マチス「スパイ作戦デース!」 (18)

モスクワのマンションの一室に、一人の女性がいた。
彼女はパソコンと接続されたヘッドギアを、ゲンガーにかぶせた。
ゲンガーが目がつぶると、パソコン画面に少女が現れた。
ウルトラバイオレットのミラ・ジョボビッチ(こんな感じ http://bd-dvd.sonypictures.jp/ultraviolet/site/)を東洋人っぽくした少女だ。
女性は画面の中の少女を確認すると、ヘッドフォンをつけ、パソコンからの音声に耳を傾けた。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406881105

ポケモン?

少女「ズドラーストヴィチェ!見えてる?遠隔夢食いがちゃんと機能していたら嬉しいんだけど。」
女性「(大丈夫。今回は成功みたいね。遠方の人間の夢を食べさせる技術がここまで進歩すると思わなかった。これなら盗聴は相当難しくなるわ。)」
女性はにこにこしてうなづいた。

少女「まず最初の任務についての報告ね。」
少女「私は無事、ジムリーダーになれたわ。」
少女「あなたの言う通り、ヤマブキは私みたいな怪しげな人間でもジムリーダーになれたわ。」
少女「これでポケモン協会の中心部に近づけたわよ。あなたの調査のおかげよ、スパシーバ!」
女性「(うふふふふ。どういたしまして!)」
女性は思わずにやけた。

少女「日本名を使って、日本人学校に行ってましたと言ったら、詳しく調べる気にならなかったみたいね。」
少女「日本人は戦うのが下手だし、こんな外国人をほいほい受け入れる。平和ぼけもいいところよ。」
少女「私の日本名はナツメにしたわ。父がお世話になった日本人女性の名前よ。今度から情報を集める時は、私の日本名が入った情報も拾ってね?」

てす

女性(確かにあの国は平和ぼけしてるわ。世界一のポケモン先進国になったのも、気持ちに余裕があったからよ。)
女性(日本のポケモンとポケモン関係の技術は、ぜひとも我が国の軍事と産業には必要だわ。)
女性(日本にはエスパーポケモンがわんさかいる。旧ソ連時代からずっと追い求めてきた、超能力を使えるポケモンが。)
女性(ナツメ、ロシアにエスパーポケモン関係の情報をたっぷり流して頂戴ね。)

ナツメ「日本のポケモン協会はね、利権が手に入るならどんな人間でも簡単に受け入れるわ。」
女性(思った以上に潔癖じゃないのね、日本のポケモン協会は。)
ナツメ「どうやって潜り込んだかはわからないけど、イッシュ人の協会員もいるの。」
女性「!」
ナツメ「自称退役軍人のマチスという電気ポケモン使い。私の透視によると、彼は現役のCIAよ。」
女性「!!」
女性は思わず立ち上がった。
第二次世界大戦以降、日本にはどんどん、イッシュの軍事基地が増えていった。
ポケモン業界にまでイッシュの基地を作られてはたまらない。

ナツメ「このマチスのことも調べて欲しいわ。彼は要注意人物よ。」
女性(電気ポケモン使いとくれば、盗聴技術も持っているかもしれない…邪魔ね。)
イッシュは近年、ポケモン産業を発達させている。国技が戦争の国だから、軍事産業にも転用するだろう。
いや、もうポケモンを軍事産業に利用するのは、昨今の先進国の常識だ。
女性(憲法第九条に縛られる国が持つ、恐ろしい武器。それがポケモン。)

ナツメ「二つ目の任務の報告もするね。」
女性(はい、どうぞ。)
ナツメ「シルフカンパニーの極秘プロジェクトは、かなり特殊な方法でポケモンをコンピューター経由で輸送する技術の開発よ。」
女性(ふーん、やっぱりそうか。『日本政府は、ポケモンをどこか一カ所に集めてややこしいことをしている』という情報が本当なら、それに関係しているのでしょうね。)
ナツメ「ポナヤツングスカにいた、あのシルフカンパニーの技術者は役に立ったわ。彼を紹介してくれた、あなたの情報収集力は本当に素晴らしいわ。」
女性「(収集したのは私のゴーストポケモンだけど…)」

ナツメ「それからロケット団の件だけど、サカキと今度食事をすることになったわ。これからが正念場ね。」
女性(うんうん、いい感じね。)
ナツメ「ロケット団と北朝鮮はつながりが強いわ。北朝鮮―ウラジオストクルートのポケモン密輸も進むはずよ。」
女性(これはビッグチャンスね!)

