「まさか高校に通うことになるなんて思ってもなかったぜ、くそったれ!」
入学した高校に至る忌々しいほどに長い坂を登りながら俺様は一人愚痴った。
流石に高校くらい卒業していないとコネがあっても就職は厳しいらしい。
そんなことで俺はこの高校に通うことになった。
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くだねぇ入学式とやらが終わり、割り当てられた教室に向かう。
五十音順に割り振られた出席番号順に座る。
俺の席の感じからすると、俺はベジータ・サイヤとでも登録されているのだろう。
担任が入ってきて、出席番号順に自己紹介をすることとなった。
俺の番が着た。
「惑星ベジータ出身!サイヤ人の王子ベジータだ!」
俺はそれだけ言うと席に座った。
そこかしこでクスクスと言った笑い声が聞こえた。
「何がおかしい!ぶっ殺すぞ!」
俺は教室を一喝した。
静かになった。担任が宥めて、次の奴の番になった。
「東中学出身、涼宮ハルヒ」
少々迷った感じをしつつも少女は続けた。
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
「宇宙人なら前に居るらしいぞ!」
誰かが声をかける。
教室に爆笑が起こった。
俺には何が面白かったのか全く解らない。これだからガキはと思った。
後ろの席の奴はドカッっとでも音がしそうなほど乱暴に座り、俺の椅子の脚を蹴った。
乱暴な奴だぜ。
カプセルコーポレーションほどの大企業の経営者一族に連なるには学歴ゼロはまずすぎだしな
さすがに自分の前に宇宙人宣言されたらハルヒも困惑するのか
てっきり自己紹介そっちのけで絡むと思ったが、自分が決めつけた以外の特殊人間は認めない感じか
ただ世界観どうなってるのかすごい気になるわ
ドラゴンボール世界と混じってたら、トカゲやウサギな人間も人造人間も宇宙人も山盛りでそこらへんにいるわけだが
餃子「超能力が」
天津飯「目が3つで腕も増やせる、あと宇宙人の末裔らしい」
クリリン「間違いなく地球人だけど鼻がない」
亀・鶴仙人&桃白白「年齢500以上」
自己紹介も終わり帰宅の段になると、俺の後ろの席に座る乱暴な女が声をかけてきた。
「あんた、何のつもりなのよ!」
「何って、何をだ?」
「惑星ベジータとかなんとか」
「ありのままを言ったつもりだが?」
「そこまで言うのなら証拠を見せなさいよ」
「断る」
「なんでよ?」
「見せる義理はないからな」
女は
「あっそ」
とだけ言って立ち去った。
自己中心的な野郎だぜ。
ガキどもとなれ合う気もなく一人で過ごしていたら、
いつの間にか梅雨に入ろうかと言う時期になっていた。
授業も終わり、玄関で飛んで帰ろうか悩んでいたら声をかけられた。
「あんた、一人で何やってんのよ」
後ろの席の乱暴女。涼宮ハルヒだった。
「………帰ろうと思ってな」
俺がそう答えるとその女はこちらに真っ直ぐに向かってきた。
俺の前にまできたと思ったら、軽く溜息をつき、腕を掴み引っ張りながら歩き出した。
「もう!仕方がないわね!ついてきなさい!」
「おい!どこに連れて行くんだ!」
「部室っ」
乱暴女はそれだけ答えた。
女は古い方の校舎に俺を連れてきた。
実を言うとこっちにくるのは初めてだ。
文芸部と書かれたドアの前で立ち止まる。
「お待たせー!」
勢いよくドアを開ける。
そして俺を室内に引っ張り込み、
「あんまり気乗りしないけど、自称宇宙人のベジータ君です」
女は俺を勝手に紹介した。
室内を見渡す。他には何故かメイド服を着込んだ女と、窓辺で本を読む少女、それとにやけた顔をした男がいた。
一同は俺に注目している。
暫しの沈黙。
俺が自分から言葉を発することがないと悟ったのか、にやけ面の男が、
「ああ……彼が噂の…」
と言って、
「僕は古泉一樹です。よろしくお願いします」
とにやけたまま挨拶をした。
メイド服も慌てて続く、
「わ、わたしは朝比奈みくるって言います」
最後に窓辺で本を読んでた女が姿勢はそのままで顔だけ俺に向け、
「長門有希」
とだけ言って、再び読書に戻った。
なんだ?この変人集団は?
俺は凶暴女に聞いた。
「おい。俺様をこんな所に連れてきてどうしようって言うんだ!」
女は恩着せがましく答える。
「一人ぼっちで可哀想だから入れてあげるって言ってるのよ」
「前から心配してましたからね~」
とはメイド服。
「大きなお世話だ。勝手にてめえらのお友達ごっこに俺を加えるんじゃねぇ!」
俺を無視して乱暴女が発言した。
「これから毎日放課後はここに集合ね!来なかったら死刑だから」
俺様を死刑に出来るものならやってみろ!
「フン」
鼻で笑って答えてやった。
翌日、俺は部室に寄らず帰った。
そのまた次の日。
朝のHR前のこと。
いきなり後ろから頭を小突かれた。
振り返れば奴がいた。例の凶暴女だ。
「あんたなんで昨日来なかったのよ!」
「フン!貴様らとなれ合う気はないんでな」
すると、女は俺のネクタイを掴み、自身の顔の近くに俺を手繰り寄せて言った。
「いい!今日サボったら本当に死刑だからね!」
ここで担任がやってきた。女は俺を解放した。
終業のチャイムが鳴り、当然俺は帰ろうとする。
が、女がそれを許さなかった。
俺の腕を掴み、部室に強引に連れて行こうとする。
仕方がなく付いて行った。
それ以来、俺はこの部活に毎日参加することとなった。
帰ろうとしても強引に連れてこられるのだからな。
部活と言ってもやる事はなく、朝比奈とか言うメイド女が淹れるお茶を啜りながら、
古泉とか言うにやけ男とボードゲームをするくらいだ。
そんなある日のことだった。
俺様の下駄箱に紙切れが入っていた。
『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室まで来て』
俺は「チッ」と舌打ちをして紙切れを鞄にしまった。
その日も何時もの様に、部活に出て適当に時間を潰した。
そして、その後は適当に校内を歩いて時間を潰す。
そうこうしているうちに、時刻は五時半。
一年五組の引き戸を開ける。
「遅いよ」
委員長の朝倉涼子が俺に笑いかけていた。
「入ったら?」
引き戸に手をかけた状態で止まっていた俺は、その動きに誘われるように朝倉に近寄る。
「てめぇか……」
「そ。意外でしょ」
くったくなく笑う朝倉。その右半身が夕日に紅く染まっていた。
「何の用だ?」
ぶっきらぼうに訊く。くつくつと笑い声を立てながら朝倉は、
「最近、涼宮さんと仲が良いみたいね」
「あいつが勝手に絡んでくるんだがな」
朝倉は笑い声を一つ。
「ふーん。でも安心した。あなたもいつまでもクラスで孤立したままじゃ困るもんね。
一人でも友達が出来たのはいいことよね」
「お友達ごっこをする気はないがな」
「そんな事言わないで…ね。
せっかく一緒のクラスになったんだから、みんなで仲良くしていきたいじゃない?よろしくね」
「………」
放課後、ハルヒはオレの横に立った。
勝ち誇ったような笑みを浮かべて、
「あんたがどうしてもって言うから入れてあげる」
そう言うとオレの腕を掴み、
「行くわよ!」
と引っ張り始めた。
本心ではオレの入部が嬉しかったのだろう。素直じゃない女だ。
今回は引っ張られるままに付いて行った。
古い校舎の一室に連れてこられた。
ハルヒはドアを開ける。
「お待たせ~!」
と挨拶をし、
「どうしても参加したいっていうから連れてきたベジータ君です!」
オレの紹介も終えた。
改めて室内を見渡す。
室内には二人いた。両方とも女生徒だ。
一人がオレに挨拶してきた。
「わたしは朝比奈みくるって言います。よろしくお願いします」
続いてもう一人が、視線を本からオレに移して、
「長門有希」
とだけ言って再び本に視線を戻した。
挨拶も碌に出来ねぇのか!親の顔が見てみたいぜ!
オレはブラの教育に気を付けることにした。
用事も済んだので、オレは「フン」と帰りの挨拶をして部室を後にした。
ハルヒがオレにしがみついて、何かを喚いてたが知ったことか。
その日の夜はブルマに褒められた。
『あんたもちゃんと人に物を頼めるようになったのね』
「ああ、ブラの為だ」
『ところで、どんな部活なの』
「知らん」
『知らん…ってあんたねぇ……』
「入れって言ったのはブルマだろう」
『そりゃそうだけど…どんな感じの子たちが居るの?』
「オレを誘った元気な女と、窓辺で本を読んでる華奢な女と、乳が大きい女だな」
『他には?』
「それだけだ」
『なによ!女の子ばっかりじゃない!』
「ああ、乳と言ってもカカロットの嫁のことじゃないからな」
『そんな事は言われなくても解るわよ!』
ブルマは一息おいて、
『ベジータ……くれぐれも自分の年齢を考えて、間違いを起こさないでね』
「なんのことだ?」
『………まぁ大丈夫だとは思うけど、一応ね』
もっとも、こんな風に最後は妙な感じで終わってしまった。
翌日、朝からハルヒに怒鳴られた。
「昨日、なんで勝手に帰ってたのよ!」
「紹介も終わったし用事は終わってただろう?」
「なんで紹介だけで勝手に終わらせてるのよ!」
わがままな女だ。
「いい?言われなくても放課後は部室に集合。あたしが良いって言うまで帰っちゃダメだからね」
面倒なことになってしまった。
「言うことを聞かなかったら死刑だからね」
「くだらん。お前にオレを殺せるわけがないだろう」
オレの反論を聞くと、ハルヒはむくれた。
放課後になり、部室に向かう。
面倒だがオレの所為でブラを苦労させるわけにはいかないからな。
部室には長門とか言うガキが先にきていた。
長門は相変わらず本を読んでいる。
普段から本ばかり読んでいるのだろう。華奢だ。
十倍の重力にすら耐えられないだろうと思っているうちに、いつの間にか親の気持ちとなって心配になっていた。
オレがそう思っていると、部室のドアが元気よく開いた。
ハルヒだった。オレの顔を見るなり、
「お!着てるわね!感心♪感心♪」
と満足げな笑顔を浮かべて頷いた。
そのハルヒだが、両手に紙袋を持ち、後ろには朝比奈を従えていた。
ハルヒは部の広報活動とか言って妙な服を取り出した。
そして嫌がる朝比奈を無理やり着替えさせようとし始めた。
この光景を見て、オレは考えた。ブラがこの朝比奈の立場だったら?
「オイ!止めねえか!!」
想像と同時に口が動いていた。
ハルヒは不満げに、
「何よ?文句あるの?」
と言ってきた。
「汚ねぇ花火にするぞ」
「はぁ?なんで花火が出てくるのよ」
オレとハルヒの様子を見てた朝比奈が口を挟んだ。
「止めてください~。わたし、着替えますからぁ~」
「ほら!みくるちゃんもこう言ってるじゃない!」
ハルヒは勝ち誇った様に言ってきた。
「チッ」
オレは舌打ちをして部室を出た。
「まだ!帰っちゃダメだからね!」
部室の中からハルヒの声がした。
暫くすると、部室のドアが開いた。
開けたのは奇妙な赤い恰好をした朝比奈だった。
「あの……着替え終わりました。さっきはありがとうございました」
意味の解らない礼を受けて部屋に入った。
ハルヒも朝比奈と色違い----こちらは黒----の妙な格好に着替えていた。
ハルヒは自信満々に、
「どう?バニースーツよ!」
などと言った。どうやらあれはバニースーツと言う恰好らしい。
「知るか」
オレは一言だけ答えた。
「フン!まぁ、いいわ!みくるちゃんビラ配りに行くわよ!」
ハルヒはそう言って紙袋を片手に朝比奈を連れ出した。
教室に残っていた長門がオレに近寄ってきた。
無言で本を一冊差し出す。
「………」
「………」
「………」
「………」
「なんの真似だ?」
一言も発しない。仕方がなくオレから聞いた。
「これ」
差し出した本をオレに寄せる。
「貸すから」
「いらん」
コイツは一体何を言ってるんだ?
