を書き加えるのです」

新城「いくら規定として指揮権移譲があっても、実際にしてみなければ思わぬ問題が噴出することもあります」

新城「つまり兵がいくら有能でも、突然の事態には対応できないのです、殿下。それを指導できない教官は案山子だと思います」

アウグスト「考慮しよう」



――――シンジョウ、俺の言いたいことを全て、ニュアンスをキツくして言ってくれる。
正直助かるぜ。
これで砲兵の事実上の問題と、教官の弛んだ空気が、全てとは言わないが改善されるだろう。
しかも俺に悪印象を持たれることなくだ。


自分の計略が成功していることに安堵するバルツァー。
それを見た直衛は少し頬を引きつらせる。笑ったのだろうか。
しかしその微笑に気づくものは居なかった。


~~~歩兵科・座学~~~


新城「さて今回は初回ということもあって、《皇国》の昔話をしよう」

新城「君たちにとっては遠い異国の建国神話など興味は無いだろうが、残念ながら用意が無くてね。我慢してくれせえすれば勲章ものだ」

(ここで笑いが起こった。シンジョウはそれを手で制する)――――講義録より

新城「《皇国》の国祖、明英大帝の有名な故事がある」

新城「簡単に説明しよう。この明英帝はとある地方を征服に赴く。しかし行軍の途中で水すら不足する事態に陥った」

新城「そこで兵は、自らと同じく飢え渇いた明英帝に水を差し出した。これをどうしたと思う」

(生徒がざわつく。一人が手を挙げた)

生徒「飲み干したと思います」

新城「それは何故だ?」

生徒「ミンエイが軍の指揮官だと仮定すると、彼が正常な判断を下せなくなった場合、全体が混乱してしまうからです」

新城「なるほどそれは面白い意見だ。しかし残念ながら違う」


新城「明英帝はこの水を涙に見立てた後、地面に巻いてしまう。そしてここより二〇浬先に井戸があると兵を励ました」

新城「『兵の為に涙を流せても、喉の渇きは癒せない』――――つまり、指揮官は兵とともにあれという教えだ」

(生徒がふたたびざわめく。そしてそれは拍手に転じる)

新城「なるほど、誇り高き君たちはこの話がお気に召したようだ。では先程の君、意見はあるか?」

生徒「やはりミンエイは間違っていると思います」

(教室で罵声が飛び交う。「お前は自分さえよければいいのか」「兵を思え」)

新城「静かに。では君の意見の正否は一先ず置いておき、明英帝と同じく王族であらせられるアウグスト殿下にも、意見をお聞きかせ願おう」


バルツァー「!?(何をするつもりだコイツ……!)」

新城「殿下、よろしいでしょうか」

アウグスト「……ミンエイ殿の判断は、合理的ではないが軍司令としては的確だ」

新城「それは何故でありましょうか?」

アウグスト「兵を率いるには、兵と立場を同じくするべきだ。もし私腹のみを肥やすようでは反乱が起きるだろう」

新城「では、殿下はこの『明英帝の行軍』に間違いはなかったと?」

アウグスト「古くに学ぶ点は多くある。その逸話は実に有意義だ」


新城「……」


やっぱり。やっぱりそうか。
では言うしかない。言ってやる。この馬鹿王子に物を教えてやる。
昨日の時点でそう決めていた。なのに手が震えてきた。怖い。くそ止まれ。
だがあのバルツァーは気に入らない。せいぜい予想外に困惑しろ。畜生。


新城「……ク。クククク」

アウグスト「笑っている、のか? シンジョウ貴様……」

新城「ええ。歓喜に溢れているのです。殿下が明英帝と同じ気質の軍人であると思ったもので」


それは、普通はアウグストに対する最大限の賛辞だと思うだろう。
自国の偉大な王の、偉大な逸話。それとあなたは思考を同じくするのだと言われて、誰が反論するというのか。
実際、アウグストはこの時直衛の笑いに対して不快感はなかった。
むしろ微笑んでさえいた。






新城「殿下のような御仁が、軍を率いる立場にいなくて本当に嬉しい」




                                                .