ナツメ「ただね、格闘道場をやっつけたから、岩・格闘系の協会員に目をつけられているわ。」
女性(あら、めんどくさい。)
ナツメ「それに、エリカ、キョウ、マツバも危険。エリカは勘がいい。キョウはニンジャらしいから敏感。」
女性(ニンジャに、CIAに、SVR、ヤクザ。めちゃくちゃね。)
※ SVRはロシア対外情報庁のこと。「美しすぎる女スパイ」のアンナ・チャップマンがいた。
ナツメ「マツバは私のテレパシーによると、一刻も早く私を追い出したくて仕方ないみたい。
マチスのことも嫌ってるみたい。排他的なのね。」
女性(とんでもないのが隠れていたわ。)

ナツメ「後数年もしたら、あなたもシンオウのジムリーダーね。その時は、この三人とマチスに気をつけてね。」
女性(了解。)
ナツメ「シンオウでの任務はカントーのそれよりも重要よ。以上で報告は終わるわ。じゃあね、メリッサ。」

クチバジムの防音室で、マチスが電話をかけていた。

マチス上司「マチス、調子はどうだ?」

マチス「日本の海上保安と海戦でのポケモン活用に関する情報収集は順調です。レポートは後々暗号化して送ります。しかし、最近厄介なことがありました。」

マ上司「ほう?」

マチス「日系ロシア人のエスパーポケモン使いが、ヤマブキシティの新しいジムリーダーになりました。おそらくロシア側のスパイです。」

マ上司「阻止できなかったのか?」

マチス「遠回しに反対はしたのですが、協会上部は譲りませんでした。利権が絡んでいるかもしれません。」

マ上司「すぐに調べろ。」

マチス「了解です。」

マ上司「ロシアや中国などの旧共産圏は、人口と国土の割にポケモンの数が少ない。そして、ポケモン関連の産業もさほど発展していない。」

マチス「無茶な政策のせいで人間以上にポケモンも死んだから、ポケモントレーナーが大量に粛正されたから、ですよね。」

マ上司「しかし、軍事と諜報目的のポケモン技術だけが突出している。」

マチス「ナツメはその関係者でしょうね。」

マ上司「特にあの国は元々エスパーポケモンが珍しい。一方で、エスパーポケモンによる諜報、洗脳、殺害にも力を入れている。彼女はよほどの人間だろう。」

マチス「要注意人物ですね。」

マ上司「最近ロシアでは、中南米やイランとのポケモンの輸出入がさかんだが、近場でポケモンの種類も個体数も豊富な日本から輸出できた方がいい。」

マチス「しかし、日本ではポケモンの輸出入の規制が厳しく、特にエスパー系やドラゴン系などの危険なポケモンの輸出入は禁止されていますね。」

マ上司「密輸ルートの確保も狙っているだろうな。日本から北◯鮮へのポケモンの密輸が増えている、という情報もある。それについても調べてくれ。」

マチス「了解しました。」

マ上司「頑張ってくれ。」

マチス「本人もエスパーである可能性もあるので、そこも調べます。」

マ上司「すばらしい視点だ。幸運を祈る。」

マチス「ではまた連絡いたします。」

マチスは電話を切った。

ビリリダマ「びり、びーりびり。」

マチスが振り向くと、不満そうな顔をしたビリリダマがいた。

マチス「異常無しか。ありがとう。」

そう言いつつも、マチスはずっと誰かに見られているような気がしていた。

マツバ(やっぱりマチスさんはおかしいわ。普通、ジムに防音室はあれへんな。)