「読んで」
引き下がらない。
「断る」
「………」
長門は諦めずに本をさらに寄せてきた。
ハルヒ達も出ていったし、今日はもういいだろう。
オレは長門を無視して帰った。
その日の夜。
ブルマは、
『バニースーツって何よ!』、『無理やり本を押し付けるとか何よ!』
受話器の向こう側で一人うろたえていた。オレが知るか!
翌日、再びハルヒに怒鳴られた。
「なんで昨日も勝手に帰ってるのよ!」
面倒だったので「ふ~ん」、「へ~」等の生返事を適当にしてしておいた。
ここら辺はブルマとの夫婦喧嘩で得た技術だ。
放課後の部室で知ったことだが朝比奈は休んでいたようだ。
部室ではハルヒが何か言っていたが適当に聞き流しておいた。
さらに翌日のこと。
ハルヒが一人盛り上がっていた。
「転校生よ!謎の転校生よ!!」と。
終業のチャイムが鳴り、部室に行った。
部室には長門と朝比奈が着ていた。ハルヒはまだきていない。
オレを見かけるや長門が近づいてきた。
「これ」
そう言って一昨日の本を再びオレに渡そうとしてきた。
「読まん」
趣味の押し付けは良くない。注意した方がいいのだろうか?
そう言えば、トランクスはトレーニングをサボってないだろうな?少し気になった。
オレがそんな事を考えていると、長門は本をめくり一枚の栞を取り出した。
「じゃあ、これ」
そう言って栞を渡してきた。
「必要ない」
さっきから何をしたいんだ?
今度は栞を裏返した。何か書いてある。
「読んで」
朝比奈も何事かとこちらを見ている。
「自分で読め」
オレの返事を聞くと長門は栞をオレの制服のポケットにねじ込んできた。
オレは栞を取り出すと目の前でグシャっと捻じってゴミ箱に放りこんだ。
流石の長門も諦めたのかオレから離れた。
と思いきや、鞄からノートを取り出し、マジックで何かを書いている。
書き終わると、
『午後七時。光陽園駅前公園で待つ』
と大書きされたノートをオレの前で広げた。
「みえてる?」
長門が聞いてきた。
「あ、ああ」
オレを近眼だとでも思ったのか?
「信じて」
長門はそれだけ言うと窓際の指定席に戻って行った。
何だったんだ?
続けて叩きつけるかの様にドアが開いた。
ハルヒだ。
ハルヒはズカズカと進み、一番奥にある席に乱暴に座った。
あの席は偉そうで気に入らない。
ガキのやる事だから見逃してるが、
もしカカロットのヤロウがあそこに座ってたらぶっ殺してるところだ。
ハルヒは座るなり、不機嫌そうに口を尖がらせ、
「みくるちゃんは?」
と誰に対してでも無く言った。
それに答えたの古泉だ。
「掃除当番で遅れるそうです」
「不思議探索をサボる奴がいたり、掃除当番で遅れたり、不思議探索をサボる奴がいたり、だらけてるわね」
ハルヒはオレをジトーっと見てる。言いたいことがあるならハッキリ言いやがれ!
「一つ提案があるのですが」
古泉が不機嫌なハルヒに声をかける。
「ベジータさんは土曜日にこなかったので、今からお二人で不思議探しに行ってはどうでしょうか?
新たな発見があるかもしれませんよ」
ハルヒは不機嫌そうに腕を組み、口をへの字に曲げて、
「こんな奴に期待できるとは思えないけど……まぁ、いいわ!古泉くんがそう言うなら試してみてあげる」
ハルヒはそう言うと、足早にオレに近づき、腕を掴むと「行くわよ」と言い始めた。
古泉に不機嫌な女を押し付けられた。
厄介に思いつつ、仕方がなくハルヒに付いて行く。
どれほど面倒かと思いきや、存外に楽だった。
週末にブルマを宥めていたのとは比べられる様なものでは無かった。
具体的には、まずファーストフードを奢り、
ハルヒに引っ張られるままに河川敷を散歩し、
ベンチに座ってハルヒの無駄話に合わせて適当に相槌を打って聞き流す。
それだけで上機嫌になった。
途中、警察とか言う奴にハルヒとの関係や身分証の提示を求められた。
「この生年月日は?」
などと聞かれたが、何故かハルヒが怒って追い払っていた。
おかげでサイヤ人は若い時が長いなどと言わなくて済んだ。
その日の夜、ブルマに怒鳴られた。
ブラも大きくなったらオレの手を引いて散歩するのかと思いながら、
今日のハルヒとの散歩を報告したら、
『バカッ!!』
とだけ言われて電話を切られた。
少しは機嫌が直ったかと思っていたが、まだまだの様だ。
朝のHR前のこと。
ブルマと異なり、すっかり上機嫌になったハルヒが声をかけてきた。
「転校生よ!転校生!立て続けに転校生って絶対に何かあるわよ!」
よく解らんがそうらしい。
終業のチャイムが鳴ると、
「先に部室に行ってて」
ハルヒはそう言って教室を出ていった。
言われなくてもそのつもりだ。
オレは部室に行った。
部室にはハルヒ以外の面子が揃っていた。
オレが席に座ると長門がオレの近くにやってきた。
長門はオレの前の机に紙切れを叩きつけるように置いて、指定席に戻って行った。
『gogo7ji.kouyouenkouendematu.』
紙切れにはこう書かれていた。
長門はオレを見ようともせずに聞いてきた。
「読める?」
オレがヘボン式を読めないとでも思ったのか?
オレは紙を丸めながら、
「舐めんなよ」
と応じた。
古泉は何を思ったのか、「まぁ、まぁ」と宥めてきた。
朝比奈は「あわわ、あわわ」と声を出して慌ててる。
こいつらはオレがガキを殴るとでも勘違いしてるのか?
そう思っていたらドアが開いた。
ハルヒが誰かを連れている。
オレはそいつに見覚えがあった。
あの髪型、顔つき、反射的に声が出た
「カ、カカロット!?」
「嫌だなぁ~おとうさんと間違えないでくださいよ。ベジータさん、ボクですよ。」
よく見たら悟天だった。紛らわしい髪型をしやがって!
「あんたたち知り合いなの!?」
ハルヒが口を挟む。
「ベジータさんとボクのおとうさんは友達なんですよ」
「カカロットのヤロウと友達になった憶えはねぇ!!」
悟天の発言を取り消した。
「えっと……孫悟天って言います。よろしくお願いします」
オレを無視して悟天が自己紹介をしてた。
ハルヒの戯言を聞き流していたら、いつの間にか部活が終わっていた。
無事に部活を終えて下校していると悟天が付いてきた。
「おい!どこまで付いてくるんだ」
オレの問いに、
「あれ?ブルマさんから聞いてませんか?ボクも一緒に住むんですよ」
「なんだと!?」
「ブルマさんが心配してて……まぁ、ボクとしてはお小遣いも貰えるし問題ないんですけどね」
ブルマは組み手が出来ないオレを心配したんだろう。流石だ。
「でも、可愛い子が多い部ですね。ブルマさんでも心配になるはずですよ~」
女が気になるとはカカロットはどんな教育をしているんだ?
「ボクを勧誘した元気な子もいいし、あのおっぱいの大きな先輩もいいし、窓際で本を読んでた子もいいですよね」
そこでオレは思い出した。
鞄から丸めた紙を二枚取り出し、悟天に捨てる様に言っておいた。
悟天は渋々それを受け取り、適当なゴミ箱に放り込んでいた。
ちなみに、一通は長門から渡された紙で、もう一通は朝下駄箱に入っていた紙だ。
『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室まで来て』
と書いてあったが、差出人も書いていない失礼なものだった。
用があるならてめえの方から来やがれ。そういうことで無視することにした紙切れだ。
道中、「やっぱり、髪型を変えた方がいいですかねぇ?」なんて言っていたが無視してておいた。
組手相手として期待した悟天だったが、全く役に立たなかった。
カカロットのヤロウはこいつをほとんど鍛えてなかったらしい。
仕方がないので、組手相手半分、雑用係半分にしてやった。
下級戦士の息子にはお似合いだ。
「酷いですよ~」などと言っていたが生まれと自分の弱さを呪うんだな。
朝食の後片付けを悟天に任せて、オレは一足先に学校に着いた。
下駄箱を開けると何かが二つ入っていた。
一枚は昨日と同じ紙切れで、
『今日こそ放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室まで来て』
昨日と同じく差出人の名前はない。
もう一つは封筒。裏には『朝比奈みくる』こちらには差出人の名前が書いてある。
どうでもいいが、こいつらはオレの下駄箱を郵便箱と勘違いしてるんじゃないのか?
朝比奈からの封筒を開けてみる。
『昼休み、部室で待ってます みくる』
言いたいことがあるなら自分から来やがれ。
オレはこれらを適当に丸めてゴミ箱に放り込んでおいた。
朝のHR前にハルヒがオレと悟天との関係を聞いてきたが、
「説明するのもめんどくせぇ!てめぇで考えやがれ!」
と注意しておいた。プライベートを聞き出そうとするのはあまりよくないことだからな。
昼休みは学食で悟天に飯を奢ってやった。
余り飯を置いてなかったようで悟天と軽く食べたら、売り切れと言われてしまった。
ハルヒも居たようで、
「あんたたち大食いでテレビに出られるわよ!」
などと目をキラキラさせて声をかけてきた。
オレは面倒で無視していたが、悟天は愛想よく応じていた。
放課後になり一人部室に向かった。
部室には例によって長門が読書をしていた。
オレが部室に入るなり、
「おそらく涼宮ハルヒには自分の都合の良いように周囲の環境情報を操作する力がある」
突然何かを言い出した。
「わたしは涼宮ハルヒを観察してる宇宙人。それが、わたしがここにいる理由。あなたがここにいる理由」
オレは社会常識を学びにきた宇宙人だがな。
「あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。危機が迫るとしたらまずあなた」
フリーザの襲来や人造人間はカカロットのヤロウだったが、ついにオレの時代ってことだな。
「信じて」
長門は見たこともないほど真摯な顔をしていた。
心配するな。信じるわけがないだろう。これもブルマが言ってた、中学生くらいの子の妄想だ。
「ああ、そうだな」
子供を傷つけないように話を合わせておいた。ブラが生まれてからどうも甘くなってしまった。
特に女の子に対しては守らないといけないと思ってしまう。
長門はオレの言葉を聞いて満足したのか読書に戻った。
それから暫くすると朝比奈がやってきた。
朝比奈から手紙を貰っていたことを思い出し、
「オレに何か用があったのか?」
と聞いたらキョトンとしていた。
こいつは痴呆症なのか?
古泉、悟天と連続してやってきて、最後にハルヒがやってきた。
ハルヒはオレを見るなり、
「なんで先に部室にきてるのよ!あたしの掃除が終わるまで待ちなさいよ!」
と言ってきた。
知るか。
こうして部活も終わった。
帰り道に悟天が、
「涼宮さんって絶対に気がありますよ!」
とほざいていた。
どう感じたらハルヒが人造人間に見えるんだ?
カカロットの息子がここまでボンクラとは思わなかったぜ!
家に帰り着き、悟天と組手をしていたら呼び鈴が鳴った。
悟天が出る。
「ベジータさんと同じクラスの朝倉って女の子みたいです」
朝倉は確か委員長をやってる奴だと思い、
「居間に案内しておけ!オレは着替えたら行く。案内が終わったら茶菓子でも用意しておくんだな!」
悟天に指図を終えたオレは軽くシャワーを浴びに行った。
シャワーを浴び終えたオレは、新たなアンダースーツに着替え居間に向かった。
朝倉は居間の椅子に座っていた。
テーブルの前にはお茶が出ていない。
悟天のヤロウは何をグズグズしてやがるんだ?
