いーちゃん「魔法少女?」哀川「そうともさ」 (254)
この世には奇跡というモノがある。
そう信じている人がいる。
自分の手では到底なしえなかったであろう願いがなにかの手違いで、何かの間違いで叶った時
人は思考を停止させてその事象を奇跡と呼ぶ。
君は奇跡を信じるだろうか。
僕は信じない。
そんな不確定なものに踊らさせるくらいならまだ自分の頭脳を信じた方がまだマシというものだ。
それに僕の知り合いには奇跡とやらを簡単に起こしてしまう人だっている。
きっとその人は奇跡なんて思っちゃいないだろうが。
いとも簡単に
いとも容易く
息もつかせぬまま
成し遂げてしまう人だっている。
分かっているんだ。
世界はいつまでも平等じゃない。
奇跡を起こす人間はいつだって勝ち組だ。
だからこその、奇跡。
さぁ、物語を始めよう。
最悪で残酷で目も当てられないような狂気の惨劇を。
一人の幼い少女が打ち砕こうとする物語だ。
奇跡を信じることがどれだけ愚かなのか。
奇跡願うことがどれほど愚行なのか。
僕は一人の傍観者らしく
動く死人らしく
無意識に
眺めてみよう。
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0
魔法の力が欲しいかい?
いいや、僕は機関銃が欲しい
1
この世には抗えぬ理不尽という物がある。
どれだけ必死に抗っても覆すことのできない差がある。
何も難しいことをいうんじゃない。
よくあることだ。
テスト範囲が突然変更になったり
楽しみにしていた遠足が大雨で延期になってしまったり
好きなあの娘が自分の嫌いな奴に取られたり
そんな日常的なことだ。
そして今まさにそんな理不尽に
抗えぬ力に強制連行されている奴がいる。
僕だ。
「…そろそろ説明してくださいよ、哀川さん」
僕は揺れの激しいコブラの上でがたがた震えながら恐る恐る口を開く。
「ん?どーした、いーたん?気分でも悪くなったか?」
いきなり人をさらっておいてそんな言い方はないだろうと思ったがこの人に逆らうことそのものが間違いだと僕は知っている。
「そりゃあ気分も悪くなりますよ、いきなり縄で縛られてさらわれるなんて」
カカッ
と、哀川さんはシニカルに笑う。
「わりー、わりー、別に何も今からいーたんを襲おうって訳じゃあねーぜー」
そりゃそうだ。
「あと、私のことを名字で呼ぶな」
「そう呼ぶのは…」
そこで僕は相川さんに声を重ねる。
「敵だけ…でしたよね、潤さん」
やれやれ、というふうに僕は両手を振ってみせる。
まぁ当然縄で縛られているからそれはあくまで僕のイメージなのだが。
「はっ、やりゃあ出来んじゃねーか」
「それで今回はなんですか?また厄介事ですか?」
おいおい、そりゃひでーなと哀川さんは額に手を当てる。
「私が今までいーたんを厄介なことに巻き込んだことなんてあったかい?」
ふむ…そう言われてみれば…
八割方厄介事のような…
「いえ、二割は厄介じゃありませんでした」
「そうか、なら残りの8割は優しさだな」
バファリンかよ、いやイヴか?
そんな寒いツッコミを心の中に押しとどめて僕は口を動かす。
「それで…今回は…一体?」
「なぁに、大したことじゃねーさ」
そういいながら哀川さんはまるで新しいおもちゃを見つけたみたいに無邪気な笑顔で笑う。
…正直同年代なら惚れている可愛さだ。
「面白いもん見に行くついでに殺人事件でも解いてやろーってな」
殺人?予想はしていたがやっぱり厄介事じゃないか。
「その面白いものとは?」
そう聞いたとき哀川さんは本当に嬉しそうに
楽しそうに
愉快そうに
笑った。
「なぁに、奇跡を拝みに行くんだよ」
…
訂正、予想の斜め上のようだ。
「着いたぜ」
そう言って哀川さんはコブラから撥ねるようにして道路へ飛び降りた。
本当、何をしても様になる人だ。
「ほら、降りてこいよ、いーたん」
意地悪そうに手を差し出される。
「いや、降りるも何も両手両足縛られてるから降りれないんですってば」
カカッ、と楽しそうに笑う。
「いやぁ、いーたんが可愛くてな」
…もし僕が可愛いなら全世界の八割の人類は可愛くなってしまう。
「後の二割は?」
「厄介なことになるだけです、ていうかさりげなく人の心を読まないでください」
味方でよかったといつも思わされている僕の気持ちが分かっているのかこの人は。
「お、嬉しいこと思ってくれるねーいーたーん!」
「はいはい、それで、ここはどこですか?」
抱き着こうとする哀川さんを片手であしらい僕は聞き直す。
まあ哀川さんが本気を出したら僕なんか小指であしらわれそうなものだけど。
