男「何の願いを叶えようか?」 (66)


過去作

店員「はい、コーヒー」男「ありがとうございます」

前回の作品も時間軸を失敗するという
初歩的なミスを犯していました

まだまだ全然拙いですが
見ていただけると嬉しいです


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407155863

繝医Μ繝??髢馴&縺医◆

あれ、トリップ間違えた


うわ、凄いミスった

すいません

次から載せます



第一話

どちらかというと、悪魔



女「……は?」

男「だからぁ、何の願いを叶えようか?」

女「ちょっと整理させて。あんた誰?それと、ここどこ?願いを叶える、て何?」

男「はぁ、質問が多いな」

女「そりゃそうでしょ!だって見知らぬ人がいきなり目の前に現れて願いを叶えるって言われたら混乱するでしょうが!」

男「見知らぬ人、か。これでも俺、神だぜ」

女「……は?何言ってんのあんた。狂ってるの?危険ドラッグでも飲んだ?」

男「いやいや、事実事実。立派な事実でーす。ま、どーせ信じないだろうけど」

女「信じる訳ないでしょ、普通。で、早く質問に答えて」

男「わお、辛辣」

女「早くして、疲れたから私寝たいんだけ……て、あれ?てか私さっき寝たはず……」

男「うん、正解。じゃ、質問に答えようか」

女「……?」

男「ここは、君の夢の中。僕は神だからさ、誰の夢の中にでも入れるんだよね。で、なんていうか、その中で君の意識だけ出したの。そんな感じ」

女「明晰夢、てやつ?」

男「そうそうそれそれ。それを俺が強制的にしたんだ」

女「……ほんとに、神なの?」

男「やだなぁ、俺は嘘をつかないよ」


女「……続けて」

男「つまり、俺はテキトーに人を選んで、その人の願いを叶えてあげてるの」

女「……で、今回は私?」

男「……まあ、そーゆーこと」

女「願いって、どう言う意味?」

男「別に、なんでもいいよ。金、永遠の命、成功した未来の確約、失敗した過去の消去など、何でも叶えてやるよ」

女「ふーん」

男「でも、願いを叶えるのはいいけど、もちろん、対価としてなにか貰う」

女「対価?」

男「そ。大きな願いには大きな対価を、小さな願いには小さな対価を。当然だね」

男「ただし、その対価をなんにするかは俺が決める。代わりに命を貰うとか、そんな野暮なことじゃないよ」

男「まあ、その辺は楽しみにしといて」

男「大体の説明おわり!さあ、何の願いを叶えようか?あ、言っとくけど、叶えない選択肢は無いからね。その時は命貰うから」

女「…………」

男「まあ、こんな説明聞いたら言いたくないよね。対価、怖いもんね。でも気にしなくていいよ。俺が対価を受け取ったら、また君の前に現れて、対価として何をとったか、ちゃんと教えるから」


女「……一つ教えて」

男「おー、興味を持ってくれるとは。なになにー?」

女「あんた、いい人なの?もしくは、悪い人なの?」

男「天使か悪魔か、てこと?」

女「……そんな感じ」


男「どちらかというと、悪魔」


女「……なんで、私のところに来たの」

男「はーい、もうダメー。質問はひとつだけでーす」

女「……」

男「さあ、早く願いを言って言って」

女「……ちょっと考えさせて」

男「無理無理、俺にも予定はあるんだ」

女「……じ、じゃあ、モテたい、とか」

男「おー、いいんじゃない?モテたい、てことでOK?」

女「……うん」

男「よーし、決定!対価は後で貰って発表しまーす」

女「……ねぇ」

男「じゃ、いつもと違う明日を、そして少しだけの楽しい生活を~!」


ジリリリリ

女「…………はっ」

ピッ

女「……はぁ」

女「なんだあの夢。信じるわけないじゃん」

女母「女ー早く起きなさい。誰か来てるわよ」

女「はーい。……は、来てる?」

ドタドタ

女「母さーん、来てるって、誰が?」

母「クラスの友達らしいわよ。待たせちゃだめだから、ご飯食べなさい」

女「え、あ、うん」


女「ごちそうさまー」

母「早く準備しなさい。あの子たち待たせちゃって、可哀相だわ」

女「う、うん」

ドタドタ

女「あの子“たち”って言った?」

女「数人で待ってるのかな」

女「行ってきまーす」

女母「はいはい、行ってらっしゃい」

ガチャ


男子集団『女さん!!!!』


女「え、え、え、は、は?何?」


女(後ろから、ついてくるよ……)

男子集団「パシャ」「パシャ」「あっ、こっち向いた」「かわいい」「かわいい」「かわいい」「罵られたい」

女(一人おかしいし……)

