【ブラックブレット】安価で進むよどこまでも【安価】 (482)

・知識範囲は原作とアニメ
・プロモーターとイニシエーターを作成し、そのペア視点で進行
・進行は遅め

22時20分より始めれたらいいな

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408280524

20分頃予告通り始めたいです
お願いします

あえて男

神瀧 イザヤ(かんだき いざや)

2だな

こまけえこたぁ(ry

はよ次安価

1

ドラァ

ノア

妹とは限らんだろうが!(切迫

あ、ごめん3で

ζ*'ヮ')ζ<…冷静

ふぇぇ…
椿姫たん(名前可愛すぎワロタ)の性格安価を見直して欲しいよぉ…

1

ふぇぇ…幼女の安価は5だったんだよぉ

マジだわほじくり返してスマソ(cv.阿澄佳奈



プロローグ 敗戦


右を見ても、左を見ても。そこにあるのは地獄でしかなかった。
希望なんてどこにも存在しない。あるのは絶望だけ。
そんな地獄絵図と呼ぶに相応しい場所に少年――火村彰人は立っていた。

彰人「…………」

少年はこの地獄絵図にいるのが疲れ、いつしか少年も希望を捨てていた。
知り合いは誰もいない。周囲にいるのは全員が他人だった。

ほんの数分前までは確かに隣にいたはずなのに、この逃げ惑う人ごみに流されたのか――はたまた少年が流されたのか――気付けばいなかったのだ。
最初は心細さに涙していたが、それすらも枯れ果てていた。

空を見る。そこには昆虫なのか鳥なのかも判別が困難な化け物が空を飛んでいた。

彰人「……ガストレア」

現在世界中に出没していて、国土の八〇パーセントをこのガストレアが支配している。
当然その八〇パーセントの中には少年が住んでいた地域も入っていて……すでに少年には帰る場所すら無かった。

両親はどうなったのか知らないし、親類もおそらく助かってないだろう。
だいたい今少年は前いた仮設避難所を離れて両親と共に別の仮設避難所に向かうところだったのだ。親類についてなど知るわけがない。

そうして歩くことしばらく。気づけば少年は目的の仮設避難所にたどり着いていた。
それと同時に安心感からか、腹が鳴る音がした。もう限界だ。少年は力の限り足を早く動かして食料が配布されている場所に向かう。

「坊や、配給札はあるかな?」

優しそうな女性が少年にそう尋ねた。少年はその言葉の意味を理解するのに数秒使い、やがて絶句する。


――配給札が、無い。


思い返せば確か配給札は父親に預けていたのだった。無くすと大変だからと言われて家族全員の配給札を父親が管理していた。
その父親がいないということは――

彰人「すいません……配給札、お父さんが持ってたんですけど……今、お父さんとはぐれてて……」

すると女性は困ったような顔をして少年を見ると、やがて少年の肩に手を乗せて言った。

「ごめんね、配給札が無い人にはあげることが出来ないのよ。だから悪いけどお父さんと一緒に来てくれる?」

それは女性からしたら当然の言葉だった。配給札が無い以上、少年は不正に食料を得ようとしているかもしれない。そんな人間に食料を渡すことなど、出来るわけがない。
それから再三に渡ってなんとか食料を得ることが出来ないか話すが、結果は惨敗。少年は何も得ることが出来ないままこの場を離れるしかなかった。


少年は少し離れた建物の壁に背中を預けて座りこんでいた。お腹が空いた。単純にそんな感情だけが頭を支配していた。
前いた避難所がガストレアに襲われ、命からがら逃げてきた日数は二日。飲み食いをしていない時間帯もそれくらいと考えると、そろそろ限界が近かった。
誰かのところに行って食べ物を恵んでもらう、なんてことも出来なかった。否、出来るわけがない。
誰だって自分が一番可愛いのだ。こんな見ず知らずの少年に食べ物を分け与えることなど、するわけがない。

「……もしかして、彰人君?」

絶望に打ちひしがれ、これからどうしようと頭を悩ませていた彰人にそんな声がかけられる。
顔を上げるとそこにいたのは何度か顔を見たことのある女性だった。確か、母方の祖母だったか。

彰人「おばあ……ごほっ! ごほっ!」

もう長い間飲み食いをしていない少年は、言葉を発する途中で噎せてしまう。
祖母は困ったように微笑み、少年の前に膝を折って背中をさすってくれる。

「こんなになってまで……今までごめんなさいね」

別に謝ることではないはずなのに、祖母はそうして涙を流していた。
身体的疲労もそうだが、精神的疲労も限界に来ていた少年はそれだけのことで涙を流してしまう。
そんな少年に心を痛めた祖母もさらに涙を流し、少年を深く抱きしめた。


そうして少年、火村彰人は唯一残っていた親類に引き取られ事なきを得た。
二ヶ月後、日本は国民に事実上の敗北宣言をした。そして各地の『モノリス』を閉じて自動防御の構えを取る。

二○二一年。人類は負けたのだ。国土の大半を侵略され、さらに死亡者とその数十倍に及ぶ行方不明者をだして。

火村彰人が慕っていた、あの優しかった母親と厳しかった父親。
あの二人がどうなったのかは――十年経過した今も判明していない。

プロローグはここまで。以降本編となります

書き方はこんな感じになりますが、意見あればお願いします

あと戦闘についてですが、最終的な判断はこちらでさせてもらいますね。すいません

次回更新は明日か明後日。詳しい日時決まり次第連絡します
更新において不手際があったら指摘してください

以上、お疲れ様でした



プロローグ 敗戦


悲鳴に囲まれた仮設避難所に少年はいた。
ガストレアなる生物が突如現れ、世界は地獄絵図と化している。それは当然少年の住む地域も例外ではなく――こうして七歳になったばかりの少年は絶望に打ちひしがれていた。

お腹が空いた。
喉が渇いた。
足が疲れた。
言葉で表現したら些細な事柄でしかなかったけれど、それを七歳の少年が我慢できるわけもない。

「お腹減ったよぉ!」

「よしよし……もうすぐだからな」

だがそれはさらに年下の、少年の弟も同じで。隣で弟が泣きじゃくるのを父がなんとか宥めていた。
現在少年と父・弟は仮設テント近くにいた。母が一人で各自の食事を受け取りに行ったのだ。全員で行って体力を消耗するより、一人が行った方が良いという結論の末である。

だがおかしいのは、そう結論付けて母が配給所に行ってかれこれ数十分経っていることだ。
今自分達がいる仮設テントと配給所はそんなに遠くはない。歩いていたとしても往復五分と少し、といった距離のはず。

彰人「……」

空で爆撃音がする。それを合図にガストレアの不気味な鳴き声が遠くから聞こえてきた。

彰人「……俺、様子見てくるよ」

さすがにおかしいと思った彰人がそう言うと、父がぎょっと驚いたような顔をする。

「待て! 彰人が行くより俺が行った方が……!」

彰人「良いから!」

父の制止を振り切るようにして彰人は走り出す。
本当なら父に任せて自分はテントで弟の面倒を見ておくべきだったろう。だが、何故だか猛烈に嫌な予感がしたのだ。杞憂であればいいのだが。



否。それは最悪の光景で現実となる。

彰人「お母さん!」

そこにいたのはボロボロになった母の姿。彰人は急いで母のところに駆け寄る。

「ごめんね……お母さん、ドジしちゃった……」

見ると母の手元には配給所で貰ったであろう食料が入った袋が“一つだけ”あった。自分達家族は“四人”なのに。

彰人「…………」

なんとなく、察することが出来た。
こんなおかしなことになっているのだから、問題を起こす人間がいても不思議ではないだろう。それこそ、自分達に配布された食料だけじゃ不足と思って誰かから無理やり奪ったり。

すぐに周囲を見渡す。すると不自然に走っていく二人の人間の背中が見えた。

彰人「……とりあえず、怪我の治療をしてもらおうよ」

彰人は一先ずテントに戻り父に事情を話し、母を医者のいる場所に連れていく。
幸い母の怪我は大したことは無かったらしい。食事はとりあえず一人分を四人で分けて食べた。

味があるのか無いのかよくわからない食べ物だったはずなのに、この食事はやけにしょっぱく感じた。



彰人「…………」

テントに戻る最中、彰人はトイレに行くと言って家族と別行動を取っていた。
だが彰人はトイレなど眼中になく、ひたすらある人物を探していた。――いた。

視線の先にいるのは背丈こそ平均くらいの男二人。二人分とは思えない食事を広げ、せっせと食べていた。

そっと近くの建物の陰に入り、様子を窺う。二人は危険だから、どちらか片方が席を立ったら出るしかない。
そうして待つことしばし。不意に片方が席を立つ。トイレかはたまた別件か。そんなことは彰人の知るよしではない。

――今だ!

彰人「うああああああああああ!!」

「うおっ!? なんだこのガキ!」

今まで出したことが無いくらいの大声で男に飛びかかる。虚を突かれた男は一瞬怯んだ。
彰人は無我夢中で目の前にある食事に手を伸ばす。男に抵抗されても、無理にでも手を伸ばす。

「コイツもしかしてさっきの女のガキか……!?」

そう唸った男が近くにあったボトルのようなものを手に持つ。

――ゾクリ、と背筋が凍った。

心が荒みきった人々。問題を起こす人間がいても不思議は無いと彰人は思っていたのに。
肝心の“逆上した相手に殺される”可能性を思いつかなかったのだ。

「うおおおおおおおおお!!」

勢い良く振り払われ尻もちを付く彰人。その彰人目掛けて男がボトルを振り下ろす。
恐怖に何も出来なかった彰人はやがて目を瞑った。

火村彰人 十七歳 天童民間警備会社所属プロモーター
ペア 火村椿姫  IP序列990位
ステータス
体力:1500 筋力:320 防御:280 脚力:310
視力:300 感知:300 射撃:240 物理:340

攻撃方法
轆轤鹿伏鬼 威力200 近
焔火扇 威力250 近
隠禅・黒天風 威力200 近
ハンドガン 威力190 中 装弾15

特殊技
百載無窮の構え 威力0 特殊技
3ターンの間筋力と防御をそれぞれ150増加

スキル
天童式戦闘術六段
全部の天童式戦闘術の技の威力100を増加


火村椿姫 九歳 天童民間警備会所属イニシエーター モデル キャット
侵食率:20.00% ペア:火村彰人 IP序列990位
ステータス
体力:1300 筋力:220 防御:240 脚力:300(+150)
視力:300 感知:300 射撃:280 物理:240

所持武器
未定

スキル
暗視戦闘:夜間の戦闘時、視力が150増加
跳躍:常時脚力150増加



その日は嫌というほどに目覚めが悪かった。
背中がべっとりと寝汗で濡れていて、気持ちが悪い。

彰人「……ふぅ」

別に今回が初めて、というわけでもなかった俺はたいして気にしないようにして体を起こし隣を見る。
椿姫の姿は無かった。キッチンで朝食でも作ってくれているのだろうか……?