「ここは見滝原、私も来たのは初めてだ」
結んだ長い髪を風になびかせながら哀川さんは言う。
僕も聞いたことのない町の名前だ。
「ここで、殺人事件が…?」
「まぁ、それだけじゃねーがなー、殺人、自殺、心中、零崎でも住み着いてるんじゃねーのか」
それはそれで怖いものだ。
ただそれならきっとあいつは協力してくれるだろう。
リアルツンデレなんて世界中探してもあいつしかいないだろうし。
「それで奇跡っていうのは?」
悪戯っぽく笑って哀川さんは僕にこそっと耳打ちをする。
…こそばゆい。
「見つけてからの、オ・タ・ノ・シ・ミ」
退屈な時間はどうして退屈なのか。
それは退屈であるからということ以外に理由がない。
じゃあなんで楽しい時間は楽しいのか。
それは友達だったり、恋人だったり、あるいは仇敵だったり
そんな人間と一緒に過ごしているからだろう。
つまり何が言いたいかというと
僕は今大変に暇である、ということだ。
「振り回されるのは、楽しいことなのかな…」
戯言だろうなぁ…そんな風に思いながら僕は哀川さんの言葉を思い返していた。
いーたんはいるだけで厄介事を引き起こしちまうんだからテキトーにここでブラブラしててくれ。
そのうち厄介事に巻き込まれたら私が参戦してやるからよ。
僕は探知機かなにかかよ。
しかも引き起こすってさも僕が原因のような…。
「いや、だいたい僕なのか」
自虐的になるなんてまるであの頃の僕みたいだ。
玖渚と人生をともにすると誓う前。
僕が誰よりもこの世で一番嫌いなのは自分自身であった頃。
今も好きなんかじゃないが。
「…」
今の僕をあの頃の僕に変えてしまいそうな何かが確かにここにある。
上手くは言えないが、しかし確実に淀みのようなものを感じる。
「…まぁ気長に待つか…」
別に急いで事件とやらを見つける必要もない。
こんなことを言うと哀川さんに殴られそうだが僕自身としては僕と関係ない誰が死んでしまおうとも一向に構わない。
「根っこは変わってなかったりして」
またそんな自虐的な文句で自分を貶める。
案外僕はMなのかもしれない。
Mだけど。
それにしてもなんなんだこの街は。
不良が多すぎるぞ。
まだ金髪は分かる。
ドリルヘアーも一応は理解できる。
青色も玖渚が居るから理解せざるを得ない。
…赤も…哀川さんがいるから理解しないと殴られるかもしれない。
でもピンクはないんじゃないか。
正直ピンク色は不良という域を超えてもはやエンターテイナーとかそういう類だろう。
この街で多くの事件が起こっているのもなんとなくわかるような気がした。
…まさか…あの不良少女達が関わっているなんてことないよな…?
もしそうだとしたらいよいよ僕の体質を疑うぞ。
もしかしたら黒色の髪の毛がおかしいのか?
僕みたいな黒髪の方がイレギュラーだとしたらどうすればいいんだろう。
やはり誰ともかぶらないような色にするしかないのか。
「よっ、今帰ったぜいーたん」
しかしそうなれば僕みたいな無個性が目立ってしまうからなおさら厄介なことになるんじゃないだろうか。
「おい?どーした?考え事か?」
そこで哀川さんの声にはっとし僕は勢い良く、しかし冷静に、そして確実に答える。
「僕は緑色にします」
「何がだよ」
この時ばかりは自分の頭の悪さを呪ったものだ。
需要あるなら次も書く
無いならボロカスに叩いてくれ
とりあえず落ちます
何が需要があるならだだ
需要なくてもとりあえずだらだら書きますわ
2
自分にとって価値観を、あるいは人生観を揺さぶられるような出会いはしたことがあるだろうか。
僕はある。
意外や意外、その人物とは哀川さんでは無かったりする。
もちろんそれが誰なのかは僕の秘密なので言えないが確かに僕にも存在する。
そしてそれは人生に一度きりとは限らない。
流れるように流された僕だからこそ何回も起こるような
そんな出来事。
「はぁ…」
そんな風にため息をついて僕は空を仰いでみる。
哀川さんはまたどこかへ行ってしまった。
「…僕なんかいらないだろうに」
哀川さんの力があれば、いや、哀川さんがいればすべての事件はそれだけで事足りる。
お釣りさえ帰ってくるだろう。
なのになんで僕みたいな傍観者を使おうとするのか、やっぱり天才の思考は理解できない。
そりゃ面白い事になりそうだからさ。
きっと哀川さんはそういうだろう。
僕の気持ちなんか気にせず
自分の気持ちに真っ直ぐに
頑張らない世界に牙を立てて
頑張れない自分に枷をつけて
そうやって楽しむつもりなんだろう。
「だとしたら、なんてうってつけの役割なんだよ」
僕以外にそんなの務まるやつなんかいるわけ無い。