女「て、し、写真撮るのは止めてくれないかな」

男子集団「てめぇら!写真撮るのは止めろぉ!」「はっ」「はっ」「はっ」「はっ」「了解しましたぁ!」「罵ってぇ!」

女「…………はぁ」


女(私は一夜にして、モテるようになった)

女(モテるのはいいけど、流石に数が凄すぎる)

女(もちろん心当たりはひとつしかない)

女(ただ、あいつは対価を貰うと言っていたが、私には何の支障もないし、そんな感じもしない)

女(もしかして、あいつはわざわざ対価を貰うとかいっといて、大きな願いをされたくなかったんじゃないかな)

女(ちょっともったいなかったかな)

女(まあ、でも私は今は幸せだし、あの中のイケメンと付き合っちゃおうかなー)


――――数日後

女「あ、あの人とかいいかなー」

女「ていうか、慣れたけど私の後ろついて来るのはやめて欲しいなー」

男子集団「女さん今日もいいな」「俺写真あんぞ」「マジで?頂戴よ」「何着ても似合うなー女さん」「踏まれたい」ゾロゾロ

女(彼氏が出来たら、皆止めてくれるよなー。もしもこれからもずっとついて来るとしたらすごい鬱陶しいし)

女「あ、あの人いいかも。確かサッカー部のキャプテンて友達が言ってたような……」

女「ねえ、ちょっとそこの人ー」

男子集団「お、おい誰だよ呼ばれたの」「ち、イケメンかよ」「いいなー、イケメンは」「女さんに呼ばれるとかどんなご褒美だよ」「睨んでくらないかな」

イケメン「え、俺ですか!」

女「うん、こっち来て。あ、他のは来なくていいよ」

男子集団「イケメン死ね!」「いいなー、イケメンは」「けっ、顔がいいからって……」「それ何て放置プレイ」


女「ここでいいかな」

イケメン「な、な、何でしょうか!」

女「あはは、緊張しすぎー」

イケメン「あ、あははー」

女「じゃ、突然だけど、付き合ってください」

イケメン「え!」

女(テキトーに告白しても彼氏が出来るとか私すごいなぁ)

女(あの神様に感謝だわ)

イケメン「あ、ありがとうございます」

女「うん」

女(私のステータスの為の彼氏だけどな)

女(さてと、じゃ、明日から――)


イケメン「でも、僕では女さんに釣り合いません。もっといい人を探すべきです!」


女「……は?」

イケメン「それに、皆を、仲間を裏切る気はないので、申し訳ありません」

女「…………は、はぁ」


女「何で何で何で何で何で!!」

女「イケメン全滅なんて、ありえない」

女「皆普通に私と釣り合うよ!てか、私の方が釣り合わないよ!」

女「……何で……」

女「……明日から、フツメンにしようかな……」

女「て、なんで妥協しなきゃならないんだよ私」

女「……寝よ」

バタ


男「やあ、久しぶり」

女「…………うそ、何を」

男「何を?そっかー、分からないかー。まあ、ならいいや。実は前に一つ言い忘れたんだよね」

男「俺が対価として何を貰ったのか、分かったらその対価を返すというルールをさ」

男「いやー悪かったね」

女「何を、貰ったの?」

男「答え合せ行っちゃう?少し考えたら分かるよ」

女「……もしかして、イケメン?」

男「ブーッ!はずれー!はい終わりー。対価は返しませーん」

女「……じゃ、何を、とったの」

男「こーたーえーはー」


男「交際期間、だ」



女「交際、期間?」

男「そう、交際期間。交際ってのは異性間ね。つまり、男女間での交際の期間、つまり付き合っている時間を全て貰ったんだ」

男「これで君は他の男と付き合うことは出来ないし、ましてや結婚することもできない。頑張って働いてね。あ、でも働く先でもまた男の集団ができるかもね」

女「そんな……」

男「一つだけ教えてあげる」

男「もう君は付き合うことは出来ないけど、それは異性間だけだから」

女「……?」

男「つまりさ、目覚めちゃえば?百合に」


第二話

俺は、最悪だよ



男「ということで、願いを叶えようか?」

幼馴染み「……はい、お願いします」

男「おお、じゃあその時に対価を貰うけどいいね?」

幼馴染み「はい……」

男「すらすら行くね、君。珍しいタイプだ。じゃ、君の願いは何?」

幼馴染み「あの、料理が上手くなりたいです。私は、下手なので」

男「うんうん、料理が出来る女の子はいいよねー。でも、そんなんでいいのかい?」

幼馴染み「だ、大丈夫です」

男「じゃ、いつもと違う明日を、そして少しだけの楽しい生活を~!」


幼馴染み「よし、じゃあ、簡単なオムライスを……」

幼馴染み(あれ、何故か頭の中にレシピがすぐ浮かんできた)

幼馴染み(いつもなら、料理本を見て作るのに)

幼馴染み「まずは、チキンライスから」

幼馴染み(ご飯は、こんだけ。あとベーコン、玉ねぎ、ケチャップ、ウィンナー、と)

幼馴染み(量が感覚で分かる。作り方も、時間も、全て浮かんでくる!)