とにかく今俺がやるべきことは椿姫の様子を見ることでもなく、この気持ち悪い寝汗をどうにかすることだ。
俺はそう結論付けてシャワーを浴びることから始めた。


朝シャワーを浴び、俺は居間に座り朝食が並べられた食卓を眺める。対面には妹の椿姫の姿。

椿姫「兄さん、どうかしたの?」

ぼんやりと食卓を眺めていた俺の様子を不思議に思ったのか、椿姫がじっと俺を見つめてくる。
俺はそのまま視線を食卓から椿姫の頭の方に送り――


↓2
1椿姫に猫耳有り
2椿姫に猫耳無し



彰人「……耳、ゴミ付いてるぞ」

椿姫「へっ?」

俺がそう指摘すると椿姫は驚いたのか、その猫耳をピクンと跳ねさせ後ろを向いて猫耳の辺りを乱雑に払う。
身内の色眼鏡を除外しても椿姫はしっかりとした性格なのだが……朝だけは俺同様に弱い。きちんと身なりを整えたつもりなのかもしれないけど、やはり今日もボロが出ていた。

椿姫「や、やだ……ごめんなさい兄さん」

彰人「いや、気にしなくていいけど」

体に宿した猫の動物因子が強く作用し、椿姫の頭には猫耳が出ている。
本来はこんなことあまり無いのだが椿姫はその例外に該当してしまったらしく、頭部から猫耳を生やしているのだ。

普段は帽子を被ってそれを隠しているのだが、年中帽子を被っていては当然学校にも通えるわけもない。
なので椿姫は九歳という年齢にして友人らしい友人があまりいなかった。

彰人「……」

椿姫「兄さん?」

妹の置かれた境遇に不満を覚えながらも俺は並べられた食事を口に運ぶ。


↓1判定
コンマが高ければ高いほど椿姫の料理が美味しい
00~09 壊滅
10~39 ちょっと下手
40~69 普通
70~89 美味
90~99 プロ的



彰人「う、ううん……この味噌汁少ししょっぱすぎやしないか?」

椿姫「え? また味噌入れすぎちゃったのかしら……」

決して壊滅的ではない腕前にせよ、椿姫の料理は平均をやや下回る。
朝の弱い俺達は明確な食事当番を決めることはなく、先に起きた方が朝食を作るということになっているから文句など言えるわけもないのだが……。

彰人「まあ壊滅的なわけじゃないんだし気にすることはないだろう」

言いながら脳内に同じ学校に通う後輩にして職場の同僚でもある蓮太郎の顔がよぎる。
蓮太郎のイニシエーターである延珠は大層料理が苦手らしいから、それを考えれば文句など言えるわけがない。


そうして朝食を食べて俺は学校に行く準備をする。

彰人「じゃあ行ってくる。学校が終わったら連絡するから、事務所にはそれから来てくれ」

椿姫「わかってる」

彰人「もし外出することがあるなら帽子は忘れずに持っていけ。それから……」

不意に椿姫がクスリと笑った。

椿姫「わかってるって。行ってらっしゃい兄さん」

彰人「……ああ。行ってくる」

九歳の妹を家に残して学校に向かう。
いくら椿姫に学校に通えない事情があるとはいえ、俺はこの行為が嫌で仕方なかった。


↓1 登校中に遭遇する人物判定。下一桁
0・1 蓮太郎
2・3 木更
6・7 未織
8 蓮太郎

ドラァ



ぼんやりと頭を覚醒させながら道中一人で登校する。

ガストレアに人類が敗北し、世界が壊滅寸前まで追い詰められてから十年。モノリスという建造物に守られながらも東京エリアは着実に復興を遂げていた。
だが人々の心が豊かになっているのかどうかと問われたら、俺は迷いなく首を横に振るだろう。

もし人々の心が豊かになっているのなら九歳になる椿姫が学校に行けないわけがないし、その他のイニシエーター含む少女が『呪われた子供』などと言われるわけがない。

母さんはあの日死んだ。ガストレアにではなく、ガストレアによって心を荒ませた人間によって。

それなのに今俺が所属しているのは民警。イニシエーターと呼ばれる少女と組んでガストレアと戦い、人々を守る職業だ。
皮肉なものだなと苦笑する。ガストレアに身内を殺されたわけでもないのに。むしろ人間に身内を殺されたというのにその人間を守る仕事をしているなんて。

彰人「着いたか」

視線を前にやると勾田高校が見えてきた。
椿姫を家に残して俺だけ何をのうのうと学校に来ているのかと嫌に思いながら、俺は校門を潜る。



決して受けたくもない授業を受けて数時間。俺は椿姫に電話をしていた。

椿姫『今終わった?』

彰人「ああ。俺は少し終わるのが長引いたから、蓮太郎と木更はすでに事務所に行ってるだろうけどな」

三年にもなればいろいろと授業やその他のことで終わるのが長引いてしまうのだ。

彰人「俺はこれから事務所に行く。椿姫も、すぐに来れるか?」

椿姫『わかったわ。私も少ししたらすぐに行く』

そうして通話を終える俺と椿姫。
俺は厄介な生徒会長に捕まえられる前にそそくさと学校を出て事務所へと向かうのであった。



地の文が欲しいな(ボソッ



天童民間警備会社。俺と椿姫が所属している民警の事務所。
そこはあるビルの三階に位置していて、一階がゲイバー二階がキャバクラ。上の四階は闇金という事態になっている。

一度木更に「こんな立地じゃ客もあまり来ないし、場所変えたらどうだ?」と言ったところ「このお馬鹿! 本当に良い会社は立地条件なんて関係ないのよ!」と返ってきた。
言いたいことはわかるがこれじゃああまりにも条件が悪すぎるだろうとため息を吐いたのは当然だと言えよう。

「あっ! 椿姫ちゃんどう前の話考えてくれた~?」

彰人「兄の前で妹をキャバクラに引き入れようとするのやめてくれませんか。というか椿姫はまだ九歳だって言ったでしょう」

二階に差し掛かったところでキャバクラの店員に椿姫が声をかけられるがそれを適当にあしらう。

そもそも九歳の子供をキャバクラに引き入れようとするなんてなんて神経をしているのか。それとも、そういう需要が世にあるのか。

彰人「木更、来たぞ」

椿姫「木更さん、どうも」

揃って事務所の中に入る。てっきり蓮太郎と延珠もいるのかと思ったのだがそういうわけでもなく、今は木更一人のようだ。

木更「あら、彰人君に椿姫ちゃん」

十六歳という若さにしてこの民警の社長である天童木更。そして天童式抜刀術の免許皆伝という凄腕剣士。
そんな規格外の強さを持つ木更は社長用の椅子に座って俺と椿姫を出迎えてくれた。

彰人「木更一人か? 蓮太郎と延珠はどうした?」

木更「それなんだけどね。2人には先に仕事に行ってもらったわ」

椿姫「仕事ですか?」

俺と隣に座った椿姫がきょとんと首を傾げる。
この特殊すぎる立地条件に加えて天童民間警備会社の人数は総勢五名。木更は事務職がメインなので実際稼働かのうペアは二組。
民警の評判は所属ペアのIP序列で決まり、蓮太郎と延珠はお世辞にも高序列とは言えない。俺と椿姫もギリギリ1000番台を超えているとはいえ、総合バランスを考えると偏りすぎている。

木更「ここから少し離れたアパートでガストレアが出たみたいでね。今は里見君と延珠ちゃんが行ってるんだけど……」

彰人「俺と椿姫も行った方が良いのか?」

木更「私個人の意見を言うならね。延珠ちゃんはともかくお馬鹿な里見君が不安でならないの」

確かに、いろいろと不安があるのは納得だが……。


↓2
1現場に向かう
2断る



彰人「わかった。それじゃあ俺と椿姫も現場に行く」

木更「ええ。そうしてくれると助かるわ」

ただでさえ経済的に苦しいのに、蓮太郎のポカで報酬を貰えないなんて事態になっても困るからな。
そうして俺達は木更から件のアパートの場所を教えてもらい、準備をする。とは言っても俺の準備する物なんてハンドガンくらいしかないのだが。

木更「ああ、忘れるところだったわ。未織から椿姫ちゃんに武器渡すように頼まれていたの」

椿姫「あ。そうでしたか」

彰人「確か少し前に椿姫の銃が壊れたんだっけか?」

なのでウチのパトロン的存在の司馬工業。その令嬢である未織に代わりのものを手配してもらっていたんだったか。

木更「本当ならあんなのの頼みなんて聞かないんだけど、椿姫ちゃんの武器となったらね」

言いながら木更は立ち上がり、その武器を持ってきた。


↓2
1ハンドガン
2ショットガン
3アサルトライフル
4スナイパーライフル

これは2

モデル猫だしヒット&アウェイで援護はしてくれると思うが



それは散弾銃。つまりショットガンだった。

椿姫「よいしょっと……」

渡されたショットガンをカモフラージュ用のケースに入れて背負う。いくら民警の仕事とはいえ、ショットガンを持った子供がうろついていたら一般人に不安を抱かせるからだ。

木更「試射は……するまでもないわね」

椿姫「愚問ですね。問題ありません」

自信たっぷりに断言する椿姫。射撃の腕前に関しては俺より上だ。口出しする権利はない。

木更「じゃあ2人とも、里見君達のことよろしくね」

彰人「了解」

椿姫「行ってきます」

懐にハンドガンの感触を確かめ、俺と椿姫は現場へと向かうのだった。


↓1コンマ下一桁判定。遭遇する相手が決まります
0 燕尾服
1・2 延珠
6 燕尾服
7 延珠

マジでか(驚愕



走って目的のアパートに向かう最中、聞きなれた声がした。


「蓮太郎の薄情者めぇ~!!」


彰人「今のは……」

俺と椿姫が同時に立ち止まる。
間違いなく、蓮太郎のイニシエーターである延珠の声だった。

椿姫「……いたよ兄さん」

椿姫に示された方向を見ると、そこにはツインテールを揺らして憤怒の顔をしながら走っている延珠の背中が。

彰人「延珠一人なのか?」

椿姫「うーん……見たところそうね」

追いかけながら周囲を見るが、蓮太郎の姿は無い。どうしたのだろうか?