居間のドアを開けてそう考えていると朝倉が声をかけてきた。
「遅いよ」
汗臭いままだと失礼だと思いシャワーを浴びたが待たせてしまったようだ。
悟天が相手をしてると思ったのだが失敗だった。
「シャワーを浴びてたからな」
オレはそう言って居間に入った。
朝倉は椅子から立ち上がり、
「教室に呼び出してもきてくれないから押しかけちゃった」
朝倉は悪戯をした子供の様に笑った。
例の紙切れは朝倉の仕業だったらしい。
「何の用だ?」
「用があることは確かなんだけどね。ちょっと訊きたいことがあるの」
朝倉はオレの真ん前にまで着ていた。
「人間はさあ、
よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔するほうがいい』って言うよね。
これ、どう思う?」
「やらない方がいいな」
オレは即答した。
フリーザを無駄に変身させたこと、
ゲロの人造人間と戦いたくて開発前にどうにかしようとしたブルマを制止したこと、
セルの完全体を見たくて18号を吸収させたこと、
トランクスが殺されたことに激情してセルを攻撃したこと、
カカロットと互角に戦いたくてバビディの術を受け入れたこと、
一人で戦ってみたくてポタラを握りつぶしたこと、
やってしまった様々なことを思い出した。
その所為で、
死期を早めたこと、
人造人間に敵わずにあわや人類が危機に陥りかねなかったこと、
セルに全く敵わないだけでなくカカロットが死んでしまったこと、
オレを庇った悟飯が怪我してセルに負けそうになったこと、
ブウが復活してしまったこと、
ブウに負けそうになったこと、
後悔したり、後悔じゃ済まない事態になりそうだったとしみじみと思った。
朝倉は心底意外そうな顔をして、
「あら?あなたって意外と保守的なのね」
朝倉は一息おいて、
「でも、あたしはもう我慢できないの。死んで」
後ろ手に隠していたつもりであろう朝倉の右手が一閃、オレの首めがけてナイフを薙いできた。
オレが教室に行かなかったり、ここで待たされたのが我慢できなかったのだろう。
短気な女だ。
オレは朝倉の右手首を掴みナイフを取り上げると、目の前でへし折った。
「!」
右手を解放された朝倉はいきなり五メートルくらい後ろにジャンプした。
「やるわね。でも、この空間は、わたしの情報制御下にある。誰も出入りできないし----」
その時。
壁をぶち破るような音とともに間抜けな声がした。
「ベジータさ~ん」
泣きそうな声を出してるのはお盆の上に茶と洋館を乗せてる悟天だ。
「てめぇ!壁を壊して入るとはなんだ!!」
カカロットのヤロウはどんな教育をしてやがるんだ!?
「そんなことを言っても、ここ建て付け悪すぎますよ~」
「なんだと!?」
「お茶を淹れてたら台所に閉じ込められたし、居間への入り口もなくなってたんですよ」
チッ!後でブルマに文句を言おう。とりあえず悟天の粗相を朝倉に謝らないといけないな。
オレがそう思っていたら、朝倉が先に口を開いた。
「邪魔する気?」
「おい!悟天を許してやれ」
オレは朝倉に対して言った。
「いやだと言ったら?」
「そこまで怒ることじゃないだろう」
「二対一なら勝てると思う?ここでは、わたしのほうが有利よ。この家はわたしの情報制御空間」
空間が凝縮し槍状となりオレと悟天を襲う。
朝倉の周囲の空間も歪んでいる。
どうやっているのかわからない。
ただ、攻撃の主は朝倉だということは瞬時に判断できた。
悟天の粗相が気に入らなかったから暴れているのだろう。
短気にも程がある。
………昔のオレの様で少々羨ましくもあるがな。
兎に角、他人の家で暴れすぎだ。
どんな家庭で育ったらこんな風に育つんだ?親の顔が見てみたいぜ。
オレは親に変わって朝倉を注意するために一気に朝倉に近づいた。
「!?」
オレの接近を受けて朝倉は驚愕の表情を浮かべた。
構わず左腕で朝倉の腰を抱え上げた。
オレの正面を向いている形となった朝倉の尻に平手打ちをした。
「いた~~~い!!」
朝倉が叫んだ。
「当り前だ!痛くなるように叩いてるんだからな!」
「べ、ベジータさん!あ、相手は女の子なんですし………」
悟天が心配そうな声を出す。
こいつはオレが思いっきり叩くとでも思っているのか?
三発も叩き、やりすぎたかな?と思っていたら、
「情報結合の解除さえできればあなたなんか」
と泣きながら言ってきた。
オレは朝倉を解放し、
「ほう?その情報結合の解除とやらが出来ればオレに勝てると言いたいのか?」
「そうよ!あなたたち有機生命体なんて一瞬で情報の断片になっちゃうんだから」
「面白い。いいだろう。やってみろ」
「あ、あの~やめておいた方いいんじゃ………」
悟天が心配そうに声をかけてくる。
これだから純粋なサイヤ人じゃない奴は……なぁ?カカロット。心の中で呼びかけた。
「どうした?『やらなくて後悔するよりも、やって後悔するほうがいい』んだろ?」
「いいわ。やらせて後悔しなさい。情報結合の解除を申請したわ」
「………」
「………」
「………」
「どうした?なにも起きんぞ?」
「ちょっと待ってよ!許可制なんだから!」
「そ、そうか」
「あ!許可が出たわ!」
「よし!こい!」
「………」
「………」
「………」
「どうした?まだか?」
「ちょっと待ってよ!解析と演算をしないといけないんだから!」
「……そうか。面倒なんだな」
「大体なんでこんなにエネルギー量が多いのよ。
しかも情報制御空間にもう一つ高エネルギー体があるから干渉するし」
朝倉がブツブツ言っている。
「あ!湯呑とかお茶菓子に埃が被っちゃったんで新しいのを持ってきます」
悟天が思い出したかのように言い出した。
「お茶かコーヒーどっちがいいですか?」
「コーヒーの方がいいわね」
「オレも同じでいい」
悟天は「わかりました~」と言って台所に向かった。
オレは一つ言い忘れたことがあるから首を台所の方に向けて、
「ミルクと砂糖はたっぷり----」
「あっ!」
朝倉が突然叫んだ。
「どうした?」
「もう!勝手に動かないでよ!あなたの場合は動くとエネルギーの位置情報が大きく変わるんだから!」
朝倉が怒っている。
「演算のやり直しじゃない!」
「す、すまん」
つい謝ってしまった。ブルマとの生活で女に怒られると反射的に謝ってしまう癖がついていたようだ。
悟天がコーヒーとクッキーを持って居間に戻ってきた。
コーヒーカップが三客あるところを見ると悟天もここで飲むつもりらしい。
悟天はお盆をテーブルの上に置き、
「コーヒーを持ってきました。ベジータさんも座ったらどうですか?」
などと言ってきた。
オレは動けないんだ!くそったれ!
朝倉がオレの懊悩に気が付いたのか、
「ここからゆっくりと真っ直ぐに進んで座るくらいなら大丈夫よ」
と動きを示唆した、
「そうか」
「さっきみたいに不規則に動かれると困るけど、コーヒーを飲むくらいなら問題もないし」
朝倉からお墨付きをもらったオレはテーブルに着いた。
暫し三人で談笑した。
もっともオレは無駄話が苦手だし、朝倉も上の空で、悟天が一人で喋ってた感じだったがな。
コーヒーを飲み終える頃になって、
「やった!終わったわ!」
朝倉が歓喜の声をあげた。
「あなたももう自由に動いていいわよ!まぁ、すぐに終わっちゃうでしょうけど」
朝倉は勝ちを確信したかのような口調。
オレが椅子から立とうとしたら、
「情報連結解除、開始」
いきなりだ。
朝倉の宣言と共にオレの指先が結晶化していき、キラキラした砂となって崩れ落ちはじめた。
期待していなかったがこれは予想外だ。
オレはスーパーサイヤ人になった。
さて戦おう!そう思った時、
「あーーーっ!!ひっどーーーい!!」
朝倉が悲痛な叫びをあげた。
「なっ!?どうした?」
「変身するなら先に言ってよ!!情報が全部書き換わって情報連結解除が無効になったじゃない!!」
「わ、悪かった。すまん」
あまりのリアクションに思わず謝ってしまった。
朝倉は泣きそうな顔でジトーッとオレを見てる。
「よ、よし!こうしよう!このままでいるからもう一度チャレンジするのはどうだろう?」
「全然違うから一から解析のしなおしだし、エネルギー量も段違いに増えて時間がかかるからもういいわ!」
朝倉はお冠だ。難し年頃だ。ブラもこうなるのだろうか?一抹の不安がよぎる。
「わたしはもう帰るから。じゃあね」
朝倉は帰ろうとする。
「待ちやがれ!」
オレは朝倉を引き留めた。このまま帰すわけにはいかない。
「時間が時間だ。親御さんに電話をしろ。心配してるだろうからな」
「まだ六時半ですよ!?」
悟天が口を挟む。
息子と娘じゃ門限が違うに決まってるだろうが、このくそったれめ!!
「わたしに電話をかけるような親は居ないわ」
朝倉は平然と答えた。
「ふざけるな!子供、ましてや娘をを心配しない親などいるものか!」
「わたしの……そうね、あなたたちの言うところの親は心配しないのよ」
「オレが説教してやる。電話をかけやがれ!」
「居ないわ」
「なに!?」
「わたしに電話をかけるような親は居ないと言ったのよ」
こいつには両親が居ないと言うのか?
オレはなんて酷いこと言ってしまったんだ!
こいつはあの世の親が心配しないようにと胸を張って生きてるんだな。
「……悪かった。すまんな」
自分の軽率さを後悔した。これがブルマの言っていた社会常識って奴だったのか。
「だが、お前の世話を見ている同居人が居るんだろう?」
「居ないわ」
朝倉は平然と答える。
「まさか一人で暮らしてるのか!?」
「そうよ?何か変かしら?」
「もしかして飯とかも一人なのか?」
「もちろん♪」
朝倉は笑顔で答える。
こいつは弱ってるところや寂しい所を見せたくないプライドの塊なんだな。
「帰りは悟天に送らせる。飯を食っていけ」
「え!?でも……」
「ゴチャゴチャ言うんじゃねぇ!!オレ様がお好み焼きを焼いてやるんだ!!大人しく食いやがれ!」
プライドが邪魔してるであろう朝倉を一喝した。こうでもしないと食って行かないだろう。
オレがそうだからな。
朝倉を悟天に任せオレは買出しに行った。
まずはキャベツ、次はニンジン、ブタ肉はいいツヤをしてる新鮮な奴だ。
山芋も籠に入れる。
後は、小麦粉、卵、天かす、きざみショウガを籠に入れる。
残るは、ソース、青のり、おかか………おっと!大事なマヨネーズを忘れてた。
こうして買出しを終えたオレは家に帰った。
家に帰ったオレはお好み焼きの準備に取り掛かる。
朝倉が「何か手伝おうか?」と言ってきた。
料理を手伝う機会もあまりないのだろう。
オレは朝倉にお好み焼きの生地を溶かさせた。
刃物を持たせるわけにはいかないからな。
指でも怪我をされたら大事だ。
そういえば、悟天が壊した居間の壁や壊したと言ってた台所の壁が直っていた。
オレが買い物に行ってる間に朝倉が直したらしい。
早技もそうだが、依然と全く変わらない補修がなされていたことに驚いた。
こいつには大工の才能があるのかもしれんな。
準備も整い、居間のホットプレートの電源を入れる。
朝倉の相手は悟天に任せた。
意外と重宝するなと感心しているうちにプレートが温まる。
豚肉を焼き、そこに生地を垂らし数分。
天井をぶち破るような音とともに瓦礫の山が降ってきた。
オレは朝倉を左脇に抱え瓦礫の飛ばない場所に避難させた。
悟天に声をかける。
「大丈夫か!」
「はい!テーブルごと部屋の外に運べました!」
それでこそサイヤ人だ!お好み焼きは無事だ。
しかし、悟天も建て付けが悪いと言っていたがここは欠陥住宅なのか?