幼馴染み(うそ!こんなに上手く作れるなんて、初めてかも)

幼馴染み「おかーさーん!」

幼母「はいはい、何?」

幼馴染み「見て見て!こんなに上手く出来た!」

幼母「あらあら、上手に出来たわね。私よりも上手いわ」

幼馴染み「料理、楽しい!」

幼馴染み(神様、ありがとうございました!)

幼馴染み(これからは、弁当も自分で作れるようにします!)


幼馴染み「出来た!初弁当!」

幼馴染み「じゃ、行ってきまーす!」

幼母「今日は元気ね」

――――学校

幼馴染み「おはよう!」

幼友「おー、今日はすごく元気だね」

幼馴染み「朝早く起きて、弁当作ったんだ!」

幼友「へぇー、料理出来たんだね、幼馴染み。後で食べさせてよ」

幼馴染み「お昼にね」

――――昼休み

幼馴染み「ぱかー」

幼友「おー、綺麗に出来てるー!」

幼馴染み「でしょ?さあ、どうぞどうぞ」

幼友「じゃ、から揚げ」パク

幼馴染み「えー!一個しかないのにー!」

幼友「おいしー!」

幼馴染み「ありがとう!嬉しい」


――――数日後

幼馴染み「お昼だね」

幼友「今日も美味しそうだね、幼馴染みのお弁当」

幼馴染み「えへへ」

幼友「もーらい」パク

幼馴染み「あ~!から揚げ取られた~!」

幼友「うん、おいしーい!」

幼馴染み「しょうがないなー」パク

幼馴染み(!?!!??!??!!)ガタッ

幼友「ん、どーしたん?」

幼馴染み「――――ッ!!」ダッ

幼友「えっ、どっどーしたの!」


――――トイレ

幼馴染み「オエェエエェェエッッ!!」

幼馴染み「ハーッ、ハーッ、ハーッ」

幼馴染み(な、何で不味いの!?幼友だって美味しいって)

幼馴染み「え!み、水が」

幼馴染み(蛇口の水なのに、美味しく感じる!)

幼馴染み「何で…………」


幼馴染み「……ただいま」

幼母「お帰り、てどうしたの?元気無い?」

幼馴染み「……ううん、大丈夫だよー」

幼母「そっか、ならいいけれど」

幼馴染み「それより、夜ご飯は」

幼母「まだ途中だけど、お腹減った?」

幼馴染み「ちょっと食べていい?」

幼母「ふふ、いいわよ」

幼馴染み(昼のとき、私は疲れていたのかな)

幼馴染み(でも、疲れてるだけで味がおかしくなるとは思わないけど)

幼馴染み(とりあえず、野菜を)パク

幼馴染み「ウッ」バッ

幼母「どうしたの?」

幼馴染み「――――ゴクッ」

幼馴染み「……ううん、何でもないよ」


男「やあ、久しぶり」

幼馴染み「…………」

男「暗いねぇ。何かあったの?」

幼馴染み「…………対価って」

男「ん?対価の話?もしかして当てちゃう?いいよ、当ててごらん?」


幼馴染み「味覚、ですよね」


男「あったりー!」

幼馴染み「…………」

男「君からとったのは、確かに味覚だ」

男「でも、味覚がなくなるだけじゃつまらないからねー」

男「だから、味覚を逆転させたんだ」

男「一般的に美味しいものは、君には不味く感じる。でも不味いものは美味しく感じるんだ」

男「そこらへんのホコリとか、君にとってお菓子だよ。ヘドロとか超上手いよ」

幼馴染み「……対価、返してもらえるんですよね?」

男「もちろん、約束だしね」

男「それにしても、あの野菜、よく飲み込んだね。とても不味いはずだけど」

幼馴染み「……お母さんには、心配掛けたくないので」

男「親孝行、てやつかな。君はいい人だな」

幼馴染み「あなたは、最低の人ですよ。色んな人にこんなことをやらせたなんて」

男「悪いが俺は人じゃない。神だ」

男「それと、俺が最低というのは本当」


男「俺は、最悪だよ」



幼馴染み(起きてから朝ご飯を食べたけれど、味覚は治っていた)

幼馴染み(しかも、料理も今までどおりできる)

幼馴染み(あの人、いや神様は実はいい人なんじゃないだろうか)