椿姫「とにかく、声をかけないと。延珠さーん!」

椿姫が大声を出して呼び掛けると、延珠は「む?」という声を出して立ち止まり振り返った。

延珠「おおっ! 誰かと思えば彰人と椿姫ではないか!」

彰人「お前、こんなところで何をしてるんだ?」

椿姫「確か蓮太郎さんと仕事に行ったんじゃ……?」

すると延珠は「よくぞ聞いてくれた!」と言って事の顛末を説明した。
とは言っても至極簡単なもので、移動に自転車を使っていたのだが蓮太郎の無茶な運転により延珠が道路に放り出され、蓮太郎がそのまま行ってしまったらしい。

彰人「……とすると、今現場には蓮太郎が一人でいるってことか?」

延珠「ん、そうなるのう」

言われて少し不安が大きくなる。
いくら蓮太郎とはいえ、ガストレア相手に後れを取ることはないはずだが……急いだ方が良さそうだ。

椿姫「とにかく、早く現場に行きましょう」

そうして3人で走ろうとしたとき、ふと背後から声をかけられた。


「ああ、ごめんよ……そこのキミたち、少し聞きたいんだけど……」

彰人「なんだ、すまないが先を急いで――」

その声の主の方に振り向いたとき、それは尋常ならざる光景だった。
四十歳そこそこだろうか。その男はジッと虚ろな目をして俺達三人を見ている。

椿姫「っ……」

延珠「お主……」

椿姫・延珠の2人がその姿を見て息を呑む。
男の体は血まみれで、腹部の他にも肩や喉に傷が出来ていた。普通なら病院に行って当然の傷だ。

すぐにこの男がどういう状況に陥っているのか察した。それは2人も同じようで、複雑そうな心情を視線に込めて男に送る。

「? どうしたんだ? 何をそんな目で……」

だが男は自分が置かれている状況を理解していないのか、そんなことを言う。
どうしたものだろうか……?


↓2
1自分の状況を理解するよう言い放つ
2椿姫に任せる
3延珠に任せる



彰人「……アンタ、自分の状況が理解できていないのか?」

「どういう……」

こんなこと、言いたくて言ってるわけではない。だがこれは民警に所属する以上義務だし、こんなことを十歳足らずの子供に言わせるなんてことはしたくなかった。

椿姫「兄さん……」

彰人「落ち着け。本人への告知は義務だし……こういうのは男のやることだ」

心配そうに見つめる椿姫にそうとだけ言って、俺は男に向き直る。

彰人「アンタ、まずは自分の姿を確認した方が良い。ただし、一度に全身を見るなんてことはするな。少しずつ確認していけ」

男は不思議そうにしながら、近くの建物のガラスで自分の姿を確認し――動きが止まった。ようやく状況を理解したのだろう。

「これは……」

彰人「アンタはガストレアに体液を注入された。間もなく、アンタは人間で無くなるだろう」

延珠「彰人! そんなあっさり……!」

淡々と事務的に言う俺に延珠が驚いたような声を出す。

「……そうか。そうだったのか……」

彰人「最期に言いたいことがあるなら、言ってくれ。アンタにも家族があるだろう」

「……なら、妻と子供に言っておいてくれないか。――今までゴメンって」

その言葉には俺だけでなく、椿姫と延珠も答えた。

彰人「承知した」

椿姫「わかりました」

延珠「……承った」

男からの礼は言われなかった。その前に、男がガストレア化したからだ。

人間の形から変異していく人間だったもの。それはやがてクモの形をするとジッとこちらを見てきた。
これが、ガストレア。モデルはスパイダーだろうか。

彰人「来るぞ。全員構えろ」

椿姫「わかったわ」

延珠「承知した」

そうしてそれぞれ構えると、ふと別方向から声がした。


蓮太郎「モデルスパイダー・ステージⅠを確認! これより交戦に入るっ!」

いいとこ取りしそうな勢いで現れたな

延珠「蓮太郎!」

それは延珠の相棒であるプロモーターの蓮太郎だった。隣には警察の姿もある。
延珠が蓮太郎の姿を確認して駆け寄る。が、それをガストレアが見逃すはずもなかった。

蓮太郎「延珠!」

延珠「へ?」

刹那。延珠の背中に放たれたガストレアの一撃が命中。延珠の小柄な体が吹っ飛び、近くの柵に激突してしまう。

椿姫「延珠さん!」

彰人「ちっ……」

いくら延珠とはいえ背後からの一撃が当たればただではすまないだろう。


↓2
1彰人が延珠の様子を見に行く
2椿姫が延珠の様子を見に行く
3蓮太郎が延珠の様子を見に行く

3だな

彰人「蓮太郎! 延珠を頼む!」

蓮太郎「……すまないっ!」

自分の相棒の様子が心配だったのだろう。蓮太郎は俺の言葉に感謝を示しながらガストレアの脇を走り抜ける。

ガストレアの鳴き声が響き、再びガストレアの足が蓮太郎に向かって放たれる。

彰人「させるか!」

それをハンドガンで発砲し、注意をこちらに向けさせる。
意図は成功し、ガストレアが俺と椿姫を敵として認識した。

彰人「やるぞ、椿姫」

椿姫「ええ。わかったわ」

俺は拳を。椿姫はショットガンを構える。

体力変更ー

ガストレアⅠ
体力1000→740


まず最初に動いたのは他でもない椿姫だった。
俺の後ろから手持ちのショットガンを構え、けたたましい音を鳴らして発砲していく。

「くっ……お前たち! 避難しろ!」

蓮太郎の隣にいた警察が仲間を遠くに行かせるよう指示を出す。流れ弾を心配してのことだろう。
だが生憎こちらは仮にも序列990位。ステージⅠのガストレア相手に流れ弾を出すことはしない。的確にガストレアの体だけを狙い撃つ。

彰人「椿姫、そのまま下がれ」

椿姫「わかった」

攻撃を中断し一旦下がる椿姫を見て俺はそのままガストレアに向き直る。


↓1行動安価
1轆轤鹿伏鬼 威力200 近
2焔火扇 威力250 近
3隠禅・黒天風 威力200 近
4ハンドガン 威力190 中 装弾15
5百載無窮の構え 威力0 特殊技
 3ターンの間筋力と防御をそれぞれ150増加

威力と筋力はどう違うんだ?

さらっと威力倍加に草

威力倍で1008

ガストレアⅠ
HP740→-268


彰人「天童式戦闘術、一の型八番」

スッと右拳を引きながらガストレアに向かう。ガストレアは足を連続で振るって抵抗するがその合間合間を掻い潜って俺はガストレアの弱点目がけて拳を放った。

彰人「――焔火扇!!」

バラニウム製のナックルに包まれた俺の拳がガストレアに激突する。
手ごたえはあった。ドガンという衝撃音がし、ガストレアの動きが止まる。

椿姫「ッ!!」

念のため椿姫がショットガンの銃口をガストレアに向けるがやがて撃破したことを確信すると息を吐き俺のところに来る。

椿姫「兄さん、さすがです」

彰人「ああ。そっちも、お疲れ」

俺と椿姫の手がパチンと音を鳴らして合わさった。


戦闘終了



蓮太郎「す、すげぇ……さすがは彰人さん」

延珠「うむ、妾達の出番が無かったではないか」

ガストレアが完全に沈黙したのを見て蓮太郎と延珠がそんなことを言っていた。

彰人「蓮太郎、延珠。大丈夫か?」

蓮太郎「あ、ああ。俺も延珠も大丈夫だ」

延珠「うむ! このとおり妾はへっちゃらだぞ!」

そうしてぴょんぴょんとジャンプして元気なのをアピールする延珠。それを見て椿姫がクスリと笑った。

椿姫「ふふ……延珠さんに蓮太郎さん、無事で良かったわ」

蓮太郎「ん、おう」

延珠「椿姫もだぞ!」

そうして勝利の余韻に浸ることしばし、警察の一人がこちらに歩み寄ってきた。

「あー、そっちの二人も民警なのか?」

彰人「そうだが、貴方は?」

「俺は多田島。警察だ」

蓮太郎「現場に来てた警察の一人だよ」

隣で蓮太郎がそう捕捉すると、多田島刑事がチラリと俺達四人を見る。

多田島「天童民間警備会社……名前は聞いたことないが、意外と腕は立つみたいだな」

椿姫「当然よ」

やけに自慢げに椿姫が胸を張って言う。よく見ると隣では延珠も同様のことをしていた。
そんな二人に多田島は毒気を抜かれたのか、やがて小さく笑った。

延珠「む! お主何がおかしいのだ!」

多田島「いやいや、なんでもない。失礼した」

蓮太郎「ところで三人とも。たぶんだけどガストレア化する前に被験者と会話したんじゃないのか?」

椿姫「……家族に謝っておいてくれと言っていました」

その言葉に蓮太郎や多田島刑事も沈痛な面持ちをする。

多田島「……了解した。被害者の家族には責任を持って伝えておこう」

彰人「すみませんが、そうしてください」

俺達は被害者の家族の居場所まで知らない。そういったことはどちらかと言うと警察の仕事だろう。

するとやがて延珠が蓮太郎の袖を引っ張った。

延珠「なあなあ。それよりもタイムセールの時間は良いのか?」

蓮太郎「へ? って、やべぇ!」

その言葉に蓮太郎が何かを思い出したように声を出し、さっさと走り去ろうとする。

多田島「お、おい。もう行くのか?」

蓮太郎「ああ。また仕事あったら回してくれよな」

多田島「……わかった。ところでそんなに急いで何か用事でもあるのか?」

すると蓮太郎はそんな疑問に簡単に一言だけ返事をした。

蓮太郎「モヤシが一袋六円なんだよ!」

多田島「は、はぁ?」

彰人「おい蓮太郎!?」

多田島刑事や俺の様子を気にせず蓮太郎と延珠が走り去る。

……さっきまで間違いなくガストレアという存在と命のやり取りをしていたというのに、なんだかやけにバカバカしくなってしまった。


↓2
1蓮太郎達を追いかける
2この場に留まる

一瞬蓮太郎達を追いかけようという考えが生まれるが、それをしたら本当に報酬を貰えなくなる可能性がある。
仕方なく俺と椿姫はこの場に留まり、多田島刑事に報酬の話をすることとした。

彰人「刑事、下世話な話で申し訳ないんだが報酬の話を」

多田島「本当に下世話すぎる話だなおい」

椿姫「仕方ないじゃない。ウチは貧乏会社なんだから」

椿姫、それは堂々と他人に言うことじゃない。

多田島「貧乏なのか?」

彰人「認めたくはありませんがね」

多田島「ハッハッハ! なるほど、それで会社の名前が聞いたことのないような名前だったわけだ!」

何がそんなに愉快なのだろうか。当人からしたらかなり深刻な問題だと言うのに。

多田島「だがそうだな……本部から言われている報酬の額は、だいたいこんなもんだ」


↓1コンマ下一桁判定
0・1 10万
2・3・4・5 20万
6・7 25万
8 35万
9 40万



ピン、と多田島刑事が指を1つ上げる。

……10万?