それじゃあ一丁思惑通りに引っかき回してやろうかな。
「戯言だけ………、…?」
言葉にはし難い。
だけど確実に現実の風景ではない。
血の滲むような赤は閃光のように出ては消えていき
海を思わす青は滲むように染み出している
どす黒さを持った緑は不規則に明滅している。
どうやら口で説明するにはいささか無理があるらしい。
「いや、どこなんだよここは」
さっきまでどこを歩いていたかなんて覚えてはいないが、ここではないどこかを歩いていたのは確かに覚えている。
現実にはありえない空間
いや、僕の人生経験が少ないだけで実はあるのかも知れないが。
とにかく今まで生きてきた中で僕は見たことがないような空間。
そこに閉じ込められていた。
「なんだこいつ…」
僕が視線を向けたその先には小さな歪な形をした何かが複数存在していた。
まるで小さな子供が破った紙を糊付けして絵を書いたかのような。
そんなえも言われぬ不気味さを放ちながらそいつらは一歩一歩僕に近付いてくる。
「…!」
僕は顔でこそ焦った顔をしていただろうが内心全くと言っていいほど恐れていなかった。
僕には哀川さんが居るのだ。
あの人と言う人は、根っからのヒーローだからピンチじゃないと出てこないのだ。
本当、主人公にぴったりだと思う。
「…」
それじゃあ哀川さんが来るまで逃げながら考えてみよう。
ここはなんなのか。
僕はなんで迷い込んでしまったのか。
「あれ?」
おかしい。
ここで僕が余計な思考を巡らせればそれはフラグ。
確実にピンチになり哀川さんが、あの人類最強が来てくれる筈なのだ。
「来ないじゃねえかよ」
やってしまった。
忘れていた、哀川さんのヒーロー気質に負けるとも劣らない僕の無為式とかいう大迷惑な体質を。
きっと他の人は何らかのカタチで巻き込まれているのだろう。
「あーあ」
失敗、失敗。
そんなふうに頭を掻きながら
こんなこと何回も経験していたというふうに
世界が優しくなんてないことを理解しているふうに
僕はひどく冷めた目でその襲ってくる何かを見上げていた。
「レガーレ!」
僕が諦めた瞬間、いや、僕なんて毎日毎秒諦め続けているものなんだけれど。
とりあえず何かに襲われそうになった瞬間
黄色い帯がその何かを恐ろしいほどの早さで拘束していた。
「もう大丈夫よ!」
そういって僕にウインクしてくるその少女は
金髪でドリルヘアー、花の髪飾りをしていて服装はいかにも魔法少女もと言う感じ。
というか服こそは違うがさっき街で見かけた。
…さっそくやっちまった感があるがまぁいいだろう。
偶然ということもあるさ。
「やぁぁ!」
少女らしい叫びをあげながらその黄色い少女は実に優雅に、しかし可愛らしく、踊るように何か達を蹂躙していった。
っていうかなんだあれ。
何もないところから銃が出てるぞおい。
しかもえらく古風な銃だ。
マスケット銃、とか言う奴だろう。
僕が考えを巡らせている間にその空間は元通りの
いや元の風景なんて覚えてもいないのだけれど
とりあえず現実の空間に戻っていた。
「危ないところでしたね、大丈夫ですか?」
そういって手を差し出す黄色い少女。
僕はいつの間にやら腰が抜けていたらしい。
いやいやなんとも情けない傍観者なんだろうか。
「ありがとう」
そういって僕は手を取りつっけんどんにならないように気をつけながら礼を言った。
「君は一体なんなんだ?」
初対面の人にこんな質問もどうかと思うがこれ以上の質問が思い浮かばない。
だって本当に気になるんだもん。
「私は魔法少女、巴マミです」
…もしかしてこれは関わってはいけないタイプの人間だったのだろうか。
自分から魔法少女なんて痛すぎるぞ。
それにこの子、全くと言っていいほどその痛さに気づいていない。
「魔法少女?」
「そうともさ」
僕の質問に答えたのは目の前の…ええっと…イエロードリルちゃんではなくて遅れてきたヒーローだった。
「遅いですよ潤さん」
このセリフは僕のセリフではない。
目の前の…イエロードリ
「巴マミだっての」
…巴マミちゃんのセリフだったりする。
「哀川さんとマミちゃんは知り合いなんですか?」
「知り合いってか依頼主だぜ」
依頼主?こんな小さな子供が?
「どんな依頼なんですか?」
なぁに、大したことはねぇさ
そう言って哀川さんは世界を馬鹿にするように空を見上げてこう言った。
「魔法少女のお手伝いさ」
…女装だけは勘弁してくれ…。
とりあえず終わり
ペース遅いし不定期だけど頑張ります
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