そう思っていると、
「一つ一つのプログラムが甘い」
長門は瓦礫の山に立ち平素と変わらない無感動な声を出している。
オレは長門が犯人だと断定した。
「天井部分の空間----」
「長門ーーーーーーー!!!」
「なに?」
「これはお前がやったのか?」
「そう」
オレは長門に近づく。
「あなたは動かないでいい」
長門の言葉を無視して近くに立った。
そして比較的綺麗な床を指さし、
「そこに正座しやがれ!!」
と命じた。
「なんで?」
長門は小首を傾げる。それでも大人しく従い正座をした。
「なんで天井から入ったんだ?」
「入りやすかった」
入りやすいから天井からだと!?コイツはどんな教育を受けてるんだ?
オレは親を呼び出して説教することにした。
「おい!親に電話をしやがれ!」
「居ない」
しまった!こいつもなのか?
「す、すまん。保護者とかは?」
「最初から、わたししかいない」
こいつは孤児だったようだ。可哀想なこと聞いてしまった。
「……聞き難いんだが、養護施設とかで生活しているのか?」
「違う」
「一人暮らしか?」
「そう」
「何時からだ?」
「三年間、わたしはずっとそうやって過ごしてきた」
道理でコミュニケーション能力が低いと思ったぜ。
親が居ない子供たちがこんなに居るとは……知らない間に目頭が熱くなってた。
オレは長門を不問にした。
長門と朝倉は、
「独断専行は許されて無い」
とか
「もうしないわ」
と話し合っていた。
長門が天井を元に戻すとか言っていたが、
「気にしなくていい」
と答えておいた。孤児に修理代を出させるわけにはいかないからな。
長門は「そう」と言って帰ろうとしたが呼び止めた。
「お前も帰ったら一人なんだろう?」
長門は黙って頷く。
「お好み焼きを焼くから食って行け」
長門はもう一度頷く。
庭でお好み焼きを焼くことにした。
長門は「そう」と言って帰ろうとしたが呼び止めた。
「お前も帰ったら一人なんだろう?」
長門は黙って頷く。
「お好み焼きを焼くから食って行け」
長門はもう一度頷く。
庭でお好み焼きを焼くことにした。
庭にてお好み焼きを焼くの再開した。
「ふはははは!どうだ!うまいか?」
長門は無表情のままパクパク食べている。
「おいしい」
表情から窺えないが、あの速度は満足している証拠だろう。
「そうか!朝倉も遠慮するなよ!どんどん焼くからな!」
「は~い」
朝倉も笑顔で食べている。
二人とも満足そうでなによりだ。
ただ、長門が思ったよりも食べたから悟天の分が減ってしまった。
大した問題ではないがな。
食事も終わり二人を送ることとなった。
二人とも同じマンションに住んでいるらしく、見送りは悟天に任せることとなった。
オレは玄関まで付いて行き、
「飯くらいならいつでも用意する。気が向いたら来い。今度はたこ焼きを焼いてやるからな」
そう言って見送った。
二人が食器の片づけを手伝ってくれたのである事を考えるのに専念できる。
その事、ブルマに天井の説明をどうするか考えながら居間に入った。
すると居間の天井が直っていた。
おそらく朝倉の大工技術によるものだろう。
もはやあいつは匠の域だ。大したもんだぜ。
翌日となり、ハルヒももしやと朝のHR前に思い聞いてみた。
「おい!両親はいるのか?」
「突然何よ?」
ハルヒは怪訝な顔をした。
「答えたくないなら別に構わんが………」
「そうね…親父は野球が好き。
母親が味オンチで料理下手なのに、お弁当を作りたがる事を除けば普通の家庭だと思ってるわ」
「そうか……例え料理が下手でもお弁当を作ってもらえ。味わえる機会はそう多くないんだからな」
朝倉と長門を思い浮かべる。何故か目頭が熱くなってしまった。
ハルヒは、
「なによ偉そうに!」
と言って口をへの字に曲げてそっぽを向いてしまった。
ハルヒの両親が健在で何よりと思っていたら放課後になっていた。
オレは部室に向かう。
部室には長門と朝比奈が着ていた。
朝比奈ももしやと思い聞いてみた。
「おい!両親はいるのか?」
「ふぇ?あ、あたしですか!?」
朝比奈は不自然な程に慌てた。
「そうだ」
「あの……それは[禁則事項です]」
「それは言いたくないってことだな?」
「ま、まぁそんなところです」
どうやらこいつも両親が居ないらしい。世の中腐ってやがる!くそったれ!
「今日の六時半、うちにこい!」
「え!?何か用ですか?」
「一人で飯を食うのも寂しいだろう。オレ様が作ってやる!」
「は。はぁ……」
朝比奈はキョトンとしていた。
それから古泉と悟天が一緒に部室に入ってきた。
古泉は部室にハルヒが居ないのを確認するとオレに対して、
「涼宮さんの事で話があるのですがいいですか?」
と言ってきた。
「くだらん。どうせ涼宮が好きとかそういう話だろう?」
普段のこいつの言動を見ていれば解る。
「ええ~!!そうだったんですかぁ~!!」
朝比奈が嬉しそうな声をあげる。
部活の内容はどうでも良く、
普段からこいつは涼宮の機嫌を損ねない様な言動を心がけているからな。
立ち位置や動きもすぐにフォローできるように動いている。ガキでも解るぜ。
「あ、いえ……涼宮さんはとても魅力的な女性だとは思いますが----」
「悪いがオレは恋愛ごとには疎いんでな。他の奴に相談しな」
「いえ!ですから僕は----」
「頑張れよ」
オレは腕を組んだまま指だけを立てて古泉を激励した。
まさかオレが恋愛相談を受けるとは思ってもなかったぜ!
古泉も両親が居ないかも知れないが男だし一人でもなんとかするだろう。
下級戦士なら赤ん坊の頃から他の惑星に送り込まれるんだしな。
地球人でも古泉くらいの年なら一人で惑星の一つか二つ滅ぼしていてもいいくらいだ。
朝比奈に詮索されている古泉を見ながらそう考えていたら、ドアが乱暴に開けられた。
「バカベジータ!昨日も言ったでしょ!あたしの掃除が終わるまで待ちなさいよ!」
ハルヒが部室に入るなり怒鳴ってきた。知るか。
こうして今日も恙なく部活が終わった。
帰り道で悟天が「三角関係かぁ~」などと独り言を言っていた。
それを言うなら三角関数だろう。下級戦士の息子は勉強が苦手らしい。
やっぱり血筋は大事だな。
オレは途中でタコ焼きの材料を買いに行った。
悟天には先に家に帰って、たこ焼き器の準備をしておくように言っておいた。
>>236 少し手直し
「バカベジータ!昨日も言ったでしょ!あたしの掃除が終わるまで待ちなさいよ!」
ハルヒが部室に入るなり怒鳴ってきた。知るか。
こうして今日も恙なく部活が終わった。
帰り道で悟天が「三角関係かぁ~難しいなぁ」などと独り言を言っていた。
それを言うなら三角関数だろう。下級戦士の息子は勉強が苦手らしい。
やっぱり血筋は大事だな。
オレは途中でタコ焼きの材料を買いに行った。
悟天には帰ってたこ焼き器を準備しておくように命じた。
明石の天然物のタコを三杯ほど買った。
その他メリケン粉等も買って準備は万端だ。
良いタコが手に入り上機嫌だったオレを出迎えたのは古泉だった。
家の前で待ち構えていた古泉は、
「こんにちは」
笑顔で挨拶をしてきた。
「少しばかりお時間を借りていいでしょうか。案内したいところがあるんですよ」
笑顔のままで古泉は聞いてきた。
「ダメだ」
オレの持っているタコが見えないのか?
「せめて話だけでもお願いします」
古泉が懇願してきた。
「料理を手伝え。話ならそこで聞いてやろう」
「ありがとうございます」
古泉はそう言うと、オレの後ろについて家に入ってきた。
タコを茹でながら話を聞いた。
悟天は「ボクは居ない方がいいと思いますから居間にいますね」と出ていった。
なんのことなんだ?
古泉がタイミングを見計らい、オレに声をかけてきた。
「涼宮さんには願望を実現する能力があります」
長門もそんなことを言っていたな。例の中学生くらいの子の妄想って奴だ。
「涼宮さんが特別であることは、長門さんや朝比奈さんから聞いていると思います」
朝比奈は言ってないぞ。まぁ、妄想だからな。
「ですから時間がないのでその辺は省きますが、
我々は世界は三年前に作られたのかもしれないと考えています」
省き過ぎて言っている意味が解らんぞ。
「一番の謎はあなたです」
サイヤ人は常識では測れないからな。
「あなたはあのブルマ博士の内縁の夫ですが、経歴が全く解りません。
それこそ二十二年前に突然空から降って湧いたとしか考えられないのです」
二十二年前と言えばナメック星から飛ばされた頃だな……と昔を懐かしんだ。
「我々はあなたは涼宮さんに作られた存在だと考えています」
ハルヒは生まれてないだろう。妄想でも少しは考えやがれ。
「涼宮さんが生まれる前に力を行使できるわけがないので、三年前に世界は作られた。そう考えているのです」
ほぅ?一応は考えていたんだな。
「三年前にそれまでもあったかのように作られた世界なのに、あなたの記録は欠落しています」
それまで地球に居なかったんだ。仕方がないだろう。ゲロの野郎はその前の戦闘も観察してたがな。
「そして今、あなたは涼宮さんの近くにいます。
ひょっとしたらあなたが世界の命運を握っているということも考えられます。
これは我々からのお願いです。どうか涼宮さんがこの世界に絶望してしまわないように注意して下さい」
古泉の妄想を聞き流していたら呼び鈴が鳴った。
朝比奈が来るにはまだ早いと思いながらタコを湯から上げて、居間に行った。
居間には悟天の他に二人の女学生が居た。
朝倉と長門だ。
朝倉が椅子から立ち上がり、
「お言葉に甘えて今日もお邪魔しに来ました」
そう言ってお辞儀をした。
「ああ、今日はたこ焼きだ遠慮せずに食いやがれ」
「実は長門さんからそう聞いてたんだ」
と笑顔で応じていた。
「それとこれ」
朝倉は寸胴を指す。
「なんだそれは?」
「おでんです。こういうのも皆で食べた方が美味しいでしょ?だから、持ってきちゃった」
初夏におでんと言うチョイスもなんだが寸胴を持ってここまで来たらしい。
色々な意味で凄い女だ。
「温めたいのでお台所をお借りしますね」
オレの返事を待たず、朝倉は寸胴を持って台所に向かって行った。
長門は長門で缶詰でピラミッドを立てていた。
「これ」
土産らしい。
「なんだそれは?」
「カレー」
普段から缶詰食品で暮らしているのだろう。
世の中間違ってやがるぜ!くそったれ!
「……温めるなら台所を使え」
「そう」
長門は缶詰を持って台所に向かって行った。
オレは長門が去ったのを確認して悟天に声をかけた。
「おい」
「え!?なんでしょう?」
「米を炊いておけ」
「はぁ?」
悟天は渋々台所に向かった。
古泉が居間にきて、賑やかになってきましたしそれではこれでと去ろうとする。
「飯ぐらい食っていけ」
古泉は一瞬逡巡した後に、
「それではお言葉に甘えます」
と家に留まることにしたようだ。
タコをぶつ切りにし、たこ焼きの生地も出来た。
たこ焼き器も温め終っている。
おでんも温め終わった。
カレーの缶詰は湯煎が終わり何時でも食べられる。
飯も炊き終わった。
時刻は六時半。
後は朝比奈がくるのを待つだけだ。
そして呼び鈴が鳴った。
悟天を玄関にやり朝比奈を居間に迎えた。
朝比奈は開口一番、
「ふぇぇ~!!なんですかここ?我慢比べ大会でもやってるんですか!?」
意味不明な事を言った。
「ようやく感覚を共有できる人が着てくれて嬉しいです」
古泉は汗だくになりながらも笑顔で話している。
何を言ってるんだと思ったら悟天が仮説を提示した。
「もしかして暑いんじゃないですかね?」
「そうなのか?」
オレは朝倉に聞いてみた?