彰人「こっちは仮にも命かけてるって言うのにその対価が10万なんて少し安すぎやしませんか?」

多田島「そんなことを言われても俺としては知ったことではない。文句があるなら受け取らずに帰っても良いと思うが?」

彰人「そんなこと出来るわけが」

多田島「あの里見とかいうアンタの同僚は実際報酬を受け取らず帰ったみたいだが」

ぐ……それを言われると何も言い返せない。

椿姫「10万……まあ、無いよりはマシと考えれば……」

彰人「そう考えるか……」

極貧会社のウチとしては正直言うと報酬があるだけでもだいぶ違う。

そうして俺達は報酬10万円を受け取り、事務所へと帰るのであった。


・報酬10万円ゲット



木更「さて。里見君、キミまた報酬を貰わずにして現場を立ち去ったみたいね?」

事務所に帰った俺達を出迎えた木更は椅子に全員が座ったのを見てこう言った。

蓮太郎「えっ? そ、そんなことあるわけが……」

椿姫「私がしっかり報告しました」

蓮太郎「椿姫……!」

悔しげに蓮太郎が椿姫を見るが、正直言って自業自得でしかないので助け舟は出さない。

木更「まったく……延珠ちゃんも里見君に着いていったらしいし、彰人君達がいなかったらまた報酬貰い損ねたってことじゃない」

蓮太郎「うぐぐ……」

木更「まあいいわ。報酬はきちんと貰えてるし、今回は水に流してあげる。タイムセールで買ったっていうモヤシを一袋くれたらね」

彰人「そっちが目的だったんじゃないのか、木更」

蓮太郎も木更も、そして俺も決して裕福な暮らしをしているとは言いにくい。
と言っても俺達はそこそこ貯金もしているので二人ほど貧困しているわけでもないんだが。

木更「ところで聞きたいんだけど、今回撃破したガストレアって感染者だったのよね?」

彰人「そうだ。おそらく感染源はとっくに他社が見つけて始末してると思う」

蓮太郎「飛行するタイプならともかく今回はクモだからな。警報も出てないし、そう考えるのが妥当だろう」

だと言うのに木更は何がおかしいのか机にあるパソコンとにらめっこをしていた。

木更「でも、そんな情報まったく出てないのだけど」

蓮太郎「何?」

思わず蓮太郎に続くようにして俺もパソコン画面を見る。確かにそこにはそんな情報は全く出てなかった。

彰人「……これはおかしいな。おい、蓮太郎」

蓮太郎「ああ。これは専門家の意見を聞く必要がある。俺は先生のところに行くよ」

木更「なら私は同業者に探りを入れてみるわ。彰人君達は少し休んでなさい」

すかさず木更が俺達にそう言うが、確かに俺はともかく九歳の椿姫を何度も仕事させるのは忍びない。
それに椿姫には延珠と違って大きな弱点がある。俺だけ仕事をして椿姫に何かあるかもしれないし、そうするしかない、か。

彰人「わかった。そうするよ」

椿姫「すいません木更さん……」

すると木更は薄く笑って椿姫にこう言ってくれた。

木更「良いのよ。椿姫ちゃんたちは実質ウチの主力なんだし、逆に倒れられても困るからね」


時刻 夕方
二人の行動指定
↓2
1残って木更と会話
2蓮太郎を追って病院
3街に出て椿姫と交流
4訓練!



菫さんのところには蓮太郎が、その他同業者のところには木更が行くことになり、手持無沙汰になった俺と椿姫。

家に帰るのはまだ早いし、どうしたものかと悩んでいると椿姫が不意にこう言った。


椿姫『天誅ガールズの漫画買いにいきたいわ』


女児向けアニメである天誅ガールズとやらは元々延珠が好んで見ていたアニメなのだが、それが椿姫の方に広がったのはもう結構前の話。
正直俺や蓮太郎はいまいちその作品の面白みを見いだせないのだが、二人の楽しそうな顔を見ている「まあいいか」と思ってしまう。

それに椿姫があそこまで楽しそうに延珠と話をするのだから、俺が反対をする道理はない。

椿姫「兄さん早く早く」

彰人「わかってる。少し待ってくれ」

というわけで俺達が向かった先は街の中にある本屋。
椿姫は帽子が取れないようにしながらも、よほど楽しみなのかそれは見るだけでわかるようだった。

蓮太郎や木更には悪いが、こうやって民警の仕事から離れてたまに椿姫と出かけるのも良いと思える。
今日ばかりは二人に感謝をしておきたい。

彰人「それで? 今日は何冊買うんだ?」

椿姫「そんなに買わないってば」

と言いながら椿姫はスッと少し前の多田島刑事のように指を一本立てる。

……一冊か。それなら普通か。

椿姫「10冊は買いたいわ」

彰人「10冊……?」

一冊が六百円だとして、合計で六千円。

はっきり言って、一度に出すような金額ではない気がする。
せいぜい今回五冊次回五冊にするとか、いろいろあるだろうに。

椿姫「ダメ。延珠さんの話に追いつくにはこれくらいしないと」

彰人「延珠……」

聞くところによると延珠はDVD他漫画等も持っているようで。椿姫としては延珠との会話に追いつくためにこれくらいはしたいとのこと。

彰人「……わかった。ただし金が足りなくなったら素直に言えよ」

椿姫「ありがとう」

序列こそ990位だが、所属している会社が貧層なので当然俺達の手持ち金も蓮太郎や木更に比べて多少余裕がある程度だ。一度の買い物に六千円も費やしたら後の生活で支障が出てもおかしくはない。

……だというのに結局許してしまうあたり、俺も蓮太郎同様甘いところがあるのかもしれないな……。



そうして椿姫は天誅ガールズの漫画十冊(うち設定資料集やら四コマ漫画やらが三冊)買い、俺は近くの自販機でコーヒーを買って街中を適当にぶらつく。

椿姫「それで、延珠さんが言うには主人公の女の子たちのアクションシーンが凄いらしくて。最初は私も半信半疑だったんだけどいつしか凄く熱中してて」

彰人「うん、そうか」

道中の会話は椿姫が言う天誅ガールズの話を俺が聞くという形になる。
あまりよくわからないのが本音なのだが、そんな俺の心中に気付かないほど熱心に話をする椿姫を見るとなんだか微笑ましく思えてくるから不思議だ。

そうして歩くことしばし――向かい側から歩いてきた男と椿姫がぶつかった。

椿姫「あっ……」

ドサリと椿姫が持っていた本の入った袋が落ちる。

「ああ? おいオメェどこ見てやがる……」

そんな男が視線を下、椿姫の方に向ける。
そこまでは良い。問題は、椿姫の被っていた帽子が取れているということだ。

彰人「椿姫!」

椿姫「え? って、あっ!」

俺の言葉で状況を察した椿姫が地面に落ちた帽子を取り頭に被り直す。
男は幸い椿姫の猫耳を正確に見ることが出来なかったのか、椿姫の頭のところをジロジロと見ていた。

「おっかしぃな……今猫の耳みてぇなのが見えた気がしたんだが……」

椿姫「……」

いくら赤い瞳を隠していても、あの大きな耳は完全に隠しきれない。

……どうする? このままにしておいたら椿姫がまた酷いことを言われるかもしれない。


↓2
1穏便に話を済ませようとする
2近くの路地裏に連れ込む
3下手に出て誤魔化そうとする
4その他

なおコンマ下一桁が1なら蓮太郎が、9なら仮面さんが出現。その路線で進行



ここで変に力技で追い払っても問題になるし、だからといって下手に出るのは俺も避けたい。
仕方ない、なんとか穏便に済ませるか。

彰人「よそ見をしていた、すまない」

「あ? アンタ誰よ」

彰人「俺はコイツの兄だ。ほら、お前も謝れ」

椿姫「……すいませんでした」

帽子を被ったまま、頭を下げる。

彰人「俺からも謝らせてくれ、すまなかった」

「あークソッ! わーったわーったから頭下げるのやめろよ俺が悪者みてぇじゃねぇか!」

そこそこに人通りもあるこの道で九歳の子供に頭を下げられたら居心地が悪いだろう。
男はそう言って最後に舌打ちをし、踵を返して立ち去って行った。



椿姫「……ごめんなさい兄さん。私がよそ見をしてたから」

彰人「気にするな。ああいうのを相手に下手に食いかかろうとすると面倒なことになる。頭でも下げてさっさと帰ってもらうのが常套手段だ」

椿姫「でも、私が悪いのに兄さんまで頭を下げるようなことになって……」

彰人「それも、気にするな」

そもそも、俺だって今のは少し怒りを覚えた。

自分勝手な怒りだが、椿姫との話を中断させられたんだ。
せっかくあれだけ楽しそうにしていたというのに、それを……!