教室が凍りついた。


アウグスト「……なに?」

新城「ですから、殿下に兵が付き従うことのないバーゼルラントを祝福しているのです」

新城「これは踏襲すべき美談ではなく、戒めるべき教訓なのです。まぁ、その点は理解してもらえないことが多いですが」

新城「この明英帝の行軍には兵站・補給という概念が一切存在しない。いや水の補給など、それ以前の問題だ」

新城「その義務を放棄して軍を動かした司令部は全くの愚物と言っていい」


教官の一人が声を荒げる。


教官「貴様、殿下を愚弄しているのか!!」

新城「愚弄? これはそんな冗談のようなものではなく、ただの事実だ」

新城「あの逸話を有意義と語る時点で、軍を率いる素質がない。むしろ悪だ」


アウグスト「言わせておけばシンジョウ! 私を面前でただ罵倒したいのか!?」

新城「正しているのです、殿下。もしご不満なら、私はすぐにでも《皇国》に尻尾を巻いて逃げ帰りましょう」

バルツァー(これか!! 奴の狙いは!)

バーゼルラントに対しての客といえど、あくまで《コウコク》はヴァイセンが招いた客だ。
それがここまで第二王子と対立し、その上独断での帰国となれば、バーゼルラントと《コウコク》は反目し合うことになる。
そうなれば第二王子とヴァイセンの関係が悪くなるのは必至!
しかしそんなことをすれば、《コウコク》とヴァイセンの関係も悪くなる。こいつ――――

いや。

奴は分かっている。分かってやっているのだ。
そうすれば、俺が止めに入らずにはいられないことを――――!!


バルツァー「……殿下。ここは」


読みが甘かった。直衛はもう一歩先を考えていた。
これは両者の実力の差ではなく、ただ時間の問題である。
直衛にはいくつもの策を練る時間が十分にあり、バルツァーにはそれがなかった。
直衛は、バルツァーがそう考えて発言するであろうことを見越していたのだ。


新城「バルツァー少佐は、どう思われますか?」

バルツァー「え……?」




バルツァー「!!!!」


.


バルツァー(しまった! 奴は俺をおびき出すために王子を挑発したのか!)

気づいた時には、もう遅い。

アウグスト「軍事顧問! どうなのだ!! 私とシンジョウどちらが正しい!?」

バルツァー「ええっと、ですね……」


これはどう考えても、直衛が正しかった。
補給を考えない軍事行動など、愚行の極致であるからだ。
辛辣な直衛の弁で、それを理解できていない者はこの場にいない。それはアウグストであってもだ。

しかし理解していても、簡単に応ずることはできない。
アウグストは王子でありながら、生徒の前で叱責されたのだ。許せるわけがないだろう。

ここでアウグストの肩を持てば、無能の証明。
しかし直衛に味方すれば、アウグストとの関係が悪くなるのは確定的だ。
それだけは避けねばならない。ヴァイセンはそれを、バルツァーに望んでいるのだから。
だが、ならば前者というわけにもいかない。そうすればバーゼルラントの軍事顧問など胸を張って言えなくなってしまうからだ。


バルツァー(こんなの、誰も得しねぇじゃねぇかシンジョウ……!!)


バルツァーは直衛を睨みつける。
しかしそれをそよ風のように平然と受け流し、直衛は笑う。
それは悪魔の――――いや悪魔の軍隊を従える魔王そのものだった。バルツァーは恐怖する。


バルツァー(コイツは、我慢ならないだけだ! 俺が、王子が! ただの意趣返しだこれは!!)


アウグスト「どうなのだ、バルツァー!!」

バルツァー「殿下……この問題はまず、観点の違いから生じるものでして……」

教官「何が観点か! バルツァー殿はこの東方蛮族の肩を持つのですか!?」

バルツァー(お前は黙ってろ!!)

新城「……殿下」

バルツァー「!!(まだ何かするつもりかよ……ッ)」

新城「私はただの小心者でして、度胸もなければ腕力もありません。ですから、舌で何かをする以外、殿下に敵うことなどありません」

アウグスト「貴様、何が言いたい?」

新城「私にはなにも出来ません。出来うるのはただ、震えをいかに抑えるか思案するのみなのです」


バルツァー(これは……降伏宣言だ! 自分はあなたに負けている、だから許せという……察してくれ王子! それで丸く収まる!)


アウグスト「……」

新城「……」


バルツァー(あんたが恐ろしくて堪らないと、シンジョウは負けを認めてるんだよ! 気付け!)