幼馴染み「入っていいよ」

幼友「おじゃましまーす」

幼母「あらあら、今日も来てくれたのね」

幼友「幼馴染みの作る弁当、すごくおいしいですよ!」

幼母「あら本当?夜ご飯も作ってもらおうかしら」

幼馴染み「えー、疲れる」

幼母「ふふ、まだまだね」

幼友「じゃ、幼馴染みの部屋行こーう」

幼馴染み「私の部屋来ても、何もないよ」

幼友「お、アルバムはっけーん」

幼馴染み「あ、中学の時の卒業アルバム」

幼友「ほい」ペラ

幼馴染み「懐かしいなぁ。私、全然写ってないんだよね」ペラ

幼友「あ、もしかしてこれ?」

幼馴染み「それそれ、今と全然違うでしょ?」


幼友「物静かな感じかも」

幼馴染み「ほんとほんと、そんな感じだったんだ私…………!」バッ

幼友「え、どうしたの?」

幼馴染み(私が見つけたのは、一枚の集合写真)

幼馴染み(その中の一人に目が止まる)


幼馴染み「これって、神様?」



第三話

俺は、君が羨ましいよ



男「つまり、何かを君にあげる代わりに、君から何かを貰うんだ。何を貰うかは俺が決めるけど」

男の子「なんでもいいの?」

男「うん」

男の子「じゃーねー。んー、あ!サッカーボールがほしい!」

男「サッカーボール?」

男の子「うん!いつも部活でやるんだけど、ぼくおうちでもやりたくて。でも、自分のはパパが買ってくれないんだ」

男「へー。じゃあ、君はお父さんの事、嫌い?」

男の子「うん、買ってくれないから、きらい」

男「そっか。じゃ、サッカーボールでいいね?」

男の子「うん!」

男「じゃ、いつもと違う明日を、そして少しだけの楽しい生活を~!」


男の子「ふわぁ……あ!サッカーボールがある!」

男の子「ほんとだったんだ!お兄さんのいってたこと」

男の子「ママー」

子母「はいはい、なんだい?」

男の子「サッカーボール!」

子母「えっ、どっかから拾ってきたのかい?」

男の子「ううん、もらったー!」

子母「……ふぅん、貰ったの」

男の子「じゃ、サッカーしてくる!」

子母「あ、ちょっと!……行っちゃった」


男の子「いけー!」バシッ

男の子「次はそっち!」バシッ

男の子「そして、シュート!」バシッ

男の子「やったぁ、ゴール!」

男の子「楽しい!サッカー!」

男の子「よし、今からいっぱいれんしゅうして、みんなをおどろかしてやる」

男の子「それで、今度のしあい、ぼくが点をとるんだ!」

男の子「いくぞー!うおーー!」

男の子「行ってきまーす!」

子母「はいはい、行ってらっしゃい」

子母「あの子、毎日行ってるわね」

子母「今度の試合、見に行こうかしら」

子母「いきなり、サッカーボールを貰ったのは驚いたけど」

子母「もしかして、天からの贈物なのかもしれないわね」


男の子「パパー!サッカーしよ!」

子父「サッカー?ボールないぞ?」

男の子「もらったの!」

子父「もらった?誰に」

男の子「お兄さん!」

子父「お兄さん?ふーん、友達のお兄さんか。よかったな」

男の子「サッカーしようよ!」

子父「そうだな、久しぶりに運動しようか」

プルルルルプルルルル

子父「って、電話だ」ピツ

子父「はい、もしもし」

男の子「……」

子父「はい、分かりました。では、いまから……お願いします」ピツ

男の子「え、……」

子父「悪い、仕事になった。また今度な」

男の子「うん……」

子父「行ってきます」

子母「行ってらっしゃい」

男の子「…………」

男「やあ、久しぶり」

男の子「……お兄さん」

男「……そう。お兄さんだよ」

男「俺は君から何かをとったけど分かるかな?」

男の子「…………」フルフル