椿姫「兄さん?」

ふと椿姫が俺の顔を覗きこむようにして見ていた。



少し、冷静になろう。

いくらなんでもこの怒りは自分勝手だ。あっちだってわざとぶつかってきたわけでもないだろうしな。

彰人「……なんでもない。ほら、さっさと帰って夕食にしよう。夜は俺が作るからな」

椿姫「兄さんが作ってくれるの?」

彰人「今朝は椿姫が作っただろ。なら夜は俺が担当だ」

椿姫「ありがとう」

今に始まったことじゃないのに、椿姫は俺が食事を作るとなると決まって礼を言う。

俺はその礼を受け取り、足を自宅へと向けるのであった。


↓1コンマ判定。彰人の料理はどれくらい?
00~04 壊滅
05~39 ちょっと下手
40~69 普通
70~89 美味
90~99 プロ



彰人「いただきます」

椿姫「いただきます」

夜。机に夕食を並べて俺と椿姫は揃ってそう口にした。
今日はなんとなく中華を意識してみた。回鍋肉に麻婆豆腐。量は少なめではあるが、まあまあだと思っている。

椿姫「……うん、とっても美味しい」

一口回鍋肉を食べた椿姫がそう言う。

彰人「とっても、は大げさだな。椿姫基準で考えると俺の方が上かもしれないが、これでも蓮太郎には負ける」

蓮太郎は同居人の延珠が壊滅的に料理下手なので、家事を一手に引き受けている。なので料理も当然上手い。
だというのに椿姫は微笑み、言ってくる。

椿姫「蓮太郎さんの料理は食べたことあるけど、それでも私にはこの料理の方が美味しく感じるわ。……兄さんが作ってくれたから」

彰人「……兄冥利に尽きるな。ありがとう」

まったく、朝弱く料理も少し下手と完璧超人ではないにせよ随分と良い妹を持ったものだ。



夕食を終え、食器洗いも終わり風呂も出てそこそこ遅い時間帯。
そろそろ寝ないと明日に支障が出るので布団を用意する。

彰人「……いい加減了承を得る前に入ってきてもいいぞ」

椿姫「それじゃあ……」

俺の言葉に椿姫がそろりそろりと隣に入ってくる。

椿姫は夜一人で眠るのがまだ怖く、こうやって俺の布団に入って寝ようとする。

最初は了承を得てから入ってきていたのだが、いい加減それもメンドクサイので事前に先手を打ったのだ。

彰人「……」

椿姫「兄さん、その……光希さんから連絡とか来てないの?」

隣から遠慮がちに椿姫が尋ねる。

火村光希。俺の実の弟で、今は離れた場所で父さんと暮らしている。

いや、正確に言うなら俺が離れた場所で暮らしているのか。

彰人「ああ。かれこれ長い間連絡は来てないな」

俺が天童の家で天道流戦闘術を習うと決め、家を追い出されたのが一年以上前。

そして天童流戦闘術五段になったところで椿姫と出会ったのが、そこから少し後か。

思い返せば、かなりの時間が経っているなと改めて実感する。

椿姫「……兄さん、寂しくない?」

椿姫なりに心配してくれているのか、震える声でそう尋ねてくる。

彰人「椿姫が気にすることはない。これは俺と父さんたちの問題だ」

椿姫「でも……」

彰人「それに、椿姫がいる。寂しいわけがないさ」

すると椿姫は驚いたように口を開けると、そのまま嬉しそうに笑ってすり寄ってきた。

彰人「おい……」

椿姫「ごめんなさい。でも、そう言ってくれるのが嬉しくて」

彰人「……寝苦しくないなら、好きにしてくれ」

まったく、と呆れざるを得ない。
どこまでも自分より俺を優先する妹。

家族と連絡をしていない俺を見て椿姫は寂しいかと尋ねた。
でも俺より椿姫の方が寂しい思いをしているに決まっている。

学校に行くこともできず、外に出るときはいつも帽子を被る。
昼は俺は学校に行っていて、一人ぼっち。

何を食べているのかはわからないが、一人で昼飯を食べる椿姫が容易に想像できて俺は胸が苦しくなった。

今は延珠や蓮太郎達が友人として接してくれているが、せめてもう一人……それも、椿姫のことをよくわかってくれるような同年代の子供がいたら。

そうすれば、椿姫も少しは寂しい思いをせずに済むんじゃないのか……?


・一日目 終了

――二日目。

彰人「じゃあ、食べるぞ」

朝。昨日と違い俺が先に起きたので朝食を作り、食卓に並べる。
そして椿姫を起こし二人食卓に着く。

椿姫「いただきます」

彰人「いただきます」

今日も昨日と同じで俺は学校、椿姫は自宅待機となる。
本来なら俺も学校に行かず一緒にいてやりたいのだが、最初それを椿姫に言ったら断固として反対された。


椿姫『私のことはいいから、兄さんは学校に行って。そうした方が将来的に良いんでしょう?』


至極正論なのでこちらが反論するわけもできなかった。本当に椿姫には頭が下がる。

椿姫「今日は仕事、あるのかしら」

彰人「どうだろうな。そもそも、民警や警察なんて組織が忙しいってことは可能な限り無いほうが良い」

民警が忙しいということはそれだけガストレアが出没しているということ。これは喜ばしいことではない。

何気なくテレビに視線を移すと、そこでは東京エリア第一区にある聖居の様子が映されていた。

テレビに映るのはこの東京エリアを統治する聖子様。そしてそのすぐ後ろには天童菊之丞――天童家に世話になった俺や蓮太郎他、木更と並々ならぬ縁を持つ男がいた。

椿姫「聖天子様」

彰人「そして、菊之丞さんか」

『呪われた子ども』に対してきちんと人間と認識している聖天子様。
『呪われた子ども』に対して差別意識を持つ菊之丞さん。

正反対の思考を持つであろう二人がこうして同じ政治を行っている光景は、なんというか俺には理解ができなかった。

菊之丞さんに関してはその差別意識を持っているところだけがどうにも嫌だった。他の面ではいろいろと感謝もしている。

彰人「……国を政治する側は大変だな」

テレビを見ながら言い、画面に表示されている時間を見て気付く。そろそろ良い頃合いか。



彰人「それじゃあ行ってくる。椿姫、悪いけど留守番は頼んだぞ」

椿姫「行ってらっしゃい兄さん」

食器を流しに運んで水を張っておく。朝食後の片づけは時間の関係上当番関係なく椿姫が担当している。

そうして必要最低限の用意だけが入った鞄を持って玄関へ。椿姫も見送りのため来てくれる。

彰人「……」

椿姫「兄さん?」

ふと俺が玄関で立ち止まったのを見て椿姫が首を傾げる。

が、やがてその心中を見抜いたのか椿姫は笑ってこんなことを言ってきた。

椿姫「私のことは気にしないで。言ったでしょ? 私のことで兄さんの将来が疎かになるのは嫌だって」

確かに勉学も大事だろう。将来を良くするためには学歴だって必要だ。

彰人「……悪い」

椿姫「良いの。気をつけてね」

最後にそう言って椿姫は手を振る。

俺はそんな椿姫に何も言うことが出来ず、扉を開け学校へと向かうのであった。


↓1コンマ下一桁判定。登校中の遭遇者
0・1・2 未織
3・4 蓮太郎
5 木更
9 仮面

そこそこに余裕のある時間帯。俺が学校に向けて歩いていると後ろから自転車の走る音。

蓮太郎「お、彰人さん」

彰人「蓮太郎か」

それは蓮太郎だった。朝こうして会うのはなかなか無いが、今日は偶然会えたようだ。

彰人「延珠を学校に送ってたのか」

蓮太郎「ま、そんなところだな」

蓮太郎は本来、学校なんて行きたくないというスタンスを取っている。だが蓮太郎には学校に行かなければならない理由があった。

天童民間警備会社に武器を支援している後援者的存在である司馬工業。
当然武器を支援してもらうにも金がいるのだが、天童民間警備会社にそんな予算は無い。

そこで出されたのが今目の前にいる男。
司馬工業の令嬢――未織に条件をいろいろ提示され、その条件を呑む代わりに武器提供をするということになっている。

だから蓮太郎も俺とは状況こそ違えど、よほどの理由がない限りは学校に来なければならなかった。

蓮太郎「椿姫は家だったっけ?」

彰人「ああ。あの状態じゃ学校に通うことなんてできないからな」

延珠や他の子供なら赤い瞳を隠しさえすれば正体がバレることはない。

だが椿姫のあの耳はそういったところで大きなハンデとなっていた。

蓮太郎「……まあ、なんだ。俺にはあんま口出しする権利はないけどよ。彰人さんが気に病むことじゃないって」

彰人「……お前にまでそう言われるか」

蓮太郎「つーか、俺だけじゃなくて木更さんや延珠も同じこと思ってると思うぜ。彰人さん、良くも悪くも椿姫が第一だから」

そういうことはないと声を大にして言いたかったが、言われてみれば確かにそう思われても不思議じゃないかもしれない。

蓮太郎「ああ、あと先生もな。先生曰く俺はロリコンで彰人さんはシスコンなんだとよ」

彰人「地下室の女王にそんなこと言われたくはないな」

少し離れた場所にある大学病院にいるガストレア研究者の顔を思い浮かべ、俺はため息を吐いた。


↓2
1延珠の方は最近どうだ?
2昨日菫さんと会ってどうだった?
3昨日の事件で現場に行ったみたいだけど何か変わったことはなかったか?
4その他

そういえば、と俺は気になっていたことを思い出し蓮太郎に尋ねる。

彰人「お前確か昨日の事件では現場に行ってたんだよな?」

蓮太郎「あ、ああ」

道中で延珠は自転車から落とされていたから、実質現場に行ったのは蓮太郎だけのはず。

彰人「なら、その現場で何か変わったことはなかったか?」

思えば昨日事務所に帰ってから蓮太郎にその報告を受けていなかった。なので俺は今さらながらそれを尋ねる。

蓮太郎「…………」

彰人「蓮太郎?」

だというのに、蓮太郎は何やら言いにくそうに表情を変える。
何かあったのだろうか?

彰人「何かあったのなら、言ってくれないか」

蓮太郎「……そ、そうだな」

すると蓮太郎は言いにくそうにしながらも、声を小さくしてその話をしてくれた。

簡単に言うと、こういうことらしい。

現場には仮面の男が一人いて、警察の人間を殺していた。
そして戦闘になったのだが相手の実力はかなり高く、一撃与えたもののそのまま逃げられたとのこと。

その男の目的は不明。何故事件現場にいたのかもわからないらしい。

彰人「……ふむ。なるほど、怪しいな」

序列が低いとはいえ蓮太郎は民警のプロモーターで、天道流戦闘術を使う。当然一般の人間相手なら遅れを取ることなんて万が一にもない。
だというのにその男は蓮太郎に一撃貰っただけ。十中八九一般人ではない。

蓮太郎「男はガストレアを追っていたが、同業者ではないと言っていた」

彰人「……ますます謎だ」

同業者でもないのに、どうしてガストレアを追っていた? しかも警官隊を殺しているところを見ると、そこまでする理由が男にはあったと思われる。

何故、どうして。そういった疑念が渦巻く中、ふと学校のチャイムが聞こえてきた。

……遅刻だ。

※指摘ありがとうございます


蓮太郎「げっ、遅刻だ」

彰人「長々としゃべりすぎたな。蓮太郎は自転車を置きに行くんだろう? 俺は先に行くぞ」

蓮太郎「ああ。悪い彰人さん、三年なのに遅刻なんてしたらマズイんじゃないのか?」

彰人「心配するな。それより、そっちも早く自分の教室に行けよ」

俺はともかくとして蓮太郎は日々の授業もまともに受けてないと聞く。
蓮太郎の意思はどうあれ、学校に来ている以上そんなことをして面倒なことになるのはやめておいた方が良いだろう。

そうして俺はそのまま校舎へ。蓮太郎は自転車置き場へと向かうのであった。



四時限目までの授業を可もなく不可もなくといった感じに過ごしていく。
すると四時限目が終わって少しした後で俺の携帯が着信をした。相手は――木更である。

彰人「……もしもし。どうかしたか」

木更『彰人君、悪いけど仕事の話よ』

彰人「また唐突だな。……と言いたいが昨日のアレがある以上そうなるのも当然か」

木更『理解が早くて助かるわ。今から防衛省に行くわよ』

は? 今から、防衛省に?