アウグスト「……ふん。言うだけ言って青旗か、卑怯者め」

新城「ええ。卑しいのです私は。ですから卑しい者なりの事しか喋れません」

アウグスト「私まで卑怯者になる気はない。せいぜい震えていろ」


そう言って、アウグストは踵を返し教室からそそくさと出て行った。
教官たちが慌ててそれについて行く。バルツァーはなんとか窮地を切り抜け安堵の息を――――つけなかった。


新城「大きな貸しだ、バルツァー少佐。君が尊敬できる軍人であることを望む」


おもむろに近づいてきた直衛が、そんなことを言ってきたからだ。



バルツァー「ああ……あんたを利用しようと思った俺が馬鹿だった」

新城「君と戦う気はないが、そういう態度は好きじゃなかったからね」

バルツァー「王子を挑発して、俺を罠にはめて、そしてそこから救うまで全部考えてんだな?」

新城「結局は、殿下に降伏せざるを得なかったがね」

バルツァー「負けを認めたというが……あんたの猫、ずっと殺気立ってたぜ」

新城「その目は中々、見ているようだ」

バルツァー「あんたの性根までは見えなかったよ」

新城「性根? ああ、うん。そうだろうね。ひどく濁って僕にも見えないから」

バルツァー「とにかく、今回は助かった。その状況を誰が作り出したかは触れないが」

新城「この学校そのものだよ。僕は問題を解体したに過ぎない」

バルツァー「乱暴過ぎるんだよ。手術には手順があるんだぜ」

新城「あいにく、戦場医療に見慣れていたものでね」

バルツァー「そりゃあ……そうか。そうだな」

新城「うん。そうさ。それしかない」




新城「僕らは軍人で、そうあるべきだ」


バルツァーは直衛に対して、不思議な感情を持った。
アウグストと怒らせたり、自分を陥れようとしたことは許せないし、憤慨してもいる。
しかし直衛は正しい。少なくとも軍人としては。
そしてなにより、この士官学校の膿を荒療治でもって、一気に出した。その点では、好感が持てるのだ。

直衛と関わった者は、完全に味方になるか完璧な敵になるかどちらかしかない。
しかしバルツァーはまだ、そのどちらでもなかった。


バルツァー「願わくば、あんたが敵にならないことを。シンジョウ少佐」




アウグストの周りには、貴族出身の教官たちが怒気を纏って集まっている。

教官A「殿下! あのような無礼者をなぜ許すのです!?」

教官B「やれ、民家を買収しろ実際に砲を撃てと、自分勝手にもほどがあります!」

教官C「我々など案山子と嘲られたのだ! これをなんとする!!」

アウグスト「黙れ!!」

教官ABC「「「!!」」」

アウグスト「シンジョウには座学教官職を解き、実習でのみ教官をやらせる! これは訓練長である私の決定だ!」

教官A「しかし殿下……」

アウグスト「さがれ。貴様らの妄言を聞いていると、またどこかでシンジョウが嘲笑っているように思えて仕方がない!」


そしてそのまま、自室へと入っていった。


アウグスト「シンジョウ……能力は確かだ。だが許せんし油断もならん」

アウグスト「魂胆が透けて見えるバルツァーの方がよほど扱いやすい」

アウグスト「この学校の問題点を見抜いたのは事実。しかし奴に勝手はさせんぞ……」



―――――――この時はまだ、知る由もない。
新城直衛という劇薬が、バーゼルラントにどのような化学変化をもたらすのか。

誰もみな、流れの渦中にいる。それを天より俯瞰できる存在などありはしない。直衛も、アウグストも、バルツァーも、それは同じだ。
これより始まるバーゼルラントの激流に、ただその状況に対処するしかないのだ――――。


用語解説

【機関車】
熱水機関、いわゆる蒸気機関を使った次世代の輸送技術。
特にヴァイセン、エルツライヒで盛ん。(代わりに《皇国》のように熱水期間を搭載した軍艦はない)
しかしあくまでまだ新発明の段階であり、完全にすべての輸送機能を代替するまでには至っていない。
直衛たちがこれを利用したのは、多分にヴァイセンのよる示威行為が含まれる。


【青旗】
《大協約》世界における、降伏を意味する旗。いわゆる白旗に相当する。



このあと、次に繋がるちょっとした短編というか外伝的なものをゆっくり書いていきたいと思います。

ゆっくり書くので、気にしないでレスしちゃってどうぞ


【王子の剣牙虎奮闘記】

アウグストは、王宮へと向かっていた。その後ろには、《コウコク》の軍人・秋本と剣牙虎・王護が付き従う。
通訳を介し、秋本に話しかける。

アウグスト「アキモト。これから王宮へ入るが……オウゴは本当に大丈夫か?」

秋本「はっ、殿下。今は腹も空かせておりませんし、剣牙虎は元来温厚な動物なのでご心配はございません」

アウグスト「ならばいいが」

王護「グアア」

秋本「ほら、王護もこう言っております。コイツは年を喰ってる分、ちゃんとその辺弁えているんですよ」

アウグスト「オウゴは年老いているのか?」

秋本「ああ勘違いなさらずに。確かに他の猫よりかは年長ですが、だからといって能力が低いわけじゃありません。むしろ戦慣れしています」

アウグスト「熟練の下士官のようなものか」

秋本「その通りでございます。聞き分けもいいですよ」

アウグスト「ならばここは、一つ遊んでみようではないか――――」


衛兵「ん?」

プレートアーマーに身を包んだ、まるで時代を超えて現れたかのような兵士。
この王宮を守る者たちは、みなこのような格好をしていた。宮殿の主たる第一王子の趣味である。
そして彼は今、茂みにかすかな気配を感じていた。

衛兵「そこに誰かいるのか?」

茂みに槍を向け、じりじりと近づく。ここに賊が出た事などない。しかしもしそんなのがいれば――――自分は戦わざるを得ない!