「さぁ?わたしには解らないわ」
「現在の室温は摂氏四十三度。湿度八十パーセント」
長門が朝倉に続いて答えた。
「それは暑いのか?」
「一般的には熱中症のリスクがある」
オレの問いに長門が答えた。
「エアコンをつけますね」
悟天が冷房を入れた。
そんな感じで夕食会が始まった。
朝比奈は「カレーだけで五人前はありませんか?」などと言っていた。
かなり食が細いのだろう。一人につき一缶。適正に決まっているだろう。
食べ始めて暫くしたら悟天の携帯電話が鳴った。
悟天は電話に出る。
「今、ベジータさん達と晩御飯を食べています」
食事中だからな。早々に切り上げるだろう。
「他にはですって?朝比奈さんと古泉くん、長門さんと朝倉さんです」
何を説明してやがる。
「長門さんがカレーを持ってきて、ええ、朝倉さんはおでんです」
チッ!マナーが出来てねぇイライラさせやがるぜ!
「朝倉さんは居るのに、なんで呼ばれなかったなんてボクはしりませんよ」
これだから下級戦士のガキは!
「え?今からでもいい?ちょっとベジータさんに代わりますね」
悟天はオレを見て、
「ベジータさ~ん!涼宮さんも今から参加したいそうですけど、いいですよね?」
「貸しやがれ!」
オレは悟天から携帯電話を奪い取った。
「てめぇはパパやママと一家団欒をしてやがれ!!」
オレはそう言うと携帯電話を握りつぶした。
「ああ!!ボクの携帯が!!」
悟天が泣きそうな声で何かを言ってやがる。下級戦士は情けねぇぜ!
心なしか青ざめた顔の古泉が、
「なんであんなことを言ったんですか?」
「一家団欒の食卓の方が良いに決まってるだろう」
オレはブルマやブラ、ついでにトランクスと普通に飯を食ってた日々を懐かしむ。
古泉が携帯電話を取り出す。
「すみません。どうしても外せないバイトが入ったんで失礼します。ご飯美味しかったです」
古泉はそれだけ言うとフラフラと出ていった。
朝比奈は『あわわ』とでも言いそうなほどに慌てている。
朝倉は普段の笑顔とは違う、どこか興奮を抑えきれないかのような笑顔になっている。
長門は無表情だが何時もとは少し違う、どこか考え込んでるかのような表情だ。
悟天も何かを察したのか、
「あ!別に携帯電話は別に良いんで、気を取り直して食事を再開しましょう?」
と呼びかけた。
「あ!わたし急用ができちゃいました!本当にごめんなさい」
朝比奈は急に大きな声を出し、深々とお辞儀をすると出て行った。
オレは悟天に声をかける。
「おい!家まで送ってやれ」
悟天は「はい!」と言って急いで出て行った。
オレがテーブルに着くと悟天が戻ってきた。
「てめぇ、ちゃんと送らねぇか!!」
悟天は慌てて答えた。
「いえ!どこにも居なかったんですよ!気を探ってもここら辺にいませんし……」
朝比奈が戦闘力を0にまでコントロールできるとは思えないが確かにこの付近には居ない。
「電話をかけてみやがれ!」
心配だ。悟天に催促する。
「ベジータさんがさっき壊しちゃったじゃないですか!」
くそったれ!こんな事なら携帯電話の一つでも持っておくんだったぜ!
必要なら界王から連絡が着ていたし、カカロットの瞬間移動もあったからな。
だが、そもそも朝比奈の電話番号を知らん!
適当に飛びながら探そうかと思っていたら、朝倉が声をかけてきた。
「彼女なら無事よ」
自信満々だ。
所謂、女同士で分かり合えるって奴だろう。信じることにした。
なんだか妙な感じで食事会は終わった。
後片付けを早々に済ませ、悟天に二人を送らせた。
電話でブルマに『そんな言い方ないじゃない!後、悟天くんに謝りなさい!』と怒られた。
悟天には兎に角、ハルヒには悪いことをしてしまったようだ。
そう思いながら、その日は悟天と組手をしてから眠りについた。
カカロットに頼るようで気に入らんが、これでハルヒを無事に帰せる。そう思った。
そのカカロットだがハルヒをマジマジと見て、
「へぇ~……こいつかぁ~」
などと言っている。なんだと言うのだ?
ハルヒはハルヒで、
「どこから来たの?」とか「何をジロジロ見てるのよ!」等と言っている。
カカロットに「さっさと帰るぞ」と催促しようと思ったら、カカロットの方から話しかけてきた。
「いやぁ~、ベジータが駆け落ちしたって聞いたから焦ったぞ!」
な、何を言ってるんだ!?
「悟天から駆け落ちしたって聞いても信じられねぇと思ったけどさ、
実際に妙な場所で二人っきりだろ?」
カカロットは意味が解らないことを言いながら周囲を見渡す。
「それにしてもここはどこなんだ?」
「知らん」
オレの返答に対して、
「そりゃ言いたくないよな!それじゃあオラは他の連中も連れてくる。考え直してくれよな!」
カカロットは一方的に喋ると瞬間移動で目の前から消えた。
オレは悟天を詰問した。
「おい!どうなってやがる!!」
悟天が怯えながら答えた。
「突然いなったから、ブルマさん達とか三角関係が嫌になって駆け落ちしたのかと……」
「ふざけるな!!」
オレが悟天を怒鳴りつけているとトランクスが青い顔をして話しかけてきた。
「父さん!考え直してください!!どうしてもと言うのならオレを倒して行ってください!」
「てめぇがオレに勝てると思ってるのか?」
「………父さん…そこまで……」
違う!オレは何を言ってるんだ?つい反射で答えてしまった!
ハルヒが空気を読まずにオレの腕を掴んで話しかけてきた。
「巨人よ!巨人!光る巨人だわ!!」
「父さんから離れろ!!」
トランクスがハルヒを怒鳴りつける。
「おい!そんな言い方はないだろう!」
女を怒鳴りつける様な育て方をしてしまっていたらしい。失敗だぜ!
オレはハルヒに向かって、
「てめぇも少しは黙ってやがれ!!ぶっ殺すぞ!」
ハルヒはつまらなそうに口をへの字に曲げて、
「あっそ!あたしは一人で見てくるわ」
と言ってオレから離れて校舎の方に走って行った。
ようやくトランクスと話し合えると思ったら、トランクスは下を向いて悔しそうに泣いていやがる。
こんな女々しい奴に育てた覚えはないぞ!くそったれ!!
ハルヒが空気を読まずにオレの腕を掴んで話しかけてきた。
「巨人よ!巨人!光る巨人だわ!!」
「父さんから離れろ!!」
トランクスがハルヒを怒鳴りつける。
「おい!そんな言い方はないだろう!」
女を怒鳴りつける様な育て方をしてしまっていたらしい。失敗だぜ!
オレはハルヒに向かって、
「てめぇも少しは黙ってやがれ!!ぶっ殺すぞ!」
軽く注意をした。
ハルヒはつまらなそうに口をへの字に曲げて、
「あっそ!あたしは一人で見てくるわ」
と言ってオレから離れて校舎の方に走って行った。
ようやくトランクスと話し合えると思ったら、トランクスは下を向いて悔しそうに泣いていやがる。
こんな女々しい奴に育てた覚えはないぞ!くそったれ!!
どうしたものかと考えていたらカカロットが続々と人を連れてきた。
悟飯「ベジータさん考え直してください!!」
ビーデル「そうですよ!パパだって高校一年生に手をつけませんよ!まして奥さんもいるんだし…」
悟飯「パンも何か言ってあげて」
パン「あたち、さんちゃ~い!」
悟飯・ビーデル「よく言えましたね~」
二人はパンの頭を撫でてる。
オレも早くブラの頭を撫でに帰りたいぜ!
チチ「ブルマさんが可哀想だべ!トランクスくんやブラちゃんも!考え直した方がいいべ」
牛魔王「んだ!んだ!」
ミスターブウ「おまえ悪い奴だったみたいだな」
ミスターサタン「ベジータさんお気を悪くしないでください!でも流石に……」
な、なんなんだ?
ウパ「あの……初めまして。そう言うのはよくないと思います」
ボラ「ああ!武道家気取りの様だが風上にも置けないな。カリン塔には登らせん!」
ウパの嫁「事情はよく解りませんが、奥さんの所に戻ってください!!女として許せません!」
こいつらは誰だ?
クリリン「ベジータ!見損なったぜ!!早くブルマさんの所に戻ってくれ!!見なかったことにするからさ!」
18号「最低だな」
マロン「………」
亀仙人「いやぁ~ピチピチギャルなんじゃろ?うらやましいのぅ。他の人を泣かすのは感心せんが」
ウミガメ「亀仙人様、事態を考えましょうよ~」
いったいどうなってやがる!
天津飯「ベジータの生き方は尊敬していたんだが……オレの目でも貴様の本質は見抜けなかったか」
餃子「ブルマは置いてきたとか言わないでください。置いて行かれた側は……」
誰か説明しやがれ!
ヤムチャ「おい!どういうつもりだ!!返事次第じゃ許さんぞ!!……悟飯がな」
プーアル「そうだ!そうだ!ブルマさんをヤムチャ様に返せー!!」
ウーロン「そりゃ今のブルマよりもピチピチギャルの方がいいだろうけどさ………」
くそったれ!!意味が解らんぞ!!
スノ「女の敵!」
ハッちゃん「そういうのはよくない」
桃白白「前の女が邪魔なら代わりに殺してきてやろうか?安くするぞ」
鶴仙人「どうでもいいが変態だな」
てめえらは誰だ!!
占いババ「おぬしが駆け落ちとは……このワシでも占えなかったぞ」
カリン「わしにも解らんかった」
ヤジロベー「流石ベジータさん!おモテになるようで……」
ピッコロ「ベジータ……」
デンデ「僕らはその色恋沙汰って言うのが解りませんが、ブルマさん達を裏切るのはどうかと……」
ポポ「不倫よくない。既婚者の駆け落ちはもっとダメ」
老界王神「ピチピチだからのぅ」
界王神「事情は知りませんが、非難されるようなことはやめておいた方が良いと思います」
そこの人外連中!!オレ様に事態を説明しやがれ!!!!
ブリーフ「ベジータくんも若い娘の方が良いみたいじゃなぁ」
ブルマ母「あらあら、ブルマちゃん可哀想に!でも、あたしは応援するわよ!ベジータちゃんおめでと~!」
ブリーフ「ベジータくんも若い娘さんに負けない様に頑張らんといかんなぁ」
ブルマ母「ベジータちゃんなら大丈夫よ!!鍛えてるし!ねぇ?」
何でオレに聞くんだ?
悟空「オラ飽きてきちまった!あの巨人と戦ってくる!!」
突然カカロットはそう言うと飛んだ。
「界王様にも協力して貰ってっからさ!考え直してくれよ!」
オレに向かってそう言うと飛び去った。
「あ!ボクも行きます」
と悟飯や悟天、その他何人かも付いて行った。
嫌な予感がしていると突然に心に呼びかけられた。
界王『わしじゃよ。界王じゃ』
言わなくても解るぜ!くそったれめ!
界王『悟空に頼まれてな。悟空がそこに行った時から全宇宙におぬしの会話を流しておるんじゃ』
な、なんだと!?なんてことをしやがるくそったれーーー!!
界王『じゃが、心配しなくてもいいぞ。ブルマとやらにだけは聞けない様にしておる』
それは不幸中の幸い……ってなんでこんな目に………
界王『離婚回避のためらしいが、悟空も気が回るようになったのう』
閻魔大王『界王様!話は聞きました!私からも良いですかな?』
界王『おお!なんじゃ?』
くそっ!こんな感じで会話を聞かれてたのか!
閻魔大王『私やあの世からも世間の風当たりと言う奴を伝えたいのですが……』
界王『わしが責任を持って伝えるから存分に言うがよい!』
ふざけるなぁーーーー!!!