いったい何を言っているのかと尋ねる前に、ふと教室の扉のところに見慣れた姿が二つ。間違えるわけもなく、木更と蓮太郎だった。
いや、よく見るとその後ろに椿姫の姿もある。

「うわっ! あれ、どっかで見たことのある制服だと思ったらミワ女のじゃね?」

「後ろの女の子も可愛い!」

「つーかあの隣の男は誰? 召使いか何か?」

……同じ学校の後輩だよと内心でフォローだけしておき、俺は仕方なくそちらに向かう。

木更の通っているミワ女は聖天子様も在籍している超有名校。そんな学校の制服を着ている人間をいつまでもこんなところに置いて注目を浴びるわけにもいかない。

彰人「椿姫まで連れてくるなんて何してるんだ」

木更「仕方ないじゃない。今回のことを連絡したら『私も行きます』って言って聞かないんだから」

椿姫「……すいません」

帽子を深く被って謝罪をする椿姫。

別に怒ってるわけじゃない俺は苦笑だけしてそれを示すと、木更と蓮太郎に向き直る。

彰人「で、今から防衛省に行くんだな?」

蓮太郎「ああ。校門前にリムジンがあるから、たぶんそれで……」

木更「? 何を言ってるのかしら里見君は」

蓮太郎「え?」

どういうことだ? 二人の間でいまいち会話がかみ合っていないが……。

椿姫「確か、リムジンは電話で呼べるけど乗ると料金が発生します」

木更「そういうことよ!」

蓮太郎「何がそういうことなんだよ……?」

思わず頭を抱える蓮太郎。

彰人「だが、木更。金がかかるからリムジンに乗らないのなら、どうやって防衛省まで行くんだ? まさか徒歩ってわけでもないだろう」

椿姫「……徒歩……」

徒歩という言葉を聞いて椿姫が嫌そうな顔をする。
だがそんな椿姫とは反対に、極上の笑みを浮かべて木更は蓮太郎と俺を見た。

……嫌な予感がする。

木更「里見君に彰人君、よろしくねっ」

天童民警警備会社社長にタカられる社員二人の図。

一刻も早く今の貧乏会社からのし上がりたいと思うしかない俺と蓮太郎であった。


そうして俺と蓮太郎が割り勘して全員の電車代を出し、一路防衛省へ。
入り口で名前を言うと係の人間が対応してくれ、そのまま第一会議室まで足を進める。

木更の代わりに蓮太郎がその扉を開けると、中は予想していなかった光景が広がっていた。

蓮太郎「……これは」

木更「ここまで同業者が来てるとは思ってなかったわね」

椿姫「……」

中にいたのは同じ民警の人間と思われるペアと社長格の人間。あとは防衛省の人間が数名だった。

その雰囲気は重苦しく、椿姫は圧倒されたのか俺の袖を握る。

……怖いなら無理して来る必要もないだろうに。

将監「おいおい、なんだよ最近の民警はガキまでいんのか? 場所間違えてるんじゃねぇのか?」

すると近くからチンピラのような声がかけられた。

見るとそこには俺達よりかなり体格のいい男。背にはこれまた大きな大剣。

そして何より特徴的な口元のフェイススカーフ。間違いなく、伊熊将監だろう。IP序列1000番台のプロモーター。

蓮太郎「あ? なんだアンタ」

木更を守るようにして蓮太郎が間に割り込む。
この伊熊将監という男、確かかなり喧嘩早いと聞く。さすがに序列1000番台の蓮太郎がどうこうできる相手でもないだろうが、はたして……。


↓2
1助け船を出す
2見守る

彰人「蓮太郎、防衛省でもめ事を起こすのはやめろ」

仕方なく問題が起こる前に俺もそれに加わる。
すると伊熊将監は視線を蓮太郎から俺に向け、そしてそのまま俺を値踏みするように見ていく。

将監「ほう……オメェ、ガキのくせになかなかやりそうじゃねぇか」

彰人「序列1000番台のアンタにそう言われるとはな」

将監「なんだ、オメェ俺のこと知ってるのか?」

彰人「序列1000番台の人間はそれなりに有名になってもおかしくないと思うが」

民警の評判は抱えてるペアの序列とこなした事件の数で決まる。
この伊熊将監のいる会社はペアの序列とこなした事件の数両方が申し分なく、当然伊熊将監自体の名前も有名だった。

それに比べてこっちは弱小企業。いくら序列が高くても、そもそも回される仕事が少ない以上ペアの知名度は低くなる。

将監「ハハッ! オメェはこっちのガキと違ってしっかり身の程を弁えてやがるな!」

目の前の男もまさか俺が990位とは思っていないのか、そういって笑う。
会社の知名度が低い以上、そこに所属するペアの知名度も高くなるわけがないのだが、このままバカにされるのも問題か……?


↓2
1そっちは身の程を弁えれないようだな(彰人達の序列が知られる)
2ここで問題を起こしたらそっちだって困るんじゃないのか?
3同じ民警同士、この場は退くことにしないか?
4その他

彰人「ここで問題を起こしたらそっちだって困るんじゃないのか? そっちの人、アンタの社長だろう?」

さっきからジッとこちらを見ている社長格の人間を示す。

「……将監。こんなところで問題を起こすな。その身勝手な行為で会社の信用が失われるんだ」

将監「……ちっ」

さすがに社長にそう言われては反論なんて出来るわけもなく、伊熊将監は舌打ちをして引き下がる。

「すまないね。迷惑をかけた」

蓮太郎「……飼い犬の躾くらいやっておけよな」

彰人「こちらは気にしてませんので」

未だ不機嫌な蓮太郎がそれ以上を言う前にそう切り上げて俺達は指定された席に向かう。

椿姫「……末席ですね」

木更「仕方ないわ。ウチは会社自体の知名度で言えば底辺ランクだから。まあ、そのおかげで彰人君達の序列を知らない人達もいるみたいだけど」

席に座った木更が言いながら先ほどの伊熊将監に視線を送り、そのまま蓮太郎へと移す。

木更「それはそうと里見君。あのまま彰人君が助けに入ってくれなかったら問題が起きていたわよ。これ以上ウチの信用を落とすことはしないでくれるかしら?」

蓮太郎「うっ……」

蓮太郎が木更にありがたい説教をされてる隣で俺と椿姫はグルリと部屋の中を見回す。



……なるほど。さっきの伊熊将監と同等、もしくはそれ以上のペアも何組かいるみたいだ。
今この場には東京エリアの民警、その中でも極めて上位のペアがいると見て間違いない。

椿姫「……兄さん、あれ」

彰人「ん?」

椿姫に促され、俺は部屋の一角にいるペアを見る。

あれは――


↓2
1将監の隣に待機しているイニシエーター
2金髪の男の隣に待機しているイニシエーター



先ほどの伊熊将監の隣に待機しているイニシエーターか。背丈は椿姫より僅かに大きいくらい、か?

椿姫「確か、千寿夏世さんだったはず」

彰人「ああ、そういえばそんな名前だったな」

するとあちらのイニシエーター――千寿もこちらに気付いたのか顔を向けてくる。
そして手で腹を押さえ、悲しげな顔をする。

彰人「腹痛か……?」

だがよく見るとそれは腹痛というよりも空腹を伝えるジェスチャーのように見えた。

ガクリと肩を落とし、隣の椿姫を見る。

椿姫「私も、お腹すきました……と」

彰人「おい」

見ると椿姫も同様のジェスチャーをして千寿と意思疎通をしていた。
学校にこそ通ってないとはいえ基本的にコミュニケーション能力はある椿姫だが、こんなことをする子だったろうか……?

「では時間だ。これより政府から諸君ら民警に対しての依頼を説明したいと思う」

そうやって九歳児の子供二人がジェスチャーをしていると、前方からそんな声が。見るとこの防衛省の人間と思わしき男が部屋に入ってきていた。

彰人「ほら椿姫。いい加減身振り手振りのジェスチャーをするのはやめろ。腹が減ったのなら後で何か食べさせてやるから」

「この依頼は説明をした後で拒否をすることが出来ない。なので辞退をするなら今のうちだが、どうだね?」

男の言葉に席を立つ人間は誰もいなかった。

……それはもう依頼ではなく任務ではないのか、と言いたいことはあるが木更が席を立たない以上こちらも下手なことは言えなかった。

「よろしい。では説明はこの方にしてもらう」

言って男が下がり、前に設置されていたパネルに映像が映される。

聖天子『ごきげんよう』

彰人「なっ……!?」

その意外な人物の顔に俺もさすがに驚くしかなかった。

聖天子様。そしてその背後に位置する菊之丞さん。

木更「…………」

一瞬画面の菊之丞さんと木更の視線が交差する。
二人の確執を知っている俺や蓮太郎からしたら、もう生きた心地がしないくらいだった。

……そしてこの二人の権力者の登場に、何やら言い知れぬ不安が押し寄せているのも事実だったのだが。

聖天子『では、今から依頼の説明をさせていただきます』

不安が募る俺や他の面々の心中を察しているのか定かではないが、画面の聖天子様が話をする。

聖天子『まず、昨日東京エリアに侵入した感染源ガストレアの排除。そしてそのガストレアの中に取り込まれたと思われるケースを無傷で回収してください』

やはりその話かと思うと同時に、気になる単語も出てきた。

――ケースだって?

「すいません、そのガストレアについての情報は政府は何か持っていないんでしょうか?」

聖天子『はい。残念ながら』

木更「では私からも質問を」

先ほどの伊熊将監がいる民警の社長が質問をすると、そのまま木更が挙手をする。

聖天子『あら、あなたは?』

木更「天童民間警備会社社長、天童木更です」

聖天子『……なるほど。噂は聞いていますよ』

ちらりと背後に位置する菊之丞さんを見て、聖天子様は続ける。

聖天子『それで、質問とは?』

木更「単純な話です。ケースの中身を教えてくれませんか?」

一瞬、部屋全体がざわめく。

確かにそれについては知りたかったので、この木更の質問は全員の気持ちを代弁したものとなる。

聖天子『おかしなことを聞きますね。当然それはプライバシーに関わることですので、お教えできません』

木更「納得が行きません。おそらくその感染源ガストレアは昨日の感染者と同じ遺伝、モデルはスパイダーのはず。それなら我が社のプロモーター一人でも撃退は可能です」

実際あの感染者を撃退したのは俺と椿姫だ。間違ってはいない。

木更「ウチのプロモーターでも撃退が出来るようなガストレア相手に政府が破格の報酬をつけてまでケースを取り戻したいと思う。それなら相応のリスクがそこにあるのでは?」

聖天子『それは知る必要のないことでは?』

木更「ですが、あるかもしれないリスクにウチの社員を危険に放り込むようなことはできません。場合によっては辞退をします」

聖天子『今辞退をしたら相応のペナルティがありますが』

木更「覚悟の上です」

そうして木更と聖天子様がジッと睨みあう。
俺や蓮太郎としてはすでに生きた心地がしなかった。伊熊将監に立ち向かおうとして蓮太郎を説教したくせに、何故木更は聖天子様に喧嘩を売るようなことをしているのだろう……。

その瞬間、部屋の中に場違いなほど大きな笑い声が響いた。

椿姫「な、なに……?」

隣に立つ椿姫が再び俺の袖を掴む。

聖天子『誰です?』

影胤「私だ」

左方、唯一空いていた空席から声がして、そちらを見る。

するとそこにはいつの間にか仮面を被った赤い燕尾服の男が両足を机に乗せるようにして座っていた。

いつの間にあんなところに、と思うがその前にふとその特徴的な仮面と燕尾服に目が行った。あれは、今朝蓮太郎の話に出てきた男ではないか?