男「まあ、しょうがないよね。まだ子供だからね」

男の子「…………」

男「俺が君からとったのは、君と君のお父さんの遊ぶ時間だ」

男「あ、遊ぶ時間と言っても全てじゃなくて、サッカーで一緒に遊ぶ時間だ。君のお父さんはこれから、君とサッカーでは遊べない」

男の子「……いいよ」

男「え、いいの?なんで?」

男の子「もう、パパのこときらいだもん。だからいい」

男「ふーん。ま、俺には関係ないからいいけど、今の内に遊んだりした方がいいよ」

男「俺は子供の頃は両親とも毎日仕事仕事で、会うことも、ましてや遊ぶなんて滅多になくて」

男「そして、俺が中学三年のころ、亡くなったんだ。だから、もう一生遊べない」

男の子「…………」


男「俺は、君が羨ましいよ」



――――とある中学校

幼馴染み「先生なら……って思って」

先生「うーん、覚えがないなぁ。確かに俺の生徒のはずなんだけどなぁ」

幼馴染み「……この人の住所は分かりますか?」

先生「悪いが、そこはプライバシーの問題があるからな。すまん」

幼馴染み「あ……そうですよね」

先生「こいつの写真は他にはないのか?」

幼馴染み「えっと……あ、これです」

先生「お、こいつが肩組んでる奴は友じゃないか?」

幼馴染み「あ、はい。それは私の中学の友達なので分かります」

先生「こいつに聞いてみたらなにか分かるだろう」

幼馴染み「そう……ですね。聞いて……みます」


第四話

俺だって、昔はもっと優しかったんだぜ


男「さ、願いを言ってみようか」

友「…………ほんとかよ」

男「ほんとだよ。怪しむくらいなら、どーんと大きな願いを言ってごらん」

友「…………」

男「さあ、早く」

友「…………俺は」

男「俺は?」

友「俺は、完璧が欲しい」

男「完璧、ねぇ。具体的には?」

友「すべてが解る頭脳が欲しい。人類を超えた力が欲しい。一生暮らせる金が欲しい。全てを、くれ」

男「……アッハッハッハッ!!」

男「いいよいいよ。面白いなお前」

男「ただ、ほんとにそれでいいのかい?いつか後悔するぞ?」

友「……いいよ。全て受け止める」

男「じゃ、いつもと違う明日を、そして少しだけの楽しい生活を~!」


友「嘘だろ……」

友(あれだけ難しかった数学が分かる)

友(授業が全てわかる)

友(外国語も、何ヵ国語も喋れる)

友(体だって、今日の登下校で全く疲れがない)

友(あいつの言ってたことは本当なのか?)

友(これで、俺はあいつに釣り合ったかな)


友「…………」

モブ1「すげぇ……あいつテスト全部満点だってよ」

モブ2「てか、先生より頭いいんじゃね?」

モブ3「部活も陸上部の中で一番速いらしいぜ」

モブ1「えぇー、三年より速いとか三年が可哀相すぎ」

友(……耳がよすぎるから、何言ってるのか全て分かってしまう)

友(もう、学校に通う意味もない)

友(明日から、休もうかなぁ……)


――――数日後

友(それでも、学校には来続ける)

友(まずは、この学校を卒業する)

友(その後のことは、その後だ)

友(俺は、あいつにとられた対価を、もちろん当てるつもりだ)

友(最近は何も変化はないので、まだとられてないのだろう)

友(あいつは大きな願いほど、大きな対価をとると言っていた)

友(一体、何をとるのだろうか)


友「ただいま」

友母「おかえり。夕飯そこにあるから」

友「はいはい」

友(結局今日も何もなかった)

友(完璧になってから、もう既に三週間がたっている)

友(俺は毎日あいつから何をとられるかと考えていたのに)

友(未だに何もない)

友(とりあえず、今日は早く寝よう)