衛兵「おい! 大人しく出て来い!」

???「グルルルルル」

衛兵「うわああ!?」


茂みから出てきたのは、賊などではなかった。
のそりのそりと、緩やかな歩で現れたのは――――体長3mを超す猛獣であった!

衛兵「ひっ」

王護「グア」

衛兵「く、来るな!! 来るんじゃない!」

王護「?」

無邪気に王護は近づいてくる。
先程まで戦意を固めていた衛兵の心は、すでに怯えきっていた。
そして。

王護「ガァ!」

衛兵「ひぃぃ!!」

その叫びを号砲に、衛兵は槍を投げ捨て走り去ってしまった。


秋本「殿下。よろしかったんですか?」

アウグスト「構わん。兄上に虚構の無意味さを教えるいい機会だ」

秋本「さようで。まぁ剣牙虎を初めて見て怯えるな、という方が無理ですがね」

アウグスト「もしあの衛兵が銃を持っていれば、これも違った結果になったかもしれん。距離は人間の手に入れた有利なのだ」

秋本「ごもっともです、殿下。槍よりか銃の方が遠くに届くのは真理です」

アウグスト「では王宮に入るぞ」

秋本「はっ」



王宮の中に足を踏み入れたアウグストたち。
さすがにただの軍人である秋本は少し緊張しているようだ。無理もない。
壮麗な装飾。豪奢な佇まい。荘厳な巨石建築。
貴族階級の領域に足を踏み入れ、さすがに秋本は戸惑った。

アウグスト「どうしたアキモト」

秋本「いえ……とりあえず今日は、美味い飯にありつけそうだと思っとりました」

アウグスト「美味い飯? ああそうだろうな。兄上はそういった王族らしいことが好きでたまらない」


???「そ、それはなんだ一体!?」


階上より悲痛な叫びが聞こえてきた。
その声を発した者は、まるで中世の王侯貴族のような身なりだ。両手に侍らせた女官も、神話時代の劇を演じているような格好をしている。

アウグスト「……兄上」


フランツ「薄汚い軍服だけならまだしも、そのような恐ろしい獣まで王宮に入れるとは、何を考えているんだお前は!?」

アウグスト「兄上。これは剣牙虎という《コウコク》のメイン・バトル・ビーストです」

フランツ「《コウコク》? サーベルタイガー? 東方蛮族の汚らわしい獣など知るか!」

アウグスト「これはこれで有用なのです、兄上」

フランツ「有用だと? そのような知性の欠片もない蛮族の技が、役に立つわけもないだろう!」

アウグスト「兄上ご自慢の宮廷騎士は、恐れをなして逃げ出しましたが」

フランツ「なっ!? ……と、とにかくそのような獣を宮廷に入れるな馬鹿者!」

アウグスト「兄上のお指図に従うわけには参りません。これは私の猫だ」

フランツ「猫? 猫だと!? 王族の財産をこそこそと盗むだけではなく、今度はその獣で強奪しようとでも言うのか?」

アウグスト「必要とあらば」

フランツ「!?」


???「どうしたのです?」

フランツ「おお、リープクネヒト! お前もこの馬鹿な弟に何か言ってくれ!」

秋本「……あの眼帯は?」

アウグスト「エルツライヒから送られてきた宮廷音楽家だ。油断ならない」

秋本「でしょうな。あまり関わりたくない感じです。王護も警戒しております」

リープクネヒト「これが噂に聞いた《コウコク》のサーベルタイガーですか……確かに面と向かうと脅威ですね」


フランツ「だろう!? このような物がこの王宮を闊歩するなど……!!」

リープクネヒト「落ち着いてください。仮にも軍用であれば、飼い主を無視して暴れだす事など有り得ません」

フランツ「しかし……」

リープクネヒト「ここはむしろ、蛮族の獣を受け入れる方が王としての度量を示せるというもの」

フランツ「……そうか?」

リープクネヒト「ええ。古来より王とは、蛮族を降してこそ王たる威厳を保つものです」

フランツ「い、威厳……うん、そうだな。その獣、自由に歩かせなければそれでよい!」


フランツはそのまま、その場を去っていった。


アウグスト「……リープクネヒト」

リープクネヒト「アウグスト殿下。どうやら、《コウコク》人を随分ご信頼されておりますようですね」

アウグスト「気に入らないか?」

リープクネヒト「いえいえ、私はただ両国の信頼関係が高まることを喜んでいるのです」


リープクネヒト「それでは私はこれで。遠い異国からの友愛に祝福あれ!」

秋本「芝居がかった野郎だ……」