蓮太郎「な……!?」

ふと蓮太郎を見ると、他の人間以上にその男の姿に驚いていた。

……やはりか。

書くなと言ったのに

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汚物は消毒なの~

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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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キュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラ


チビタン王国軍のご視察なの~
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  [二二[====() ̄ .|==()              ⊂ ⊂ )  ∧_∧ (    )
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汚物は消毒なの~

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   |  ( .| ─⌒)ギラッ          人ノ゙ ⌒ヽ         彡ミ彡)ミ彡)ミ彡)'
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  [二二[====(:::゙:゙                    '"゙∀`) >>    ミ彡)彡''" モギャァァ ( ⊃ ⊃

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                                "⌒''~"      し(__)


チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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キュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラ


チビタン王国軍のご視察なの~
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  [二二[====() ̄ .|==()              ⊂ ⊂ )  ∧_∧ (    )
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汚物は消毒なの~

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   |  ( .| ─⌒)ギラッ          人ノ゙ ⌒ヽ         彡ミ彡)ミ彡)ミ彡)'
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  [二二[====(:::゙:゙                    '"゙∀`) >>    ミ彡)彡''" モギャァァ ( ⊃ ⊃

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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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キュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラ


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(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408280524/)

チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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   |  ( .| ─⌒)ギラッ          人ノ゙ ⌒ヽ         彡ミ彡)ミ彡)ミ彡)'
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  [二二[====(:::゙:゙                    '"゙∀`) >>    ミ彡)彡''" モギャァァ ( ⊃ ⊃

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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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キュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラ


チビタン王国軍のご視察なの~
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  [二二[====() ̄ .|==()              ⊂ ⊂ )  ∧_∧ (    )
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汚物は消毒なの~

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   |  ( .| ─⌒)ギラッ          人ノ゙ ⌒ヽ         彡ミ彡)ミ彡)ミ彡)'
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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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チビタン王国軍のご視察なの~
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汚物は消毒なの~

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チビタン王国軍がお通りになるの~♪

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PCと携帯からの嵐お疲れ様ですー、ISP通報されてると思うんでお母さんに怒られないようにね?

>>390
Isp通報で怒られるとか、もうちょっと勉強しろよ、警告するにはもっと複雑なシステムが絡んでくるんだから

とはいえ荒らしはひどいな

>>392
お前それ言っちゃだめだろ、夏休みのガキならこれだけで退散するのに・・・

>>393
ああ、なるほどすまない
いやその手の関係の職についてるもんで
みたら言いたくなってしまう・・

俺は警告依頼がいかに通りにくいものなのかを知っていたりする・・・

聖天子『名乗りなさい』

画面の聖天子様がそう言うと、仮面の男はゆらりと体を起こして机の上に立つ。

そして紳士のようにして頭を下げ、告げる。

影胤「私は蛭子影胤。お初にお目にかかります、無能な国家元首殿」

蓮太郎「ッ……!」

影胤「そして久しぶりだね、里見君?」

蓮太郎や俺を含め、全員に銃口を向けられてもなお冷静な男――蛭子影胤。

蓮太郎「どっから入ってきやがった?」

影胤「無論、正面から堂々と。もっとも、道中で群がってきたハエどもは殺させたがね」

彰人「…………」

見ると影胤の燕尾服に血痕が付着しているのに気付いた。
つまり今の発言は嘘でもなんでもなく……。

影胤「おお、そうだ。せっかくだし私のイニシエーターを紹介しよう。おいで小比奈」

小比奈「はい、パパ」

不意にそんな少女の声が俺と蓮太郎の背後から聞こえてきた。
ゾッとする。確かに俺達の背後には誰もいなかったのに、いつの間に……?

小比奈「蛭子小比奈。十歳」

スカートの裾を持ち上げお辞儀をする小比奈という子供。
それだけ見れば育ちの良いお嬢様を彷彿とさせるのに、背中にある小太刀の刀身から血液が滴り落ちていたので狂気を感じさせるには十分だった。

小比奈「……パパ。みんな鉄砲向けてるんだけど」

俺、蓮太郎、木更、椿姫。そしてその他多くの人間に銃口を向けられていて何故十歳の子供がそんな態度をとれるのか。

小比奈「斬っていい?」

影胤「ダメだよ。今日の本題はそこじゃあないからね」

蓮太郎「何の用だ」

影胤「何、至って単純な話さ。今回私達もこのレースに参加しようと思ってね」

椿姫「レース……?」

影胤「そうだ。『七星の遺産』は我々が頂く」

七星の遺産……?

彰人「なんだそれは」

影胤「む……君は確か火村彰人君、だったか?」

名乗った覚えなんてない。なのにこの男は今俺の名前を言い当てた。

彰人「どこかで会ったか?」

影胤「いや、こちらが一方的に知ってるだけだよ。それで、なんだったかな?」

彰人「……七星の遺産とやらについてだ」

俺が再度確認をすると、影胤はわざとらしく手を叩いて言葉を続けた。

影胤「ああ、そうだったね。とはいっても、まさか本当に詳細を知らされぬまま仕事に駆り出されようとしていたなんて……」

蓮太郎「駆り出されるだと? それじゃあその七星の遺産っていうのは……」

影胤「そうそう。今しがた君達が依頼されたあのケースの中身だよ」

彰人「あのケースは昨日出現したガストレアが飲みこんでいるんだったな。となると、昨日あの事件現場にお前がいたのも……」

影胤「おや、里見君からでも聞いたのかな? ああ。私が昨日あそこにいたのはそれが目的だ。もっとも目的のケースは手に入れなかったし、警官隊を殺してしまったがね。キヒヒッ」

人殺しをしたというのに反省の色は無し。それどころか愉悦を感じているようにさえ思える。

……まったくもって俺の嫌いなタイプであった。

影胤「さあ、ルールの確認をしようじゃないか! 今からあのケースを求めて行われるは私達と君達の命を賭けた競争だ! ケースの奪取はガストレアを排除すればいいだけ! そして賭け金は君達の命でいかがか?」

何がそんなに愉快なのか、影胤はその場で両手を広げてそんなことを言い始めた。俺達の向けている銃口など気にもしていないように。

将監「……ふざけんな。ごちゃごちゃうるせぇんだよ」

ふとテーブルの向こうからそんな声がした。

伊熊将監。アイツが大剣を構え影胤を見据えていた。

影胤「どうかしたかね?」

将監「うるせぇってんだよ! ようはテメェを始末すりゃいいんだろ?」

瞬間、伊熊将監が大剣を持って跳躍。そのまま影胤に攻撃を加えようとする。

影胤「ざーんねんっ」

将監「なっ……!?」

彰人「ッ……危ない!」

予想だにしない展開に俺は無意識にそうやって声を荒げていた。

伊熊将監と影胤の間に現れた膜のようなもの。一瞬しか現れなかったがそれは確かに影胤を守り、伊熊将監の剣を弾き飛ばしていた。

そしてそれはクルクルと軌道を描いて伊熊将監のイニシエーターのところに。

「……ッ」

俺の心配は杞憂だったらしく、少女はその大剣を片手でキャッチした。

……さすがは序列千番台のイニシエーター。あれくらいはやれて当然だったか。

「将監、退け!」

将監「ちいっ……!!」

伊熊将監が影胤から離れると同時に四方八方から銃弾が放たれる。俺も椿姫も蓮太郎も木更も撃つ。

が、それよりも一瞬早く影胤と小比奈の周囲にまたも膜のようなものが現れる。いや、今度はより鮮明に視認出来る。



――バリア?


彰人「ッ……蓮太郎!」

蓮太郎「あ、ああ!」

瞬時に過った嫌な予感を振り切るように俺は椿姫を、蓮太郎は木更を庇うようにして床に伏せる。
それとほぼ同時に俺達の耳に襲いかかったのはバリアによって跳弾され、それを浴びた人間による悲鳴。悲鳴。悲鳴。

椿姫「兄さん……!」

俺は下にいる椿姫の耳を塞いだ。

こんな雨のように襲いかかる悲鳴を椿姫には聞かせたくなかった。

やがて悲鳴の雨が止み、俺達はゆっくりと安全を確認すると立ち上がる。

影胤「ヒヒヒ……」

小比奈「ふふふ……」

跳弾によってボロボロになった机の中央に立つ二人は“無傷”だった。
こんなバカなことがあり得るのか……?

蓮太郎「……バリア、だと?」

影胤「斥力フィールドだ。私はイマジナリー・ギミックと呼んでいる……まあ、似たようなものだがね」

彰人「お前、人間なのか?」

影胤「当然だとも。もっとも、これを発生させるために内臓のほとんどをバラニウムの機械に詰め替えているがね」

それはもう人間と定義して良いものなのか。目の前に立つ男を見て俺は純粋にそう思っていた。


影胤「さて、改めて名乗ろう。私は元陸上自衛隊東部方面隊七八七機械化特殊部隊『新人類創造計画』、蛭子影胤だ」


その言葉にうめき声を出したのは社長格の一人だった。

「ガストレア戦争が生み出した対ガストレア用の特殊部隊? そんなもの、実在するわけが……」

影胤「信じる信じないは勝手さ。すまないね里見君、つまるところ昨日の私はまったくと言っていいほど本気ではなかったのだよ」

斥力フィールドなどと言っているが、単純に噛み砕くならあれは蓮太郎の言ったとおりバリアのようなものだと捉えていいだろう。
どこまでを弾いてどこからが貫けるのかは定かではないが、少なくとも銃弾はこの男には通用しない……。

影胤「さて、最後にプレゼントだけ置いてお暇するとしようかな。絶望したまえ民警諸君、滅亡の日は近い」

机に白い箱を置いて影胤・小比奈の二人が窓から離脱をする。

椿姫「兄さん、あの箱……」

二人がここから立ち去り場に訪れたのは安堵の空気というより粘っこい疑念と不安の空気だった。
そんな空気の中、隣にいる椿姫が俺の服の裾を引っ張って男が置いていった箱を指差す。

「た、大変だぁ!!」

空気を壊したのは扉から部屋に入ってきたスーツ姿の男だった。

あれは……今日欠席していた会社の秘書のはずだが……?