男「やあ、久しぶり」

友「……は?」

男「お、どーしたの?唖然としてるけど。もしかして、俺の事忘れちゃった?」

友「な、なんでお前が来る?俺はまだ、た、対価をとられてない……」

男「あん?何言ってんの、もう既に君からとったよ、対価」

友「…………」

男「まだまだだねー。俺は神だからさ、どんなもの、またはどんな概念でもとることができるんだ」

男「時間、空間とか、なんでも」

男「今回も君からは概念をとったんだ。さあ、ヒントはここまでにして、答えはなんだい?」

友「…………分かるわけ、ねえだろえが」

男「あらあら、最高の頭脳でも分からないモノがあるんだなあ」

男「じゃあ、答え合わせだ」

男「俺が今回君からとったのは」


男「つまり、“非日常”だ」


男「実は今日、君が帰宅する道で、交通事故があったんだよ」

男「でも偶然、今日俺は君から非日常をとったから、巻き込まれなかった」

男「つまり、非日常が起こるとき、君はその世界から隔離される。そして、それが全て終わるとき、元の世界に戻る」

男「君からはその世界の非日常は見ることも感じることもできない」

男「あ、でもニュースで知ることは可能だよ」

男「逆に、非日常が起こった世界では、君はその瞬間消えたように見える」

男「君はこれから非日常には干渉できないんだ」

男「最高の頭脳を持ちながら、最強の力を宿し、莫大な財産を持て余しながら、何にも変わらない日常を過ごしていくんだ」

男「君が何かをするときも、周りからは何も見えていない」

男「さあ、これから頑張って生きていってね」


友「……ふざけんなよ。お前は」

男「なぜ怒る?別に周りに自分の力を見せつけるために完璧になったんじゃないだろう?これから、存分に自分のために力を発揮するがいいよ」

友「お前には、優しさってのがねえのか?」

男「優しさ?何言ってんの。俺はそこらの神よりずーっと優しいぜ?だって、命までは取らないんだから。てゆーか、むしろ俺に感謝するくらい?」

友「だけど!」

男「これでも優しくしたつもりだぜ?お前は知らない、いや、覚えてないと思うけど」

友「…………?」


男「俺だって、昔はもっと優しかったんだぜ」


男「それをぶち壊したのは、貴様だろうが」


友「……は?なんて」

男「おっと!ついムキになってしまった。今の怒りは忘れてよ。てか、記憶消すけど」

友「まてよ、一度会ったのか?俺たち」

男「会った、だって?そんなもんじゃねえよ。友達だったじゃねえか、俺ら」

友「友……だち?」

男「そう、友達。まあ、覚えてないのは仕方ない。一つヒントだ。君は中学の時、誰か親友はいた?」

友「……覚えて……ない」

男「だよね、さすが神の力だ。さてと、じゃ、俺はもう帰るから。あ、そうだそうだ。対価なんだけど、俺と会った奴は、君の日常に干渉出来るようになってるよ」

男「じゃ、またね。戻ったら、アルバムでも見てなよ」


幼馴染み「友って、テスト一位だったんだ」

幼馴染み「じゃあ、放課後に会おうかな」

幼友「どーしたの?」

幼馴染み「あ、ううん、何でもないよ」

幼友「あ、今日の弁当も美味しそう!食べていい?」

幼馴染み「まったく、しょうがないなー」

幼馴染み(友なら、あの人のことを知ってるの、かな)