アウグスト「奴と兄こそ、この宮殿に住まう国の病源だ」

秋本「兄上様も?」

アウグスト「ああ。もはや兄とも思わん。私はこの国をエルツライヒやヴァイセンの傀儡にするわけにはいかないのだ」

秋本「そうですか……そいつは結構なことです」

秋本(大隊長へお伝えするべきだな、これは――――)


こうして、宮殿の夜は更けていく……。


今日は以上です。
読んでくれている方に二三、お聞きしたいのですが、まず今後の展開について。
これから新城の学校生活をするべきか、物語を進めるべきか悩んでいます。ご意見いただけたら幸いです。

次に、今回出てきた教官A,B.Cに名前をつけたいと思います。オリキャラになってしまいますが、ご容赦ください。

最後に。画像をアップロードしたいのですが、何分詳しくないので、オススメのアップロード方法などあればご教授ください!お願いします。
それでは、読了感謝!


すみません、新城少佐の学園生活が思いのほか書けなくて更新遅れそうです。
もし「○○させてみたら?」みたいなアドバイスがあれば是非頂きたいと思います……他力本願、恥ずべきことです……

たまたまこのスレ見付けたが皇国しか持ってない
でもバルツァーも面白そうなんで今日買ってくるわ
そっちも読んだら、このスレを読むことにする

乙 バルツァー側が何巻時点なのか分かりにくいがまだサーベル童貞なん?それとも近衛隊全滅した後くらいなん?
直衛と生徒たちの授業風景とか バルツァーと冴香が話してるの見てなぜか面白くないヘルムートとか

てかバルツァーだって学園生活の描写少ないしなぁ。左翼連中を新城特有の言い回しでやりくるめてほしいね。
リープクネヒトと新城はまさに不倶戴天の仲になるのかな

買ってきて一気に読んだ
面白かったわ
偶然このスレ見付けてよかった

バルツァー側は2巻か3巻辺りかね
新城さんと騎兵科の人達の絡みとか見てみたい

>>101>>104
まだヘルムートちゃんサーベル童貞ですらないです。デモ前くらいですね
それと騎兵科との絡みはもう少し後になると思います。ヘルムートがバルツァーを気にしだすのはノルデントラーデ以降なので、大分先ですね……でも面白そう!

>>102
そうなんですよ…バルツァー側が案外学校を描いていないので、四苦八苦です

>>100>>103
なぜかとんでもなく嬉しいです。同じくらい、面白く出来たらと思います!


ではシンジョウ教官の士官学校編です



直衛がアウグストを激昂させた翌日。
その日は、直衛が拍子抜けしてしまうほど変化がなかった。受け持ちの教科が実習に限られはしたが、それ以外は特に何もない。
教官の一部からは嫌な目で見られたが、直衛にとってそれは意味のあるものでもなく、ゆえに「何もなかった」。

大隊は藤森参謀に任せておけば多くの部分、上手く回った。
なので直衛はいま、教官職に専念できている。自分でも不思議なことに、直衛は今の境遇を退屈には思っていなかった――――。


    ◇

猪口、冴香、千早を連れて直衛は歩兵科の教練にあたっている。


新城「どうだ?」

猪口「生徒殿らは十分に鍛えてあるようですな。命令にも忠実です」

新城「なるほど、僕とは真逆ということか」

猪口「まぁしかし、それもこの訓練内容の中ではという話ですが」

新城「うん。そうだな。僕もそう思う。ならばやることは限られている」

猪口「ええ。『兵隊は走るのが仕事』」

新城「全く。バーゼルラント士官学校の皆々には同情するよ」

猪口「何を仰っているのやら」




歩兵科一年のトマス・リンケはいま、地獄を見ていた。
彼は成績優秀とは言えず、外見も少し小太り気味で、兵隊に適した体躯とは言えない。
そんな彼はいま、背嚢を背負い、ライフリングが施された重いライフルを持って、営庭を延々走っている。
彼だけではない。歩兵科一年生は皆、隊列を崩さぬよう一心不乱に走り続けていた。
その整列具合は狂気を感じるほどである。
無理もない。

――――あの異国の教官は、気に入らない者を自分の猛獣に喰わせてしまう……

そんな噂が流れていたからだ。もちろん全くの嘘だが、実際に剣牙虎を見せられては信じてしまうのも無理はない。
直衛もそれをあえて正そうとはしなかった。そのお陰で生徒が真剣になるのならば、それはそれでいいと思っている。