閻魔大王『では、私から………その様な事をさせる為に体を残しておいたわけではないのに残念だ』
フリーザ『サイヤ人は本当に盛りのついた猿だね』
ベジータ王『サイヤ人は少なくなったそうだが、女好きとは変わったサイヤ人だったな。頑張れよ』
ナッパ『女に現を抜かすとはどっちがサイヤ人の面汚しだったんだか』
ラディッツ『よう!女好きベジータ』
ザーボン『サイヤ人には詳しいつもりだったが駆け落ちは初耳だな』
ツーノ『こんな奴に村が滅ぼされたとは無念じゃ』
ゲロ『サイヤ人は常識では測れなかったな』
セル『よう!超ロリータ!盛れよロリータ』
バビディ『どうりでボクの術にかかるはずだよ』
くそっ!!!こいつらはもう一回ぶっ殺してやる!!
界王『地球の様子も聞かせてやろう』
必要ない!!
『めがっさ恥ずかしい会話が聞こえてくるにょろ!悪い奴もいるもんだねっ!』
『だから話しを聞いて欲しかったのですが……アダムとイヴですよ。産めや増やせよとしてください』
『あなたは人の話を聞かない。今は話を聞いてもらえない。ユニーク』
『銀河全域で会話が観測出来てるわよ。機会があったらやり方を教えてね。それまで、涼宮さんとお幸せに。じゃあね』
『あわわわ!禁則事項が禁則事項で禁則事項なんですぅ~~!!』
『wawawa~自分の子供くらいの奴と駆け落ちかよ!こちとら彼女すら居ないっていうのにさ!』
『くっくっ!悪い大人もいるもんだね』
『待て待て、なんで会話が聞こえる。俺は病気か? ホワイ、なぜ?』
『………パパ…ママとブラとお兄ちゃんを捨てちゃうの?』
!?まさか…最後のは………
中間試験も終わりその結果も返りつつあった、六月のことだった。
部室に入るや、ハルヒが「野球大会に出るわよ!」などと言い始めた。
なんでもこの学校がある市の主催する野球大会らしい。
全くもってくだらん話だ。
………ところで野球ってなんだ?
「その野球大会とやらは何時あるんだ?」
オレにとっては週末か否かが重要だ。それにハルヒが答える。
「二日後。日曜日。準決勝と決勝は来週の日曜日ね」
週末はブルマ達の所に帰るので、オレは当然参加できない。
「くだらん。俺は行かんぞ」
簡潔に不参加を表明してやった。
「おいおい。折角の野球大会に参加しないなんてもったいねぇだろ~」
カカロットの声だ。いつの間にか瞬間移動で部室にきていたようだ。
「え!?だれ?悟天くんの…お兄さん?っていうかいつの間にいたのよ」
ハルヒが驚いている。見た目は悟天とそっくりだからな。
「あ!紹介します。父です」
悟天はボケたのか?チチではなくてカカロットだろ!
母親と父親の見分けもつかなくなったのか?
「随分と若いわね」
ハルヒは怪訝そうな顔を顔をしているが、カカロットのヤロウは気にせずにしゃべり始めた。
「オッス!オラ悟空!チチに言われて悟天の学校での様子を見にきたんだ。」
「え!?お母さんが!?」
悟天が驚き、ハルヒはその悟天に「父なのか母なのかハッキリしてよ」なんて聞いている。
「それよりもオラもその野球大会って奴に参加させてくれねぇか?
昔、悟飯から話を聞いたことがあるんだけど、どんなのか解んなくてさ~。な、いいだろ?」
そんな二人に構わず悟空が懇願している。
「え、まぁ、悟天くんのお父さんならいいけど……」
いきなり現れて野球大会とやら参加させろと言われたハルヒは困惑しながらも了承した。
だが、問題はそこじゃない。カカロットのヤロウが参加するだって!?
「待て。オレも参加することにしたぞ」
「当り前じゃない!あんたは団員なんだから拒否権なんてないのよ!」
ハルヒが何か言っているが無視した。
それよりもオレはカカロットのヤロウに言わないといけないことがある。
「おい!カカロット!お前を倒すのはこのオレ様だからな!」
「オラもベジータしかいねぇと思ってる」
野球が何か知らないが、決勝とかがあるということは勝ち上がればカカロットのヤロウと戦えるのは間違いない。楽しくなってきたぜ!
「じゃあ、オラは悟飯に野球がなんなのか聞いてくる」
「当日は悟飯も連れてこい」
「ああ、じゃあ二日後な!」
カカロットはそう言うと瞬間移動で立ち去った。
「え!?今消えなかった?」
ハルヒが驚いている。
「あれはトリックですよ。ミスターサタンがセルを退治した時に使っている人が居ました」
古泉が笑顔をたたえてハルヒに解説した。
その後、野球とやらの特訓をハルヒが開いていたが訳がわからん。
人を立たせて、ハルヒがそこをめがけて鉄の棒で球を叩き飛ばす。
悟天はそれを余裕で受け止め、時として走ってでも受け止めに行っていた。
古泉は滑り込んでまで球を受け止める。
朝比奈はしゃがみこんで球を取ろうとしないし、
ハルヒもそれに構わず尻などにボールをぶつける。
長門は一歩も動かず、手の届く範囲の球を捕えている。
これはなにをすればいいんだ?
オレの番が回ってきたがらしいが意味が解らないので帰ることにした。
例によってハルヒの罵声が飛んでいるが知ったことか。
その後、大会までの二日をかけて悟天から野球の説明を受けたがよく解らなかった。
バットとやらでボールを飛ばして何が面白いんだ?さらにはそれを捕るだと?
大会当日。市民球場の前には、オレの他にカカロット、悟天、ハルヒ、古泉、長門、朝比奈、朝倉、悟飯、それと悟飯が嫁と娘を連れてきていた。
ちなみに朝倉はオレが悟天に呼ばせた。休日に一人じゃ寂しいだろうからな。
悟飯一家が一通り挨拶を終えるとハルヒがオーダーとやらを発表すると言い始めた。
「オーダー?なんだそれは?」
「あんたね、オーダーも知らないの?
一番、ピッチャーはあたしで後はクジで決めるから関係ないけど」
ハルヒが非常識なことを言っている。
「ふざけるな!!オレがナンバーワンだ!!」
オレはその非常識を正してやった。
「な!?」
ハルヒはビックリした様な声を出した後に続けた。
「ま、まぁ、あんたがど~~~しても一番をやりたいって言うならやらしてあげる」
「フン」
当然のことなのになんでこの女は偉そうなんだ?
そしてオーダーとやらは、
一番、ファースト、オレ。二番、どこか、朝比奈みくる。三番、どこか、長門有希。四番、ピッチャー、ハルヒ。五番、どこか、悟天。六番、どこか、古泉一樹。七番、どこか、朝倉。八番、どこか、悟飯。九番、どこか、カカロット。
カカロットが九番なのは気に入らん。そもそもこの番号はなんなんだ?
あと、ピッチャーというのはハルヒが連呼をしていたので憶えたし、ファーストはオレが主張してとった。
なにをすればいいのかは知らんがな。
「おい!オレはいつカカロットと戦えるんだ?」
一番と九番だからまさか決勝とか言うんじゃないだろうな?
オレの当然の質問に朝比奈がビックリしたような声をあげた。
「え!?カカロットって誰ですか!?」
「ベジータさんの知り合いの方も出るのですか?」
古泉が笑顔をたたえたまま答える。
「チッ」
おとぼけに腹が立ち舌打ちをすると悟飯が耳元で囁いてきた。
「ベジータさんとお父さんは同じチームなんで戦えないんですよ」
なんだと!?くそったれーーーーー!!!!
オレの心中を察したのか悟飯が続ける。
「やっぱり勘違いしてたんですね。お父さんもがっかりしてました」
悟飯はそれだけ言うとさっさと球場の中に入って行った。
整列とやらが終わり、オレの打順がやってきた。
「ベジータさん!手加減してくださいね」
バットを手に向かうオレに悟飯が声をかけてきた。
「ふざけるな!!てめぇこそ手抜きをしたら許さんからな!!」
不真面目な悟飯を一喝した。ちなみにこの試合は悟飯の嫁が撮影中だ。
後でブルマとブラにオレの雄姿を見せたいからな。
一球目。まだヤムチャが投げた方がマシと思える様なヘロヘロ球が飛んできた。
今は無きナメック星に届けと言わんばかりの勢いでバットを振った。
球はバットの下を掠め地面にぶつかった。
地面にぶつかった球は、爆音とともに大量の土を巻き上げる。
グランドに大穴を空けてしまった。
球を投げるのは得意なのだが、棒で球を叩くのは初めてだった。
思ったよりも難しいものだ。
そこでふと我に返る。
おっと、塁に進まないとな。確か右に進むんだ。
オレは急ぎ一塁方向に走る。そしておそらくはカカロット達でしか捉えられない超スピードで二塁、三塁と踏み、ホームに戻ろした。
その時異変に気が付いた。
本塁が吹き飛んでるではないか!!
これでは点数が入らんぞ!!クソッたれーーーー!!!
俺が呆然と立ちすくんでいると審判とその前に座っていた男を両脇に抱えた悟飯が近づいてきた。
「これは試合どころじゃありませんよ。この二人だけじゃなくて、内野の選手もベジータさんの一振りで吹き飛んでしまいましたし……」
ベンチの方に目をやる。ベンチ相手の方のベンチは風圧と土でボロボロだが、オレたちの方は不自然な程に無傷だった。
朝倉の匠の技で修理をしたのだろうか?
なにはともあれ試合自体が流れてしまったようだ。
ベンチでは古泉が「きっと不発弾ですよ」などとハルヒに説明をしていた。
相変わらずハルヒにマメな男だ。
当のハルヒも
「野球は思ったより面白くなかったけど、それよりも面白いものが見れたし満足だったわ!」
と、満更でもなさそうだった。
おそらく、あれが青春って奴なのだろう。
野球大会も終わり、一同でファミレスとやらにやってきた。
「次はなにかしら?サッカー?ラグビーもいいわね」
などとハルヒが言っているのを横目にカカロットと戦えないわ、週末に帰れなかったわ、ブルマ達に雄姿を見せられなかったわで散々な週末を過ごしたものだと考えていた。
「あんたたちで大食い大会に出るのも良さそうね」
ハルヒが不敵に笑っていたが今度は付き合わん。
ファミレスとやらの食糧を食い尽くし、会計の段となった時に悟飯がガックリしていた。
「ぼ、僕が払うんですか!?」
この中で働いているのは貴様だけなんだから当り前だろう。
もっとも最終的には悟飯の嫁が、
「あ、悟飯くん!あたしが払うから大丈夫よ!」
と、「働かない癖に…」とぶつくさ言いながら支払うブルマとは大違いな悟飯の嫁が支払った訳だが。
まぁ、悟飯もようやくサイヤ人の自覚が出来たのだろう。
研究者などという意味が解らんことをせずに、
ああすることこそがサイヤ人の正しい姿だろうからな。
その日の夜、一応送った動画を見たブルマから電話がかかってきた。
もの凄い剣幕で「やりすぎよ!!」と言われた。
いったいなんのことだったのか意味が解らなかったが抵抗するだけ無駄だろうから適当に応じておいた。
納得いかん。
退屈(了)
>>404 訂正
ファミレスとやらの食糧を食い尽くし、会計の段となった時に悟飯がガックリしていた。
「ぼ、僕が払うんですか!?」
この中で働いているのは貴様だけなんだから当り前だろう。
もっとも最終的には悟飯の嫁が、
「あ、悟飯くん!あたしが払うから大丈夫よ!」
と、「働かない癖に…」とぶつくさ言いながら支払うブルマとは大違いな悟飯の嫁が支払った訳だが。
まぁ、悟飯もようやくサイヤ人の自覚が出来たのだろう。
研究者などという意味が解らんことをせずに、
ああすることこそがサイヤ人の正しい姿だろうからな。
その日の夜、一応送った動画を見たブルマから電話がかかってきた。
もの凄い剣幕で「やりすぎよ!!」と言われた。
いったいなんのことだったのか意味が解らなかったが抵抗するだけ無駄だろうから適当に応じておいた。
納得いかん。
孫悟空が退屈(了)
この地方では七月七日に笹に願い事を書いた短冊という紙を吊るす習慣があるらしい。
昨日ハルヒが明日は七夕で……等と話しかけてきていたがよく解らなかった。
なんで今日になってそれが解ったかというと、
ハルヒが部室に笹のを持ってきて、
「さあ、願い事を書きなさい」
などと言ってきたからだ。
ハルヒは続けた。
「ただし条件があるわ」
「何だ」
「ベジータ、あんた、七夕に願い事を叶えてくれるのって誰か知ってる?」
「ナメック野郎か?」
「誰よそれ!」
「てめぇで考えやがれ!」
「ベガとアルタイルでしょう」
古泉が即答した。
「そう! 八十五点! まさしくその星よ!