――――放課後

幼馴染み「あの、友、だよね?」

友「…………」

幼馴染み「あれ、聞こえてない……あの」トン

友「!えっ!?」

幼馴染み「ひゃっ!え、な、なに?」

友「……も、もしかして、神に会った?」

幼馴染み「え?か、神って、夢の中の」

友「…………よかった」

幼馴染み「え、な、なんで泣き出すの?」オロオロ


――――学校近くの喫茶店

幼馴染み「非日常、か」

友「ああ、とられた。これで神に会った人しか俺と干渉できないんだ」

幼馴染み「そっか……」

友「幼馴染みは何をとられたんだ?」

幼馴染み「あ、ううん、私とられてないよ」

友「えっ!もしかして、正解したの!?」

幼馴染み「うん。小さい願いだったから」

友「対価も、分かりやすかったんだな。俺は大きな願いだったから」

幼馴染み「…………」

友「あ、あのさ」

幼馴染み「?」

友「まだ、俺のこと、好きになれないかな?」

幼馴染み「っ…………今は、関係ないでしょ」

友「……そうだね、ごめん」


幼馴染み「今日は、ちょっと友と話したいことがあって」

友「話したいこと?」

幼馴染み「うん。友は、神様の顔をまだ覚えてる?」

友「ああ。まだ会ってから日も浅いしな」

幼馴染み「じゃあ、ちょっとこの写真を見てほしいんだけど」

友「集合写真?…………こいつ、神じゃん」

幼馴染み「そう。それで次はこっちの写真を」

友「これは…………神が、肩組んで…………て、これ、俺?」

幼馴染み「うん、多分そう」

友「……じゃあ、あいつの言ってたことは」

幼馴染み「言ってたこと?」

友「ああ。あいつ、俺と友達だったって言ってた」

幼馴染み「友達?」

友「ああ」

幼馴染み「この時のこと、覚えてる?」

友「…………悪いが、さっぱり思い出せん。俺にこんな友達がいたこともな」

幼馴染み「やっぱり、そうなの」

友「やっぱり?」

幼馴染み「中学の頃の先生にも聞いて来たの。でも、覚えてないって」

友「なにが、あったのかな。俺たちに」

幼馴染み「それを今調べてるの」

友「力になれなくてごめんな」

幼馴染み「大丈夫。今日はありがとう。またいつか話そう。というより、ちょっと、勉強教えてほしいんだけど」

友「もちろん、こっちの方が嬉しいよ」


最終話

俺は、今、幸せだ


男「やあ、久しぶり」

幼馴染み「…………こんばんは」

男「君は、俺のことを調べてるよね」

幼馴染み「何か、悪かったですか?」

男「いやいや、別に悪いことなんてない。むしろ俺の事を知ろうとしてくれるなんて、嬉しいよ」

幼馴染み「私は、あなたと同じ学校でした。けれど、あなたのことを見たことも、聞いたこともありません」

幼馴染み「中学の時の先生も、写真に一緒に写っていた友ですら、あなたのことを覚えていませんでした」

幼馴染み「あなたは、一体何者なんですか」

男「そんなの決まってんじゃん」


男「神、だよ」


男「ま、正確には神の能力を持った人間だ。神と名乗るのは、その方がカッコいいから」

幼馴染み「……あなたはやはり、元々人間だったんですか?」

男「まあね、ちゃんとあの中学の生徒をやっていたよ」

男「中学三年のある時期までね」

幼馴染み「ある時期……」

男「おや、調べてる割には全然知らないんだね、俺の事。まあ、仕方ないけど」

幼馴染み「情報が全然ないからです」

男「うん、俺だって知られたくないこともあるし」

男「でも、今回だけは特別何でも教えるよ」

幼馴染み「……え」

男「たーだーし、もちろん条件はあるに決まってる」

男「他言無用。これだけ守ればいいよ。守れなかったら、味覚逆転。いいね?」

幼馴染み「……いいんですか?そんな簡単に自分の過去を話して」

男「いいのいいの。俺はもう、これだからね。過去はもう関係ない」

男「だから、ちゃんと聞いてよ」

幼馴染み「…………はい」


男「知ってのとおり、俺は元々、君らと同じ中学の出身だ」

男「毎日、友と、女と、幼馴染みと一緒に遊んでたんだ」

幼馴染み「え!?そうだったんですか?」

男「そうだよ。覚えてないだろうけど」

幼馴染み「でも、写真とか、ないですし」

男「まあ、あの時はお互い中学生で、恥ずかしいところがあったんじゃないかな」

幼馴染み「…………」

男「俺たちは幼稚園の頃、知り合った。友は小学校に入ってから仲良くなったんだ」

男「そのあと女も一緒に遊ぶようになって、そのまま中学生になった」

男「中学生になってから、さっきも言ったように恥ずかしさが出てきて、四人で遊ぶのは少なくなった」

男「俺はいつも友と遊んでた」

男「だからかな、気づいたんだ」


男「友はね、幼馴染みのことが好きだったんだ」


幼馴染み「っ!」

男「おや、心当たりがあるのかな?て、知ってるか。中二の冬、友は君に告白した」

幼馴染み「…………」

男「それを君は振った。そして君は次の日に、俺に告白してきた」

幼馴染み「っ!え!」


幼馴染み「わ、私が、あなたに……?」

男「もちろん、それは俺がいた時の話だ。今は当然のように違うでしょ?」

男「告白された俺は、それを断った」

男「また別の場所では、女が友に告白し、断っていた」

男「恋愛は人を盲目にさせるとはよく言ったものでね」

男「実際、皆周りが見えてなかったのだと思う」

男「俺は恋愛には疎かったから大丈夫だけど」


男「俺たちはバラバラになった」


男「俺はこの全ては友のせいだ、と思った」

男「客観的に見ると違うんだろうけど」

男「俺は、友が嫌いになったんだ」


男「中学三年になった日、ついに友と喧嘩してしまった」



男「男同士の本気の殴り合い」

男「俺はただただ、友を嫌っていた」

男「友も、もしかしたら俺の事が嫌いだったんじゃないかな」


男「喧嘩してるとき、思ったんだ」


男「人は、欲を出すと周りが見えなくなる。今回がそうだ」


男「皆は自分の幸せを追求するあまり、俺の幸せを邪魔する」


男「俺は、皆嫌いだ」