トマス「ハァ……ハァ……」


だがその恐怖による統制も、綻びが生じ始めた。
体力のないものから、少しずつ行軍速度が落ちてゆく。なんとか列にはなっているものの、それはもはや無様としか言い様がない。
そしてトマスも、その無様さを増す要因となりつつあった。



マルセル「トマス!」


分隊から離れつつあるトマスを見かねて声をかけたのは、分隊長のマルセル・ヤンセンだ。
反抗的態度が目に付くも、優秀な射撃と有り余る活力を見抜いた直衛が、彼を分隊長に指名していた。


トマス「マルセル、ゴメン……。すぐ、追いつくから」

マルセル「お前が列を崩すと、俺の責任になるんだよ。ほら、ライフルを貸せ」

トマス「で、でも……」

マルセル「はやく貸せって!」


そう言ってマルセルはトマスのライフルを奪い取る。
いくらマルセルが体力に自信があっても、ライフルを2丁持っての行軍はすぐに無理が生じた。


マルセル「ぐっ……!」


わずかな重さが加わっただけで、体は機能を大きく低下させる。
なんとかの所で保たれていた均衡が崩れ、どっと疲労の波がマルセルを襲った。


マルセル「ハァハァ……」

トマス「や、やっぱり僕」

マルセル「うるせぇな! 黙って走れ!」


それでもなんとか隊列を維持し行軍を続けるのは、さすがというべきだろう。
事実、彼の闘志は直衛も評価した。それが蛮勇とならないことを願って。


   ◇

新城「なんとも美しい友情だ」

猪口「ええ、全く」

新城「しかしアレではダメだな」

猪口「お叱りに?」

新城「君はバーゼルラントの言葉を使えないからな。仕方がない、僕がやる」

猪口「そいつは、申し訳ありません」

新城「君は僕の横で立っているだけでいい。千早と並べば、君はすごぶる怖いぞ」

猪口「大隊長殿には負けますがね」

冴香「もうすぐ、強行軍訓練の終了時刻です」

新城「分かっているなら、次にすべきことをいちいち僕に聞くな」

冴香「はい……」


冴香が手に持っていたラッパを吹き鳴らす。訓練終了の合図だ。
それを聞いて、生徒たちはたまらずその場に倒れ込んでしまった。


新城「……」

猪口「これは……呆れを通り越して、もはや漫才です」

新城「うん。僕もここで笑うべきか迷ってしまった」


  「いやはや! なんと無様な様子ではないですか!」


冴香「誰です? 無礼でありましょう!」

アロイス「失礼。あまりにも愉快なものでしてな」


声をかけてきたのは、アロイスという名の教官であった。
彼は裕福な貴族の出身でありこの学校の歩兵科を任されていたが、先日アウグストの前で赤っ恥をかかされた為に直衛を目の敵にしている。


新城「君の言うとおりだ。確かにこれはお笑いものだな」


アロイス「まったく。《コウコク》ではこのような練兵をしておるのですか。考えられませんな」

新城「ただ銃を撃つだけの訓練よりはマシだろう」

アロイス「減らず口を。部隊の攻撃力を上げれば、自ずと敵を大量に制圧できるというもの」

新城「ほう。それで?」

アロイス「あのように無駄に走り回るより、的を狙って銃を撃っていたほうが戦場では役に立つでしょう」

新城「ああ確かにその通り。君の教える生徒と、僕の教える生徒を比べれば、君の生徒の方が命中率は幾分高いだろう」

アロイス「……やけに素直ですね」

新城「うん。現実には君の生徒は全滅するから」

アロイス「な!?」


新城「戦場が兵の前に現れるのなら、そうだろう。しかし、逆だ。いつも兵が戦場に現れる」

新城「行儀の良い射撃場での決戦など、起きて堪るものか。戦争とは、ただ銃を撃ち合うだけではない」

新城「兵の教育から物資の手配、兵站の確保、そして行軍までが戦争だ。君は戦争の一端しか教えてはいない」

アロイス「ならば、私の生徒とあなたの生徒を直接比べれば早い!」

新城「構わない。双方30浬の強行軍の後、遭遇戦をしてみよう。僕は占い師ではないが、結果は分かるぞ」

アロイス「くっ……」

新城「ありがとう、アロイス教官。君のおかげでバーゼルラントの不合理が改めてよく分かった。もうたくさんだ。はやく消えろ」

アロイス「……この蛮族が」


冴香「!!!」


自らが尽くすと決めた直衛に対する、目に余る非礼。
冴香の手は無意識に短刀へと伸びる。それを猪口は肩に手を置いて制した。