ハヤト「人がしゃべってる時に、千里眼使うなや!」

マツバ「マチスさんとナツメさんは、早う追い出した方がよろしおすな。」

ハヤト「またカントーさんに口出し?」

マツバ「僕の家は懐獣術の関係の総本山やったん、ご存知でっしゃろ。修験道では亜流でも、懐獣術では宗家ですわ。」

ハヤト「本部がエンジュからカントーに移ったんは、明治維新の時分の話やん。」

マツバ「応仁の乱より後でっしゃろ。」

ハヤト「おうちの人も本部奪還まで要求してはらへんやろ~。」

マツバ「マチスさんもナツメさんも、バトルだけで決まったジムリーダー。血筋も生まれも考えずにリーダーを決めはるなんて、ジョウトの人間にはとても真似できまへんわ。」

ハヤト「お前の考えはほんま古臭いわ。」

マツバ「ちゃんとした人の推薦もあらしまへんし、その土地にとってよそものやのに。おまけに『本式』を守らへんし。」

ハヤト「カントーはキョウさん以来、ジムの地元出身者やない人や、トレーナー一族ではない人を、積極的にリーダーにするようになってるからなあ。」

マツバ「キョウさんは特例中の特例ですわ。色んな意味で才能の塊ですわ。」

ハヤト「あの時、セキチクジムには跡継ぎやはらへんかったらしいな。ほんで、今はサファリの園長してはる先代のリーダーと、その姉のキクコさんと、ヤナギさんの推薦でならはったんやろ?

マツバ「ヤナギさんとキョウさんは同じ近江人やからなあ。」
※ キョウの先祖がいた甲賀は近江(滋賀県)で、ヤナギのチョウジシティのモデルも近江(滋賀県)。

ハヤト「僕の父が当時リーダーやった時、驚愕したらしいですわ。」

マツバ「まさか、ポケモンと関係ないジョウトの人間で、会社の辞令で越して来はった先でトレーナーを始めた人が。」

ハヤト「『セキチクの一族が力持ってて、複数の人間からの推薦もあって、勤めてた会社がポケモン用品で当てたから、あんな離れ業できたんや』って父さんがゆうてた。」

マツバ「『キョウ運』ていう言葉が流行ったくらいの、えらい運の持ち主ですわ。」

ハヤト「次はサカキさんやろ。」

マツバ「あん時はえらい荒れたらしですな。先代のリーダーのオーキドさんが、自殺した直後やで。まだお子さんが小さかったらしのに。」

ハヤト「ほんでオーキド一家はマサラタウンに引っ込んだ。ジョウトでは言えるけど、カントーではタブーやからな。」

マツバ「タブーと言えば、サカキさんは存在自体がタブーやのに。」

ハヤト「ソースはお前とお前のお父さんの千里眼だけやろ。そらやめさせられへんで。」

マツバ「みんなうすうす気いついてるでひょ。ミナキの家の人かて訝しがってましたわ。ジムの代替わりなのに、自分らを呼ばへんのはおかしいって。」

ハヤト「村おこし目的のグレンジムができたのも、あの時期やろ。」

マツバ「カツラさんはほんま立派やて、父がゆうてましたわ。わざわざ遠い遠い所から、父に『本式』について聞きにきてくれはったらしいです。あの町は滅びまへんで。」

ハヤト「お前んちは総本山やし、俺とエリカさんは皇室の儀でポケモン使うから、『本式』を叩き込まれているけど、カツラさんすごいな。」

マツバ「カツラさんに『本式』のことを教えはったんは、キョウさんです。」

ハヤト「ヤナギさんらのアドバイスやな。」

マツバ「ジョウトやったら常識やけど、カントーはあきまへんわ。カスミさんやタケシさんもようわかってはらへん。エリカさんは『協会のルールを守るなら、口を出す気はありません。』はゆうはるてるし。」