「社長の自宅で社長が殺されて! く、首が無くて……!」

木更「なっ……!?」

その言葉に木更だけでなく、全員が机に置かれた箱に視線を向ける。

――蓮太郎がその箱の中身を確認する。
だが、その中身は蓮太郎だけでなく全員が察したことだろう。箱の底面からにじみ出る赤い血液がそれを物語っていた。

蓮太郎「あの野郎がぁぁぁぁぁ!!」

聖天子『静粛に!』

蓮太郎の絶叫と聖天子様の一喝がほとんど同時に部屋に響く。

聖天子『……みなさん。私から依頼の達成条件を一つ追加させてもらいます。あの男よりもケースの回収。もしそれが達成できなかったら……』

木更「できなかったら?」

聖天子『――あのケースの中身、七星の遺産により東京エリアを囲むモノリスが壊滅。瞬く間に東京エリアは絶滅するでしょう。あれは邪悪な人間が使えばそれすらも可能とさせる、封印指定物なのです』

原作イベント消化
以後昼時間のイベントを直後判定。なお椿姫は確実に同行しているものとする

1・2 夏世
3・4 蓮太郎
5・6 木更
8 夏世
9 蓮太郎

該当無しの場合は椿姫とのイベント

木更確認したところでここまで。本当は日曜日の夜やろうと思ってたけどエタるんじゃと心配されたので短いですが

あと改めて記しておきますが更新は比較的遅め。毎日更新はやれたらやる心構えですけど
更新予告も可能な限りしますので、それが無い場合は察してくれればいいかと

ではそういうことで。さようなら



防衛省からの帰り道。学校に戻るべきか少し思案していたら「そんなことしている場合じゃないでしょ!」と言われたので俺は連絡だけ入れてとりあえず昼食がてらあの男について思案することとなった。

隣には椿姫と、木更。蓮太郎は今回のことを延珠にも伝えるため一足先に帰っている。

彰人「それで、あの男――蛭子影胤と蛭子小比奈についてだけど」

店でハンバーガーと飲み物を買い、それを歩きながら食べる。
木更だけならともかく、椿姫がいる以上店内での食事は極力避けることにしていた。店によっては帽子を取るように言われるから。

木更「ええ……あの二人が何者かはわからない。でも、かなりの強者でしょうね」

椿姫「……女の子の方はまだ未知数だけど、あの仮面さんの方はかなり危険」

斥力フィールド。影胤の出すそのバリアは銃弾を防いでみせた。
つまり影胤と戦闘になる場合、ハンドガン等による中遠距離攻撃は通用しない。そして一撃与えるためにはその斥力フィールドを突破しないことには……。

木更「あのケースを回収する依頼を受けた以上、蛭子影胤・蛭子小比奈の二人と戦闘になる可能性は高いわ。彰人君、アナタあの二人と戦った場合勝てると思う?」

本来なら木更も戦闘に参加した方が戦力的には良いのだろうが、生憎彼女は事情により戦闘職ではなく事務職をメインとしている。それを期待するのはいけないだろう。

椿姫「……兄さん」

ハンバーガーを手に持った椿姫が俺を見上げる。

……どうだろう。俺にあの男を下すだけの力はあるのか?


↓2
1大丈夫だ。必ず倒してみせる
2……努力はする。が、俺よりも蓮太郎の方が適任じゃないか?
3正面勝負が無理なら、搦め手で戦ってみるのもどうだ?
4その他

彰人「……思ったんだが、正面勝負が無理なら搦め手で戦ってみるのはどうだ?」

木更「搦め手?」

彰人「そうだ。あの斥力フィールドは要するにこちらの攻撃を視認した影胤がそれを防ぐために展開する」

つまり正々堂々と正面勝負を挑むのなら、確実にあの斥力フィールドを突破出来るだけの一撃威力が必要となる。

椿姫「つまり、仮面さんの死角から攻撃するってこと?」

彰人「成功するかしないかはわからないけどな。遠距離からの狙撃・足元に仕掛けた地雷の起爆・背後からの奇襲……どれも正々堂々とは程遠いが、正面から行くよりは一撃与える可能性が高い」

木更「なるほど」

彰人「あと、あの蛭子小比奈だけを捕縛して人質に取る。名字からしてあの二人は親子なのだろうし、娘を人質に取られたら攻撃を弾くこともあまり出来ないかもしれない」

攻撃をこちらに弾くということは、つまり人質すらそれに巻き込む可能性がある。
あの男にどこまでの娘に対しての愛情があるかはわからないが、一つの手段としてはアリだろう。

椿姫「……」

だというのに、椿姫は何やら不満げにして俺を見上げていた。

木更「あらあら、さすがの椿姫ちゃんも今の言葉にはご立腹みたいね」

椿姫「兄さん。最初の三つはまだ私も賛成だけど、最後の人質には賛成できないわ」

ガストレアとの戦いを乗り越えてきた椿姫にとって、最初挙げた三つの作戦はまだ許容範囲内だったらしいが、どうやら最後の作戦だけは許容範囲外だったらしい。

それもそうか、と納得する。
ガストレアとの戦いはともかくとして、蛭子影胤と蛭子小比奈は人間だ。しかも片方は椿姫と一歳しか違わない女の子。

いろいろと思うところがあるのだろう。

彰人「……あくまで最終手段だ。それに俺だってこんな手はあまり使いたくはない」

木更「あら。私は結構良いアイデアだと思ったのだけれど」

だが木更は木更でそんなことを言う。

彰人「お前……」

木更「だって、あの二人はこの東京エリアを破滅に導こうとしているのよ? どんな手段を使っても撃破するべきだわ」

椿姫「う~……」

まったく正反対な二人だ……。

木更「それに、彰人君最初会社を立ち上げたとき言ったわよね?」

そして木更は俺だけに聞こえるよう最低限の声量で言う。

木更「……罪の無い人を助けるために来た。それがこの会社に入る理由だって」

彰人「…………」

それは、事実だった。
罪の無い人が助かるよう、俺は民警に入った。それは蓮太郎も木更も椿姫も知っている。

木更「だけど、あの二人を放っておいたら間違いなく罪のない人々が死ぬ。それはアナタのその信念に反するのではないかしらね」

ふと頭の中に母さんの最後の顔がよぎる。

あんな思いをもう他人にしてほしくないから、俺は民警に入ってガストレアという存在と戦うことを決意した。

……その、はずだ。

夜イベント
直後下一桁判定

0・1・2 光希
3・4 影胤と小比奈
5 幼女
7・8 蓮太郎
9 警官

夜。買い置きしていた飲み物を買い忘れていたことに気付き一人自動販売機で飲み物を2人分買う。

「あーっ、クソッ。最近外周区の赤眼の犯罪が増えてやがるな」

「そうですねぇ……」

その帰り道。夜遅くにも関わらずパトロールでもしていたのか警官の二人が向かい側からやってきた。痩せた男と、角刈りの男。

先日顔を合わせた多田島刑事ではないみたいだ。

「……ん? アンタ、こんなところで何してんの?」

すれ違い際、角刈りの方が俺に声をかけてきた。

彰人「別に、買い置きしてた飲み物を切らしたんで自動販売機で飲み物を買ってただけですけど」

「おお、そうかい。にしてもこんな遅くに一人で出歩かないほうが良いよ? 最近赤目による盗みやその他の犯罪が少しずつだけど増えてるから」

彰人「……『呪われた子どもたち』のですか?」

外周区と呼ばれるところには居場所のない呪われた子どもたちが多く存在する。
だがそんなところで生活などまともに出来るわけがなく――たまにこうして街中に来て盗みをする子どもも少なからずいるのだ。

「そうそう! まったく、盗みをするだけでも問題なのに止めに入った人間を半殺しにするから質が悪い!」

「こっちとしてはいつその力が向けられるか不安で不安で……」

「ああいうゴミはおとなしく外で飢え死にしてればいいんだっての! もしくは俺達の射撃訓練の的になってくれるかな!」

彰人「…………」


↓2
1心中お察しします。こっちもいろいろと大変で
2盗みをするのは確かに悪い。が、そうやって相手が呪われた子どもだからといってアンタ達までそんなことを言って良いわけじゃない
3そんなことしてみろ。見かけたら許さないぞ
4その他

彰人「盗みをするのは確かに悪い。が、そうやって相手が呪われた子どもだからといってアンタ達までそんなことを言って良いわけじゃない」

「……あ? なんだいアンタ、いきなりそんなこと言って」

彰人「ああいう子達だって好き好んでガストレアウイルスを取りこんでるわけじゃない。せめてそれだけはわかってやれないのか?」

すると二人の警官が途端、笑いだす。

……コイツら。

「ハハハハハ!! なんだアンタ、随分と綺麗事を言うな!」

「貴方だって十年前の災厄を知らないわけじゃないでしょう? 今世界がこんなことになっているのはガストレアの仕業。その素養を取りこんでるってだけであの子達は私たちの敵なんですって」

彰人「…………」

典型的な『奪われた世代』の人間と決まり、俺はもうあまり相手をする気にもなれなかった。
こういった手合いには何を言っても無駄。

「ていうか、アンタ何なの? そんなこと言うくらいならよっぽどご大層な職にでも就いてるんだろうけど」

彰人「……民警ですけど」

「民警って……よりにもよってガストレア専門の職じゃないですか。それなのにあんなこと言って良いんですか?」

彰人「俺が戦ってるのはガストレアです。呪われた子どもはガストレアじゃない」

「はぁ?」

彰人「失礼します」

もうダメだ。これ以上話をするだけ無駄だろう。

……外周区の子供たちも、もし見かけることがあったらあまり街に入ってこないよう言っておくか。

本日ここまで

そろそろ原作と展開が変わってくるかもしれないし原作通りかもしれない

お疲れ様でした

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 09:22:41   ID: NN6zuJxY

期待

2 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 09:35:32   ID: NN6zuJxY

最近ブラックブレットの安価スレが増えて嬉しい。

3 :  SS好きの774さん   2014年08月28日 (木) 21:01:00   ID: K7KfsFBy

面白かったので、続きを書いて下さい。お願いします。

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