猪口「副官殿」

冴香「猪口曹長……」

猪口「言葉は分かりませんが、あの類の人間があんな顔をすれば、どんなことを言ったのかは分かります」

冴香「ならば」

猪口「いけません。大隊長殿の立ち位置がさらに悪くなります

冴香「……そうですね。短慮でした。ありがとうございます」

猪口「いえいえ」

そう言って、猪口はにっこりと微笑んだ。
普段はいかつく、厳しい下士官であるのに、彼の表情は父性を大いに感じさせる優しいものであった――――。


 ◇

新城「最先任曹長」

猪口「はい」

新城「『シュウゴウ』だ」

猪口「『シュウゴウ』でありますか?」

新城「《皇国》の言葉では集合を意味する」

猪口「ははぁ」


その真意を汲み取り、猪口は大きく息を吸い込む。



猪口「『シュウゴウ』!!!」

 生徒「「「!?」」」


猪口が突然、馬鹿でかい声を張り上げる。
惚けていた生徒たちは稲妻に撃たれたように顔を勢いよく上げ、そして状況を察し走り出した。
集合までにかかった時間はごく僅かだった。


新城「まずは総評から。君たちは十分及第点に達している」

生徒たちの顔が一気に明るくなる。これで猛獣に齧られることはないと安堵しているのだ。

新城「中でも最も良かったのは、マルセル分隊だ」

マルセル「!!」

トマス「マ、マルセル! すごい!」

私語を発したトマスをギロリと睨みつける猪口。トマスはすぐに俯いてしまった。


新城「分隊員に目を配り、速度を調整しつつ、かつ全体の隊列から大きく逸脱していなかった。素晴らしい」

マルセル「……ありがとうございます」

新城「しかし、結果が良かっただけだ。君の行動は感心しない」

マルセル(なに? 俺が何をしたんだってんだ)

新城「なぜトマスから銃を奪った?」

トマス「そ、それは」

新城「君には聞いていない。答えろマルセル」


マルセル「……トマスが自分の分隊で一番弱っていました。分隊のペースを守るには、トマスを補助すべきと考えました」

新城「よろしい。その判断自体は間違ってはいない」

マルセル(まどろっこしい言い方しやがって……!)

新城「しかし、銃を取り上げるのは全くもって看過できるものではない。この行軍の状況設定を覚えているか?」

マルセル「……退却中で、敵影はなし。しかし伏撃または追撃の恐れ大」


そこまで言って、マルセルは気づいた。
自分はトマスから、身を守る最低限の武器を奪ってしまったことに。


新城「その通りだ。もし予期せぬ戦闘が発生した場合、己を守るのは銃と剣のみであることを忘れるな」

新城「そして、もう一つ」

マルセル「まだ、何か?」


マルセルの反抗的な瞳。それを直衛は楽しみながら弁を続ける。


新城「銃を放りなげれば、それはもう兵ではない。一度許せば、軍というものはすぐに、ただの亡者の列に成り下がる」

マルセル「どういうことでしょうか」

新城「銃を握っていれば、まだ兵隊でいられる。しかしそれを投げ出せば、もはや自分がそこにいる意味が見い出せない」

マルセル「……脱走!」

新城「そう。銃とは武器でもあり、重りでもある。兵を兵としてつなぎ止める為の」


そこまで言うと、直衛は一旦言葉を着る。
表情は硬いままだが、次に言葉を発したとき声色は明らかに変わっていた。



新城「その点以外では、君はよくやった」


短いながらそれは、恐らく直衛にできる最大限の賛辞であろう。
それを聞いたマルセルの表情がめまぐるしく変わる。
褒められて嬉しい、しかし教官なんかに褒められても嬉しくない、だが直衛に褒められると何かが違う……


今までの教官は、有無を言わさず自分に従わせるだけだった。でもこの人は……
俺に考えさせてくれた。ちゃんと正してくれた。それも論理的に。
バルツァー顧問以外に、こんな教官が――――
・・・
・・




新城「では今日の訓練終わり。個人副官」

冴香「はい」

新城「僕は教官部屋に戻る。猪口曹長と後からこい」

冴香「ですが……」

猪口「個人副官殿。生徒に最後の言葉をと、大隊長殿は言っておるのです」

冴香「私が?」

猪口「男ですからな。自分や大隊長殿のような人間に労をねぎらわれるよりも、副官殿のような方からの言葉の方が効きます」

冴香「は、はぁ……」