つまり短冊の願い事はその二つの星に向かって吊るさないといけないの。解る?」
ナメック野郎どもの他にも不思議な力を持った奴らが居るようだ。
フリーザが死んでて幸いだったな。
えっへん、とハルヒはなぜか偉そうに、
「説明するわ。まず光の速さを超えてどっかにいくことはできません。特殊相対性理論によるとそうなっています」
たかだか光速すら越えられないとは情けない奴らめ。
オレがそう思っていると、ハルヒはスカートのポケットからノートの切れ端を取り出して、ちらちらとメモを見ながら、
「ちなみに地球からベガとアルタイルまでの距離は、それぞれ約二十五光年と十六光年です。てぇことは、地球から発した情報がどっちかの星に辿り着くまでには二十五年ないし十六年かかるのは当然----よね?」
地球は思った以上に技術が遅れているようだ。
フリーザの高速宇宙船なら途中にあるであろうブラックホールの重力圏や隕石ベルトを考慮しても精々数週間の距離だし、カカロットに至っては一瞬だ。
もっともカカロットの瞬間移動は例外的な技だがな。
「さ、みんな。話は解ったでしょ。短冊は二種類書くのよ。ベガ宛とアルタイル宛のね。
で、二十五年後と十六年後に叶えて欲しい願い事をしなさい」
実にくだらん。今日だろうが明日だろうが十年後だろうが百年後だろうがオレの願いは決まっている。
「ねえ、書けた?」
ハルヒの声に振り返る。奴の手前のテーブルには次のように書かれた短冊がある。
『世界があたしを中心に回るようにせよ』
『地球の自転を逆回転にして欲しい』
朝比奈は丁寧な文字で、
『お裁縫がうまくなりますように』
『お料理が上手になりますように』
長門は『調和』『変革』
古泉は『世界平和』『家内安全』
悟天は『楽して強くなっていたい』『左団扇』
などとそれぞれ書いていた。
オレはもちろん、
『カカロットと闘いたい』『カカロットに勝ちたい』
の二つだ。
「カカロットって誰なの?」
俺のぶら下げた短冊を見てハルヒがコメントした。
「オレの目標だ。カカロットに勝ってオレはナンバーワンになるんだ」
「でも、兄ちゃんとか吸収ができるブウさんが………」
悟天が余計な口を挟んできた。
「うるせぇ!!あんな醜い風船ヤロウや悟飯みたいな油断だらけなヤロウはオレの敵じゃねぇ!」
オレは悟天を怒鳴りつけた。
ハルヒはオレの剣幕に驚いたのか、
「ま、まぁ、あんたにとっては掛買のないライバルってことだけは解ったわ」
などと話をまとめた。驚かせたようで少々悪いことをしてしまった。
そんな感じでその日の部活は終わった。
帰宅直後に朝比奈が家を訪ねてきた。
制服から着替える前に呼び鈴が鳴ったのだ。
応対した悟天によれば朝比奈だといい、実際に朝比奈だった。
朝比奈は悟天に席を外すように頼み、その通りに悟天が席を外すとオレに言ってきた。
「短冊に部室に残って貰えるように書いておいたのですが、
気が付かなかったようなので家に来ちゃいました」
さらに続けて、
「これから私と一緒に三年前に行って欲しいのです」
「ほう?タイムマシンか。いいだろう」
「…随分と簡単に信じるんですね………」
当り前だろう。目の前で自分の息子がタイムマシンで未来に帰って行くのを見たのだから。
「えっと……じゃあ、椅子に座って目を瞑ってください」
朝比奈は妙な注文をしてきた。
「なんだ?タイムマシンを出して一緒に乗ればいいのではないのか?」
「あ、あの見られたくないので……お願いします!」
この子にはこの子なりの理由があるのだろう。
仕方がなしにオレは従った。
「ベジータさん、ごめんなさい」
その刹那、意識を失いそうになった。おそらく朝比奈が何らかの薬品を使ったのだろう。
「てめぇ……」
気を失わなかったオレは椅子から立ち上がり朝比奈と対峙した。
朝比奈は薬品が効かなかったからかオレの殺気に気が付いたのか解らないがオロオロしながら、
「ふぇぇぇぇえ!!本当にごめんなさい!転送は[禁則事項です]で見られてはいけないんですぅ」
などと弁解をし、最後の方は泣いていた。
「タイムマシンなら目の前で見たこともある。他言はしないからさっさと移動しやがれ!」
こんな年端もいかないガキに泣かれてはこれ以上追及する気が起きん。
オレは朝比奈に次の行動に移すように促した。
「うぅ………本当に[禁則事項です]で[禁則事項です]なんで他言無用でお願いしますぅ…」
と言いながら朝比奈は[禁則事項です]な手段でオレを三年前に移動させたようだ。
飛んだ先は夜の公園のベンチの上だった。
「オレが知っている方法とは随分と違うな」
オレが朝比奈に声をかけると彼女は寝息を立てていた。
「ちゃんと寝ていますか?」
背後の植え込みに潜んでいた野郎が声をかけてきた。
「あ、キョンくん、今晩…って誰ぇええええ!!!」
植え込みから出てきた朝比奈に似た女は俺を見るなり素っ頓狂な悲鳴を上げた。
その白いブラウスに茶色いスカート姿の朝比奈に似た女に声をかけた。
「おい!朝比奈を眠らせたのはてめぇだな?なんのためにしやがった!
とっとと答えねぇとぶっ殺すぞ!」
もっとも返答次第では即答してもぶっ殺す予定なのだが。
「え!?あ、あの、あたしが誰か解りませんか?」
「知らねぇな」
オレはビッグバンアタックの構えをとる。
「え!あ、あのあたしは、朝比奈みくるです!」
今の朝比奈よりも豊満な胸の持ち主は強弁している。
「嘘をつくんじゃねぇ!ここは三年前だろうが!!
明らかにこいつより年を取ってやがるぞ!」
「も、もっと未来から来たんです!」
自称朝比奈みくるは手を胸の前で組み必死な声を上げた。
まじまじと観察する。確かに似ている。
胸が大きいだけではなく全体的に大人びているというべきだろう。
信じるかどうかは別として話は聞いてみることにした。
「で、その自称朝比奈みくるが何の用だ」
オレはビッグバンアタックの構えを解いた。
「詳しくは説明できません。理由は禁則だから。なのでぇ、わたしはお願いするだけです」
そして自称朝比奈みくるは続ける。
「彼女は眠らせました。わたしの姿を見られるわけにはいかないので」
「なぜだ?」
「だって、わたしが今のこの子の立場だったときに、わたしはわたしに会ってないもの。
っていうより、キョンくん………」
自称朝比奈みくるが悲しそうな顔をした。
「さっきから言ってやがるキョンって言うのはなんなんだ」
「あ、いえ!気にしないでください!
おそらくそちらの時間平面だとそれが必然だったのでしょう。
わたしの頼みというのは、そこにある線路沿いに南に下ると学校があります。
公立の中学校ね。その校門前にいる人に協力してあげてください。
すぐ行ってあげてくれますか?
そっちのわたしは、ゴメンですがオンブして行ってください。
あまり重くはないと思うけど」
「ふざけるな!なんでオレがそんな真似をしないといけないんだ!」
「と、とにかく!お願いますぅ~」
それだけ言うと自称朝比奈は闇の中に走り去った。
あの妙な奴の言うままに動くのは癪だが、
朝比奈をこんな場所においておくわけにも行くまい。
女の子だ、なにかあったら困る。
起きるまで行くあてもないので仕方がなしに、朝比奈を抱きかかえながら、
線路沿いに南に下って行った。
オレだからどっちが南か解るが、あの女どちらが南かを言わずに立ち去ったな。
そう思っていると、言われたとおりに中学校があり、
一人の子供がその鉄製の門によじ登ろうとしていた。
あいつを手伝うのか?その前にいうことがある。
「おい!てめぇ!!」
オレはやさしく声をかけた。
「なによっ」
門を登ろうとしていた奴は少女だった。
「なに、あんた? 変態? 誘拐犯? 怪しいわね」
少女に立て続けて言われた。
警戒感を持つことは良いことだ。世の中にはヘンタイヤロウがいるからな。
「こんな時間にガキ、それも女のガキが出歩くのは危ねぇだろ!とっとと帰りやがれ!」
「あたしは学校に侵入してやることがあるのよ!」
「なんだ?忘れ物か?」
「そんな訳ないじゃない!あんた暇ならあたしを手伝いなさいよね」
このガキはその用事とやらが終わるまで帰らないだろう。
仕方がなしに手伝うこととした。
ガキは門を乗り越え、内側から鍵を開け、門をスライドさせた。
オレはガキが開けたその門からその学校に侵入した。
ガキは運動場の隅っこまで真っ直ぐ前進すると、倉庫の裏へオレを連れて行く。
錆だらけのリアカーに車輪付きが付いた何だかよく解らん赤い小さな箱、何かの袋が数個転がっていた。
「夕方に倉庫から出して隠しておいたのよ。いいアイデアでしょ」
ガキは自慢げに言ってきた。
「それで何をするんだ?」
「あたしの言うとおりに線引いて。あんたが。
あたしは少し離れたところから正しく引けてるか監督しないといけないから。」
どうやらあれは線を引く道具らしい。
「くだらん。地上にお絵かきでもする気なのか?」
「お絵かきってなによ!」
ガキは精一杯反発する。可愛いものだ。
「まぁ、いい。手伝ってやろう」
オレはそう言うと、朝比奈を倉庫の壁に寄りかからせ、ガキを脇に抱きかかえた。
「な、なにをするのよ!大声を出すわよ!」
ガキが暴れる。
オレはそれに構わず空を飛んだ。
「え!?なにこれ?空を飛んでるの!?」
ガキは一転興奮しながら喜びの声をあげた。
ガキなんてチョロイもんだぜ!!
「少々暗いな」
絵を描くのに支障が出るだろうからオレはスーパーサイヤ人となり明るくした。
「え!?なんであんた光ってるのよ!!」
「選ばれた戦士だからな」
飛んだりするのはブルマに禁じられていたが、三年前だし、未来から来たトランクスによれば過去での行動は元の世界へは影響がないらしいから別に構わないだろう。
「選ばれた戦士ってなんなの?」
「穏やかな心の持ち主が激しい怒りによって目覚めた究極の戦士だ」
トランクス達がガキの頃になれていたことから怪しい説ではあるのだがな。
「それよりも絵を描くんだろう?」
オレはガキを抱えていない方の手からベジットの時と同様に固形状にしたエネルギーを出し、それを地面に突き立てた。
「てめぇの好きな様に動かしやがれ!」
「え…あ、う、うん」
ガキは恐る恐るオレの腕を掴んで地面に何かを書き始めた。
「それは何を書いているんだ?」
オレの質問に対して、ガキは地面に絵を描きながら応じた。
「宇宙人でも呼ぼうと思ってね。ほら、今日って七夕でしょ?