男「結局、その日は仲直りはしなかった」


幼馴染み「…………」

男「これが、人間のときの俺の話」

幼馴染み「…………私は」

男「勘違いしないでね。君はまだいい人だよ。今はもう、欲を出さないから」

男「欲を出す人は嫌いだからね」

男「さて、じゃあ、次の話に行こうか」

幼馴染み「……次」

男「俺が、神に至った経緯だ」


男「喧嘩して、俺は学校内で完全に独りになった」

男「元々、遊び相手は友しかいなかったから、独りになるのは当然だったんだ」

男「今、俺がいなくなっても誰も困らないだろうとも思ってた」

男「秋に入るある日、親と一緒に車で出かけた」

男「俺には九歳の弟がいたんだ。この日は弟の誕生日だったから、数少ない家族サービスみたいなの」

男「俺は窓から暗くなっていく空をぼんやりと眺めていた」

男「車内では、弟がうるさい程はしゃいでいた」

男「そんな幸せな日、俺たちは交通事故という不幸に遭った」

男「両親は即死。俺は重体で、弟は奇跡的に怪我がなかった」

男「誕生日の奇跡、とでも言うのかな」

男「弟は事故の後、養子に行ったんだ。男の子、という名前に変えて」

男「また奇跡が起こったんだね」

男「奇跡が起きたのは弟だけで、俺は今にも死にそうな状態だった」

男「きっと、このまま死んでいくんだな。俺が死んでも、誰も心配しないだろう。そういえば、こういう時走馬灯が見えるんだよな。俺はどんな走馬灯を見るのだろうか」

男「俺は既に諦めてたんだ」


男「俺の意識は一瞬消え、」


男「目を開くと人がいた」



男「そいつは自分の事を『神』と言った」

男「最初は当然信じなかった。むそろ、これが走馬灯なのかと思っていた」

男「でも、信じなかったけれど、面白かった」

男「こんなに欲まみれな人がこの世界にはいたのか、と」

男「神は言っていた」


神『君の命は限界に近い』

神『もう、動くことはないだろう』

神『二つ、選択肢を与える』

神『一つは、このまま静かに安らかに、死んでいくか』

神『そしてもう一つは、私と同じになるか』


男「俺は迷うことなどなかった」


男『神になりたい』


男「そうして、俺は神になったんだ」

男「ただし、神になるということは、俺の願いが叶ったということ」

男「そこには歴代の神と同じように、対価をとられる」

男「でも、神になるときは対価は全て同じになっているんだ」

男「それは」


男「現実世界においての“存在”だった」


男「俺は現実世界には存在しなくなった」

男「それは人の記憶にも影響して、皆の脳から俺という存在は消えた」

男「でもね、何故か写真だけは残るんだよね」

男「今回は偶然その写真を君が見つけ、前に俺は君に会った」

男「これも、奇跡と言うべきなのかな?」

男「……話は終わり」

幼馴染み「…………」

男「……どうしたの?」

幼馴染み「神様は……まだ私達のことを恨んでるんですか」


男「そんなの、当然恨んでる」


幼馴染み「っ!……」ビクッ

男「君たち三人はさ、俺の中で人生を潰した人として認識してるんだ」

男「あのまま四人でいたらまた違う人生を歩んでいたのかもしれないし」

男「だから、俺はまだ君たちのことは嫌いだ」

幼馴染み「…………」

男「でも、感謝も少しだけしてる」

幼馴染み「!」

男「三人がいなかったら、中学まで面白く過ごすことができなかった」

男「そこだけ感謝してる」

幼馴染み「…………神様は」

男「ん?」

幼馴染み「神様は、人間と神様とどっちがよかったと思ってますか?」

男「うーん、優劣はつけられないけれど」

幼馴染み「…………」


男「俺は、今、幸せだ」



男「もうすぐ、俺は帰る。というより、次の人に行くよ」

幼馴染み「……ありがとう」

男「え?」

幼馴染み「神様は、優しい人だよ。神様は私達の事を嫌いかもしれないけれど、私にとって神様は優しい人」

幼馴染み「ほんとなら、願いに対して命とか、体の一部をもらっていくんでしょ?」

幼馴染み「でも、神様はそんなことしなかった」

幼馴染み「だから、優しい人」

幼馴染み「これからも、優しい人でいてほしいな」

男「…………そんなの」

男「そんなの、当然だよ」

男「多分、心のどこかでは、君達のことは既に許してるんだ」

男「でも、それを認めたくない」

男「ごめんね」

幼馴染み「…………」

男「…………時間だ」

幼馴染み「……最後にひとつだけ、いいかな」

男「ひとつだけ、ね」

幼馴染み「なんて言う名前だったの?アルバムに載ってなかったから」

男「…………男」

幼馴染み「男、か。今までありがとう、男」

幼馴染み「なんで私が男のことを好きになったのか、分かった気がする」

幼馴染み「また、いつか会えたら、次はもっと話したいな」

男「……うん。また、いつか会えたら。…………お、幼馴染み」

幼馴染み「!……ありがとう!」


――男『神になってから、会える人は選べるんですか?』

――神『む?誰か会いたい人でもいるのか?』

――男『はい。四人ほどいます』

――神『ふむ。それくらいならいいだろう。だが、相手はお前のことを忘れておるぞ』

――男『大丈夫です。一目見るだけで……あ、ついでに仕事もしてきますから』

――神『では、名前を教えてくれ。最初の四人にしてやろう』


――男『女と、幼馴染みと、男の子と、友です』





男「何の願いを叶えようか?」







今回もこんな拙いssを見てくださり

ありがとうございます


過去作

店員「はい、コーヒー」男「ありがとうございます」


もよろしければ読んでください

また次回作も拙いですが読んでくれると嬉しいです


前作も今作も面白かった
次も見させて頂きます


>>63

ありがとうございます

多くの人が自分の作品を読んでくれると
嬉しいです

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