ハヤト「ポケモン協会のルールは、『本式』を形骸化した奴やからな。協会本部も真意を理解してへん。」

マツバ「ポケモンは神さんのお使いか、神さんそのものです。コンテストもバトルも神事です。神さんを怒らせたらあかんから、『本式』でせなあきまへん。生まれを重んじるのもそのひとつですわ。それを守らへんから、今のカントーは荒れるんですわ。」

ハヤト(そんなもんなんかな。)

マツバ「せやからよそもんの外国人はいりまへん。今回の件も、エリカさんがいはったら止めてくれはったのに。」

ハヤト「え、エリカさん、選考会議に来はらへんかったん?」

マツバ「この春にタマムシ大学に落ちはったから浪人中です。後があらしまへんからほぼ活動休止で、今回は挨拶だけ。僕は絶対浪人したないから、今からもう必死ですわ。」

ハヤト「エンジュ大学希望とはいえ、お前まだ高一やのにな。頑張れよ。誰がリーダーの代わりしてんの?」

マツバ「エリカさんの許嫁のミナキですわ。」

ハヤト「うわー、あいつと許嫁なん?エリカさんかわいそう。」

マツバ「ミナキはええ奴です。僕の親友です。悪う言わんといておくれやす。」

ハヤト(残念なイケメン同士お似合いや。)

ハヤト「ていうか、ミナキは草ポケモン使えるん?男やのに男子禁制のジムにおってええの?」

マツバ「スイクンゲットの修行になるゆうて頑張ってますよ。それに他の女性に手は出さへんて信用されてます。

ハヤト(ミナキはポケモンでないといけへんから、獣姦もののAVしか持ってへんていう噂はほんまやろか。)

マツバ「未来の婿養子やゆうことで、嫁の仕事を知る勉強も兼ねて、リーダー代理をしてますわ。」

ハヤト(ミナキはあれやし、エリカさんはレズやってマツバはゆうてるし、将来は仮面夫婦確定かなあ。)

ハヤト「まあしかし、ナツメさんは日系ハーフやし、ちゃんと日本人学校行ってて、日本語もしゃべれるんやろ?マチスさんはようわからんけど、クチバの海上治安にも関わってるんやろ。」

マツバ「あんなん、何年あこらへんに住んでますの?帰化してるかどうかも怪しいですやん。」

ハヤト「来てすぐの人間でも、ジムとその地元を守るなら文句は言えへんで。」

マツバ「キキョウの寝倒れはおおらかでんなあ。千年以上ホウオウさんも帰ってきはらへんはずですわ。」

※キキョウの寝倒れは、「平和な土地に住む奈良人はのんびりやで、寝過ぎて身上を潰す」という意味の「奈良の寝倒れ」をもじったもの。

ハヤト(お前んとこも、ホウオウさんに逃げられた癖に。)

ハヤト「お前と同い年やし、写真やとお前やったらすぐがっつきそうな美人やけど、よっぽど嫌なんか?」

マツバ「共学行ってるからゆうて、学校に彼女おるからゆうて、調子乗らんといて下さい。」

ハヤト(ほなお前も共学に行けや。)

マツバ「カントーはバトル重視で、ほんま暑苦しゅうてかないまへん。あずまえびすはバトルバトルと品がよろしおすな。」

※ あずまえびす(東夷)は、京都から見て東の方に住んでいる人、特に洗練されていない東国の武士をバカにした言い方。関東の人、ごめんなさい。

ハヤト「お前もジムで教えてるんは、ほとんどバトルやろ?」

マツバ「バトルちゃいます。懐獣術です。一緒にせんといておくれやす。」

ハヤト(でも協会の前では「バトル頑張ってます!」って言うんやろ。)

マツバ「それに、タンバやフスベみたいな、バトルを大事にするジムもジョウトにはあるんやから。」

マツバ「あんな田舎と一緒にせんといておくれやす。」

ハヤト(こいつの性格の悪さ、いっぺん女の子にばらしてみーたいわ。)

マツバ「カントーで認めてええのはラーメンだけですわ。またラーメン二郎行きたいわあ。」

ハヤト(エンジュ人が舌肥えてるっていうのは、ぜえーったい嘘や。)

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