ベガとアルタイルに対するメッセージなの」
「オレが知っている共通性の高い宇宙語とは違うな」
「………さっきから気になってたんだけど、もしかしなくてもあんたって宇宙人?」
「なんでそう思ったんだ?」
「だって、空を飛んだり、手から変なのを出したり、宇宙語とやらを知ってたり」
「そんなのはトレーニングさえすれば誰でもできる」
「そうなの!?」
「そうだ」
「じゃあ、あたしも頑張ればあんたみたいに光れる?」
「それはできん。これはオレ達しかなれないからな」
「そう……やっぱりあんたは宇宙人?」
「そうだ。宇宙最強の戦闘民族。そしてオレはそこの王子だ」
「え!?あんたって偉い人だったの?」
「ああ。何と言っても王子だからな。そこいらの下級戦士とは出来が違う」
「そんなに偉い人ならあたしをあんたの星に招待してよ!」
ガキは目を輝かしている。
「悪いがオレの星は滅んでいるのでな。
純粋血もオレを含めて二人しか残っていないんだ」
「そう……」
ガキの目は失望に彩られた。
夢を壊してしまったようだ。悪いことを言ったのかもしれん。
「それで学生の恰好をしているの?」
「地球の常識とか言うのを学ばないといけないからな」
「宇宙人も大変なんだね」
悲しみとも同情ともうかがえる表情を浮かべたガキが続ける。
「おじさんは仲間もほとんど死んじゃって寂しい?」
「……今の環境、この星も悪くない…いや、気に入らんがむしろ好きなんだろう」
ライバルであるカカロットや家族のことを思い浮かべる。オレも丸くなったもんだ。
見ず知らずのガキを脇に抱えて落書きを手伝うなんてフリーザの所に居た頃の俺からは想像もできない。
オレが苦笑いをしているとガキが声をかけてきた。
「気に入らないけど好きなんだ。
…ふーん。おじさんの性格がなんとなくわかっちゃった」
ガキは何かを察したような不敵な笑みを浮かべている。気に入らん。
「おい!落書きはもういいのか?手が止まっているぞ」
「うん。もういいわ。だって宇宙人に会えたんだもん」
「そうか。じゃあ、ガキは帰る時間だな。送って行ってやろう」
「えーっ!!あたし、あんたと遊びたい!」
「ダメだ!ガキは帰る時間だ!!親が心配するだろう!」
ガキは解りやすい程にほっぺたを膨らませて、
「それならせめて飛んで送りなさいよ!」
まぁ、それくらいならいいだろう。その方が安全だしな。
「わかった。だが、少し待ってろ」
オレは一旦降り立ち、朝比奈を抱えた。
両脇に少女を抱えた、オレは再び飛び立ち、
「お前の家はどこだ?」
とガキに聞いた。
ガキは「あっち」と指さし、オレはそこ目指して飛んだ。
時間にして十五秒。ガキどもの負担を考えればこれくらいが速度の限界だろう。
ガキが「あの家」というのでそこで降り立った。
「あーあ、もう着いちゃった。つまんないの」
『涼宮』と書かれた表札が掲げられた家の前でガキがつまらなそうに小石を蹴る。
うん!?涼宮………もしかしてこのガキはハルヒなのか?
過去と未来が連続していないとはいえ、足跡を残さない方が良い感じがした。
こうなると早い段階からスーパーサイヤ人になっておいてよかったぜ。
「ねぇ、あたし、またあんたに会えるかな?」
「ふん。望めば会えるかもな」
これ以上は長居しない方が良さそうとなんとなく感じたオレは言葉短に答えあと、朝比奈を抱えて再び学校に飛び去った。
途中、ハルヒに見つからない様にスーパーサイヤ人を解き発光を終わらせたのはもちろんのことだ。
学校に着いたオレは朝比奈を起こすことにした。
自称朝比奈の言う通りならばオレの役割は終わったはずだ。
全く持って意味が解らなかったが。
「おい!いい加減に起きやがれ!永遠に眠らせるぞ!!」
優しく声をかけてやった。
「みゅう……。ふぁ。へっ? ……なん」
目を開けた朝比奈は、ひとしきりキョロキョロしたのち、
「ふぇふっ!」
とか言いながら立ち上がった。
「なななな……なんですかココ、何がどうして今はいつですかっ!」
「自称朝比奈みくるが指図した学校で三年前だろうが!!」
オレの答えを聞いているの聞いていないのかはっきりしない朝比奈は「あっ」と叫んでよろめいた。
暗い中でも白い顔がますます青ざめるのが見て取れる。
朝比奈は身体中を両手で探りながら、
「TPDDが……ありません。ないよう」
朝比奈は泣きそうな顔になって、まもなく本当に泣き出した。
「なんだそれは?」
「ここに着た時に使った[禁則事項です]です。あれがないと元の時間に帰れないぃ……」
「チッ」
オレの舌打ちに一瞬ビクッと体を揺らせた朝比奈はワンワンと泣きはじめた。
「仕方がねぇ。今度はてめぇが目を瞑ってやがれ!見られたくない[禁則事項です]って奴だ」
「え!?ベジータさんにも[禁則事項です]があるんですか?」
「うるせぇ!とっとと目を閉じねぇか!」
「は、はぃぃい」
朝比奈は急いで目を閉じた。
「風を感じるかもしれんが絶対に目を開けるなよ」
オレはそう言うと朝比奈を小脇に抱え飛んだ。
同じ時間に帰るこいつには飛んでいる所は見せられない。
ブルマとの約束があるからな。
朝比奈を抱えて飛んだ先は西の都。そう、オレの家へと飛んで帰ったのだ。
家に着いたオレは、
「もう目を開けていいぞ」
と朝比奈に声をかけた。
だが、当の朝比奈は、「ふぇぇええ~~」と目を回している。少々速く飛び過ぎたか?
ようやくにも落ち着いた朝比奈は周囲を見るなり、
「こ、ここどこですか!?どうやって着たんですか!?」
と再び慌てはじめた。
「オレの家だ。どうやって着たかはてめぇで考えやがれ」
オレは鍵を取り出し、玄関のドアを開ける。
「付いて来い」と朝比奈を家に招き入れた。
廊下を歩く俺についてきながら、朝比奈が声をかけてきた。
「あの~……すごく大きな家ですね」
「てめぇ一人を住ますくらいは出来るだろうな」
それどころか大量のナメック星人が住んでいたんだがな。
「うぅ……やっぱり帰れないんですかね」
朝比奈が泣きそうな声を出している。
そんな朝比奈に構わず、オレはたどり着いた先にあるドアを開けた。
「邪魔するぞ」
開けた先にはブルマがいた。ここはブルマの研究室なのだ。
「あら?ベジータ?さっきトレーニングを始めたばっかりじゃないの?
って、なによその恰好!」
実験台の上で行っていた作業を中断したブルマはオレを見るなり大爆笑をした。
「笑ってないでさっさとTPDDを作りやがれ!!」
「藪から棒になによ!だいたいTPDDってなによ!」
ここでブルマは朝比奈に気が付いたのか、
「あれ?その子誰?トランクスの友達?」
と聞いてきた。
「あ、あたし朝---」
「……オレの同級生だ」
「はぁ?さっきからあんたは何を言ってるのよ」
普段のオレなら「めんどくせぇ!てめぇで考えろ」と突き放すところなのだが、
今回はTPDDとやらを作って貰わないといけないから説明してやった。
「……するとなに。あんたとその子は三年後の未来からやってきたの?」
「ああ」
「で、TPDDとか言うタイムマシーンを無くしたから帰れなくなったと?」
「ああ」
「あんたが学生服を着ているのは常識を学ばせるためにあたしが入学させたと?」
「ああ」
ブルマが大爆笑を始めた。
「ベジータが学生」とか言いながら床に突っ伏しドンドンと叩いている。
笑い過ぎて涙を浮かべたブルマはヨロヨロと立ち上がりながら、涙を拭いている。
「いやぁ、流石あたし。天才だわ。学校で常識を学ぶねぇ……」
「てめぇ……いい加減にしやがれ………」
笑い過ぎているブルマを注意しようとしたオレを無視して、ブルマは朝比奈に話しかける。
「まぁいいわ!TPDDが何か知らないけど、未来に帰れればいいんでしょ?」
「あ、はい……TPDDがなんなのかは[禁則事項です]だからお教えできないんですけど…」
朝比奈は不安気に答える。
「じゃあ、ちょっと待ってて」
ブルマはそれだけ言うと引き出しを引っ掻き回し始めた。
五分程経っただろうか?
ブルマは「あったわ!」と声をあげてホイポイカプセルを一つ取り出した。
「あ、あの……それは何ですか?」
朝比奈が不安気に聞いている。
「なに…って、未来に帰るんだからタイムマシーンに決まってるじゃない」
ブルマはさも当然といった感じに答える。
「えっ……」
朝比奈が絶句する。
「三年間コールドスリープしてる方がいい?
タイムマシーンを持ってたあなたはどうか知らないけど、
この世界のベジータが二人になっちゃうわね」
絶句する朝比奈を他所に、
「それじゃあ、裏庭にレッツゴー!」とブルマは張り切って歩き出した。
道中、朝比奈はなおも不安そうに、
「あ、あのこの時代にタイムマシーンがあるとは考えられないのですけど」
などと言っていた。
裏庭に出るとブルマはホイポイカプセルを投げた。
タイムマシーンが出てきた。ブルマはそのタイムマシーンに近寄った。
そのままタイムマシーン内に身を乗り出し、時間等を設定している。
このタイムマシーンは、セルが乗ってきたタイムマシーンのデータを元に改良した奴だ。
元々は研究者になった悟飯への学者になったお祝いだかで「過去とか未来に行けた方が研究が捗るわよね?」などと言ってブルマが作り直していた奴だ。
もっとも作っている途中で悟飯がサタンの娘と結婚した為に、新婚旅行仕様と称して二人乗りに作り直したわけだが。
それが何故ここにあるかというと、サタンとブウがこれを使って悪戯をするらしく、
悟飯の嫁が返しにきたからだ。
もっともそれがなくても悟飯は返したかっただろう。
あいつもサイヤ人の端くれだから結果よりも純粋に経過を楽しめる野郎だかな。
さて、そんな返品されてきたタイムマシーンを朝比奈がポカーンと眺めている。
「さて、設定が終わったわよ!」
ブルマが声をかけてきた。
オレは実物を見ても半信半疑な朝比奈と共にそれに乗り込んだ。
そしてブルマに言われたスイッチを押す。
視界が歪み、万華鏡のような風景になる。
そして徐々に風景が整っていく。着いた場所は北高のグラウンドだった。
「えっ? うそ……! えっ? ほんとうに?」
朝比奈は腕時計を見ながら驚きの声をあげた。
「よかった。帰って来れました。わたしたちが出発した七月七日……の午後九時半過ぎです。
本当によかった……はふ」
あの腕時計がTPDDなのだろうか?
「そうか。夜も遅いし送って行ってやろう。案内しやがれ!」
タイムマシーンをカプセルに戻しながら声をかけた。流石に夜道は危ないからな。
「え!?家は[禁則事項です]大丈夫です」
朝比奈が拒否しやがった。
「なにかあったらどうするんだ!!くそったれーー!!」
オレの剣幕に驚いた朝比奈だが、
「それでも家は[禁則事項です]ぅ~」
と、泣きそうな声で応じるだけだ。
もしかして、オレを警戒しているのか?
「解った。タクシー代を出すから駅前のタクシー乗り場まで送ろう。」
「ああ。それなら大丈夫です!」
朝比奈は笑顔になり答えた。
オレは不安感を与えない様に極力人通りが多い道を選びながら駅まで朝比奈を送ることとなった。
「でも、未だに信じられません。この時代にタイムマシーンがあるなんて」
道中、オレの横を歩きながら朝比奈が呟いた。
「フン!ブルマはカカロットとは違う意味でだが天才だからな」
軽く嫁の自慢をした。
「え!?ブルマって、あの人があのブルマ博士だったんですか!?」
「あのかどうかは知らんがブルマだな」
「父親はブリーフ博士の?」
「ああ、ブルマの親父はブリーフだったな」
朝比奈は「あわわわゎ」と小さく言っている。
サタンほどではないが有名人らしいからな。今になって驚いているのだろう。
駅に着き、朝比奈にタクシー代として若干の金銭を持たせたオレは、タクシーに乗り込むところまで見届けて家路に着いた。
一人夜道を歩きながら、子供時代のハルヒが言っていた
「仲間もほとんど死んじゃって寂しい?」
と言う言葉を反芻した。
手元にあるタイムマシーンを使えばナッパたちも死ななくて済むのかもな………
そんな柄にも無い事を考えたが、すぐに「くだらん」とその考えを投げ捨てた。
ナッパラプソディ(了)
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