しばらく困惑している顔を浮かべる冴香だったが、意を決したように振り向く。
そこには整列した生徒たちが直立で冴香の言葉を待っていた。


冴香「皆さん、今日はお疲れ様でした。疲れを癒して、午後の座学に励んでくださいね」

 生徒「「「はい!!!!」」」

冴香「……」


生徒たちの表情が輝く。頬を紅潮させ、ただ憧れの眼差しを冴香に向けていた。

冴香(この子達は、私が両性具有者だと知ったらどんな顔をするのかしら……)



 ◇

ディーター「あの人、すっごく美人だよね」

パウル「あん? 誰のことだよ」

ディーター「ほら。シンジョー教官の」

パウル「ああ! アマギリさんか!」

バルツァー「確かになぁ」

パウル「顧問!? いつからそこに!?」

休み時間に話し込んでいたディーター・シュトルンツとパウル・ブライトナー。
両者ともに砲兵科の二年生である。
ディーターは愛嬌があり年上から可愛がられそうな見た目をしているが、それだけでなく成績も非常に優秀だ。
対してパウルも成績こそディーターには適わないが、ずる賢いことも思いつく冴えた頭を持っており、それは世渡りの上手さでもあった。
両者とも甲乙つけがたい、タイプの違った秀才である。



バルツァー「気にすんな。それで? どんな感じなんだよ」

ディーター「どんな感じって言われても……少なくとも、もう生徒の中では有名人ですよ」

パウル「騎兵科のボンボンの中には会って即日、交際を申し込んだ奴もいるらしいッス。愛人にならないかって」

バルツァー「貴族様の愛妾ってなぁ、出世なのか?」

ディーター「まぁアマギリさんも即答で断ったらしいけどね」

パウル「もしかして、顧問も?」

バルツァー「ああ。是非一度手合せお願いしたいくらいだ」

バルツァー(シンジョウが怖すぎて無理だけどな)


それに、こんな話もある。
軍国の人間から聞いた話だと、《コウコク》の将官にのみ許された(のになぜ少佐風情のシンジョウに着いているのかわからん)個人副官はみな、両性具有者であると。
正直、あれだけの美しさを見せられたあとでは信用できない。
しかしもし本当であれば――――。

いや、本当であったところでどうでもいい話ではある。
このまま生徒の士気高揚に大いに役立ってくれればそれでいいのだ。無理な詮索はしまい。


パウル「歩兵科はいいよなぁ。近くで見れて」

ディーター「しかも次は、渡河訓練らしいね」

バルツァー「渡河? まぁ訓練としてはありだが、ちと危険だな」

パウル「その辺は、シンジョー教官ってかなり用意周到ですよ。安全に配慮しまくってますし」

バルツァー(貴重な兵力を訓練で失いたくないってのは、当然だよな)


バルツァー「ん? しかしなんで渡河訓練だと嬉しいんだ?」

パウル「そりゃもちろん、アマギリさんも水につかるからでしょ」

バルツァー「なに!?」


ディーター「あんまりにもお粗末だったものだから、シンジョー教官がまず手本になるって言ってたらしいよ」

パウル「当然、アマギリさんも一緒ってワケです」


水に濡れた肢体。
あらわになる曲線。
色気を感じさせる湿った髪。
想像しただけで滾ってきやがる――――。


バルツァー「――――歩兵科の教練も見に行ってやらないとな」

ディーター「あ、顧問ずるい!」

パウル「歩兵科にシンジョー教官がいるんなら、必然的に顧問は砲兵科か騎兵科を見てるんじゃないんスか?」

バルツァー「んなこと知るか! 軍事顧問権限だ!」



バーゼルラントが。
バルツァーが。
そして新城直衛が。

まだ平和を謳歌していた、そんな平穏な士官学校の物語――――。




今日はこれにて終了。短くて申し訳ありません。
申し訳ないついでに、勝手にオリキャラを出してしまってゴメンなさい!でもこれから出番がまだあるので、いつまでも教官Aではアレですから……

次の更新も学園モノ?になります。その次あたりから、ストーリーが進み始めるのでゆっくりお待ちください。
疑問、批判、応援、どのようなレスでもいただければ励みになります!
特に疑問点は多くなる作品同士のクロスだと思うので、遠慮なさらず質問してください!(自分じゃみつけられないだけだったり)

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom